2話
本日快晴なり。
このまま釣りにでも出かけたいものだが、そうはいかない。
「さてと・・・それでは初任務といきますか」
今日があの依頼にあった指定の日だ。
依頼通り今日のために体調を整えて、受け取った前金で装備品を新調しておいた。
傷もなく色鮮やかな防具に身を包んで気分は初陣を迎える新兵のようだ。
ただし武器は長年連れ添った愛剣だ、壁に飾ってすいませんまたヨロシクお願いします。
・・・にしても防具一式揃えてもまだ金が余るとか、絶対相場を間違えてるだろ。
俺の数ヶ月分の生活費に匹敵する金額だったので、このままバックれてやろうかとも思ったが流石にやめておいた。
家を持つ身分となった今では、傭兵の頃のように自由気ままなその日暮らしとはいかない。
それとツッコミを入れられたけどエルザの前で見栄を切っちまったしな。
「んで地図にある場所ってのが・・・これまた近場なんだよなぁ」
金もあるし馬を借りて久々に駆けたりしたかったが、それだと10分ぐらいで目的地に着くのでやめた。
健康のために徒歩移動だ、天気もいいし。
ロープだの毛布だのと野営用の装備と数日分の食料が詰まった背袋を背負い、青空の下を暫く歩く。
テクテク・・・。
テクテクトコトコ・・・・・・。
テクテクトコトコヒョコヒョコ・・・・・・・・・。
ちょっと待て、これじゃピクニックじゃねーか。
そもそも本当に俺は何しに行くんだよ。
装備を整えて来いとか書いてあったから、冒険に付いて来てくれとか言われんのかなって少しウキウキしながら準備しちまったぞ。
どうすんだよ国を落としに行くぞとか言われたらさ?
そんなテンションは生憎ご用意してませんっての。
依頼書には装備を整えて指定の場所に来いとあったが・・・、てかそれしかなかったが。
・・・・・・ん?
待てよ、ひょっとして・・・、目的地に着きさえすれば依頼達成になるんじゃない?
いやいやいやいや、それは逆に困る!
張り切って買った防具どうすんだよ!剣を再び飾ってその横に並べるしか使い道ねぇぞ!!
用意した野営用の食料も然るべき状況で食うから美味いんだろうが!!
家に帰って使われなかった野営道具を片付けてる自分なんて想像したくない!!!
はっ!!?
まさかこれが目的か!
張り切って準備してノコノコやってきた俺をあざ笑うつもりなのか!!!!?
だとしたら俺は修羅になるぞ・・・。
即座に依頼主を剣のサビにしたあと、ちゃんとお手入れして壁に飾ってやる。
それでエルザのところに依頼を持ってきた美人のねーちゃんをなんやかんやで連れ帰って、めでたく結婚して子供作って犬飼って夢を実現させるんだ!
おお、目的地の森が見えてきた。
森の中央にあるらしい開けた場所が指定の場所だ。
「待ってろよ!美人のねーちゃん・・・いや!我が妻よ!!
今行くぞ!!!!!!!!!!!!!!」
「久しぶりだな・・・人間?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇー」
ないわー
この展開はないわー
無理やりあげたテンションが一気にリストラされたわー
たしかに物凄い美人だけどさ・・・。
騎乗鎧に両刃大剣携えた魔物をどうやったら、なんやかんやで連れ帰って嫁にできんだよ。
あーでも、たまたま此処に居ただけかも知れないし?
なんか全身から溢れでてらっしゃる闘気はお腹空いてるだけかもしれないし?
さっきから俺に向けられてる剣先は・・・・・・だめだ、ポジティブな解釈が思い浮かばん。
「何をゴチャゴチャと言っている! ・・・美人だの・・・嫁だの・・・!///
ええい、さっさと剣を抜けぇ!!!」
はいダメー。
完全に俺狙い、俺ご指名でした。
「あー、ということはアンタが依頼主の『レイナ』か?
この依頼の目的は俺との決闘といった所か」
「そうだが・・・人間ごときが気安く私の名を呼ぶな」
「やれやれ相変わらずだな、自己紹介はしたはずなんだがね」
「さあな?負け犬が逃げ際に何かキャンキャン吠えてはいたが」
いや待て、あれは一応俺の勝ちだろうが。
反論しようとしたが、レイナの口元がニヤリと吊り上ったのを見て思い留まった。
どうやら挑発されているようだ。
戦闘の意思のないものに手は出さないとか、デュラハンの流儀でもあるのか。
こちらが抜刀するのを待っているようだな・・・よし。
ならば意地でもこの剣は抜かぬ!!!!!
そもそもデュラハンなんて勇者か聖騎士クラスじゃなきゃ相手にできねーっての。
このままのらりくらりとこの場をしのぎ切ってやる。
不本意だが依頼料は諦めよう、どうせ戦って勝たなきゃくれないだろうし。
んで負けたらもれなく死を・・・とかそんな展開だろ、フラグがはためいてるわ。
「にしても随分と回りくどい手を使ったもんだな。
俺の居場所を分かっていたなら、わざわざギルドを通す必要があったのかい?」
話題を変えられたことに、レイナが明らかに不機嫌顔になる。
やはり挑発が目的だったか。
残念だったな、この剣は本日休業となったんだ。
「・・・ふん。鍬で畑を耕してる奴の所に決闘の申し込みになど行けるものか。
あまりに腑抜けてた姿だったのでな、お前らの施設を利用して準備期間をくれてやったんだ。
・・・・・・・・・それに事前に日時を指定するのが我が一族の掟だし・・・」
ふーん、騎士道みたいなものか知らんがデュラハンって色々掟があるんだな。
にしてもいい感じに話が反れてきた、この調子だ。
「なんだ、わざわざ家に来てたのか。
ならそこで見たとおり俺はもう教団側の傭兵はやっていない。
これからの戦争に参加するつもりはないもんでね・・・。
依頼を受けといてなんだが、あんたと戦う必要はこちらにはないな。
そもそも魔王軍の先鋭ともあろう方が、こんな所で俺なんか相手に油売ってていいのかい?」
うし言い切った、正論の筈だ。
様子を伺うとレイナは剣を下ろして俯いていた。
・・・論破できたか?
「・・・・・・言ったのに」
「えっ?」
「怪我が治ったら、勝負しに来いって言ったのに・・・。」
上目使いで拗ねたようにこちらを睨まれた。
「え!?
あ、いや言ったっけ?言ったような・・・。
いや、でも・・・え?????」
ちょ、ちょっと待ってくれ。
何で急にキャラ変わるんですかレイナさん。
美人にそんな仕草されたら、男としては堪らないわけでして・・・
!!
いかんいかん!流されるな!!
ここで気を引かれた所で、起こるイベントは決闘だぞ。
しかも高確率で俺の死亡イベントに発展確実だし。
なんとか耐えてこの死地を乗り切らねば!
「ロザドと戦うためにリハビリ頑張って怪我を治してきたのに・・・
何処に行ったのかわかんないからハーピー達に頼んで探して貰ったり、
変装して人間の町まで行って依頼を頼んだり・・・頑張ったのに・・・。」
うががが!!!
耐えろ、俺!!
なんなんだ!俺は今一体何と戦っているんだ!!こんな強敵は初めてだ!!!
しかも何さりげなく俺を名前で呼んでるんですか!?さっきまで人間呼ばわりだったじゃん!
だがしかし、このままでは剣を抜く前になんか違うものをぽろっと抜いちm
「でもなかなか依頼受けに来ないから・・・
受けに来るしかなくなるようにロザドの畑に夜こっそり除草剤撒いたりしたのに・・・」
なんか幼児返りしてない?この人・・・ってか魔物か。
・・・。
「はぁ!?今なんて言った!!!???」
「?
依頼受けに行かないみたいだから、ロザドの畑にたっぷりと念入りに除草剤を撒いたり掛けたり埋めたりしたんだけど。」
「 お ま え の仕業か!ごらぁあああああああああ!!!!!!!
あともうちょっとで収穫だったのに!!!!!!!
しかも除草剤埋めたってなんだ!?
何不毛の地にしてくれてんだよ!!!!」
もはや勘弁ならねぇ。
俺の汗水たらした成果たる大地の恵みをよくも!
こうなれば我が剣をもって捻りつぶした後、家に連れてって畑の土を入れ替えさせてやる!!!!
「抜け小娘!!
元ザック傭兵団歩兵部隊長ロザドが貴様に天誅を与えてくれる!!」
決闘らしく名乗りを上げ勇ましく剣をレイナに突きつける。
「やれやれ、誰が小娘だ?人間めが・・・
ようやくやる気になったか、こっちは最初から抜いてるだろうが。
まあいい・・・。
魔王軍騎士団副団長レイナ・セロ・インダーク、この決闘受けて立つ!!!」
あれ
キャラ戻ったんすか、レイナさん?
てか騎士団副団長?それって凄いんじゃ・・・、俺は部下が4人いたぐらいなんですけど・・・。
ひょっとして、さっきまでのやりとりって・・・計算?
「いざ!尋常に!!勝負!!!!」
何時だか聞いたときと変わらぬ凛々しい声と共に、振りかざされた刃が俺に迫ってくる。
ああ、死んだなこりゃ。
このまま釣りにでも出かけたいものだが、そうはいかない。
「さてと・・・それでは初任務といきますか」
今日があの依頼にあった指定の日だ。
依頼通り今日のために体調を整えて、受け取った前金で装備品を新調しておいた。
傷もなく色鮮やかな防具に身を包んで気分は初陣を迎える新兵のようだ。
ただし武器は長年連れ添った愛剣だ、壁に飾ってすいませんまたヨロシクお願いします。
・・・にしても防具一式揃えてもまだ金が余るとか、絶対相場を間違えてるだろ。
俺の数ヶ月分の生活費に匹敵する金額だったので、このままバックれてやろうかとも思ったが流石にやめておいた。
家を持つ身分となった今では、傭兵の頃のように自由気ままなその日暮らしとはいかない。
それとツッコミを入れられたけどエルザの前で見栄を切っちまったしな。
「んで地図にある場所ってのが・・・これまた近場なんだよなぁ」
金もあるし馬を借りて久々に駆けたりしたかったが、それだと10分ぐらいで目的地に着くのでやめた。
健康のために徒歩移動だ、天気もいいし。
ロープだの毛布だのと野営用の装備と数日分の食料が詰まった背袋を背負い、青空の下を暫く歩く。
テクテク・・・。
テクテクトコトコ・・・・・・。
テクテクトコトコヒョコヒョコ・・・・・・・・・。
ちょっと待て、これじゃピクニックじゃねーか。
そもそも本当に俺は何しに行くんだよ。
装備を整えて来いとか書いてあったから、冒険に付いて来てくれとか言われんのかなって少しウキウキしながら準備しちまったぞ。
どうすんだよ国を落としに行くぞとか言われたらさ?
そんなテンションは生憎ご用意してませんっての。
依頼書には装備を整えて指定の場所に来いとあったが・・・、てかそれしかなかったが。
・・・・・・ん?
待てよ、ひょっとして・・・、目的地に着きさえすれば依頼達成になるんじゃない?
いやいやいやいや、それは逆に困る!
張り切って買った防具どうすんだよ!剣を再び飾ってその横に並べるしか使い道ねぇぞ!!
用意した野営用の食料も然るべき状況で食うから美味いんだろうが!!
家に帰って使われなかった野営道具を片付けてる自分なんて想像したくない!!!
はっ!!?
まさかこれが目的か!
張り切って準備してノコノコやってきた俺をあざ笑うつもりなのか!!!!?
だとしたら俺は修羅になるぞ・・・。
即座に依頼主を剣のサビにしたあと、ちゃんとお手入れして壁に飾ってやる。
それでエルザのところに依頼を持ってきた美人のねーちゃんをなんやかんやで連れ帰って、めでたく結婚して子供作って犬飼って夢を実現させるんだ!
おお、目的地の森が見えてきた。
森の中央にあるらしい開けた場所が指定の場所だ。
「待ってろよ!美人のねーちゃん・・・いや!我が妻よ!!
今行くぞ!!!!!!!!!!!!!!」
「久しぶりだな・・・人間?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇー」
ないわー
この展開はないわー
無理やりあげたテンションが一気にリストラされたわー
たしかに物凄い美人だけどさ・・・。
騎乗鎧に両刃大剣携えた魔物をどうやったら、なんやかんやで連れ帰って嫁にできんだよ。
あーでも、たまたま此処に居ただけかも知れないし?
なんか全身から溢れでてらっしゃる闘気はお腹空いてるだけかもしれないし?
さっきから俺に向けられてる剣先は・・・・・・だめだ、ポジティブな解釈が思い浮かばん。
「何をゴチャゴチャと言っている! ・・・美人だの・・・嫁だの・・・!///
ええい、さっさと剣を抜けぇ!!!」
はいダメー。
完全に俺狙い、俺ご指名でした。
「あー、ということはアンタが依頼主の『レイナ』か?
この依頼の目的は俺との決闘といった所か」
「そうだが・・・人間ごときが気安く私の名を呼ぶな」
「やれやれ相変わらずだな、自己紹介はしたはずなんだがね」
「さあな?負け犬が逃げ際に何かキャンキャン吠えてはいたが」
いや待て、あれは一応俺の勝ちだろうが。
反論しようとしたが、レイナの口元がニヤリと吊り上ったのを見て思い留まった。
どうやら挑発されているようだ。
戦闘の意思のないものに手は出さないとか、デュラハンの流儀でもあるのか。
こちらが抜刀するのを待っているようだな・・・よし。
ならば意地でもこの剣は抜かぬ!!!!!
そもそもデュラハンなんて勇者か聖騎士クラスじゃなきゃ相手にできねーっての。
このままのらりくらりとこの場をしのぎ切ってやる。
不本意だが依頼料は諦めよう、どうせ戦って勝たなきゃくれないだろうし。
んで負けたらもれなく死を・・・とかそんな展開だろ、フラグがはためいてるわ。
「にしても随分と回りくどい手を使ったもんだな。
俺の居場所を分かっていたなら、わざわざギルドを通す必要があったのかい?」
話題を変えられたことに、レイナが明らかに不機嫌顔になる。
やはり挑発が目的だったか。
残念だったな、この剣は本日休業となったんだ。
「・・・ふん。鍬で畑を耕してる奴の所に決闘の申し込みになど行けるものか。
あまりに腑抜けてた姿だったのでな、お前らの施設を利用して準備期間をくれてやったんだ。
・・・・・・・・・それに事前に日時を指定するのが我が一族の掟だし・・・」
ふーん、騎士道みたいなものか知らんがデュラハンって色々掟があるんだな。
にしてもいい感じに話が反れてきた、この調子だ。
「なんだ、わざわざ家に来てたのか。
ならそこで見たとおり俺はもう教団側の傭兵はやっていない。
これからの戦争に参加するつもりはないもんでね・・・。
依頼を受けといてなんだが、あんたと戦う必要はこちらにはないな。
そもそも魔王軍の先鋭ともあろう方が、こんな所で俺なんか相手に油売ってていいのかい?」
うし言い切った、正論の筈だ。
様子を伺うとレイナは剣を下ろして俯いていた。
・・・論破できたか?
「・・・・・・言ったのに」
「えっ?」
「怪我が治ったら、勝負しに来いって言ったのに・・・。」
上目使いで拗ねたようにこちらを睨まれた。
「え!?
あ、いや言ったっけ?言ったような・・・。
いや、でも・・・え?????」
ちょ、ちょっと待ってくれ。
何で急にキャラ変わるんですかレイナさん。
美人にそんな仕草されたら、男としては堪らないわけでして・・・
!!
いかんいかん!流されるな!!
ここで気を引かれた所で、起こるイベントは決闘だぞ。
しかも高確率で俺の死亡イベントに発展確実だし。
なんとか耐えてこの死地を乗り切らねば!
「ロザドと戦うためにリハビリ頑張って怪我を治してきたのに・・・
何処に行ったのかわかんないからハーピー達に頼んで探して貰ったり、
変装して人間の町まで行って依頼を頼んだり・・・頑張ったのに・・・。」
うががが!!!
耐えろ、俺!!
なんなんだ!俺は今一体何と戦っているんだ!!こんな強敵は初めてだ!!!
しかも何さりげなく俺を名前で呼んでるんですか!?さっきまで人間呼ばわりだったじゃん!
だがしかし、このままでは剣を抜く前になんか違うものをぽろっと抜いちm
「でもなかなか依頼受けに来ないから・・・
受けに来るしかなくなるようにロザドの畑に夜こっそり除草剤撒いたりしたのに・・・」
なんか幼児返りしてない?この人・・・ってか魔物か。
・・・。
「はぁ!?今なんて言った!!!???」
「?
依頼受けに行かないみたいだから、ロザドの畑にたっぷりと念入りに除草剤を撒いたり掛けたり埋めたりしたんだけど。」
「 お ま え の仕業か!ごらぁあああああああああ!!!!!!!
あともうちょっとで収穫だったのに!!!!!!!
しかも除草剤埋めたってなんだ!?
何不毛の地にしてくれてんだよ!!!!」
もはや勘弁ならねぇ。
俺の汗水たらした成果たる大地の恵みをよくも!
こうなれば我が剣をもって捻りつぶした後、家に連れてって畑の土を入れ替えさせてやる!!!!
「抜け小娘!!
元ザック傭兵団歩兵部隊長ロザドが貴様に天誅を与えてくれる!!」
決闘らしく名乗りを上げ勇ましく剣をレイナに突きつける。
「やれやれ、誰が小娘だ?人間めが・・・
ようやくやる気になったか、こっちは最初から抜いてるだろうが。
まあいい・・・。
魔王軍騎士団副団長レイナ・セロ・インダーク、この決闘受けて立つ!!!」
あれ
キャラ戻ったんすか、レイナさん?
てか騎士団副団長?それって凄いんじゃ・・・、俺は部下が4人いたぐらいなんですけど・・・。
ひょっとして、さっきまでのやりとりって・・・計算?
「いざ!尋常に!!勝負!!!!」
何時だか聞いたときと変わらぬ凛々しい声と共に、振りかざされた刃が俺に迫ってくる。
ああ、死んだなこりゃ。
11/03/14 01:02更新 / しそ
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