第一審
レスカティエ教国。
教団勢力の中で第二の戦力を誇る巨大国家である。戦力の中心は無論勇者だが、その他にも多種多様で充実した戦力を保有している。この中には華々しい対魔物戦闘に従事することなく、国内の異端や魔物の摘発を行う地道な、悪く言えば暗い任務に就いている者もいる。
ある昼下がり、一人の女性が部屋で編み物をしている。みごとなブロンドに整った顔立ち、通りで出会えば大半の男性が振り向くような美女である。不意にドアがノックされる。
「どうぞ。」
女性の返事に一人の男性がややあわてた様子で入ってきた。
「君のことがばれたかもしれない。」
「なんですって?」
「君の正体が教団の連中にばれたかもしれないんだ。」
その女性はレスカティエ教国の国民ではなかった。それどころか人間ですらない。彼女はとあるリリムより派遣されスパイ活動を行っているサキュバスなのだ。やってきた男性とは既に、公私にわたるパートナーとなっている。もし、彼らの正体が教団にばれたら身の毛もよだつ仕打ちが待っていることだろう。
「でも、どこから漏れたのかしら?」
「分からないよ。でもこのままだと宗教裁判にかけられるかも。」
\デェェェェェェン/
直後、ドアが開け放たれ赤い服を着た三人組が乱入してきた。
「まさかの時のレスカティエ宗教裁判!!」
「我々の唯一の武器は驚愕、驚愕と恐怖…。2つの武器だ、恐怖と驚愕、強迫…。3つの武器だ、恐怖・驚愕・強迫・妄信…。我々の武器は4つの、いや、選りすぐりの武器は……さっき言ったことだ、恐怖に驚愕とか……だめだ、やり直し。」
部屋の主たちが竦んでいる中、三人組は入ったときと同様いきなり部屋の外に飛び出した。男性はふるえながらつぶやいた。
「しゅ、宗教裁判だ。」
\デェェェェェェン/
「まさかの時のレスカティエ宗教裁判!!」
先ほどと同じく三人組が乱入した。
「我々の選りすぐりの武器は次のとおり。恐怖・驚愕・強迫・妄信そして素敵な赤い制服、おっと間違えた。」
粛清前の形式に失敗したのを気にしたのか、審問官は部下のビグルスに口上を委ねた。
「俺には言えない。お前が言え。」
「え?」
「お前が言うんだ。我々の唯一の武器のくだりを。」
「私にはできません。」
渋る部下に業を煮やしたか、審問官は部下たちを押しながらひとまず部屋の外に出ていった。男性は壊れたからくり人形のようにつぶやいた。
「宗教裁判。」
\デェェェェェェン/
三度三人組が乱入してきた。先ほどの失敗の教訓を生かしたのか、三人組はこれまでと異なる隊列を組んでいる。
「あ〜、まさかの…(時の)、え〜まさかの時のレスカティエ…あ〜(宗教裁判)、解ってる、解ってるよ。まさかの時のレスカティエ宗教裁判!!、実際誰も予期(我々の唯一の)、我々の唯一の武器は…あー、えーっと…(驚愕)驚愕。」
「よし、やめやめ。止めるんだ。」
後ろから小声で指示を出していた審問官だったが、さっさと魔物を粛清したいのか、部下の口上に割り込んだ。
「ふぅ、あー。我々の唯一の武器は驚愕、以下省略!」
審問官は次の工程に進むことにした。
「ファン枢機卿、罪状を読み上げろ。」
「おみゃーさんは魔物やな、あかんわ。わっちの…。」
「もういい。さて、申し開きはあるか?」
色々と規格外な部下に疲れたのか、審問官は罪状の確認もそこそこに進行を続けることにしたようだ。
審問官の問いに女性は決然と無実を主張した。
「HA!HA!HA!HA!HA!すぐに悔い改めさせてやる。恐怖と驚愕と強迫によってな。」
三人組は女性の答えに悪魔のような笑いをし、悪魔のような動きをしながら脅しつけた。
「お前のような爛れた存在にとっておきの物がある。ビグルス枢機卿、'梨'を用意しろ。まずは、お前の口からいt…」
審問官は部下のビグルスが取り出した'梨'を一瞥して固まったが、神への狂信がそれを上回った。彼は任務を続行したのだ。
「お前…、まあ、良い。その女の口に取り付ろ。」
「ん、ぅむぐ。」
二人の枢機卿は恐ろしい笑い声をあげながら、'梨'を女性の口に押し付けた。女性はもはや言葉をあげることもかなわなくなった。
「さて、罪を認めるか?認めるなら右手を上げろ。」
女性はそれでも屈することなく左手を上げた。
「よし、'梨'を……'梨'をお見舞いしてやれ。」
ついに審問官が拷問の開始を命じた。
「いや、しかし。」
「もう手遅れなのは解っている。だが、格好をつけなきゃ我々が馬鹿みたいに見えるだろうが。」
「いえ、ですから。」
「なんだ?」
「皮は剥きますか?」
「もう好きにして……。」
こうして、梨による拷問が執行された。彼らが立ち去った後、口の周りを梨の果汁で無残な状態にされた女性が発見される。異端審問官の任務はひとまず完了したが、まだ国内には多くの魔物や異端が潜んでいる。
教団勢力の中で第二の戦力を誇る巨大国家である。戦力の中心は無論勇者だが、その他にも多種多様で充実した戦力を保有している。この中には華々しい対魔物戦闘に従事することなく、国内の異端や魔物の摘発を行う地道な、悪く言えば暗い任務に就いている者もいる。
ある昼下がり、一人の女性が部屋で編み物をしている。みごとなブロンドに整った顔立ち、通りで出会えば大半の男性が振り向くような美女である。不意にドアがノックされる。
「どうぞ。」
女性の返事に一人の男性がややあわてた様子で入ってきた。
「君のことがばれたかもしれない。」
「なんですって?」
「君の正体が教団の連中にばれたかもしれないんだ。」
その女性はレスカティエ教国の国民ではなかった。それどころか人間ですらない。彼女はとあるリリムより派遣されスパイ活動を行っているサキュバスなのだ。やってきた男性とは既に、公私にわたるパートナーとなっている。もし、彼らの正体が教団にばれたら身の毛もよだつ仕打ちが待っていることだろう。
「でも、どこから漏れたのかしら?」
「分からないよ。でもこのままだと宗教裁判にかけられるかも。」
\デェェェェェェン/
直後、ドアが開け放たれ赤い服を着た三人組が乱入してきた。
「まさかの時のレスカティエ宗教裁判!!」
「我々の唯一の武器は驚愕、驚愕と恐怖…。2つの武器だ、恐怖と驚愕、強迫…。3つの武器だ、恐怖・驚愕・強迫・妄信…。我々の武器は4つの、いや、選りすぐりの武器は……さっき言ったことだ、恐怖に驚愕とか……だめだ、やり直し。」
部屋の主たちが竦んでいる中、三人組は入ったときと同様いきなり部屋の外に飛び出した。男性はふるえながらつぶやいた。
「しゅ、宗教裁判だ。」
\デェェェェェェン/
「まさかの時のレスカティエ宗教裁判!!」
先ほどと同じく三人組が乱入した。
「我々の選りすぐりの武器は次のとおり。恐怖・驚愕・強迫・妄信そして素敵な赤い制服、おっと間違えた。」
粛清前の形式に失敗したのを気にしたのか、審問官は部下のビグルスに口上を委ねた。
「俺には言えない。お前が言え。」
「え?」
「お前が言うんだ。我々の唯一の武器のくだりを。」
「私にはできません。」
渋る部下に業を煮やしたか、審問官は部下たちを押しながらひとまず部屋の外に出ていった。男性は壊れたからくり人形のようにつぶやいた。
「宗教裁判。」
\デェェェェェェン/
三度三人組が乱入してきた。先ほどの失敗の教訓を生かしたのか、三人組はこれまでと異なる隊列を組んでいる。
「あ〜、まさかの…(時の)、え〜まさかの時のレスカティエ…あ〜(宗教裁判)、解ってる、解ってるよ。まさかの時のレスカティエ宗教裁判!!、実際誰も予期(我々の唯一の)、我々の唯一の武器は…あー、えーっと…(驚愕)驚愕。」
「よし、やめやめ。止めるんだ。」
後ろから小声で指示を出していた審問官だったが、さっさと魔物を粛清したいのか、部下の口上に割り込んだ。
「ふぅ、あー。我々の唯一の武器は驚愕、以下省略!」
審問官は次の工程に進むことにした。
「ファン枢機卿、罪状を読み上げろ。」
「おみゃーさんは魔物やな、あかんわ。わっちの…。」
「もういい。さて、申し開きはあるか?」
色々と規格外な部下に疲れたのか、審問官は罪状の確認もそこそこに進行を続けることにしたようだ。
審問官の問いに女性は決然と無実を主張した。
「HA!HA!HA!HA!HA!すぐに悔い改めさせてやる。恐怖と驚愕と強迫によってな。」
三人組は女性の答えに悪魔のような笑いをし、悪魔のような動きをしながら脅しつけた。
「お前のような爛れた存在にとっておきの物がある。ビグルス枢機卿、'梨'を用意しろ。まずは、お前の口からいt…」
審問官は部下のビグルスが取り出した'梨'を一瞥して固まったが、神への狂信がそれを上回った。彼は任務を続行したのだ。
「お前…、まあ、良い。その女の口に取り付ろ。」
「ん、ぅむぐ。」
二人の枢機卿は恐ろしい笑い声をあげながら、'梨'を女性の口に押し付けた。女性はもはや言葉をあげることもかなわなくなった。
「さて、罪を認めるか?認めるなら右手を上げろ。」
女性はそれでも屈することなく左手を上げた。
「よし、'梨'を……'梨'をお見舞いしてやれ。」
ついに審問官が拷問の開始を命じた。
「いや、しかし。」
「もう手遅れなのは解っている。だが、格好をつけなきゃ我々が馬鹿みたいに見えるだろうが。」
「いえ、ですから。」
「なんだ?」
「皮は剥きますか?」
「もう好きにして……。」
こうして、梨による拷問が執行された。彼らが立ち去った後、口の周りを梨の果汁で無残な状態にされた女性が発見される。異端審問官の任務はひとまず完了したが、まだ国内には多くの魔物や異端が潜んでいる。
14/09/21 14:05更新 / 重航空巡洋艦
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