第1話 異世界に着ちゃった件について
俺の名前は御上宥(みかみ ひろ)。自分で言うのもなんだけど、何処にでもいそうなごく普通の高校二年生だ。部活はやってないけど体を動かすのは結構好きなほうで学校の成績は中の上辺り。趣味はゲーム、特にRPGとか大好き。
学校が明日から夏休みに入ることで今日は授業も無く、午前中で下校。昼飯はちょっと豪勢にカツ丼でも食って、ゲーセンでメダルゲームでもしてから家に帰ってテレビゲームでもする予定……だった。
「ここ……何処……?」
俺が覚えていたのはカツ丼を食ってたところまで。気がついたら薄暗い部屋につっ立っていた。周りには数え切れない数の本がしまってある本棚に何かがグツグツ煮えたぎる大釜。下には何かの模様、ゲームとかでよく見かける魔方陣にそっくりだ。
そして目の前には山羊のような角が生えていて手と足にモフモフしてそうな手袋とブーツをつけた露出度の高い格好をしている女の子と魔女が被っていそうなとんがり帽子を被っていてこれまた魔女が持ってそうな杖を持っている少女がいる。俺は何処かのコスプレ会場にでも紛れ込んでしまったのだろうか。それと角が生えた少女は何を思って暑いのか寒いのかわからない格好をしているのか。
「せ」
「せ?」
「成功じゃー!!」
「やりましたねミリア様」
目の前で二人の少女が叫んだ後、その場で抱きついてピョンピョン飛び跳ねている。角が生えている少女はミリアちゃんというのか。成功というのはおそらく俺がこの場にいることと何か関係があるのだろう。
一先ず聞いてみることにした。
「あのー、ここは何処なんでしょうか? それと貴女達は一体?」
「おおっ、すまぬな。まずは自己紹介からじゃな。わしはミリアータ、ここのサバトで長をやっておる」
サバト、確か魔女の集まりとかそんな意味だったと思う。それでそんな奇抜なコスプレをしているのか。彼女の本気が伺えるな、角まで着けてるし。
とりあえず俺も自己紹介をすることにしよう。
「どうも、御上宥、高校生です。俺は一体どうやってここに来たんでしょうか? ちょっとここに来るまでの記憶が曖昧なんですが」
角が生えた少女改めミリアータちゃんは「うおっほん」と咳払いをした。
「お主には詳しく説明せねばな」
ミリアータちゃんはここは俺が元いた世界とは違う世界。異世界だということ、この世界の構造、ついでに一般常識を詳しく、かつわかり易く説明してくれた。
ここが異世界だというだけでも驚きなのだが、魔物が女性になっていてゲームのように人間をむやみに傷つけたり食べてしまったりする存在ではないというのには一番驚いた。原因はこの世界の魔王が新世代の魔王(サキュバス種)に代替わりしたことらしい。
ちなみにその魔王はとある勇者と結婚して魔界で幸せに暮らしているのだとか。
「あの……まさか二人とも?」
「そうじゃ、わしもここにいるブリジットも魔物じゃ。ちなみにわしはバフォメット。ブリジットは魔女じゃ」
「じ、自己紹介が遅れました。ブリジットです」
ブリジットちゃんは慌てた様に名乗る。
何というかこうモンスターって感じが全くしない。魔女はともかくバフォメットって山羊の頭をした化け物だった筈。少なくともゲームとかでは。
「とりあえずこの世界が色々ぶっ飛んでるのはわかりました。ところで何で俺はここにいるんでしょう?」
「それはじゃな」
ミリアータちゃんは一冊の分厚い本を取り出した。
「この本に書いてあった異世界の人間を召還できる召還の儀を試しにやってみたのじゃ。まさか成功するとは思わなんだが」
「……それで俺が呼ばれてきたと?」
「うむ」
魔物とはいえ見た目女の子に怒鳴る気にもなれず、脱力してしまった。
しかし召還があるのなら送還もあるだろう。元の世界に帰れるのなら文句はない。
「じゃあ用もすんだんだし、さっさと送還してください」
できることなら元いたカツ丼屋にして欲しい。あのカツ丼まだ三口しか食べてないんだよね。すぐ近くにゲーセンもあるからクレーンゲームとかしたいな。
そういえばメダルゲームで預けてたメダルの期限がそろそろ切れそうなんだっけ。
「そ、それがじゃな……」
ミリアータちゃんが気まずそうに目を逸らした。ブリジットちゃんも帽子を深く被って俺と目を合わさないようにしている。
どうしよう、嫌な予感しかしないんですけど。予感だけで終わって欲しいんですけど。
まさか帰れないなんてことは……。
「……この世界には召還術はあっても送還術はないんじゃ」
「冗談……ですよね?」
そう切実に願う。
しかし現実は何処までいっても残酷だった。
「すまん……まさか成功してしまうとは思っとらんかったんじゃ。それでその後のこととか考えなかったんじゃ」
ミリアータちゃんは頭をさげる。
ブリジットちゃんはオロオロしていた。
「そ、そうなんですか……」
人間、度を超えたパニックに陥ると逆に思考が停止するとよくいわれている。今の俺がまさにそれだと思う。正直言ってどうしたらいいかわからなかった。
「あの……本当に帰る手段は無いんですか?」
俺は一縷の望みを託しながらミリアータちゃんに問いかける。
送還以外にも何か方法は無いものか。
「……全く無いとも限らん。この世界にはまだまだ未知の魔法、未開の地、はたまた発見されていない異世界へと続く空間。可能性は大いにありえる」
ミリアータちゃんはここで一度言葉を区切った。
「こうなってしまった以上、責任はわしらにある。お主が元の世界へ帰れるまでわしは力を貸すし、サバトの者達にも協力させよう」
「ほ、本当ですか!?」
「本当じゃとも」
こうして俺の異世界での当ての無い冒険が始まった。
できるなら夏休み中に終わればいいな。無理だと思うけど。
学校が明日から夏休みに入ることで今日は授業も無く、午前中で下校。昼飯はちょっと豪勢にカツ丼でも食って、ゲーセンでメダルゲームでもしてから家に帰ってテレビゲームでもする予定……だった。
「ここ……何処……?」
俺が覚えていたのはカツ丼を食ってたところまで。気がついたら薄暗い部屋につっ立っていた。周りには数え切れない数の本がしまってある本棚に何かがグツグツ煮えたぎる大釜。下には何かの模様、ゲームとかでよく見かける魔方陣にそっくりだ。
そして目の前には山羊のような角が生えていて手と足にモフモフしてそうな手袋とブーツをつけた露出度の高い格好をしている女の子と魔女が被っていそうなとんがり帽子を被っていてこれまた魔女が持ってそうな杖を持っている少女がいる。俺は何処かのコスプレ会場にでも紛れ込んでしまったのだろうか。それと角が生えた少女は何を思って暑いのか寒いのかわからない格好をしているのか。
「せ」
「せ?」
「成功じゃー!!」
「やりましたねミリア様」
目の前で二人の少女が叫んだ後、その場で抱きついてピョンピョン飛び跳ねている。角が生えている少女はミリアちゃんというのか。成功というのはおそらく俺がこの場にいることと何か関係があるのだろう。
一先ず聞いてみることにした。
「あのー、ここは何処なんでしょうか? それと貴女達は一体?」
「おおっ、すまぬな。まずは自己紹介からじゃな。わしはミリアータ、ここのサバトで長をやっておる」
サバト、確か魔女の集まりとかそんな意味だったと思う。それでそんな奇抜なコスプレをしているのか。彼女の本気が伺えるな、角まで着けてるし。
とりあえず俺も自己紹介をすることにしよう。
「どうも、御上宥、高校生です。俺は一体どうやってここに来たんでしょうか? ちょっとここに来るまでの記憶が曖昧なんですが」
角が生えた少女改めミリアータちゃんは「うおっほん」と咳払いをした。
「お主には詳しく説明せねばな」
ミリアータちゃんはここは俺が元いた世界とは違う世界。異世界だということ、この世界の構造、ついでに一般常識を詳しく、かつわかり易く説明してくれた。
ここが異世界だというだけでも驚きなのだが、魔物が女性になっていてゲームのように人間をむやみに傷つけたり食べてしまったりする存在ではないというのには一番驚いた。原因はこの世界の魔王が新世代の魔王(サキュバス種)に代替わりしたことらしい。
ちなみにその魔王はとある勇者と結婚して魔界で幸せに暮らしているのだとか。
「あの……まさか二人とも?」
「そうじゃ、わしもここにいるブリジットも魔物じゃ。ちなみにわしはバフォメット。ブリジットは魔女じゃ」
「じ、自己紹介が遅れました。ブリジットです」
ブリジットちゃんは慌てた様に名乗る。
何というかこうモンスターって感じが全くしない。魔女はともかくバフォメットって山羊の頭をした化け物だった筈。少なくともゲームとかでは。
「とりあえずこの世界が色々ぶっ飛んでるのはわかりました。ところで何で俺はここにいるんでしょう?」
「それはじゃな」
ミリアータちゃんは一冊の分厚い本を取り出した。
「この本に書いてあった異世界の人間を召還できる召還の儀を試しにやってみたのじゃ。まさか成功するとは思わなんだが」
「……それで俺が呼ばれてきたと?」
「うむ」
魔物とはいえ見た目女の子に怒鳴る気にもなれず、脱力してしまった。
しかし召還があるのなら送還もあるだろう。元の世界に帰れるのなら文句はない。
「じゃあ用もすんだんだし、さっさと送還してください」
できることなら元いたカツ丼屋にして欲しい。あのカツ丼まだ三口しか食べてないんだよね。すぐ近くにゲーセンもあるからクレーンゲームとかしたいな。
そういえばメダルゲームで預けてたメダルの期限がそろそろ切れそうなんだっけ。
「そ、それがじゃな……」
ミリアータちゃんが気まずそうに目を逸らした。ブリジットちゃんも帽子を深く被って俺と目を合わさないようにしている。
どうしよう、嫌な予感しかしないんですけど。予感だけで終わって欲しいんですけど。
まさか帰れないなんてことは……。
「……この世界には召還術はあっても送還術はないんじゃ」
「冗談……ですよね?」
そう切実に願う。
しかし現実は何処までいっても残酷だった。
「すまん……まさか成功してしまうとは思っとらんかったんじゃ。それでその後のこととか考えなかったんじゃ」
ミリアータちゃんは頭をさげる。
ブリジットちゃんはオロオロしていた。
「そ、そうなんですか……」
人間、度を超えたパニックに陥ると逆に思考が停止するとよくいわれている。今の俺がまさにそれだと思う。正直言ってどうしたらいいかわからなかった。
「あの……本当に帰る手段は無いんですか?」
俺は一縷の望みを託しながらミリアータちゃんに問いかける。
送還以外にも何か方法は無いものか。
「……全く無いとも限らん。この世界にはまだまだ未知の魔法、未開の地、はたまた発見されていない異世界へと続く空間。可能性は大いにありえる」
ミリアータちゃんはここで一度言葉を区切った。
「こうなってしまった以上、責任はわしらにある。お主が元の世界へ帰れるまでわしは力を貸すし、サバトの者達にも協力させよう」
「ほ、本当ですか!?」
「本当じゃとも」
こうして俺の異世界での当ての無い冒険が始まった。
できるなら夏休み中に終わればいいな。無理だと思うけど。
12/08/12 00:53更新 / BBQ
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