第3話 スカウトする件について
「はっ、夢!?」
言ってみただけです。昨夜のことは夢でも何でもありませんでした。
隣で幸せそうな顔をして寝てるブリジットがその証拠だ。ギリギリ一線は越えてないけど。
とりあえず頭を撫でてみる。金色の髪は柔らかく、肌もスベスベで撫で心地抜群だ。
俺は軽く体を伸ばして体を覚醒させる。それにしてもよく眠れた。ベッドは二人で寝てもスペースが余るほどの大きさで、しかもふかふかで最高の寝心地だった。
時計を……時計なんて無いんだった。
服はどうしようか。着の身着のままだったから制服しかない。後でミリアータちゃんに服を貰うしかないか。とりあえず今日は制服を着ていくとしよう。
おっとブリジットも起きてきたようだ。
「ふわぁ……おひゃよーごじゃいますヒロさぁん」
寝ぼけ眼を擦りながら舌足らずなあいさつをするブリジット。
昨日見せた色っぽさは一体何処に行ったのやら。
「顔、洗いにいこうか」
「ふわぁい」
俺とブリジットは洗面所へと向かう。昨日ミリアータちゃんからトイレや洗面所、食堂といった基本的な場所の位置は既に教えてもらっている。
ブリジットの足元が覚束ないので時折支えながら歩いている。
「むっ、二人とも一緒か?」
洗面所には歯を磨いているミリアータちゃんがいた。
フラフラしているブリジットを見てクスリと笑う。
「ブリジットは低血圧じゃからの。朝はいつもこんなんじゃぞ?」
魔物にも低血圧とかあるんだ。そんなことを考えながら蛇口を捻って水を出す。
出てくる水はカルキ臭くなく、綺麗で澄んでいた。
俺は思いっきり顔を洗って眠気を覚まし、口を濯ぐ。
「そういえばブリジットは昨日、ヒロに食事を持ってってから戻ってこんかったな?」
「ブフォ」
「っ!?」
俺は水を噴出し、ブリジットはタオルで真っ赤になっている顔を隠している。
その様子をミリアータちゃんはニヤニヤしながら見ている。
「朝チュンかの?」
「こら、子どもがそんなこと言っちゃいけません!」
「子ども!? わしは今年で95021歳じゃ!」
マジですか!? まさかの9万越えとか。
とりあえず魔物に対して見た目≠年齢という概念は捨て去った方が良いのかもしれない。
「……ちなみにブリジットは?」
「25歳です……」
若っ!! 俺からすれば充分年上だけれども。
◆
「朝飯じゃー!!」
朝食は俺とブリジットで作ったオムレツとサラダに昨日のシチュー。ちょっとボリュームがあるかもしれないが、ミリア様(ちゃん付けは止めた)は大喜びで食べ始めている。
食堂にはミリア様と俺とブリジットしかいない。それにコックみたいな人も見当たらなかった。
どういうことだろうか。
「ミリア様、何でこんなに広い食堂なのに人がいないんでしょうね?」
「ムグッ!?」
ミリア様はオムレツを喉に詰まらせたようで胸をドンドンと叩いている。
俺は慌てて水を渡した。
「ゴクッゴクッ……プハァ! 死ぬかと思ったわい」
「それで、答えのほどは……?」
ミリア様は頬を膨らませて面白くなさそうな顔をしている。
「ここにはわしとブリジット以外おらん」
「えっ、昨日サバトだって」
「二人だってサバトじゃもん! わしらは少数精鋭なんじゃ!!」
二人……俺を入れて三人は少数にも程があると思います。それに
「昨日は、魔女たちにも協力させるって……」
「すまん……あの状況下で「わしらは二人しかおらんのじゃー」とか言ってもお主が絶望するだけかと思っての、思わず嘘をついてしまったのじゃ」
「あの、頼りないかもしれないけど、私が頑張りますから」
ブリジットはこう言ってくれてるが、流石に三人でやるのには無理がある。一体全大陸を探して回るのに何百年かかることやら。
効率よく探すのに情報収集だって大事だし、行くところによっては武力が必要になるかもしれない。
「じゃが、わしもただ懺悔しておったわけではないぞ。もちろん打開策も用意しておる」
ミリア様は自身満々の様子でペタンコな胸を張る。
「今、失礼なことを考えんかったかの?」
「イエ、ナニモ」
ものすごい形相でこっち睨んできたよ。
何なんだ。心でも読めるのかこの娘。
バフォ睨みと命名しよう。
「とにかくじゃ。わしはこの建物を拠点にギルドを設立することを宣言する!」
ミリア様の後ろからバーンッという効果音がしたような気がした。
ギルド、ゲームや漫画等で見かける冒険者の相互扶助や情報収集などを行うための拠点だ。
提案としてはいいかもしれないが、どちらにしろ人数がいない。
「あの、サバトにしろギルドにしろ三人じゃ人数不足なのでは……?」
ブリジットが俺の心の声を代弁してくれた。
「人数はこれから増やすのじゃ」
「増やすって……どうやって?」
「それはのう。――スカウトじゃ!!」
あー、なるほど。他所からメンバーをかき集めて欲しいと遠まわしに言ってるのか。
これなら大して遠出しないだろうし、ついでにこの辺の地理を知るいい機会にもなりそう。
そう、ポジティブだ。あらゆる事象をポジティブに捉えるんだ俺ッ!
「とゆー訳でじゃ。これから二人には近くを周ってスカウトしまくって欲しい。人間、魔物は問わん。出来るだけ大勢来てくれるといい」
「ミリア様は?」
「これから国にギルド設立の申請書を出しに行かねばならんのでな。今日は手伝うことができんのじゃ。すまんのぉ」
◆
てなわけで、俺とブリジットは二人で新しいメンバーをスカウトしに行くことになりました。
手始めに安全そうな外にある草原から探していくことになる。そこから森林地帯、山岳地帯、洞窟、海と徐々に行動範囲を広げるつもりだ。
えっ、何故近くの町にいる人から声をかけないのかだって?
町の冒険者や魔物のほとんどは既に別のギルドに所属しているとブリジットが言ってたのでそれは却下だ。
「なぁブリジット。こんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫……なんじゃないでしょうか」
俺は現在、制服ではなく動きやすい丈夫な布で出来た服と護身用にグルカナイフみたいな大き目のナイフを装備している。
剣を貰ったところでどうせ振り回すだけだからナイフのほうがいい。
でも近場といえ俺にとってはここからは未知の世界。不安で不安で仕方ない。
俺の内心を察してか、ブリジットは俺の手を優しく握ってくれる。
「行きましょうか」
「……うん」
俺の緊張が幾分か和らいだ。
よしっ!
俺は初めて外に出た。
俺の目の前に広がったのは壮大な景色。
空は青く、何処までも澄み渡っていて、草原は青々しく茂っている。
太陽からの日差しは強すぎず弱すぎず、爽やかな気候だ。
おっと、この余韻にいつまでも浸っていたいところだが、今は目的を果たすほうが先だ。
◆
俺とブリジットは二手に分かれて街道沿いから外れて誰かいないか探し始める。
「さってっと、誰かいないもんかね」
とか言っても、すぐに見つかったら誰も苦労しないわけで。
「Zzz〜」
前言撤回。いたよ。
岩場の影で気持ち良さそうに寝ているお姉さんを発見。
特徴としては頭に牛のような角が生えていて、首にはカウベルがつけてある。服は牛柄で、足は蹄のようになっていて、尻尾までついている。
これは起きるまで待ったほうがいいよね。後回しにしていなくなったら悲劇だし、無理やり起こして印象を悪くするのもアレだし。
とりあえずこの牛のお姉さんが起きるまでここで座って待つことにする。
しかし……すごい。
何がすごいって。胸が異様なほど大きいのだ。なのにウエストは細く、胸の大きさを際立てている。
顔も綺麗で癒し系っぽいし、ミルクのような優しい香りがする。
見ていても全然飽きない。寝言とか、寝返りとか、寝ている間の幸せそうな顔とか。
もうかれこれ30分くらい眺めたころに、お姉さんの目が覚めた。
そして俺に気がついたようでこっちを見てくる。
「……わらひに何か御用ですか〜?」
「え、あ、ああ……なんというかその……」
えっとえっと。
まずい。見てるのに夢中で何て言って勧誘するか全く考えてなかった。
こういうときは何て言えばいいんだ? 俺、そんなにコミュ力高くないぞ。
というかこの人(魔物?)寝ててもかわいかったけど起きてると一段とかわいいな。
「? 用が無いんだったらもう行きますけど〜」
やばいやばいやばい。このままでは待っていた時間がパーになる。
変に理屈っぽく言ってもあんまり良い印象にはならないだろうし。
シンプルイズベスト。こうなりゃ今の俺の気持ちを一言で。
「あの!」
「は、はい?」
「貴女が、欲しい」
……………………
……………
……
はしょり過ぎたァァァァ!!!!
お姉さん、突然のことに目を丸くしてるし、絶対ドン引きしてるでしょこれ。
「は〜い、喜んで〜♥」
ええええええええええええ!?
言ってみただけです。昨夜のことは夢でも何でもありませんでした。
隣で幸せそうな顔をして寝てるブリジットがその証拠だ。ギリギリ一線は越えてないけど。
とりあえず頭を撫でてみる。金色の髪は柔らかく、肌もスベスベで撫で心地抜群だ。
俺は軽く体を伸ばして体を覚醒させる。それにしてもよく眠れた。ベッドは二人で寝てもスペースが余るほどの大きさで、しかもふかふかで最高の寝心地だった。
時計を……時計なんて無いんだった。
服はどうしようか。着の身着のままだったから制服しかない。後でミリアータちゃんに服を貰うしかないか。とりあえず今日は制服を着ていくとしよう。
おっとブリジットも起きてきたようだ。
「ふわぁ……おひゃよーごじゃいますヒロさぁん」
寝ぼけ眼を擦りながら舌足らずなあいさつをするブリジット。
昨日見せた色っぽさは一体何処に行ったのやら。
「顔、洗いにいこうか」
「ふわぁい」
俺とブリジットは洗面所へと向かう。昨日ミリアータちゃんからトイレや洗面所、食堂といった基本的な場所の位置は既に教えてもらっている。
ブリジットの足元が覚束ないので時折支えながら歩いている。
「むっ、二人とも一緒か?」
洗面所には歯を磨いているミリアータちゃんがいた。
フラフラしているブリジットを見てクスリと笑う。
「ブリジットは低血圧じゃからの。朝はいつもこんなんじゃぞ?」
魔物にも低血圧とかあるんだ。そんなことを考えながら蛇口を捻って水を出す。
出てくる水はカルキ臭くなく、綺麗で澄んでいた。
俺は思いっきり顔を洗って眠気を覚まし、口を濯ぐ。
「そういえばブリジットは昨日、ヒロに食事を持ってってから戻ってこんかったな?」
「ブフォ」
「っ!?」
俺は水を噴出し、ブリジットはタオルで真っ赤になっている顔を隠している。
その様子をミリアータちゃんはニヤニヤしながら見ている。
「朝チュンかの?」
「こら、子どもがそんなこと言っちゃいけません!」
「子ども!? わしは今年で95021歳じゃ!」
マジですか!? まさかの9万越えとか。
とりあえず魔物に対して見た目≠年齢という概念は捨て去った方が良いのかもしれない。
「……ちなみにブリジットは?」
「25歳です……」
若っ!! 俺からすれば充分年上だけれども。
◆
「朝飯じゃー!!」
朝食は俺とブリジットで作ったオムレツとサラダに昨日のシチュー。ちょっとボリュームがあるかもしれないが、ミリア様(ちゃん付けは止めた)は大喜びで食べ始めている。
食堂にはミリア様と俺とブリジットしかいない。それにコックみたいな人も見当たらなかった。
どういうことだろうか。
「ミリア様、何でこんなに広い食堂なのに人がいないんでしょうね?」
「ムグッ!?」
ミリア様はオムレツを喉に詰まらせたようで胸をドンドンと叩いている。
俺は慌てて水を渡した。
「ゴクッゴクッ……プハァ! 死ぬかと思ったわい」
「それで、答えのほどは……?」
ミリア様は頬を膨らませて面白くなさそうな顔をしている。
「ここにはわしとブリジット以外おらん」
「えっ、昨日サバトだって」
「二人だってサバトじゃもん! わしらは少数精鋭なんじゃ!!」
二人……俺を入れて三人は少数にも程があると思います。それに
「昨日は、魔女たちにも協力させるって……」
「すまん……あの状況下で「わしらは二人しかおらんのじゃー」とか言ってもお主が絶望するだけかと思っての、思わず嘘をついてしまったのじゃ」
「あの、頼りないかもしれないけど、私が頑張りますから」
ブリジットはこう言ってくれてるが、流石に三人でやるのには無理がある。一体全大陸を探して回るのに何百年かかることやら。
効率よく探すのに情報収集だって大事だし、行くところによっては武力が必要になるかもしれない。
「じゃが、わしもただ懺悔しておったわけではないぞ。もちろん打開策も用意しておる」
ミリア様は自身満々の様子でペタンコな胸を張る。
「今、失礼なことを考えんかったかの?」
「イエ、ナニモ」
ものすごい形相でこっち睨んできたよ。
何なんだ。心でも読めるのかこの娘。
バフォ睨みと命名しよう。
「とにかくじゃ。わしはこの建物を拠点にギルドを設立することを宣言する!」
ミリア様の後ろからバーンッという効果音がしたような気がした。
ギルド、ゲームや漫画等で見かける冒険者の相互扶助や情報収集などを行うための拠点だ。
提案としてはいいかもしれないが、どちらにしろ人数がいない。
「あの、サバトにしろギルドにしろ三人じゃ人数不足なのでは……?」
ブリジットが俺の心の声を代弁してくれた。
「人数はこれから増やすのじゃ」
「増やすって……どうやって?」
「それはのう。――スカウトじゃ!!」
あー、なるほど。他所からメンバーをかき集めて欲しいと遠まわしに言ってるのか。
これなら大して遠出しないだろうし、ついでにこの辺の地理を知るいい機会にもなりそう。
そう、ポジティブだ。あらゆる事象をポジティブに捉えるんだ俺ッ!
「とゆー訳でじゃ。これから二人には近くを周ってスカウトしまくって欲しい。人間、魔物は問わん。出来るだけ大勢来てくれるといい」
「ミリア様は?」
「これから国にギルド設立の申請書を出しに行かねばならんのでな。今日は手伝うことができんのじゃ。すまんのぉ」
◆
てなわけで、俺とブリジットは二人で新しいメンバーをスカウトしに行くことになりました。
手始めに安全そうな外にある草原から探していくことになる。そこから森林地帯、山岳地帯、洞窟、海と徐々に行動範囲を広げるつもりだ。
えっ、何故近くの町にいる人から声をかけないのかだって?
町の冒険者や魔物のほとんどは既に別のギルドに所属しているとブリジットが言ってたのでそれは却下だ。
「なぁブリジット。こんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫……なんじゃないでしょうか」
俺は現在、制服ではなく動きやすい丈夫な布で出来た服と護身用にグルカナイフみたいな大き目のナイフを装備している。
剣を貰ったところでどうせ振り回すだけだからナイフのほうがいい。
でも近場といえ俺にとってはここからは未知の世界。不安で不安で仕方ない。
俺の内心を察してか、ブリジットは俺の手を優しく握ってくれる。
「行きましょうか」
「……うん」
俺の緊張が幾分か和らいだ。
よしっ!
俺は初めて外に出た。
俺の目の前に広がったのは壮大な景色。
空は青く、何処までも澄み渡っていて、草原は青々しく茂っている。
太陽からの日差しは強すぎず弱すぎず、爽やかな気候だ。
おっと、この余韻にいつまでも浸っていたいところだが、今は目的を果たすほうが先だ。
◆
俺とブリジットは二手に分かれて街道沿いから外れて誰かいないか探し始める。
「さってっと、誰かいないもんかね」
とか言っても、すぐに見つかったら誰も苦労しないわけで。
「Zzz〜」
前言撤回。いたよ。
岩場の影で気持ち良さそうに寝ているお姉さんを発見。
特徴としては頭に牛のような角が生えていて、首にはカウベルがつけてある。服は牛柄で、足は蹄のようになっていて、尻尾までついている。
これは起きるまで待ったほうがいいよね。後回しにしていなくなったら悲劇だし、無理やり起こして印象を悪くするのもアレだし。
とりあえずこの牛のお姉さんが起きるまでここで座って待つことにする。
しかし……すごい。
何がすごいって。胸が異様なほど大きいのだ。なのにウエストは細く、胸の大きさを際立てている。
顔も綺麗で癒し系っぽいし、ミルクのような優しい香りがする。
見ていても全然飽きない。寝言とか、寝返りとか、寝ている間の幸せそうな顔とか。
もうかれこれ30分くらい眺めたころに、お姉さんの目が覚めた。
そして俺に気がついたようでこっちを見てくる。
「……わらひに何か御用ですか〜?」
「え、あ、ああ……なんというかその……」
えっとえっと。
まずい。見てるのに夢中で何て言って勧誘するか全く考えてなかった。
こういうときは何て言えばいいんだ? 俺、そんなにコミュ力高くないぞ。
というかこの人(魔物?)寝ててもかわいかったけど起きてると一段とかわいいな。
「? 用が無いんだったらもう行きますけど〜」
やばいやばいやばい。このままでは待っていた時間がパーになる。
変に理屈っぽく言ってもあんまり良い印象にはならないだろうし。
シンプルイズベスト。こうなりゃ今の俺の気持ちを一言で。
「あの!」
「は、はい?」
「貴女が、欲しい」
……………………
……………
……
はしょり過ぎたァァァァ!!!!
お姉さん、突然のことに目を丸くしてるし、絶対ドン引きしてるでしょこれ。
「は〜い、喜んで〜♥」
ええええええええええええ!?
12/08/14 13:55更新 / BBQ
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