疾く廃忘し、痴と成る
白と灰。まだら模様の曇天が低くうなりを上げ始めた。
「・・・今年ももう秋は終わりかね」
片目を開けて独りつぶやく。
ジパングは大陸とは比ぶべくもない小さな島国である。しかし特異な地理条件が
多様な気候を生み出す土地であった。雷鳴一つを挙げても、東の海岸線では夏ごろに
入道雲が雨と共に連れてくるものと解されている。一方、西の海岸線では冬の初め、
降雪の予示として受け取られる。ために、雪国の住人は「雪おろし」と呼び季節の移りに身構えるのだ。
青年は昼食後のひと時を布団にくるまって過ごしていた。しかし屋根の上に冬の気配を
感じ、何に急かされたわけでもなく午睡を打ち切ることにした。
「はいはい、午後の仕事にかかりますよ、と。」
小さな港町の隅、この青年は二十に満たないながらも一人で暮らしていた。
板張りの家と、小さな畑のみが財産であった。磯にほど近くの畑に出れば馴染みの海が
そこに見えた。
薄暗い日であった。風は然程もなく、海面には小波がいくらか見えるばかり。
日の差さない空を映してやはり鈍色である。青年は一つ伸びをして唐黍の収穫を始めた。
秋獲りの唐黍の残りを手に取りつつ青年はぼんやりと冬のことを考えた。
-冬のよい点は一つ。食物の腐敗が遅いことである。
-冬のよくない点はいくらでも。最大は、食物に乏しいことである。
それでも、港町はまだ良い。冬は冬で獲れる魚はあるのだから。内陸などは秋口までの
蓄えがその冬の命運をそのまま決めてしまうのだ。かつて両親はもっと山のほうに住んでいたと生前に聞いた。どうにも喰い詰めて、近場の港町に居を移したのだと。
「冬でも菜物が育つ部屋があるって、ほんとかな?」
近頃聞いた話。曰く、年中暖かに保った部屋の中で光を与え、菜を、花を、育てるのだと。そういう術が都の方にあると言う。
「いつかこの貧乏人にもそんなことができるのかな」
半ば期待なく言う。ここ何年か都を中心に得体のしれない、それでいて夢のような術が
多く顕れているらしいと人から聞く。中には妖怪の仕業じゃと恐れる者もあるのだとか。しかし青年は別段の恐怖を抱いていなかった。
このジパングでは、それこそいつの世でも妖絡みの話は尽きない。どこそこの何某は
山姥に育てられた、誰彼の飼う猫が人の身を得て飼い主を誑かした、そんな話は幼子も知っている。実際のところ孤島の中で多くの神性を祀る風俗を通じ、超常の者たちへの
近しさは大陸のそれとは違っているのだろう。
ただ青年の平常心はそのような洞察に依ってはいなかった。ただ単にわが身に関わりなしという無関心が根本である。華やかな物は全て都の中、侘しい集落にそんな事は起こるまい、と決めつけていた。
「んー?」
今日の様子は何か妙である。このような空模様は、岩を引きずるような唸りをさせつつ
まばらに明滅するのが普通であるところ、今日は異様に明滅が多い。見上げた空は十も数えきらぬ間に四度は瞬いた。
時折の響きの他は音もなく、薄暗い午後とは言え辺りは静まっている。青年は何か心細いような、腹の底にひやりとしたものを感じた。
幸い半刻もかからず唐黍はあらかた獲り終えた。幾らかの残りはまた次で良いだろう。
こんな日はさっさと夕飯を食べて寝てしまえば良いんだ。
「いっ・・・!」
落雷の轟音が響いた。鞭打つような甲高い音である。雷雲が己の真上にあることの証で
あり、取り急ぎ身を隠すべきであった。
「これは危ない・・・」
青年は焦り、唐黍の籠を担ぐと小走りで帰路についた。
「ふーーっ」
家前に走り込み、息を吐く。思いがけない運動に汗ばんだ体に秋風が心地よく、籠を下して土間を越えればもう雷の恐怖は喉元を過ぎている。さりとて今日はもう仕事をする気にもなれなかったので、先に手を洗おうと台所に近づいた時だった。
がりがり。ばりばりばり。
青年の体表が泡立ち、固まった背筋が肩を持ち上げる。何かが、台所に、数歩先にいる。
犬や猫だろうか、猪だろうか、まさか・・・熊だろうか。何であれ確かめねばならない。
もしも熊などであったなら、大事である。急いで周囲に知らせ、追いやるなり殺すなり
する準備を始めるべきだ。壁の縁に身を寄せ、そろりと台所を見やった青年は思わぬものを見た。
女である。いや、「女のようなモノ」である。
少し前かがみではあったが身の丈はおよそ自分と同じぐらい。異様に丈の短い着物を着ているようで、太腿の下は足元の足袋まで露わであった。
・・・もしもそれだけであったなら或いは気の触れた人間、で済ませられたかも
しれない。しかし、頭上に突き出している獣の耳と思しきものと先端に淡い光を帯びて
僅かに持ち上がる髪がただ人でないことを告げている。青年は目の前の女が人間ではないと理解した。
がりがりがり。ばきっ
それがどうやら蓄えの唐黍を丸噛りしているらしい。硬い芯を食いちぎってはかみ砕く音がはっきりと聞こえた。何者であるかはともかく、ことによれば熊などよりも遥かに質の悪いものであることは間違いない。自分がやるべきは、どうにか気づかれずに外に出て助けを求めることだ。青年は神経質に、こわばる体を転回させ出口を目指してつま先に意識を傾けつつ歩を進める。ほどなく外の光が見えた時、戸口を開けたままにしていたことに心底安堵した。
外に出たら全力で走り、少し離れた隣家に駆け込む。そうしたら事情を話して匿ってもらおう。蓄えを食われるのは痛いが、化け物に襲われるよりはいい。彼奴も、腹が満ちればもう家に用は無いだろう。
いよいよ戸口の前に立ち、いざ駆け出さんとした瞬間だった。
「まぁ待てよ、そんなに急ぐなって♡」
今度こそ肝が潰れた。何も気配のない背後には唐黍を齧っていたであろう者が音もなく
立ち、今や青年の肩に顎を乗せ腕を絡めている。耳元で囁やかれたのは、どこか楽し気な甘やかさのある声だった。
「悪かったな、小腹がすいたもんで、ちょっとつまませてもらったよ。別にあんたを喰ってやろうってつもりじゃないさ。」
謝罪の言葉はしかし、もはや耳に入ってはいない。全身が竦み、あらゆる所に滴り落ちそうなほど汗が流れている。青年は最後の気力を腹に込めた。ありったけ叫べば、もしも誰かが近くに居たならばその声が届くかもしれない。
口を開け、一息を吸い込んだ時。
ぱんっ
乾いた放電音が手を打つように鳴った。
刹那、下腹部に熱が集まり、性器が怒張した。同時に脳髄が蒸発するような戦慄が全身を覆い、その一瞬で青年は射精した。夜ごとの自慰などとは違う、だくだくと噴出する白濁がすぐに褌から零れ、ぼたぼたと足元に落ちて溜まりを作った。
「うぅ・・あっがっ・・・・・」
はちきれそうに膨張した肉棒が脈動し、新たに精を吐き出すたび全身が跳ね上がる。
その度全身を貫くのは恐らくは快感であった。しかし、あまりに暴力的に過ぎたそれは
意識を焼く炎であった。恐怖に竦んでいたはずの体が今は絶頂に震え、息を深く吸い込むこともままならなかった。もう叫ぶことは叶わない。
「おっ、なんだなんだぁ?溜め込んでるじゃねぇか♡ ん~?」
耳元でにやついた声が囁く。
「ずいぶんと女日照りみてぇだな。いいぜいいぜ、出るだけどんどん出しちまえよな。」
女はするりと体を動かし、青年の下腹部の前に回り込んでしゃがんだ。後ろから抱きとめる腕から放たれた青年はしかし、痙攣する脚では立ち続けることが出来なかった。
ようやく射精が収まり、虚脱感に襲われて意識さえ遠のくように感じられる。辛うじて腕を上げて戸口の縁を握り体の支えとするのが精一杯であった。前方から女が股を割り、青年の両脚を挟む。がっくりと項垂れた時、己を見上げる顔と目があった。青年はこの時
初めて己を襲った女の容貌を正面から目にした。
獣の耳と、ケダモノ染みた目つき。野生的だが端正な顔立ち。にっかりと笑う口から覗く鋭い犬歯はどこか、鼠を咥えるイタチを思わせた。その顔が、淫欲を目に光らせて見上げていた。
「折角だ、こっちのほうも味見させてもらうぜ?」
言うや、着物の裾に手を潜らせ、あっという間に褌を剥ぎ取ってしまった。布の締め付けから解放された陰茎が外気に曝された刺激にびくりとし、また少し、先端から精をこぼした。
「へへっ」
褌は野良仕事の汗にじっとり濡れ、たった今吐き出したモノを受け止めて表側にまでにじみを作っていた。その裏側が布地の見えないほど、べったり白濁に塗れている様を見て女は頬を緩ませる。
「どーれ、・・・あむっ」
舌を突き出し、褌に顔面を押し当てる。
ずっずずっ・・・にちゃっずずぅーーーーっ
下品な水音を立てながら、女は布をしゃぶる。首を振り、舌で舐ぶり、歯でしごき、含まれるあらゆる体液を全て啜りとる。少しづつ冷えていく頭で、青年はその様を呆然と見つめていた。
「ぷぁ。こりゃあ良い。ほかのメスの匂いがしねぇ。ツイてるな。」
顔中を汚した女は唇を舐めずりながら褌を用済みとばかりに放り投げて言った。酒に酔ったようにとろんとした目で、目の前の肉棒を見つめている。
「と、なりゃぁ、だ。・・・もご」
さっきよりも大きく口を開くと、何の躊躇もなく肉棒を咥えた。
「ふっ・・・ふっ・・・」
口内は熱く、舌先と唇が裏筋と鈴口を責め立てる。次いで、女の指がだらりと弛緩した玉袋を握り、中のふぐりを指先で転がした。青年は腰を震わせながら浅く速い呼吸を繰り返し、目を閉じてただされるがままであった。その上に、
ぱちぱちっ
女が顔を上下させると口内でくぐもった放電音が聞こえ、口淫では有りえない鋭い快感が差し込まれた。しかし、
「んぅぅう・・・」
口内で一物を弄りながらも不満の色が女の目に浮かんだ。
「(なんでぇ、イマイチ反応が薄いな・・・つまんねぇ)」
先ほどの異常な射精は人間の身には刺激が過ぎた。いくら快感を与えられても、次の射精にはまだしばらくの時間が必要であった。とはいえ、魔性の責めがいずれは絶頂に導いただろう。ところが。
「(ようし、キツイやつ一発いくぞ、覚悟しろよ)・・・ぐぽっ」
女の気は短かった。一気に根元まで飲み込むと、長い舌をぴったりと肉棒の裏に
当てがう。そして掌で玉袋を包み込み五指で左右のふぐりを挟んだ。
「・・・・?」
不意に摩擦が止まり、青年は目を開いた。その時見えたのは、女の髪先が青白く光り、
ちりちりと音を立てている様だった。次に何が起きるのか、直感で理解できた。
「まっ待って・・・やっやだやだやだやだy」
さっきの絶頂にもう一度でも襲われたら、自分の頭は壊れてしまうかもしれない。本能が鳴らす警鐘を子供のように訴えた刹那。
ばちぃぃっ!!!
「か・・・はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
先よりも野太い音が炸裂し、瞬時にまた大量の精が噴出した。魂まで引きずり出されるような快感は意識を焼き切り、青年の視界は暗転した。
ごくっ・・・ごくっ・・・ごくん。
戸の縁を握ったまま気絶した青年の吐出を受け止め、女は嬉しそうに喉を鳴らした。
晩秋の海はたとえ浅瀬でも、既に泳ぐには適さない。水は冷たく水母の類も多い。そんな海から、魚数匹を掴んだ青年が顔を出した。
「晩飯はこんなもんかね」
体をぬぐいつつ魚籠に獲物を放り、上着一枚を羽織って家路につく。
-ここしばらくの体の変化には驚くばかりだ。第一に、腕力が増した。毎日の水汲みは井戸と水瓶を桶を持って往復していたものが、満杯にした甕を丸ごと、軽々持ち運べるようになった。第二に、動きが素早くなった。以前なら半日掛かりだった外仕事がその半分も経たずに済むようになった。それでいて疲れを感じない。そして何より、体質が強壮になった。元来、青年はそう体の強い質ではなかったが、冷たい海に入り、秋風に吹かれても寒気も無い。今や強健になった体を駆って、海中の魚を素手で捕らえることができる。
「ただいまー」
庭先の井戸で真水を浴び、塩気を落とした青年は帰宅を告げた。しかし返事はしない。構わず進むと、
「んっ、んんっ、ヴッ♡ ングゥッ♡」
はだけた着物の女が布団の上で身を仰け反らせていた。陰部にねじ込んだ二指を
じゅぼじゅぼとせわしなく動かすたび、体表が淡く光り股間から飛沫が噴き出す。
「ん・・・、おぅ、おかえりー」
ようやく気配に気づいた女が、寝転がったまま、淫水でべたついた掌を青年に向けて
振った。
「どうよ、漁のほうは」
「うん、まあぼちぼち。明日ぐらいまでは足りるかな?今日はもう飯にするから、ちょっと待っててな。」
魚籠を片手に台所に向かおうと背を向けた時、両肩に腕がしなだれかかり歩みを
止められた。
「おいおい待てよ、見てただろ?留守の間一人寂しく自分を慰めてたってのに、
えらくつれないじゃねぇか、旦那様♡」
あの日の出会いの後。女は青年の家に居付いてしまった。のみならず、今や自分を嫁と
言い張る始末である。曰く、精の味が気に入った、などと青年の理解の及ばないことを言っている。女は、自分を雷獣、と名乗った。これまでは気の向くままに生きてきて、
適当に男を襲ったりもしていたらしい。だが大抵は、他の女と付き合いのある者だった
そうで、女の匂いが全くしない青年を自分の牡にすることに決めたそうだ。
・・・初めの何日かは、記憶が曖昧である。放精の後、気が付くと寝床にいたが目覚めると同時に抗弁の余地もなく犯されたのだ。また意識を飛ばし、目覚めてはまた犯され失神し、という時間がどれだけあったろうか。ややあって不思議なことに、だんだんと意識を保てるようになり、ようやく寝床から解放された時はなにか生まれ変わったような心持ちさえあった。
実際に、見違えるようになった体の変化に気づいてなお驚いたものである。
女は、普段あまり働かない。気まぐれに外に出ては、木の実や野草、小魚等なにがしかの食物を持っては来るが、大概今のように股間をまさぐりつつ、ぶらぶらしている。当初、もう1人分の食い扶持をどう支えたものかと頭を抱えたが、体が良く動くようになったことで、幸いにも生活は成り立った。いや、以前より暮らし向きは楽になっていた。
顔を合わせずとも、背後から熱気を感じる。一呼吸おいて、言うだけは行ってみる。
「お雷・・・先に飯にしない?」
「やだね。おら四の五の言ってねぇでさっさとマラ出せや。だいたいバッキバキに
おっ勃てといて何がメシだってんだよ。」
褌を解きながら答えるお雷-青年は雷獣の女をそのように呼んだ-に、それ以上反言できなかった。言う通りであったのだ。痴態を見せつけられ、言葉は平静を装ってはみたが体は否応もなく反応していた。抱き止められ、背中に押し当てられた胸の柔らかさは追い打ちとなって青年の肉欲を掻き立てた。一物は既に前袋の中ではち切れそうになっている。
「そらっ・・・よっと!」
裸に剥いた青年を布団に投げ、間髪入れずにお雷は上に馬乗りになる。布地がたっぷり含んだお雷の淫臭が鼻腔を満たした。自身も上着を脱ぎ捨てて股を開くと、下腹部に張り付くほど怒張した肉棒を持ち上げて掌のぬめりをまとわりつかせる。既に臨戦態勢のそれは指先のかすかな摩擦にもひくついて鈴口から先走りを垂らした。
「んっ・・・」
お雷が腰を浮かせ、先端を秘裂にあてがい、そのまま流れるように腰を根元まで沈めた。
ぬるりと音もなく飲み込まれた肉棒が閉じた膣肉を裂き進み、ひりつく刺激に声が漏れる。
「ふーーーーーーー、ふーーーーーーーー、」
両手を下につき、青年を見下ろす顔はすっかり上気して荒い息が続く。その眼は黄色く光り、正に獲物を喰らおうとする意志がありありと浮かんでいる。にやりと口を開き、生暖かい息を漏らすとつま先に力を込め、腰を跳ねさせ始めた。
ずんっずんっずん、ずっずんっぐじゅ ずんっ
肉の擦れる音と共に肉壁が、入口の襞が、陰茎を隈なく扱き、同時に細かな電流に責められる。
「あっ♡あっ♡アハぁ♡たまんねーな、やっぱしこれだよな♡」
目を細め、だらしなく開いた口から唾液を垂らしながら、お雷は一心不乱に腰を振る。
青年は激しい抽出にあっという間に絶頂に達せられた。
「い・・・くっ・・・・・!」
その瞬間を逃さず、腰を深々と落としたお雷に青年は大量の精汁を噴き込んだ。密着した肉の狭間、両者の陰毛で泡立てられた淫汁に溢れた精液が混ざった。
焼きつくような絶頂感が引いて意識が清明になるにつれ、青年は奇妙な感覚を覚えた。
いつもなら、この絶頂でぐったり疲れていたはずなのに、今日はまだ耐えている。
むしろ・・・「物足りない」。
組み敷かれ、一方的に腰を振られ、そのまま果てるのは絶頂に浸るには楽でいい。
だがいささか、満たされないものがあるようだ。
ぼんやりと見上げると、下の口で受け止めた精を味わう恍惚の顔が見えた。その瞬間、
青年は己の腹の中で獣が吼えるのを聞いた。
犯れ。目の前の牝を、犯せ!
そう、満たされていないのは、牝を己のモノにしたという実感。牡の本能が、刺激が足らぬと鳴いていた。それを自覚した途端、今までただ早鐘のようだった心臓がゆっくりと、しかし一段低い音で拍動する。全身に劣情を孕んだ血液が巡り、肉棒は抜かれぬまま再度硬さを取り戻した。
「お雷・・・続き、やるよ?」
「ん・・・、ふぇっ!?」
青年が体を捻ると、虚を突かれたお雷はごろりと横倒れになり、そのまま上下を入れ替えられた。
「おい、どうしたよ?いいんだぜ、もうちょっとだけ休んでても」
「うるさいよ。」
珍しく労わるような声を一蹴し、青年は自分から腰をふる。
ぐぽっ ずぶ ずぶぶ
自身の体重を掛けることで、より強く肉棒が膣肉に押し当てられ抜き差しのたび激しい快感が走った。
「・・・あははっ、何だよ・・・ひっ♡・・・いきなりらしくなったじゃねぇか。
それでこそだぜ、旦那様♡・・・きゃっう♡、ぅあっ♡」
強まった刺激に嬌声を立てる。突き上げるたび小刻みに肢体が震え、先ほどより体が悦んでいることを教えた。力関係の微妙な変化に、なにやら嬉し気であったが、すぐ余裕の
ない喘ぎに変えられた。
ばちっ!ばちっ!ばちっ!ばちっ!
肉棒を抜ける寸前まで引いては根元まで一気に押し込む。叩きつけるような激しい抽出が
膣内をほじくった。これまで経験のない「犯される」感覚と快感にお雷はカチカチを歯を鳴らし、青年に両の手足を絡めて縋りついた。
「い、ひっ、あっ、あっ、んあぁぁーーーーーーっ」
どくっ じゅっ じゅるっ びゅるるーーーーーーっ
お雷が絶頂を吼えると肉壁がぎゅうっと狭まり、強烈な締め付けに青年をも射精に導いた。ふぐりを陰唇に押し付けるほど深く肉棒を埋め、ありったけの精汁を注いだ。
ずるり。うつ伏せのまま肩で息をするお雷から一物を引き抜くと奥までその形にぱっくり開いた陰門から栓を抜いたように白濁が流れ出した。あれから散々まぐわったが、流石に疲労がのしかかる。
外はもう、夕暮れを超えて夜である。隙間風が火照った体を冷たく撫でた。青年は胡坐に座り、しばし物を想った。
-あれは、自分だったのだろうか?・・・淫気のままに異性と快楽を貪り合った自分は、
本当に自分の知る男なのだろうか?
考えても答えは出ない。おもむろに隣のお雷をみる。
尻を突き上げ、露わになった秘部から淫汁を滴らせているあられもない姿。目にした途端に先ほどまでの行為が脳裏をよぎり、渦巻く想いを洗い流した。嬌声、絶頂、咆哮。
一時萎えた肉棒に再び血が集まっていく。
・・・どうでもいい。もっと、もっと感じたい。焦げるような絶頂にもっと浸りたい。
尻を鷲掴み、青年は屹立を再び肉穴につきたてた。
「んひぃっ!?」
耳と尾をびくりと動かし、お雷が仰け反る。
「・・・おい、まだへばってねぇのかよ!?・・・いいぜ、とことんつきあってやらぁ。そのかわり、最っ高の刺激を刻み込めよな!?」
空の上では冬の風が連れて来た灰色の雲が、何時かのように低く雷鳴を鳴らし始めた。
しかしその音は、もう青年の耳に届きはしなかった。
「・・・今年ももう秋は終わりかね」
片目を開けて独りつぶやく。
ジパングは大陸とは比ぶべくもない小さな島国である。しかし特異な地理条件が
多様な気候を生み出す土地であった。雷鳴一つを挙げても、東の海岸線では夏ごろに
入道雲が雨と共に連れてくるものと解されている。一方、西の海岸線では冬の初め、
降雪の予示として受け取られる。ために、雪国の住人は「雪おろし」と呼び季節の移りに身構えるのだ。
青年は昼食後のひと時を布団にくるまって過ごしていた。しかし屋根の上に冬の気配を
感じ、何に急かされたわけでもなく午睡を打ち切ることにした。
「はいはい、午後の仕事にかかりますよ、と。」
小さな港町の隅、この青年は二十に満たないながらも一人で暮らしていた。
板張りの家と、小さな畑のみが財産であった。磯にほど近くの畑に出れば馴染みの海が
そこに見えた。
薄暗い日であった。風は然程もなく、海面には小波がいくらか見えるばかり。
日の差さない空を映してやはり鈍色である。青年は一つ伸びをして唐黍の収穫を始めた。
秋獲りの唐黍の残りを手に取りつつ青年はぼんやりと冬のことを考えた。
-冬のよい点は一つ。食物の腐敗が遅いことである。
-冬のよくない点はいくらでも。最大は、食物に乏しいことである。
それでも、港町はまだ良い。冬は冬で獲れる魚はあるのだから。内陸などは秋口までの
蓄えがその冬の命運をそのまま決めてしまうのだ。かつて両親はもっと山のほうに住んでいたと生前に聞いた。どうにも喰い詰めて、近場の港町に居を移したのだと。
「冬でも菜物が育つ部屋があるって、ほんとかな?」
近頃聞いた話。曰く、年中暖かに保った部屋の中で光を与え、菜を、花を、育てるのだと。そういう術が都の方にあると言う。
「いつかこの貧乏人にもそんなことができるのかな」
半ば期待なく言う。ここ何年か都を中心に得体のしれない、それでいて夢のような術が
多く顕れているらしいと人から聞く。中には妖怪の仕業じゃと恐れる者もあるのだとか。しかし青年は別段の恐怖を抱いていなかった。
このジパングでは、それこそいつの世でも妖絡みの話は尽きない。どこそこの何某は
山姥に育てられた、誰彼の飼う猫が人の身を得て飼い主を誑かした、そんな話は幼子も知っている。実際のところ孤島の中で多くの神性を祀る風俗を通じ、超常の者たちへの
近しさは大陸のそれとは違っているのだろう。
ただ青年の平常心はそのような洞察に依ってはいなかった。ただ単にわが身に関わりなしという無関心が根本である。華やかな物は全て都の中、侘しい集落にそんな事は起こるまい、と決めつけていた。
「んー?」
今日の様子は何か妙である。このような空模様は、岩を引きずるような唸りをさせつつ
まばらに明滅するのが普通であるところ、今日は異様に明滅が多い。見上げた空は十も数えきらぬ間に四度は瞬いた。
時折の響きの他は音もなく、薄暗い午後とは言え辺りは静まっている。青年は何か心細いような、腹の底にひやりとしたものを感じた。
幸い半刻もかからず唐黍はあらかた獲り終えた。幾らかの残りはまた次で良いだろう。
こんな日はさっさと夕飯を食べて寝てしまえば良いんだ。
「いっ・・・!」
落雷の轟音が響いた。鞭打つような甲高い音である。雷雲が己の真上にあることの証で
あり、取り急ぎ身を隠すべきであった。
「これは危ない・・・」
青年は焦り、唐黍の籠を担ぐと小走りで帰路についた。
「ふーーっ」
家前に走り込み、息を吐く。思いがけない運動に汗ばんだ体に秋風が心地よく、籠を下して土間を越えればもう雷の恐怖は喉元を過ぎている。さりとて今日はもう仕事をする気にもなれなかったので、先に手を洗おうと台所に近づいた時だった。
がりがり。ばりばりばり。
青年の体表が泡立ち、固まった背筋が肩を持ち上げる。何かが、台所に、数歩先にいる。
犬や猫だろうか、猪だろうか、まさか・・・熊だろうか。何であれ確かめねばならない。
もしも熊などであったなら、大事である。急いで周囲に知らせ、追いやるなり殺すなり
する準備を始めるべきだ。壁の縁に身を寄せ、そろりと台所を見やった青年は思わぬものを見た。
女である。いや、「女のようなモノ」である。
少し前かがみではあったが身の丈はおよそ自分と同じぐらい。異様に丈の短い着物を着ているようで、太腿の下は足元の足袋まで露わであった。
・・・もしもそれだけであったなら或いは気の触れた人間、で済ませられたかも
しれない。しかし、頭上に突き出している獣の耳と思しきものと先端に淡い光を帯びて
僅かに持ち上がる髪がただ人でないことを告げている。青年は目の前の女が人間ではないと理解した。
がりがりがり。ばきっ
それがどうやら蓄えの唐黍を丸噛りしているらしい。硬い芯を食いちぎってはかみ砕く音がはっきりと聞こえた。何者であるかはともかく、ことによれば熊などよりも遥かに質の悪いものであることは間違いない。自分がやるべきは、どうにか気づかれずに外に出て助けを求めることだ。青年は神経質に、こわばる体を転回させ出口を目指してつま先に意識を傾けつつ歩を進める。ほどなく外の光が見えた時、戸口を開けたままにしていたことに心底安堵した。
外に出たら全力で走り、少し離れた隣家に駆け込む。そうしたら事情を話して匿ってもらおう。蓄えを食われるのは痛いが、化け物に襲われるよりはいい。彼奴も、腹が満ちればもう家に用は無いだろう。
いよいよ戸口の前に立ち、いざ駆け出さんとした瞬間だった。
「まぁ待てよ、そんなに急ぐなって♡」
今度こそ肝が潰れた。何も気配のない背後には唐黍を齧っていたであろう者が音もなく
立ち、今や青年の肩に顎を乗せ腕を絡めている。耳元で囁やかれたのは、どこか楽し気な甘やかさのある声だった。
「悪かったな、小腹がすいたもんで、ちょっとつまませてもらったよ。別にあんたを喰ってやろうってつもりじゃないさ。」
謝罪の言葉はしかし、もはや耳に入ってはいない。全身が竦み、あらゆる所に滴り落ちそうなほど汗が流れている。青年は最後の気力を腹に込めた。ありったけ叫べば、もしも誰かが近くに居たならばその声が届くかもしれない。
口を開け、一息を吸い込んだ時。
ぱんっ
乾いた放電音が手を打つように鳴った。
刹那、下腹部に熱が集まり、性器が怒張した。同時に脳髄が蒸発するような戦慄が全身を覆い、その一瞬で青年は射精した。夜ごとの自慰などとは違う、だくだくと噴出する白濁がすぐに褌から零れ、ぼたぼたと足元に落ちて溜まりを作った。
「うぅ・・あっがっ・・・・・」
はちきれそうに膨張した肉棒が脈動し、新たに精を吐き出すたび全身が跳ね上がる。
その度全身を貫くのは恐らくは快感であった。しかし、あまりに暴力的に過ぎたそれは
意識を焼く炎であった。恐怖に竦んでいたはずの体が今は絶頂に震え、息を深く吸い込むこともままならなかった。もう叫ぶことは叶わない。
「おっ、なんだなんだぁ?溜め込んでるじゃねぇか♡ ん~?」
耳元でにやついた声が囁く。
「ずいぶんと女日照りみてぇだな。いいぜいいぜ、出るだけどんどん出しちまえよな。」
女はするりと体を動かし、青年の下腹部の前に回り込んでしゃがんだ。後ろから抱きとめる腕から放たれた青年はしかし、痙攣する脚では立ち続けることが出来なかった。
ようやく射精が収まり、虚脱感に襲われて意識さえ遠のくように感じられる。辛うじて腕を上げて戸口の縁を握り体の支えとするのが精一杯であった。前方から女が股を割り、青年の両脚を挟む。がっくりと項垂れた時、己を見上げる顔と目があった。青年はこの時
初めて己を襲った女の容貌を正面から目にした。
獣の耳と、ケダモノ染みた目つき。野生的だが端正な顔立ち。にっかりと笑う口から覗く鋭い犬歯はどこか、鼠を咥えるイタチを思わせた。その顔が、淫欲を目に光らせて見上げていた。
「折角だ、こっちのほうも味見させてもらうぜ?」
言うや、着物の裾に手を潜らせ、あっという間に褌を剥ぎ取ってしまった。布の締め付けから解放された陰茎が外気に曝された刺激にびくりとし、また少し、先端から精をこぼした。
「へへっ」
褌は野良仕事の汗にじっとり濡れ、たった今吐き出したモノを受け止めて表側にまでにじみを作っていた。その裏側が布地の見えないほど、べったり白濁に塗れている様を見て女は頬を緩ませる。
「どーれ、・・・あむっ」
舌を突き出し、褌に顔面を押し当てる。
ずっずずっ・・・にちゃっずずぅーーーーっ
下品な水音を立てながら、女は布をしゃぶる。首を振り、舌で舐ぶり、歯でしごき、含まれるあらゆる体液を全て啜りとる。少しづつ冷えていく頭で、青年はその様を呆然と見つめていた。
「ぷぁ。こりゃあ良い。ほかのメスの匂いがしねぇ。ツイてるな。」
顔中を汚した女は唇を舐めずりながら褌を用済みとばかりに放り投げて言った。酒に酔ったようにとろんとした目で、目の前の肉棒を見つめている。
「と、なりゃぁ、だ。・・・もご」
さっきよりも大きく口を開くと、何の躊躇もなく肉棒を咥えた。
「ふっ・・・ふっ・・・」
口内は熱く、舌先と唇が裏筋と鈴口を責め立てる。次いで、女の指がだらりと弛緩した玉袋を握り、中のふぐりを指先で転がした。青年は腰を震わせながら浅く速い呼吸を繰り返し、目を閉じてただされるがままであった。その上に、
ぱちぱちっ
女が顔を上下させると口内でくぐもった放電音が聞こえ、口淫では有りえない鋭い快感が差し込まれた。しかし、
「んぅぅう・・・」
口内で一物を弄りながらも不満の色が女の目に浮かんだ。
「(なんでぇ、イマイチ反応が薄いな・・・つまんねぇ)」
先ほどの異常な射精は人間の身には刺激が過ぎた。いくら快感を与えられても、次の射精にはまだしばらくの時間が必要であった。とはいえ、魔性の責めがいずれは絶頂に導いただろう。ところが。
「(ようし、キツイやつ一発いくぞ、覚悟しろよ)・・・ぐぽっ」
女の気は短かった。一気に根元まで飲み込むと、長い舌をぴったりと肉棒の裏に
当てがう。そして掌で玉袋を包み込み五指で左右のふぐりを挟んだ。
「・・・・?」
不意に摩擦が止まり、青年は目を開いた。その時見えたのは、女の髪先が青白く光り、
ちりちりと音を立てている様だった。次に何が起きるのか、直感で理解できた。
「まっ待って・・・やっやだやだやだやだy」
さっきの絶頂にもう一度でも襲われたら、自分の頭は壊れてしまうかもしれない。本能が鳴らす警鐘を子供のように訴えた刹那。
ばちぃぃっ!!!
「か・・・はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
先よりも野太い音が炸裂し、瞬時にまた大量の精が噴出した。魂まで引きずり出されるような快感は意識を焼き切り、青年の視界は暗転した。
ごくっ・・・ごくっ・・・ごくん。
戸の縁を握ったまま気絶した青年の吐出を受け止め、女は嬉しそうに喉を鳴らした。
晩秋の海はたとえ浅瀬でも、既に泳ぐには適さない。水は冷たく水母の類も多い。そんな海から、魚数匹を掴んだ青年が顔を出した。
「晩飯はこんなもんかね」
体をぬぐいつつ魚籠に獲物を放り、上着一枚を羽織って家路につく。
-ここしばらくの体の変化には驚くばかりだ。第一に、腕力が増した。毎日の水汲みは井戸と水瓶を桶を持って往復していたものが、満杯にした甕を丸ごと、軽々持ち運べるようになった。第二に、動きが素早くなった。以前なら半日掛かりだった外仕事がその半分も経たずに済むようになった。それでいて疲れを感じない。そして何より、体質が強壮になった。元来、青年はそう体の強い質ではなかったが、冷たい海に入り、秋風に吹かれても寒気も無い。今や強健になった体を駆って、海中の魚を素手で捕らえることができる。
「ただいまー」
庭先の井戸で真水を浴び、塩気を落とした青年は帰宅を告げた。しかし返事はしない。構わず進むと、
「んっ、んんっ、ヴッ♡ ングゥッ♡」
はだけた着物の女が布団の上で身を仰け反らせていた。陰部にねじ込んだ二指を
じゅぼじゅぼとせわしなく動かすたび、体表が淡く光り股間から飛沫が噴き出す。
「ん・・・、おぅ、おかえりー」
ようやく気配に気づいた女が、寝転がったまま、淫水でべたついた掌を青年に向けて
振った。
「どうよ、漁のほうは」
「うん、まあぼちぼち。明日ぐらいまでは足りるかな?今日はもう飯にするから、ちょっと待っててな。」
魚籠を片手に台所に向かおうと背を向けた時、両肩に腕がしなだれかかり歩みを
止められた。
「おいおい待てよ、見てただろ?留守の間一人寂しく自分を慰めてたってのに、
えらくつれないじゃねぇか、旦那様♡」
あの日の出会いの後。女は青年の家に居付いてしまった。のみならず、今や自分を嫁と
言い張る始末である。曰く、精の味が気に入った、などと青年の理解の及ばないことを言っている。女は、自分を雷獣、と名乗った。これまでは気の向くままに生きてきて、
適当に男を襲ったりもしていたらしい。だが大抵は、他の女と付き合いのある者だった
そうで、女の匂いが全くしない青年を自分の牡にすることに決めたそうだ。
・・・初めの何日かは、記憶が曖昧である。放精の後、気が付くと寝床にいたが目覚めると同時に抗弁の余地もなく犯されたのだ。また意識を飛ばし、目覚めてはまた犯され失神し、という時間がどれだけあったろうか。ややあって不思議なことに、だんだんと意識を保てるようになり、ようやく寝床から解放された時はなにか生まれ変わったような心持ちさえあった。
実際に、見違えるようになった体の変化に気づいてなお驚いたものである。
女は、普段あまり働かない。気まぐれに外に出ては、木の実や野草、小魚等なにがしかの食物を持っては来るが、大概今のように股間をまさぐりつつ、ぶらぶらしている。当初、もう1人分の食い扶持をどう支えたものかと頭を抱えたが、体が良く動くようになったことで、幸いにも生活は成り立った。いや、以前より暮らし向きは楽になっていた。
顔を合わせずとも、背後から熱気を感じる。一呼吸おいて、言うだけは行ってみる。
「お雷・・・先に飯にしない?」
「やだね。おら四の五の言ってねぇでさっさとマラ出せや。だいたいバッキバキに
おっ勃てといて何がメシだってんだよ。」
褌を解きながら答えるお雷-青年は雷獣の女をそのように呼んだ-に、それ以上反言できなかった。言う通りであったのだ。痴態を見せつけられ、言葉は平静を装ってはみたが体は否応もなく反応していた。抱き止められ、背中に押し当てられた胸の柔らかさは追い打ちとなって青年の肉欲を掻き立てた。一物は既に前袋の中ではち切れそうになっている。
「そらっ・・・よっと!」
裸に剥いた青年を布団に投げ、間髪入れずにお雷は上に馬乗りになる。布地がたっぷり含んだお雷の淫臭が鼻腔を満たした。自身も上着を脱ぎ捨てて股を開くと、下腹部に張り付くほど怒張した肉棒を持ち上げて掌のぬめりをまとわりつかせる。既に臨戦態勢のそれは指先のかすかな摩擦にもひくついて鈴口から先走りを垂らした。
「んっ・・・」
お雷が腰を浮かせ、先端を秘裂にあてがい、そのまま流れるように腰を根元まで沈めた。
ぬるりと音もなく飲み込まれた肉棒が閉じた膣肉を裂き進み、ひりつく刺激に声が漏れる。
「ふーーーーーーー、ふーーーーーーーー、」
両手を下につき、青年を見下ろす顔はすっかり上気して荒い息が続く。その眼は黄色く光り、正に獲物を喰らおうとする意志がありありと浮かんでいる。にやりと口を開き、生暖かい息を漏らすとつま先に力を込め、腰を跳ねさせ始めた。
ずんっずんっずん、ずっずんっぐじゅ ずんっ
肉の擦れる音と共に肉壁が、入口の襞が、陰茎を隈なく扱き、同時に細かな電流に責められる。
「あっ♡あっ♡アハぁ♡たまんねーな、やっぱしこれだよな♡」
目を細め、だらしなく開いた口から唾液を垂らしながら、お雷は一心不乱に腰を振る。
青年は激しい抽出にあっという間に絶頂に達せられた。
「い・・・くっ・・・・・!」
その瞬間を逃さず、腰を深々と落としたお雷に青年は大量の精汁を噴き込んだ。密着した肉の狭間、両者の陰毛で泡立てられた淫汁に溢れた精液が混ざった。
焼きつくような絶頂感が引いて意識が清明になるにつれ、青年は奇妙な感覚を覚えた。
いつもなら、この絶頂でぐったり疲れていたはずなのに、今日はまだ耐えている。
むしろ・・・「物足りない」。
組み敷かれ、一方的に腰を振られ、そのまま果てるのは絶頂に浸るには楽でいい。
だがいささか、満たされないものがあるようだ。
ぼんやりと見上げると、下の口で受け止めた精を味わう恍惚の顔が見えた。その瞬間、
青年は己の腹の中で獣が吼えるのを聞いた。
犯れ。目の前の牝を、犯せ!
そう、満たされていないのは、牝を己のモノにしたという実感。牡の本能が、刺激が足らぬと鳴いていた。それを自覚した途端、今までただ早鐘のようだった心臓がゆっくりと、しかし一段低い音で拍動する。全身に劣情を孕んだ血液が巡り、肉棒は抜かれぬまま再度硬さを取り戻した。
「お雷・・・続き、やるよ?」
「ん・・・、ふぇっ!?」
青年が体を捻ると、虚を突かれたお雷はごろりと横倒れになり、そのまま上下を入れ替えられた。
「おい、どうしたよ?いいんだぜ、もうちょっとだけ休んでても」
「うるさいよ。」
珍しく労わるような声を一蹴し、青年は自分から腰をふる。
ぐぽっ ずぶ ずぶぶ
自身の体重を掛けることで、より強く肉棒が膣肉に押し当てられ抜き差しのたび激しい快感が走った。
「・・・あははっ、何だよ・・・ひっ♡・・・いきなりらしくなったじゃねぇか。
それでこそだぜ、旦那様♡・・・きゃっう♡、ぅあっ♡」
強まった刺激に嬌声を立てる。突き上げるたび小刻みに肢体が震え、先ほどより体が悦んでいることを教えた。力関係の微妙な変化に、なにやら嬉し気であったが、すぐ余裕の
ない喘ぎに変えられた。
ばちっ!ばちっ!ばちっ!ばちっ!
肉棒を抜ける寸前まで引いては根元まで一気に押し込む。叩きつけるような激しい抽出が
膣内をほじくった。これまで経験のない「犯される」感覚と快感にお雷はカチカチを歯を鳴らし、青年に両の手足を絡めて縋りついた。
「い、ひっ、あっ、あっ、んあぁぁーーーーーーっ」
どくっ じゅっ じゅるっ びゅるるーーーーーーっ
お雷が絶頂を吼えると肉壁がぎゅうっと狭まり、強烈な締め付けに青年をも射精に導いた。ふぐりを陰唇に押し付けるほど深く肉棒を埋め、ありったけの精汁を注いだ。
ずるり。うつ伏せのまま肩で息をするお雷から一物を引き抜くと奥までその形にぱっくり開いた陰門から栓を抜いたように白濁が流れ出した。あれから散々まぐわったが、流石に疲労がのしかかる。
外はもう、夕暮れを超えて夜である。隙間風が火照った体を冷たく撫でた。青年は胡坐に座り、しばし物を想った。
-あれは、自分だったのだろうか?・・・淫気のままに異性と快楽を貪り合った自分は、
本当に自分の知る男なのだろうか?
考えても答えは出ない。おもむろに隣のお雷をみる。
尻を突き上げ、露わになった秘部から淫汁を滴らせているあられもない姿。目にした途端に先ほどまでの行為が脳裏をよぎり、渦巻く想いを洗い流した。嬌声、絶頂、咆哮。
一時萎えた肉棒に再び血が集まっていく。
・・・どうでもいい。もっと、もっと感じたい。焦げるような絶頂にもっと浸りたい。
尻を鷲掴み、青年は屹立を再び肉穴につきたてた。
「んひぃっ!?」
耳と尾をびくりと動かし、お雷が仰け反る。
「・・・おい、まだへばってねぇのかよ!?・・・いいぜ、とことんつきあってやらぁ。そのかわり、最っ高の刺激を刻み込めよな!?」
空の上では冬の風が連れて来た灰色の雲が、何時かのように低く雷鳴を鳴らし始めた。
しかしその音は、もう青年の耳に届きはしなかった。
19/05/01 00:00更新 / ラッカシャ