読切小説
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快楽主義者と科学者

「これもダメ、ね。ふぅ・・・」

シェングラスの領内にある小屋、その地下室で怪しげな薬などを調合している女性がいる。水色のボサボサの髪の毛、瞳はエメラルドを思わせる鮮やかな緑色。年齢は29歳くらいだろうか。

「うーん・・・やっぱり若さを保つのは難しいようね。外見だけなら私の手法で何とかできても、中身までとなるとなぁ・・・」

こればかりは何度やってもうまく行かない・・・シェングラス王家とは関係は無いが姉からの援助と今までの研究成果を売りさばいて生活しているリシスは失敗したのを見てため息をついている。

4年前くらいまでは何でも思いついて「イメージできるなら実際にも出来る」とまで豪語していたが今ではちょっと研究に行き詰まり易くなっている。

知りすぎたゆえに何を調べるべきか迷っているのもある。ナーウィシアに行って魔物の生態も調べたし毒や術など調べられるものは全部調べた。

それで、今研究しているのは「いかにして人の姿、それも若い外見を保ったまま寿命を延ばすか」というところまで行き着いている。

魔物に変える手段などもいくらか成功させている。ナーウィシアにいた友達がローパーに換わったと見たら徹底的に分析したが、あれでは成功といえない。

「もっとこう、無いかな・・・?」

シェングラスでも受け入れられるような長寿の方法・・・それも不老不死に近いものが欲しいとリシスは考えている。

不死身ということは望んでいない。致命傷や疫病なら死ななくてはならない、それくらいの何かがあればいいのだが。

「リシス、何悩んでるんですか?」

「姉様・・・って、ここに来る時くらいは普通に人の姿してよ!見られたらどうするの!?」

同じく水色だが整ったロングヘアー。だが腰に赤い蝙蝠のような羽があり頭には白い、それも山羊のような角も生えているサキュバスという魔物・・・でも姉のフェルアが研究室に入って来る。

外見は14年くらい前にシェングラス兵として前線に赴き、ナーウィシア軍のサキュバスに襲撃された時・・・ちょうど17歳のままだ。

「いいじゃないですか。妹の前でくらい・・・嫌いじゃないでしょう?」

「そりゃあね・・・でも服装くらいはもっとマシに出来ない?仮にも第一軍の武将が、そんな服装じゃあ・・・」

灰色のローブに羽の穴を開けただけの簡素な服装・・・無論、いい男性を見つけたら人の姿のまま襲うつもりで脱ぎやすい服装にしているのだろう。

シェングラス領内で魔物とわかれば即討伐、死ぬ運命・・・しかしフェルアは自分の能力なども生かし、陰謀などもめぐらせシェングラスの主力軍司令官にまで上り詰めていた。

「いいじゃないですか。それより・・・あれは?」

「はいはい、姉さん・・・今回も出撃?」

「レジスタンス部隊がかなりの戦力を持って旧ナーウィシアの廃城に立てこもっています。陣中で人を襲うわけにも行きませんし・・・」

了解といってリシスは緑色の薬が入ったビンを手渡す。フェルアにはサキュバスの生態調査と言うことで何度も協力してもらっている代わりに、いろいろ薬を作って手渡している。

魔物に変わった当初はフェルアはかなり苦しんだが、リシスは近くで支え続け自分の得意な薬品研究で姉をサポートし続け彼女の野望を聞かされたときも「絶対出来るよ」といって火薬なども調合して協力したのだ。

彼女が手渡したのは人の精にも似た成分を調合した物であり、飲めば当分魔力や精を供給する必要は無い。効果は一週間ほど・・・もっとも人の気性は変える成分は入っていないから性欲は残り続けるが、押さえられる人物なら大丈夫だ。

「じゃあ、生きて帰ってきてよ?ばれないようにね?」

「わかってます。」

うなずくと、フェルアは人の姿に戻り部屋を出て行く・・・あの時のままといっても胸は多少大きくなっている。

その姿にリシスはかすかに嫉妬心を抱きつつ、自分を何とかしたいと思って書物を読み漁る・・・姉はずっと若いまま、だが自分は年老いていずれ研究すら出来ず若いままの姉を見続けることになる。

そうなったら一番悲しむのはフェルアだ。それに自分も若いままのほうがいい・・・そう考えると、タイムリミットは後10年くらいだろう。

「・・・人の身が嫌ね、こうしてみると。」

リシスは昔から常識や固定観念に疑問を抱き続け、自分ですべて解き明かし理由まで探り明確にレポートを書き残して行った。

姉が従軍する年齢になるとリシスも随伴し、単独行動すると魔物の生態などを念入りに調べ20歳の時に図鑑もまとめきった。

魔物が害悪、危ないという固定概念も用は種族の存亡の危機に抗おうとするか、あるいは進化し続けると諦めたか・・・シェングラスとナーウィシアの違いもその程度にしか思っていない。

「・・・何これ?」

リシスが見つけたのは邪教集団の書物だった。そういえばこの集団はいまだに調べていない・・・宗教は単に人の支えであり、その支えに権威という箔をつけた程度にしか思っておらず優先順位は圧倒的に下だったのだ。

大体何を持って邪教とするのか。それは単にシェングラスが大陸から入ってきた一神教信仰に魔物が関与してないから正教と呼んでいるだけとも知っていたのだ。

「邪教集団サバト・・・」

以前レポートにまとめた、この世界に存在する高位魔族バフォメットを調べた時に数度聞いた名前だとリシスは思い返す。

しかし宗教の集団など面白くもなんとも無く、かつて翼の民がいたとされる魔界に単身突入しバフォメットの生活様式をそのまま聞いて図鑑にまとめた記憶もある。

「そういえば、確か・・・」

あの宗教集団をまとめていたバフォメットは数名の少女を連れていた。犯罪になりえるから一応報告しようと思ったがあの時行方不明の依頼は明らかに少女の数より少なく、少女が行方不明という情報は1つも無かった。

さらに思い返すと、少女の1人と行方不明者の顔が似ていた・・・なので彼女の友人に聞きに行ったがその時「娘はいない」と答えた。

あの時は魔物のレポートをまとめることを思い返して足早に魔界へと向かったが、良く考えればあの宗教集団も術かくすりを知っているのではないだろうか?

「偵察して、奪えないかな・・・入ったら1人誘っていけにえにして、その術あるいは薬を探れば・・・」

行方不明者を若返らせて、その対価に入団させた可能性がある。リシスはふっと微笑するとその宗教団体を探すことを決意する。

「じゃあ、行こうかな。」

愛用の双剣を腰のベルトにかけ、携行用の乾燥食料もポーチに詰めて1週間は持つように準備を整えると、リシスは邪教集団のいたディエス領の別荘へと向かう。

彼女たちは以前、そこを拠点にして勢力を拡大させていた・・・フェルアはあえて討伐拒否をしていたが第2軍武将のルシンダによって追討されそれ以降はなりを潜めている。

 

 

「ふぅ。」

2日くらい術も交えて徒歩で向かい、ようやくディエス領の別荘のある場所へ到着する・・・リシスは以前使っていた別荘の前で一息つく。

すると、1人の金髪にゴスロリの少女が歩いてきてリシスに近づく・・・見かけない顔に首をかしげているらしい。

「貴方も黒ミサに行く予定ですの?今日は人もいませんわね、せいぜい主程度でしかないのに。」

「ご忠告ありがとう・・・人ならざるものだけど貴方は何?魔物とも違う、人と魔物の入り混じった記憶。」

リシスが一瞬で記憶を読み取る・・・術ではなく彼女たち姉妹共通の能力でありすぐに稼動させたりすることも出来る。

「あら、随分と・・・わたくしはライム。放浪する魂を喰らう剣客とでもいいましょうか?」

「あなた自身不思議な体質のようね、魂を喰らい、力に変えているなんて。」

「討伐者だけですわね。無差別殺人は愚者のやることでしてよ?」

わかってる、とリシスは答える。彼女の記憶には殺人を楽しむ記憶は無く、生存本能への忠実さと気ままさが垣間見えている。殺気も無い。

「で、貴方はシェングラスの人間ですわね・・・立ち去りなさいな。人ならざるものに変えられたくなければ。」

「あいにくと、真実を知りたい人はそんなことで退かない物よ。自分の身を犠牲にしようとあるべき真実にたどり着く。望まなくともね?」

やれやれとライムはため息をつくと、そのままリシスに背を向けて立ち去っていく。この年若い科学者に呆れたのだろうか。

「貴方は恐れ知らずですわね?嫌いではないけど気をつけなさいな。」

「言われなくとも。」

リシスは鍵のかかった別荘の門を見ると術を詠唱し、自らの身体を空気に同化させるとそのまま通過する。

敷地内部に警備兵は全くいない。眷族と呼べる者も・・・扉をそっと押してリシスは剣を前に向ける。

「・・・術可視「マジック・スキャニング」・・・無しね。」

白い光が床や天井などをほとばしるが人の姿は無い。罠すらない・・・高位の術者にこれほど無警戒であっていいのだろうか?

リシスはそんな疑問を抱きつつも目標の場所へと向かう。大抵地下室で黒ミサと呼ばれる集会が行われている。隠せるとしたらその場所だ。

先ほどのスキャニングで地下室の扉配置やどこから行くかもわかっている・・・リシスはキッチンへ向かい、下にある戸棚の扉を開けると身体を入らせ、地下に向かう。

「無警戒にも程があるじゃない・・・」

通路を先ほど見たスキャニングの道筋どおり通り、そのミサ会場というところに来る・・・出しっぱなしのベッド数個がおかれ、天窓から月光が差し込んでいる。

その中央に魔方陣があり、広さは相当なもの・・・無理に詰めれば100人ほどは入るであろう部屋であり、元々領主が襲撃の際に非難し、ここで指揮を執る臨時指揮所らしい。

「さーて・・・」

リシスは中央の魔方陣を丹念に調べ上げる・・・そしてスペルを理解すると、それを逆回しに読み始める。

「・・・残留思念開放完了。これであとは・・・」

ご丁寧に残留思念に対しプロテクトをかけていた。リシスはそれを読みとりここでバフォメットが何をしたか見続ける。

魔力を使ったり、人が殺傷される、性欲をもてあます云々などの衝撃の強い行為が行われた場合思念が残る・・・強い場合は何千年経っても消えない場合もある。

それを読み取れるのはなかなか多くはないが、リシスはいとも簡単に読み取りその行為を理解しようとしていく・・・

「卿(けい)は何をしている?よくもまぁこんな場所へと・・・」

「やっぱりばれた?」

転移術の低い音が聞こえ、一瞬でリシスの背後に少女が出現する・・・灰色の髪の毛に、黒と白のツートンカラーの服を着ている。

「見た感じ、主ってところ?」

「恐れも知らぬようだな・・・しかし卿はよほど自信があるらしいな?わざわざ単身でこのような場所に出るとは。」

彼女の外見はせいぜい12かそのあたり。だがその金色の瞳は恐ろしいほど鋭い眼光を放っている。

「ええ、来て見たの。悪い・・・?」

「何、卿は勘違いをしているだけのようでな・・・それも人に外れた事をやろうとしているな。」

記憶を読まれている・・・だがリシスは動揺しているそぶりも無い。3m程度の距離で記憶を読むことは高位の術者なら出来なくも無い。

「人に外れたこと?」

「人など放置して死が当然、それを無理に伸ばそうとするとはな・・・まぁ、卿には卿なりの褒章をくれてやるとしようか。」

「・・・何それ。」

リシスが見下されたことに少々腹を立て、双剣を引き抜こうとするがいきなり力が抜けてその場に座り込む。

「・・・え?」

「まぁ、卿のような物好きは大抵この罠にかかる。もっとも卿は半分望んでいるのだろう?」

「どうするつもりよ、私を・・・貴方は一体・・・?」

「私はクリューネだ。卿はリシス・シュライツ・フィレンディス・・・あの名将フェルアの妹であろう?」

まぁこんなことはわかりきっている・・・リシスはクリューネをにらみつけたままだが、身体に力が入らない。

気力を吸い取るような仕掛けを魔方陣に施していたのだろう・・・それも人だけに効くような進入者妨害用の罠。単純ゆえにスキャニングから隠す術を重ねがけしても発見が難しいのだ。

「それが?クリューネ・・・私をどうするつもり?」

「やることをやるだけでな・・・?」

クリューネは偽装を解き、両手両足が灰色の獣のものへと変化させる・・・薄い茶売りの角も生えている、バフォメット本来の姿だ。

やはり主だったか・・・リシスが思ったのもつかの間、クリューネはレイピアをさっと払いリシスの首元を軽く斬る。

そして、血を魔方陣の中央に落とすとリシスにレイピアをむけなおす。

「しかし、世俗は随分と了見の狭いものよ・・・何でも光と闇、善と悪に分けなければ気がすまないらしい。」

「一体・・・!?」

「魔女も元は人、少々感じやすい程度だというものを・・・連中は月光の概念を理解できて折らんな。」

何を語り始めるのかとリシスは思ったが、答えは簡単だ・・・あの少女と同じように自分を変えてしまうというのだろう。

当たり前だ、むしろその方法を確かめるなら自分の犠牲だっていとうつもりも無い。リシスは覚悟を決める。

「・・・まぁ、卿のような方が珍しいのだろうな。私がやっているのは人に魔を混ぜるだけ。そう、光でありながら闇を持つ月光と同じくな?」

「あぁそう・・・全部わかってるなら早くやってよ!」

「そう急かすな、興が冷める・・・といっても時間も無いか。卿が脱出してしまえば再度もぐりこんで今度は知られてしまうであろうからな?」

レイピアを天窓越しに見える月へと向け、クリューネは複雑な詠唱をかけると青白い光をまとったレイピアを床に突き刺す。

「我、月光の名において卿を魔に加え我が眷族とす。月光よ、私に力を・・・求めるままに求められる心を!」

青白い光が魔方陣にいきわたり、それがリシスをっ通見込む・・・とたんにリシスは自身の変化に気づき始める。

「な・・・・っああぁ!だめっ・・・何この感覚・・・!」

「・・・まったく、この段階で普通の人は気持ち良いくらいの言葉は発するが・・・卿の精神力はかなりのものらしい。まぁ変化には抗えぬがな?」

自身で間違って媚薬を飲んでしまったあの時の感覚そっくり・・・いや、それ以上であろう。リシスは手が動けばすぐにでも自分を犯したかった。

だが気力が無いため身体を動かすことは不可能・・・が、リシスはそれ以上に術式の類などを冷静に読み取っていた。

「見てみるか?卿の姿・・・随分とかわいらしくなったものよ。」

「・・・嘘・・・!?」

明らかに身体が縮んでいく・・・リシスは驚いたがこれが自分が望むものだと思い、かけられた術式も解読できた。

まとっていた白衣がずり落ち、シャツもだぶだぶになっている・・・ズボンも自分のサイズにはあわなくなっているであろう事はリシスにとって容易に想像がついた。

「・・・ふ、やってくれるじゃない・・・・」

「しかし卿は食えぬな?快楽を理解しつつ、術まで読み取り一方でこの変化を望む・・・常人とは思えぬものよ。」

「・・・当たり前よ。私を誰だと思ってるの?っ・・・あぁ・・・」

甘いあえぎ声を出しつつもリシスはクリューネをしっかりと見据えている・・・瞳だけは変わっていない、クリューネはそれが気に入ったらしい。

「気に入ったぞ、卿は。」

「・・・え!?」

「卿のような奴は初めてだ・・・性欲ではなく、探究心。それも1つの快楽よな・・・まぁ、だからこそ崩したくもなるが?」

唐突にふさふさとした毛の手でクリューネがリシスの胸を触る・・・抗わずにリシスはあえぎ声を上げてしまう。

あまりにも感覚が強烈過ぎる・・・今のリシスなら全身くまなく触られただけで感じてしまうだろう。

「だ、だめ・・・ひゃっ・・・や・・・さ、さわらないでぇっ・・・!」

「気持ちいいのだろう?卿も求めればいいものを・・・」

「いや・・・やだっ!こ、こんなの・・・ひゃあぁ!」

「言っておくが・・・この儀式を終わらせるには卿が最高に感じなければ終わらぬのでな?そういうものだ・・・」

クリューネは意地悪い笑みを浮かべると、そのまま股間にふさふさの怪我生えた手をあてがい、そのままなぞるように手を動かす。

「っあぁ!?」

「卿は快楽に随分素直だな・・・もうぬれているぞ?」

「やめ・・・やだっ、おねが・・い・・・」

怪しげに笑みを浮かべ、クリューネがリシスの愛液を拭い取るとリシスの目の前に出してみせる。

糸を引いているそれをみて、リシスは首を振るがクリューネはそんなものかとつぶやく。

「欲望のまま求めればいい。卿の今の身体はそのために作られている。もっとも卿には代価というべきかも知れぬが・・・」

「う・・・も、もうやめ・・・っああぁ!」

大事な場所にクリューネが手を滑り込ませ、指を動かす・・・何度も水音が聞こえそのたびにリシスは身体を大きく痙攣させる。

自分でも触ったことの無い場所に指を挿れられ、リシスはあえぐしかなくなみだ目になりながらクリューネをにらんでいる。

「こ、こんなの・・・!」

「卿は快楽が目的ではない、では叩き込んでみるのも悪くなかろう?」

「だめっ・・・もうだめっ・・・あっああぁ!だめぇぇっ!」

ひときわ激しく痙攣し、リシスが絶頂を向かえそのままぐったりとしてしまう・・・クリューネはそっと蜜を絡めとルト、それを魔方陣中央にたらす。

「卿は月光の加護を受け、ここに魔女として転生す。そしてこの者は・・・辞めておこう、記憶までいじるより卿はこのサバトの歴史を刻んでもらおうか。」

「え・・・?」

「シェングラスの史書にサバトの歴史が載る・・・愉快だな。変わりに卿を自由の身にしてシェングラスでの卿の記憶を訂正しておこう。姉には卿が説明する必要はあるがな・・・?」

気が変わったのか、クリューネは魔方陣を閉じる・・・とたんに先の快感はだいぶ収まっていたが、リシスの服装は変わっている。

白衣にも似た外套はそのままだが、長いズボンは膝上までのスカートへと変わり帽子も魔女がつけるような白い帽子がかぶさっていた。

「・・・つまり何、歴史を記録しろって・・・?」

「そういうことだ。活動記録とこれまでの歴史をまとめてもらおう・・・何せまともなのが卿くらいしか居ないのでな?他の魔女は快楽主義に染まりきっている。」

体よく利用されるだけかとリシスは思ったが自分の双剣術で適う相手でもないし自由の身という保障以上の対価は今は無い。

おとなしく従えばいい・・・多少研究の時間を削ればいいだけ。リシスはうなずくとクリューネは頭をなでる。

「卿もこれで名誉会員の一員よ・・・サバトのな。」

「名誉会員って・・・」

「恥じることは無い。仕事のほうをしっかりやってもらうぞ?」

適当に返事してリシスは書物倉庫へと向かう・・・この書物倉庫と自分の研究室をゲートでつないですぐに出入りできるようにする、書物の文字を解読するなどやることは山積みではあるのだが。

 

 

「それで・・・怪しげな集会にゲートを使って参加したりしているわけですか。幼くなったり私が楽しんだ後の獲物をさらに食べたりで・・・」

「だ、だって・・・」

研究所に戻り、フェルアに事情を説明したリシスはしおれている・・・フェルアは相変わらず厳しいらしい。

「この方法、他の人に試したら許しませんよ?」

「それくらいわかってるよ!厳重封印の末に箱に詰め込んでおく!」

人と変わらない姿でずっと生きられる・・・それはすばらしいかもしれないが、生まれて来る子が女性ばかりではシェングラスは破滅へ一直線だ。

リシスもそれはわかっているらしく、書き記したレポートを封印するといいフェルアもとりあえずは納得する。

「はぁ・・・でも、少し嬉しいのもありますね。これで貴方の老いて行く姿を見なくてすみます。」

「ど、どういう・・・!」

「貴方と一緒に居られるのが嬉しいんですよ。湾曲して受け取ることも無いでしょう?」

そっとフェルアがリシスの頬にキスをする・・・リシスは顔を真っ赤にしてるが落ち着いた様子でフェルアに言う。

「・・・ありがとう、姉さん。」

「けど・・・本当に自由の身にしたのにはどういう理由が?何か素直に・・・」

いぶかしがると、いきなり研究所に設置されたゲートをくぐりクリューネが無断で入り込んでくる・・・人の姿だが、フェルアを見るなりすぐにバフォメットの姿に戻る。

「卿にサバトの討伐をやめてもらいたくてな?妹は人質だ。」

「やはりね。そういうわけですね・・・もう、リシスは厄介ごとばかり・・・」

フェルアの軍勢は基本的に不干渉を貫いていたが、他のシェングラス軍部隊が頻繁に討伐に出かけているというがそのたびに敗北し魔女に犯されているという。

クリューネにとってはさすがに供給過剰のところもあり、興をそがれるのもいやらしかったようだ。

「で、どうする?」

「わかりましたよ。上手く軍を動かしておきますが・・・有事の際は私に協力してくれますか?秘密を知った以上、一蓮托生です。」

「よかろう・・・全く、噂が真実とは思わなかったな。まさかシェングラスの第一軍がサキュバスとは。魔物の間では有名だ。」

「・・・」

隠し通すことにやはり無理があったかとフェルアはため息をつくが、クリューネの様子だとまだ人には伝わっていない。

シェングラスは魔物の意見など真っ向から跳ね除ける。だからばれる心配はまだなさそうだ。

「姉さん、悪いね?」

「もういいです。何となく頭痛がしてきます・・・」

フェルアは姿を戻すと、そのまま研究室から出て行く・・・それをみてふぅとため息をつくと、リシスはクリューネにたずねる。

「そういえばさ、その捕虜が供給過剰って・・・」

「卿のこと、実験に使いたいのだろう・・・?構わん、あまったのは持って行け。さすがに私でも4人とかは疲れるのでな・・・」

そんなにひっとらえたのだろうかとリシスはため息をつく。というよりシェングラス軍の質の低さにやっぱり期待はずれだと思ってしまう。

こんなんだから解放軍にいいようにされている。本格的な討伐をやらかそうとしても計略とかではめられて壊滅するんだと。

「・・・とにかく、大丈夫よね?」

「無論だ。」

「じゃあ、2人ほど。ちょーっとばかりやってみたいことがあるから・・・人を魔物に作り変えてみる。」

「ほう、卿も物騒だな?だが面白い。」

クリューネは不適に笑みを見せて、リシスも思わず笑ってしまう。シェングラス軍内部への魔物の進出は、水面下でひっそりと行われている。

彼女たちはその一歩を踏み出したに過ぎない・・・そして、どう動くかは全く予想がつかないのだから。

 

fin

 

おまけ 久しぶりの解放軍(sound only)

「あ、あれ・・・シュナイダーの首どこ?」
「ここです。ちょっと拝借してはずして実験です。はずしたらいけないというのでどうなるか。」
「陛下、返してよ・・・って、何か様子がおかしいよ?シュナイダーの首。」
「・・・リファぁ・・・・」
「あ、シュナイダーってそんな声出せたんだ。かわいーw」
「何か本当に天然のデュラハンっぽくなってるです。」
「今気持ちよくしてあげるからねー?はい、そそぐよー。」
「う、うん・・・お願い・・・・・」

 

「あいつら、よく平然としてるな・・・いくらデュラハンでも人の首で遊ぶという発想が出てくるのか?」
09/10/20 18:07更新 / スフィルナ

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