連載小説
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第二審
レスカティエ教国。
教団でも有数の戦力を誇るこの国には、多数の勇者や聖職者、騎士団そして理性的で禁欲的な国民が暮らしている。そんな彼らを陰から支える存在がこの国にはいる。

レスカティエ教国の下町にある小さな教会。レスカティエではごくありふれた施設であり、悩める臣民が訪れる救済の場でもある。ここに常駐しているのは神父とシスターが一人ずつである。神父は見たところ三十代半ば、柔和な笑みをたたえており、彼が神父であることに違和感を覚える人はまずいないだろう。方や、シスターであるが、慈しみ深い表情と服装から神に仕える身であると判断できるものの、表情や仕草にどこか妖艶さを漂わせており娼婦を思わせるものがある。

「この教典はここに隠しておきましょう。」
シスターの提案に神父はうなずき教典を聖書の中にまぎれこませた。彼らは神に仕える身だが主神とは異なる神に仕えている。魔物の魔力を浴び自ら堕落した堕落神こそが彼らの主である。それゆえシスターはダークプリーストと呼ばれる正真正銘の魔物である。この小さな教会に潜入した彼女は既にいた神父を誘惑し、晴れて夫婦となった。通常は夫を手に入れた段階で万魔殿にこもってしまうが、彼女はそうしなかった。とあるリリムと堕落神からの依頼により、まっ先に好みの男性を得られる代わりに、レスカティエの情報収集と来る時に備えた布教を行うという契約を結んでいるのである。
「これでいいかな。見つかると宗教裁判だからね。」
「あら、宗教裁判だなんて。」

\デェェェェン/

「まさかの時の宗教裁判!」
突如、赤い素敵な制服を着た三人組が乱入した。

第十三教会歴400年代初頭、変化した魔物に対処するため、時の教皇ユリウス2世は審問官を教団領各所に配し、魔物と異端の一掃を図った。その悪逆・非道・残忍は見事な絵画を残した。これが宗教裁判である。

三人組は二人を捕えると、そのまま異端審問用の施設の地下に連行した。彼らはまずシスターの異端審問から始めるようだ。耳障りな金属音とともに扉が開き、シスターが拷問部屋に連れ込まれた。部屋は陰気で湿気ており、まともな者であればすぐに気が滅入るであろう。手早くシスターを柱に拘束した三人組は尋問から始めた。
「さて、シスター。お前の罪は3つだ。異端の思想・言説・行為・動作……4つの罪だ。告白するのだ。」
「何のことだかわかりません。」
シスターの答えに三人組は悪魔のような笑いをあげた。
「では、わからせてやろう。ビグルス、あれを出せ。クッションだ。」
審問官の命令にビグルスは的確に応じた。同じ失敗はしないことから彼の優秀さが伺える。
「チャンスは1回だ。罪を認め、神に従う……2回だ。さすれば貴様は自由だ……3回だ、3回のチャンスだ。数には弱いんだ。」
硬軟織り交ぜた尋問だったが、シスターはそれでも折れることはなかった。
「よし、貴様の望みは分かった。ビグルス、柔らかクッションで痛めつけてやれ。」
ついに拷問が開始された。ビグルスがクッションをシスターに何度も押し付けたり小突きまわす傍ら審問官が告白をせまった。しかし、シスターは気丈にもこの拷問に耐えきった。
「だめです、効きません。」
「力いっぱいやったか?」
「やりました。」
「ふん、頑丈な奴め。ファン、安楽椅子をだせ。」
彼もまた審問官の要求に的確に応じた。出てきた安楽椅子は座り心地に定評のある椅子職人の作った一級品だった。彼も同僚の失敗から学んでいたのだ。
「よく柔らかクッションに耐えたな。しかし、今度は……。」
審問官は部下にシスターを座らせるよう命じた。狂気をたたえた彼らは、無理やり安楽椅子にシスターを座らせた。
「どうだ。昼食までこのままだぞ。休憩は11時のお茶だけだ。」
シスターを安楽椅子に座らせた審問官はさらに告白するようせまった。
「告白せよ。告白せよ。告白せよ!告白せよ!告白せよ!!」
「告白します。」
そしてついに審問官はビグルスを告白させることに成功したのだった。


その後神父とシスターはそろって安楽椅子に座らせ続けられた。一定の成果を挙げたものの、あまりにも長時間耐えるため、三人組はひとまず拷問を打ち切り次の手を考えることにした。

その夜。
「大丈夫……すぐによくなるわ。」
レスカティエは白い淫魔の手により陥落した。彼女は主だった面々を堕落させた後、レスカティエの中枢を歩きまわり、ふと異端審問用の裁判室に立ち寄った。ここも既にかつての異端審問官たちと淫魔たちが交わり合っていた。
「ふふ、ここでダークプリーストが宗教裁判をするのも一興ね。」
ふと、彼女は扉に目をやった。なぜか、注目せねばならない気がしたのだ。
14/10/04 22:57更新 / 重航空巡洋艦
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■作者メッセージ
三人組は異端審問用の施設から離れた所に住んでいた。それゆえ、リリムによる第一撃を免れることができた。宗教裁判を察知した彼らは急いで出発の準備を整え、裁判室に向かった。街に溢れる淫魔に目をくれず彼らはひたすら急ぐ。

こんにちは、重航空巡洋艦です。
今回はスペイン宗教裁判の後半になります。

「あとがきが始まった。」
「急げ。」

映像を無理やり文字に落とし込みましたが、私の文才ではこれが限界でした。もし原作に興味を持った方がいらっしゃいましたら是非視聴してください。

「言い訳が始まった。後がないぞ。」

今回の作品の主役は事実上例の三人組になってしまっていますので、バランスをとるために魔物娘によるえっちぃ拷問編を加えたいと思います。

「くそ、次回作を話し出した。急ぐんだ。」

誰かの役に勃ったらいいな、と思いつつのんびりと筆を進めます。

ついに三人組は裁判室前に到着した。中からは凄まじい魔力を感じるが、それで怯む彼らではない。
「まさかの時の……、間に合わねぇや!」

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