読切小説
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唐傘紅葉模様
「よいしょっと」
松吉(まつきち)は農具を倉に置いた。
慣れているとはいえやはり畑仕事は重労働である、肩や首をぐりぐり回して松吉は体をほぐす。
ここで一息つきたいところだが、まだまだ今日やるべき事は終わっていない。
母に昼を作ってやらねばならないし、その昼飯が済んだら隣の勘兵衛じいさんの家の修繕を手伝ってやらねばならない、勘兵衛もいい加減年なので高い場所の作業を一人で任せては危ない。
「よっしゃ、もう一頑張りじゃ」
そう言って松吉は汗を拭った。
松吉が一日にこなす仕事は多い、この村は作物もあまり採れない痩せた土地にあるためいつも生活に余裕が無い。
そんな環境なものだから年頃になった若者達はすぐに出て行ってしまう。松吉が年のいった両親から生まれた時には既に村に若い者は見かけなかった。
両親は松吉に「この村の事は捨てて構わない、自分の為に生きろ」と言ったが松吉は村に残される老いた両親や村人の事を思ってここに残ることを選んだ、よって唯一の若い男手である松吉は村の支えとして重要な役割を担っているのだった。







 「ん、雨か……」
午後になって曇天の空からぽつぽつと雨粒が降り注ぎ始めた。
松吉は背に差していた番傘を取り出した。そこらじゅうにつぎはぎがしてある傘だが骨組みがしっかりしており、よく手入れがされてあるのでまだまだ現役という感じだ。むしろつぎはぎが模様のようになっている所が松吉の気に入っている所でもある。
この傘はとある商人に無料で譲ってもらったものだ。
滅多に人の訪れない村だが、昔一度夜の山道に迷った商人が助けを求めて松吉の家の戸を叩いた事があったのだ。
松吉の父はその商人を家に迎え入れて簡素ながら食事を振る舞い、一泊させた後に道を案内してやったのだ。
商人は大層感謝し、お礼に売り物である傘を譲ってくれたのだった。
松吉はぱん、とその傘を開いて畑から家への帰り道を歩き出した。
「この村さオラが村さ〜♪金なかと、銀なかと、よかんべや♪よかんべや〜♪」
機嫌良さげに小声で歌い始める。
小さな頃にこの傘を父から貰った時、松吉はそれはもう目を輝かせて喜んだ。
しっかりとした造りとその色合いには松吉が今まで目にしたことのない「華」があった、雨が降ったなら用事も無いのに外に飛び出して傘をさしたりしたものだ。
そしてその気持ちは今でも残っている、普通なら憂鬱になる雨の帰り道でもこの傘をさして歩けばちょっと気取った気分になれるのだ。
ごうっ
「おおっと」
と、強い突風が雨と共に吹き、松吉の手から傘をもぎ取ろうとした。松吉は慌てて傘を握り直す。
しかし風はしだいにびゅうびゅうと強さを増してきた、その風に煽られて傘の骨がギシギシと鳴る。
「こりゃいかん」
このままでは傘が壊れてしまうと思った松吉は自分が濡れるのも構わず傘を閉じて胸に抱いた。
本末転倒ではあるが傘の骨組みが壊れてしまったら自分の手で元通りに直してやることはできない、松吉にとって体が濡れるよりもその事の方が重大だった。
頭を低くして松吉は走った。その体に勢いを増した風と雨がぶつかってくる。ゴロゴロと雷の音までし始めた。
(うへっ、こりゃ参った、どこか雨宿り出来る場所があれば……)
と、丁度その視界に小さなお堂が入った。
山道の脇にあるそのお堂は松吉が物心ついた時からずっとあったもので何を祀っているのかは松吉も村の大人たちも知らない事だった。
ただ、松吉は祀ってあるものが何であれ粗末に扱ってはいけないだろうと考え、前を通る度に掃除をしたり拝んだり時にはお供え物をしたりもしていた。
だからという訳ではないが松吉はそのお堂の中で雨宿りをさせて貰うことにした。
「すんまへん、雨が止むまでの間ちいとだけお邪魔させて下せえ」
そう言って手を合わせた後、松吉はお堂に入った。
ばたん、と扉を閉じると外の雨音が遠くなり、静けさが周囲を包んだ。
堂内は松吉の掃除の甲斐あって蜘蛛の巣が張るでもなく、比較的綺麗だった。
しかしこんなに薄暗い時に入ったのは初めてなのでいつもとまるで雰囲気が違うように感じる。
その薄暗い中で松吉は外の雨の様子を伺いながら腰の手ぬぐいで濡れた体を拭き、次に傘を開いて調べた。
「壊れてねえだか……?」
調べてみてもどうやら壊れた所はないようだった、松吉はほっと胸を撫で下ろす。
ふにゃっ
「……う、ん?」
と、松吉の手に何か柔らかな感触が触れた。
驚いて手元を見るが手には傘があるだけだ、今のがまさか傘の感触という事はあるまい。
「……?」
では今のは一体何だったのかと傘を手の中でくるくる回して眺めている時だった。
「……っ……っ……っ……」
微かだが、何か声が聞こえた。最初は雨音か外の動物の鳴き声かと思ったのだが、その声は明らかにお堂の中に響いているように聞こえる。
松吉の腕の表面が粟立った。ひょっとして物の怪の類か?
そう思い、薄暗いお堂の隅々に視線をやったがそれほど広くないお堂の中には声の発生源になりそうな物は何も見当たらない。
「……ん……ん……ん……」
声が少しづつ大きくなってくる、松吉は焦ってきょろきょろと周囲を見回すがやはり何も見えない。
「……っ……んん……ん……」
ぴくん、ぴくん
振動を感じて松吉は手の中の傘を見下ろした。
見下ろして気付いた、この傘だ、声の発生源はこの傘だ。
とくん、とくん、とくん、
「う、うわわわわわ!?」
手の中の傘が「脈打って」いる事に気付いた松吉は思わずそれを手放す。
どくん、どくん、どくん
地面に落ちた傘は明らかに無機物とは違う動きでうねうねと蠢く。
「な、なな、なん、なん……!?」
異常な事態に松吉は腰を抜かして座り込み、地面で打ち上げられた魚のように身をくねらせる傘からずりずりと距離を取る。
ぱくんっ
と、傘の部分に大きな裂け目が入り、それがぱっちりと開いた。
目だ、巨大な一つ目が傘に開き、それがぎょろりと動いて松吉の方を見たのだ。
「ひっ」
思わず松吉の口から悲鳴が漏れる。
ずるんっ
それに続いて傘の内側から赤い肉塊のようなもの……舌、巨大な舌が這い出てきた。
粘液に濡れたそれがゆらゆらと揺れる。
「んん……んん……」
大きな目をぱちぱちと瞬かせながら、その内側から舌を垂れ下げた傘からはずっとくぐもったような声が聞こえる。余りに奇っ怪な光景だった。
間違いない、物の怪だ、よりによって松吉の大事にしていた傘に何かがとり憑いてしまったのだ。
(ああ、わしはここで物の怪に食われてしまうのか……?)
逃げようにも目の前の光景に腰を抜かしてしまっている松吉は心の中で悲嘆に暮れた。
が、そこから先の傘の変化は松吉の予想を超えていた。
「んん〜〜〜〜!」
やにわにくぐもった声が大きくなると、傘の足の部分がぱかりと二つに割れ、それがずるりと大きくなった。
「……!?」
足だ、いや、傘の足ではなく、それは人間の足だった。
粘液に濡れて綺麗な曲線を描くそれは足首に布が巻きつけられて一つに纏めるように拘束されており、花魁のように丈の高い下駄を履いている。
その足に続いてむちっとした桃のような尻と下腹部が現れる。その艶かしい肉付き、それに何より男になら付いているべき物が付いていない事から女の下半身だという事がわかる。
と、ぴょん、とその足が跳ね上がったかと思うとしゅたっとその二本の足で立つ姿勢になった。
傘から女の下半身が生えている形になったそれはまだ変化を続けている。ちなみに何も履いていない下半身は当然の如く丸見えだ。体毛すら生えていない。
「ん〜〜〜〜っ!ふむっ!んむっ!」
何か一生懸命に唸りながら身をよじらせる下半身女、それに合わせてずるずるっと傘の部分がせり上がる。
細くしなやかに括れた腰が露わになり、更にぷるん♪と大きく柔らかそうな膨らみがまろび出る。全部が見える直前に前掛けのような布がひらりと降りて体の前面と背中を隠す。
その間傘から生えている巨大な舌は体に粘液を塗りたくりながら忙しなくぬらぬらと動き回っている。
「ぷはぁっ!」
とうとう傘が持ち上がり切り、豊かな黒髪がふぁさ、と広がる。
その体の持ち主が全容をあらわしたのだ。
少女だった。幼さを感じさせる大きなくりくりとした目に小ぶりで整った鼻梁、桜色の唇。
行ったことのない松吉は知る由もないが京の遊郭でも滅多に見ないような愛らしい顔立ちをしていた。
そしてその愛くるしい顔に似合った華奢な体つきはしかし女として出るべき所がしっかりと出ており、思わず男の視線を奪う曲線を描いている。
特筆すべきはその肢体に纏う衣装だった。
いや、纏っているというよりもそれはただ垂れ下がっていると表現した方が正しかった。
体の前後を垂れ下がる布で隠すような衣装、その下には何も履いても纏ってもいない、側面から見ると丸見えである。
しかもその布が肌色に近いものだから一瞬全裸と見間違えてしまう。
おまけにその破廉恥としかいいようのないその衣装は巨大な舌から滴る粘液で濡れてぺったりと肌に張り付き、曲線を隠す役割を放棄しているも同然だった。
「はぁー……はぁー……」
「……」
物の怪の少女は息を荒げながら潤んだ目で松吉を見る、松吉は驚愕の表情のまま固まっている。
ぴょん、と少女が跳ねた、足が纏められているのでけんけんのようにしか移動できないのだ。
そうしてぴょんぴょん跳ねてへたり込んでいる松吉の傍にまで寄ってきた。
ちなみに跳ねるたびに前掛けがまくれ上がるものだから下半身が際どいところまでチラチラ露出する、ついでにぷるんぷるんと豊かな房も揺れる。
近くに寄られると粘液濡れのその肢体からはなんとも言えない花のような蜜のようなくらくらする香りがした。
「松吉……さま……♪」
少女が濡れた瞳を輝かせながら鈴の鳴るような声で松吉の名を呼んだ。
そこで松吉は限界を迎えた。
「松吉さ……えっ?」
「ふぶしゃっ」
松吉は鼻から大量の血を噴き出し、ごとん、と人形のように仰向けにひっくり返ってしまった。
「きゃー!?松吉さまー!?」







 「……つまり……あんたは……わ、わしの傘が変化した……物の怪という……訳なんだべか……」
「はいっ」
ぶっ倒れた松吉を介抱した傘の物の怪は正座をしながら笑顔で頷いた。
「な、なしてそげん姿に……?」
「多分……ですけれども、このお堂が原因なんだと思います」
「お堂?」
「どうやらここは……」
少女は薄暗いお堂を見回しながら言う。
「元々は高い魔力を持った方が勤めていらっしゃたみたいです……今はもう他所にお移りになったようですが……」
「ま、まりょく……?」
「松吉さまはいつもここにお参りなさってましたね……?それによって魔力の残滓が活性して、私に宿ったのだと思われます」
「…………さっぱりわからねえだ」
「えへへっ……細かい事はいいじゃないですか」
少女は姿勢を正し、深々と頭を下げた。
「改めて、自己紹介させていただきます、私は唐笠おばけという妖怪にございます」
「か、唐笠おばけ……?唐笠小僧、なら聞いたことあるだが……」
「似てはおりますが私は小僧ではなく、娘にございます」
「そ、それは見ればわかるだ……」
「……松吉さま?」
先程から松吉はじっとうつ向いて唐笠の方を見ようとしない。
と、唐笠は悲しそうな顔になる。
「松吉さま……私、怖いでしょうか……?」
「そ、そ、そげんこつなか……!……と……」
慌てて顔を上げた松吉は唐笠の顔を見るとかあっと顔を赤くしてまたうつ向いてしまう。
「お、おいらぁ……あんたみたいな若ぇ綺麗なおなご生まれて初めてみただ……だども……き、綺麗過ぎて、目が潰れちまいそうだ……」
松吉はこの村を出た事がない。物心ついた時から年老いた両親や村の人々のために働く日々を送って来た。
なので知っていると女と言えば老婆ばかりで自分と同年代の人間すら見かける機会がなかった。
そんな所に妖怪とは言え自分と歳が近く、しかも飛びきりに愛らしい娘を目の前にして緊張しないはずもなかった、その上……。
「それに、そ、そげんはだけた格好されたらどこ見たらええやら……」
ほぼ全裸に前掛けという男の目に毒な恰好は初心な松吉にとってもはや致死量である。
「綺麗だなんてそんな……」
ぽぽっと頬を染めるその表情がまた眩しい。
「そう言ってもらえて嬉しいですけれど……私はあくまで松吉さまの傘、道具なのです、使うのに気後れすることはありません」
「使ういうても……あんたを傘として使うのは無理があんべぇ」
「ご安心を」
そう言うと唐笠はふいと俯き、その顔が傘で隠れる。
と、見る間にするするとその体が縮んで元の傘の形に戻った。よく見てみると傘の表面に閉じた瞼が見えるのだが注意しないと見えないくらいに目立たない。
「おう……」
いつもの姿に戻った傘にほっとして松吉はその傘に近づく。
手に取ってしげしげと眺め回し、ぱん、と開いてみてもいつもの手に馴染んだ傘と変わりない。
そうしてお堂の中で一人、いつもと変わらない傘を手にしていると松吉は今先ほどの出来事が夢か何かのように感じるのだった。
「……い、いるだか?」
思わず傘に呼びかけてみる。
「はいはーい?」
「えっ、あっ?うわわわわわ!」
と、呼びかけたとたんに手の中の傘の足が質感を変え、ずるるるんと女体が手の中に現れた。
「唐笠はここですよー……はぅん♪」
気付けばそのむちむちの体を抱きしめる形になっていた。
「す、す、すすすすまねえだ」
松吉は慌てて飛び退いてまた尻餅をつく。唐笠はちょっと名残惜しそうにする。
「も、戻るなら戻るって声かけてくんろ……」
「松吉さま……ひょっとして、私が妖怪だからではなく……女の子だから怖いのですか?」
すっと正座に戻って唐笠が言う、松吉はまた真っ赤になって俯く。
「さ、さきも言ったじゃろうに」
「……存じておりますよ……唐笠は、ずうっと松吉さまを見ておりました」
じっと松吉を見つめながら唐笠は言う。
「女子に現を抜かす間もなく……雨の日も、風の日も、病の日も……父と母のため村のため……ずうっと一生懸命に頑張って来た松吉さまを、唐笠は知っております」
「あ、当たり前のことやけん……」
「できることではないです」
思ったよりも近い声に顔を上げると唐笠の顔が間近に迫っていた、松吉は後ずさって距離を取る。
「私がこの姿になれたのもきっとそうして頑張ってきた松吉さまを神様が見ていらしたから……」
じり、と唐笠は正座のままにじり寄る。松吉は後ずさる。
「私を綺麗だと思って下さるなら……」
またじり、と唐笠が詰める。松吉は後ずさり、とん、と背中がお堂の壁に当たってぎょっとする、いつの間に壁際まで追いつめられていたのか。
「どうぞ、お使い下さい……」
壁に詰めた松吉にずい、と身を乗り出して唐笠が言う。
頭の上の傘の陰に入ってまた少し視界が暗くなる、その中で濡れて光る唐笠の瞳が間近で松吉を見つめる。
松吉はその視線から逃れようと下を向くが、そこには両腕に挟まれて変形する乳房があった。
(あ、あ、こぼれる、こぼれる)
前掛けが胸の谷間に挟まれて内に寄せられ、胸の先端が露出しそうになっている、というより桃色の部分が少し見えてしまっている。
もはや先端の突起に引っ掛かっているだけな状態だ。
「つ、つ、つ、使うべ!ちゃんと大事に使うだから……!」
ぷるるん♪
服を、と言おうとしたところでとうとう布地が谷間に挟み込まれてそのいやらしい塊が露出してしまう。
「使ってください……何度も、何度も、壊れるくらい使い込んで、また直して何度も……!松吉さまぁ!」
ぬらり
「うへっ」
生暖かく、湿った感触が肩を撫でる、あの大きな舌だ。
ぎゅうっ
その舌に気をとられている間に唐笠が松吉に抱き付いて来た。
当然、露出された胸もむにむにと押し付けられる。
「松吉さまぁ……ちゅうぅ……♪」
「んー!?」
もはやどうしようもなくなっている松吉の口に唐笠が吸い付いた。
ぷりぷりでぬるぬるな肌の感触に唇から割って入ってくる唐笠のもう一つの小さな舌。
ぞろっ
ぬちゃっ
大きな舌が松吉の着物の首筋に入り込むのと同時に小さな舌が上顎の天井を舐め上げる。
粟立つうなじの感触をねちねちと楽しんだ大舌は蛇のように身をくねらせて着物のさらに奥まで侵入し、腰付近まで到達する。
それに合わせてそっと唐笠の手が着物の帯を解いた。
ずるるんっ
「むうー!?」
背中に侵入した大舌がぐい、と着物を後ろに引き、松吉から着物を剥ぎ取ろうとしてくる。
慌てて抵抗しようとする松吉だが正面から抱き付いている唐笠も手伝うのであえなく着物は取り払われ、ぽい、とお堂の床に投げ捨てられる。
「んぐ!んむ!」
その下のふんどしにまでも舌がするすると伸びて来るので松吉はここだけはと死守せんと抵抗する。
「ぷはっ、よ、よしてけれ!よしてけれ!」
「ちゅぱっ♪やぁっ、やぁっ♪使うんですぅ、隅々まで、全部、私の全部使ってもらうんですぅ♪」
抵抗虚しくふんどしまでも取り払われ、床にぽいっと投げ捨てられる。
「ひええっ、か、堪忍……!わっ、うわわっ!?」
と、松吉は自分を覆う大きな影に気付く、傘だ、唐傘の頭上に浮いていた傘がいつの間にか二人を覆わんばかりに大きくなっているのだ。
それがゆっくりと閉じながら二人を覆い隠すように降りてきている。
「あ、いかん、いかんて」
危機感を感じた松吉は降りてくる傘から逃れようともがくが、しがみつく唐笠がそれを許さない。
「いやあ、逃げないで、逃げないで下さい松吉さまぁ」
いっそ子供じみた哀願に思わず動きが止まる、その間に傘は二人をそっと覆い隠してしまった。







 「えへへぇ……松吉さまぁ……」
傘の中は狭かった、なのでいやでも唐傘の体とぴったり密着せざるを得ない。
真っ暗になるかと思ったが傘の内側がぼんやりと茜色に発光しているのでその艶かしい肢体もよく見える。
ずるんっ、と傘の頂上から生えている大舌が降りてきてぬちゃぬちゃと二人を舐め回し、たちまち唐傘の体を卑猥な照りにまみれさせる。
「存分にぃ……使って下さいねぇ……」
唐傘はその愛らしく、幼い顔に似つかわしくないくらいに蕩けた笑みを見せながら粘液の滴る体を擦り付けてくる。
「はぁ……はぁ……くぅぅ!」
「ひゃっ?」
松吉は初めて自ら動き、前掛けからはみ出て露出している乳房を思い切り掴んだ。
初心で少々臆病な性分の松吉の理性もついに限界を超えたのだ。
「はきゃぁぁぁぁん!?」
手に感じる素晴らしく柔らかい感触と同時に、そこに電気でも流されたかのように反応する唐傘。
松吉は思わずびっくりして手を離してしまう。
「だ、だだ、大丈夫だか!?痛かっただか?す、すまねえ、急に触って……」
しかし唐傘は謝る松吉の手を取って今一度自らの胸にむにゅりと触れさせる。
「違うんですぅ……!う、嬉しくてぇ……気持ちよすぎてぇ……!もっと、もっと触って……好きに使って下さいぃ」
「……っっ」
半泣きになって懇願する唐傘の姿に松吉の中で何かが切れた。
ぎゅうっと力一杯に唐傘の体を抱きしめる。
「ふ、ふひゅっ、ふひゃぁっぁっぁぁぁ……」
掠れる声を上げながら唐傘は身を震わせる、その体の震えが直に伝わってくる。
背中、尻、乳房、肩、頬、足、松吉は所構わず唐傘の肢体を撫でた、生まれて初めて触れる若い女の肌はどこもかしこも絹のようにすべすべでいつまで触っていても飽きない、なおかつ粘液でぬめるのがたまらなく情欲をそそる。
それに何より触れるたびにびくびくと反応し、声を上げてくれるのが楽しい。
「はひぃっ……!は、ひぃぃっ……まちゅ、きちゅぁ、はきゃ、はくっ……!」
と、唐傘が切羽詰まった声を上げた、様子がおかしいので思わず手を止めたが唐傘のわななきは止まらない。
「はきゅぅっふぅぅ……っっ!」
びぃんっと体が伸び、手が松吉の肩にくい込む、かくかくっ、と空腰が振られる。
「ひっ……ひぅっ……すいませぇ……先に私がぁ……」
泣き顔になって謝る唐傘、松吉の胸が愛おしさで引っ掻き回された。
「な、名前……は?」
「はひぃ?」
「名前……なんて言うんだべ……?」
「……ただの、傘ですからぁ……名前は無いです……よ、よろしければ……松吉さまの呼びやすいように名前を頂けたら……」
「……紅葉(もみじ)」
「えっ……?」
松吉はまた照れくさそうに視線を泳がせる。
「い、いや、使う時、いつも思ってただ……つぎはぎになって色が妙になっても……その、使ってるうちに不思議とき、綺麗に……こ、この山で見る紅葉みてえな色に染まっていくのが不思議で……そこがまたいいんだども……」
唐傘、改め紅葉は松吉の言葉を聞いて一瞬きょとんとした後、感極まったようにぶわっと涙を溢れさせて松吉にしがみついてきた。
「はいっ……!はいっ……!わたしは、紅葉……!紅葉です!松吉さまの紅葉です……!」
「き、気に入ってくれただか?」
「うれし、嬉しいですぅ……!」
ぐりぐりと頭を擦り付けながら紅葉は感謝する、松吉はその頭を撫でてやる。
「松吉さまぁ……紅葉は……使って欲しゅうございます……ここ……ここ、を……」
ぬる、と松吉の先端に触れる濡れた感触。松吉はごくりと喉を鳴らして頷く。
そっとぬめる尻に手を添えて狙いを定めようとする……が、どこなのかよくわからなくて松吉は困った顔になる。
「ここ、ここですよ……」
紅葉が手を添えて導いてくれる、ぬち、と先端が狭いところに潜り込むのがわかる。
「ん、んん……」
「はぁ、あ……」
息を合わせるようにして腰を合わせ、繋がる。
自分の陰茎がめちめちと狭い場所を押し広げる感覚で松吉は物の怪にも膜というのがあるものか、と奇妙な感慨を覚えた。
痛むだろうか?と相手を気遣う思いも沸いたが、すぐにそんな事は考えられなくなった。
一番奥であろうという箇所に先端が到達した瞬間、押しのけた肉が目覚めたように一斉に陰茎に襲いかかってきたからだ。
「うあぁぁぁ!?なあっ!?」
吸い上げるような舐めるような表現し難い動きで陰茎が愛撫される、腰が勝手におどり上がる。
「んぉ、おぉ、まつきち、しゃま……」
紅葉は舌を突き出し、松吉の口にまたも吸い付く、快楽が加速する。
「〜〜〜〜〜〜〜〜」
松吉は声もなく射精した、耐えようと考える事すらできなかった。
狂ったように白濁を吐き出す陰茎を紅葉の膣はしっかりと咥え込み、一滴も逃さずに吸い上げる。
その間も肉は根元から先端に絞り出すようにうねるものだから射精が長々と続く。
「ん……んっ……んむ……んん……」
とろとろに蕩けた瞳で紅葉は松吉を上の口と下の口で味わい尽くす。
その人間の処女では有り得ない痴態と貪欲さはやはり紅葉が物の怪である事を示していた。
最も吸われている松吉の目には火花のようなものパチパチ弾ける様が映るばかりで何も見えてはいないが。
「ん……んんぉ……んん……」
「んふーっ♪んふぅ……んふぅ……」
ようやく射精が一段落した所で紅葉はゆっくりと腰を上げていく。
徐々に現れる陰茎の竿に絡むのは紅葉の白濁した愛液が殆どで、あれほど大量に出した松吉の精は全く漏れ出る事がないのが紅葉の牝の貪欲さを物語っているようだった。
「ぷは……す、すまねぇだ……すぐに出ちま……」
ぱぁんっ!!
終わった、と思った松吉が言葉を紡ぎ終わる前に上がりきるかと思われた腰がまた勢い良く松吉の腰に打ち付けられた。
陰茎は萎える間もなく再び肉の快楽の中に引き戻される。
「まちゅきちしゃまぁ……使ってぇ……もっと、もっとぉ……たっぷり使ってぇ……ずっと使ってくだしゃいましぃ……」
ぐりんぐりんと腰を回し、乳房をたぷたぷ弾ませながら紅葉は夢見心地の表情で囁く。松吉は声もなくまた身悶えさせられた。







 松吉が見たこともない可愛い娘を連れて山を降りて来たのは次の日の朝方であった。
てっきり遭難したものと思っていた村人達は松吉の無事を喜び、傘が変化したという娘も偏見なく受け入れた。
物の怪であろうとなんであろうと若い人手が村に増えるのは望ましいことであるからだ。
その後、正式に松吉の妻となった紅葉はとてもよく松吉に尽くし、村にも尽くした。
この紅葉の移住が切っ掛けで山に潜んでいた魔物達が村に頻繁に出入りするようになり、やがて魔物と人が仲良く暮らす村としてこの村が有名になったのはまた別の話である。
14/07/14 00:47更新 / 雑兵

■作者メッセージ
からかさちゃんがエロ過ぎた、余りにエロ過ぎた。
動機はそれだけなんじゃ。
あと初のジパングもの、やっぱ口調が難しい…。

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