連載小説
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禁忌編
 夫婦の寝室の天井が見える。
正しく「夫婦の寝室」としての役割を毎晩果たしてきたこの部屋には、妻と過ごした濃密な記憶が染み付いている。
おそらくは通常の夫婦とは比べ物にならない程に濃く、長く、多くの甘美な記憶。
その場所で雅史はベッドに横になっていた。
だが、いつもの営みと状況は全く異なっている。
横たわる雅史に寄り添うのは妻の愛しい重みだけではなく、もう一つの重み。
妻と同じくらいに愛する重み。
そう、娘の桃。
それだけなら問題は無い。
夜中に怖い夢を見た、と言って起き出して来た娘を挟んで川の字で寝た事も多々ある。
今だって川の字である事に違いはない。
しかし、並びは妻と娘が雅史を挟む形。
その二人はあろうことかせわしなく雅史の身体をまさぐりながら着衣の上からでもわかる程に火照った体を摺り寄せている。
熱い吐息を雅史の両耳に吐きかけながら、雌が牡に向ける眼差しを向けている。
実の娘が実の父に向けてはならない情欲を乗せて見つめる娘。
そしてそれを許してはいけないはずの妻は、明らかにこの異様な状況に昂っている。
それを断じて制止しなければならないはずの自分は、この部屋に連れ込まれる時からまるで酔っ払ったように体に力が入らない。
「これ、恥ずかしいね……ん、……でも止まんない……」
「ん、ふ……身体がね、お父さんを欲しがってる動きだから……止められないのよ……お母さんと同じね……」
左右の足に双方から両足で絡みつき、その臀部の両側からへこ、へこ、へこ、と恥ずかしい空腰が止まらない。
腰振りにあわせてすり、すり、すり、と最も熱い部分が擦り付けられる。
衣服の上からでも微かにぬちっ……と、湿った音が聞こえる程に二人が潤んでいるのがわかる。
「んぅ……しょうがないね、あたし「種乞い様」だもんね……種、欲しがっちゃう……♪」
その言葉で雅史は確信する。
娘が「記憶」を取り戻している事に。
これは、娘の記憶の混濁によって起こっている事態なのだと考える。
「桃……桃!」
必死で声を振り絞って娘に訴える。
「正気に戻るんだ……!桃……!お前は、お前の人生はお前の物だ……!過去に、囚われるな……!何も怖くない!父さんが付いてる……!だから……!」
「はぁぁ」
言い終わる前に、桃は離れるどころかより一層雅史に密着し、ぐりぐりと腰を押し付け始める。
「どんなになってもあたしの事考えて頑張って耐えて必死に頑張るお父さん大好き……種欲しぃ……」
「よ、依江、お願いだ、俺達は、俺達の娘は……」
「ごめんね、お父さん」
いつも頼りにしていた妻も、ただすりすりと熱い部位を擦り付けてくるばかりだ。
「お父さん、私ね」
ぎし、と乗りかかりながら桃が言う。
「桃!」
「記憶が二人分、あるんだ」
「なっ……」
「ううん……二人と、人でないのが一つ、かな」
娘の言葉の意味を掴みかねて雅史は視線を泳がせる。
「一人は私、菊池 桃」
自分を指差す。
「二人は六条 トウ」
指を二本立てる。
「そして、六条が怨念タネコヒ様」
はらり、とお隠しを下ろして顔を隠す。
雅史の脳裏にフラッシュバックする記憶。
学生の頃遭遇した異形の女の姿がそれに重なる。
「これはお母さんとお父さんが結んだ契約、私がお母さんのお腹を借りてこの世に生まれて……」
すり、と指で雅史の頬に触れる、お隠しで顔は見えない。
「「あなた」と結ばれる契約……知ってたよね?お母さん」
依江の方に目をやると、ただ欲情に蕩けた眼差しが返ってくる。
「子供……そう、か、子供を、授かる事……」
うわ言のように雅史言う。
タネコヒ様の怨念の源泉。
不妊であるがゆえに受けた虐待。
その怨念を晴らす為には……
ぐい、と、桃の顔が近付いた。
お隠しが垂れ下がり、その下の娘の顔が見えた。
笑っている。

「別に、ゴム付けてしてもいいんだよ?」

「ーーーー」
「言ってる意味わかる?」
すり、すり、と跨る桃の腰はずっと止まらない。
「確かに「私」は子供を産めない体だったから酷い目に遭った、でもね……」
そっと腰を浮かせると、ベルトに手をかけた。
「お父さんとこうするのは子供を作りたいからじゃなくて」
するり、とベルトが抜き取られる。
「ただ、ただ、こうしたいだけ……」
ずるりと、抗いようもなくそそり立った雅史の陰茎が晒される。
ぐりぐりぐり、と、横からくっついている依江の種乞いが激しくなる。
「見て」
ぎし、と膝立ちになると桃は腰に手を掛けて下着ごとズボンを下ろして行く。
豊かに育った臀部が現れ、一緒にお風呂に入らなくなってから女として成長したそこが露わになる。
ぷっくりとしたそこはぬらぬらと濡れて光っている。
実の父が本来ならば目にしないもの、娘の発情した雌そのもの。
昔、オムツを代えてあげた時にはただの筋だったそこ。
そして、するりするりと上半身も露わにしてしまう。
大きく揺れて早熟に存在感を示す膨らみ。
一緒にお風呂に入っていた頃はぺったんこだったそこ。
全てが、もう子供を産めるのだと訴えて来る、娘の身体。
そして、その体の下で浅ましく主張する自分の牡の象徴。
父親の、陰茎。
恐ろしい光景に思わず再び腰を揺らして逃れようとする。
しかし、いつの間にか下半身に回り込んだ依江が両足にのしかかってそれを封じる。
あまつさえ前面に手を回して陰茎に指を絡め、シコシコと勃起を促す。
娘と交われ、と、強要してくる。
その手が今まで最も愛して、頼りにしてきた依江の手であるという事実が雅史の心を打ち砕く。
かつて自分を救ってくれたその手は、今、自分を背徳の淫獄へと突き落そうとしている。
「ゴ……ゴム……」
「ん?」
掠れた声で呟く雅史に聞き返す。
「子供を作るのが目的じゃないなら……せめて、ゴムを……」
もう、実の娘に犯されるという事実からは逃れられない。
ならば、せめて避妊を。
禁断の血筋が生まれないように……。
「だぁめ」
にち、と入口を合わせて舌なめずりしながら、桃がその目に加虐的な光を宿して言う。
「お父さんは娘のあたしと、ゴム無しで、無責任な、中出しセックスするの」

 みちぃ

 決定的な感触が、陰茎の先端を襲う。
「あぁぁぁあああああ」
雅史の断末魔のような声が響く。
終わる、壊れる、全てが。

「見るの」

 ぐい、と、強い力で頭を押さえられ、のけぞっていた顔が強制的に押し下げられる。
視界に入る。
自分の陰茎が、手塩に掛けて育てた娘の処女膜を破っていくその瞬間が。

 みちみちみちぃ

その言い逃れの出来ない決定的な瞬間を目に焼き付けさせられる。
視覚と触覚で、その禁断をじっくりと噛み締めさせられる。

「ふ、ぅんっ」

 にゅとんっ

 半ばまで呑み込んだ所で、勢いを付けて腰が振り下ろされる。
先端にキスをされるようなくにゅ、という感触と共に桃の豊かな膨らみがぶるるん、と震える。
「はぁっ……はぁい、貫通、もうダメだよ、捕まえたよ、ココはもう、一生お父さんのモノ♡」
腹の中腹。
子宮口と亀頭がキスをしているであろう箇所にぐい、とハートを形取った指を押し付ける。
そのハートでごりごり、と膣肉を怒張に押し付ける。
慎みの欠片も無い、下賤なポルノじみた処女喪失。
親として目撃したならば怒りで気が狂うような娘の姿。
そして、娘がその痴態を捧げているのはその親である自分という事実。
あらゆる要素が雅史の脳を滅茶苦茶にかき乱し、その全てが肉の快楽へと転化させられる。

 「あがぁ」

 どぽぉっ

 取り返しのつかない、熱い液体が、桃の中で溢れた。
「はぉぉっ」
びんっと桃の背筋が伸び、女子高生の張りのある巨乳がばるんっと宙に残像を描く。

 (助けーーーー)

 誰に助けて欲しいのか、何から助けて欲しいのかわからないままに宙に手を伸ばす。
そっと、その手首が掴まれて引き寄せられる。
ぐちゅ
指が、熱い何かに呑まれた。
狂おしくうねり、ぬるぬるの粘液に塗れた感触。
覚えのある感触。
くちゃくちゃくちゃくちゃ
依江だった。
救いを求めて伸ばされた夫の手を掴み、その指でオナニーをしている依江だった。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふぅぅ」
夫の陰茎が娘の処女を奪う光景に狂おしく欲情した妻は、夫の手に発情した雌猫のように腰を振っている。
そして開いている方の手で、自分ではとても掴みきれない大きな乳房を滅茶苦茶に揉みしだいている。
ずっと夫に寄り添い、救い、導いてきた彼女は、どうにか這い上がろうとする夫を淫獄に叩き落す。
そして、自らもその中に身を投げようとしている。

 ぶぢゅぅ!

 その乳首から、白い液体が撒き散らされた。
娘を育てて来たそのミルクが、父をレイプする娘を祝福するように降りかかる。
「あ゛お゛お゛っ、おどうさ、いぐぅんっ」
禁断の射精を一滴も逃さないようにしっかりと腰を落とした桃は、そのミルクを顔に浴びながらアクメをキメる。
「……っ……っっ……っっ……」
どびゅー、どびゅー、どびゅー、どびゅー、どびゅー
何をどうしても止められない射精を娘の中に放ちながら、雅史は息が出来ないほどの快楽を叩きつけられる。
頭上で乱舞するミルクをまき散らす重々しい妻の爆乳と、若々しく張りのある娘の巨乳の残像が、ただ網膜に焼き付いた。
あらゆる感覚で快楽を享受させられる雅史の耳に、小さく、桃の言葉が響いた。

「もう……さみしく……ない……」








 ぬっちゃ、ぬっちゃ、ぬっちゃ、ぬっちゃ
桃はくねくねと腰を振る依江の下腹部に手の平を押し付けていた。
その柔らかな肉の下で、母がどうやって父を搾り取っているのかをまざまざと感じている。
「頑張れー♪頑張れー♪お父さんのおちんちん頑張れー♪お母さんの子宮も頑張れー♪」
狂気を感じる程に爛れ切った言葉を、自分の妹を作らんと絡み合う二人の性器に囁き掛ける。
時折ぐんっ、ぐんっ、と手で圧を掛けて二人の刺激にランダム性を持たせてやると二人共面白いように惑乱する。
「あぁぁ!?それ、だめっ、あ〜〜〜ぁぁ!?」
「ぐぅ、おぅ、ふぐっ」
どびゅぅっ
「あ、出た出た♪」
中出しが始まったのを手で感じた桃は、ぎゅぅぅっと母の下腹部を押す。
まるで母の子宮というオナホで父の陰茎を搾るかのように。
依江は乱れに乱れながらも夫の儚い抵抗を押さえつけ、娘に弄ばれる子宮で夫の精液をたらふく飲み干していく。
「こっ……はっ……」
「んしょ」
力尽きたように崩れ落ちる依江の身体をどかせると、父の精液と母の本気汁に塗れた陰茎に躊躇なくしゃぶりつく。
「じゅぽっじゅるるるるっじゅぱっ」
そうして綺麗に舐め取った後に、また父に跨る。
「はい、お父さんお帰りぃ」
にゅぷぅ……
「ああぁ、だめだ、だめだ、とぅぉ、だめだぁ」
「だめじゃなーいの、んちゅ……」
見悶える雅史をしっかりと足でホールドし、唇に吸い付く桃を横目に依江は息を整える。
と、サイドテーブルに置いたある依江の携帯が鳴った。
その音に時計を見上げると、針は三時をさしている。
普通、メールが届くような時間ではない。
依江は携帯をゆっくりと掴むと、そのメールを目で読む。
「ちゅっ……大口?」
「ふふ、そうね……」
娘の腰使いに喘がされながら、雅史は二人のやり取りに違和感を覚える。
恐らく、今の依江のメールは「仕事」の依頼だ。
娘の言葉は何だろう、母の仕事に関しては知らないはずなのに。
「んっ……んっ……んっ……知ってるよ」
考えを呼んだかのように、桃が腰を振りながら言う。
「お母さんのお仕事の事……そして……んっ……これから先の事……」
先の事?
「お父さん、私、仕事に関して一つ、嘘を付いてた所があるの」
依江がベッドから降りて部屋の箪笥に歩いて行く、雅史は変わらず桃に犯されながらそれを見る。
ごそごそと何かを探った後、戻って来た依江は手に預金通帳を持っていた。
夫婦で共有している物とは違う、見覚えのない通帳だ。
ぎしぎしとベッドの上で悶えさせられる雅史の前に、その通帳を開いて見せる。
「なっ……なんだ……それは……」
おびただしく並ぶ0、見た事のない数字が表記されている。
「これは、私が隠れて作った口座……嘘って言うのはこれ、報告してた「仕事」の収益は何分の一にも満たない数字なの」
「ん、ふ、凄いでしょ、お母さん、ふぁ、替えが効かないくらい「強い」から、報酬膨れ上がっちゃったんだって」
「これで、ね」
犯され続ける夫にどろどろに蕩けた眼差しを送りながら依江が言う。
「お父さんに、お仕事、辞めてもらおうかなって思ってる」
「なっ……」
「あたしも、勉強頑張って……お母さんのサポート、出来るようになるからね……?」
わななく雅史に乳首を擦り付けながら、桃が陶酔した声で言う。
「だからお父さん、あたしとお母さんの「ヒモ」になって?」
「二人で働いて、お父さんを養うから、ずっとずっと、しゃぶらせて?」
「あ……あ……あ……」
濡れた二人の目で見下ろされながら、雅史は娘の中で果てた。







 「いやあ、今月も一位か!流石だなあ菊池君は」
「それだけ頑張ったので……」
「やっぱり家族のために頑張るパパは強いもんだなあ」
「いや、家族の為と言うか……自分の為というか……」
帰りの電車の中、上司に働きを褒められる雅史は微妙な顔をしている。
「照れる事はないだろう、立派なもんだ」
「ありがとうございます」
謙遜と受け取られたようだが、自分の為に頑張っているというのは実は言葉の通りだ。
「お疲れ様です」
電車から降りて駅前のロータリーで待っていると、依江の車が入って来た。
「ただいま」
「お帰り」
「お帰りー」
見ると、後部座席に桃も座っている。
父の出迎えにわざわざ付いて来たらしい。
「家で待ってていいってのに」
「早く会いたいもん」
さらっと言われてしまう。
時間は掛かったが、結局、雅史はこの異常な関係を受け入れた。
いや、正確には受け入れさせられた、というのが正しいが。
無論堂々と世間に公表する訳にもいかないが桃は雅史の二人目の妻である、というのは家族の中で共有されている事実だ。
しかし、雅史にも譲れない一線はある。
「お仕事、頑張ってるね」
「うーん、まだヒモにはなってくれそうもないかー」
「軽々しく言うんじゃないぞ全く……」
雅史は仕事を辞める気は無い。
既に働かなくとも生活は保障されてしまっているのだが、それはもうアイデンティティの問題なのだ。
「もっともっと頑張ってお父さんを骨抜きにしないとね?」
「アナル舐めってやってみたいって思ってたんだ」
「お前達なぁ……」
ニヤニヤする二人に雅史は呆れながらも声が震えるのを堪えねばならなかった。
頑張れば頑張る程二人の責めは甘く、重く、倒錯的になっていく。
「負けないからな俺は!」
「だってさお母さん」
「その態度がどこまで持つか楽しみだね」
「ま、負けないからな……!」







 菊池家

 莫大な資産と奇異な才能により、日本の神事の暗部に深く関わる事になるこの血筋が変異を起こしたのは遡ると菊池家と善治家が交わった所と言われている。

 妻 菊池 依江(よりえ)
 夫 菊池 雅史(まさふみ)
 長女 菊池 桃(とう)
 次女 菊池 愛江(まなえ)
 三女 菊池 夜中(よなか)

 この代に何が起こったのか、何があったのか。
何故菊池家が「禁忌の血統」と呼ばれるのか。
正確に知る者は少ない。
21/06/21 20:41更新 / 雑兵
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■作者メッセージ
この三女は戸籍上は三女ですが、実際には腹違いの子です

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