ちょっとしたイタズラ
可愛いものをいじめたくなるというのは自然の原理なのだろうか、あるいは人間のサガなのか。
タンスに隠れながら、わずかに開いた隙間からベッドを見ると、小さな少女が眠りから覚め、ゆっくりと身体を起こす。
ナイトキャップの端から丸い耳がひょっこり出ている人間ではない少女。
ドーマウスという魔物である彼女の名はチュル。僕の大好きな人だ。
「・・・・ジャン?・・・・どこぉ?」
眠そうに眼を擦りながらキョロキョロと辺りを見回し、見た目通りの可愛らしい声で僕の名を呼ぶ。
それに対して僕は動かず、タンスの中に隠れ続ける。
「・・・ジャン・・・ジャ〜ン・・・」
部屋にはちょっぴり悲しそうに僕を呼ぶ声が響く。
「・・・・トイレ・・・かな?」
不安そうにベッドから降りると、傍にあったぬいぐるみを抱きながら、ゆっくりと部屋を出ようとする・・・けれど、扉に手をかけたところで止まってしまう。
そう、彼女は暗いところが怖いのだ。今いるこの部屋も少し明るめの豆電球をつけている。
やがてチュルは意を決して扉を少しずつ開けていく。タンスからは彼女の後ろ姿しか見えないが、小刻みに震えている尻尾を見るだけで、チュルの心情は明らかだった。仮にここがお化け屋敷だとしたら彼女は泣きながら走っていきそうだ。
「・・・暗いよぉ・・・・・・・ジャン?・・・どこぉー?・・・」
ビクビク震えながら廊下に向かって僕の名を呼ぶけれど、残念ながらそっちには僕はいない。
正直なところ、今すぐ駆け寄って抱き締めてあげたいという気持ちはあるのだが、それ以上に僕を探す彼女を見ていたいという気持ちが勝っている。
チュルは怖がりながらも、暗い廊下の中に足を踏み入れる。
「きゃあああああーー!!」
ガシャンという音が響き、ワンテンポ後に彼女悲鳴が聞こえ、慌ててタンスから飛び出し、廊下に出て、電気をつける。
「チュル、大丈夫!?」
廊下の真ん中で泣いている彼女の傍には割れた花瓶が散乱していた。
「ジャ、ジャン!!」
僕を見つけるなり、チュルは僕の腹部に飛び込んでくる。
勢いのあまり、鳩尾にいいボディブロを食らった感じで吹きそうになるのを何とか堪え、彼女の体をギュっと抱きしめる。
「うぐっ・・ひっぐ・・うぇ・・ぐすっ・・・」
「おーおー、よしよし、恐かったねー。もう大丈夫だよ。」
「ホントに?」
泣き顔のまま+上目使いの彼女が僕の心に突き刺さる。
反則的な可愛さと、強い罪悪感が同時に僕の心を襲い、もう隠れたりするのはやめよう、そう思った。
「うん、ホントだよ」
償いの気持ちを込めつつ、優しく頭を撫でる。
「ぐすっ・・・もうどっかいっちゃダメ・・・」
そのまま数十分そのままだった
その後割れた花瓶を片付け、一緒に布団に潜る。なお、片づけている際、終始チュルは僕に抱きついたままだった。
しかし、なかなか寝付けずさっきはどこにいたのか聞かれ、タンスに隠れていたことを自白すると、ポカポカと胸のあたりを殴られた。
「怒ってる?」「怒ってない」
そう答える彼女はわざとらしく頬を膨らませており、明らかに機嫌が悪い状態だった。そんな彼女に「何でもするから許して」と言うと
「なんでも?」「なんでもだよ」
首を傾げながら話す彼女にそう返すと「えっと・・・・どうしよう・・・・・えっーと・・・えっとね・・・・」
必死そうに考えるも、次第に瞼は閉じていき、そのうち「スースー」と可愛らしい寝息をたて始める。
「ごめんね」寝ている彼女にそう言いながら頭を撫でていくうちに僕の意識も微睡みの中へ落ちて行った。
追記
次の日、僕は彼女に絞り取られました。交わったのではなく、絞り取られた。
それについて彼女に聞いたところ「眠ってたからわからない♪」だそうです。
タンスに隠れながら、わずかに開いた隙間からベッドを見ると、小さな少女が眠りから覚め、ゆっくりと身体を起こす。
ナイトキャップの端から丸い耳がひょっこり出ている人間ではない少女。
ドーマウスという魔物である彼女の名はチュル。僕の大好きな人だ。
「・・・・ジャン?・・・・どこぉ?」
眠そうに眼を擦りながらキョロキョロと辺りを見回し、見た目通りの可愛らしい声で僕の名を呼ぶ。
それに対して僕は動かず、タンスの中に隠れ続ける。
「・・・ジャン・・・ジャ〜ン・・・」
部屋にはちょっぴり悲しそうに僕を呼ぶ声が響く。
「・・・・トイレ・・・かな?」
不安そうにベッドから降りると、傍にあったぬいぐるみを抱きながら、ゆっくりと部屋を出ようとする・・・けれど、扉に手をかけたところで止まってしまう。
そう、彼女は暗いところが怖いのだ。今いるこの部屋も少し明るめの豆電球をつけている。
やがてチュルは意を決して扉を少しずつ開けていく。タンスからは彼女の後ろ姿しか見えないが、小刻みに震えている尻尾を見るだけで、チュルの心情は明らかだった。仮にここがお化け屋敷だとしたら彼女は泣きながら走っていきそうだ。
「・・・暗いよぉ・・・・・・・ジャン?・・・どこぉー?・・・」
ビクビク震えながら廊下に向かって僕の名を呼ぶけれど、残念ながらそっちには僕はいない。
正直なところ、今すぐ駆け寄って抱き締めてあげたいという気持ちはあるのだが、それ以上に僕を探す彼女を見ていたいという気持ちが勝っている。
チュルは怖がりながらも、暗い廊下の中に足を踏み入れる。
「きゃあああああーー!!」
ガシャンという音が響き、ワンテンポ後に彼女悲鳴が聞こえ、慌ててタンスから飛び出し、廊下に出て、電気をつける。
「チュル、大丈夫!?」
廊下の真ん中で泣いている彼女の傍には割れた花瓶が散乱していた。
「ジャ、ジャン!!」
僕を見つけるなり、チュルは僕の腹部に飛び込んでくる。
勢いのあまり、鳩尾にいいボディブロを食らった感じで吹きそうになるのを何とか堪え、彼女の体をギュっと抱きしめる。
「うぐっ・・ひっぐ・・うぇ・・ぐすっ・・・」
「おーおー、よしよし、恐かったねー。もう大丈夫だよ。」
「ホントに?」
泣き顔のまま+上目使いの彼女が僕の心に突き刺さる。
反則的な可愛さと、強い罪悪感が同時に僕の心を襲い、もう隠れたりするのはやめよう、そう思った。
「うん、ホントだよ」
償いの気持ちを込めつつ、優しく頭を撫でる。
「ぐすっ・・・もうどっかいっちゃダメ・・・」
そのまま数十分そのままだった
その後割れた花瓶を片付け、一緒に布団に潜る。なお、片づけている際、終始チュルは僕に抱きついたままだった。
しかし、なかなか寝付けずさっきはどこにいたのか聞かれ、タンスに隠れていたことを自白すると、ポカポカと胸のあたりを殴られた。
「怒ってる?」「怒ってない」
そう答える彼女はわざとらしく頬を膨らませており、明らかに機嫌が悪い状態だった。そんな彼女に「何でもするから許して」と言うと
「なんでも?」「なんでもだよ」
首を傾げながら話す彼女にそう返すと「えっと・・・・どうしよう・・・・・えっーと・・・えっとね・・・・」
必死そうに考えるも、次第に瞼は閉じていき、そのうち「スースー」と可愛らしい寝息をたて始める。
「ごめんね」寝ている彼女にそう言いながら頭を撫でていくうちに僕の意識も微睡みの中へ落ちて行った。
追記
次の日、僕は彼女に絞り取られました。交わったのではなく、絞り取られた。
それについて彼女に聞いたところ「眠ってたからわからない♪」だそうです。
13/12/18 10:44更新 / shhs