宿幸灯雪
幸せというものに、果てなどありません。
今が一番と感じても、それは容易く塗り替えられることでしょう。
「『今日は僕に甘えてほしい』…？」
彼の意外な言葉に、私は目を見開きました。
恥ずかしそうに俯く彼。巣穴に隠れる子狐のように。
「…熱はありませんね」
私は彼の額に手を当てながら、病気ではないことを確かめました。
氷のように冷えた我が身とは逆に、常に温もりを宿した彼の身体。
とはいえ、私の腕の中にあるその身体は、いつも通りの温かさです。
特別、熱っぽいということはありません。頬が少々熱いくらいです。
「どうしたのですか？ 突然そのようなことを…」
不思議に思い、私は未だに顔を埋める彼に尋ねました。
よほど勇気を振り絞っての言葉だったのでしょうか。耳まで真っ赤です。
そんな彼に、私はときめきを覚えながら、優しく彼の頭を撫でました。
それにしても、彼がこんなことを言うなんて夢にも思いませんでした。
私と彼は、彼が生まれた頃からの仲であり、お互いをよく理解しています。
その私が驚くほどに、先刻の彼の一言は想定外のものだったのです。
語れば長くなりますが、私が彼と出会ったのは、この身が小さな童であった頃です。
私は母様の御許しを得て、足繁く人里へと降りては、人間の子供達と遊んでいました。
元々、この土地は妖魔と人間との親交が深く、近隣の村の人々は私達に友好的でした。
共に遊んでくれるばかりでなく、家に迎え入れ、食事まで振舞ってくれたこともありました。
私は人間が大好きです。それは今も変わりません。彼らをとても愛おしい存在と思っています。
ある日のことです。今日のように、雪がしんしんと降り積もる日。
その時も私は、村の子供達と一緒になって雪合戦を楽しんでいました。
不意に、誰かの叫び声が村中に響き、途端に辺りは慌しい雰囲気に包まれました。
何事かと思い、傍らの友達に尋ねると、彼女は私の腕を掴んで、急に走り出したのです。
いったいどうしたというのでしょう。何度尋ねても、彼女は息切らせて駆けるばかり。
私も白い息を吐きながら、必死に彼女の足に合わせ、背中についていきました。
彼女と私が行き着いた先。それは何の変哲もない一軒家でした。
戸を開き、草履についた雪を払うのも忘れ、玄関を駆け上がる私達。
囲炉裏間は大人達でいっぱいでしたが、彼女は果敢にも突撃し、
僅かな隙間を押し広げては人壁を通り抜けようとしました。
山男達の巨体にぎゅうぎゅうと圧迫されながらも、私も彼女も、お互いの手を離しません。
彼女は私を、どこへ案内しようとしているのでしょう。何を見せようとしているのでしょう。
私はそれが知りたくて、ただひたすらに彼女を信じ、苦難の波に耐え続けました。
…ふと、彼女の足が止まりました。
人壁を抜けた、私達の目の前に現れたもの。
それは、今にも新たな命を産み落とそうとしている女性の姿でした。
私の手を離し、産気づいた女性に寄り添って、『お母さん』と叫ぶ友達。
苦しそうでありながらも、彼女の母様は、その表情をにっこりとしたものに変えました。
そして、我が子の頭を優しく撫でながら、雪解け水のように澄んだ声で囁き掛けました。
『もうすぐ、お姉ちゃんになるよ…』
小さな手を握り締めながら、再び痛みに悶える声を上げる母親。
産婆さんが駆け寄り、母親と赤ん坊を励まします。がんばれ、がんばれ。
それに合わせ、友達も涙を流しながら、母親と弟を応援しました。
一緒に遊んでいた子達も。周りを囲む大人達も。村中の皆が…。
…その中で産声を上げたのが、彼です。
私が初めて抱いた赤ん坊。顔を真っ赤に、泣きじゃくって。
彼女の母様と、父様、爺様、彼女の胸に抱かれ、その次に。
もしかすれば私は、その瞬間には、彼に恋していたのかもしれません。
それからというもの、私は毎日のように彼女の家に通うようになりました。
もちろん、彼のためです。母乳を飲み、湯浴みをし、おしめを変え、眠る彼を見るために。
私と彼女は、彼女の母様から教わりながら、彼の世話のいくつかを任せて頂きました。
それは彼が言葉を話し、歯が生え揃い、歩けるようになってからも、ずっと続きました。
だからこそ、私は彼がどういう人間なのか、彼の姉様と同じくらいに知っています。
つむじがふたつあるのも、おばけが苦手なのも、お米の硬さはどのくらいが好みなのかも。
その私が驚くのですから、それがどれほど意外なことか、ご理解頂けますでしょうか。
「…気にせずとも、甘えたままでいいのですよ」
小さな頭を胸に抱えながら、私は彼の首筋に、ふぅっ…と吐息を掛けました。
魔力を込めた吐息です。彼の心が、より私を求めるようになるお呪い。
「ふふっ…♥」
効果はすぐに現れ、彼はとても切なそうな反応を見せました。
胸の前で拳を作り、潤んだ瞳でこちらを見上げるその様は、愛おしく。
まだ十の歳にも満たない幼い相手に、私は例え様のない興奮を覚えました。
「今日は口で奉仕致しましょうか？ それとも、こちらで…♥」
帯を解き、青白い素肌を晒して、純情な彼を誘惑する私。
はしたなくも、それはまさしく魔物のあるべき姿と言えるでしょう。
恥が無い訳ではありません。むしろ、恥を感じるからこそ心地良いと言えます。
愛する者に対し、己が恥を晒す行為。背徳感から、氷の身体に火が点もるのを感じます。
さあ、愉しみましょう、愛しい人。
貴方の熱で、私の身体を染め上げて…。
「…？」
ふと、桜色に染まる私の耳に、雪積もるような小さな声が届きました。
ぽつり、ぽつりと。それは彼の…あそこを両手で押さえた少年の声でした。
「…ぁ…」
…それは告白でした。彼の愛でもあり、彼の望みでもあり。
私に尽くしたいという想いが込められた、精一杯の告白でした。
曰く、彼は前々から、私に甘えて欲しかったそうです。
彼にとって、私はもう一人の姉であると共に、妻でもあります。
しかし、私は常に両方の立場を取り、彼を甘やかす立場にいました。
それは彼の夫としての心に、複雑な想いを宿してしまったようです。
彼は言いました。『今日は僕に甘えてほしい』と…。
その言葉は、弟としてではなく、夫としてのものだったのでしょう。
疼きに身を震わせながらも、彼はそれに耐え、私の胸に手を伸ばしました。
私を愛撫するために。私に甘えてもらうために。彼の意思は、千年氷よりも固いようです。
「…旦那様…♥」
想い人に微笑みを返しながら、私は反省しました。
危うく、彼の思いやりを潰してしまうところだったのですから。
思い知りました。彼はもう、子供はないということを。
もう彼は、自らの足で走り、粗相も一人で済ませられる大人です。
それなのに私は、ずっと彼のことを子供扱いしてしまいました。
恐らくは、それも彼の夫しての…いえ、弟としての方でしょうか。
どちらにせよ、彼の自尊心に触れてしまっていたのかもしれません。
彼は甘えん坊ですので、それを嬉しく思う部分もあるでしょう。
ですが、人の心は複雑です。彼も、雄としての誇りを持っています。
雌に甘やかされてばかりの現状に、本能が抗ったのかもしれません。
嬉しさと恥ずかしさを抑えきれない口元を、袖で隠しながら。
私は純粋無垢な乙女のように、彼を見つめて言いました。
「…では、今宵は私を…」
どさりと落ちる、軒先の雪。
「甘えさせてくださいませ…♥」
…口付け。初めて、彼から私へと触れてくれた唇。震えながらも。
柔らかな感触。甘い味。いつもと同じはずですのに、どこか違って感じます。
それはまるで、ファーストキスのようにロマンチック。
「ん…♥ ん、んっ…♥」
迸る熱。それは私の中から生まれてきます。
唇が触れ合っているだけの、とても子供っぽいキスですのに。
私の顔はみるみる紅潮し、今にも蒸気が立ち上りそうです。
だって、だって…仕方ないではありませんか。
こんなにも可愛いんですもの。この子が。私の夫が。
決して頭が良いわけでも、容姿端麗とも言えない彼ですが。
これほどまでに私を愛してくれる存在を前に、どうして平静でいられましょう。
それが唇に触れたとあれば…溢れんばかりの想いを込めて触れ合ったとなれば、
氷山すら溶けましょう。私というちっぽけな雪の結晶なぞ、耐えられるはずがありません。
「はっ…♥ 旦那様…♥ ちゅっ…、ちゅ♥ 旦那様ぁ…♥」
啄ばむキスから、徐々に大人のキスへと変化させていく彼。
小さな舌が、ぺろりと私の唇をなぞるたびに、背筋がぞくりとしてしまいます。
彼の技術は拙いものではありましたが、火照る私を満足させるには充分過ぎるほどでした。
「ちゅぅ…♥ あっ♥ 胸…、気持ちいい…♥」
襦袢をずらし、彼が私の胸に指を這わせます。
僅かに触れられるだけで、敏感に反応してしまう二つの膨らみ。
彼の指は、まるで熱した鉄のよう。私の胸を溶かし、深く喰い込んできます。
それは直接、私の性感帯に触れるかのように、眩いほどの快感を弾けさせました。
たまらず私は、愛撫に夢中になる彼の肩を掴みました。
このままでは狂ってしまうと直感したからです。全てが溶けてしまうと。
まだ愛撫を始めて間もないのに、私の身体は絶頂を迎える寸前でした。
何がそうさせているのでしょう。彼の愛でしょうか、私の愛でしょうか。
分かりません…。分かりませんが、このままではいけないことは分かります。
「ぁ…♥ だめ…っ♥ 旦那様…、待っ…て…♥」
ただならぬ雰囲気に気付いたのか、彼は愛撫を止め、私を見つめました。
心配そうな表情を浮かべる恋人を前に、私は今、どんな顔をしているのでしょう。
荒く息を吐き、汗は止まらず、涙が目尻に溜まり、口端からは唾液をこぼして…。
恥ずかしい。恥ずかしいのですが、隠すことが出来ません。余裕がありません。
加えて、私の身体が求めるのです。止めないで…と。
快感に貪欲な魔物の本能が、彼からの刺激を欲しているのです。
「はぁ…、はっ…♥ あっ…、旦那様の匂い…♥ クンクン…♥」
止めないで…。もっと弄って。胸、乱暴に揉んでほしい。
優しくてもいい。貴方なら。吸っても、くすぐってもいいから。
乳首を噛んで。おへそを弄って。背中を撫でて。お尻を叩いて。
どれでもいいの。貴方がいいの。お願い、おねがい、おねがいっ…！
「ふぅっ…♥ クンクン…♥ 旦那様…、旦那様ぁ…っ♥」
身に残る刺激に耐えるほど、魔物としての本能は膨らんでいき。
魔物としての本能が膨らむほど、刺激が身を刺すものに変わっていきます。
しかし、それでも私は必死に耐えました。彼の好意を受け止めるために。
彼の匂いを嗅いで、身体を擦り付けて、必死に本能を抑え込みました。
それらは一時凌ぎに過ぎず、むしろ、後から更に欲望が増してしまう愚行です。
ですが、知っていてもやらずにはいられません。今日は彼に甘える日なのですから。
彼の望みを適えるためならば、例え灼熱の炎でも、私は喜んで飲み干しましょう。
「…あっ♥ ひぁ♥ あぁっ♥ 旦那様っ♥ きゃうんっ♥ やぁっ…♥」
そんな私の想いを、知ってでしょうか、知らずでしょうか。
腕の中に抱かれた彼は、恐る恐るも愛撫を再開しました。
胸の先端を口に含み、チュゥチュゥと音を立てて吸い上げます。
それはいつの日にか見た、彼が母様から母乳を貰うそれと同じ吸い方でした。
ミルクは出ていないのに、咽を動かしているのは、流れる汗を飲んでいるのでしょうか。
恥ずかしい。恥ずかしいのに…嬉しい。感じてしまいます。身体も、心も、ゾクゾクと。
「はっ…♥ …ひゃんっ！？ そ、そっちはっ…♥ いけませ…ひゃうぅっ♥」
不意に、彼の手が下腹部を滑り、私の最も敏感な部分に触れました。
遠慮しているのでしょうか、そのたどたどしい手つきは、まるで焦らしているかのようで。
身は達する寸前ながらも、その一歩手前を延々と彷徨わされてしまうもどかしさ。狂いそう。
…触れたい。もう、自分で触れてしまいたい。
恥豆を一擦りでもすれば、潮を吹いて達せられるに違いありません。
どれほど心地良いでしょう。きっとそれは、天にも昇るほどの快感。
「旦那様っ…♥ あっ♥ おねが…い…♥」
…ですが、私はそうしません。知っているからです。
その快感さえも、この拙い指の動きの前には、矮小な刺激に過ぎないことを。
だから、私は耐えます。狂おうとも耐えます。
彼が、彼自身の指で導いてくれるまで。それが私の甘え方。
滑稽とは想いませんか？ ねえ、旦那様。貴方の姉は…妻は変人でしょう。
ですが、私はやっぱり貴方が好い。自分の指よりも、貴方の指の方が好い。
「ゆ…ふぁっ♥ きゃうっ♥ ゆ、びぃ…♥ あんっ♥」
…だからこそ、お願いします。
「ゆび…っ…、いれ…て……♥」
もう…イかせてくださいませっ…！
「…あっ♥ あぁっ♥ ふああぁぁぁ〜〜〜〜っっ♥♥♥」
彼の中指が、私の秘部に埋まると共に。
私は吹雪をも払うような嬌声を上げ…達しました。
「はっ♥ はひっ♥ やっ♥ 旦那様っ…♥ あちらを向いて…♥ ひぅっ♥」
痙攣する身体。跳ねる鼓動。呂律の回らない舌。
絶頂を迎えた私の秘所から漏れる、黄金色の清水…。
恥極まれることに、余りの快感を受け…私は失禁してしまったのです。
「見ないでっ…♥ 見ないでくださいませ…、旦那様…っ♥ あぁ…っ♥」
チョロチョロと音を立ててこぼれ落ちる、私の中の雪解け水。
止まりません。我慢した分、勢いよく溢れ出てきてしまいます。
おまけに、彼と密着していることで、お互いを濡らしてしまっています。
私はもう、全身が溶け落ちてしまいそうなほどの恥を覚えました。
粗相自体も恥ずかしいのですが、何よりそれを、彼に見られていることが恥辱でした。
その彼がまた、まじまじと見つめるものですから、尚更熱が増してしまいます。
今更ながら、私は乱れた袖で顔を覆い、彼から自分の表情が見えないようにしました。
「…ぁ…♥」
その時です。私は裾の隙間から見える景色に、あるものを見つけました。
それは彼の子供でした。私の中指ほどの、可愛らしい亀さん。
私の粗相により塗れた召し物を、グイグイと押し上げて主張しています。
「旦那…様…♥」
私の匂いと混じり漂う、彼の濃ゆい精の香り。
つららのように突き立ち、ゆきだるまのように可愛らしく。
彼のそれを、今まで何度口に含み、胸で挟み、お尻で、秘所で受け止めたことでしょう。
思い出せば、思い出すほど。視界は歪み、思考は薄れ、呼吸は荒く、欲望は濃く…。
「…あは♥」
瞬間、ぷつりと何かが切れました。
「旦那様ぁ…♥ もっと甘やかせてくださぁい…♥」
穏やかに言葉を紡ぎながらも、彼の衣服に指を通す私。
わざと彼の肌に指先を這わせながら、ゆっくりとはだけさせていきます。
乳首を軽く引っ掻くと、甘い声を上げる彼。あぁ、可愛らしい、いじらしい。
「私、ここがムズムズするんです…♥ ここ…♥」
下着を脱がし、飛び出た亀さんを捕まえて。
私は自らの秘所に、その先端をいやらしく擦り付けました。
こんなに亀頭を膨らませて、彼も相当我慢していたのでしょうか。
クチュクチュと響く水音。彼も私も、愛液でずぶ濡れ。まるでぬれおなごさんです。
「んんっ…♥ 旦那様…、早くぅ…♥ 旦那様がしてくれるんでしょう？」
しかし、どうしたのでしょう。彼はまったく挿入する気配がありません。
いえ、何かしようとはしているのですが、どうやら困っているようでした。
その様子を見て、ふと、私は彼が何をしたいのかに気付きました。
そして、どうして困っているのかも。それは至極簡単なことだったのです。
「…旦那様」
私は彼と肌を重ね、雪に聞こえぬよう、そっと耳打ちをしました。
「滾りを納める場所、教えて差し上げます…♥」
瞬間、彼の顔が達磨さんのように真っ赤になりました。
そうです、彼はどこに自らのものを挿入すればいいのか、分からなかったのです。
思い返してみれば、初めての時も含め、彼は常に受身でした。
挿入の際も、気付けば入っていた…という状態だったのでしょう。
無理もありません。挿入の前に、彼は何度か達することがほとんどでした。
朦朧とした意識の中では、大体の場所しか分からなかったのでしょう。
「さあ…♥ ここに旦那様のものを…♥」
既に恥を忘れた私は、彼の前で足を大きく広げ、秘所を指で開きました。
彼の熱い視線を感じながら、クリトリスを覆う皮を剥き、弄ります。
トロトロと溢れ出る愛液は、彼の亀さんにいくつも垂れ落ちていきます。
それを見て私は、更なる昂ぶりを得、彼を誘惑しようといやらしく自慰をするのでした。
「…あっ♥」
不意に、彼が動きを見せました。
亀さんの根元を手で押さえ、先端を教えた穴へと押し付けてきます。
私はごくりと息を飲み込み、次の瞬間を待ち焦がれました。
「あっ…♥ あっ♥ きゃううぅぅぅぅんっ♥♥♥」
僅かな空白の後…つぷりと、彼のものが私の中を滑りました。
子犬のような雄叫びをあげる私。蕩け落ちる神経。性感帯。
「あぁっ…♥ 旦那様…ぁ…♥」
へたりと彼の胸板に崩れ落ちる私を、恋人は強く抱き締めてくれました。
耳元で、何度も私の名前を呟きながら。愛の言葉と共に。
その一言一言が、アイスクリームとなった私の脳に響く度に、
膣はぎゅぅっと彼のものを包み込み、お互いに強い快感を与えました。
「はぁ…っ♥ 好き…♥ 好きですぅ♥ 旦那様…♥ あぁっ…♥」
ぐい、ぐいと膣壁を持ち上げる亀さんが、彼の限界を伝えています。
どれほどの精液が吐き出されるのでしょう、考えただけで達しそうです。
ですが、それは同時に、完全に彼の動きを止めてしまいました。
彼の性格から察するに、今回は私を甘やかす立場である以上、先に達したくないのでしょう。
その想いは私にとって、どんな言葉よりも胸ときめいてしまう思いやりでもありました。
「…旦那様♥」
額と額を合わせながら、小さな夫に微笑み掛ける私。
「私ももう、すぐに達しそうですから…」
そのまま、そっと唇を近付けて…。
「…出して…♥」
魔力の全てを、彼に流し込みました。
「んっ…♥ んんっ♥ んんうぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜っっっ♥♥♥♥♥♥♥♥」
彼が大きく背中を反らすと共に、子宮を叩くほどに注ぎ込まれる精子。
私の中をどろどろに溶かし、なお留まるところを知らず、流れ込んできます。
からっぽの身体に満ちていく精。魔力。甦る冷気と淫魔の力。
しかし、一時も留めません。すぐにまた、口付けを通して彼に送り込みます。
彼の射精が完全に止まるまで、ずっと。焦がれさえ燃やし尽くす想いを、ずっと。
「んっ♥ んぐっ♥ ふっ♥ ぅっ♥ んんっ♥ んぅっ♥」
縮んでいく私の身体。より感じる、亀さんの脈動と精子の熱さ。
それでも止めません。もっと彼に気持ちよくなって欲しいから。
甘やかせてくれたお礼をしたいから。もっと、もっと、もっと…。
「ぷはっ♥ ひゃっ♥ まだっ♥ 出てっ♥ んんっ♥ ちゅっ♥ はっ♥」
もっと…。
「ふぁっ♥ あっ♥ ちゅ♥ はっ♥ だめっ♥ だめぇっ♥ あぁっ♥」
…あぁ。
「旦那様ぁ…♥」
溶けてしまいそう…。
……………
………
…
…目を覚ますと、私は彼の腕の中にいました。
見ると、身体がひどく縮んでいます。彼よりも小さく…。
恐らく、魔力を放出しすぎたことが原因でしょう。
彼から精を受けたといっても、全てが返ってくるわけではありません。
凍った窓に映る、彼と出会った頃の体格に戻った自分を見て、私は溜め息を吐きました。
これでは掃除をすることも、料理を作ることも難しくなってしまいます。
こうなってしまっては、誰が彼の身の回りをお世話をするというのでしょう。
「…あっ」
不意に、彼が小さくなった私を抱き寄せました。
振り返り見ると、目は瞑ったまま。寝惚けているのでしょうか。
「………」
今だ夢の世界に浸る彼の表情は、とても嬉しそうなものでした。
いったいどんな夢を見ているのでしょう。私には覗くことができません。
ですが、夢の世界でも、彼は私と一緒に居てくれるのでしょう。
胸を張って言えます。私は彼と、今日という日までずっと一緒だったのですから。
そして、明日も、明後日も、これからもです。雪解け、春が来ようとも、ずっと…。
「…旦那様」
自分よりも大きくなった彼に、私は身を寄せました。
彼は私の最愛の弟であり、夫ですが、もう子供ではありません。
それを今日という日に、勇気をもって、彼は私に教えてくれました。
そう、これまでも、これからも。
共に歩む中で、彼は私に多くのことを教えてくれるのでしょう。
彼が生まれたあの日、私の心に芽生えた気持ちを始めとして。
次はどんな幸せを、私に与えてくれるのでしょう。
「いえ。今だけは、お兄ちゃんですね…♥」
幸せというものに、果てなどありません。
今が一番と感じても、それは容易く塗り替えられることでしょう。
愛する人と日々を過ごす、全ての人がそれを知っています。
「…お兄ちゃん」
私も、彼も、その一人。
「愛してます…♥」
今、とても幸せです…。
今が一番と感じても、それは容易く塗り替えられることでしょう。
「『今日は僕に甘えてほしい』…？」
彼の意外な言葉に、私は目を見開きました。
恥ずかしそうに俯く彼。巣穴に隠れる子狐のように。
「…熱はありませんね」
私は彼の額に手を当てながら、病気ではないことを確かめました。
氷のように冷えた我が身とは逆に、常に温もりを宿した彼の身体。
とはいえ、私の腕の中にあるその身体は、いつも通りの温かさです。
特別、熱っぽいということはありません。頬が少々熱いくらいです。
「どうしたのですか？ 突然そのようなことを…」
不思議に思い、私は未だに顔を埋める彼に尋ねました。
よほど勇気を振り絞っての言葉だったのでしょうか。耳まで真っ赤です。
そんな彼に、私はときめきを覚えながら、優しく彼の頭を撫でました。
それにしても、彼がこんなことを言うなんて夢にも思いませんでした。
私と彼は、彼が生まれた頃からの仲であり、お互いをよく理解しています。
その私が驚くほどに、先刻の彼の一言は想定外のものだったのです。
語れば長くなりますが、私が彼と出会ったのは、この身が小さな童であった頃です。
私は母様の御許しを得て、足繁く人里へと降りては、人間の子供達と遊んでいました。
元々、この土地は妖魔と人間との親交が深く、近隣の村の人々は私達に友好的でした。
共に遊んでくれるばかりでなく、家に迎え入れ、食事まで振舞ってくれたこともありました。
私は人間が大好きです。それは今も変わりません。彼らをとても愛おしい存在と思っています。
ある日のことです。今日のように、雪がしんしんと降り積もる日。
その時も私は、村の子供達と一緒になって雪合戦を楽しんでいました。
不意に、誰かの叫び声が村中に響き、途端に辺りは慌しい雰囲気に包まれました。
何事かと思い、傍らの友達に尋ねると、彼女は私の腕を掴んで、急に走り出したのです。
いったいどうしたというのでしょう。何度尋ねても、彼女は息切らせて駆けるばかり。
私も白い息を吐きながら、必死に彼女の足に合わせ、背中についていきました。
彼女と私が行き着いた先。それは何の変哲もない一軒家でした。
戸を開き、草履についた雪を払うのも忘れ、玄関を駆け上がる私達。
囲炉裏間は大人達でいっぱいでしたが、彼女は果敢にも突撃し、
僅かな隙間を押し広げては人壁を通り抜けようとしました。
山男達の巨体にぎゅうぎゅうと圧迫されながらも、私も彼女も、お互いの手を離しません。
彼女は私を、どこへ案内しようとしているのでしょう。何を見せようとしているのでしょう。
私はそれが知りたくて、ただひたすらに彼女を信じ、苦難の波に耐え続けました。
…ふと、彼女の足が止まりました。
人壁を抜けた、私達の目の前に現れたもの。
それは、今にも新たな命を産み落とそうとしている女性の姿でした。
私の手を離し、産気づいた女性に寄り添って、『お母さん』と叫ぶ友達。
苦しそうでありながらも、彼女の母様は、その表情をにっこりとしたものに変えました。
そして、我が子の頭を優しく撫でながら、雪解け水のように澄んだ声で囁き掛けました。
『もうすぐ、お姉ちゃんになるよ…』
小さな手を握り締めながら、再び痛みに悶える声を上げる母親。
産婆さんが駆け寄り、母親と赤ん坊を励まします。がんばれ、がんばれ。
それに合わせ、友達も涙を流しながら、母親と弟を応援しました。
一緒に遊んでいた子達も。周りを囲む大人達も。村中の皆が…。
…その中で産声を上げたのが、彼です。
私が初めて抱いた赤ん坊。顔を真っ赤に、泣きじゃくって。
彼女の母様と、父様、爺様、彼女の胸に抱かれ、その次に。
もしかすれば私は、その瞬間には、彼に恋していたのかもしれません。
それからというもの、私は毎日のように彼女の家に通うようになりました。
もちろん、彼のためです。母乳を飲み、湯浴みをし、おしめを変え、眠る彼を見るために。
私と彼女は、彼女の母様から教わりながら、彼の世話のいくつかを任せて頂きました。
それは彼が言葉を話し、歯が生え揃い、歩けるようになってからも、ずっと続きました。
だからこそ、私は彼がどういう人間なのか、彼の姉様と同じくらいに知っています。
つむじがふたつあるのも、おばけが苦手なのも、お米の硬さはどのくらいが好みなのかも。
その私が驚くのですから、それがどれほど意外なことか、ご理解頂けますでしょうか。
「…気にせずとも、甘えたままでいいのですよ」
小さな頭を胸に抱えながら、私は彼の首筋に、ふぅっ…と吐息を掛けました。
魔力を込めた吐息です。彼の心が、より私を求めるようになるお呪い。
「ふふっ…♥」
効果はすぐに現れ、彼はとても切なそうな反応を見せました。
胸の前で拳を作り、潤んだ瞳でこちらを見上げるその様は、愛おしく。
まだ十の歳にも満たない幼い相手に、私は例え様のない興奮を覚えました。
「今日は口で奉仕致しましょうか？ それとも、こちらで…♥」
帯を解き、青白い素肌を晒して、純情な彼を誘惑する私。
はしたなくも、それはまさしく魔物のあるべき姿と言えるでしょう。
恥が無い訳ではありません。むしろ、恥を感じるからこそ心地良いと言えます。
愛する者に対し、己が恥を晒す行為。背徳感から、氷の身体に火が点もるのを感じます。
さあ、愉しみましょう、愛しい人。
貴方の熱で、私の身体を染め上げて…。
「…？」
ふと、桜色に染まる私の耳に、雪積もるような小さな声が届きました。
ぽつり、ぽつりと。それは彼の…あそこを両手で押さえた少年の声でした。
「…ぁ…」
…それは告白でした。彼の愛でもあり、彼の望みでもあり。
私に尽くしたいという想いが込められた、精一杯の告白でした。
曰く、彼は前々から、私に甘えて欲しかったそうです。
彼にとって、私はもう一人の姉であると共に、妻でもあります。
しかし、私は常に両方の立場を取り、彼を甘やかす立場にいました。
それは彼の夫としての心に、複雑な想いを宿してしまったようです。
彼は言いました。『今日は僕に甘えてほしい』と…。
その言葉は、弟としてではなく、夫としてのものだったのでしょう。
疼きに身を震わせながらも、彼はそれに耐え、私の胸に手を伸ばしました。
私を愛撫するために。私に甘えてもらうために。彼の意思は、千年氷よりも固いようです。
「…旦那様…♥」
想い人に微笑みを返しながら、私は反省しました。
危うく、彼の思いやりを潰してしまうところだったのですから。
思い知りました。彼はもう、子供はないということを。
もう彼は、自らの足で走り、粗相も一人で済ませられる大人です。
それなのに私は、ずっと彼のことを子供扱いしてしまいました。
恐らくは、それも彼の夫しての…いえ、弟としての方でしょうか。
どちらにせよ、彼の自尊心に触れてしまっていたのかもしれません。
彼は甘えん坊ですので、それを嬉しく思う部分もあるでしょう。
ですが、人の心は複雑です。彼も、雄としての誇りを持っています。
雌に甘やかされてばかりの現状に、本能が抗ったのかもしれません。
嬉しさと恥ずかしさを抑えきれない口元を、袖で隠しながら。
私は純粋無垢な乙女のように、彼を見つめて言いました。
「…では、今宵は私を…」
どさりと落ちる、軒先の雪。
「甘えさせてくださいませ…♥」
…口付け。初めて、彼から私へと触れてくれた唇。震えながらも。
柔らかな感触。甘い味。いつもと同じはずですのに、どこか違って感じます。
それはまるで、ファーストキスのようにロマンチック。
「ん…♥ ん、んっ…♥」
迸る熱。それは私の中から生まれてきます。
唇が触れ合っているだけの、とても子供っぽいキスですのに。
私の顔はみるみる紅潮し、今にも蒸気が立ち上りそうです。
だって、だって…仕方ないではありませんか。
こんなにも可愛いんですもの。この子が。私の夫が。
決して頭が良いわけでも、容姿端麗とも言えない彼ですが。
これほどまでに私を愛してくれる存在を前に、どうして平静でいられましょう。
それが唇に触れたとあれば…溢れんばかりの想いを込めて触れ合ったとなれば、
氷山すら溶けましょう。私というちっぽけな雪の結晶なぞ、耐えられるはずがありません。
「はっ…♥ 旦那様…♥ ちゅっ…、ちゅ♥ 旦那様ぁ…♥」
啄ばむキスから、徐々に大人のキスへと変化させていく彼。
小さな舌が、ぺろりと私の唇をなぞるたびに、背筋がぞくりとしてしまいます。
彼の技術は拙いものではありましたが、火照る私を満足させるには充分過ぎるほどでした。
「ちゅぅ…♥ あっ♥ 胸…、気持ちいい…♥」
襦袢をずらし、彼が私の胸に指を這わせます。
僅かに触れられるだけで、敏感に反応してしまう二つの膨らみ。
彼の指は、まるで熱した鉄のよう。私の胸を溶かし、深く喰い込んできます。
それは直接、私の性感帯に触れるかのように、眩いほどの快感を弾けさせました。
たまらず私は、愛撫に夢中になる彼の肩を掴みました。
このままでは狂ってしまうと直感したからです。全てが溶けてしまうと。
まだ愛撫を始めて間もないのに、私の身体は絶頂を迎える寸前でした。
何がそうさせているのでしょう。彼の愛でしょうか、私の愛でしょうか。
分かりません…。分かりませんが、このままではいけないことは分かります。
「ぁ…♥ だめ…っ♥ 旦那様…、待っ…て…♥」
ただならぬ雰囲気に気付いたのか、彼は愛撫を止め、私を見つめました。
心配そうな表情を浮かべる恋人を前に、私は今、どんな顔をしているのでしょう。
荒く息を吐き、汗は止まらず、涙が目尻に溜まり、口端からは唾液をこぼして…。
恥ずかしい。恥ずかしいのですが、隠すことが出来ません。余裕がありません。
加えて、私の身体が求めるのです。止めないで…と。
快感に貪欲な魔物の本能が、彼からの刺激を欲しているのです。
「はぁ…、はっ…♥ あっ…、旦那様の匂い…♥ クンクン…♥」
止めないで…。もっと弄って。胸、乱暴に揉んでほしい。
優しくてもいい。貴方なら。吸っても、くすぐってもいいから。
乳首を噛んで。おへそを弄って。背中を撫でて。お尻を叩いて。
どれでもいいの。貴方がいいの。お願い、おねがい、おねがいっ…！
「ふぅっ…♥ クンクン…♥ 旦那様…、旦那様ぁ…っ♥」
身に残る刺激に耐えるほど、魔物としての本能は膨らんでいき。
魔物としての本能が膨らむほど、刺激が身を刺すものに変わっていきます。
しかし、それでも私は必死に耐えました。彼の好意を受け止めるために。
彼の匂いを嗅いで、身体を擦り付けて、必死に本能を抑え込みました。
それらは一時凌ぎに過ぎず、むしろ、後から更に欲望が増してしまう愚行です。
ですが、知っていてもやらずにはいられません。今日は彼に甘える日なのですから。
彼の望みを適えるためならば、例え灼熱の炎でも、私は喜んで飲み干しましょう。
「…あっ♥ ひぁ♥ あぁっ♥ 旦那様っ♥ きゃうんっ♥ やぁっ…♥」
そんな私の想いを、知ってでしょうか、知らずでしょうか。
腕の中に抱かれた彼は、恐る恐るも愛撫を再開しました。
胸の先端を口に含み、チュゥチュゥと音を立てて吸い上げます。
それはいつの日にか見た、彼が母様から母乳を貰うそれと同じ吸い方でした。
ミルクは出ていないのに、咽を動かしているのは、流れる汗を飲んでいるのでしょうか。
恥ずかしい。恥ずかしいのに…嬉しい。感じてしまいます。身体も、心も、ゾクゾクと。
「はっ…♥ …ひゃんっ！？ そ、そっちはっ…♥ いけませ…ひゃうぅっ♥」
不意に、彼の手が下腹部を滑り、私の最も敏感な部分に触れました。
遠慮しているのでしょうか、そのたどたどしい手つきは、まるで焦らしているかのようで。
身は達する寸前ながらも、その一歩手前を延々と彷徨わされてしまうもどかしさ。狂いそう。
…触れたい。もう、自分で触れてしまいたい。
恥豆を一擦りでもすれば、潮を吹いて達せられるに違いありません。
どれほど心地良いでしょう。きっとそれは、天にも昇るほどの快感。
「旦那様っ…♥ あっ♥ おねが…い…♥」
…ですが、私はそうしません。知っているからです。
その快感さえも、この拙い指の動きの前には、矮小な刺激に過ぎないことを。
だから、私は耐えます。狂おうとも耐えます。
彼が、彼自身の指で導いてくれるまで。それが私の甘え方。
滑稽とは想いませんか？ ねえ、旦那様。貴方の姉は…妻は変人でしょう。
ですが、私はやっぱり貴方が好い。自分の指よりも、貴方の指の方が好い。
「ゆ…ふぁっ♥ きゃうっ♥ ゆ、びぃ…♥ あんっ♥」
…だからこそ、お願いします。
「ゆび…っ…、いれ…て……♥」
もう…イかせてくださいませっ…！
「…あっ♥ あぁっ♥ ふああぁぁぁ〜〜〜〜っっ♥♥♥」
彼の中指が、私の秘部に埋まると共に。
私は吹雪をも払うような嬌声を上げ…達しました。
「はっ♥ はひっ♥ やっ♥ 旦那様っ…♥ あちらを向いて…♥ ひぅっ♥」
痙攣する身体。跳ねる鼓動。呂律の回らない舌。
絶頂を迎えた私の秘所から漏れる、黄金色の清水…。
恥極まれることに、余りの快感を受け…私は失禁してしまったのです。
「見ないでっ…♥ 見ないでくださいませ…、旦那様…っ♥ あぁ…っ♥」
チョロチョロと音を立ててこぼれ落ちる、私の中の雪解け水。
止まりません。我慢した分、勢いよく溢れ出てきてしまいます。
おまけに、彼と密着していることで、お互いを濡らしてしまっています。
私はもう、全身が溶け落ちてしまいそうなほどの恥を覚えました。
粗相自体も恥ずかしいのですが、何よりそれを、彼に見られていることが恥辱でした。
その彼がまた、まじまじと見つめるものですから、尚更熱が増してしまいます。
今更ながら、私は乱れた袖で顔を覆い、彼から自分の表情が見えないようにしました。
「…ぁ…♥」
その時です。私は裾の隙間から見える景色に、あるものを見つけました。
それは彼の子供でした。私の中指ほどの、可愛らしい亀さん。
私の粗相により塗れた召し物を、グイグイと押し上げて主張しています。
「旦那…様…♥」
私の匂いと混じり漂う、彼の濃ゆい精の香り。
つららのように突き立ち、ゆきだるまのように可愛らしく。
彼のそれを、今まで何度口に含み、胸で挟み、お尻で、秘所で受け止めたことでしょう。
思い出せば、思い出すほど。視界は歪み、思考は薄れ、呼吸は荒く、欲望は濃く…。
「…あは♥」
瞬間、ぷつりと何かが切れました。
「旦那様ぁ…♥ もっと甘やかせてくださぁい…♥」
穏やかに言葉を紡ぎながらも、彼の衣服に指を通す私。
わざと彼の肌に指先を這わせながら、ゆっくりとはだけさせていきます。
乳首を軽く引っ掻くと、甘い声を上げる彼。あぁ、可愛らしい、いじらしい。
「私、ここがムズムズするんです…♥ ここ…♥」
下着を脱がし、飛び出た亀さんを捕まえて。
私は自らの秘所に、その先端をいやらしく擦り付けました。
こんなに亀頭を膨らませて、彼も相当我慢していたのでしょうか。
クチュクチュと響く水音。彼も私も、愛液でずぶ濡れ。まるでぬれおなごさんです。
「んんっ…♥ 旦那様…、早くぅ…♥ 旦那様がしてくれるんでしょう？」
しかし、どうしたのでしょう。彼はまったく挿入する気配がありません。
いえ、何かしようとはしているのですが、どうやら困っているようでした。
その様子を見て、ふと、私は彼が何をしたいのかに気付きました。
そして、どうして困っているのかも。それは至極簡単なことだったのです。
「…旦那様」
私は彼と肌を重ね、雪に聞こえぬよう、そっと耳打ちをしました。
「滾りを納める場所、教えて差し上げます…♥」
瞬間、彼の顔が達磨さんのように真っ赤になりました。
そうです、彼はどこに自らのものを挿入すればいいのか、分からなかったのです。
思い返してみれば、初めての時も含め、彼は常に受身でした。
挿入の際も、気付けば入っていた…という状態だったのでしょう。
無理もありません。挿入の前に、彼は何度か達することがほとんどでした。
朦朧とした意識の中では、大体の場所しか分からなかったのでしょう。
「さあ…♥ ここに旦那様のものを…♥」
既に恥を忘れた私は、彼の前で足を大きく広げ、秘所を指で開きました。
彼の熱い視線を感じながら、クリトリスを覆う皮を剥き、弄ります。
トロトロと溢れ出る愛液は、彼の亀さんにいくつも垂れ落ちていきます。
それを見て私は、更なる昂ぶりを得、彼を誘惑しようといやらしく自慰をするのでした。
「…あっ♥」
不意に、彼が動きを見せました。
亀さんの根元を手で押さえ、先端を教えた穴へと押し付けてきます。
私はごくりと息を飲み込み、次の瞬間を待ち焦がれました。
「あっ…♥ あっ♥ きゃううぅぅぅぅんっ♥♥♥」
僅かな空白の後…つぷりと、彼のものが私の中を滑りました。
子犬のような雄叫びをあげる私。蕩け落ちる神経。性感帯。
「あぁっ…♥ 旦那様…ぁ…♥」
へたりと彼の胸板に崩れ落ちる私を、恋人は強く抱き締めてくれました。
耳元で、何度も私の名前を呟きながら。愛の言葉と共に。
その一言一言が、アイスクリームとなった私の脳に響く度に、
膣はぎゅぅっと彼のものを包み込み、お互いに強い快感を与えました。
「はぁ…っ♥ 好き…♥ 好きですぅ♥ 旦那様…♥ あぁっ…♥」
ぐい、ぐいと膣壁を持ち上げる亀さんが、彼の限界を伝えています。
どれほどの精液が吐き出されるのでしょう、考えただけで達しそうです。
ですが、それは同時に、完全に彼の動きを止めてしまいました。
彼の性格から察するに、今回は私を甘やかす立場である以上、先に達したくないのでしょう。
その想いは私にとって、どんな言葉よりも胸ときめいてしまう思いやりでもありました。
「…旦那様♥」
額と額を合わせながら、小さな夫に微笑み掛ける私。
「私ももう、すぐに達しそうですから…」
そのまま、そっと唇を近付けて…。
「…出して…♥」
魔力の全てを、彼に流し込みました。
「んっ…♥ んんっ♥ んんうぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜っっっ♥♥♥♥♥♥♥♥」
彼が大きく背中を反らすと共に、子宮を叩くほどに注ぎ込まれる精子。
私の中をどろどろに溶かし、なお留まるところを知らず、流れ込んできます。
からっぽの身体に満ちていく精。魔力。甦る冷気と淫魔の力。
しかし、一時も留めません。すぐにまた、口付けを通して彼に送り込みます。
彼の射精が完全に止まるまで、ずっと。焦がれさえ燃やし尽くす想いを、ずっと。
「んっ♥ んぐっ♥ ふっ♥ ぅっ♥ んんっ♥ んぅっ♥」
縮んでいく私の身体。より感じる、亀さんの脈動と精子の熱さ。
それでも止めません。もっと彼に気持ちよくなって欲しいから。
甘やかせてくれたお礼をしたいから。もっと、もっと、もっと…。
「ぷはっ♥ ひゃっ♥ まだっ♥ 出てっ♥ んんっ♥ ちゅっ♥ はっ♥」
もっと…。
「ふぁっ♥ あっ♥ ちゅ♥ はっ♥ だめっ♥ だめぇっ♥ あぁっ♥」
…あぁ。
「旦那様ぁ…♥」
溶けてしまいそう…。
……………
………
…
…目を覚ますと、私は彼の腕の中にいました。
見ると、身体がひどく縮んでいます。彼よりも小さく…。
恐らく、魔力を放出しすぎたことが原因でしょう。
彼から精を受けたといっても、全てが返ってくるわけではありません。
凍った窓に映る、彼と出会った頃の体格に戻った自分を見て、私は溜め息を吐きました。
これでは掃除をすることも、料理を作ることも難しくなってしまいます。
こうなってしまっては、誰が彼の身の回りをお世話をするというのでしょう。
「…あっ」
不意に、彼が小さくなった私を抱き寄せました。
振り返り見ると、目は瞑ったまま。寝惚けているのでしょうか。
「………」
今だ夢の世界に浸る彼の表情は、とても嬉しそうなものでした。
いったいどんな夢を見ているのでしょう。私には覗くことができません。
ですが、夢の世界でも、彼は私と一緒に居てくれるのでしょう。
胸を張って言えます。私は彼と、今日という日までずっと一緒だったのですから。
そして、明日も、明後日も、これからもです。雪解け、春が来ようとも、ずっと…。
「…旦那様」
自分よりも大きくなった彼に、私は身を寄せました。
彼は私の最愛の弟であり、夫ですが、もう子供ではありません。
それを今日という日に、勇気をもって、彼は私に教えてくれました。
そう、これまでも、これからも。
共に歩む中で、彼は私に多くのことを教えてくれるのでしょう。
彼が生まれたあの日、私の心に芽生えた気持ちを始めとして。
次はどんな幸せを、私に与えてくれるのでしょう。
「いえ。今だけは、お兄ちゃんですね…♥」
幸せというものに、果てなどありません。
今が一番と感じても、それは容易く塗り替えられることでしょう。
愛する人と日々を過ごす、全ての人がそれを知っています。
「…お兄ちゃん」
私も、彼も、その一人。
「愛してます…♥」
今、とても幸せです…。
12/12/20 19:41更新 / コジコジ