愛虫
セヴィはどうにかして頭を働かせようとしていた、しかし元々あまり回転が速いとは言い難い頭は想定外の事態についていけず思考停止状態に追いやられている。
まさに空いた口が塞がらない、という状態を体現しているセヴィを前にコーイは俯いてぼそぼそと告白を続ける。
「・・・客として、宿に泊まりに行った時・・・セヴィさんを見て、一目・・・惚れ、しました」
「・・・？？エ・・・？」
セヴィはまだ開いた口を閉じられない。
一目惚れ、と言う事は一目見られたと言う事だ、しかし極力人目を避けて生活して来たセヴィに心当たりは無い、そのあたりの心情を察したのかコーイは説明を付け加える。
「食堂で寝てた奴、覚えて無いですか」
「・・・ショクドウ・・・？」
「・・・そりゃあ、覚えてないですよね」
食事時が終わった食堂には人影はなく、がらんとしてた、その隅にある長椅子の上にコーイは寝そべっていた、夕食と共に煽った安酒が想像以上に回ったのだ、普段ならばどうと言う事ない酒量だったのだが宿に辿り着くまでの長旅による疲労が響いたらしい。
部屋に戻るのが億劫になったコーイは人がいないのをいい事にそこで寝てしまう事にした、どうせ部屋には盗られて困る物など無い、また、長年の習慣で寝ている間も一定範囲内に人が近付けば必ず目が覚める、寝ている間に手荷物を盗られると言う事もまず無い。
朝までこうしていればおかみさんに叩き起こされるだろうが手荒いモーニングコールだとでも思えばいい。
そう思ってまどろんでいると食堂に誰かが足を踏み入れる気配を感じた、おかみさんとは違う、足音でわかる。
他の客かもしれない、と半覚醒状態で思った。
足音はコーイの寝ている長椅子の側に近寄ると立ち止まった、コーイはその気配が怪しい動きをしないか、眠りながらも神経を尖らせる。
暫く止まっていた足音はやがて遠ざかって行った、気を抜きかけた所で、また同じ足音が戻って来るのが聞こえた、そうして今度は先程よりも近くに寄って来る。
コーイはゆっくりと拳に力を込め始める、もし、椅子の下に置いてある荷物に足音の主が手を伸ばす気配を感じたならすぐに首根っこを掴めるように。
ふわっ
「・・・？」
しかし、警戒していたコーイは何か柔らかい物が自分の上に被せられるのを感じた、シーツか何からしい。
その足音の主はコーイにシーツを掛けた後、食堂の中をうろうろと動き回りはじめる、どうやら掃除をしているらしい。
コーイはその足音の主に何となく興味を引かれた、無防備に寝ている人間を前にしてそんな行動を取る人間などコーイの荒んだ記憶の中にはいない。
不意にその足音がまたコーイの側に近付いて来た、別に起きてもいいのだが何となく狸寝入りを続けるコーイ。
「・・・」
足音の主はコーイを前にして何か考えている様子だったが、暫くしてまたコーイから離れる。
コーイはそっと目を開けて足音の方を見る。
地味な色使いのメイド服を着た少女の後ろ姿が目に映った。
腕の部分は長い袖で隠されており、下半身は裾の長いスカートで覆われていて見えないが、その頭部に揺れる二本の触覚を見るに人間ではないらしい。
「・・・？」
視線を感じたのか少女は振り返る、コーイは目を閉じる。
暫しの沈黙の後足音は遠ざかって行った、コーイは顔が見れなかったな、と思った。
（・・・見れなかった？）
コーイは自分の思考に疑念を抱いた、見れなかったからどうだというのだろう、まるで見れなくて残念だとでも言うような・・・。
コーイは身を起こそうとする、しかし食堂の外の廊下からまたあの足音が戻って来るのが聞こえて来たのでコーイはまた寝た振りをする、何やら子供の遊びのようだ。
しかし今度の足音は少しおぼつかない、何か大きな物を抱えているようだ、そのままコーイに近付いて来る。
ふかっ
「？」
シーツの上から温かく柔らかな物が掛けられる、毛布の様だ、昼間に干してあったのか太陽の匂いがする、どうやらシーツだけでは寒そうだと思ったらしい、少女は毛布をぽんぽんと叩いて整えると食堂の掃除に戻った。
コーイは薄眼を開けて少女の方を伺った、テーブルを拭いている後姿が目に入る。
「・・・ヒのヒ、ツキのヒ、アメのヒも・・・」
不意に歌声が聞こえた、周囲が静かでなければ耳に届かなかったであろう小さな小さな声だ。
「ワタシのヒトミにウツるのは・・・」
ようやく、少女の顔が視界に入った、長い前髪に隠れて良く見えないが幼い印象を受ける顔立ちに見える、しかし何故かコーイはその表情に母親を連想した、酷い別れ方をしたが優しかった母を。
「アナタだけ・・・♪」
静かな中でも耳を澄まさなければ聞こえないような小さな歌声が続く、コーイは目を閉じて耳を澄まし続けた、歌ってもらった事は無いが子守唄というのはきっとこういう物なのだろう。
やがてコーイは吸い込まれるように眠りに落ちた、考えられない事だった、今まで他人がすぐそばに居る状況で眠る事など有り得なかった、ましてやこんなにも深く、穏やかな眠りに付くなど・・・。
「その後、セヴィさんの事が頭から離れなくなって・・・自分の気持ちに気付くのにだいぶかかりました、初めてだったもんで・・・」
コーイは俯いてセヴィと目を合わせないようにしながら話を終えた。
セヴィは聞きながら何か自分の中でちりちりと燻ぶる物を感じていた、それはずっと忘れていた懐かしい感覚だった、そう、おかみさんに出会う前の・・・。
セヴィはベッドから立ち上がるとコーイに近付いた、コーイはまだ目を合わせようとしない。
「コーイ、くん」
「・・・はい」
「ワスれて、ませんか」
「・・・？」
「ワタシは、マモノ、です、よ」
コーイは顔を上げた、セヴィと視線がぶつかる。
長い前髪の奥で大きな瞳が爛々と妖しい輝きを放っている、今まで見た事の無い表情だった。
「こんな、バショ、で、そんなハナシをしたら・・・」
前髪が触れ合いそうに顔が近付く。
「ダメ、ですよ」
「・・・」
コーイは黙ってセヴィの瞳を見つめ返す。
普段前髪で隠れてしまっているセヴィの目、いつも人と目を合わせようとせずにそっぽを向いているコーイの目、こんなにも凝視したのは互いに初めての事だ。
そこでセヴィは初めて気付く、コーイの右目の色素が左目よりも若干薄い、瞳孔に白い膜が張っているようにも見える。
コーイの話を思い出す、昔受けた虐待が原因で右目の視力が殆ど無いのだと。
セヴィは急激に胸を締め付けられるような感覚を覚えた、どんな気持ちだったのだろう、毎日毎日暴力を振るわれて、毎日毎日お腹が空いていて、笑う事も泣く事も忘れて、そんな日々を這いずる様にして生き延びて・・・。
セヴィの胸に狂おしい欲情と強い憐憫の情が溢れかえった。
塗り変えたい、今までずっと辛いばかりだったコーイの人生を、幸福と快楽一色に染め上げたい。
自分になんて出来るかわからない、でも、こんな自分をコーイは好きだと言ってくれた。
なら応えたい、自分達魔物はこんな形でしか応えられないけれども。
セヴィはコーイの脇に両手をついてそっと二人の距離をゼロにした。
一瞬、コーイの頭が後ろに逃げかけるが、その分セヴィが身を乗り出して追いかける。
「―――――！！」
柔らかな感触を唇に感じた瞬間、セヴィの全身にピンク色の電気が駆け巡り、触覚がぴりぴりと震えた。
（あ・・・・・・アマぁい）♪
その感触は信じられない程甘美な刺激となってセヴィの脳に伝わった。
「・・・っと・・・モット・・・」
「セヴィ、さん、待っ・・・」
コーイはベッドの上を後ずさる、セヴィは四つん這いで追う、当然デビルバグの方が素早い、たちまちのうちにベッドの端に追い詰められるコーイ。
逃げ場を失ったコーイを見てセヴィは嬉しそうに笑う、いつものおどおどとした様子からは想像もできないような蕩けた笑みだった。
セヴィはコーイの逃げ場を塞いでおいてからおもむろに虫の手を伸ばすとコーイの服を脱がしにかかる。
「っちょ・・・」
コーイはセヴィの肩に手をやり、そのまま動けなくなる、制止するべきかどうかわからない、あんな事があって日も跨がないうちに大丈夫なのだろうか。
コーイは困ったような顔になる、セヴィが見て来た中で一番大きな表情の変化だった。
「フフフッ・・・コーイ、くん、カワイイ」
男に対してそれは褒め言葉にならないが、セヴィは思わず口に出してしまう、自分に迫られて戸惑う様子は普段の無愛想さや先程ちんぴらをのした時の無機質な機械のような怖さからは想像できない姿だ。
多分こんな姿は自分しか見た事がない、その思いがセヴィに何とも言えない優越感を感じさせる。
結局コーイは抵抗らしい抵抗もできないまま上半身を剥かれる。
針金のように密度の高い筋肉で覆われた身体には無数の傷跡があった、虐待によってついたものばかりではないのだろう、刀傷や火傷跡、致命傷ではないかと思われる程大きな傷跡もある、それら一つ一つがコーイの歩んできた道の過酷さを物語っているようだ、セヴィはそれを見てまた、甘いような苦しいような衝動に駆られる。
セヴィはコーイの胸にそっと額を当てて触覚でチラチラと傷跡に触れて行く、癒すように、慈しむように。
「・・・」
コーイはそのセヴィの髪を撫で始めた、不器用な動きで少し痛い、でも気持ちいい。
なし崩しにコーイをセヴィが押し倒してしまう形でベッドに折り重なった二人だが、互いにその行為が心地よく、セヴィはコーイの胸に触覚を這わせ、コーイはセヴィの髪を撫で続けた。
「・・・」
「・・・」
部屋に不思議と穏やかな空気が流れた、とても静かで外からの喧騒がよく耳に入る。
コーイは外の灯りにぼんやりと照らされる宿の天井を見上げながら、よくわからない感覚を味わっていた、胸が何か温かい物で満たされて行くような、血を流し続けていた傷口が塞がって行くような・・・。
「・・・」
「・・・っ・・・ふぅぅ・・・」
「・・・セヴィさん？」
「・・・ふぅーっ・・・ふぅぅっ・・・」
ふと、セヴィの様子がおかしい事に気付く、段々触覚の動きが忙しなくなり、全身がふるふると震え、腰のあたりがもじもじと動きだす。
「ふはぁぁ・・・」
セヴィはこの穏やかな時間をもう少し味わっていたいと思っていた、しかし魔物の身体がそれを許さなかった。
コーイの体温、匂い、息遣いを感じるだけで身体の芯に火が点り、その熱が全身に回って行く。
「・・・ぺろ」
「っっぁ」
我慢しきれずにちょっとだけ、と、コーイの胸に舌を付ける、その不意打ちにコーイは思わず微かに声を漏らしてしまう。
その声を聞いた瞬間、セヴィの中で何かがぷちん、と切れた。
がばっと顔を上げるとコーイの身体を這い上がり、今一度唇を合わせる、今度は先程のような接触では済まなかった。
「ぴちゅ、じゅるちゅるちゅぅぅぅ」
「・・・・！！！っ」
歯をこじ開けてセヴィの舌が口腔内に殺到してきた、その舌は信じられない程器用な動きでコーイの舌を絡め取り、セヴィの口の中に引き摺りこんだ。
「ちゅぷっぢゅぷっちゅぷっちゅぷっちゅぅぅぅぅ」
「おっ・・・ごっ・・・こっ！？」
そのまま舌をフェラチオするような形で舐めしゃぶり始める、目を閉じて心底美味しそうな表情をしている。
コーイは経験が無い訳ではない、しかしそれは適当な商売女を買って性欲を処理するだけというような物だ、そもそも他人に無防備に隙を見せる事を好まないコーイはセックス自体あまり好きでは無く、溜まったから仕方なしに吐き出すよというような感覚だった。
しかし今のこれは違う、惚れた相手が自分に無我夢中でむしゃぶりついているのだ、普段の大人しさが嘘のような激しさで。
コーイは今まで感じた事がないような興奮を覚え、陰茎に凄まじい勢いで血液が集まるのを感じた。
「ちゅるるる・・・ちゅぱっはぷっれろっ・・・んはぁ・・・」
しつこく舌に吸い付いていたセヴィはようやく離れ、目を見開いてコーイを見る。
どんな娼婦でも真似できない蕩けた表情だった、それでいて辛そうにも見える表情だった。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ゴメ・・・なさ・・・コーイく・・・」
息を乱しながらセヴィは宿に貸してもらった簡素な服をもどかしげに脱ぎ去る。
セヴィの小柄で細身な肢体が露わになった、しかしただ細いだけではない、身体の要所要所に意外な程しっかりと女らしい肉が乗っている、光沢を放つ手足の昆虫部分でさえ異様な色香を振りまいている、いつも地味な服装に隠れている肢体はやはり魔物の魔性を備えていた。
セヴィは気付く、セヴィの身体を見上げるコーイの眼差しに隠しきれない獣性が宿っている事に、その事実に背筋が震えあがる程の興奮と歓喜を覚える。
「セヴィさん、俺、加減、できません、よ・・・」
興奮で僅かに上ずった声でコーイが言う、セヴィにとって最高に嬉しい独白だ、本当は不安があったのだ、自分なんかでコーイの理性を飛ばす事が出来るのかどうか・・・。
人間に嫌われている、というコンプレックスはずっとセヴィの中に根を降ろしていたのだ、それが今綺麗に取り払われるのを感じた、だからセヴィは言う。
「カゲン・・・しないで、クダ、サイ・・・ワタシも、しません、カラ♪」
「・・・っっ」
コーイは身体を起こすとセヴィの乳房に食らいついた、無論、歯を立てるのではなく舐めしゃぶるために。
「〜〜〜〜〜〜っっはひゃぁぁやぁぁぁぅゆやぁぁぁ！？」
泣き声のような情けない声がセヴィから上がった。
右の乳房に食らいついたまま左の乳房も大きな手で捏ね回す、技巧も何もない荒々しい愛撫だった、それがセヴィには嬉しい、理性も何もかも忘れて自分に夢中になってくれるのが嬉しい。
コーイの口は胸を離れてセヴィの首筋に移り、セヴィもコーイの首筋に口を付けて愛撫し合う。
そして互いの手が互いの下半身に伸びた。
セヴィは手の平に今にも破裂しそうな程張り詰めた脈動を感じる。
コーイは指先に大量の粘液を纏わりつかせながら絡み付いて来る肉壁を感じる。
「ふくぅぅぅっきゅふぅぅぅぅ」
切なげな声を上げてセヴィはもう片方の手でコーイのズボンを降ろす、コーイもセヴィの下着を引き剥がす、互いにもう一秒も待てなかった。
コーイはセヴィの細腰を掴んで持ち上げると自分の露わになった性器の上にセヴィの性器を持って来る、腰を掴むコーイの手はまるで機械の如く抵抗できない力でがっちりとセヴィを固定している、その断じて逃がさないという意思の籠った力強さにセヴィは陶酔する。
「・・・」
「アウ・・・うう？」
しかし、腰を降ろせば繋がると言う所でコーイの手が止まり、セヴィは困惑する。
どうして繋がってくれないのかと目で懇願すると、コーイの視線が一か所に留まっている事に気付く、セヴィの肩あたりを見ているようだ。
つられて見てみると自分でも気付かなかった青痣が肩に浮かんでいた、暴行されかかった時に付いたものだ。
どうやらその痣を見た瞬間今日の出来事を思い出し、一瞬我に返ってしまったらしい。
「・・・セヴィさん、本当にんぐっ！？」
セヴィはコーイに負けないくらいの力で悩むコーイの頭を抱き寄せて強引に口付けた、そんな事に気を使わないで欲しい、理性なんて戻さないで欲しい、何もかも忘れて自分を貪って欲しい。
コーイの舌をねぶり回しながらセヴィは言外に訴える、その健気で必死な訴えに応えられない程コーイは腑抜けではなかった。
にちゅっ
腰を掴んだコーイの手が降り、互いの性器の先端が触れ合う。
コーイの陰茎はその体格に見合った大きさを有している、対して小柄なセヴィの性器はあまりに小さい、一見すると繋がる事など不可能ではないかと思える程にサイズに差がある。
しかしもはやコーイに躊躇はない、セヴィの腰をしっかり固定し、慎ましい割れ目に陰茎をめり込ませて行く。
ズリュンッ
「ぐぁっ・・・！？」
「アッ・・・カハァ・・・ああぁぁぁぁぁ・・・」
愛しい雄の性器を感知した瞬間、セヴィの性器はその可憐な外観に見合わぬ淫らな本性を現した。
途中までは強い抵抗感があったセヴィの膣だが、薄い膜を突き破った瞬間、襲いかかる様にコーイの陰茎を根元まで一気に飲み込んでしまった、そして雄を捉えた膣は信じられない程複雑な動きをした。
「・・・ぐぅぅっっ・・・」
コーイは眉を寄せて表情を歪める、今まで経験してきた女の中と全く次元が違う、膣内にびっしりとヒダがあり、それが奥へ奥へと送り込むように蠕動するのだ、構造自体が人間の物と違う。
凄まじい快楽に耐えながらセヴィに痛みは無いのかと思い、セヴィの様子を伺う。
「・・・は、ひゃぁ・・・」
その表情に苦痛の色は一切なかった、これ以上ない程に蕩けきったその顔に浮かぶのはただただ快楽と幸福のみ。
「こぉ・・・い・・・くぅ・・・ん」
コーイの視線に気付いたセヴィは笑みを浮かべる、娼婦のような淫蕩さと、何もかもコーイに委ね切った赤ん坊のような無垢さが同居した恐ろしく眩惑的な表情だった。
その表情でコーイは完全に獣と化した。
ゴヅンッ
「おぁぁぁーーーー！？」
コーイの腰が物凄い力でセヴィを突き上げた、しかも腰を手で固定して衝撃を逃がせないようにした上で。
必然的にコーイの陰茎がセヴィの奥に思い切り突き当たる、セヴィは鳴き声を上げる。
「うぁっ！あぅっ！あぐっ！あきゅん！はきゅんっ！ふぎゅっ！」
そしてその鳴き声が何度も何度も繰り返される、声を上げずにはいられない、一回突かれるたびに視界が白く染まり、頭の中でちかちかとハレーションが瞬く。
コーイにも余裕がある訳ではない、突けば突く程にセヴィの膣内はコーイの形状を覚え、一突きごとに適応していっているように感じる、長い間耐えられるようなものではない。
コーイはセヴィの細い身体を力一杯抱き締め、耳元で呻くように言葉を漏らした。
「・・・・・・セヴィ・・・・・・！」
初めて、セヴィを呼び捨てた。
その言葉は快楽で混濁したセヴィの意識にもはっきりと響いた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっォっ・・・！！」
その言葉を認識した瞬間、セヴィの意識は真っ白になった。
コーイも限界を迎え、セヴィの中に欲望を思い切り叩き込んだ。
「あくっ！？ふやあぁぁぁ！？」
たまらないのはセヴィだ、意識が飛んだ所を更なる快楽で強制的に引き戻される。
「ひぃあっあゃっ・・・お・・・美味・・・し・・・」
そして強烈な快楽と同時にえもいわれぬ美味を感じた、初めての精の味はトラウマのようにセヴィの脳裏に焼き付けられる。
ぐんにゃりとへたり込みそうになるセヴィをコーイは引き倒し、全く萎える様子の無い陰茎をさらに突き込み始める、セヴィは半ば意識を飛ばしながらも腕をコーイの首に絡め、幸せそうに微笑んだ。
大きな都と小さな商業都市、その宿屋は二つの都市を結ぶ道の丁度中間にあった。
昔はおかみさんこと、リンベラ・フロンスという女性が一人で切り盛りしていたのだが、今では従業員が増え、宿も増築されて大きくなっている。
それに伴ってサービスの良さが話題を呼び、客足も昔とは比べ物にならない程増えた。
「いらっしゃいマセー♪」
驚くべき事に宿に入る客を最初に出迎えるのは魔物の女の子である、しかもデビルバグという本来こういった仕事には不向きなはずの種族だ。
「おマたせしました、ホンジツのランチです」
「ちょっとスミませんねー」
出迎えだけでは無い、宿の清掃も料理も殆どがデビルバグの少女達が担っているのだ、しかし客からは文句は出ない、何故なら宿は塵一つ落ちていないくらい清掃が行き届いているし、料理は間違いなくうまいからだ。
その宿の一室では今日も従業員への教育が行われている。
「おキャクさんの、ワスレモノは、このハコに・・・ね」
「はぁい、かぁさん」
背中まで髪を伸ばしたデビルバグの女性が小さなデビルバグの少女に仕事を教えている、どうやらこの髪の長いデビルバグが皆の母親のようだ。
「・・・セヴィさん、そろそろメシの時間ですよ」
その部屋に一人の青年が入って来た、くすんだ金髪とくすんだ蒼い瞳をした青年は表情の変化に乏しい顔で二人に言う。
「はぁい！とぉさん！」
「アッ・・・」
母の元を素早く離れると少女は父の胸に飛び込む、青年は無愛想な顔のままで軽々と少女を受け止めて触覚の生えた頭を撫でてやる、少女は嬉しそうに目を細める。
「うう・・・」
髪の長い方のデビルバグ・・・セヴィもコーイに飛びつきたそうにする、しかしそこは母親としての威厳があるのか、娘に譲ろうと考えてもじもじ我慢する。
そんなセヴィを見た青年・・・コーイは微かに口元を綻ばせると娘を抱えたままセヴィに近付き、娘ごとぎゅうっと抱き締めてやる。
「あうぅ・・・♪」
母の威厳もどこへやら、たちまち表情を蕩けさせたセヴィはコーイの胸に娘と一緒に甘えるように縋る。
「・・・さ、メシに行きましょう」
「はい♪」
「ウン・・・」
嬉しそうに返事をする娘とは対照的にセヴィはちょっと赤面してぼそぼそと答える。
「・・・また、夜に時間取りますから」
「・・・♪」
セヴィはコーイが唯一妻を呼び捨てにする時間の予約を取り付けられたことで上機嫌になる。
「あー！わたしもー！わたしもするー！」
少女もあっけらかんと言う、デビルバグである娘達は父であるコーイとの交わりを当然のように求める、コーイもそれを拒否する事無く受け入れている。
セヴィと一緒になる時に彼女は言ったのだ「娘達も含めて愛して欲しい、きっと娘もコーイの事を好きになるから」と。
コーイはあっさりと受け入れた、元々倫理などに興味は無い、「セヴィさんに似ているならもう一代くらいは余裕でいける」と返事した。
「こーら！いちゃついていないでさっさとメシ済ませちまいな！午後からもお客が入るんだよ！」
そうこうしているうちにおかみさんが部屋に顔を出す、そこで三人で抱き合っているのを見て呆れ顔で言った。
「コーイ・・・あんたまた増やす気かい？もう十人目だろう？何人にすりゃ気が済むんだい」
コーイは妻と娘の頭を撫でながらしれっと答えた。
「・・・三十人くらいは、欲しいですね」
まさに空いた口が塞がらない、という状態を体現しているセヴィを前にコーイは俯いてぼそぼそと告白を続ける。
「・・・客として、宿に泊まりに行った時・・・セヴィさんを見て、一目・・・惚れ、しました」
「・・・？？エ・・・？」
セヴィはまだ開いた口を閉じられない。
一目惚れ、と言う事は一目見られたと言う事だ、しかし極力人目を避けて生活して来たセヴィに心当たりは無い、そのあたりの心情を察したのかコーイは説明を付け加える。
「食堂で寝てた奴、覚えて無いですか」
「・・・ショクドウ・・・？」
「・・・そりゃあ、覚えてないですよね」
食事時が終わった食堂には人影はなく、がらんとしてた、その隅にある長椅子の上にコーイは寝そべっていた、夕食と共に煽った安酒が想像以上に回ったのだ、普段ならばどうと言う事ない酒量だったのだが宿に辿り着くまでの長旅による疲労が響いたらしい。
部屋に戻るのが億劫になったコーイは人がいないのをいい事にそこで寝てしまう事にした、どうせ部屋には盗られて困る物など無い、また、長年の習慣で寝ている間も一定範囲内に人が近付けば必ず目が覚める、寝ている間に手荷物を盗られると言う事もまず無い。
朝までこうしていればおかみさんに叩き起こされるだろうが手荒いモーニングコールだとでも思えばいい。
そう思ってまどろんでいると食堂に誰かが足を踏み入れる気配を感じた、おかみさんとは違う、足音でわかる。
他の客かもしれない、と半覚醒状態で思った。
足音はコーイの寝ている長椅子の側に近寄ると立ち止まった、コーイはその気配が怪しい動きをしないか、眠りながらも神経を尖らせる。
暫く止まっていた足音はやがて遠ざかって行った、気を抜きかけた所で、また同じ足音が戻って来るのが聞こえた、そうして今度は先程よりも近くに寄って来る。
コーイはゆっくりと拳に力を込め始める、もし、椅子の下に置いてある荷物に足音の主が手を伸ばす気配を感じたならすぐに首根っこを掴めるように。
ふわっ
「・・・？」
しかし、警戒していたコーイは何か柔らかい物が自分の上に被せられるのを感じた、シーツか何からしい。
その足音の主はコーイにシーツを掛けた後、食堂の中をうろうろと動き回りはじめる、どうやら掃除をしているらしい。
コーイはその足音の主に何となく興味を引かれた、無防備に寝ている人間を前にしてそんな行動を取る人間などコーイの荒んだ記憶の中にはいない。
不意にその足音がまたコーイの側に近付いて来た、別に起きてもいいのだが何となく狸寝入りを続けるコーイ。
「・・・」
足音の主はコーイを前にして何か考えている様子だったが、暫くしてまたコーイから離れる。
コーイはそっと目を開けて足音の方を見る。
地味な色使いのメイド服を着た少女の後ろ姿が目に映った。
腕の部分は長い袖で隠されており、下半身は裾の長いスカートで覆われていて見えないが、その頭部に揺れる二本の触覚を見るに人間ではないらしい。
「・・・？」
視線を感じたのか少女は振り返る、コーイは目を閉じる。
暫しの沈黙の後足音は遠ざかって行った、コーイは顔が見れなかったな、と思った。
（・・・見れなかった？）
コーイは自分の思考に疑念を抱いた、見れなかったからどうだというのだろう、まるで見れなくて残念だとでも言うような・・・。
コーイは身を起こそうとする、しかし食堂の外の廊下からまたあの足音が戻って来るのが聞こえて来たのでコーイはまた寝た振りをする、何やら子供の遊びのようだ。
しかし今度の足音は少しおぼつかない、何か大きな物を抱えているようだ、そのままコーイに近付いて来る。
ふかっ
「？」
シーツの上から温かく柔らかな物が掛けられる、毛布の様だ、昼間に干してあったのか太陽の匂いがする、どうやらシーツだけでは寒そうだと思ったらしい、少女は毛布をぽんぽんと叩いて整えると食堂の掃除に戻った。
コーイは薄眼を開けて少女の方を伺った、テーブルを拭いている後姿が目に入る。
「・・・ヒのヒ、ツキのヒ、アメのヒも・・・」
不意に歌声が聞こえた、周囲が静かでなければ耳に届かなかったであろう小さな小さな声だ。
「ワタシのヒトミにウツるのは・・・」
ようやく、少女の顔が視界に入った、長い前髪に隠れて良く見えないが幼い印象を受ける顔立ちに見える、しかし何故かコーイはその表情に母親を連想した、酷い別れ方をしたが優しかった母を。
「アナタだけ・・・♪」
静かな中でも耳を澄まさなければ聞こえないような小さな歌声が続く、コーイは目を閉じて耳を澄まし続けた、歌ってもらった事は無いが子守唄というのはきっとこういう物なのだろう。
やがてコーイは吸い込まれるように眠りに落ちた、考えられない事だった、今まで他人がすぐそばに居る状況で眠る事など有り得なかった、ましてやこんなにも深く、穏やかな眠りに付くなど・・・。
「その後、セヴィさんの事が頭から離れなくなって・・・自分の気持ちに気付くのにだいぶかかりました、初めてだったもんで・・・」
コーイは俯いてセヴィと目を合わせないようにしながら話を終えた。
セヴィは聞きながら何か自分の中でちりちりと燻ぶる物を感じていた、それはずっと忘れていた懐かしい感覚だった、そう、おかみさんに出会う前の・・・。
セヴィはベッドから立ち上がるとコーイに近付いた、コーイはまだ目を合わせようとしない。
「コーイ、くん」
「・・・はい」
「ワスれて、ませんか」
「・・・？」
「ワタシは、マモノ、です、よ」
コーイは顔を上げた、セヴィと視線がぶつかる。
長い前髪の奥で大きな瞳が爛々と妖しい輝きを放っている、今まで見た事の無い表情だった。
「こんな、バショ、で、そんなハナシをしたら・・・」
前髪が触れ合いそうに顔が近付く。
「ダメ、ですよ」
「・・・」
コーイは黙ってセヴィの瞳を見つめ返す。
普段前髪で隠れてしまっているセヴィの目、いつも人と目を合わせようとせずにそっぽを向いているコーイの目、こんなにも凝視したのは互いに初めての事だ。
そこでセヴィは初めて気付く、コーイの右目の色素が左目よりも若干薄い、瞳孔に白い膜が張っているようにも見える。
コーイの話を思い出す、昔受けた虐待が原因で右目の視力が殆ど無いのだと。
セヴィは急激に胸を締め付けられるような感覚を覚えた、どんな気持ちだったのだろう、毎日毎日暴力を振るわれて、毎日毎日お腹が空いていて、笑う事も泣く事も忘れて、そんな日々を這いずる様にして生き延びて・・・。
セヴィの胸に狂おしい欲情と強い憐憫の情が溢れかえった。
塗り変えたい、今までずっと辛いばかりだったコーイの人生を、幸福と快楽一色に染め上げたい。
自分になんて出来るかわからない、でも、こんな自分をコーイは好きだと言ってくれた。
なら応えたい、自分達魔物はこんな形でしか応えられないけれども。
セヴィはコーイの脇に両手をついてそっと二人の距離をゼロにした。
一瞬、コーイの頭が後ろに逃げかけるが、その分セヴィが身を乗り出して追いかける。
「―――――！！」
柔らかな感触を唇に感じた瞬間、セヴィの全身にピンク色の電気が駆け巡り、触覚がぴりぴりと震えた。
（あ・・・・・・アマぁい）♪
その感触は信じられない程甘美な刺激となってセヴィの脳に伝わった。
「・・・っと・・・モット・・・」
「セヴィ、さん、待っ・・・」
コーイはベッドの上を後ずさる、セヴィは四つん這いで追う、当然デビルバグの方が素早い、たちまちのうちにベッドの端に追い詰められるコーイ。
逃げ場を失ったコーイを見てセヴィは嬉しそうに笑う、いつものおどおどとした様子からは想像もできないような蕩けた笑みだった。
セヴィはコーイの逃げ場を塞いでおいてからおもむろに虫の手を伸ばすとコーイの服を脱がしにかかる。
「っちょ・・・」
コーイはセヴィの肩に手をやり、そのまま動けなくなる、制止するべきかどうかわからない、あんな事があって日も跨がないうちに大丈夫なのだろうか。
コーイは困ったような顔になる、セヴィが見て来た中で一番大きな表情の変化だった。
「フフフッ・・・コーイ、くん、カワイイ」
男に対してそれは褒め言葉にならないが、セヴィは思わず口に出してしまう、自分に迫られて戸惑う様子は普段の無愛想さや先程ちんぴらをのした時の無機質な機械のような怖さからは想像できない姿だ。
多分こんな姿は自分しか見た事がない、その思いがセヴィに何とも言えない優越感を感じさせる。
結局コーイは抵抗らしい抵抗もできないまま上半身を剥かれる。
針金のように密度の高い筋肉で覆われた身体には無数の傷跡があった、虐待によってついたものばかりではないのだろう、刀傷や火傷跡、致命傷ではないかと思われる程大きな傷跡もある、それら一つ一つがコーイの歩んできた道の過酷さを物語っているようだ、セヴィはそれを見てまた、甘いような苦しいような衝動に駆られる。
セヴィはコーイの胸にそっと額を当てて触覚でチラチラと傷跡に触れて行く、癒すように、慈しむように。
「・・・」
コーイはそのセヴィの髪を撫で始めた、不器用な動きで少し痛い、でも気持ちいい。
なし崩しにコーイをセヴィが押し倒してしまう形でベッドに折り重なった二人だが、互いにその行為が心地よく、セヴィはコーイの胸に触覚を這わせ、コーイはセヴィの髪を撫で続けた。
「・・・」
「・・・」
部屋に不思議と穏やかな空気が流れた、とても静かで外からの喧騒がよく耳に入る。
コーイは外の灯りにぼんやりと照らされる宿の天井を見上げながら、よくわからない感覚を味わっていた、胸が何か温かい物で満たされて行くような、血を流し続けていた傷口が塞がって行くような・・・。
「・・・」
「・・・っ・・・ふぅぅ・・・」
「・・・セヴィさん？」
「・・・ふぅーっ・・・ふぅぅっ・・・」
ふと、セヴィの様子がおかしい事に気付く、段々触覚の動きが忙しなくなり、全身がふるふると震え、腰のあたりがもじもじと動きだす。
「ふはぁぁ・・・」
セヴィはこの穏やかな時間をもう少し味わっていたいと思っていた、しかし魔物の身体がそれを許さなかった。
コーイの体温、匂い、息遣いを感じるだけで身体の芯に火が点り、その熱が全身に回って行く。
「・・・ぺろ」
「っっぁ」
我慢しきれずにちょっとだけ、と、コーイの胸に舌を付ける、その不意打ちにコーイは思わず微かに声を漏らしてしまう。
その声を聞いた瞬間、セヴィの中で何かがぷちん、と切れた。
がばっと顔を上げるとコーイの身体を這い上がり、今一度唇を合わせる、今度は先程のような接触では済まなかった。
「ぴちゅ、じゅるちゅるちゅぅぅぅ」
「・・・・！！！っ」
歯をこじ開けてセヴィの舌が口腔内に殺到してきた、その舌は信じられない程器用な動きでコーイの舌を絡め取り、セヴィの口の中に引き摺りこんだ。
「ちゅぷっぢゅぷっちゅぷっちゅぷっちゅぅぅぅぅ」
「おっ・・・ごっ・・・こっ！？」
そのまま舌をフェラチオするような形で舐めしゃぶり始める、目を閉じて心底美味しそうな表情をしている。
コーイは経験が無い訳ではない、しかしそれは適当な商売女を買って性欲を処理するだけというような物だ、そもそも他人に無防備に隙を見せる事を好まないコーイはセックス自体あまり好きでは無く、溜まったから仕方なしに吐き出すよというような感覚だった。
しかし今のこれは違う、惚れた相手が自分に無我夢中でむしゃぶりついているのだ、普段の大人しさが嘘のような激しさで。
コーイは今まで感じた事がないような興奮を覚え、陰茎に凄まじい勢いで血液が集まるのを感じた。
「ちゅるるる・・・ちゅぱっはぷっれろっ・・・んはぁ・・・」
しつこく舌に吸い付いていたセヴィはようやく離れ、目を見開いてコーイを見る。
どんな娼婦でも真似できない蕩けた表情だった、それでいて辛そうにも見える表情だった。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ゴメ・・・なさ・・・コーイく・・・」
息を乱しながらセヴィは宿に貸してもらった簡素な服をもどかしげに脱ぎ去る。
セヴィの小柄で細身な肢体が露わになった、しかしただ細いだけではない、身体の要所要所に意外な程しっかりと女らしい肉が乗っている、光沢を放つ手足の昆虫部分でさえ異様な色香を振りまいている、いつも地味な服装に隠れている肢体はやはり魔物の魔性を備えていた。
セヴィは気付く、セヴィの身体を見上げるコーイの眼差しに隠しきれない獣性が宿っている事に、その事実に背筋が震えあがる程の興奮と歓喜を覚える。
「セヴィさん、俺、加減、できません、よ・・・」
興奮で僅かに上ずった声でコーイが言う、セヴィにとって最高に嬉しい独白だ、本当は不安があったのだ、自分なんかでコーイの理性を飛ばす事が出来るのかどうか・・・。
人間に嫌われている、というコンプレックスはずっとセヴィの中に根を降ろしていたのだ、それが今綺麗に取り払われるのを感じた、だからセヴィは言う。
「カゲン・・・しないで、クダ、サイ・・・ワタシも、しません、カラ♪」
「・・・っっ」
コーイは身体を起こすとセヴィの乳房に食らいついた、無論、歯を立てるのではなく舐めしゃぶるために。
「〜〜〜〜〜〜っっはひゃぁぁやぁぁぁぅゆやぁぁぁ！？」
泣き声のような情けない声がセヴィから上がった。
右の乳房に食らいついたまま左の乳房も大きな手で捏ね回す、技巧も何もない荒々しい愛撫だった、それがセヴィには嬉しい、理性も何もかも忘れて自分に夢中になってくれるのが嬉しい。
コーイの口は胸を離れてセヴィの首筋に移り、セヴィもコーイの首筋に口を付けて愛撫し合う。
そして互いの手が互いの下半身に伸びた。
セヴィは手の平に今にも破裂しそうな程張り詰めた脈動を感じる。
コーイは指先に大量の粘液を纏わりつかせながら絡み付いて来る肉壁を感じる。
「ふくぅぅぅっきゅふぅぅぅぅ」
切なげな声を上げてセヴィはもう片方の手でコーイのズボンを降ろす、コーイもセヴィの下着を引き剥がす、互いにもう一秒も待てなかった。
コーイはセヴィの細腰を掴んで持ち上げると自分の露わになった性器の上にセヴィの性器を持って来る、腰を掴むコーイの手はまるで機械の如く抵抗できない力でがっちりとセヴィを固定している、その断じて逃がさないという意思の籠った力強さにセヴィは陶酔する。
「・・・」
「アウ・・・うう？」
しかし、腰を降ろせば繋がると言う所でコーイの手が止まり、セヴィは困惑する。
どうして繋がってくれないのかと目で懇願すると、コーイの視線が一か所に留まっている事に気付く、セヴィの肩あたりを見ているようだ。
つられて見てみると自分でも気付かなかった青痣が肩に浮かんでいた、暴行されかかった時に付いたものだ。
どうやらその痣を見た瞬間今日の出来事を思い出し、一瞬我に返ってしまったらしい。
「・・・セヴィさん、本当にんぐっ！？」
セヴィはコーイに負けないくらいの力で悩むコーイの頭を抱き寄せて強引に口付けた、そんな事に気を使わないで欲しい、理性なんて戻さないで欲しい、何もかも忘れて自分を貪って欲しい。
コーイの舌をねぶり回しながらセヴィは言外に訴える、その健気で必死な訴えに応えられない程コーイは腑抜けではなかった。
にちゅっ
腰を掴んだコーイの手が降り、互いの性器の先端が触れ合う。
コーイの陰茎はその体格に見合った大きさを有している、対して小柄なセヴィの性器はあまりに小さい、一見すると繋がる事など不可能ではないかと思える程にサイズに差がある。
しかしもはやコーイに躊躇はない、セヴィの腰をしっかり固定し、慎ましい割れ目に陰茎をめり込ませて行く。
ズリュンッ
「ぐぁっ・・・！？」
「アッ・・・カハァ・・・ああぁぁぁぁぁ・・・」
愛しい雄の性器を感知した瞬間、セヴィの性器はその可憐な外観に見合わぬ淫らな本性を現した。
途中までは強い抵抗感があったセヴィの膣だが、薄い膜を突き破った瞬間、襲いかかる様にコーイの陰茎を根元まで一気に飲み込んでしまった、そして雄を捉えた膣は信じられない程複雑な動きをした。
「・・・ぐぅぅっっ・・・」
コーイは眉を寄せて表情を歪める、今まで経験してきた女の中と全く次元が違う、膣内にびっしりとヒダがあり、それが奥へ奥へと送り込むように蠕動するのだ、構造自体が人間の物と違う。
凄まじい快楽に耐えながらセヴィに痛みは無いのかと思い、セヴィの様子を伺う。
「・・・は、ひゃぁ・・・」
その表情に苦痛の色は一切なかった、これ以上ない程に蕩けきったその顔に浮かぶのはただただ快楽と幸福のみ。
「こぉ・・・い・・・くぅ・・・ん」
コーイの視線に気付いたセヴィは笑みを浮かべる、娼婦のような淫蕩さと、何もかもコーイに委ね切った赤ん坊のような無垢さが同居した恐ろしく眩惑的な表情だった。
その表情でコーイは完全に獣と化した。
ゴヅンッ
「おぁぁぁーーーー！？」
コーイの腰が物凄い力でセヴィを突き上げた、しかも腰を手で固定して衝撃を逃がせないようにした上で。
必然的にコーイの陰茎がセヴィの奥に思い切り突き当たる、セヴィは鳴き声を上げる。
「うぁっ！あぅっ！あぐっ！あきゅん！はきゅんっ！ふぎゅっ！」
そしてその鳴き声が何度も何度も繰り返される、声を上げずにはいられない、一回突かれるたびに視界が白く染まり、頭の中でちかちかとハレーションが瞬く。
コーイにも余裕がある訳ではない、突けば突く程にセヴィの膣内はコーイの形状を覚え、一突きごとに適応していっているように感じる、長い間耐えられるようなものではない。
コーイはセヴィの細い身体を力一杯抱き締め、耳元で呻くように言葉を漏らした。
「・・・・・・セヴィ・・・・・・！」
初めて、セヴィを呼び捨てた。
その言葉は快楽で混濁したセヴィの意識にもはっきりと響いた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っっォっ・・・！！」
その言葉を認識した瞬間、セヴィの意識は真っ白になった。
コーイも限界を迎え、セヴィの中に欲望を思い切り叩き込んだ。
「あくっ！？ふやあぁぁぁ！？」
たまらないのはセヴィだ、意識が飛んだ所を更なる快楽で強制的に引き戻される。
「ひぃあっあゃっ・・・お・・・美味・・・し・・・」
そして強烈な快楽と同時にえもいわれぬ美味を感じた、初めての精の味はトラウマのようにセヴィの脳裏に焼き付けられる。
ぐんにゃりとへたり込みそうになるセヴィをコーイは引き倒し、全く萎える様子の無い陰茎をさらに突き込み始める、セヴィは半ば意識を飛ばしながらも腕をコーイの首に絡め、幸せそうに微笑んだ。
大きな都と小さな商業都市、その宿屋は二つの都市を結ぶ道の丁度中間にあった。
昔はおかみさんこと、リンベラ・フロンスという女性が一人で切り盛りしていたのだが、今では従業員が増え、宿も増築されて大きくなっている。
それに伴ってサービスの良さが話題を呼び、客足も昔とは比べ物にならない程増えた。
「いらっしゃいマセー♪」
驚くべき事に宿に入る客を最初に出迎えるのは魔物の女の子である、しかもデビルバグという本来こういった仕事には不向きなはずの種族だ。
「おマたせしました、ホンジツのランチです」
「ちょっとスミませんねー」
出迎えだけでは無い、宿の清掃も料理も殆どがデビルバグの少女達が担っているのだ、しかし客からは文句は出ない、何故なら宿は塵一つ落ちていないくらい清掃が行き届いているし、料理は間違いなくうまいからだ。
その宿の一室では今日も従業員への教育が行われている。
「おキャクさんの、ワスレモノは、このハコに・・・ね」
「はぁい、かぁさん」
背中まで髪を伸ばしたデビルバグの女性が小さなデビルバグの少女に仕事を教えている、どうやらこの髪の長いデビルバグが皆の母親のようだ。
「・・・セヴィさん、そろそろメシの時間ですよ」
その部屋に一人の青年が入って来た、くすんだ金髪とくすんだ蒼い瞳をした青年は表情の変化に乏しい顔で二人に言う。
「はぁい！とぉさん！」
「アッ・・・」
母の元を素早く離れると少女は父の胸に飛び込む、青年は無愛想な顔のままで軽々と少女を受け止めて触覚の生えた頭を撫でてやる、少女は嬉しそうに目を細める。
「うう・・・」
髪の長い方のデビルバグ・・・セヴィもコーイに飛びつきたそうにする、しかしそこは母親としての威厳があるのか、娘に譲ろうと考えてもじもじ我慢する。
そんなセヴィを見た青年・・・コーイは微かに口元を綻ばせると娘を抱えたままセヴィに近付き、娘ごとぎゅうっと抱き締めてやる。
「あうぅ・・・♪」
母の威厳もどこへやら、たちまち表情を蕩けさせたセヴィはコーイの胸に娘と一緒に甘えるように縋る。
「・・・さ、メシに行きましょう」
「はい♪」
「ウン・・・」
嬉しそうに返事をする娘とは対照的にセヴィはちょっと赤面してぼそぼそと答える。
「・・・また、夜に時間取りますから」
「・・・♪」
セヴィはコーイが唯一妻を呼び捨てにする時間の予約を取り付けられたことで上機嫌になる。
「あー！わたしもー！わたしもするー！」
少女もあっけらかんと言う、デビルバグである娘達は父であるコーイとの交わりを当然のように求める、コーイもそれを拒否する事無く受け入れている。
セヴィと一緒になる時に彼女は言ったのだ「娘達も含めて愛して欲しい、きっと娘もコーイの事を好きになるから」と。
コーイはあっさりと受け入れた、元々倫理などに興味は無い、「セヴィさんに似ているならもう一代くらいは余裕でいける」と返事した。
「こーら！いちゃついていないでさっさとメシ済ませちまいな！午後からもお客が入るんだよ！」
そうこうしているうちにおかみさんが部屋に顔を出す、そこで三人で抱き合っているのを見て呆れ顔で言った。
「コーイ・・・あんたまた増やす気かい？もう十人目だろう？何人にすりゃ気が済むんだい」
コーイは妻と娘の頭を撫でながらしれっと答えた。
「・・・三十人くらいは、欲しいですね」
12/03/12 22:01更新 / 雑兵
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