不器用な僕と彼女
人は時間とともに変わっていく
これはあたりまえなことで、誰もが知っていること
だから、これを受け入れられないのは我が儘なのかな？
子供なら「仕方ない」と言われるかもしれない。
けれど、私はもう子供の言い訳ができるような歳じゃない。
鏡に映った自分の体を見る。
白い肌の上に描かれたような紫色の禍々しい模様は私の秘所から始まり腹、胸、肩を辿って腕の先の方まで延びており、黒色の髪は紫一色に染まり、その頭からは二本の角が出ている
始まりは一週間前
私には好きな人が、恋人がいた。でもそんな彼と付き合ってから半年、私たちは未だに一線を越えられずにいた
彼は私に気を使っているらしいけれど、私は彼ともっと深いところで繋がりたかった。
そんな私の願いが届いたのか、私は一人の女性に出会った。
まるで、本に描かれた女性を具現化したような美人
何故かそのヒトは私の悩みを知っていて、私に魔法をかけてくれるといった。
『彼と深いところで結ばれる』という甘い誘惑に私は小さく頷いてしまった
そして私は'魔物'になってしまった
始めは悪い夢だと思っていた。でもまだ悪夢はまだ覚めない。
本当はわかってる、これが現実なんだって。・・・でも、どうしても受け入れることができない
だって・・・これを受け入れたら・・・・この体で、こんな体で彼に会ったら・・・
私はそこで考えるのをやめる。だって・・それより先は・・・・
『・・・ピンポーン』
不意にインタ―ホンが鳴り、小さな液晶画面に顔を向けるとモニターには見慣れた顔が映っていた
「紗枝さん？僕です、睦月です」
東郷睦月・・・私の・・・私の大切な人・・
「こんにちは睦月くん」
「えっとその・・・今日もダメ・・・ですか？」
不安そうな声で彼は私に問いかける。事の発端である一週間前から私と彼は顔を合わせていない。とはいっても電話やメールでのやり取りはしている。けれど、遠距離でもないのに一週間も顔を合わせえていない今、彼が不安がるのは当然だ。
「うん・・・・ごめんね・・・・」
「そう・・・・ですか・・・」
こんなやり取りをして今日でもう一週間が経つ。いつまでもこのままじゃいけない。それはわかっている。けれど・・・・
いつものように電話を切ろうとすると
「紗枝さん・・・その・・好きな人・・・とか・・・できたんですか？」
たった、一言だけ。けれどその一言で、何か、私の中の何かが壊れた気がした。彼は何を言っているの？私に好きな人ができた？
彼の一言からほんの数秒間沈黙が流れた後、
「・・・・ふざけないで」
私は君のために、私は・・・君に・・・私・・・私は・・・
言い終えると、それから玄関へ向かい、鍵を開け
「・・・・入りたければ入って・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
近所に住み、ほぼ毎日会っていた紗枝さんに会えない日々が続き、今日でついに一週間が経った。家に籠りっぱなしで、電話の対応にも冷たい彼女に対して色々な被害妄想が広がっていた。自分が嫌われたとか、彼女に好きな人ができたとか。
この一週間で自分がどれだけ彼女に依存してるか、そして自分がどれほど弱い人間なのかをつくづく思い知った。
「・・・・入りたければ入って・・・」
ﾌﾟﾂｯっと電話が切られる。
躊躇いながらも扉をゆっくりと開くと、玄関内は電気がついておらず、真っ暗だった。
靴を脱いで廊下を進む、この家には何回も来たことがあるから、真っ暗でも転ぶようなことはなかった。そして、リビングの扉を開けると、思わずその場に立ち尽くしてしまう。
声が、出ない・・・体も、動かない。
目の前で起こっていることが理解できない
胴部から長く伸びた尾下半身にかけて歩肢がびっちりと並んでいる。上半身には禍々しい模様と、頭から伸びた長い触角。腹部には大きめの絆創膏が数か所貼られている。
今、目の前にいるは誰だ？・・・いや、『何だ？』。
「・・・・・どうしたの？」
電話越しでなく、一週間ぶりに直接耳にする彼女の声。
その声が、どうしようもなく目の前の女性が彼女であることを語っていた。
「 ・・・・紗・・・・・枝・・・さん・・・・？」
分かってる。目の前にいるのが彼女だってことは。けれど、こう聞かずにはいられなかった。
「そうだよ、これが今の私、天音紗枝だよ」
何時も通りの笑顔で答える彼女。もう何年も前から見てきた大好きな彼女の笑顔。
なのに何故だろう。どうして僕は震えてるんだ？
「どうして・・・」
喉の奥から絞り出した声は、自分でも自分の声か分からないくらい掠れている。
「・・・睦月君が悪いんだよ・・」
「・・・僕の・・・・所為？」
「君が何時までも私を見てくれないから・・・悪い魔法使いに意地悪されちゃったんだよ」
「・・・・」
悪い魔法使い？・・・何のおとぎ話だよ・・・。思わずそう言いたくなるが、目の前にいる彼女に起こっている出来事はまぎれもなく『現実』のことだ。
ただ、僕の頭の中では『自分の所為』という言葉と、その所為で彼女を傷つけたという事実に埋め尽くされていた。
僕が、僕に勇気がないから・・・僕が弱いから・・・また迷惑をかけてしまった。
「ごめん・・な・・・さい・・・」
そうだ、僕はいつも、紗枝さんに迷惑をかけてばかりで、彼女に甘えてばかりで・・・
頭を下げ、謝る僕にそっと近づき頬にそっと彼女の手が触れ、体温が伝わってくる
「うぅん、謝らなくていいんだよ。私も、少し意地悪だったね、ゴメン」
頬に触れた手で、そっと頭を撫でてくる。暖かい
「ねぇ睦月君、お願いがあるんだけど」
「・・・お願い？」
言いながら腹部に付いている絆創膏に手をやり、ゆっくりと剥がしていくと、隠れていた細い線から紫色の液がこぼれそうだ
「お腹がね、すごく痛いの、だからお願い・・・舐めて・・・」
『傷を舐める』
子供の頃、僕が転んで足を擦りむいた時、泣き止まない僕に対して彼女がしてくれていた行為。医学的には、多分よくないことなのだろうが、僕にはそれが嬉しかったことをよく覚えている。けれど、あれから何年も経った今、それをしてと言われても抵抗がある。
「・・・そ、それなら病院に「いいから！・・・舐めて・・・お願い」」
戸惑いながらも覚悟を決め、傷口に顔を近づけると、躊躇しながらそっと舌に触れる
「・・っん・・・・ひゃう！」
甘い声をあげながら、彼女の体がビクンと震える
「だいじょ『やめないで！』」
頭を上げようとすると、両腕でそっと頭を抱きしめ、いつもの優しい声で懇願してくる
「大丈夫だから・・・続けて・・・・」
「・・でも・・・」
「お願い・・・来て・・・」
後ろめたさを感じながらも、再び、彼女の傷口に舌を這わせる。
「あぁぁ、あぁぁああ……あ、ああ……♥」
舌を伝って、ドロリとした紫色の体液が口中に広がる。溢れんばかりの液の量に溺れそうになりながらも一心不乱に舐め続ける。
そして徐々に自分の体にも変化が生じていることに気付く。舌を動かす度に、徐々に体が痺れてきている。そして、同時に思考も固まっていく。
一方紗枝さんは、ほかの絆創膏を剥がし、動けない僕の頭を両手で掴み、傷の部分まで誘導すると再び頭を抱きしめるように腕を組み、腹部へ押しやる。
「こっちもぉ・・・・舐めてぇ・・・ん、あぁん♥」
思考が虚ろな頭の中には蕩けた彼女の声だけがただただ響く
[ダメ・・・だ、・・・こんなの変だよ・・・］
「んん、ぁ、ぁぁぅうっ、ぅああっ！！」
頭ではそう感じているはずなのに、言葉にすることができない
「今度はぁ・・・こっち・・・♥」
また頭を動かされる、今度は傷ではなく彼女の左右腕へ伸びた模様を辿っていくとたどり着く終着点。最も色の濃い部分。
僕が傷を舐めた時からビクビクと脈動し、まるで決壊寸前のダムのように今にも溢れそうな彼女の秘所。
「これは・・・こんなのはダメ・・・だよ・・・。」
わずかに残った気力を振り絞り、弱弱しく首を振り、彼女に呼びかける
「なんで？どうしていけないのぉ？睦月君は私のモノなんだよねぇ♥」
蕩けた表情で、答える彼女は『淫猥』を体現したような姿に見える。
まるで壊れた蛇口から水を撒き散らす様に、ぶしゅっと紫色の潮が何度も飛び散る
絶頂の反動によって、ぎゅっと頭を抱きしめられる腕に力が入り、彼女の秘所に押し付けられる。
「ゲホッ、ごっほ、ごほっごほっ」
「苦しかった？ごめんね？」
耳元で優しく彼女の声。ふらふらな体をなんとか立ち上がらせると。
「こんなの・・・変だよ・・・・おかしいよ・・・」
くらくらする頭を左手で押さえながら、なんとか言葉を口にする。僕の言葉に俯いた彼女だが、
「・・・わかった。でも、最後に一つ、一つだけお願い・・・こっちに来て」
倒れそうになりながらも、なんとか彼女の目の前まで近づくと
「ッ痛！・・・何・・をっ・・・」
痛みに反射的に身体を離し、わずかに痛みが走る首筋を左手で押さえる。が、次の瞬間、僕の身体に異変が起こる。痛覚が消え、やがて今まで感じたことのない快感が頭を駆け抜け、全身の力が抜けていくようだ。力身体に力が入らず、膝から崩れ落ちる。やがて前のめりに倒れる身体を、彼女の身体が優しく受け止め、柔らかく包み込んでいく。
「・・・捕まえた、もう離さないよ・・・」
抵抗のできない僕に対し、彼女は僕の服を順々に脱がしていき、やがて全裸になった僕の体に長く伸びた尾がゆっくりと巻きついていき、歩肢は僕の身体を抱きしめる。
「あぁ、もう我慢できない・・・欲しくて・・・私・・・もう壊れそう・・・」
見たことのない顔。正気を失ったような目と紅色に染まった頬、二本の触角は物欲しそうに小さく揺れている。やがて僕のモノと彼女の秘所が触れ、焦らすかのように互いを擦り合わせる。
「・・・yあ・・・やめ・・・」
「だぁめぇえ。大丈夫だからぁ、一緒に壊れよぉ♥」
やがて動きを止めると、狙いを定めるように触れ合わせ、一瞬の静止した後、ゆっくりと腰を下ろしていき、充分すぎるほど愛液で濡れそぼった秘唇は、棒のように膨れ上がった僕のモノをなんら苦もなくぬるりと咥えこんだ
「んっ、きたぁ♥ 入ってきたぁぁ♥」
「っくぁぁぁぁ。」
甘い喘ぎ声が頭に響くと同時に感じたことのない快感が波のように押し寄せてくる。
愛液に浸された内壁を進んでいたび、頭がビリビリと痺れ思わず変な声が出てしまう。
「ふふっ、睦月君可愛い♥ そんな声初めて聴いたよ♥」
声に反応するよりも早く、唇が重なってくる。
「む――――ぅっ、んっ……！」
「んん……んむ、ふ……っ……♪」
熱心に吸い立てられる柔肉。濡れたマシュマロのような二つの唇が押し合い、ねっとりと交わる。巧みに唇で唇を愛撫しながら、紗枝さんはすぐさま舌を侵入させてきた。口内を彼女の舌が弄び、奥に待つ僕の舌を捕えて蛇のように絡み取る・・・が、
「ンァァァッァァ♥♥」
「う、うっ……はっ、くぁぁっ……！」
彼女が高い悲鳴をあげた瞬間、分身を包み込んでいた膣壁が一気に収縮し、快感が走る。さっき僕が彼女の傷を舐めた時と似た反応。けれどそんなことを考えている間もなく、頭の中は快感一色に埋め尽くされていく。
ずるずると粘膜を撫でる度に紗枝さんが甘く蕩けた悲鳴を上げる。
「んんッ……うぁ、はぁっ……ふ――深く、はいってるっ♥ おなかに、届いてしまいそう♥……あッ、はぅんっ・・・！」
「もっともっとぉ！」そういわんばかりにストロークは加速していき、彼女の喘ぎはトーンを下げることなく、甘ったるく潤み続ける。
「あはぁ、また大きくなったぁ♥ ふふ、出そうなんだね？いいよぉ♥このままぁ中に、いっぱい、いっぱい出してぇ♥♥」
再び唇を合わせ、舌を絡めると貪欲に吸い、彼女の首元の歩肢が僕の首筋に刺さり、快感はどんどん増していき
やがてハジけた
「うっく、あ、あ、うわああぁぁぁぁ！！」
「あっぅ、くぅ、んぁぁっ――ああああはぁぁぁぁあああっぁあっ♥♥」
びくびくと痙攣しながら、自分のモノとは思えない量を彼女の中に注ぎ込む
波のように膣の奥を叩く精の感触に、彼女は大きく背を反らせて僕を追いかけるように絶頂した。
僕を抱きしめていた尾や腕に力が入り、僕も腕に精一杯の力で抱き返す。
まるで本当に紗枝さんと一つになったような、彼女に取り込まれたような感覚。体温も、鼓動も全部が一緒。そんな感覚のまま意識はゆっくりと沈んでいった。
〜〜〜〜〜〜
目が覚めて、最初に入ってきたのは大好きな彼の笑顔。
「おはよう」
まるで数か月ぶりにも思える彼の挨拶。やがて、頭が段々クリアになっていき、なぜ今自分が彼を拘束しているか、昨日自分が何をしたかを思いだす。
「どうして・・・・」
「えっ？」
沈黙を破り、彼に問いかけずにはいられなかった。
「恐くないの？」
「・・・・・・」
私の問いかけに対し、彼は何も言わずに笑顔で返す
「怖いでしょ？醜いでしょ？？気持ち悪いでしょ？・・・・こんな女は嫌でしょ？」
「ねぇ、何か言ってよ・・・」
震えた手で彼の頬に触れる。しかし彼は黙ったまま動こうとしない。
「・・・ねぇってば・・・」
・・・何か言ってよ・・・違う、聞きたくない・・怖い・・・怖いよ・・・彼の顔が見えない
恐怖のあまり思わず目を瞑ってしまうが、やがて沈黙を続けていた彼の口がそっと開かれた
「ごめん・・・紗枝さん・・・」
言いながら、頬に触れた私の手をそっと握る。
「紗枝さんが寝てる間、考えていたんだ。この一週間、紗枝さんはどんな気持ちだったのか。僕なんかより、紗枝さんの方がずっと怖くて、苦しんでたんだね・・・辛かったよね・・・ホントにごめんなさい・・・」
・・・違う、そうじゃない
悪いのは彼じゃない。ずっと怖がったまま彼の呼びかけにも応じなかった私だ。私はただ怖くて、彼に嫌われるのが怖くて。子供みたいに何時までも現実を受け入れずに目を閉じ、耳をふさいだ。
「わ、私の方こそごめんなさい。こんな・・・姿になって、睦月君に、嫌われるのが・・・怖くなって・・・・それで、わ、私・・私」
呂律が上手く回らず、涙がこみ上げてくる。子供のように泣き崩れそうな私を彼は優しく受け止め、強く抱きしめてくる。
「どんなに姿になっても、僕は紗枝さんが・・・その、大好きなんだ。だからさ、紗枝さんの傍にいるよ。ずっと、ね」
「私も、大好きだから、ずっとずっと一緒にいる！」
そうして、私達は再び唇を重ねた
これはあたりまえなことで、誰もが知っていること
だから、これを受け入れられないのは我が儘なのかな？
子供なら「仕方ない」と言われるかもしれない。
けれど、私はもう子供の言い訳ができるような歳じゃない。
鏡に映った自分の体を見る。
白い肌の上に描かれたような紫色の禍々しい模様は私の秘所から始まり腹、胸、肩を辿って腕の先の方まで延びており、黒色の髪は紫一色に染まり、その頭からは二本の角が出ている
始まりは一週間前
私には好きな人が、恋人がいた。でもそんな彼と付き合ってから半年、私たちは未だに一線を越えられずにいた
彼は私に気を使っているらしいけれど、私は彼ともっと深いところで繋がりたかった。
そんな私の願いが届いたのか、私は一人の女性に出会った。
まるで、本に描かれた女性を具現化したような美人
何故かそのヒトは私の悩みを知っていて、私に魔法をかけてくれるといった。
『彼と深いところで結ばれる』という甘い誘惑に私は小さく頷いてしまった
そして私は'魔物'になってしまった
始めは悪い夢だと思っていた。でもまだ悪夢はまだ覚めない。
本当はわかってる、これが現実なんだって。・・・でも、どうしても受け入れることができない
だって・・・これを受け入れたら・・・・この体で、こんな体で彼に会ったら・・・
私はそこで考えるのをやめる。だって・・それより先は・・・・
『・・・ピンポーン』
不意にインタ―ホンが鳴り、小さな液晶画面に顔を向けるとモニターには見慣れた顔が映っていた
「紗枝さん？僕です、睦月です」
東郷睦月・・・私の・・・私の大切な人・・
「こんにちは睦月くん」
「えっとその・・・今日もダメ・・・ですか？」
不安そうな声で彼は私に問いかける。事の発端である一週間前から私と彼は顔を合わせていない。とはいっても電話やメールでのやり取りはしている。けれど、遠距離でもないのに一週間も顔を合わせえていない今、彼が不安がるのは当然だ。
「うん・・・・ごめんね・・・・」
「そう・・・・ですか・・・」
こんなやり取りをして今日でもう一週間が経つ。いつまでもこのままじゃいけない。それはわかっている。けれど・・・・
いつものように電話を切ろうとすると
「紗枝さん・・・その・・好きな人・・・とか・・・できたんですか？」
たった、一言だけ。けれどその一言で、何か、私の中の何かが壊れた気がした。彼は何を言っているの？私に好きな人ができた？
彼の一言からほんの数秒間沈黙が流れた後、
「・・・・ふざけないで」
私は君のために、私は・・・君に・・・私・・・私は・・・
言い終えると、それから玄関へ向かい、鍵を開け
「・・・・入りたければ入って・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
近所に住み、ほぼ毎日会っていた紗枝さんに会えない日々が続き、今日でついに一週間が経った。家に籠りっぱなしで、電話の対応にも冷たい彼女に対して色々な被害妄想が広がっていた。自分が嫌われたとか、彼女に好きな人ができたとか。
この一週間で自分がどれだけ彼女に依存してるか、そして自分がどれほど弱い人間なのかをつくづく思い知った。
「・・・・入りたければ入って・・・」
ﾌﾟﾂｯっと電話が切られる。
躊躇いながらも扉をゆっくりと開くと、玄関内は電気がついておらず、真っ暗だった。
靴を脱いで廊下を進む、この家には何回も来たことがあるから、真っ暗でも転ぶようなことはなかった。そして、リビングの扉を開けると、思わずその場に立ち尽くしてしまう。
声が、出ない・・・体も、動かない。
目の前で起こっていることが理解できない
胴部から長く伸びた尾下半身にかけて歩肢がびっちりと並んでいる。上半身には禍々しい模様と、頭から伸びた長い触角。腹部には大きめの絆創膏が数か所貼られている。
今、目の前にいるは誰だ？・・・いや、『何だ？』。
「・・・・・どうしたの？」
電話越しでなく、一週間ぶりに直接耳にする彼女の声。
その声が、どうしようもなく目の前の女性が彼女であることを語っていた。
「 ・・・・紗・・・・・枝・・・さん・・・・？」
分かってる。目の前にいるのが彼女だってことは。けれど、こう聞かずにはいられなかった。
「そうだよ、これが今の私、天音紗枝だよ」
何時も通りの笑顔で答える彼女。もう何年も前から見てきた大好きな彼女の笑顔。
なのに何故だろう。どうして僕は震えてるんだ？
「どうして・・・」
喉の奥から絞り出した声は、自分でも自分の声か分からないくらい掠れている。
「・・・睦月君が悪いんだよ・・」
「・・・僕の・・・・所為？」
「君が何時までも私を見てくれないから・・・悪い魔法使いに意地悪されちゃったんだよ」
「・・・・」
悪い魔法使い？・・・何のおとぎ話だよ・・・。思わずそう言いたくなるが、目の前にいる彼女に起こっている出来事はまぎれもなく『現実』のことだ。
ただ、僕の頭の中では『自分の所為』という言葉と、その所為で彼女を傷つけたという事実に埋め尽くされていた。
僕が、僕に勇気がないから・・・僕が弱いから・・・また迷惑をかけてしまった。
「ごめん・・な・・・さい・・・」
そうだ、僕はいつも、紗枝さんに迷惑をかけてばかりで、彼女に甘えてばかりで・・・
頭を下げ、謝る僕にそっと近づき頬にそっと彼女の手が触れ、体温が伝わってくる
「うぅん、謝らなくていいんだよ。私も、少し意地悪だったね、ゴメン」
頬に触れた手で、そっと頭を撫でてくる。暖かい
「ねぇ睦月君、お願いがあるんだけど」
「・・・お願い？」
言いながら腹部に付いている絆創膏に手をやり、ゆっくりと剥がしていくと、隠れていた細い線から紫色の液がこぼれそうだ
「お腹がね、すごく痛いの、だからお願い・・・舐めて・・・」
『傷を舐める』
子供の頃、僕が転んで足を擦りむいた時、泣き止まない僕に対して彼女がしてくれていた行為。医学的には、多分よくないことなのだろうが、僕にはそれが嬉しかったことをよく覚えている。けれど、あれから何年も経った今、それをしてと言われても抵抗がある。
「・・・そ、それなら病院に「いいから！・・・舐めて・・・お願い」」
戸惑いながらも覚悟を決め、傷口に顔を近づけると、躊躇しながらそっと舌に触れる
「・・っん・・・・ひゃう！」
甘い声をあげながら、彼女の体がビクンと震える
「だいじょ『やめないで！』」
頭を上げようとすると、両腕でそっと頭を抱きしめ、いつもの優しい声で懇願してくる
「大丈夫だから・・・続けて・・・・」
「・・でも・・・」
「お願い・・・来て・・・」
後ろめたさを感じながらも、再び、彼女の傷口に舌を這わせる。
「あぁぁ、あぁぁああ……あ、ああ……♥」
舌を伝って、ドロリとした紫色の体液が口中に広がる。溢れんばかりの液の量に溺れそうになりながらも一心不乱に舐め続ける。
そして徐々に自分の体にも変化が生じていることに気付く。舌を動かす度に、徐々に体が痺れてきている。そして、同時に思考も固まっていく。
一方紗枝さんは、ほかの絆創膏を剥がし、動けない僕の頭を両手で掴み、傷の部分まで誘導すると再び頭を抱きしめるように腕を組み、腹部へ押しやる。
「こっちもぉ・・・・舐めてぇ・・・ん、あぁん♥」
思考が虚ろな頭の中には蕩けた彼女の声だけがただただ響く
[ダメ・・・だ、・・・こんなの変だよ・・・］
「んん、ぁ、ぁぁぅうっ、ぅああっ！！」
頭ではそう感じているはずなのに、言葉にすることができない
「今度はぁ・・・こっち・・・♥」
また頭を動かされる、今度は傷ではなく彼女の左右腕へ伸びた模様を辿っていくとたどり着く終着点。最も色の濃い部分。
僕が傷を舐めた時からビクビクと脈動し、まるで決壊寸前のダムのように今にも溢れそうな彼女の秘所。
「これは・・・こんなのはダメ・・・だよ・・・。」
わずかに残った気力を振り絞り、弱弱しく首を振り、彼女に呼びかける
「なんで？どうしていけないのぉ？睦月君は私のモノなんだよねぇ♥」
蕩けた表情で、答える彼女は『淫猥』を体現したような姿に見える。
まるで壊れた蛇口から水を撒き散らす様に、ぶしゅっと紫色の潮が何度も飛び散る
絶頂の反動によって、ぎゅっと頭を抱きしめられる腕に力が入り、彼女の秘所に押し付けられる。
「ゲホッ、ごっほ、ごほっごほっ」
「苦しかった？ごめんね？」
耳元で優しく彼女の声。ふらふらな体をなんとか立ち上がらせると。
「こんなの・・・変だよ・・・・おかしいよ・・・」
くらくらする頭を左手で押さえながら、なんとか言葉を口にする。僕の言葉に俯いた彼女だが、
「・・・わかった。でも、最後に一つ、一つだけお願い・・・こっちに来て」
倒れそうになりながらも、なんとか彼女の目の前まで近づくと
「ッ痛！・・・何・・をっ・・・」
痛みに反射的に身体を離し、わずかに痛みが走る首筋を左手で押さえる。が、次の瞬間、僕の身体に異変が起こる。痛覚が消え、やがて今まで感じたことのない快感が頭を駆け抜け、全身の力が抜けていくようだ。力身体に力が入らず、膝から崩れ落ちる。やがて前のめりに倒れる身体を、彼女の身体が優しく受け止め、柔らかく包み込んでいく。
「・・・捕まえた、もう離さないよ・・・」
抵抗のできない僕に対し、彼女は僕の服を順々に脱がしていき、やがて全裸になった僕の体に長く伸びた尾がゆっくりと巻きついていき、歩肢は僕の身体を抱きしめる。
「あぁ、もう我慢できない・・・欲しくて・・・私・・・もう壊れそう・・・」
見たことのない顔。正気を失ったような目と紅色に染まった頬、二本の触角は物欲しそうに小さく揺れている。やがて僕のモノと彼女の秘所が触れ、焦らすかのように互いを擦り合わせる。
「・・・yあ・・・やめ・・・」
「だぁめぇえ。大丈夫だからぁ、一緒に壊れよぉ♥」
やがて動きを止めると、狙いを定めるように触れ合わせ、一瞬の静止した後、ゆっくりと腰を下ろしていき、充分すぎるほど愛液で濡れそぼった秘唇は、棒のように膨れ上がった僕のモノをなんら苦もなくぬるりと咥えこんだ
「んっ、きたぁ♥ 入ってきたぁぁ♥」
「っくぁぁぁぁ。」
甘い喘ぎ声が頭に響くと同時に感じたことのない快感が波のように押し寄せてくる。
愛液に浸された内壁を進んでいたび、頭がビリビリと痺れ思わず変な声が出てしまう。
「ふふっ、睦月君可愛い♥ そんな声初めて聴いたよ♥」
声に反応するよりも早く、唇が重なってくる。
「む――――ぅっ、んっ……！」
「んん……んむ、ふ……っ……♪」
熱心に吸い立てられる柔肉。濡れたマシュマロのような二つの唇が押し合い、ねっとりと交わる。巧みに唇で唇を愛撫しながら、紗枝さんはすぐさま舌を侵入させてきた。口内を彼女の舌が弄び、奥に待つ僕の舌を捕えて蛇のように絡み取る・・・が、
「ンァァァッァァ♥♥」
「う、うっ……はっ、くぁぁっ……！」
彼女が高い悲鳴をあげた瞬間、分身を包み込んでいた膣壁が一気に収縮し、快感が走る。さっき僕が彼女の傷を舐めた時と似た反応。けれどそんなことを考えている間もなく、頭の中は快感一色に埋め尽くされていく。
ずるずると粘膜を撫でる度に紗枝さんが甘く蕩けた悲鳴を上げる。
「んんッ……うぁ、はぁっ……ふ――深く、はいってるっ♥ おなかに、届いてしまいそう♥……あッ、はぅんっ・・・！」
「もっともっとぉ！」そういわんばかりにストロークは加速していき、彼女の喘ぎはトーンを下げることなく、甘ったるく潤み続ける。
「あはぁ、また大きくなったぁ♥ ふふ、出そうなんだね？いいよぉ♥このままぁ中に、いっぱい、いっぱい出してぇ♥♥」
再び唇を合わせ、舌を絡めると貪欲に吸い、彼女の首元の歩肢が僕の首筋に刺さり、快感はどんどん増していき
やがてハジけた
「うっく、あ、あ、うわああぁぁぁぁ！！」
「あっぅ、くぅ、んぁぁっ――ああああはぁぁぁぁあああっぁあっ♥♥」
びくびくと痙攣しながら、自分のモノとは思えない量を彼女の中に注ぎ込む
波のように膣の奥を叩く精の感触に、彼女は大きく背を反らせて僕を追いかけるように絶頂した。
僕を抱きしめていた尾や腕に力が入り、僕も腕に精一杯の力で抱き返す。
まるで本当に紗枝さんと一つになったような、彼女に取り込まれたような感覚。体温も、鼓動も全部が一緒。そんな感覚のまま意識はゆっくりと沈んでいった。
〜〜〜〜〜〜
目が覚めて、最初に入ってきたのは大好きな彼の笑顔。
「おはよう」
まるで数か月ぶりにも思える彼の挨拶。やがて、頭が段々クリアになっていき、なぜ今自分が彼を拘束しているか、昨日自分が何をしたかを思いだす。
「どうして・・・・」
「えっ？」
沈黙を破り、彼に問いかけずにはいられなかった。
「恐くないの？」
「・・・・・・」
私の問いかけに対し、彼は何も言わずに笑顔で返す
「怖いでしょ？醜いでしょ？？気持ち悪いでしょ？・・・・こんな女は嫌でしょ？」
「ねぇ、何か言ってよ・・・」
震えた手で彼の頬に触れる。しかし彼は黙ったまま動こうとしない。
「・・・ねぇってば・・・」
・・・何か言ってよ・・・違う、聞きたくない・・怖い・・・怖いよ・・・彼の顔が見えない
恐怖のあまり思わず目を瞑ってしまうが、やがて沈黙を続けていた彼の口がそっと開かれた
「ごめん・・・紗枝さん・・・」
言いながら、頬に触れた私の手をそっと握る。
「紗枝さんが寝てる間、考えていたんだ。この一週間、紗枝さんはどんな気持ちだったのか。僕なんかより、紗枝さんの方がずっと怖くて、苦しんでたんだね・・・辛かったよね・・・ホントにごめんなさい・・・」
・・・違う、そうじゃない
悪いのは彼じゃない。ずっと怖がったまま彼の呼びかけにも応じなかった私だ。私はただ怖くて、彼に嫌われるのが怖くて。子供みたいに何時までも現実を受け入れずに目を閉じ、耳をふさいだ。
「わ、私の方こそごめんなさい。こんな・・・姿になって、睦月君に、嫌われるのが・・・怖くなって・・・・それで、わ、私・・私」
呂律が上手く回らず、涙がこみ上げてくる。子供のように泣き崩れそうな私を彼は優しく受け止め、強く抱きしめてくる。
「どんなに姿になっても、僕は紗枝さんが・・・その、大好きなんだ。だからさ、紗枝さんの傍にいるよ。ずっと、ね」
「私も、大好きだから、ずっとずっと一緒にいる！」
そうして、私達は再び唇を重ねた
13/11/06 21:39更新 / shhs