読切小説
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雷と鳥
美月は13歳の女の子。
今日は両親と一緒に山にハイキングに来ていた。
予定通りにいけば、今はもう帰り始めているころだったが、
美月は両親とはぐれてしまっていた。
なぜか。理由は簡単である。
急に大雨が降り出し、急いで帰ろうとしたが、地面がぬかるんでいたので
足を滑らせ谷底に落ちてしまったのである。
幸い落ち葉がクッションになり、けがは避けたが、とても13歳の少女が登れる
崖ではなかった。何とか上に登ろうと、あちこち歩き回ったが、登れそうなところはなかった。
「どうしよう、、。お母さん、、。」
泣き出しそうになっている美月を一筋の光が照らしたような気がした。
大雨だというのに何だろう、と思い見てみると確かに光が見えた。
一か八か、そこに人がいることを期待して、向かう事にした。


光の下についたがそこに人はいなかった。
その代わり、見たこともないような鳥が木の太い枝にいた。
脚と羽は確かに鳥のそれだったが、胴体は妖艶な女だった。
「誰ですか?あなたは、、」
美月が問うと、それはゆっくり振り返った。
「んーと、少なくとも人間ではないよ」
そう答えた。
「こんな状況で立ち話もなんだから、登っておいでよ、雨は避けれるよ。」
そう言って、手を振ってきた。
木登りはもともと得意だったので、するすると登って行った。
そしたらそれは話を始めた。
「まあ、私はサンダーバードっていう魔物なんだ。気軽にサンダーさんでいいよ」
サンダーさんはそう言った。
「君はどうしてこんなところにいるの?」
そう聞かれたので、私は自分に起きたことを余すことなく言った。
その間、サンダーさんは黙って聞いていてくれた。
「そうなんだ。辛かったね。」
「だったら、魔物になってみる?」
そう言われ、一瞬きょとんとした。
「大丈夫よ、痛い事とかはしないから。」
それでもまだ私の心は揺らいでいた。
「私と同じ魔物になれば、空を飛んでもう一度お母さんとお父さんに会えるよ」
この言葉を聞いた瞬間、私の心は大きく傾いた。
そして、気が付いたら首を縦に振っていた。
「よし、じゃあ決まりね。安心して、魔物になっても少し食べるものが変わるだけだから。」
それだけ言ってサンダーさんは私をその大きな翼で抱きしめた。



ーーそしてーー

バリバリバリバリイ!!!!

雷撃のような魔力を放たれた。気絶でもしてしまうのではないかと思ったが、
魔力の加護で気絶はしなかった。ただし一撃でもう私はふらふらになっていた。
そして二回目、三回目と回数を重ねるうちに、どんどん自分の中に電気がたまっていくのを感じた。
15回ほどそんなことをくりかえしただろうか。
急にサンダーさんが手を放し、私を木にもたれかけさせた。


ぱり、、。


自分の体内にたまった電気の魔力が活性化し始めた。


ぱり、、ぱり、、ばり、、ばり、、ばり!ばりばりい!!


それは体にも変化を及ぼした。
まず、足が茶色い鱗に覆われ、髪が黄色と青色に変色した。
そして肩の少し下から手が羽毛に覆われ始めたと思うと、そこから立派な羽が生え始めた。そして、足の爪が大きくなり、鳥のそれになった。
最後に服が溶けて変形しサンダーさんと同じ露出が多い服になった。
身体の痛みがとれたころにはもうすっかり目の前のサンダーバードと同じ見た目になっていた。


「よし、わたしがしてやれるのはここまでだ。家族の所にいきな。」
サンダーさんはそう言い、わたしは
「ありがとう!!サンダーさん!!」
「いいってことよ。元気でな!!」
そして私は家族のもとに向かった。


魔物と化した私を見てもお母さんとお父さんは驚かず戻ってきたことに喜び、
私を抱きしめた。


それから数日後。


私は「人化の術」というものを使い学校に通っていた。
学校の友達にあうのもよかったが、サンダーさんにもう一度会いたい、とずっと思っていた。しかし、この前サンダーさんとあった場所やその周りを探しても手掛かりすら見つからなかった。


そんなこんな一か月が過ぎた日、私のクラスに転校生がやってきた。
名前は澄香といい、同じ女でも息を飲むほどの美しさであった。

澄香さんは私の隣に座り、私によく話しかけてきてくれた。
そして数日後、澄香さんが初めて私の家に遊びに来た。
「ねえ、美月さん。サンダーバードって知ってる?」
そう聞かれ、私は少し動揺した。
「実は、私もサンダーバードなんだよね」
え?いまなんていった?
そんな私の疑問はそっちのけで、澄香さんはどんどん人化の術をといていく。
そして、変身後の姿を見て言葉を失った。
澄香さんはサンダーさんの姿になったからだ。
「覚えてたかな、私のこと。」
忘れるはずもない。命の恩人の顔のことなど。
「ほんとにサンダーさんなの?」
その問いに澄香さんは笑顔で答えた。
「ああ、あの時あったサンダーバードだよ」
その言葉に泣き出しそうになった。そして迷うことなく私も人化の術をといた。
そして、あの時のようにまた抱きしめあった。
抱きしめ終わった後、
「ところでサンダーさん、、いや澄香さんか、はどこから学校に来てるの?」
「近くの洞窟にいるよ」
澄香さんがそう答えたので私はこんなことを言った。
「じゃあさ、、私たちと一緒に住まない?」
今度は澄香さんがきょとんとした。それからぱあっと笑顔になって
「おうよ!お前の家に居候するぜ!」
そのあと私が両親にこのことを話したら
二人とも快く受け入れてくれた。
「美月に姉妹がふえるのかあ」
「澄香ちゃん、よろしくね!」



あれから数年。


私たちは高校、大学に進学し、成績もトップ維持し続けた。
今は親元を離れ、アパートで二人仲良く暮らしている。
もちろん、喧嘩もした、仲直りもした。今は澄香とは家族の絆と同等のものを育んでいる。何回か男子から告白もされて付き合ったこともあるがやはり私たちの絆には勝らなかった。これからもこんな日が続くことを願って、今日もベットに入った。
21/05/30 12:34更新 / 小鳥マン

■作者メッセージ
疲れた・・一日に二話書くと答えますね(笑)。次回もお楽しみに!

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