読切小説
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師弟御剣
「さぁ、素振りを100回だ!」

雲一つない青空の下。
城の中庭に、先生の号令が響き渡る。
それに対して、大きな声で返事をし、掛け声と共に剣を振るう僕。

イチ、ニ…と、回数を刻んで。
7キロもある鉄の塊を振るう度に、その重さが腕にズシンと圧し掛かる。
でも、これで根を上げてはいられない。実戦では鎧を着込むからだ。
30キロ程の重りを着込んだ状態で剣を振るえて、初めて一人前を名乗れる。

一人前…というのは、もちろん、戦士として。
だけれど、僕の場合はそれだけじゃ…剣の腕だけじゃ足りない。
たくさんの本を読んで勉強して、魔法を使えるようにならなきゃいけない。
魔法使いとしても一人前になって、僕はやっと本当の一人前になれる。

何故なら僕は、いつか王様の命を受け、旅立つ日を夢見ている…勇者の卵なのだから。

「………」

そして彼女が、僕を一人前の勇者にしてくれる先生。
剣の腕も一流で、魔法も使える、それこそ勇者みたいな人。
少し怒りっぽいけれど、優しくて、強くて、カッコイイ。
僕の自慢の先生であり…憧れの人だ。秘密だけどね。

ちなみに先生は、元々はこの国の人じゃない。
放浪の騎士としてお城に訪れた…つまり旅人だ。
それはちょうど僕が生まれた頃で、王様は先生の実力を試すために、
この国に住む条件として、僕を立派な勇者に育て上げることを提案した。
それで今、こうして僕に剣の稽古をつけてくれている、というワケだ。

「…ソラ」

38の掛け声のところで、先生から呼び止められる。
剣を振るう腕を止め、見やると…自らの右手首を指差す姿。

「その包帯は何だ? 怪我をしたのか?」

そう問われ、僕は自身の右手首に目をやる。
下手糞に巻かれている包帯。僕自身が巻いたもの。

僕は質問に対し、ちょっと転んだだけです、と返した。
しかし、その返答に違和感を覚えたのか、眉を顰める先生。
首に厚く巻かれたマフラーが、長い髪と共に棚引く。

「…見せてみろ」

一歩踏み出し、先生が僕の方へと手を伸ばしてくる。
慌てて右腕を背にやり、なんでもないです、と答えたけれど、
それは火に油を注いだだけで…更に一歩、距離が縮まった。

鎖帷子を鳴らしながら、近付いてくる先生。
そして、目の前に立ち…僕に影を落としつつ、言葉を繰り返した。

「見せてみろ」

…こうなってしまっては、もう、逆らえない。
気まずい想いから、明後日の方向を見つつ…右腕を晒す。

手に取られ、躊躇無く解かれていく包帯。
一番見られたくない人の前に、全貌を現す隠し物。

「………」

……………。

「…ソラ」

あぁ…。怒らせちゃった…。

「これは剣傷だな? 昨日の稽古が終った後か?」

顔を伏せて…小さな声で答える。
それを聞き、やや強く握られる僕の腕。

「私がいないところで、剣は振るうなといつも言っている筈だ」

怒気のこもった声。
恐さと、落ち込む心から、ますます身が縮む。

そう、僕が包帯を巻いたのは、秘密の特訓をしていることを隠すため。
早く一人前の勇者になりたいがために…そして、先生のために…
先生がこの国に永住できるようになってほしいがための、秘密の特訓。
バレるワケにはいかなかったのだけれど、先日、ちょっとしたミスで
手首の外側を切ってしまい、こうして包帯を巻く状況になってしまった。

結局は、それが命取り。
巻かれた包帯を、先生が見逃すはずなんてなかった。

「前も、同じ約束を破ったな。もうしないとも誓った筈だ」

心に刺さる言葉が次々と飛んでくる。
自業自得とはいえ、やっぱり辛い。めげそう…。

「…私の教えに、不満があるのか?」

と、急にとんでもないことを言い出す先生。
ありえない。顔を上げ、必死に首を振って否定する。

その際、視界に飛び込んできたのは、怒っているようで…
でも、どことなく困ってもいるようにも見える…先生の表情。
今まで見たこともない反応に、少し驚いてしまう僕。

見つめる僕へ対し…先生はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「なら、何故だ? 何故、私との約束を守らない?」

僕の急所へ、刃先を突き付けるかのような問い掛け。

…どうしよう。
正直に答えてしまうべきなのだろうか。ありのまま、全部。
でも、それはあまりにもカッコ悪くて…できるものじゃない。
例え先生が、特訓の理由を聞いて、喜んでくれるとしても…だ。
僕にだってプライドがある。好きな人の前でくらい、カッコつけたい。

「………」

かといって、適当な嘘も思い付かず…黙ってしまう。
これはこれでカッコ悪い。そんなジレンマに苛む僕。

沈黙が場を支配して………それを破ったのは、先生の一言。

「…今日の練習は、もう止めだ」

手を離し、くるりと踵を返す先生。

予想外の言葉に驚き、上げた視線に飛び込んできたのは、遠ざかっていく背中。
咄嗟に謝罪の言葉を投げかけるも、その形は小さくなり…城の中へと消えてしまった。

呆然と立ち尽くす僕。
こんなことになってしまうなんて、夢にも思っていなかったから。
僕の上達ぶりに、感心して喜んでくれると思っていたから。

いつもみたいに怒りもせず、行ってしまった先生。
僕は…呆れられてしまったのだろうか。まさか。もしかして。

………そんな……。

……………

………



日も落ちて、虫が歌う刻。

等間隔に並んだ燭台が照らす、薄暗い廊下を歩く。
向かっている場所は…先生の部屋。この廊下の突き当たりにある。

理由はもちろん、先生に謝るためだ。
どうするべきなのか、夕食も抜いて必死に考えたけれど、
これ以外方法が思いつかない。誠心誠意、全力で謝るしかない。
本当のことを話すのは、それさえも届かなかったときだ。
その時は正直に話す。このままの状態が続くくらいなら…。

などと考えていると、先生の部屋が見えてきた。
固唾を飲み込んで、近付き…そっとドアの前に立つ。

「…あの子の師になって、もうこれほど経つか…」

ふと、聞こえてくる声。先生の声だ。

よくよく見れば、ドアが少しだけ開いている。
僕は無意識に…吸い寄せられるように、隙間からそっと、中を覗き見た。

「魔王様への報告書も、だいぶ厚くなった…」

独り言だろうか。部屋の中には先生しか…。

…っ!?

「…しかし、今日のはどうしたものか…」

…首。首、だ。生首…。

信じられない光景が広がっていた。
先生の身体は、椅子に座って机に向かい、何か書き物をしているようだけれど…
それには…首が、首が付いていない。まるで転げ落ちたかのように、机の上に…。
更に、首だけのそれが喋っているのだ。いつもの声で。あの、僕の知っている声で。

「私には言えない隠し事、か。信頼されていると思っていたのだが…」

そうだ。さっき、ちらっと…魔王、って言っていた気がする。
まさか…先生の正体は……魔物…? いや、そんな、まさか。
先生が魔物だなんて。僕の…僕の大好きな先生が…そんな……。

「…いや、当然か。あれほど叱りつけていてはな」

……先生……。

「恐怖で不満も言えず、耐えかねて…といったところだろう」

……………。

「魔王様の命で、秘密裏に勇者を堕とすために来たものの…」

「その勇者が、私を嫌ってしまったのではな。どうしようもない」

嫌って…? 僕が、先生を…?

「………」

違う…。僕、先生のこと、嫌ってなんか…!

「…片思いとは、辛いものだな」

えっ…?

「首を外せば、彼をもっと褒めてやることも出来たろう」

「そうすれば彼も、私を嫌わなかったかもしれない」

「…好きになってくれたかもしれない」

「だが、私が魔物と分かれば、やはり彼には嫌われる」

「ジレンマ…というやつか。悩ましいものだ」

……………。

「…ソラ」

先生…。

「見ての通り、私は魔物だ」

っ!?

「…今からお前を襲う。覚悟を決めろ」

僕の背筋を伝う、冷や汗。

先生の身体が、立ち上がり…こちらに振り返る。
手には剣。気付かれていた。そして、本気だ。
本気で先生は、僕のことを…!

どうしよう、どうすれば…。
素手の僕じゃ、とても敵う相手じゃない。
いや、例え剣を持っていても、勝つのは無理だ。
逃げる? 逃げて、誰かに助けを求める…?
でも…、でも、それじゃ…先生が……。

「………」

…違う。駄目だ。逃げちゃ駄目なんだ。
僕は勇者だ。先生から教えを受けた、勇者だ。

逃げるもんか…。
絶対に、逃げるもんかっ!

「む…」

部屋に飛び込み、背で押すようにしてドアを閉める。

震える足。背を壁に付けていないと、崩れ落ちてしまいそうなほど。
でも、この先には行かせちゃいけない。魔物は人を殺すのだから。
僕が…僕が先生を止める。剣も、魔法も、今はないけれど。
それでも止めなきゃいけないんだ。僕が止めなきゃいけないんだ。

僕は、勇者だから…。

「立ち向かってくるか…。ふふっ。さすがは勇者だ…」

…僕、は……。

「ならば…」

…………。

「……ん…?」

……違う…。

「………」

違う…。

「…ソラ…」

僕は……先生のことが好きだから…。

先生のことが…大好きだから…。

「それは組み付いているつもりか…? 隙だらけだぞ…」

戦いたくない…。

「…敵の前で泣いてもいいと、私は教えたか…?」

戦ってほしくない…。

「………」

僕は…先生と……。

「………」

先生と……。

「…馬鹿」

両想いになりたいから……。

「今になって…期待させるなんて…」

先生の胸の中で泣く…カッコ悪い僕。
そんな僕の頭を、先生は…優しく撫でてくれた…。

剣が床に落ち、空いた手で僕を抱き寄せる先生。
鎖帷子の硬い感触の奥に、先生の身体の柔らかさを感じる。

「………」

……………。

「…ソラ」

呼ぶ声に、顔を上げ…そこに先生の顔がないことに気付き、机に目をやる。

眉を少しつり上げ、伏し目がちに、真っ赤な顔で僕を見つめる先生。

「私のことは……嫌いじゃないのか?」

…頷く。

「本当に?」

頷く。

「………」

……………。

「……す…好き、か…?」

……頷く。

「っ…」

……………。

「………私も…、だ…」

「私も……お前のことを、愛している…」

更に強く僕を抱きしめる、先生の身体。
その行為に、安心したせいか、嬉しかったせいか、恥ずかしさのせいか…
大粒の涙が僕の頬を流れていく。なんてカッコ悪い勇者なんだろう。

でも…それでも、いい。
先生が、僕のことを…愛していると言ってくれた。
それだけでいい。カッコイイ勇者じゃなくったっていい。

僕は、先生の愛する人でありたい。

「まさか、こんな形で想いを伝えることになるとはな…」

身体が離れ…背を押し、僕を机の方へと促す手。
それに従い、机へ…先生の顔へと近付く。耳の先まで、真っ赤っか。

「恐くはないか? 見ての通り、私は生首だぞ?」

先生の言葉に、僕は首を振って答える。

…正直に言えば、まだ少しだけ恐い。
でも、それは明かさない。そう答えれば、きっと先生は悲しむ。
それなら、秘密にした方がいい。カッコつけた方がいい。

そうすれば…、ほら。
こんなにも笑顔になってくれる。

「…いつの間にか、一人前になっていたんだな…」

微笑む先生。

…その顔を持ち上げ…抱きしめる僕。

「っ!? こ、こらっ! やめんか、急に!」

が、後ろにいた先生の身体に、すぐさま奪い取られてしまう。

「まったく…。意外と大胆だな、お前は…」

首輪の部分を境目に、すっぽりと繋がる、首と身体。
気が付けば、いつもの先生の姿。分厚いマフラーがないだけ。
あれはもしかしたら、首を固定するために巻いていたのかもしれない。

「大体、お前が早く気持ちを伝えてくれれば、こんなことには…」

そして段々怒り始めてきた。いつもの先生だ。
嬉しい半面、これ以上怒られるのはたまらないという気持ち。

駄目元で、目を瞑り、背伸びをして…唇を近付ける。

「むっ…」

…胸が、すごくドキドキしている…。
今までで一番、勇気を出した瞬間かもしれない。

応えてほしい。この想い、どうか、先生に…。

「………」

……………。

「………ん…っ♥」

ぁ……。

「…♥」

……………。

「…はっ……♥」

……………。

…うわ。うわっ。うわー……。

「………」

キス…しちゃた。先生と。本当に。
夢じゃないよね? 違うよね? 夢なの?
夢みたいなことが続いてるけれど…夢じゃないよね?
僕、本当に、先生と……キス、を……。

「…駄目だ」

…え?

「やっぱり、襲う」

え? え?

「ソラッ…♥」

困惑する僕に、急にのしかかってくる先生。
受け身を取る暇もなく、そのまま背から、ぼすんっとベッドに落ちる。

ワケが分からず、余計に混乱する僕を、先生は獲物を狩る獣のような瞳で見つめてくる。
そして、牙を剥くように…僕の服に指を掛け、ビリビリと破り裂いてしまった。

「あ、暴れるなっ! 痛くはしない!」

そんなこと言われても、そうしないワケにいかない。
だって、服が破れる度に、僕の裸が晒されていくのだ。
人の前で裸になるのがどれほど恥ずかしいか、誰だって分かること。
いくら相手が先生だからって…いや、先生だからこそ、なお抵抗する。
なんでかって、言うまでもない。この姿は…最高にカッコ悪いから…。

「…ふふ♥ ふふふっ♥ 良い肉付きだ…♥」

でも、抵抗も空しく…とうとう丸裸にされてしまう僕。
身体を丸め、両手はあそこを隠して、必死に最後の抵抗を続ける。

先生は、そんな僕を見て…とても恍惚とした表情。
憧れの人のあんな表情を、今まで見たことがあっただろうか。
全身を舐め回すような視線。僕を品定めしているかのような目付き。
先生が魔物であるという実感が、今また、うっすらと湧き上がってくる。

「細身ながら、程良く締まった筋肉…♥ 男らしいな…♥」

むにむにと揉まれる二の腕。ちょっとだけくすぐったい。

「さすが勇者の素質を持つ者…♥ 魅力的な身体だ…♥」

舌舐めずりをしながら、先生が自身の鎖帷子に手を掛ける。
重さを感じさせない滑らかな動きで、鎧を脱ぎ…肌着も脱ぎ捨てて…
蝋燭の灯火が照らす部屋の中、その素肌を僕の目の前に露わにした。

グローブとストッキングだけを残して、生まれたままの姿の先生。
様々な想いが渦巻いていた僕の心が、一瞬にして空っぽになる。
惹き付けられる、視線と心。意識しなくとも。ざわめく本能。

僕は…先生に釘付けになってしまった。

「さぁ…、足を開くんだ…♥」

言葉の意味を理解し、また恥ずかしさが呼び起こされるも…
目の前の光景を見て…すぐにまた、ふっと忘れ去ってしまう。
それほど先生の姿は、綺麗で、妖しくて…とてもエッチだった。

足を開こうとする先生の手に、逆らえない僕。
そのまま、まるでカエルのような…大股開きの格好にされて…。

「…今日は一段と逞しいな…♥ 今にもはち切れそうだ…♥」

黒染めのグローブが、熱く腫れ上がった場所に触れる。
呻く僕を、うっとりと見つめる先生の瞳。心から嬉しそうに。

「ここまで大きくなったのも、私が毎晩鍛えてやったおかげだな…♥」

不意に、聞き捨てならない言葉が飛び出す。
が…その意味を尋ねる前に、ペニスを滑り出す彼女の指。
皮と指が雁首を撫でる度に、言い様のない快感が迸る。

「御馳走になっていたんだ、お前の精を…♥ 淫靡な夢が多くはなかったか?♥」

淫靡な夢…。つまり、エッチな夢…?
確かに、先生の夢を見ることが多かったけれど…まさか、本当に…。

でも、今感じている刺激は、夢のものとは比べ物にもならない。
息は深く、途切れ途切れにしか吐くことができず、苦しくて…
身体も、痺れてしまったかのように小刻みに震えて…敏感になって…。

意地悪に裏筋を撫でる先生の親指が、次々とエッチなお汁を絞り出していく…。

「ダラダラと溢して…♥ だらしないな、ソラ…♥」

僕を戒める先生。なのに僕は…喘ぐことしかできない。
シーツを握り締め、込み上げてくる射精感を必死に抑えることしか…。

そんな僕を、先生は容赦無く責め上げてくる。
弄る対象を亀頭に変え、5本の指でぐにぐにとこねくり回す。
竿を擦られる鈍い刺激とは打って変わって、肌を刺すような鋭い刺激。
そこだけ神経が剥き出しになっているかのような、辛いほどの快感。

「好い反応だ…♥」

呟き、空いた手を再び幹に添え、扱き始める先生。
先端を襲う針の刺激。竿を襲う鎚の刺激。片方だけでも耐え難いのに。

びくびくと跳ね始めるペニス。
限界だ…。もう……耐えられない…っ!

「ん…♥」

と…竿を扱いていた手が、ぎゅうっ…と僕のものを握り締める。
同時に、破裂する射精感。反り上がる身体。響く嬌声。
それに後押しされるように、ペニスの中を精液が駆け上がっていく。

…が、

「危ないな…♥ ソラ、まだ出していいとは言っていないぞ…?♥」

塞き止まる…。握り締められた部分で、ぴたりと…。
それでも尚吐き出そうと、先生の手の中で悶えるペニス。
しかし、いくら痙攣を繰り返しても精液は飛び出ず…
次第にペニスは、力無くその勢いを弱めていく……。

「さぁ、もう少しの間、私にその顔を見せてくれ…♥」

しかし先生は、戦意の尽きたそれを責める手を休めない。
くすぐられ続けて笑い疲れた子供を、一層責め立てるように。

そんな状況に陥ったら、もう、責められる側が取れる行動は一つだけ。
僕は涙目になりながらも…先生に対して、必死に懇願した。

「どうした、勇者…♥ そんなに情けない顔をして…♥」

「魔物の私に弄ばれて…♥ 恥ずかしげもなく乞うて…♥ 勇者失格だな…♥」

耳元で紡がれる、恥辱の言葉。
恥ずかしさと共に、再び湧き上がってくる射精感。
先生もそれを感じ取ったのか、弄る指の動きを速める。

「ほら…♥ 『僕は情けない勇者です』と言ってみろ…♥」

「『魔物の手淫で射精したい、エッチな勇者です』と言ってみろ、ソラ…♥」

そうすれば指を離してやる、と付け加えて。

あまりの要求に…でも、葛藤してしまう僕の心。
言いたくない、恥ずかしい…という気持ちが、
射精したい、気持ち良くなりたい…という気持ちに呑み込まれていく。
次第に、次第に、大きくなって…。喰い縛っていた歯が、徐々に開いて…。

「…うん?♥ 僕は……なんだ?♥ よく聞こえないぞ?♥」

頭の中も、心の中も、ぐちゃぐちゃになっていって…。

「ソラ、大きな声で言ってみろ♥ もう一度…♥」

耐え切れず……。

「さあ…♥ …うぷっ!?」

先生の首に抱きついて……叫んだ。

「あっ…♥」

瞬間、縛りが解けて……僕は、思い切り射精した。

びちゃびちゃと、先生のお腹に当たっては、僕のお腹へと垂れ落ちる精液。
2回分の射精だとしても足りないほどの量が、互いの身体を染めていく。
僕は…身体から外れてしまった先生の顔を、強く抱き締めながら…
苦痛からの解放感と、吐き出される欲望の悦びに、打ち震えた…。

「…♥」

胸の中で、もぞもぞと動き…瞳をこちらに向ける先生。

「…すまない、調子に乗ってしまった…」

そう言って、申し訳なさそうに目を伏せて…痙攣するペニスを、労わる様に撫でてくれた。

…もしかしたら、先生は、首が身体から離れていると、優しくなるのかもしれない。
そう言えば、さっき部屋を覗いていたときに、そんなことを言っていた気がする。

僕は何だか嬉しい気持ちになって、まるで子犬をあやすように、先生の頭を撫でた。

「んっ…♥」

僕の手を、心地良さそうに受け入れる先生。
その可愛い仕草に、ドキドキして…僕は、そっと唇を近付けた。

「あっ…♥」

それに気付き、先生が小さく驚きの声を上げる。

「……ん…♥ ちゅっ…♥」

そして…折り重なる唇。

口の中に広がる、ほのかに甘い味。何の味だろう。
探る様に、何度もキスを交わして、確かめる。

「ちゅぅ…♥ んくっ…♥ ぺろ…♥ れろ…っ♥」

好奇心と探求心に押されて、舌を伸ばす。
同じ様に伸びてくる、先生の舌。柔らかい。マシュマロやプリンみたいだ。
もしかしたら、舌の味なのだろうか。唾液の味なのかもしれない。

そんなことを考えながら、先生との深く濃いキスを繰り返す僕。
とろけるような甘さに、むくむくとペニスが活力を取り戻していく。

「ふはっ…♥ …上手だな…♥ どこで習ったんだ…?♥ んんっ…♥」

先生も感じてくれているという実感に、高鳴る胸。
先程までのわだかまりが嘘のように、愛し合う僕と先生。

…再び固く膨らんだ僕のそれに気付いたのか、先生の身体が動き…
その大きな胸を股間に押し付けて、ペニスを挟み…上下へと扱き始めた。

「ちゅ…♥ ふふっ…♥ いつもチラチラと見ていた胸の感触は、どうだ…?♥」

…バレていた。当然といえば、当然かもしれないけれど。
先生の来ている鎖帷子は、胸の部分にぽっかりと穴が空いている。
そこから見える胸の谷間は、僕には余りにも刺激の強いもので…。

その胸が、今こうして…僕のペニスを挟んでいる。
焼きたてのパンの様な柔らかさ。もちもちと温かく包み込んで。
あまりのきもちよさに、唇が離れ、荒い息が洩れてしまう。

「はぁ…っ♥ 熱い…♥ お前のモノが…胸の中で暴れている…♥」

まるで僕のを呑み込んでいるようでもあり、押し潰しているようでもあり…。
形を変えて、両側から責めてくる先生の胸は、指以上の快感を生み出していく…。

「ソラ…♥ どうだ?♥ 気持ち良いか…?♥ いっぱい出していいからな…♥」

少しずつ…女性の身体の魅力に…先生の魅力に溺れていっているのが、分かる。
好きだという気持ちが、どんどん貪欲なっていく。狂おしいほどに。
ずっと一緒に居てほしいと。手放したくないと。僕だけのものになってほしいと。

僕は、胸の中に抱きかかえた先生へ、必死に呼び掛けた。
何かを伝えたかったわけじゃない。ただ、無性に掻き立てられて。
そんな僕を、先生は優しく…やさしく、見つめ返す。

「もう我慢出来ないか…?♥ しょうがないな…♥」

先生の指が、僕の耳の裏をこちょこちょとくすぐる。
むず痒さと心地良さを感じ、目を閉じて、甘えるように味わう。

股間から胸を離し、僕の腕の中から自身の顔を拾い上げる先生。
それに気付き、僕が僅かに腕を伸ばし、名残惜しそうな声を上げると、
彼女は自らの腕に抱えられた顔を、くすりと微笑えませた。

「顔は、こっちだ…♥」

そう言って、自身の背後に首を置く先生。
身体に隠れて、完全に見えなくなってしまう表情。

もっと見ていたい一心で、僕が首を伸ばすと…それを塞ぐかのように、
先生の身体が、僕の上に跨って…反り立ったペニスをその手で掴んだ。
そして、近付く…先生の秘所。これから何をするのか、一瞬で理解し、硬直する僕。

「んんっ…♥」

先端が触れると共に、お尻辺りから聞こえてくる先生の艶声。
濡れそぼった両者は、互いの汁に滑る様に…結合を深めていく…。

ずぶずぶと呑み込み…僕のペニスを包んでいく、彼女の襞。
そのあたたかさ…やわらかさとは裏腹に、襲い来る凶悪な刺激。
開いた口から、吐息と共に抑えられない嬌声が洩れてしまう。

「っ……ぜん、ぶ…、入ったな……♥」

満たされたような先生の言葉も、今の僕の耳には届かない。
僕の形に合わせて、絡み付く襞。僅かにさえ動かなくとも、刺激を与えてきて。
目の映るのは白と現実のフラッシュ。リアルなのは身を襲う快感だけ。

「…動くぞ…♥」

こちらの状況を知ってか知らずか…ゆっくりとペニスを引き抜いていく先生の身体。

この感覚を、どう例えればいいだろう。
先生が腰を上げていく度に、僕のペニスが、溶けたアイスのように
ペチャンと落ちてしまいそうな錯覚が…。しっかりと、そこにあるのに。
そして、逆も。入っていく度に、これまた溶けたアイスのように、
ドロドロと溶け落ちていくような錯覚。それほど、熱く、あつく、アツク…。

「んっ…♥ ふっ…♥ ふぁ…ぁっ…♥」

もう、精液が常に漏れ続けているようにさえ思える。
ペニスに、感覚があり過ぎて、無さ過ぎて。わからない。わからないんだ。
耐えるなんて気持ちはとっくに吹き飛んでいるのに、どうしてか、苦しいんだ。
耐えてなんていないのに。全部受け入れて、出してしまいたいのに。なのにっ…。

「ソラ…♥ 初めて…なんだろう?♥ はっ…♥ 私の膣内は……んっ…、気持ち良いか…?♥」

お城の一室で、ぐちゅぐちゅと響き渡る、粘液の絡み合う音。
廊下の前に誰かいたら、聞き耳を立てずとも聞こえそうなほど大きい。
それでも、先生は腰の動きを緩めない。より激しく、より情熱的に…。

「ふふっ…♥ …ん……ぢゅるっ♥ ぺろっ…♥ ちゅ…♥」

不意に、満身創痍な僕へ、別方向から襲い掛かる刺激。

お尻…。お尻の穴を、先生が舐めている。
首をその場所へ置いた理由に今更気付くも、どうしようもできない。
破裂しそうな僕の身体へ、駄目押しとばかりに送られてくる快感の津波。
産まれたての鹿よりもおぼつかない身体が、更に大きく震え上がる。

「れろ…♥ こっちの才能もあるみたいだな…♥ ふふっ…、愛い奴だ…♥」

膣内で犯され、ナカを犯されて。めちゃくちゃな身体と心。
射精を置き去りに、何度達したか分からない。壊れそうな自我。

「ぢゅるるっ…♥ ふっ…ぅ…♥ はぁっ…♥ ぺろっ……ちゅ…♥」

呼ぶ。先生、と。
声に出ているのかわからない。何も聞こえない。
それでも、何度も呼ぶ。先生、先生、と…。

「ん…? どうした、ソラ…♥」

目の前に差し出される…先生の顔。
たまらない気持ちを、ひったくるようにして抱き締めることで伝えようとする。

「うわっ!? こ、こらっ! 私の顔を乱暴に…!」

想いを口にする。いくつも、何度でも。

もう二度と、すれ違わないように。
この先、ずっと愛し合えるように。

「っ…♥ ソ、ソラ、分かったっ♥ 分かったから、離せっ…♥」

嫌だ。もう、少しだって離れたくない。

僕だけの先生でいてほしい。僕だけの恋人でいてほしい。

「んくぅっ…♥ お、お前の気持ちは伝わったから……ひぁぁっ♥」

まだ。まだ僕が、伝え足りない。
もっと、もっと、もっと、もっと、もっと…っ!

「あっ♥ ひっ♥ は…はげ、しっ…♥ やっ♥ やぁ…っ♥」

先生…! 先生っ…!

「ソラッ♥ 私もっ…♥ ふぁっ♥ 私もっ♥ ソラの…こと…がっ♥ ひぅんっ♥」

せんせっ…!

「イくっ♥ イくぅっ♥ イッちゃっ…♥ ひぁっ♥ ソラッ♥ ソラァッ♥」

せんせい……っっ!!

「イっ……くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ♥♥♥♥♥♥♥」

……………

………



「んっ…♥ ぢゅるっ♥ ちゅぅぅぅ…っ♥」

目を覚ますと…あそこに、何か違和感。

音で薄々感付いてはいたけれど…見ると、首だけの先生がそこに。
身体の補助がないのに、器用に僕のそれを咥えて舐めている。

「ぷはっ…♥ …おや、起きたか。少し寝坊だな」

口周りに付いた愛液をぺろりと舐め取っての、第一声がそれ。
寝起きと、昨夜散々交わった反動で、我慢が利くようになった僕は、
再度むしゃぶろうとする先生の顔をひょいと拾い上げ、行為を止めた。

「あっ! こら! まだ途中だぞ!?」

辺りを見渡すと…いた、身体はちゃんとある。
何か荷造りをしているみたいだ。あれだけ見ていると、別人格があるように見える。

そういえば、何の荷造りをしているんだろう?
疑問に思って、言葉そのまま、先生に問い掛けた。

「任務を果たしたからな。お前を連れて、魔界へ帰る」

衝撃の一言。
しかも、僕の魔界行きは決定しているらしい。
僕、一応勇者なのに。王様が何て言うか…。

「…行きたくないか?」

……………。

…よくよく考えれば、先生が一緒なら、僕はどこでもいい。
うん、そうだ、別に王様には内緒で行っちゃえばいいや。
勇者の『勇』は、勇気の『勇』。内緒も勇気がいるもんね。

結論も出たところで、僕はベッドから降りて、
せっせと荷物をカバンに詰める先生の身体へと近付いた。
もちろん、手には先生の顔を持って。

「ソラ…?」

こちらに振り向く身体と、僕を見つめる視線。

僕は視線を合わせて…その唇に、キスをした。

「っ!?♥」

驚いている先生を横目に、首を身体の繋ぎ目へと置く。
ひとつになる、首と身体。慣れ親しんだ、先生の姿。

「そ、ソラッ! 急に……うわっ!?」

怒られそうになったところへ、もう一度。

首に腕を絡めて、キス。

「ん…っ♥」

愛しているよ、先生。

怒りっぽくて、意地っ張りな先生も。
優しくて、素直な先生も。

どっちも…僕の大好きな、先生。

「…ソラ…♥」

ずっと一緒に居よう。
今はまだ、先生の方が強いけど、いつか僕の方が強くなってみせる。
カッコイイところを、いっぱい見せるんだ。エッチでだって。

それでもたまには、カッコ悪いところ、先生の前で見せちゃうかもしれない。
でもね、約束。カッコ悪いところは、先生以外には見せたりしない。
皆の前では、カッコイイ勇者でいるよ。それが勇者だもん。
だから、先生。僕に勇気を頂戴。一緒に居てくれるだけでいいんだ。
先生が一緒に居てくれるだけで、僕は何も怖くないんだ。

「…ふふっ」

だって、僕は。

そうさ、僕は。

「…さぁ、続きをしようか」

先生の…。

「私の…勇者様♥」
12/06/12 20:06更新 / コジコジ

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