比翼之竜
大空を舞う、翼を持つ者達さえ。
雛の時は、大地を足で踏みしめている。
「…私のパートナー? この子供が?」
いかにも怪訝そうな表情で、僕を見る彼女。
その大きな身体は、間近で見ると更に迫力がある。
広げれば、家さえも覆ってしまいそうなほどの巨翼。
鋭い鉤爪に、深緑の鱗。うねる尻尾は、まるで大蛇だ。
この人が僕のパートナー、ワイバーンのヴァンさん。
「どうして私なんだ? 騎士候補の子なら、卵を渡してやった方が…」
ヴァンさんの疑問を受け、頭を掻きながら答える騎士団長。
彼女の言い分はもっともだけれど、そうはいかない理由があるのだ。
それを説明する前に、まず、僕の住む国を紹介しよう。
国の名前は『ライディング』。見て分かる通り、親魔物領だ。
そして世界でも数少ない、空・地・海の騎乗兵を揃えた軍国でもある。
僕は空の騎乗兵になるべく修練を積んでいる、騎士見習いの一人。
名前はソラ。我ながら、これほどぴったりな名前もないと思っている。
「卵がもうない? 幼い子達は? 全部宛がわれた…?」
僕達の国は軍国だけれど、勘違いだけはしないでほしい。
どこかの国と戦争をするために、剣の腕を磨いてるワケじゃない。
あくまで僕達は、弱者を守るための正義の剣。防衛が主たる任務。
自分達の国や弱国が危機に晒された時、初めてその力を振るうのだ。
それを為すために編成されたのが、空・地・海の騎乗兵団。
大空の自由を守る、飛竜を駆るワイバーンの騎士。
大地の恩恵を守る、人馬を駆るケンタウロスの騎士。
大海の慈愛を守る、人魚を駆るマーメイドの騎士。
各々の局地に特化した、まさに世界最強の騎士団なのだ。
「…それで、残り物の私に役が回ってきたのか…」
今はまだ未熟だけれど、いずれ僕もその一員となる。
そのためには、何よりもまずパートナーが必要だ。
普通なら、まずは彼女達の卵、あるいは赤ん坊を授かるところから始まる。
幼い頃より互いの絆を深め合うのが、騎士に一生課せられる任務だからだ。
とはいえ、彼女達はとても友好的だから、それを苦に感じることはないらしい。
それどころか、ほとんどの騎士がパートナーと愛し合い、結婚までしている。
生涯の友にして、生涯の伴侶。騎士とパートナーが抱く、互いの認識である。
だから、今回の措置にヴァンさんが首を捻るのも当然だ。
彼女はもう成体になって久しいようで、僕よりずーっと年上。
それでも綺麗なお姉さんに見えるのは、魔物の血が成せるワザだろう。
並んでみれば、歳の離れた義姉に見えなくもない…と思う。
ともかく、僕達が結ばれるのは異例のことなのだ。
理由はさっき団長が話した通り。卵も、幼い子もいないから。
人間が産まれる速度に比べると、彼女達の繁殖は非常に時間が掛かる。
すると、時折こうしてパートナー不足に陥ってしまうこともあるのだ。
「分かった。だが、決めるのは私じゃない」
でも、ここでひとつの疑問が湧く。
彼女は何故、誰ともパートナーにならず残っていたのか。
その理由までは、僕は団長の口から聞いていなかった。
ただ、薄々予測はついて…。
「ソラ…、だったか」
名前を呼ばれ、そちらへと顔を向ける。
見ると、ヴァンさんが鋭い視線をこちらに投げ掛けている。
怒っている…のではないと思う。ワイバーンは総じて目付きが鋭い。
その威風堂々とした出で立ちからも、高圧的に見られがちだけれど、
実際の彼女達は心穏やかで優しい性格だ。恐がったりしてはいけない。
「お前は、私を信頼してくれるのか…?」
少し不安を含んだようにも見える、彼女の問い掛け。
信頼は、騎士とパートナーにとって一番重要なものだ。
愛が与え合うものならば、信頼は委ね合うものだと団長が言っていた。
一人だけではこなせない厄介事を、二人で乗り越えてはじめて半人前。
パートナーの為すことが自分の読み通りになって、やっと一人前だと云う。
当然ながら、口で言うほど簡単じゃない。
団長を見ていれば分かる。信頼というものがどれほど凄いか。
以前、お祭りの時に、剣を用いた演舞を見たことがあるのだけれど、
そこでの団長とパートナーの動きは、まさに阿吽の呼吸だった。
お互いの身体を掠るようにして舞う恋人の剣に、まったく臆さない。
鼻先を刃が撫でようとも、二人とも、瞬き一つしないのだ。
剣の腕前もそうだけれど、やっぱりそれは、信頼なくして出来ない技。
彼女が今問うているのは、その意思と勇気が、果たして僕にあるか。
自らの背中に乗せていい人間か。どんな言葉であろうと受け入れてくれるか。
例え空に恐怖を抱いていようとも、自分と一緒ならば飛んでくれる相手か…。
僕は、その想いに応えるべく。
まっすぐ彼女を見据え、深く頷いた。
「………」
すると、予想外の反応。
ますます不安げな表情を浮かべるヴァンさん。
ばつが悪そうに、翼を閉じ、尻尾を脚に巻き付けている。
どうしてだろう。喜んでくれると思ったのに…。
「…いや、いい。私から話す」
何かを言い掛けた団長に対し、彼女が片手を上げ制する。
団長もまた、御自慢のアゴヒゲを弄りながら眉を顰めていた。
「ソラ」
呼ばれる。これで二度目。
不穏な空気を感じ、返事が小さくなってしまう僕。
ヴァンさんは、小さく息を吐いた後。
右の翼をゆっくりと広げ…もう片方の手で、ある場所を指差した。
「これが何を意味するか…、分かるか?」
そこには…僕の腕ほどもある、大きな傷跡があった。
翼の一膜全体に渡って刻まれた、痛々しい古傷。
それを見て、僕は一瞬で理解する。
彼女が今の今まで、パートナーがいなかった理由。
先程彼女や団長が浮かべた、不安げな表情の意味。
僅かに予想はしていたものの。
でも、その傷はあまりにも大きなもので…。
「…私は傷持ちだ。それでも命が預けられるか?」
傷持ち。ワイバーンの場合ならば、翼に傷を負った者。
彼女達は元より、魔物として凄まじい再生能力を持っている。
でも、かといって瞬きの間に治ってしまうほどデタラメじゃない。
人間よりも数十倍早いというだけで、傷跡が残ってしまうケースもある。
特に、幼い時に付いた傷は、魔力の量の関係上、痕として残り易い。
彼女もその一人なのだ。原因が何かは分からないけれど、恐らく事故で…。
「………」
鮮やかな緑色の皮膜に残る、白く、切り裂かれたかのような痕。
その迫力に圧倒されてしまった僕は、言葉を発することができなかった。
「…団長、やはり私では…」
そんな僕の反応を、ヴァンさんが過敏に受け止める。
言葉に、ハッと我に返った僕は、慌てて彼女の手を掴んだ。
驚き、こちらに振り返る彼女。
「ソラ…。いい、無理をするな。しばらく待てば、また卵が…」
握る手から、彼女の温かな体温が伝わってくる。
ゴツゴツとした竜種の肌。爪は鋭く、岩さえ容易く切り裂きそう。
でも、愛しい手なんだ。僕のパートナーの手。
それがこんなに怯えてしまっている。信頼することを恐がっている。
騎士と共に生きることが誇りであり、幸せである彼女達にとって、
そのことがどれほどの苦痛だろう。彼女はずっと、辛い思いをしてきたんだ。
僕が彼女を救いたい。救ってあげたい。
騎士として、唯一無二のパートナーとして…。
「………」
目は逸らさない。これも信頼の証となるから。
僕の想いが偽りでないと、彼女に伝えるためにも。
「…団長」
ふと、握る僕の手に、傷を負った手が重なる。
ヒゲを指に巻く団長へ、ヴァンさんは凛とした瞳を向け、告げた。
「私も、この子がいい…。この子を乗せて、空を飛んでみたい」
その一言に、笑顔がこぼれてしまう僕。
彼女も僕を見ながら、少し照れくさそうに笑った。
こうして僕は、ヴァンさんとパートナーの契りを結んだ。
辛いことも、幸せなことも、全てを共有していく存在。分身。
僕はまだまだ見習いの小僧で、彼女は傷を背負っているけれど。
でも、きっと大丈夫。補い合えば、出来ないことなんて無いんだ。
これからはふたりで頑張ろう。
ふたりで一緒に、皆を守るんだ。
よろしく、僕のワイバーン。
……………
………
…
…彼女とパートナーになってから、早一年。
僕は木刀を天に伸ばし、気合の一声と共に振り下ろした。
が、渾身の一撃も、彼女の頑強な尻尾に軽く受け止められてしまう。
じん…と腕に走る痺れ。力が抜けてしまい、武器がぽろりと地に落ちる。
「ソラ、今のは力任せ過ぎる。隙だらけだ」
尻尾で木刀を拾い上げ、助言と共にこちらへ渡してくれるヴァンさん。
その力任せを真正面から受け止められてしまっては、もう返す言葉がない。
僕はどっかりと地面に腰を付き、溜息を吐いた。
休憩か…と呟き、ヴァンさんも隣に並んで腰を下ろす。
「だが、大分筋は良くなってきた。良い傾向だな」
飴と鞭をうまく使い分けるパートナーの一言に、喜びを隠せない僕。
そんな僕の小さな身体を、彼女は片翼ですっぽりと包み込んだ。
曰く、これはワイバーンの愛情表現のひとつらしい。
彼女達は、自分の翼の中に大切なものを隠す習慣がある。
それは我が子であったり、思い出の品であったり、恋人であったり…。
特に夫婦仲の良い旦那さんは、両翼と尻尾ですっぽり包まれることも。
つまり、ヴァンさんは僕に好意を抱いてくれているのだ。
そのお返しとして、パートナーが出来ることは、より身を寄せること。
翼の中にすっぽりと隠れるほど、彼女達は強い安心感と満足感を得るためだ。
「…ソラ」
不意に、彼女が僕を呼ぶ。
顔を上げると、彼女はちらりとこちらを見た後、空へと視線を向けた。
釣られて、僕も視線の先を見る。太陽と白雲の中に移る、小さな影を…。
「誰かが飛んでいるな…」
左右に大きく翼を広げた影形は、紛れもなくワイバーン。
騎士の誰かが、練習がてらに飛んでいるんだろう。天気も良いし。
弧を描きながら、空を自由に飛び回るそれを見て。
ヴァンさんは、どことなくしんみりとした表情を浮かべていた。
「優雅に飛ぶものだ…」
…僕達はまだ、あんな風に飛ぶことを許されていない。
練習不足もあるけれど、そこまでの絆があると証明できていないから。
飛ぶこと自体は、そう難しいことじゃない。
問題は、万が一にでも事故を起こしたら大変だからだ。
誤ってワイバーンの背中から落ちたりでもしたら、目も当てられない。
強い信頼に結ばれた二人なら、落ちることがまずあり得ないし、
仮に落ちたとしても、すぐさまワイバーンが拾い上げることができる。
だから、それほどの信頼を築くまで、勝手に空を飛んではいけないのだ。
もちろん、ワイバーンだけならばよいのだけれど、そういう問題ではなく…。
「………」
僕だって、一日も早く彼女の背に乗って空を駆りたい想いはある。
彼女のためにも、自分のためにも。騎士として認められるために。
でも、一日にして成らないのが騎士道。
今は我慢を重ねて、じっくり鍛えるのが最良の道。
彼女もそれを分かっているから、愚痴をこぼしたりしない。
その日を夢見て、こうして僕の稽古に熱を入れてくれている。
辛い時でも、二人三脚。
それが信頼というものなのだ。
「…ん」
頭を下げ、こつん、と額を合わせる彼女。
甘えたい時の仕草。手を伸ばし、艶やかな髪を優しく撫でる。
「………」
ヴァンさんは瞳を閉じて、僕の手の感触を心から味わった。
大人っぽい彼女が時折見せる、幼子のような行動。可愛らしさ。
僕は彼女が自ら頭を上げるまで、何も言わず、ずっと撫で続けた。
数少ない、僕が彼女にしてあげられること。その分、心を込めて…。
「…なあ、ソラ」
ふと、目をうっすらと開き、彼女が僕を見つめる。
それに対し、僕は手を休めず、頬笑みと共に応える。
「本当に、私で良かったのか…?」
…思いがけない問い掛けに、止まってしまう手。
彼女は僕をより抱き寄せながら、言葉を続ける。
「私は傷持ちだ…。ちゃんと飛べるかどうかも、まだ分からない…」
迷い、恐れる心を、ぽつりぽつりと吐き出すヴァンさん。
初めて会った時のように、自らの汚点を抉りながら…。
さっき、ワイバーンだけならば自由に飛んでいいと言ったけれど。
彼女はそれでも、今日まで一度も空を飛んだことがないのだという。
たぶん、飛ぼうとしても飛べなかった場合を恐れているんだと思う。
あの大きな傷を抱えたまま、うまく風を掴めるかが心配なんだろう。
克服しようとしてこなかったワケじゃない。
僕とパートナーになった後、何度も飛ぼうとしている姿を見た。
ただ、隠れて練習していたから、口出しは一切していない。
それが信頼だと思ったから。パートナーが為すことを尊重するのが…。
「もし…、もし、私が飛べなかったら…」
…でも、本当はどうなんだろう…。
その選択は、間違いだったんじゃないだろうか。
もしかすれば、彼女は「助けてほしい」と訴えていたんじゃないか。
分からない…。どうして分からないのかも。
僕がまだ子供だから。彼女との絆が浅いから。鈍感だから。
言い訳はいくらでも思い付くけれど、どれも解決の種にならない。
どうすればいいんだろう。どうしてあげればいいんだろう。
「お前との一年…、共に過ごしてきた時間…」
僕が今、彼女にしてあげたいこと。
彼女が今、僕に望んでいることは…。
「全部……無駄…に……」
…ッ!
「んぅっ!?」
思い付くよりも先に、身体が動いた。
翼から抜け出て、落ちた肩に手を置き。
深く…唇を重ね合わせる。
「っ…♥ ふ…ぅ……っ♥」
震える飛竜。二枚の翼で、僕の身体を包みながら。
一秒、十秒、百秒…。
どれほどの時間が経っているかも分からない。
僕は息の保つ限り、彼女と唇を重ね続けた。
時折、僅かに動いては、その柔らかさを感じつつ。
どこか遠くの空から、竜の咆哮が聞こえた気がした…。
「…ぷはっ♥ はっ…、はぁ…♥」
唾液のアーチを残して、互いの唇が離れる。
息吐くヴァンさん。顔を真っ赤に染めながら。
「…ソラ…」
恥ずかしさを必死に抑え、笑顔を返す。
少しでも彼女が安心してくれるように。
僅かでも彼女が幸せを感じてくれるように。
「………」
潤んだ瞳が僕へと向けられる。
見たこともない彼女の表情。知らない彼女。
その艶帯びた顔に、ドキリと胸が弾んでしまう。
「ごめんなさい…。疑って、ごめんなさいっ…」
強く僕を抱き締めながら、謝る彼女。
何も悪いことをしていないのに。泣かなくていいのに。
ごめんね、きっと僕のせいだ。僕が泣かせてしまったんだ。
僕がちゃんと、ヴァンさんのことを分かってあげられなかったから。
ごめん、ごめんね。僕が謝るから。だから、ヴァンさんは謝らないで。
ヴァンさんが辛いと、僕も辛いから…。
「ソラ…」
声。パートナーを呼ぶ声。
目を閉じ…そっと唇を差し出す恋人。
僕も目を閉じて、震える心と共に。
もう一度…ふたりの絆を、交わし合った…。
「んっ…♥」
柔らかい…。それに、あたたかい。
プリンみたいだけれど、弾力もあって心地良い。
啄むように唇を動かす度に、一層感触が際立って…。
「ちゅっ…ん…♥ ソラ…♥ ちゅ…♥ ソラァ…♥」
彼女に触れている部分を中心に、茹だりゆく身体。
翼に包まれた肩から下は、まるでサウナみたいに蒸し暑い。
熱でぼんやりとし始める意識。
リアルなのは、キスと共に伝わってくる刺激だけ。
触れ合うたびに快感が駆け巡り、身体がぶるりと震えてしまう。
知らなかった…。
キスって、こんなに気持ち良いんだ…。
「ソラ…、もっと…っ♥ んむっ♥ ん…ちゅ、ちゅぅ…♥」
求める彼女に対し、僕もその身体に抱き付き、より互いの距離を縮める。
それに合わせて、小さな身体に押し当たる、彼女のとても大きな胸。
むっちり詰まったそれは、唇とは比較にもならない極上の柔らかさを伝えてくる。
「んんっ…♥ ちゅ…、ちゅっ…♥ ぺろ…♥ はっ…♥」
荒波のように襲い来る、キスとオッパイの刺激。
それに呼応し、ムクムクと膨らみ始めるオチンチン。
勃起に気付いた僕は、慌てて腰を引き、彼女にそれが触れないようにした。
理由は言うまでもなく、恥ずかしいから。バレたら、きっと僕は蒸発してしまう。
「あっ…」
が、腰を引いたせいで、唇までもが離れてしまった。
口を開けて、名残惜しそうな…寂しそうな表情を浮かべる彼女。
それを見た僕は、どうにか取り繕おうと、彼女の翼の中に潜り込んだ。
すると、目の前にデンッと現れる、たわわに実ったオッパイがふたつ。
覆う僅かな布地は、汗ばむ彼女の肌に吸い付き、より淫靡さを演出している。
僕は一目でその魅力の虜となり、ただ煩悩の赴くままにしゃぶりついた。
「きゃうんっ♥」
服を持ち上げる、ぷっくりと膨らんだそこ。桃色に染まり。
口に含み、舌を這わせて、汗ごと丹念に味わう。吸って、舐めて…。
「ひぁっ…♥ ソラ…、やらしい…っ♥ ひゃうぅっ♥」
濃厚なミルクの匂いを鼻腔に受けながら、愛撫を続ける。
エッチな本の、見様見真似の知識。拙いにもほどがある前戯。
それでも、彼女は淫らに喘ぎながら身をくねらせる。
乳首を軽く噛めば、驚いた子犬のような声を上げて、涎を垂らし。
乳房を激しく揉めば、息が詰まったかのように唸り、身を震わせて。
どれも今まで見たことのない、彼女のエッチな姿。
もっと見たい…。どうしてあげれば、もっとエッチに…。
「はっ…ん…♥ …え? あっ! やぁっ♥ そ、ソラァッ♥」
舌先を這わせながら、オッパイをなぞり…。
そのまま僕は、彼女の脇へと責め場所を移した。
「だ、ダメッ…♥ 運動したばかりだから…そこはっ…♥」
つるりと滑らかな脇から匂う、とても濃ゆい汗の香り。
ぴりぴりとした刺激を鼻に感じ、くらりと意識が霞みゆく。
あまりにも強烈なフェロモン。彼女の放つ雌の芳香。
たまらない。僕は飢えた獣のように、彼女の脇をガブリと咥え込んだ。
口の中に流れ込み、鼻から抜ける匂い。麻痺する脳。枷が外れる欲情。
恥ずかしがる彼女を横目に、僕は夢中になって脇の味を愉しんだ。
ちゅうちゅうと、唾液と共に汗を飲む音を、翼の中に響かせながら…。
「ひぅぅっ♥ へ…変態ッ♥ ソラの変態…ッ♥ きゃひぃっ♥」
変態でいい。舐めているだけで、こんなに気持ち良くなれるのなら。
僕は彼女の脇を唾液でドロドロにし、次なる目標へと向かった。
脇腹を抜け、おへそに到達。窪みに舌を捻じ込んで、彼女の反応を探りつつ。
寄り道もそこそこに、そのまま下腹部を這って、どんどん下へと移動していき…。
「ゃ…♥」
が、しかし。
そこに到着する前に、脚を閉じられてしまった。
困った。これじゃあ舌の行き場所が無くなってしまう。
悩んだ僕は…とりあえず、下着から脱がしてしまおうと考えた。
ちょうど足が閉じているから、脱がすことはそう難しくないはずだ。
「あっ…♥ ソラ…、ダメ…♥」
嘘だ。本当にダメなら、もっと抵抗している。
彼女の本心を読みながら、僕は下着をするすると脱がしていった。
局部を離れると共に、クロッチにニチャリと粘つく透明の糸。
愛液だ。かなりビチャビチャだけれど、こんなに漏れるものなんだろうか。
エッチな本でも、もうちょっと控えめだったような気がする…。
「っ…♥」
爪先からパンツを抜き、ひとまずポケットに入れる。
さて、後は脚を開いてもらうだけなのだけれど…。
「…ソラ…♥」
と、どうするか考えている内に。
彼女は自分から、大股に足を開いてくれた。
どうやら、彼女ももう待ち切れないらしい。
初めて見るそこは、淡いピンク色で、ぐちゃぐちゃに濡れている。
お豆はぷっくりと膨らんで、小さなサクランボみたいだ。
パンツを脱がしたことが、彼女の欲を刺激したのだろうか。
羞恥から一転、ヴァンさんはとてもエッチな女性へと早変わりした。
「ソラも…脱いで…♥」
僕も裸になるようにねだる、盛ったワイバーン。
頷き、僕はなるべくオチンチンを刺激しないよう、慎重に服を脱いだ。
ズボンを下ろすと、痛いくらいに腫れ上がった僕のモノが顔を出す。
自らの翼の中を覗き込み、僕の雄に心奪われるヴァンさん。蕩けた瞳。
初めて他人に…それも好きな人に見つめられて、僕のオチンチンは、
ますます膨らみと熱さを増して、今にも達しそうになっていた…。
「ん…♥」
僕を抱いたまま、ヴァンさんがころんと寝転がる。
上が僕、下が彼女。飛龍に覆い被さる騎士。
僕は彼女と顔を合わせ…たかったけれど。
いかんせん、身長が足りない。胸の高さまでしか届かない。
見下ろす彼女に、僕も顔を上げて、視線を交差させながら。
腰を動かし…先端を、入口へと押し当てた。
「あっ♥」
後は、少し腰を前に押し出すだけ。
奥まで一気に、オチンチンを挿れればいいだけ。
そうすることで、初めて僕達はひとつになる…。
「ソラ…♥」
…が。
「………えっ…?」
呆気に取られた彼女の目の前で。
僕は…身をがくがくと震わせて、射精していた…。
「そ…、ソラ…♥」
一瞬の出来事だった…。
息吐く暇もない、ほんの僅かな間の出来事。
オチンチンを押し当てた瞬間、彼女の襞が吸い付いてきたのだ。
軽く触れているだけなのに、それは僕に眩いほどの快感を与えてきて。
逃げる暇もなく、我慢もできず…出してしまった。大量の精液を…。
「んっ…♥ 熱い…♥」
二度、三度と大きな痙攣を繰り返すオチンチン。
その度に放たれる精子によって、白濁に染まりゆくすべすべのお腹。
僕は歯を食いしばり、なんとか射精を止めようとするものの、
一度放たれてしまったそれは、決壊した水道橋のように止まらない。
「…いっぱい出たな…♥」
肩で息を吐く僕へ、ヴァンさんが妖しく囁く。
その一言に、崩れ落ちていくちっぽけなプライド。
隙間を埋めるようにして入ってくる、身を焦がす羞恥心。
耐え切れず…僕は泣いてしまった。
頬を伝って、ぽろぽろとこぼれ落ちていく涙。
彼女の前では、情けない自分を見せたくなかったのに。
パートナーとして恋人を支える、勇敢な騎士でありたかったのに…。
「どうした、泣くな…♥ まだ終わっていないだろう?」
そんな弱い僕を、彼女は胸の中に優しく抱き留める。
腰に絡まる、強靭な尻尾と脚。僕のモノを、再びその場所へと誘って…。
「ほら…♥ お前が私を、乗りこなしてくれ…♥」
くちゅりと、先端でキス。
「ふぁっ…ぁぁぁぁっ♥♥♥」
強く身を抱き寄せる、彼女の尻尾と脚。
それに合わせ、オチンチンが一気に膣内へと呑み込まれる。
瞬間、意識が飛びそうな快感に、大空へと嬌声を上げるふたり。
全身を大きく震わせて、互いがもたらす限りない愛情に酔い痴れる。
弾ける火花。焼き切れる神経。それでも快感の津波は止まらない。
「っ…ぁ…♥ そ…ソラ、うごいてっ…♥」
頭に響く言葉に従い、僕は無我夢中で腰を振るった。
奏でられる卑猥な音々。僕の身体から、彼女の身体から。
「きゃうっ♥ やっ♥ あんっ♥ きもちっ…♥ はっ♥ んんっ…♥」
大きな彼女の淫らな肢体を、小さな僕が犯し尽くす。
蠢く彼女の膣は、僕のオチンチンをキュウキュウ締め上げてくる。
特に入口付近の締まりが強烈で、愛液を根こそぎ搾り取られているみたいだ。
この世のものとは思えない刺激に、溺れ、浸り、貪ることを止められない僕。
果てしなく膨らんでいく欲望。より深く、より激しく、より強く…。
「んくっ…♥ ソラの…オチンチン…ッ♥ コリコリって…硬くて熱いぃ…♥ きゃんっ♥」
分かる…。彼女が僕を信頼してくれているのが。
身を委ね、それでいて強い幸せと快楽を感じているのが。
これが絆なんだ。ひとつになるっていうことなんだ。
こうして肌を重ねることで、僕にもその意味が理解できた。
大切なパートナーが、愛を通じてそれを教えてくれた。
ヴァンさん…。
「ひぅぅっ♥ そ、そこ…突いちゃっ…♥ あっ♥ あぁっ♥ やぁぁっ♥」
…でも、まだ。まだ足りない。
もっと分かり合いたい。もっと、彼女を感じたい…。
「そこばかりっ…♥ きゃうんっ♥ ダメェッ♥ イクッ…♥ イッちゃうぅっ♥」
もっと…ひとつに…。
「やっ♥ はっ♥ ソラッ♥ イクッ♥ イッてっ♥ ソラもイッてっ♥ 一緒にっ…♥」
もっと………。
「あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あ…っ♥」
…ッ!
「ああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜っっっ♥♥♥♥♥♥♥」
……………。
…ドプドプと音立つかのように、尿道を精液の塊が流れていく…。
吸い取られる精。子種を呑む子宮。非常に貪欲に、僕のモノを搾り取る…。
「ふぁっ…ぁ…♥ 出てる…♥ お腹に…ソラの……♥」
結合部を見つめながら、愛おしそうに呟く魔物。
その表情は、サキュバスと何ら変わりない、情欲に塗れた…。
「あっ…♥」
射精に合わせ、がくりと腰が抜け落ちる僕。
彼女の身体に身を預け、深く息吐き呼吸を整える。
…終わってしまった。でも、幸せな時間だった。
する前と比べて、彼女の存在をとても近くに感じる。
何を望んでいるのか。何をしようとしているのか。
まだうっすらとだけれど、なんとなく察せられる。
「…ソラ…♥」
だから…。
「次は、私が上だな…♥」
こうなるのも、なんとなく分かっていた…。
だけど、いいんだ。僕も続きを望んでいたから。
今度は僕が委ねる番。彼女を心から信頼するべく。
これが終わったら、また交換。終わったら、また。
「まだカチカチだ…♥ んんっ…♥」
ずっと…ずっとひとつになるんだ。
騎士と飛竜は、ずっと…。
「はっ♥ んぅっ♥ ソラ…、もっと注いでくれ…♥ お前の精を…♥」
僕達は…。
「お前の子種を…♥ 愛の証を…♥ ふたりの絆を…♥」
ずっと………。
「ソラ…♥」
……………
………
…
それから五年後。
僕達は団長に連れられて、とある高原にいた。
ここは乱気流のひどいところで、鳥さえ避けて通る空だ。
その風は地上にまで届き、団長のヒゲがすごいことになっている。
さておき、ここはワイバーンの騎士にとって試験場でもある。
ここで飛竜を上手く乗りこなしてこそ、一人前と見なされるのだ。
でも、一歩間違えれば、乗り手だけでなく飛竜まで暴風に揉まれる。
まさに命懸けだ。昔の僕なら、聞いただけで震え上がっていただろう。
でも、今の僕は違う。いいや、僕達は。
パートナーが一緒なら、恐れるものなんて何もない。
こんな風どころか、雷鳴轟く大嵐の中だって飛んでみせる。
飛べるさ、彼女なら。僕がその背に乗っていれば。
僕はちらりと、小さな騎士を背に跨がせた彼女を見た。
交差する視線。ウインクをすると、彼女も可愛く返してくれた。
その右翼には大きな傷跡。僕達を結ばせてくれた大切な印。
これが僕達の記章だ。傷痕の竜騎士なんて、格好良いじゃないか。
さあ、大空へ飛び立とう。
僕の号令と共に、飛龍は駆け、大地を蹴った。
青い空に広がる、ふたつの大きな翼。
二匹の雛が、巣を飛び立った瞬間だった…。
雛の時は、大地を足で踏みしめている。
「…私のパートナー? この子供が?」
いかにも怪訝そうな表情で、僕を見る彼女。
その大きな身体は、間近で見ると更に迫力がある。
広げれば、家さえも覆ってしまいそうなほどの巨翼。
鋭い鉤爪に、深緑の鱗。うねる尻尾は、まるで大蛇だ。
この人が僕のパートナー、ワイバーンのヴァンさん。
「どうして私なんだ? 騎士候補の子なら、卵を渡してやった方が…」
ヴァンさんの疑問を受け、頭を掻きながら答える騎士団長。
彼女の言い分はもっともだけれど、そうはいかない理由があるのだ。
それを説明する前に、まず、僕の住む国を紹介しよう。
国の名前は『ライディング』。見て分かる通り、親魔物領だ。
そして世界でも数少ない、空・地・海の騎乗兵を揃えた軍国でもある。
僕は空の騎乗兵になるべく修練を積んでいる、騎士見習いの一人。
名前はソラ。我ながら、これほどぴったりな名前もないと思っている。
「卵がもうない? 幼い子達は? 全部宛がわれた…?」
僕達の国は軍国だけれど、勘違いだけはしないでほしい。
どこかの国と戦争をするために、剣の腕を磨いてるワケじゃない。
あくまで僕達は、弱者を守るための正義の剣。防衛が主たる任務。
自分達の国や弱国が危機に晒された時、初めてその力を振るうのだ。
それを為すために編成されたのが、空・地・海の騎乗兵団。
大空の自由を守る、飛竜を駆るワイバーンの騎士。
大地の恩恵を守る、人馬を駆るケンタウロスの騎士。
大海の慈愛を守る、人魚を駆るマーメイドの騎士。
各々の局地に特化した、まさに世界最強の騎士団なのだ。
「…それで、残り物の私に役が回ってきたのか…」
今はまだ未熟だけれど、いずれ僕もその一員となる。
そのためには、何よりもまずパートナーが必要だ。
普通なら、まずは彼女達の卵、あるいは赤ん坊を授かるところから始まる。
幼い頃より互いの絆を深め合うのが、騎士に一生課せられる任務だからだ。
とはいえ、彼女達はとても友好的だから、それを苦に感じることはないらしい。
それどころか、ほとんどの騎士がパートナーと愛し合い、結婚までしている。
生涯の友にして、生涯の伴侶。騎士とパートナーが抱く、互いの認識である。
だから、今回の措置にヴァンさんが首を捻るのも当然だ。
彼女はもう成体になって久しいようで、僕よりずーっと年上。
それでも綺麗なお姉さんに見えるのは、魔物の血が成せるワザだろう。
並んでみれば、歳の離れた義姉に見えなくもない…と思う。
ともかく、僕達が結ばれるのは異例のことなのだ。
理由はさっき団長が話した通り。卵も、幼い子もいないから。
人間が産まれる速度に比べると、彼女達の繁殖は非常に時間が掛かる。
すると、時折こうしてパートナー不足に陥ってしまうこともあるのだ。
「分かった。だが、決めるのは私じゃない」
でも、ここでひとつの疑問が湧く。
彼女は何故、誰ともパートナーにならず残っていたのか。
その理由までは、僕は団長の口から聞いていなかった。
ただ、薄々予測はついて…。
「ソラ…、だったか」
名前を呼ばれ、そちらへと顔を向ける。
見ると、ヴァンさんが鋭い視線をこちらに投げ掛けている。
怒っている…のではないと思う。ワイバーンは総じて目付きが鋭い。
その威風堂々とした出で立ちからも、高圧的に見られがちだけれど、
実際の彼女達は心穏やかで優しい性格だ。恐がったりしてはいけない。
「お前は、私を信頼してくれるのか…?」
少し不安を含んだようにも見える、彼女の問い掛け。
信頼は、騎士とパートナーにとって一番重要なものだ。
愛が与え合うものならば、信頼は委ね合うものだと団長が言っていた。
一人だけではこなせない厄介事を、二人で乗り越えてはじめて半人前。
パートナーの為すことが自分の読み通りになって、やっと一人前だと云う。
当然ながら、口で言うほど簡単じゃない。
団長を見ていれば分かる。信頼というものがどれほど凄いか。
以前、お祭りの時に、剣を用いた演舞を見たことがあるのだけれど、
そこでの団長とパートナーの動きは、まさに阿吽の呼吸だった。
お互いの身体を掠るようにして舞う恋人の剣に、まったく臆さない。
鼻先を刃が撫でようとも、二人とも、瞬き一つしないのだ。
剣の腕前もそうだけれど、やっぱりそれは、信頼なくして出来ない技。
彼女が今問うているのは、その意思と勇気が、果たして僕にあるか。
自らの背中に乗せていい人間か。どんな言葉であろうと受け入れてくれるか。
例え空に恐怖を抱いていようとも、自分と一緒ならば飛んでくれる相手か…。
僕は、その想いに応えるべく。
まっすぐ彼女を見据え、深く頷いた。
「………」
すると、予想外の反応。
ますます不安げな表情を浮かべるヴァンさん。
ばつが悪そうに、翼を閉じ、尻尾を脚に巻き付けている。
どうしてだろう。喜んでくれると思ったのに…。
「…いや、いい。私から話す」
何かを言い掛けた団長に対し、彼女が片手を上げ制する。
団長もまた、御自慢のアゴヒゲを弄りながら眉を顰めていた。
「ソラ」
呼ばれる。これで二度目。
不穏な空気を感じ、返事が小さくなってしまう僕。
ヴァンさんは、小さく息を吐いた後。
右の翼をゆっくりと広げ…もう片方の手で、ある場所を指差した。
「これが何を意味するか…、分かるか?」
そこには…僕の腕ほどもある、大きな傷跡があった。
翼の一膜全体に渡って刻まれた、痛々しい古傷。
それを見て、僕は一瞬で理解する。
彼女が今の今まで、パートナーがいなかった理由。
先程彼女や団長が浮かべた、不安げな表情の意味。
僅かに予想はしていたものの。
でも、その傷はあまりにも大きなもので…。
「…私は傷持ちだ。それでも命が預けられるか?」
傷持ち。ワイバーンの場合ならば、翼に傷を負った者。
彼女達は元より、魔物として凄まじい再生能力を持っている。
でも、かといって瞬きの間に治ってしまうほどデタラメじゃない。
人間よりも数十倍早いというだけで、傷跡が残ってしまうケースもある。
特に、幼い時に付いた傷は、魔力の量の関係上、痕として残り易い。
彼女もその一人なのだ。原因が何かは分からないけれど、恐らく事故で…。
「………」
鮮やかな緑色の皮膜に残る、白く、切り裂かれたかのような痕。
その迫力に圧倒されてしまった僕は、言葉を発することができなかった。
「…団長、やはり私では…」
そんな僕の反応を、ヴァンさんが過敏に受け止める。
言葉に、ハッと我に返った僕は、慌てて彼女の手を掴んだ。
驚き、こちらに振り返る彼女。
「ソラ…。いい、無理をするな。しばらく待てば、また卵が…」
握る手から、彼女の温かな体温が伝わってくる。
ゴツゴツとした竜種の肌。爪は鋭く、岩さえ容易く切り裂きそう。
でも、愛しい手なんだ。僕のパートナーの手。
それがこんなに怯えてしまっている。信頼することを恐がっている。
騎士と共に生きることが誇りであり、幸せである彼女達にとって、
そのことがどれほどの苦痛だろう。彼女はずっと、辛い思いをしてきたんだ。
僕が彼女を救いたい。救ってあげたい。
騎士として、唯一無二のパートナーとして…。
「………」
目は逸らさない。これも信頼の証となるから。
僕の想いが偽りでないと、彼女に伝えるためにも。
「…団長」
ふと、握る僕の手に、傷を負った手が重なる。
ヒゲを指に巻く団長へ、ヴァンさんは凛とした瞳を向け、告げた。
「私も、この子がいい…。この子を乗せて、空を飛んでみたい」
その一言に、笑顔がこぼれてしまう僕。
彼女も僕を見ながら、少し照れくさそうに笑った。
こうして僕は、ヴァンさんとパートナーの契りを結んだ。
辛いことも、幸せなことも、全てを共有していく存在。分身。
僕はまだまだ見習いの小僧で、彼女は傷を背負っているけれど。
でも、きっと大丈夫。補い合えば、出来ないことなんて無いんだ。
これからはふたりで頑張ろう。
ふたりで一緒に、皆を守るんだ。
よろしく、僕のワイバーン。
……………
………
…
…彼女とパートナーになってから、早一年。
僕は木刀を天に伸ばし、気合の一声と共に振り下ろした。
が、渾身の一撃も、彼女の頑強な尻尾に軽く受け止められてしまう。
じん…と腕に走る痺れ。力が抜けてしまい、武器がぽろりと地に落ちる。
「ソラ、今のは力任せ過ぎる。隙だらけだ」
尻尾で木刀を拾い上げ、助言と共にこちらへ渡してくれるヴァンさん。
その力任せを真正面から受け止められてしまっては、もう返す言葉がない。
僕はどっかりと地面に腰を付き、溜息を吐いた。
休憩か…と呟き、ヴァンさんも隣に並んで腰を下ろす。
「だが、大分筋は良くなってきた。良い傾向だな」
飴と鞭をうまく使い分けるパートナーの一言に、喜びを隠せない僕。
そんな僕の小さな身体を、彼女は片翼ですっぽりと包み込んだ。
曰く、これはワイバーンの愛情表現のひとつらしい。
彼女達は、自分の翼の中に大切なものを隠す習慣がある。
それは我が子であったり、思い出の品であったり、恋人であったり…。
特に夫婦仲の良い旦那さんは、両翼と尻尾ですっぽり包まれることも。
つまり、ヴァンさんは僕に好意を抱いてくれているのだ。
そのお返しとして、パートナーが出来ることは、より身を寄せること。
翼の中にすっぽりと隠れるほど、彼女達は強い安心感と満足感を得るためだ。
「…ソラ」
不意に、彼女が僕を呼ぶ。
顔を上げると、彼女はちらりとこちらを見た後、空へと視線を向けた。
釣られて、僕も視線の先を見る。太陽と白雲の中に移る、小さな影を…。
「誰かが飛んでいるな…」
左右に大きく翼を広げた影形は、紛れもなくワイバーン。
騎士の誰かが、練習がてらに飛んでいるんだろう。天気も良いし。
弧を描きながら、空を自由に飛び回るそれを見て。
ヴァンさんは、どことなくしんみりとした表情を浮かべていた。
「優雅に飛ぶものだ…」
…僕達はまだ、あんな風に飛ぶことを許されていない。
練習不足もあるけれど、そこまでの絆があると証明できていないから。
飛ぶこと自体は、そう難しいことじゃない。
問題は、万が一にでも事故を起こしたら大変だからだ。
誤ってワイバーンの背中から落ちたりでもしたら、目も当てられない。
強い信頼に結ばれた二人なら、落ちることがまずあり得ないし、
仮に落ちたとしても、すぐさまワイバーンが拾い上げることができる。
だから、それほどの信頼を築くまで、勝手に空を飛んではいけないのだ。
もちろん、ワイバーンだけならばよいのだけれど、そういう問題ではなく…。
「………」
僕だって、一日も早く彼女の背に乗って空を駆りたい想いはある。
彼女のためにも、自分のためにも。騎士として認められるために。
でも、一日にして成らないのが騎士道。
今は我慢を重ねて、じっくり鍛えるのが最良の道。
彼女もそれを分かっているから、愚痴をこぼしたりしない。
その日を夢見て、こうして僕の稽古に熱を入れてくれている。
辛い時でも、二人三脚。
それが信頼というものなのだ。
「…ん」
頭を下げ、こつん、と額を合わせる彼女。
甘えたい時の仕草。手を伸ばし、艶やかな髪を優しく撫でる。
「………」
ヴァンさんは瞳を閉じて、僕の手の感触を心から味わった。
大人っぽい彼女が時折見せる、幼子のような行動。可愛らしさ。
僕は彼女が自ら頭を上げるまで、何も言わず、ずっと撫で続けた。
数少ない、僕が彼女にしてあげられること。その分、心を込めて…。
「…なあ、ソラ」
ふと、目をうっすらと開き、彼女が僕を見つめる。
それに対し、僕は手を休めず、頬笑みと共に応える。
「本当に、私で良かったのか…?」
…思いがけない問い掛けに、止まってしまう手。
彼女は僕をより抱き寄せながら、言葉を続ける。
「私は傷持ちだ…。ちゃんと飛べるかどうかも、まだ分からない…」
迷い、恐れる心を、ぽつりぽつりと吐き出すヴァンさん。
初めて会った時のように、自らの汚点を抉りながら…。
さっき、ワイバーンだけならば自由に飛んでいいと言ったけれど。
彼女はそれでも、今日まで一度も空を飛んだことがないのだという。
たぶん、飛ぼうとしても飛べなかった場合を恐れているんだと思う。
あの大きな傷を抱えたまま、うまく風を掴めるかが心配なんだろう。
克服しようとしてこなかったワケじゃない。
僕とパートナーになった後、何度も飛ぼうとしている姿を見た。
ただ、隠れて練習していたから、口出しは一切していない。
それが信頼だと思ったから。パートナーが為すことを尊重するのが…。
「もし…、もし、私が飛べなかったら…」
…でも、本当はどうなんだろう…。
その選択は、間違いだったんじゃないだろうか。
もしかすれば、彼女は「助けてほしい」と訴えていたんじゃないか。
分からない…。どうして分からないのかも。
僕がまだ子供だから。彼女との絆が浅いから。鈍感だから。
言い訳はいくらでも思い付くけれど、どれも解決の種にならない。
どうすればいいんだろう。どうしてあげればいいんだろう。
「お前との一年…、共に過ごしてきた時間…」
僕が今、彼女にしてあげたいこと。
彼女が今、僕に望んでいることは…。
「全部……無駄…に……」
…ッ!
「んぅっ!?」
思い付くよりも先に、身体が動いた。
翼から抜け出て、落ちた肩に手を置き。
深く…唇を重ね合わせる。
「っ…♥ ふ…ぅ……っ♥」
震える飛竜。二枚の翼で、僕の身体を包みながら。
一秒、十秒、百秒…。
どれほどの時間が経っているかも分からない。
僕は息の保つ限り、彼女と唇を重ね続けた。
時折、僅かに動いては、その柔らかさを感じつつ。
どこか遠くの空から、竜の咆哮が聞こえた気がした…。
「…ぷはっ♥ はっ…、はぁ…♥」
唾液のアーチを残して、互いの唇が離れる。
息吐くヴァンさん。顔を真っ赤に染めながら。
「…ソラ…」
恥ずかしさを必死に抑え、笑顔を返す。
少しでも彼女が安心してくれるように。
僅かでも彼女が幸せを感じてくれるように。
「………」
潤んだ瞳が僕へと向けられる。
見たこともない彼女の表情。知らない彼女。
その艶帯びた顔に、ドキリと胸が弾んでしまう。
「ごめんなさい…。疑って、ごめんなさいっ…」
強く僕を抱き締めながら、謝る彼女。
何も悪いことをしていないのに。泣かなくていいのに。
ごめんね、きっと僕のせいだ。僕が泣かせてしまったんだ。
僕がちゃんと、ヴァンさんのことを分かってあげられなかったから。
ごめん、ごめんね。僕が謝るから。だから、ヴァンさんは謝らないで。
ヴァンさんが辛いと、僕も辛いから…。
「ソラ…」
声。パートナーを呼ぶ声。
目を閉じ…そっと唇を差し出す恋人。
僕も目を閉じて、震える心と共に。
もう一度…ふたりの絆を、交わし合った…。
「んっ…♥」
柔らかい…。それに、あたたかい。
プリンみたいだけれど、弾力もあって心地良い。
啄むように唇を動かす度に、一層感触が際立って…。
「ちゅっ…ん…♥ ソラ…♥ ちゅ…♥ ソラァ…♥」
彼女に触れている部分を中心に、茹だりゆく身体。
翼に包まれた肩から下は、まるでサウナみたいに蒸し暑い。
熱でぼんやりとし始める意識。
リアルなのは、キスと共に伝わってくる刺激だけ。
触れ合うたびに快感が駆け巡り、身体がぶるりと震えてしまう。
知らなかった…。
キスって、こんなに気持ち良いんだ…。
「ソラ…、もっと…っ♥ んむっ♥ ん…ちゅ、ちゅぅ…♥」
求める彼女に対し、僕もその身体に抱き付き、より互いの距離を縮める。
それに合わせて、小さな身体に押し当たる、彼女のとても大きな胸。
むっちり詰まったそれは、唇とは比較にもならない極上の柔らかさを伝えてくる。
「んんっ…♥ ちゅ…、ちゅっ…♥ ぺろ…♥ はっ…♥」
荒波のように襲い来る、キスとオッパイの刺激。
それに呼応し、ムクムクと膨らみ始めるオチンチン。
勃起に気付いた僕は、慌てて腰を引き、彼女にそれが触れないようにした。
理由は言うまでもなく、恥ずかしいから。バレたら、きっと僕は蒸発してしまう。
「あっ…」
が、腰を引いたせいで、唇までもが離れてしまった。
口を開けて、名残惜しそうな…寂しそうな表情を浮かべる彼女。
それを見た僕は、どうにか取り繕おうと、彼女の翼の中に潜り込んだ。
すると、目の前にデンッと現れる、たわわに実ったオッパイがふたつ。
覆う僅かな布地は、汗ばむ彼女の肌に吸い付き、より淫靡さを演出している。
僕は一目でその魅力の虜となり、ただ煩悩の赴くままにしゃぶりついた。
「きゃうんっ♥」
服を持ち上げる、ぷっくりと膨らんだそこ。桃色に染まり。
口に含み、舌を這わせて、汗ごと丹念に味わう。吸って、舐めて…。
「ひぁっ…♥ ソラ…、やらしい…っ♥ ひゃうぅっ♥」
濃厚なミルクの匂いを鼻腔に受けながら、愛撫を続ける。
エッチな本の、見様見真似の知識。拙いにもほどがある前戯。
それでも、彼女は淫らに喘ぎながら身をくねらせる。
乳首を軽く噛めば、驚いた子犬のような声を上げて、涎を垂らし。
乳房を激しく揉めば、息が詰まったかのように唸り、身を震わせて。
どれも今まで見たことのない、彼女のエッチな姿。
もっと見たい…。どうしてあげれば、もっとエッチに…。
「はっ…ん…♥ …え? あっ! やぁっ♥ そ、ソラァッ♥」
舌先を這わせながら、オッパイをなぞり…。
そのまま僕は、彼女の脇へと責め場所を移した。
「だ、ダメッ…♥ 運動したばかりだから…そこはっ…♥」
つるりと滑らかな脇から匂う、とても濃ゆい汗の香り。
ぴりぴりとした刺激を鼻に感じ、くらりと意識が霞みゆく。
あまりにも強烈なフェロモン。彼女の放つ雌の芳香。
たまらない。僕は飢えた獣のように、彼女の脇をガブリと咥え込んだ。
口の中に流れ込み、鼻から抜ける匂い。麻痺する脳。枷が外れる欲情。
恥ずかしがる彼女を横目に、僕は夢中になって脇の味を愉しんだ。
ちゅうちゅうと、唾液と共に汗を飲む音を、翼の中に響かせながら…。
「ひぅぅっ♥ へ…変態ッ♥ ソラの変態…ッ♥ きゃひぃっ♥」
変態でいい。舐めているだけで、こんなに気持ち良くなれるのなら。
僕は彼女の脇を唾液でドロドロにし、次なる目標へと向かった。
脇腹を抜け、おへそに到達。窪みに舌を捻じ込んで、彼女の反応を探りつつ。
寄り道もそこそこに、そのまま下腹部を這って、どんどん下へと移動していき…。
「ゃ…♥」
が、しかし。
そこに到着する前に、脚を閉じられてしまった。
困った。これじゃあ舌の行き場所が無くなってしまう。
悩んだ僕は…とりあえず、下着から脱がしてしまおうと考えた。
ちょうど足が閉じているから、脱がすことはそう難しくないはずだ。
「あっ…♥ ソラ…、ダメ…♥」
嘘だ。本当にダメなら、もっと抵抗している。
彼女の本心を読みながら、僕は下着をするすると脱がしていった。
局部を離れると共に、クロッチにニチャリと粘つく透明の糸。
愛液だ。かなりビチャビチャだけれど、こんなに漏れるものなんだろうか。
エッチな本でも、もうちょっと控えめだったような気がする…。
「っ…♥」
爪先からパンツを抜き、ひとまずポケットに入れる。
さて、後は脚を開いてもらうだけなのだけれど…。
「…ソラ…♥」
と、どうするか考えている内に。
彼女は自分から、大股に足を開いてくれた。
どうやら、彼女ももう待ち切れないらしい。
初めて見るそこは、淡いピンク色で、ぐちゃぐちゃに濡れている。
お豆はぷっくりと膨らんで、小さなサクランボみたいだ。
パンツを脱がしたことが、彼女の欲を刺激したのだろうか。
羞恥から一転、ヴァンさんはとてもエッチな女性へと早変わりした。
「ソラも…脱いで…♥」
僕も裸になるようにねだる、盛ったワイバーン。
頷き、僕はなるべくオチンチンを刺激しないよう、慎重に服を脱いだ。
ズボンを下ろすと、痛いくらいに腫れ上がった僕のモノが顔を出す。
自らの翼の中を覗き込み、僕の雄に心奪われるヴァンさん。蕩けた瞳。
初めて他人に…それも好きな人に見つめられて、僕のオチンチンは、
ますます膨らみと熱さを増して、今にも達しそうになっていた…。
「ん…♥」
僕を抱いたまま、ヴァンさんがころんと寝転がる。
上が僕、下が彼女。飛龍に覆い被さる騎士。
僕は彼女と顔を合わせ…たかったけれど。
いかんせん、身長が足りない。胸の高さまでしか届かない。
見下ろす彼女に、僕も顔を上げて、視線を交差させながら。
腰を動かし…先端を、入口へと押し当てた。
「あっ♥」
後は、少し腰を前に押し出すだけ。
奥まで一気に、オチンチンを挿れればいいだけ。
そうすることで、初めて僕達はひとつになる…。
「ソラ…♥」
…が。
「………えっ…?」
呆気に取られた彼女の目の前で。
僕は…身をがくがくと震わせて、射精していた…。
「そ…、ソラ…♥」
一瞬の出来事だった…。
息吐く暇もない、ほんの僅かな間の出来事。
オチンチンを押し当てた瞬間、彼女の襞が吸い付いてきたのだ。
軽く触れているだけなのに、それは僕に眩いほどの快感を与えてきて。
逃げる暇もなく、我慢もできず…出してしまった。大量の精液を…。
「んっ…♥ 熱い…♥」
二度、三度と大きな痙攣を繰り返すオチンチン。
その度に放たれる精子によって、白濁に染まりゆくすべすべのお腹。
僕は歯を食いしばり、なんとか射精を止めようとするものの、
一度放たれてしまったそれは、決壊した水道橋のように止まらない。
「…いっぱい出たな…♥」
肩で息を吐く僕へ、ヴァンさんが妖しく囁く。
その一言に、崩れ落ちていくちっぽけなプライド。
隙間を埋めるようにして入ってくる、身を焦がす羞恥心。
耐え切れず…僕は泣いてしまった。
頬を伝って、ぽろぽろとこぼれ落ちていく涙。
彼女の前では、情けない自分を見せたくなかったのに。
パートナーとして恋人を支える、勇敢な騎士でありたかったのに…。
「どうした、泣くな…♥ まだ終わっていないだろう?」
そんな弱い僕を、彼女は胸の中に優しく抱き留める。
腰に絡まる、強靭な尻尾と脚。僕のモノを、再びその場所へと誘って…。
「ほら…♥ お前が私を、乗りこなしてくれ…♥」
くちゅりと、先端でキス。
「ふぁっ…ぁぁぁぁっ♥♥♥」
強く身を抱き寄せる、彼女の尻尾と脚。
それに合わせ、オチンチンが一気に膣内へと呑み込まれる。
瞬間、意識が飛びそうな快感に、大空へと嬌声を上げるふたり。
全身を大きく震わせて、互いがもたらす限りない愛情に酔い痴れる。
弾ける火花。焼き切れる神経。それでも快感の津波は止まらない。
「っ…ぁ…♥ そ…ソラ、うごいてっ…♥」
頭に響く言葉に従い、僕は無我夢中で腰を振るった。
奏でられる卑猥な音々。僕の身体から、彼女の身体から。
「きゃうっ♥ やっ♥ あんっ♥ きもちっ…♥ はっ♥ んんっ…♥」
大きな彼女の淫らな肢体を、小さな僕が犯し尽くす。
蠢く彼女の膣は、僕のオチンチンをキュウキュウ締め上げてくる。
特に入口付近の締まりが強烈で、愛液を根こそぎ搾り取られているみたいだ。
この世のものとは思えない刺激に、溺れ、浸り、貪ることを止められない僕。
果てしなく膨らんでいく欲望。より深く、より激しく、より強く…。
「んくっ…♥ ソラの…オチンチン…ッ♥ コリコリって…硬くて熱いぃ…♥ きゃんっ♥」
分かる…。彼女が僕を信頼してくれているのが。
身を委ね、それでいて強い幸せと快楽を感じているのが。
これが絆なんだ。ひとつになるっていうことなんだ。
こうして肌を重ねることで、僕にもその意味が理解できた。
大切なパートナーが、愛を通じてそれを教えてくれた。
ヴァンさん…。
「ひぅぅっ♥ そ、そこ…突いちゃっ…♥ あっ♥ あぁっ♥ やぁぁっ♥」
…でも、まだ。まだ足りない。
もっと分かり合いたい。もっと、彼女を感じたい…。
「そこばかりっ…♥ きゃうんっ♥ ダメェッ♥ イクッ…♥ イッちゃうぅっ♥」
もっと…ひとつに…。
「やっ♥ はっ♥ ソラッ♥ イクッ♥ イッてっ♥ ソラもイッてっ♥ 一緒にっ…♥」
もっと………。
「あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥ あ…っ♥」
…ッ!
「ああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜っっっ♥♥♥♥♥♥♥」
……………。
…ドプドプと音立つかのように、尿道を精液の塊が流れていく…。
吸い取られる精。子種を呑む子宮。非常に貪欲に、僕のモノを搾り取る…。
「ふぁっ…ぁ…♥ 出てる…♥ お腹に…ソラの……♥」
結合部を見つめながら、愛おしそうに呟く魔物。
その表情は、サキュバスと何ら変わりない、情欲に塗れた…。
「あっ…♥」
射精に合わせ、がくりと腰が抜け落ちる僕。
彼女の身体に身を預け、深く息吐き呼吸を整える。
…終わってしまった。でも、幸せな時間だった。
する前と比べて、彼女の存在をとても近くに感じる。
何を望んでいるのか。何をしようとしているのか。
まだうっすらとだけれど、なんとなく察せられる。
「…ソラ…♥」
だから…。
「次は、私が上だな…♥」
こうなるのも、なんとなく分かっていた…。
だけど、いいんだ。僕も続きを望んでいたから。
今度は僕が委ねる番。彼女を心から信頼するべく。
これが終わったら、また交換。終わったら、また。
「まだカチカチだ…♥ んんっ…♥」
ずっと…ずっとひとつになるんだ。
騎士と飛竜は、ずっと…。
「はっ♥ んぅっ♥ ソラ…、もっと注いでくれ…♥ お前の精を…♥」
僕達は…。
「お前の子種を…♥ 愛の証を…♥ ふたりの絆を…♥」
ずっと………。
「ソラ…♥」
……………
………
…
それから五年後。
僕達は団長に連れられて、とある高原にいた。
ここは乱気流のひどいところで、鳥さえ避けて通る空だ。
その風は地上にまで届き、団長のヒゲがすごいことになっている。
さておき、ここはワイバーンの騎士にとって試験場でもある。
ここで飛竜を上手く乗りこなしてこそ、一人前と見なされるのだ。
でも、一歩間違えれば、乗り手だけでなく飛竜まで暴風に揉まれる。
まさに命懸けだ。昔の僕なら、聞いただけで震え上がっていただろう。
でも、今の僕は違う。いいや、僕達は。
パートナーが一緒なら、恐れるものなんて何もない。
こんな風どころか、雷鳴轟く大嵐の中だって飛んでみせる。
飛べるさ、彼女なら。僕がその背に乗っていれば。
僕はちらりと、小さな騎士を背に跨がせた彼女を見た。
交差する視線。ウインクをすると、彼女も可愛く返してくれた。
その右翼には大きな傷跡。僕達を結ばせてくれた大切な印。
これが僕達の記章だ。傷痕の竜騎士なんて、格好良いじゃないか。
さあ、大空へ飛び立とう。
僕の号令と共に、飛龍は駆け、大地を蹴った。
青い空に広がる、ふたつの大きな翼。
二匹の雛が、巣を飛び立った瞬間だった…。
12/09/04 21:12更新 / コジコジ