双思相愛
遠い北の果てにある、霧隠れの森を御存知ですか?
森全体が、一年中霧に覆われている奇妙な場所です。
その森の中に、一軒のお屋敷が建っています。
なんでも、かの大魔術師、トオン卿の住まいだそうで、
今では彼の子孫達が、平穏麗らかに暮らしています。
魔界に近いため、お屋敷の周りには魔物がうようよいますが、
よほど住み心地がいいのか、彼らは移り住む気がないようです。
さて、そんな辺鄙な場所に住む一家についてですが。
チョビ髭を生やした主人と、平民出なものの気配りが利く夫人、
二人の間に儲けられた双子の兄弟。以上が、トオンの名を継ぐ者達です。
更に、爺やとお抱えの魔術師がいますので、この広いお屋敷は、
6人という少ない人数を抱えながら、森の中に佇んでいるワケです。
彼らを知るにあたってのエピソードは、数多くあります。
祖先が大魔術師でありながら、魔術をまったく使えない主人。
結婚する前まではサクランボが好物であったはずなのに、
今では毎日、食後のデザートにメロンを欠かさない婦人。
他にも多々ありますが、今回語るお話は、ひとつだけ。
双子の兄弟、アルとプルのお話です。
お兄さんがアル、弟がプル。どちらも見た目はそっくりです。
性格も似ていまして、ふたりとも、動植物をこよなく愛していました。
優しさに溢れていますが、子供っぽさもあり、ひそひそ話をしては、
お抱えの魔術師を庭先に呼んで、落とし穴に引っ掛けたりもしました。
違うところといえば、ほんのわずか。
アルはとても活発な子で、広い庭を駆け回るような子でした。
対してプルは、大人しい子で、花に水を遣るのが好きな子でした。
あとは髪型くらいです。プルの方が、僅かに長い程度の差です。
落とし穴の件でも分かるように、ふたりはとても仲良しです。
一緒に遊び、一緒に学び、一緒に眠り…。常に手繋ぎ、一緒に居ます。
夫婦は、仲の良い子供達を微笑ましく思いながら、見守っています。
ふたりを孫のように可愛がっている爺やも、気持ちは同じく。
お抱えの魔術師だけが、双子の遊び相手だけは御免被りたいと思いながら、
自室に引き篭もっては、遊びに誘う彼らの声に怯えているのでした。
…ある時の事です。
アルの発案で、今日も彼らは庭で遊んでいました。
魔術師が鬼となって、双子を追い掛ける…いわゆる、鬼ゴッコです。
いつものように、アルはプルの手を引いて、庭中を逃げ回りました。
追い掛ける魔術師は、ぜいぜいと息を切らせながら、ふたりを追い掛けます。
日頃の運動不足が祟っているせいで、魔術師の足は子供にすら追い付けません。
魔術を使って、足を速くしたり、双子の動きを止めることはできますが、
それだけはしたくないという変なプライドが、彼の胸中にありました。
逃げれば逃げるほど。追えば追うほど。
両者の差は、離れる一方です。
振り返り、豆粒ほどになった魔術師を見ながら。
アルは屋敷の裏手に回って、一時、彼から身を隠しました。
疲れて、休もうとしているのでしょうか。いいえ、違います。
物陰に潜んで、魔術師が前を通り過ぎようとした際に、驚かそうと考えたからです。
プルにその旨を伝えようと、アルが振り向いた…そのときです。
横切る景色に、ふと、違和感を覚えました。顔の動きを、ぴたりと止めるアル。
ゆっくりと戻していくと…彼の目は、あるものに釘付けになりました。
柵です。屋敷をぐるりと取り囲む、背の高い鉄柵。
それは野獣や魔物除けのもので、人間以外の生物が触れれば、
電流に似た衝撃が走り、追っ払うよう細工されたものでした。
そのことは双子も知っていたので、それ自体は珍しいものでもありません。
アルの心を射止めたのは、その柵の一部が、歪み曲がっていた点です。
猪でもぶつかったのでしょうか。隣の棒にくっつきそうなまでに変形しています。
そして、そこにできた隙間は、ちょうど子供が通れるくらいの幅です。
それを見つめるアルが、今、何を考えているのか…。
お分かりでしょう。彼は、柵の外に出たいと考えていました。
その思い自体は、彼が前々から抱いていたものです。
このお屋敷から外へ出ているのは、食料等を買いに行く爺やだけ。
主人も、夫人も、魔術師も、一歩も外に出ようとはしません。
魔物を恐れているのか、単なる出不精か、理由は分かりませんが、
両親に合わせて、彼らは一度も外に出たことがありませんでした。
出ようにも、出入り口の門は、爺やの持つ鍵で固く閉ざされています。
爺やに頼んでも、こればかりは頑なとして聞き入れてくれませんでした。
ですからこれは、アルにとって、千載一遇のチャンスと言えるでしょう。
アルは興奮した様子でプルの名を呼び、鉄柵の隙間を指差しました。
プルも、その光景に、目を丸くして驚きました。
弟の反応を見て、ますます気が逸るアル。もう止められません。
大人しい弟の手を引いて、彼は秘密の入口へと駆け寄っていきました。
隙間を前にして、アルは、念入りに鉄柵を調べます。
鉄柵には、やはり何かがぶつかったような跡が残っていました。
動物の毛や血が僅かに見受けられましたが、それを調べるのは後です。
彼は、穴の大きさが、自分の身体がくぐれる程度のものかを調べました。
そんな兄の後ろで、プルはその様子を、心配そうに見つめていました。
彼は兄と違い、外の世界に出たいとは思っていなかったので、
今からアルがしようとしていることが、たまらなく不安だったのです。
弟の気も知らず、兄は鉄柵の隙間を調べ終えました。
そして、何も告げず、手を入れ、頭を入れて…お尻が抜け、足が地に付き。
アルはいとも簡単に、向こう側の世界へとくぐり抜けることに成功しました。
喜ぶアル。はしゃいでしまいそうな声を抑えるのに精一杯。
ここで魔術師に見つかってしまっては、折角のチャンスが水の泡です。
彼は急いでこの場を離れるために、隙間に手を入れ、プルへ差し伸べました。
しかし…どうしたことでしょう。
いつもはすぐに握り返してくるプルが、手を引っ込め、不安げに見つめ返してきます。
アルは困惑しました。弟が自分の手を取らないのは、珍しいことだったからです。
ですが、すぐに兄は、弟は外の世界へ恐怖を抱いているのでは…と気付きました。
可愛い弟は、とても怖がりです。
自分が前に立たないと、彼は大抵のことができませんでした。
月の無い夜に、トイレへひとりで行くこともできませんし、
見たこともない虫には、まず自分が触れて見せる必要がありました。
しかし、アルはそれを、手間だの、億劫だのとは思いませんでした。
双子とはいえ、自分が兄だという自覚があったからです。
だからこそ、彼は弟の手を取り、常に前を歩くようにしてきました。
そうすれば弟も、恐がりながらも、ちゃんとついてきてくれるからです。
アルはプルの想いを悟り、頬を柵に押し付け、腕をめいっぱい伸ばしました。
そして、縮こまるプルの手を掴み、強く握って…優しく引き寄せました。
おいでよ、プル。そう声を掛けながら。
兄の言葉に、プルは、ハッとした表情を浮かべました。
引かれ、くぐる腕に合わせ、咄嗟に身体を屈めて、隙間に差し入れます。
アルと同じように、プルもするりと穴を抜けて、外の世界に降り立ちました。
弟の手を引きながら、周りを見渡すアル。
魔術師の姿は見えませんが、疲れ切った息遣いは聞こえてきます。
彼は急いで、弟と一緒に、霧包む森の中へ走っていきました。
自分が一番、心許せる相手と共に。
まだ見ぬ世界へ、期待に胸を弾ませながら…。
……………
………
…
…双子が見つかったのは、その日の夜のことです。
アルは泣きながら、ベッドの上で苦しそうに呻くプルに謝っていました。
すがるように。何度も、何度も。それはとても、見るに堪えないものでした。
彼らの身に、いったい何が起こったのでしょう。
双子を見つけたのは、魔術師でした。
お屋敷の外も、中も、くまなく探した魔術師でしたが、
どこにもふたりの姿を見つけることができませんでした。
最後には降参して、出てくるように大声で呼び掛けたのですが、
いつもなら悪戯な笑みと共に出てくるふたりが、返事さえありません。
さすがにおかしいと思い、生命探知の魔術を用いたところ、
ふたりの気配を、お屋敷から遠い場所に感じるではありませんか。
彼は、雇い主である主人にそのことを伝えるのも忘れ、慌てて外に出ました。
浮遊の魔術をもって柵を飛び越え、駿足の魔術をもって森を駆け抜け。
…そして、彼らがいる場所に着いたとき。
魔術師の目に飛び込んできたのは…おぞましい触手に犯される、プルの姿でした。
アルは、プルを襲う触手の根元を引っ掴み、弟を助けようとしています。
その兄の傍にも、触手が忍び寄り、今にも襲い掛かろうとしていました。
魔術師は、すぐにアルの元に駆け寄り、彼を抱き寄せました。
早口で詠唱を紡ぎ、触手達が苦手とする、眩しい光の魔術を放ちます。
強い光に照らされた触手は、驚きふためいて、プルを離しました。
粘液に塗れた身体が、どさりと、湿った地面に落ちます。
すぐさま魔術師は彼を抱き上げ、触手の森から逃げ出しました。
…至って、今。
プルは、外傷こそないものの、高熱にうなされていました。
魔術師の見解によると、大量の魔力を中てられたことが原因だそうです。
それがアルにはどういうことかは分かりませんでしたが、
少なくとも、自分のせいでプルがこうなってしまったことだけは分かりました。
自分が、あんなに危険な外の世界へ、プルを誘ってしまったせいで…。
痛ましい兄弟の姿に、母親は、共に涙を流すことしかできませんでした。
父親も、彼らを…また、魔術師を叱ろうとは思わず、各々に言葉を掛けました。
アルには、ずっと傍に居てあげなさい、と。もう外に出てはいけないよ、とも。
プルには、頑張るんだ、と。お兄ちゃんがいつまでも傍に居てくれる、とも。
魔術師には、お前のせいじゃない、と。これからも彼らと遊んでやってくれ、とも。
誰もが誰も、互いの優しさに、胸を締め付ける夜となりました。
……………
………
…
…それから3日後。
アルは眠い目をこすりながら、綺麗な布で、弟の額の汗を拭いました。
彼はここ3日、ほとんど眠っていません。食事すら満足に取っていません。
朝も、昼も、夜も。弟の手を握ったまま、片時も傍を離れずに。
それはまるで、プルの苦しみを分かち合うかのような献身さでした。
その甲斐あってか、プルは、少し落ち着いてきたように見えます。
呼吸も、まだ荒いとはいえ、浅く小さなものではありますし、
最初の頃と比べれば、だいぶ回復したと言えるのではないでしょうか。
むしろ、今ではアルの方が、余程辛そうな状態に思えます。
そんな兄の姿を…ぼやけた視界で見つめるプル。
そう、彼はつい数分前、やっと意識を取り戻したのです。
プルは、今の状況を、おぼろげながら理解しました。
森で触手に襲われたこと、兄が助けてようとしてくれたこと。
そして今、彼が看病してくれていることを、うっすらと。
優しい兄。大好きなアル。いつも守ってくれる。
自分の身を顧みずに。怖がりな自分のために。
いつも、いつまでも、手を握ってくれている…。
プルの胸が、ドクンと高鳴りました。
まだ魔力の毒気が残っているのでしょうか。
それとも、兄の辛そうな姿に驚いたのでしょうか。
はたまた、親に叱られるのではと、心配になって…。
いいえ。彼はこともあろうに、双子の兄に恋をしてしまったのです。
彼自身も、瞬間、それを自覚しました。
すぐにその疚しい考えを振り払おうとしましたが、
鼓動は治まるどころか、身を震わせるほど強くなっていきます。
落ち着いてきた呼吸は、再び乱れ。胸の熱を吐息に乗せて。
彼は愛する兄の前で、卑しくも、発情する身体を抑えられませんでした。
ふと、ここでプルは、ある違和感に気付きます。
男というものは、興奮するとズボンがきつく感じるものですが、
何故でしょう、きついことにはきついですが、お尻の方がきつく感じます。
彼は兄に気付かれないように、毛布の中で手を動かし、原因を探りました。
腰の付け根から、お尻に向かって、ゆっくりと指を這わせて…。
…ちょん、と。
何も無いはずの場所で、指先が何かに突っ掛かりました。
驚き、びくりと身を震わせるプル。
無理もありません。彼のお尻には、尻尾が生えていたのですから。
短く、太さも中指ほどしかない、とても小さな尻尾でしたが、
それはまさしく、魔物の象徴…悪魔の尻尾と同じものだったのです。
心底驚愕した彼ですが、それだけではありません。
彼自身は気付いていませんが、尻尾だけでなく、悪魔の羽も、角も生え、
耳もやや尖ってきて…何より彼の心は、淫らなものに浸されていました。
彼の身体は、触手の魔力に中てられたことで、魔物に変わっていたのです。
そして、一番のショックが…アソコです。
男性の最もたるシンボルが、どこをどう探しても見つかりません。
プルは混乱しました。自分の身体がどうなってしまったのか、
怖くて、怖くて…、兄に助けを求めたくて、仕方がありませんでした。
怯える心を必死に押さえ、見上げると。
兄の姿は、すぐ目の前にありました。顔は後ろを振り向いて。
プルの耳に、兄の声と、母親の声が聞こえてきます。
どうやら、心配で様子を見に来た母親と会話をしているようです。
母親の姿は見えないので、どうやら兄の向こう側…
恐らく、ドアの付近に立って、話をしているのでしょう。
プルは、ふたりの声にわずかな安心感を取り戻し、
一旦落ち着こうと、深く息を吸い込みました。
しかし、その行為は大きな間違いでした。
彼は目と鼻の先に、ズボンに隠れた、アルのアソコがあることに気付かず…。
僅かに香る彼の匂いを、魔物の身で、胸いっぱいに吸い込んでしまったのです。
瞬間。
彼は自分の股部に、焼けるような熱さを感じました。
反射的に手で押さえると、くちゅりと、指先を濡らす液体。
ズボンから染み出る、粘ついた液体。汗ではありません。
愛液…。知らない言葉が、脳裏を過ぎります。
しかし、それがエッチなものであることは、幼い彼にも分かりました。
兄を想うあまりに、そんなものが自分の身体から流れ出たことも。
魔物となったプルの本能が、彼の脳に未知の知識を刻みます。
顔を、耳まで真っ赤にしながら。
プルは…しかし、好奇心を抑えられず。
もう一度、彼の匂いを吸い込みました。
…エッチな匂い。
オナニーをしている時に、こんな匂いを嗅いだ覚えがあります。
オチンチンから出てくる、透明な液体…そう、確か、愛液という名前。
愛液の絡む、いやらしい音と共に。好い匂いではなかったはずの、それ。
それが今は、嗅ぎたくて、嗅ぎたくて、どうにもなりません。
プルは首を伸ばして、よりアルの股間に顔を近付け、匂いを嗅ぎました。
兄のオチンチンの匂いを嗅いでいるという事実に、プルの心は、
否応もなく乱れます。それは罪悪感から、背徳心から、悦楽から…。
狂う心は、次第に彼を暴走させていきます。
鼻先をペニスにぐりぐりと押し付けて、犬のように鼻を鳴らして。
濃い匂いが鼻孔を抜けるたびに、胸の内に湧く、欲望と充実感。
どちらも、どんどん大きく膨れ上がり。しかし、決して満たされず。
いつまでも潤うことのない胸の渇きに、プルは、切なく鳴きました。
アル…、アルお兄ちゃん…、と。求め、乞い、誘うように…。
当のアルはと言えば。
さすがにここまでされて、気が付かないはずがありません。
母親が帰ったと同時に、自分の股間へと顔を押し付けてきた弟に、
彼は心臓が口から飛び出そうなほど驚きました。びっくり箱を開けた時のように。
弟の意識が戻ったことに、アルはもちろん喜びの気持ちもありましたが、
それ以上に、愛する弟の珍行に、ワケが分からなくなっていました。
しかし、自分の名前を切なげに呼ぶ弟の姿に、彼は、
弟が苦しさのあまり、自分に何かを求めているのではと気付きました。
なのでアルは、股間に顔を埋めるアルを振り払おうとはせず、
彼が何を伝えたいのか、それを聞くまで我慢しようと考えました。
どこまでも弟想いな兄です。そんな彼の一面も、プルは好んだのでしょう。
さて、胸いっぱいに愛する人の匂いを沁み込ませたプルですが。
気付けば彼は、匂いを嗅ぐに飽き足らず、アルのペニスに舌を這わせ始めました。
ズボン越しではありますが、性を知らない兄にとって、その刺激は強烈です。
小さなペニスは、グイグイとズボンを押し上げ、たちまち大きくなりました。
うっとりとした顔で、美味しそうにペニスを舐めるプル。
とはいえ、プルはペニスを舐めることに強い抵抗がありました。
ペニスが汚いことくらい、彼は知っています。オシッコが出る場所なのですから。
いくら布越しとはいえ、とても舐めたくなるようなものではありません。
ですが、彼の心には、そんな気持ちを押し退ける思いがありました。
魔物の本能が、ペニスを舐めることは、相手を気持ちよくさせることと教えた時、
プルはそうしてでも、自分に尽くしてくれる優しい兄に、恩返しをしたいと思ったのです。
その気持ちがどれほど強いか。すでにもう、彼がアルのズボンを下ろして、
直接ペニスを咥えているのを見れば、プルの愛の大きさが分かるでしょう。
アルのオチンチンを、労わり癒すように、彼は艶めかしく舌を這わせました。
プルの丹念な奉仕を前に、アルは、止めるタイミングを見失っていました。
可愛い弟の舌による愛撫は、自分の手の何倍もの快感を伝えてきます。
それに、耳に届くプルの言葉。自分の名前。何度も、繰り返し、何度も…。
そこには何か、愛情以上の感情…分からないものが含まれているように思えます。
自分の分身でもある、弟の心を読めない…。それは彼にとって、初めての経験でした。
アルは、快感と混乱の渦に溺れる自分を感じながら。
今はただ、歯を喰いしばって、込み上げてくる射精感を堪えることしかできず…。
抵抗しないアル。それはプルにとって、都合の良い展開でしかありません。
カチカチに怒張する肉棒を、嗅いでは舐めて、吸って、口に含んで…。
売女を想わせるフェラチオ。兄を愛するあまり、より淫らに、ねちっこく。
溢れる愛液をゴクゴクと飲み込みながら、お返しとばかりに唾液を絡めて。
その度、気持ち良さそうな表情を浮かべる兄に、胸の内が温かくなりました。
そしてとうとう、限界が訪れます。
涙目になったアルは、弟の名前を呼んだかと思うと、
女の子のような声を上げながら、全身を震わせて射精しました。
口を離したプルの顔に、容赦無く精液が叩き付けられます。
ペニスとは比べ物にもならない、濃く、強く鼻を突く匂い。
しかし、魔物になったプルにとっては、これ以上にない甘美な香りでした。
腰が抜け、へなへなと尻餅をつくアル。
プルは自分の顔に指を這わせながら、指先に付いた精液を、
クリームを舐め取るかのようにペロリと舌で掬いました。
舌に感じる苦味も、今のプルには、これ以上にない甘さ。
拭ってはペロペロと舐めとり、恍惚とした表情を浮かべます。
そんな弟の痴態を、アルは、ぼぅっ…と見つめていました。
…見つめている内に…。
アルの欲望にも、黒い火種が降り注ぎました。
目の前にいる相手が、アルには、女性のように思えてきたのです。
それは錯覚なのか、元々プルを妹のように感じていたのかは分かりませんが、
いけないことだと想いながらも、アルはプルを犯したくて堪らなくなりました。
活動的なアルは、プルよりも欲望に忠実でした。
精液を味わうプルを押し倒し、その身いっぱいに抱き締めました。
兄の変貌に、驚くプル。しかし、すぐに受け入れ、抱き返しました。
ふたりの心を包むのは、果たして、どのような感情でしょうか。
…しばらくの抱擁の後。
ふたりは身体を離し、互いの気持ちを確認し合うように見つめ合います。
双子のふたりには…いえ、恋人同士のふたりには、それだけで充分なのです。
お互いに決心が付いていることを悟り、どちらからともなく唇を重ねました。
触れ合うだけのキスしか知らないアルですが、プルは違います。
エッチな知識に溢れたプルは、思い付くままに舌を挿入しました。
突然の侵入に、アルはびくりと身体を震わせましたが、抵抗はしません。
誰よりも優しいプルのすることです。きっとそれは、気持ちの良いことなのでしょう。
弟を心から信頼する彼の予想は、ずばり的中しました。
プルは短い舌を巧みに操って、アルの口内を蕩けさせていきます。
時折、舌先でちょんちょんと触れ合うのが、彼には堪りませんでした。
身を委ね…時折、真似をして返しながら、ふたりは初めてのキスを愉しみました。
口付けに夢中になる兄を、好ましく思いながら。
淫魔は片手間に衣服を脱ぎ、彼のペニスを手に取って、
その先端を、自分の濡れそぼった秘所へとあてがいました。
刺激に、口を離すアル。ふたりの舌を、唾液のアーチが繋ぎます。
アルは、セックスがどういうものかを詳しくは知りません。
愛する人と身体を重ね、エッチなことをする…という程度の認識です。
ですから、彼は今からプルがしようとしていることが分かりませんでした。
とはいえ、アルの弟に対する信頼は、先程話した通りです。
腰を前に出してほしいというプルのお願いを、彼は素直に実行しました。
…つぷり、と。ふたつの果実が弾けます。
結合部から、互いの愛液がとろりと流れ落ちました。
先端を包む襞が与えてくる、目も眩むような刺激。
たまらずアルは、それから逃れようと腰を突き出します。
しかし、無知ゆえの行動は、彼に更なる蜜を浴びせました。
アルのペニスは、たちまちプルの膣内の捕らわれてしまったのです。
ただ、それは諸刃の剣でもありました。
プルの膣内は、彼の意思で動いているワケではないのです。
ですので、自身の膣が、愛する兄のペニスを呑み込もうと蠢く際の、
全身に駆ける未知の刺激を、小さな身体で受け止める必要がありました。
それはプルにとって、男という自我を犯される、何よりもの恐怖です。
しかし同時に、女としての快楽に目覚める、何よりもの幸せでもあります。
プルは性の狭間で心を迷わせながら、兄の愛を一身に受け止めました。
対してアルは、女性の身体の魅力に心を奪われていました。
自分のオチンチンを包む、このふわふわとした感触はなんでしょう。
ほんのわずかに動いただけでも、痺れるような快感が流れてきます。
まさか、いつも一緒に居る弟の身体に、こんな秘密が隠されていたなんて…。
少しだけ、プルと今日の今日までセックスしてこなかったことを、アルは後悔しました。
兄はもう、完全に弟の虜でした。
外見こそそっくりですが、アルにはプルが、とても可愛い女の子に見えています。
そして同時に、大切な弟にも。彼もまた、性の狭間で悩んでいたのです。
しかし、身体は愚直です。
彼らの悩みなど無視するかのように、互いに腰を動かしました。
特にアルの動きは、種付けをしようとする雄のそれです。
彼はもう、プルの膣内に挿れただけで限界に近付いていたようです。
弟の華奢な腰を掴んで、愛液が飛び散るほど乱暴に動きました。
プルも、兄の動きに、射精の近さを直感します。
脚をアルの腰に絡めて、より強く身体を抱き締めます。
彼は乱暴なアルの動きの中に、恋人の愛を感じていました。
それによって、彼の男としての感情は影を潜め、
女としての、子を授かりたいという気持ちが湧いてきました。
だからこそでしょうか。プルが今抱き付いている格好は、
アルの子をどうしても授かりたいと言わんばかりのものです。
その想いは実り、アルは、彼女の深いところまでペニスを突き入れました。
伴い、グチュグチュと響く水音。パンッ、パンッと肉同士がぶつかり合う音。
まるで子供部屋に似つかわしくない、いやらしい音が木霊します。
しかし、ベッド上の行為は、少年と少女の初々しい体験に違いありません。
ふたりは、大人のような欲望をぶつけ合いながら、子供のような愛を分かち合いました。
そして、プルが一際大きな嬌声を上げた時。
とうとう、アルの我慢の限界が訪れます。
彼は何度も恋人の名前を呼びながら、一番奥へと子種を吐き出しました。
お尻をキュッと締め、少しでも奥にという想いを乗せて流れ込む精液は、
量も、濃さも、子供の…いえ、大人でさえありえないほどのものです。
それをチュゥチュゥと吸い取るプルの子宮は、火傷したかのように熱く。
彼女もまた、彼の絶頂に合わせて、身体を弓のように反らせました。
…アルの射精は、彼女の子宮を満たし、膣を満たし、溢れ出た滴が
シーツに数滴の染みを作ったところで、やっと止まりました。
しかし、彼は彼女の身体を離そうとしません。プルもです。
お互い抱き合ったまま、絶頂の余韻を噛み締めていました。
…そのまま、数分後。
気付けば、プルが何やら恥ずかしそうな表情を浮かべています。
彼女は、自分の膣内にある彼のモノが、また大きくなっているのを感じたのです。
ちらりとアルを見ると、彼は今まで彼女に見せたことのない、
助けを求めるような…乞うような瞳を、涙と共に浮かべていました。
その様子を見て、プルは少しだけ、抱き締める手足に力を込めました。
すると、アルも少しだけ、彼女に対し強めの抱擁を返してきました。
そこからは、また、お互いに腰を振り、喘ぎ声を響かせて…。
……………
………
…
…数日後。
庭先からは、楽しげな声と、苦しげな息遣いが聞こえてきます。
どうやらまた、彼らは鬼ゴッコをしているようです。
鬼は、もちろん魔術師です。今日もお疲れの様子です。
双子はというと、鬼を遠くに残して、屋敷の裏手に逃げ込みました。
それはちょうど、あの日と同じ、鉄柵が壊れていた位置です。
しかし、歪み曲がった鉄柵はもうありません。綺麗に修理されていました。
ですが、アルはそれを残念と思っていません。
彼の求めるものは、外の世界にではなく、すぐ隣にあるのです。
大人しくて、優しくて、自分の後ろをついてきてくれる弟です。
そしてそれは、プルも同じです。
勇敢で、優しくて、自分を引っぱってくれる兄。
それが彼にとって…また、彼女にとって、大切な存在なのです。
手を伸ばせば、握り合い、二度と離れないふたりの絆。
それが彼らにとって、何よりも大切で、育んでいきたいものなのです。
…壁を背に、魔術師から隠れるふたり。
前より少しだけ大胆になったプルは、ここで悪戯を思い付きました。
鬼の様子を窺う兄の手を取り、僅かに膨らんできた胸に、ぎゅっと押し付けたのです。
前より少しだけ甘えん坊になったアルは、その行為に、どきりとしました。
そのまま、鬼のことも忘れて…プルの胸を、優しく揉みしだきました。
霧隠れの森に佇むお屋敷。
そこに住む、ふたりの子供。
彼と彼は、双子の兄弟として。
彼と彼女は、愛し合う恋人として。
これからも、末永く幸せに暮らしていくことでしょう…。
森全体が、一年中霧に覆われている奇妙な場所です。
その森の中に、一軒のお屋敷が建っています。
なんでも、かの大魔術師、トオン卿の住まいだそうで、
今では彼の子孫達が、平穏麗らかに暮らしています。
魔界に近いため、お屋敷の周りには魔物がうようよいますが、
よほど住み心地がいいのか、彼らは移り住む気がないようです。
さて、そんな辺鄙な場所に住む一家についてですが。
チョビ髭を生やした主人と、平民出なものの気配りが利く夫人、
二人の間に儲けられた双子の兄弟。以上が、トオンの名を継ぐ者達です。
更に、爺やとお抱えの魔術師がいますので、この広いお屋敷は、
6人という少ない人数を抱えながら、森の中に佇んでいるワケです。
彼らを知るにあたってのエピソードは、数多くあります。
祖先が大魔術師でありながら、魔術をまったく使えない主人。
結婚する前まではサクランボが好物であったはずなのに、
今では毎日、食後のデザートにメロンを欠かさない婦人。
他にも多々ありますが、今回語るお話は、ひとつだけ。
双子の兄弟、アルとプルのお話です。
お兄さんがアル、弟がプル。どちらも見た目はそっくりです。
性格も似ていまして、ふたりとも、動植物をこよなく愛していました。
優しさに溢れていますが、子供っぽさもあり、ひそひそ話をしては、
お抱えの魔術師を庭先に呼んで、落とし穴に引っ掛けたりもしました。
違うところといえば、ほんのわずか。
アルはとても活発な子で、広い庭を駆け回るような子でした。
対してプルは、大人しい子で、花に水を遣るのが好きな子でした。
あとは髪型くらいです。プルの方が、僅かに長い程度の差です。
落とし穴の件でも分かるように、ふたりはとても仲良しです。
一緒に遊び、一緒に学び、一緒に眠り…。常に手繋ぎ、一緒に居ます。
夫婦は、仲の良い子供達を微笑ましく思いながら、見守っています。
ふたりを孫のように可愛がっている爺やも、気持ちは同じく。
お抱えの魔術師だけが、双子の遊び相手だけは御免被りたいと思いながら、
自室に引き篭もっては、遊びに誘う彼らの声に怯えているのでした。
…ある時の事です。
アルの発案で、今日も彼らは庭で遊んでいました。
魔術師が鬼となって、双子を追い掛ける…いわゆる、鬼ゴッコです。
いつものように、アルはプルの手を引いて、庭中を逃げ回りました。
追い掛ける魔術師は、ぜいぜいと息を切らせながら、ふたりを追い掛けます。
日頃の運動不足が祟っているせいで、魔術師の足は子供にすら追い付けません。
魔術を使って、足を速くしたり、双子の動きを止めることはできますが、
それだけはしたくないという変なプライドが、彼の胸中にありました。
逃げれば逃げるほど。追えば追うほど。
両者の差は、離れる一方です。
振り返り、豆粒ほどになった魔術師を見ながら。
アルは屋敷の裏手に回って、一時、彼から身を隠しました。
疲れて、休もうとしているのでしょうか。いいえ、違います。
物陰に潜んで、魔術師が前を通り過ぎようとした際に、驚かそうと考えたからです。
プルにその旨を伝えようと、アルが振り向いた…そのときです。
横切る景色に、ふと、違和感を覚えました。顔の動きを、ぴたりと止めるアル。
ゆっくりと戻していくと…彼の目は、あるものに釘付けになりました。
柵です。屋敷をぐるりと取り囲む、背の高い鉄柵。
それは野獣や魔物除けのもので、人間以外の生物が触れれば、
電流に似た衝撃が走り、追っ払うよう細工されたものでした。
そのことは双子も知っていたので、それ自体は珍しいものでもありません。
アルの心を射止めたのは、その柵の一部が、歪み曲がっていた点です。
猪でもぶつかったのでしょうか。隣の棒にくっつきそうなまでに変形しています。
そして、そこにできた隙間は、ちょうど子供が通れるくらいの幅です。
それを見つめるアルが、今、何を考えているのか…。
お分かりでしょう。彼は、柵の外に出たいと考えていました。
その思い自体は、彼が前々から抱いていたものです。
このお屋敷から外へ出ているのは、食料等を買いに行く爺やだけ。
主人も、夫人も、魔術師も、一歩も外に出ようとはしません。
魔物を恐れているのか、単なる出不精か、理由は分かりませんが、
両親に合わせて、彼らは一度も外に出たことがありませんでした。
出ようにも、出入り口の門は、爺やの持つ鍵で固く閉ざされています。
爺やに頼んでも、こればかりは頑なとして聞き入れてくれませんでした。
ですからこれは、アルにとって、千載一遇のチャンスと言えるでしょう。
アルは興奮した様子でプルの名を呼び、鉄柵の隙間を指差しました。
プルも、その光景に、目を丸くして驚きました。
弟の反応を見て、ますます気が逸るアル。もう止められません。
大人しい弟の手を引いて、彼は秘密の入口へと駆け寄っていきました。
隙間を前にして、アルは、念入りに鉄柵を調べます。
鉄柵には、やはり何かがぶつかったような跡が残っていました。
動物の毛や血が僅かに見受けられましたが、それを調べるのは後です。
彼は、穴の大きさが、自分の身体がくぐれる程度のものかを調べました。
そんな兄の後ろで、プルはその様子を、心配そうに見つめていました。
彼は兄と違い、外の世界に出たいとは思っていなかったので、
今からアルがしようとしていることが、たまらなく不安だったのです。
弟の気も知らず、兄は鉄柵の隙間を調べ終えました。
そして、何も告げず、手を入れ、頭を入れて…お尻が抜け、足が地に付き。
アルはいとも簡単に、向こう側の世界へとくぐり抜けることに成功しました。
喜ぶアル。はしゃいでしまいそうな声を抑えるのに精一杯。
ここで魔術師に見つかってしまっては、折角のチャンスが水の泡です。
彼は急いでこの場を離れるために、隙間に手を入れ、プルへ差し伸べました。
しかし…どうしたことでしょう。
いつもはすぐに握り返してくるプルが、手を引っ込め、不安げに見つめ返してきます。
アルは困惑しました。弟が自分の手を取らないのは、珍しいことだったからです。
ですが、すぐに兄は、弟は外の世界へ恐怖を抱いているのでは…と気付きました。
可愛い弟は、とても怖がりです。
自分が前に立たないと、彼は大抵のことができませんでした。
月の無い夜に、トイレへひとりで行くこともできませんし、
見たこともない虫には、まず自分が触れて見せる必要がありました。
しかし、アルはそれを、手間だの、億劫だのとは思いませんでした。
双子とはいえ、自分が兄だという自覚があったからです。
だからこそ、彼は弟の手を取り、常に前を歩くようにしてきました。
そうすれば弟も、恐がりながらも、ちゃんとついてきてくれるからです。
アルはプルの想いを悟り、頬を柵に押し付け、腕をめいっぱい伸ばしました。
そして、縮こまるプルの手を掴み、強く握って…優しく引き寄せました。
おいでよ、プル。そう声を掛けながら。
兄の言葉に、プルは、ハッとした表情を浮かべました。
引かれ、くぐる腕に合わせ、咄嗟に身体を屈めて、隙間に差し入れます。
アルと同じように、プルもするりと穴を抜けて、外の世界に降り立ちました。
弟の手を引きながら、周りを見渡すアル。
魔術師の姿は見えませんが、疲れ切った息遣いは聞こえてきます。
彼は急いで、弟と一緒に、霧包む森の中へ走っていきました。
自分が一番、心許せる相手と共に。
まだ見ぬ世界へ、期待に胸を弾ませながら…。
……………
………
…
…双子が見つかったのは、その日の夜のことです。
アルは泣きながら、ベッドの上で苦しそうに呻くプルに謝っていました。
すがるように。何度も、何度も。それはとても、見るに堪えないものでした。
彼らの身に、いったい何が起こったのでしょう。
双子を見つけたのは、魔術師でした。
お屋敷の外も、中も、くまなく探した魔術師でしたが、
どこにもふたりの姿を見つけることができませんでした。
最後には降参して、出てくるように大声で呼び掛けたのですが、
いつもなら悪戯な笑みと共に出てくるふたりが、返事さえありません。
さすがにおかしいと思い、生命探知の魔術を用いたところ、
ふたりの気配を、お屋敷から遠い場所に感じるではありませんか。
彼は、雇い主である主人にそのことを伝えるのも忘れ、慌てて外に出ました。
浮遊の魔術をもって柵を飛び越え、駿足の魔術をもって森を駆け抜け。
…そして、彼らがいる場所に着いたとき。
魔術師の目に飛び込んできたのは…おぞましい触手に犯される、プルの姿でした。
アルは、プルを襲う触手の根元を引っ掴み、弟を助けようとしています。
その兄の傍にも、触手が忍び寄り、今にも襲い掛かろうとしていました。
魔術師は、すぐにアルの元に駆け寄り、彼を抱き寄せました。
早口で詠唱を紡ぎ、触手達が苦手とする、眩しい光の魔術を放ちます。
強い光に照らされた触手は、驚きふためいて、プルを離しました。
粘液に塗れた身体が、どさりと、湿った地面に落ちます。
すぐさま魔術師は彼を抱き上げ、触手の森から逃げ出しました。
…至って、今。
プルは、外傷こそないものの、高熱にうなされていました。
魔術師の見解によると、大量の魔力を中てられたことが原因だそうです。
それがアルにはどういうことかは分かりませんでしたが、
少なくとも、自分のせいでプルがこうなってしまったことだけは分かりました。
自分が、あんなに危険な外の世界へ、プルを誘ってしまったせいで…。
痛ましい兄弟の姿に、母親は、共に涙を流すことしかできませんでした。
父親も、彼らを…また、魔術師を叱ろうとは思わず、各々に言葉を掛けました。
アルには、ずっと傍に居てあげなさい、と。もう外に出てはいけないよ、とも。
プルには、頑張るんだ、と。お兄ちゃんがいつまでも傍に居てくれる、とも。
魔術師には、お前のせいじゃない、と。これからも彼らと遊んでやってくれ、とも。
誰もが誰も、互いの優しさに、胸を締め付ける夜となりました。
……………
………
…
…それから3日後。
アルは眠い目をこすりながら、綺麗な布で、弟の額の汗を拭いました。
彼はここ3日、ほとんど眠っていません。食事すら満足に取っていません。
朝も、昼も、夜も。弟の手を握ったまま、片時も傍を離れずに。
それはまるで、プルの苦しみを分かち合うかのような献身さでした。
その甲斐あってか、プルは、少し落ち着いてきたように見えます。
呼吸も、まだ荒いとはいえ、浅く小さなものではありますし、
最初の頃と比べれば、だいぶ回復したと言えるのではないでしょうか。
むしろ、今ではアルの方が、余程辛そうな状態に思えます。
そんな兄の姿を…ぼやけた視界で見つめるプル。
そう、彼はつい数分前、やっと意識を取り戻したのです。
プルは、今の状況を、おぼろげながら理解しました。
森で触手に襲われたこと、兄が助けてようとしてくれたこと。
そして今、彼が看病してくれていることを、うっすらと。
優しい兄。大好きなアル。いつも守ってくれる。
自分の身を顧みずに。怖がりな自分のために。
いつも、いつまでも、手を握ってくれている…。
プルの胸が、ドクンと高鳴りました。
まだ魔力の毒気が残っているのでしょうか。
それとも、兄の辛そうな姿に驚いたのでしょうか。
はたまた、親に叱られるのではと、心配になって…。
いいえ。彼はこともあろうに、双子の兄に恋をしてしまったのです。
彼自身も、瞬間、それを自覚しました。
すぐにその疚しい考えを振り払おうとしましたが、
鼓動は治まるどころか、身を震わせるほど強くなっていきます。
落ち着いてきた呼吸は、再び乱れ。胸の熱を吐息に乗せて。
彼は愛する兄の前で、卑しくも、発情する身体を抑えられませんでした。
ふと、ここでプルは、ある違和感に気付きます。
男というものは、興奮するとズボンがきつく感じるものですが、
何故でしょう、きついことにはきついですが、お尻の方がきつく感じます。
彼は兄に気付かれないように、毛布の中で手を動かし、原因を探りました。
腰の付け根から、お尻に向かって、ゆっくりと指を這わせて…。
…ちょん、と。
何も無いはずの場所で、指先が何かに突っ掛かりました。
驚き、びくりと身を震わせるプル。
無理もありません。彼のお尻には、尻尾が生えていたのですから。
短く、太さも中指ほどしかない、とても小さな尻尾でしたが、
それはまさしく、魔物の象徴…悪魔の尻尾と同じものだったのです。
心底驚愕した彼ですが、それだけではありません。
彼自身は気付いていませんが、尻尾だけでなく、悪魔の羽も、角も生え、
耳もやや尖ってきて…何より彼の心は、淫らなものに浸されていました。
彼の身体は、触手の魔力に中てられたことで、魔物に変わっていたのです。
そして、一番のショックが…アソコです。
男性の最もたるシンボルが、どこをどう探しても見つかりません。
プルは混乱しました。自分の身体がどうなってしまったのか、
怖くて、怖くて…、兄に助けを求めたくて、仕方がありませんでした。
怯える心を必死に押さえ、見上げると。
兄の姿は、すぐ目の前にありました。顔は後ろを振り向いて。
プルの耳に、兄の声と、母親の声が聞こえてきます。
どうやら、心配で様子を見に来た母親と会話をしているようです。
母親の姿は見えないので、どうやら兄の向こう側…
恐らく、ドアの付近に立って、話をしているのでしょう。
プルは、ふたりの声にわずかな安心感を取り戻し、
一旦落ち着こうと、深く息を吸い込みました。
しかし、その行為は大きな間違いでした。
彼は目と鼻の先に、ズボンに隠れた、アルのアソコがあることに気付かず…。
僅かに香る彼の匂いを、魔物の身で、胸いっぱいに吸い込んでしまったのです。
瞬間。
彼は自分の股部に、焼けるような熱さを感じました。
反射的に手で押さえると、くちゅりと、指先を濡らす液体。
ズボンから染み出る、粘ついた液体。汗ではありません。
愛液…。知らない言葉が、脳裏を過ぎります。
しかし、それがエッチなものであることは、幼い彼にも分かりました。
兄を想うあまりに、そんなものが自分の身体から流れ出たことも。
魔物となったプルの本能が、彼の脳に未知の知識を刻みます。
顔を、耳まで真っ赤にしながら。
プルは…しかし、好奇心を抑えられず。
もう一度、彼の匂いを吸い込みました。
…エッチな匂い。
オナニーをしている時に、こんな匂いを嗅いだ覚えがあります。
オチンチンから出てくる、透明な液体…そう、確か、愛液という名前。
愛液の絡む、いやらしい音と共に。好い匂いではなかったはずの、それ。
それが今は、嗅ぎたくて、嗅ぎたくて、どうにもなりません。
プルは首を伸ばして、よりアルの股間に顔を近付け、匂いを嗅ぎました。
兄のオチンチンの匂いを嗅いでいるという事実に、プルの心は、
否応もなく乱れます。それは罪悪感から、背徳心から、悦楽から…。
狂う心は、次第に彼を暴走させていきます。
鼻先をペニスにぐりぐりと押し付けて、犬のように鼻を鳴らして。
濃い匂いが鼻孔を抜けるたびに、胸の内に湧く、欲望と充実感。
どちらも、どんどん大きく膨れ上がり。しかし、決して満たされず。
いつまでも潤うことのない胸の渇きに、プルは、切なく鳴きました。
アル…、アルお兄ちゃん…、と。求め、乞い、誘うように…。
当のアルはと言えば。
さすがにここまでされて、気が付かないはずがありません。
母親が帰ったと同時に、自分の股間へと顔を押し付けてきた弟に、
彼は心臓が口から飛び出そうなほど驚きました。びっくり箱を開けた時のように。
弟の意識が戻ったことに、アルはもちろん喜びの気持ちもありましたが、
それ以上に、愛する弟の珍行に、ワケが分からなくなっていました。
しかし、自分の名前を切なげに呼ぶ弟の姿に、彼は、
弟が苦しさのあまり、自分に何かを求めているのではと気付きました。
なのでアルは、股間に顔を埋めるアルを振り払おうとはせず、
彼が何を伝えたいのか、それを聞くまで我慢しようと考えました。
どこまでも弟想いな兄です。そんな彼の一面も、プルは好んだのでしょう。
さて、胸いっぱいに愛する人の匂いを沁み込ませたプルですが。
気付けば彼は、匂いを嗅ぐに飽き足らず、アルのペニスに舌を這わせ始めました。
ズボン越しではありますが、性を知らない兄にとって、その刺激は強烈です。
小さなペニスは、グイグイとズボンを押し上げ、たちまち大きくなりました。
うっとりとした顔で、美味しそうにペニスを舐めるプル。
とはいえ、プルはペニスを舐めることに強い抵抗がありました。
ペニスが汚いことくらい、彼は知っています。オシッコが出る場所なのですから。
いくら布越しとはいえ、とても舐めたくなるようなものではありません。
ですが、彼の心には、そんな気持ちを押し退ける思いがありました。
魔物の本能が、ペニスを舐めることは、相手を気持ちよくさせることと教えた時、
プルはそうしてでも、自分に尽くしてくれる優しい兄に、恩返しをしたいと思ったのです。
その気持ちがどれほど強いか。すでにもう、彼がアルのズボンを下ろして、
直接ペニスを咥えているのを見れば、プルの愛の大きさが分かるでしょう。
アルのオチンチンを、労わり癒すように、彼は艶めかしく舌を這わせました。
プルの丹念な奉仕を前に、アルは、止めるタイミングを見失っていました。
可愛い弟の舌による愛撫は、自分の手の何倍もの快感を伝えてきます。
それに、耳に届くプルの言葉。自分の名前。何度も、繰り返し、何度も…。
そこには何か、愛情以上の感情…分からないものが含まれているように思えます。
自分の分身でもある、弟の心を読めない…。それは彼にとって、初めての経験でした。
アルは、快感と混乱の渦に溺れる自分を感じながら。
今はただ、歯を喰いしばって、込み上げてくる射精感を堪えることしかできず…。
抵抗しないアル。それはプルにとって、都合の良い展開でしかありません。
カチカチに怒張する肉棒を、嗅いでは舐めて、吸って、口に含んで…。
売女を想わせるフェラチオ。兄を愛するあまり、より淫らに、ねちっこく。
溢れる愛液をゴクゴクと飲み込みながら、お返しとばかりに唾液を絡めて。
その度、気持ち良さそうな表情を浮かべる兄に、胸の内が温かくなりました。
そしてとうとう、限界が訪れます。
涙目になったアルは、弟の名前を呼んだかと思うと、
女の子のような声を上げながら、全身を震わせて射精しました。
口を離したプルの顔に、容赦無く精液が叩き付けられます。
ペニスとは比べ物にもならない、濃く、強く鼻を突く匂い。
しかし、魔物になったプルにとっては、これ以上にない甘美な香りでした。
腰が抜け、へなへなと尻餅をつくアル。
プルは自分の顔に指を這わせながら、指先に付いた精液を、
クリームを舐め取るかのようにペロリと舌で掬いました。
舌に感じる苦味も、今のプルには、これ以上にない甘さ。
拭ってはペロペロと舐めとり、恍惚とした表情を浮かべます。
そんな弟の痴態を、アルは、ぼぅっ…と見つめていました。
…見つめている内に…。
アルの欲望にも、黒い火種が降り注ぎました。
目の前にいる相手が、アルには、女性のように思えてきたのです。
それは錯覚なのか、元々プルを妹のように感じていたのかは分かりませんが、
いけないことだと想いながらも、アルはプルを犯したくて堪らなくなりました。
活動的なアルは、プルよりも欲望に忠実でした。
精液を味わうプルを押し倒し、その身いっぱいに抱き締めました。
兄の変貌に、驚くプル。しかし、すぐに受け入れ、抱き返しました。
ふたりの心を包むのは、果たして、どのような感情でしょうか。
…しばらくの抱擁の後。
ふたりは身体を離し、互いの気持ちを確認し合うように見つめ合います。
双子のふたりには…いえ、恋人同士のふたりには、それだけで充分なのです。
お互いに決心が付いていることを悟り、どちらからともなく唇を重ねました。
触れ合うだけのキスしか知らないアルですが、プルは違います。
エッチな知識に溢れたプルは、思い付くままに舌を挿入しました。
突然の侵入に、アルはびくりと身体を震わせましたが、抵抗はしません。
誰よりも優しいプルのすることです。きっとそれは、気持ちの良いことなのでしょう。
弟を心から信頼する彼の予想は、ずばり的中しました。
プルは短い舌を巧みに操って、アルの口内を蕩けさせていきます。
時折、舌先でちょんちょんと触れ合うのが、彼には堪りませんでした。
身を委ね…時折、真似をして返しながら、ふたりは初めてのキスを愉しみました。
口付けに夢中になる兄を、好ましく思いながら。
淫魔は片手間に衣服を脱ぎ、彼のペニスを手に取って、
その先端を、自分の濡れそぼった秘所へとあてがいました。
刺激に、口を離すアル。ふたりの舌を、唾液のアーチが繋ぎます。
アルは、セックスがどういうものかを詳しくは知りません。
愛する人と身体を重ね、エッチなことをする…という程度の認識です。
ですから、彼は今からプルがしようとしていることが分かりませんでした。
とはいえ、アルの弟に対する信頼は、先程話した通りです。
腰を前に出してほしいというプルのお願いを、彼は素直に実行しました。
…つぷり、と。ふたつの果実が弾けます。
結合部から、互いの愛液がとろりと流れ落ちました。
先端を包む襞が与えてくる、目も眩むような刺激。
たまらずアルは、それから逃れようと腰を突き出します。
しかし、無知ゆえの行動は、彼に更なる蜜を浴びせました。
アルのペニスは、たちまちプルの膣内の捕らわれてしまったのです。
ただ、それは諸刃の剣でもありました。
プルの膣内は、彼の意思で動いているワケではないのです。
ですので、自身の膣が、愛する兄のペニスを呑み込もうと蠢く際の、
全身に駆ける未知の刺激を、小さな身体で受け止める必要がありました。
それはプルにとって、男という自我を犯される、何よりもの恐怖です。
しかし同時に、女としての快楽に目覚める、何よりもの幸せでもあります。
プルは性の狭間で心を迷わせながら、兄の愛を一身に受け止めました。
対してアルは、女性の身体の魅力に心を奪われていました。
自分のオチンチンを包む、このふわふわとした感触はなんでしょう。
ほんのわずかに動いただけでも、痺れるような快感が流れてきます。
まさか、いつも一緒に居る弟の身体に、こんな秘密が隠されていたなんて…。
少しだけ、プルと今日の今日までセックスしてこなかったことを、アルは後悔しました。
兄はもう、完全に弟の虜でした。
外見こそそっくりですが、アルにはプルが、とても可愛い女の子に見えています。
そして同時に、大切な弟にも。彼もまた、性の狭間で悩んでいたのです。
しかし、身体は愚直です。
彼らの悩みなど無視するかのように、互いに腰を動かしました。
特にアルの動きは、種付けをしようとする雄のそれです。
彼はもう、プルの膣内に挿れただけで限界に近付いていたようです。
弟の華奢な腰を掴んで、愛液が飛び散るほど乱暴に動きました。
プルも、兄の動きに、射精の近さを直感します。
脚をアルの腰に絡めて、より強く身体を抱き締めます。
彼は乱暴なアルの動きの中に、恋人の愛を感じていました。
それによって、彼の男としての感情は影を潜め、
女としての、子を授かりたいという気持ちが湧いてきました。
だからこそでしょうか。プルが今抱き付いている格好は、
アルの子をどうしても授かりたいと言わんばかりのものです。
その想いは実り、アルは、彼女の深いところまでペニスを突き入れました。
伴い、グチュグチュと響く水音。パンッ、パンッと肉同士がぶつかり合う音。
まるで子供部屋に似つかわしくない、いやらしい音が木霊します。
しかし、ベッド上の行為は、少年と少女の初々しい体験に違いありません。
ふたりは、大人のような欲望をぶつけ合いながら、子供のような愛を分かち合いました。
そして、プルが一際大きな嬌声を上げた時。
とうとう、アルの我慢の限界が訪れます。
彼は何度も恋人の名前を呼びながら、一番奥へと子種を吐き出しました。
お尻をキュッと締め、少しでも奥にという想いを乗せて流れ込む精液は、
量も、濃さも、子供の…いえ、大人でさえありえないほどのものです。
それをチュゥチュゥと吸い取るプルの子宮は、火傷したかのように熱く。
彼女もまた、彼の絶頂に合わせて、身体を弓のように反らせました。
…アルの射精は、彼女の子宮を満たし、膣を満たし、溢れ出た滴が
シーツに数滴の染みを作ったところで、やっと止まりました。
しかし、彼は彼女の身体を離そうとしません。プルもです。
お互い抱き合ったまま、絶頂の余韻を噛み締めていました。
…そのまま、数分後。
気付けば、プルが何やら恥ずかしそうな表情を浮かべています。
彼女は、自分の膣内にある彼のモノが、また大きくなっているのを感じたのです。
ちらりとアルを見ると、彼は今まで彼女に見せたことのない、
助けを求めるような…乞うような瞳を、涙と共に浮かべていました。
その様子を見て、プルは少しだけ、抱き締める手足に力を込めました。
すると、アルも少しだけ、彼女に対し強めの抱擁を返してきました。
そこからは、また、お互いに腰を振り、喘ぎ声を響かせて…。
……………
………
…
…数日後。
庭先からは、楽しげな声と、苦しげな息遣いが聞こえてきます。
どうやらまた、彼らは鬼ゴッコをしているようです。
鬼は、もちろん魔術師です。今日もお疲れの様子です。
双子はというと、鬼を遠くに残して、屋敷の裏手に逃げ込みました。
それはちょうど、あの日と同じ、鉄柵が壊れていた位置です。
しかし、歪み曲がった鉄柵はもうありません。綺麗に修理されていました。
ですが、アルはそれを残念と思っていません。
彼の求めるものは、外の世界にではなく、すぐ隣にあるのです。
大人しくて、優しくて、自分の後ろをついてきてくれる弟です。
そしてそれは、プルも同じです。
勇敢で、優しくて、自分を引っぱってくれる兄。
それが彼にとって…また、彼女にとって、大切な存在なのです。
手を伸ばせば、握り合い、二度と離れないふたりの絆。
それが彼らにとって、何よりも大切で、育んでいきたいものなのです。
…壁を背に、魔術師から隠れるふたり。
前より少しだけ大胆になったプルは、ここで悪戯を思い付きました。
鬼の様子を窺う兄の手を取り、僅かに膨らんできた胸に、ぎゅっと押し付けたのです。
前より少しだけ甘えん坊になったアルは、その行為に、どきりとしました。
そのまま、鬼のことも忘れて…プルの胸を、優しく揉みしだきました。
霧隠れの森に佇むお屋敷。
そこに住む、ふたりの子供。
彼と彼は、双子の兄弟として。
彼と彼女は、愛し合う恋人として。
これからも、末永く幸せに暮らしていくことでしょう…。
12/07/18 00:06更新 / コジコジ