読切小説
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我家猫王
「ワガハイは猫である」

 彼女はそう言うと、キーボードの上でふんぞり返った。何がそんなに誇らしいのか、僕には窺い知ることができないが、彼女がそれを許される地位にあるのは間違いなかった。猫は不遜である。そんなことは、誰もが知っている。

 この猫に名はある。皆から、ミケと呼ばれ愛されている。愛され過ぎたが故に、今ではすっかり王様気分だ。食卓に置かれた料理を失敬したり。椅子の足を爪研ぎに使ってボロボロにしたり。箱詰めのティッシュの中身をばら撒いたり。でも、その全てが許される。許してしまう。彼女は猫だから。彼女は望んで王様になったわけじゃない。皆が押し上げて、なるべくしてなったのだ。

「ここはぬくいな」

 尻尾を揺らめかせながら、腰を落ち着けるミケ。彼女は知っている。彼女の尻に敷かれたそれを、今の今まで、僕が使っていたことを。知っていて、割り込んできたのだ。だが、猫である彼女が、その手でキーを打つわけでもない。お尻で潰して、無限に改行を繰り返すのが精一杯だ。おかげで、書き途中であった僕のテキストは、二百行以上もの余白ができてしまった。今なお増え続けている。
 なぜ、彼女はこんなことをするのだろう。決まっている。彼女が猫だからだ。理由があるときもあれば、ないときもある。猫は気まぐれなのだ。考えるだけ時間の無駄であり、そうするよりも、どうにかどいてくれるようお願いするのが、賢い飼い主というものである。

「そんなに見るな。照れるではないか」

 頬を赤らめながら、彼女が言う。猫はポジティブだ。魚屋さんの前を通れば、あの店頭に並んだ魚が、明日には全て自分のものになるだろう、と思っているくらいにはポジティブだ。これでも控え目な方だというのだから、驚く以上に呆れ返る。

「仕方がないな。撫でてもいいぞ」

 ホレ、とこちらに向けられる腹。体勢が変わったせいか、今度は無限のsが画面を侵食し始めた。しかし、そんなことは、三丁目の鈴木さんに白髪が生えたことくらい、彼女にとってはどうでもいいことだ。彼女が今、一番に求めているのは、お腹を適度に撫でられることである。過度はいけない。適度に、である。
 彼女が猫の姿となっている今、その気になれば、僕は彼女を容易に除かすことができる。だが、彼女はそれを許さないだろう。彼女がいる場所は、常に聖域なのだ。無理に除かそうとすれば、威嚇されるか、引っかかれるか、彼女の身体が妙に重くなるか…いずれにせよ、嫌がらせを受けるのは間違いない。仮に成功したとしても、彼女はその鬱憤を、別の場所で晴らそうとするだろう。その被害は、まず間違いなく、今よりもひどいものになる。賢明な選択とはいえない。

 溜め息をひとつ。僕は渋々、彼女の腹に手を置き、左右に撫でた。満足気に鳴き、身体を伸ばす彼女。僕はその無防備なラインに反って手を這わせ、終点、彼女の一番お気に入りの部分を、これでもかとくすぐった。

「おぉ。おぉう。いいぞ、上手だ御主人」

 喉をゴロゴロと鳴らしながら、彼女が僕の手を抱きかかえる。ずるい。そんな反応をされては、撫でるのが楽しくなってしまうじゃないか。だがしかし、生憎人間には、時間という守らねばならないものがある。僕は今からでも、この無限のsと余白を消して、明日までにテキストを仕上げなければいけないのだ。彼女に構えば構うほど、残された時間は減っていく。心苦しいが、今、彼女の相手をしている暇はない。

「あ、もういいぞ。大儀であった。これ、さっさとやめんか」

 が、一転。僕の悩みは何だったのか。彼女は名残惜しそうな素振りも見せず、僕の手を払うと、すっくと立ち上がってその場を離れた。これが猫である。何と横暴で自分勝手な生き物か。しかし、胸にこみ上げてくるものといえば、怒り以上に、愛くるしさ。どうしても、憎いという気持ちになれない。
 全ての元凶は、あの風貌にある。神様は不平等だ。ゴキブリのような嫌われ者もいる一方で、あのような生物を創り出すのだから。ピンと尖った耳に、モフモフの毛並み、しなやかな肢体、揺れる細長い尻尾。魅力的と感じない部分が、ひとつとしてない。なんだ、あの悪戯な口元は。なんだ、あのプニッとした肉球は。目、指、鼻、お尻、頬、鳴き声、仕草、全てが全て。まさに魔性の生き物だ。

「御主人」

 一人悶々とする僕に、彼女が呼び掛ける。何かと思って、視線をそちらに移すと。どこから見つけてきたのか、彼女は一本のペンペン草を咥えて、部屋の出入り口に立っていた。

「これで遊ぶぞ。付き合え」

 清々しいまでの命令口調。お前に拒否権などない、と言わんばかりだ。猫は偉い。よって、他人にお願いなどしないのである。最大限に譲歩して、共に遊ぶ権利をくれてやる、というレベルだ。
 だが、悲しいかな、飼い主である僕には従う以外の道がない。僕は言われるがまま、ペンペン草を手に取ると、それを彼女の目の前で激しく振った。

「うおっほぉぉぉ! なんじゃこれ、なんじゃこれ、なんじゃこれ!」

 途端、一気にテンションがMAXを振り切り、狂喜乱舞する王様。恐ろしいまでの変貌である。彼女は取り憑かれたかのように、必死になってペンペン草の後を追い、両手で挟んで捕まえようとした。しかし、そこは歴戦のペンペン草、容易い捕り物とはならない。右へ左へ、上へ下へ。変幻自在なその身を巧みに操っては、彼女の猛攻を凌ぎ、逃げ続けた。江戸川五右衛門も真っ青だ。
 そう、このペンペン草は、彼女に対抗しうる数少ない武器のひとつなのである。彼女よりも上位の立場に立つための切り札といってもいい。事実、彼女は今、僕の手によって操られている。ペンペン草を右に振れば、彼女は右に走る。上に振れば、彼女は飛ぶ。弧を描けば、彼女はひっくり返る。魔法の杖もかくや。苦節の時を乗り越えて、この瞬間、僕は飼い主としての尊厳を取り戻したのだ。

 …が。

「飽きた」

 テンションゼロ。継ぎ接ぎのフィルムを見ているかのように、彼女の態度がコロリと変わる。あまりの変わりっぷりに、僕はペンペン草を手にしたまま、しばし唖然としてしまった。瞬く間に、地へと落ちゆく尊厳。これが王だ。これが猫だ。これが彼女だ。そして、このモアイ像のように情けない顔をしているのが、僕だ。
 がっくりと肩を落とし、重い腰を上げて、再びキーボードの前に戻る。ペンペン草を傍らに置き、バックスペースキーに指を置く僕。ひどい。あんまりだ。作業を無理矢理中断させられて、彼女の御機嫌を取って、僕もようやく楽しいと思い始めてきたところに、この仕打ち。僕が何をしたというのか。今朝だって、とびきり高い猫缶をあげたじゃないか。ニボシも付けた。その時は、ミケだって尻尾が千切れんばかりに喜んでいたのに。

「御主人」

 再び、彼女が僕を呼ぶ。いつの間にか、僕の膝元に鎮座している王様。もう知らない。聞いてやるもんか。何事にも限度というものがあるんだ。今日という今日は、僕も許さないぞ。

「ブサイクな顔をしてどうした。ワガハイがいるというのに」

 こちらを見上げる彼女の口から飛び出す、気遣いのカケラもない言葉。なんて生意気な。絶対に許さない。今夜は普通のキャットフードしかあげないぞ。頼まれたって、お刺身は分けてあげないから。それで反省すればいいんだ。民だって、鬱憤が溜まれば決起することを、彼女は知るべきなんだ。

「これ、聞いとるのか」

 ごろんと仰向けになり、彼女がこちらへと両手を伸ばす。そんな可愛いポーズを取ったって、惑わされない。僕はもう、モニターしか見ない。キーボードしか触らない。君はそこで、ずっとゴロゴロしていればいい。今日はとことん無視の刑だ。

「これっ」

 ふと、僕の頬に何かが触れる。柔らかく、弾力のある何か。肉球。
 下を見ると、姿を変えた彼女が、じっと僕を見つめていた。やや人間に近い姿となった…それでも、一目で猫と分かる彼女の姿。ケット・シーと呼ばれる魔物。

「聞いとるのかと訊ねておるのだ」

 態度は変わらず。だけど、そのあまりにも心の芯ををくすぐる姿に、僕はまたもや魅了されてしまった。ずるい。ずるい。ずるい。猫はずるい。彼女はずるい。こんなの、いくら憎たらしくても、憎めない。

「御主人のホッペは餅みたいじゃな。ほれ、たこちゅー」

 僕の頬を両手で押し潰して、好き勝手に遊ぶミケ。無邪気だ。そこに悪意なんてものはない。彼女は純粋なのだ。純粋に、意地悪で、気侭で、可愛いのだ。
 キーを打つ手を止め、僕は今一度、彼女の頭を撫でた。彼女が求めていないとき、それをすると、大抵ひっかかれてしまうのだが、今回は受け入れてくれた。ミケが目を細め、心地良さそうに唸る。幸せに満ちた声。飼い主の心を溶かす声。

「なんじゃ、急に献身的になりおって。盛りおったか?」

 と、何を思ったのか。猫の王様は、いきなり突拍子もないことを言い出した。どこに盛る要素があると言うのか。いや、だが、しかし、そう言われて、改めて自分のそこを見てみると。確かに、少しばかり大きくなっていた。その上にいる彼女は、よりハッキリと変化を感じているのだろう。身体をくねらせ、背中をグリグリと押し付けると、ミケは悪戯な笑みを浮かべながら、僕に言った。

「子作りしたいのかえ?」

 ストレートな問い掛け。恥も何もない。予想だにせぬ言葉の連続に、僕はたちまち顔が真っ赤になった。対し、彼女は目を細め、僕の瞳を覗き込み、その反応を愉しんでいる。
 彼女は猫だ。愛くるしい、僕の猫だ。だが、魔物である彼女は、同じ猫ではなく、人間である僕と交わるための身体を持つ。雌の身体。それは雄である僕にとって、異性の身体であることに違いはない。愛おしい相手の、魅力的な身体であることには違いない。

 僕は、ごくりと喉を鳴らし、彼女の毛に覆われた胸に手を乗せた。アン、と小さく鳴く愛猫。薄い胸肉を通して、彼女の鼓動が伝わってくる。とくん、とくん、と。やや早く胸を打つそれは、興奮の表れだろうか。そう思うと、僕はますます己の気分が昂るのを感じた。

「すけべ」

 鼻先を両手で隠しながら、彼女が呟く。自分から誘っておいて、何を言うか。僕は空いた手で彼女の頭を支え、胸を触る手に力を込めた。指の動きに合わせ、むにむにと形を変えるおっぱい。柔らかい。女の子の身体だ。
 
「うにゃ…ぁ…♥」

 膝の上で、雌猫が悩ましい声を上げる。股間に悪い。彼女にまた茶化される前に、僕は愛撫の手を休めず、彼女を攻め続けた。胸ばかりでなく、時折、脇下やお腹も刺激する。やや山なりに膨らんだお腹は、幼子のそれに似ていて、弾みよく、妙に温かい。撫で回すと、やはり心地良さそうに鳴く彼女。喉からお腹に掛けてのラインは、猫にとってのスウィートスポットだ。魔物である彼女も例外ではない。そのラインを重点的に、とことん彼女を撫で回す。

「ふにゃっ♥ にゃ♥ あっ♥ にゃぁ〜…っ♥」

 大口を開け、涎を垂らすミケ。よほど気持ちが良いようだ。それを裏付けるかの如く、短な毛の隙間から、恥ずかしそうに、薄桃色の乳首が顔を覗かせている。当然、弄る。指先でつつき、摘まんで、舐め、口に含む。あまりの刺激に、ぶるぶると震える小さな身体。だが、手は緩めない。いや、緩められない。彼女が刺激に夢中となっているように、僕もまた、彼女に夢中になっていたからだ。
 次第に激しさを増す愛撫。音立つほどに、強く彼女の胸を吸う。母乳か、汗か、ほのかな甘みを舌に感じながら。唾液によって、湿り、絡みつく毛。後で身体を洗うのが大変になるが、今はそんなことも気にならない。毛を指で掻き分けて、乳首の全てを日の下に晒け出し、舐る。ミルクを飲む子猫のように、ひたすら舌を突き出して、舐め上げる。

「ふぅぅ〜…っ♥ ふっ♥ うぅ〜っ…♥」

 呼吸が間に合わないのか、ミケが不定のリズムで息吐いている。僕は彼女の背中を撫で、落ち着かせようとする一方で、手をびしょ濡れの股座へと伸ばそうとした。

 …が。

「バカモノッ!」

 ゴツン、と。天罰とばかりに、突然頭上から、彼女が愛用している杖が振ってきた。

「ご、御主人ばかり愉しむとは何事か…! ワガハイにも遊ばせんか!」

 どうやら、一方的にやられたのが御立腹らしい。彼女は身体を起こすと、何かを誤魔化すかのように、自身の尻尾を舐めながら、空いた手で、ズボン越しに僕の膨らみを叩いた。

「これじゃ、これ。はよう出さんか」

 杖を除け、命じられるままに、僕は下着ごとズボンを下ろした。ボロン、と飛び出る、いきり立った雄のそれ。ガチガチに充血したペニスは、微かな熱気を放ちながら、彼女の眼前に差し出された。それを見て、耳をピョコピョコと動かすミケ。

「おぉ、おぉ。相変わらず、立派なマラをしておる」

 脈打つモノを、早速前足を用いて弄り始める彼女。まずは形を確かめるかのように、右から左から、竿を撫で、軽く叩いて…。肉球と柔毛の甘い感触に、思わず腰が引いてしまう。だが、彼女は両手でがっしと獲物を捕らえると、手前へ引き寄せ、毛繕いをするが如く、その先端に舌を這わせた。ざらざらとした、猫独特の舌がもたらす刺激は、甘美の一言。背筋を走る電流、溢れ出るカウパーと引き換えに、理性が少しずつ削ぎ落とされていく。

 火照る僕を見て、満足そうに王が笑む。そして、彼女は一声鳴くと、鼻先をペニスへと押し当て、胸いっぱいに息を吸い込んで…。

「クサッ!」

 フレーメン顔。ひどい。

「…なーんての。ええ匂いじゃよ、御主人♥」

 嘘か真か。彼女はけたけた笑い、改めて僕のモノを嗅ぎ始めた。

「スンスン…♥ ええのぉ…、トローンと沁み入る匂いじゃ…♥」

 亀の頭を撫でながら、飽きることなく、雄の匂いを愉しむミケ。正直、ものすごく恥ずかしい。お世辞にも良い匂いとはいえないその場所で、彼女は鼻をヒクつかせ、その香りに溺れている。そして、次には自らの顔をペニスへと擦り当てて、マーキングを始めた。額や頬のフカフカとした毛、白銀色のサラサラとした髪の毛。二つの毛が、僕のモノへと絡み、こそばゆさにも似た快感を与えてくる。
 
「んっふふ…♥ 言わずもがな、これもワガハイのモノじゃぞ♥」

 顔中カウパーまみれになりながらも、悦に浸った表情で、彼女が舌を伸ばす。裏筋に、ぺろりと、またも押し当てられる猫舌。瞬間、射精にも似た跳ね方で、鈴口よりカウパーが放たれる。稲妻にも似た、痺れるような刺激。僕は眉間に皺を寄せ、どうにかその快感に耐えようと努めた。

「おぉ、イイコ、イイコ♥ ビックンビックン跳ねて、愛いヤツよのぅ♥」

 子供をあやすかのように、両の手で竿を撫でながら、亀頭や裏筋、雁首等、弱いところに的を絞った彼女の舌が、僕を翻弄する。身体も、心も。彼女の言葉、彼女の愛撫によって、少しずつ準備が整っていく。子を成す準備が。

「にゃうっ!?」

 彼女も、また。僕はミケの身体を持ち上げ、上下を逆さまにし、彼女の雌である部分を見つめた。毛に覆われてはいるものの、パッと見で分かるほどにドロドロだ。後ろの穴も、パクパク物欲しそうにしている。
 期待には応えねばなるまい。僕は顎を突き出すと、茂みの中に口を沈ませ、幼い秘部を舐め上げた。響く、甲高い声。構わずしゃぶる。女の子の部分だけでなく、筋に沿って、お尻の方も。滴る愛液を、口端からこぼしながらも、舌で掬い上げ、飲み込む。粘つく味わい。癖になる。ペニスへの刺激に負けじとばかりに、僕は繰り返し、彼女の弱いところを攻め立てた。閉じた柔肉を押し広げ、オシッコの穴と赤ちゃんの穴を、舌先でほじくったり。ぷっくりと膨らんだクリトリスに、優しく歯を立ててみたり。腸液を垂らすお尻を、指腹でこねくり回したり。にゃんにゃん鳴き喚く彼女を尻目に、ひたすらやりたいことをやった。変態と罵られようが、構うものか。これをしながらならば、僕は何時、何度だってオナニーできる自信がある。

「ふにゃあぁぁっ♥ こ、こやつ…ぅ♥ ワガハイを宙ぶらりんにしおってからに…♥」

 が、自身の劣勢を許す彼女ではない。彼女はその長い尻尾を、僕の首に巻きつけ安定を図ると、再びペニスを弄り始めた。余裕がないのか、先ほどまでのような遊び心はなく。餌を前にした時のように。彼女は一心不乱となって、僕のモノを食み、呑み込んだ。人間よりも奥行きのある、狭い口内。熱い。今にも蕩けそうだ。

「んぐっ♥ ぢゅっ♥ ぢゅるっ…♥ こやつめ、こやつめっ…♥ ちゅぅぅ…っ♥」

 睾丸をペチペチ叩きながら、ミケが懸命にペニスをしゃぶっている。可愛い。そして、とてもエッチだ。僕のお腹の奥で、ぶくぶくと膨らんでいくものを感じる。それが僕に語り掛ける。もっとだ、と。
 欲望に押されるがまま、腰を振るう僕。犯される彼女の口内。逆も然り。彼女は両足で僕の頭を押さえると、グリグリと秘部を押し付けてきた。互いに求め、卑しく性器を突き出す雄と雌。獣の求愛。なお求め合う。求め、求め、求め…。

 …そして。

「んぐぅぅぅっ♥♥♥」

 いつしか、果てた。

「ふぐっ…♥ ぢゅるっ♥ ごくん…♥ んく…♥ けほっ♥ んく、ちゅ…っ♥ こくん…♥」

 喉奥にまで突き入れた、その先端から、凝り固まった欲望を射ち放つ。どくん、どくん、どくん…。次々と、彼女の中へと流れ込んでいく精液。本来、注ぐべきところではない穴。しかし、それを受け入れ、飲み込む彼女。背徳心と充足感が、僕を包み込む。

「ちゅ…♥ ふーっ…♥ ちゅぅぅ…っ♥ けほっ、けほ…♥ ちゅるっ…♥ ふー…♥」

 肩で息を吐き、時折むせながらも、最後の一滴まで飲み尽くした彼女。だのに、唾液とカウパーですっかりドロドロになった僕のモノを、彼女は舌で拭い、今だ愛撫を続けている。その献身的な姿に、そして、この小さなお腹の中に、僕の精液が注ぎ込まれたのかと思うと、僕は言いようもない興奮を覚え、またペニスが硬くなった。

 僕は、彼女の頭を撫でながら、今だ達していない女の子の場所へとキスをした。男として、ここは彼女にも達してもらわねば。意気込み、僕は彼女の雌穴へと、舌を挿し入れて…。

「バカモノッ」

 寸でで蹴られた。痛い。

「いつまで舐めておるか。もう準備はできておるというに…」

 文句を言いながら、いそいそと机に登り、足を宙に投げ出して、彼女がお尻をこちらへと向ける。

「…早よう。ワガハイは……御主人が欲しいのじゃ…♥」

 そう言って、ぺたんと耳を垂らし、恥ずかしげに振り返りながら、尻尾で秘部を広げるミケ。

「子作り…、のぅ♥」

 瞬間。僕の中で、何かが切れた。

「ふにゃあああぁぁっっ♥♥♥」

 丁度よい高さに置かれた彼女の腰を掴み、勢いのまま捻じ挿れる。襞をかき分け、容易く最奥へと達するペニス。子宮口と鈴口が、深く口付けを交わすのを合図に、彼女のナカがキュウッと締まった。
 一度動きを止めて、息を整える二人。お互い、この瞬間に達することも珍しくない。それほどまでに刺激的で、また、強い何かを感じる瞬間なのだ。

「ハッ…♥ ハッ…♥ ハ……ッ♥」

 快感に震える彼女の背中を見下ろす。こう見ると、やっぱり猫だ。いや、前から見ても、十二分に猫だが。でも、それでいて、僕の恋人だ。見た目や種族など、些細な問題にもならない。彼女がどんな姿であろうと、僕は彼女を愛すだろう。たまたま、今生は猫なだけ。
 でも、ここだけの話。猫の姿だからこそ、より興奮している面はある…かもしれない。

「ッ…なに、しとる…♥ 早よう……動かんか…♥」

 見惚れていたところを、彼女に窘められ、我に帰る僕。言われた通り、腰を動かし始める。

「ふぐっ♥ んっ♥ にゃぁっ…♥ 御主人のが…ワガハイの中をゴリゴリと…っ♥ んにゅぅっ♥」

 狭い膣内を押し広げて、彼女のナカを蹂躙する。いや、蹂躙されているのは、むしろこちらか。この刺激…返し膣が与えてくる刺激は、目も眩むほどに強烈なのだから。

 返し膣。ケット・シーの膣は、他と異なり、襞が子宮に向けて伸びている。つまり、挿れるに容易く、抜くに難い構造だ。その特徴的な形から、襞のひとつひとつが雁首に引っかかるため、刺激は並のものじゃない。だが、これはミケの側にも、同様の作用をもたらしてしまう。襞の向きに逆らって動かれたとき、襞はペニスによって、通った箇所の全てが強く弾かれる。快感は、倍では済まない。事実、交尾を始めて、数分もしないうちに…。

「んにぃぃぃっ…♥ あっ♥ やだっ♥ チッコが…止まらんのじゃぁぁ…♥」

 彼女の股座から、ぷしゃっと放たれる黄金水。こうして、あまりの快感に、容易く失禁してしまうのだ。だが、まだ彼女が達したわけではない。失禁はあくまで、オーバーフローを防ぐための留め金のようなもの。僕は勢いを緩めず、彼女の尻に腰を打ちつけ、子宮を突き上げた。小さなお腹の中から、グチュン、グチュンと、愛液と襞が、肉棒によってかき混ぜられる音が聞こえてくる。

「ふにぃぃっ♥ 御主人ッ…♥ もっと…もっとぉっ♥ 交尾して…っ……パコパコしてぇっ♥」

 渦巻く快感の波。だが、更なるうねりを求め、僕は彼女の首を甘噛みし、乳首を抓り上げた。声にならない喘ぎを響かせて、爪を立て、机をガリガリと削るミケ。しかし、更に、更にと。尻尾の付け根…彼女にとって、最もデリケートな部分を、指でノックした。

「ふぎっっ♥♥♥」

 不意に、限界まで絞られた膣と、ぽっかりと大口を開けた子宮が、ペニスに喰らい掛かる。ガッチリと捕らえられた僕のモノは、その場でほぼほぼ動きを封じられてしまった。
 だが、ほんのわずか。子宮と膣の繋ぎ目…子種を注ぎ込む穴の分、余裕がある。僕は、小刻みに前後し、また、左右への捻りも加えながら、最後のダメ押しを図った。こみ上げる射精感。今更、我慢する必要もない。ありったけの力を振り絞って、僕は彼女のナカをこれでもかと虐め抜いた。

「はひっ♥ にゃっ♥ あぅっ♥ ひっ♥ ひんっ♥ 御主人ッ♥ ひにゃっ♥ ごしゅじんっ…♥」

 鈴をリンリン鳴らし、尻尾を僕の足へと絡めながら、猫がうわ言のように主人を呼ぶ。

「産みたいのじゃぁ…♥ 孕みたい…ぃ…っ♥ 御主人の…あっ♥ 赤ちゃ、ん……っ♥」

 頬を撫でる手をチロチロと舐めながら、言葉を続ける彼女。

「ワガハイに…ちょうだい…♥ ぜんぶ…っ♥ にゃっ♥ にゃあぁぁ…♥」

 猫撫で声。嫌なはずがない。逆らうはずがない。
 だって、彼女は僕の王様で。だって、彼女は僕の猫で。

「ひぅっ…♥」

 だって…。

「にゃうううぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ♥♥♥♥♥♥♥♥」

 彼女は、僕の恋人だから。


……………

………




「なんだ、御主人。ワガハイと添い寝したいと申すか」

 夜。お風呂も済ませ、部屋に戻ると、彼女は我が物顔で僕のベッドを占領していた。しかも、ど真ん中に寝転がっている。おまけに添い寝と来た。ふてぶてしさ極まれり。例えクレオパトラだろうと許されないぞ、これは。

「ま、よいじゃろう。ほれ」

 しかし、何の気まぐれか。素直にベッドを明け渡してくれる彼女。珍しいこともあるものだ。傍らで猫が見守る中、僕はベッドへと潜り、毛布を被り直して、電気を消した。
 今日は疲れた。ぐっすり休んで、明日は早起きし、やりかけのテキストを仕上げよう。結局、今日は彼女に悪戯された分を消すだけで終わってしまったのだから。遅れ分を、何としても取り戻さなければ…。

「よいせ、っと」

 …重い。何かが顔の上に乗っている。いや、何かは分かるが、何故乗った。

「鼻息が荒いぞ。まだ盛っとるのか、どすけべ」

 台詞はさておき、自分用のベッドがあるだろう。何故こっちに来た。何故乗った。いや、せめて毛布の上なら許した。枕に隣同士でも許した。何故、顔面直上なのか。

「戯れてやらんこともないがのう。明日の朝食を、猫マッシヴだ★にするのが条件じゃが」

 なるほど。どうやら彼女は、まだ足りていないらしい。それを僕のせいにして、朝食まで良い物にしようという魂胆のようだ。その手には乗るものか。テキストの件もある。無視だ、無視。

「………」

 ………。

「…障子、破るぞ」

 ………。

「………」

 ………。

「……お尻」

 …お尻?

「お尻が物寂しいのう。カツブシでも入れるかのう」

 ………。

「…あ、おっきくなった」

 …仕方がない。僕は視界を覆う彼女を持ち上げて、その顔を見た。

「にしし♪」

 勝ち誇ったように笑う、猫の王様。本当、小憎らしい。だが、恐らく一生、僕は彼女に敵わないだろう。こうして、物理的にも、精神的にも、尻に敷かれ続ける気がする。これだから、世間からお猫様だなんて呼ばれるんだ。

「なに、そうしょげるな。特別に、先よりも張り切って相手をしてやろう」

 不遜な物言い。しかし、彼女は許される。僕が許す。彼女だから許す。彼女もそれを分かっているから、僕にだけ、そんなことを言うのだろう。そして、こうして一緒に居て、愛してくれるのだろう。お金は掛かるし、手間も掛かるが、彼女のためなら安いもの。

 なぜかって、それはもちろん…。

「ほーれっ、可愛い猫が待っちょるぞ〜」

 それ以上のものを、彼女が与えてくれるから。
 それ以上のものを、彼女は与えてくれたから。

 いや、そもそも、理由なんていらないんだ。

「にゃーんっ♥」

 だって、彼女は猫だから。
15/03/05 21:00更新 / コジコジ

■作者メッセージ
こちらでは、筆を置くと宣言した身ではありますが…
ごめんなさい、この一作は、どうか許して頂けますでしょうか。

ケット・シーちゃんの愛くるしさに、どうしても我慢ができなかったのです…。

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