連載小説
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転生編

 「優越感、感じる?」
急に善治はそんな事をのたまって来る。
「何で?」
「学校での私の評判、聞いてるでしょ?その善治さんとこういう事できるのは自分だけ、とか思う?」
「いや、その……どっちかと言うと、不安になるというか……」
「それは私を疑ってるって事?」
「そ、そうじゃないって、ただ……悪い奴らとかが絡んでこないかって……」
「心配してくれてありがと、でも大丈夫、タネコヒさまが憑いてるからね……は、んむ」
そう言うと、善治は「こういう事」の続きを始める。
こういう事、というのは菊池の家の風呂場で菊池の前に跪いて陰茎に口で奉仕する、というような事だ。
小さな舌がちろちろと這い回り、亀頭にキスをすると、小さな口を大きく開いてぬるるるる……と、咥え込んでいく。
「ふぅぅぅ……」
菊池は息を吐いて耐える。
善治の小さな口にぶちまけてしまわないよう、集中しなければ瞬殺されてしまう。
あの後、親にはただ善治という彼女が出来たとだけ報告した。
あの日呼び出されたのは高熱に苦しむ彼女がどうしても会いたい、と親に頼んだから呼ばれたのだと説明した。
だいぶ苦しい説明だったが、善治にも話を合わせてもらったのでそれで納得してもらえた。
何より家に挨拶に来た善治の事を両親はすっかり気に入り、「逃がすんじゃないよ」などと言われるくらいだ。
いたって普通の家庭である菊池家に極めて特殊な事情を持つ善治家の事を理解してもらうのは困難だ。
その上タネコヒさまだの何だの眉唾モノの事情なんて尚更だ。
そのあたりは説明せず、普通に高校の彼女と卒業と同時に籍を入れる、と報告すれば問題ない。
善治方の両親は言わずもがなだ、最も、お父さんとは時間を掛けて関係を構築しなくてはいけないと思うが……。
そうして将来を誓い合ったとは言えどまだ学生なのだ。
こうして爛れた関係を結ぶ事を互いの親が了承している訳では無論、無い。
実際、菊池も結婚までは清い関係でいます、と報告している……あの日の出来事は伏せた上でだが。
ところが、善治は違った。
「少しぐらいバレないから大丈夫、少しだけ……」
と、小悪魔のような囁きで菊池の儚い理性を容易くぐらつかせ、清い関係の正反対を行く猿のような若い性欲をぶつけ合う関係を構築してしまっている。
まさか、真面目な善治の方からそんな関係にされているとは、親は想像もしないだろう。
「ぢゅっ、ぢゅぷっ、ぢゅぱっ、ちゅぼっ、むぢゅっ」
こうして、男の陰茎にタコのように吸い付いて精液を啜り上げる顔なんて、想像もつかないだろう。
そう思う度に猛烈な背徳感に襲われ、菊池は射精を堪える事ができない。
「ん゛っ……んっ……ごく……ごく……ごく……」
体格に不釣り合いに実ったその膨らみを膝に押し付け、腰に手を回して、善治は菊池の射精をその小さい口と細い喉で受け入れる。
菊池はただ、ガクガクと膝を笑わせながら放出感に浸るしかできない。
今日は、親がいない休日。
二人が、思うさま貪り合える日。
一滴残らず白濁を腹に納め、じゅるりと舌なめずりをする善治の目は、まだまだこれからだと語っている。
その目に射貫かれ、菊池は大量の射精の後にも関わらず陰茎を前以上に漲らせるしかできない。







 善治の身体はタネコヒさまによって、大きく作り変えられてしまった。
それは牡を誘惑するような体形に限った話ではない。

 ぬっ……ぢゅんっ

 「んっくっ……」
「ふぅ〜〜〜〜……ふっ……ふぅ〜〜〜〜〜……」
風呂場から菊池の部屋に移動し、ベッドの上で善治を組み伏せての挿入。
毎度毎度、挿入した直後は快感の波をやり過ごすタイミングを設けなくてはいけない。
深呼吸をして、尻に力を込め、射精を堪える。
呼吸の拍子に甘い匂いと女の子の匂いを吸い込んでしまって脳が痺れるのはもう、仕方がない。
そうでもしないと、この別の生き物のようにうねる善治の膣壁に耐える事など出来ない。
うっとりとした顔の善治はいつも「我慢せずに出していいのに」と言う。
しかし、そこは男の尊厳というか、そういうものなのだ。
歯を食い縛りながら腰を引くと、縋りつくようにヒダが纏わりつき、引き留めるように全体が収縮する。
腰を押し出すと、嬉し気にヒダはざわめいて受け入れ、きゅ、きゅ、きゅんっ、と三段階に分けて甘く締め上げられる。
確かネットで調べてみたら「俵絞め」だとか何だとか解説されていたような気がする。
そう、外見だけではない。
身体の内部まで男を喜ばせるよう作り変えられてしまっている事が、実際交わってみるとわかるのだ。
それはもう、生半可な快感ではない。
菊池はなけなしの根性を振り絞って腰を使う、一突き一突きで必死だ。
だというのに。

 カリッ

 「ああ゛っ!?、ぜんっ……じっ……!?」
想定外の快感に下を見ると、善治が上体を起こして菊池の小さな乳首に歯を立てていた。
とろりと蕩けた目で笑いながら、ピンク色の舌を這わせ始める。
「くぁっ!?あ゛っだめっ、ぜんじぃ!?」
「ちゅっ……ちゅぷ……ちゅぴ……」
脳内で電撃が弾ける。
何とか打開しようと、善治の乳房に手を伸ばす。
もにんっ
「んっ……ぷぁっ、ふぁ、ぁっ、あっ」
極上の感触と共に善治の声に余裕が無くなる、ここぞとばかりにぷっくり膨らんだ桜色の小さな乳首……乳輪の割れ目に指を押し込む。
「ひぃっんっ」
声のオクターブが上がる、善治はこれに弱い。
だが、これも諸刃の刃。
きゅんっ♪きゅんっ♪きゅんっ♪きゅんっ♪
ただでさえトロトロだった性器からさらに蜜が溢れ、膣壁全体が喜びを表すように陰茎を締め付けてもてなす。
頭を沸騰させながらそれに耐え、乳輪の奥に潜む固い乳首をぐりぐりと指でこね回す、善治の喘ぎ声が止まらなくなる。
牡の本能に操られた菊池の腰も止まらなくなる。
「ふぅぅっ……!んっ……!」
「ひ、ん……んぁむっ……!」
最後に、互いの口を塞ぎ合って、体を震わせる。
睾丸が持ち上がり、コンドームも何も纏わない陰茎から白濁が迸る。
善治の女性器が大喜びでそれを一滴も逃すまいと啜り上げる。
(きもち、いい……きもち、よすぎ、る……)
全身をぶるぶる震わせ、菊池は深い放出感に浸る。
善治は菊池の舌を吸い上げながら、しっかりと足で菊池の腰をホールドする。
「ぷは……あ……はぁ……」
「はぷっ……んぁ……はぁ……」
長い長い射精の後、ようやく銀の橋を繋げながら二人の唇が離れる。
マグマが噴出するような射精もようやく終わりに差し掛かり、とくとくと脈動を弱めていく。
菊池も身を起こし……。
「ふぅぅっ♪」
「ちょっ……!」
舌なめずりをする善治にまた、押し倒される。
引き抜かれかけた陰茎がまたずぐっ、と名器に捕らえられる。
「ごめんね、菊池君……もうちょっと……もう一回……だけ……」
先程菊池にほじくり出され、勃起しきった乳首を揺らしながら、善治が一回で終わるとは思えない情念の籠った声で言う。
「望む……ところだっ……!」
菊池も、もはや決死の覚悟で応える。

 たんっ

 腰にむっちりとした尻肉が打ち付けられる音が、部屋に響いた。







 たんっ たんっ たんっ たんっ

 (ごめんなさい、菊池君……)

 善治依江は、心の中で懺悔する。
はしたなく股を開き、菊池の為に成熟させられた果実を水風船のように振り乱して、腰を振りながら懺悔する。
菊池は、覚悟を示してくれている。
生涯全てを自分と、自分に取り憑いているタネコヒさまを鎮めるために捧げようとしてくれている。
それは痛いくらいに伝わる。
お父さんも、お母さんも、おばあちゃんも、その事情を知って……むしろ、自分が力の呪縛から解き放たれた事を喜んでくれている。
代わりにタネコヒさまの呪縛に囚われたけど、それでも女として愛する人と結ばれる事を喜んでくれている。
お父さんは……ちょっと可哀想だけど。

 たんっ たんっ たんっ たんっ

 だけど、違うのだ、お母さんは……恐らくは、おばあちゃんもが、本当の事を理解していない。
タネコヒさまが何を望んでいるのか、彼女の真の目的は何なのか。
お祓いに失敗した理由は何か?
それは、単純に自分が未熟だった事もある、タネコヒさまが強大過ぎた事も勿論ある。
だけど、本当の原因は自分が「共感」してしまった事なのだ。

 たんっ たんっ たんっ たんっ 

 生まれながらに人を愛し、愛される権利を周囲に奪われた彼女。
生まれながらに自由に人を愛する権利の無い自分。
根幹は違えど愛し、愛される権利を欲していた。
彼女も、自分も。
そしてそれだけでなく、その対象までもがシンクロしてしまった。
クラスメイトである温かいあの人。
暗闇を彷徨う中で出会った温かいあの人。
「菊池雅史」

 たんっ たんっ たんっ たんっ

 二人はその一人を求めてしまった。
目的が、一致した。
心の奥底で、しがらみから解放されて好きな人と結ばれたいと思ってしまっている自分。
その望みを叶える代償に自分は「依り代」に選ばれた。
タネコヒさまの依り代に、依り代というのはつまり。
彼女を産む「母体」だ。

 たんっ たんっ たんっ たんっ 

 タネコヒさまは自分を母体に、今一度この世に生れ落ちる事を画策している。
その為に母体である自分を交わらせるよう仕向けた。
少しでも早く自分を孕むように、より菊池を誘惑できる体に作り変え、より沢山交わるよう作り変え……
そうして、再びこの世に生を受ける。
問題は、彼女が何の為に生れて来るか。
言うまでもない事だ。
果たせなかった想いを遂げるため、愛する人と結ばれる為。
「菊池雅史」と、だ。

 たんっ たんっ たんっ たんっ

 自分が孕む事になる娘は。
実父と結ばれる事を目的に、生まれてくる。
余りに許されない、余りに認められない、余りにも悍ましい。
余りにも。
ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ。
だけど、だけど。

 たんっ たんっ たんっ たんっ ぐちゃ、びちゃ、くちゅ、ぬちゅ

 あの数か月で、変えられてしまった。
理性も倫理も、ドロドロに溶かされ、変質させられ。
その禁忌を望む程の色狂いに変えられてしまった、自分はもう、戻れない。
今も、やがて生まれて来る自分の娘と共に菊池君を滅茶苦茶にしてあげる事を想像しただけで。
溢れて、溢れて、止まらない。

 ぬっちゃ、ぬっちゅ、びぢゅっ! ぐっちょ! ぐっちょ! ぐっちょ!

 堕ちよう、堕ちよう、菊池くん、まさふみくん。
私と、タネコヒさまで、堕としてあげる。
二度と這い上がれないくらい、堕としてあげる。
天国みたいに、気持ちよくしてあげる。
ああ、まさふみくんのおちんちん、本当にきもちいい。
イッちゃう、濡れちゃう、きもちいい、まさふみくん。
だいすき。

 ドグンッ ドビュッ ビュグッ びゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅるびゅる

 「……ぁ……あぁ……ぁはぁ……ぁ……くふぅ……んんん……」

 菊池の上で腰と乳房を振り乱しながら精を受け入れる善治を間近に見ながら、タネコヒさまは下腹部に指を這わせ、自らの豊満な乳房を揉みしだいている。
善治と共に、淫らに濡れ堕ちた未来に想いを馳せながら。


 背徳の未来に向けて、善治は種を乞う。

 乞うて、乞うて、乞うて、乞い狂う。


20/03/10 20:08更新 / 雑兵
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■作者メッセージ
お疲れっした!

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