読切小説
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オーガとの午後
 休日の昼下がり、一人で部屋にいる所にチャイムが鳴った。俺の部屋に来る奴は限られる。新聞の勧誘か、公共放送の集金、あとは鬼女だ。
 俺は、玄関ドアの覗き穴から外をのぞく。緑色の巨体を持った若い女が立っている。黒いタンクトップにデニムのホットパンツ姿であり、筋肉の発達した体をむき出しにしている。鬼女が遊びに来たのだ。俺は、鍵を開けてドアを開く。
 緑色の鬼女は、俺を見るとあけっぴろげな笑いを浮かべる。土産のラム酒を突き出す。そして、大きな手の平で俺の肩を親しげに叩いた。

 俺は、ベアテをクッションに座らせた。ベアテはどっかりと座り込み、タンクトップをつかんで空気を入れる。ベアテの豊かな胸が、タンクトップの隙間から見える。ベアテの肌には汗が浮かび、緑色の肌は光っている。
 俺は、冷房を入れて窓を閉めた。ラム酒とコーラ、ライム果汁、グラスと氷を入れたアイス・ペールをベアテの所に運ぶ。トングでグラスに氷を入れる。俺は、ベアテにロックで飲むかコーラで割るか聞く。ベアテの要望に従い、三分の一ほどラム酒を入れ、少しライム果汁を入れる。そして、グラスいっぱいにコーラを入れる。ステアしてベアテに渡す。
 ベアテは、勢いよくキューバ・リブレを飲む。のどを鳴らしながら美味そうに飲む。汗で濡れた喉が動くさまは、たくましさを感じさせる。一気に飲み干すと、ベアテは大きく息を吐く。俺はベアテからグラスを受け取り、二杯目のキューバ・リブレを差し出す。
 俺は、甘酸っぱいキューバ・リブレを飲みながらベアテを見た。身長は二メートル以上あり、肩幅が広く筋肉の発達した体だ。銀色の髪からは、黒い二本の角が突き出ている。肌の所々に、紫色の文様が彫られている。ベアテは人間では無く、オーガと言う魔物の女だ。
 俺は、この魔物女としばしば酒を飲む。俺の部屋で飲むこともあれば、ベアテの部屋で飲むこともある。金に余裕があれば、居酒屋に飲みに行くこともある。俺は、この魔物女とは気楽に飲むことが出来るのだ。
 俺は、ベアテの持ってきてくれたラム酒をロックにして口に含む。癖のある甘さが口の中に広がる。プエルトリコ産のゴールド・ラムだ。俺とベアテは、日本産の癖のないラム酒よりも、プエルトリコやジャマイカの癖のあるラム酒の方が好きだ。
 俺とベアテは、ラム酒を飲みながら映画の話をする。俺たちは、古い映画が好きだ。かつて洋画で活躍した役者について話す。
 俺たちは、チャールズ・ブロンソンが好きなことは一致している。あの強い存在感を発する男臭さがいい。お世辞にも整っているとは言えない外見だが、肉体を駆使して行動する男という感じがする。
 ハンフリー・ボガードでは意見が分かれた。俺はかっこいいと思うのだが、ベアテは気どった態度が鼻につくと言うのだ。まあ、確かに気取った態度はとるが、タフな感じがしていいと俺は思う。俺は、ボギーの影響で初春と晩秋はトレンチコートを着ている。そう言えば、俺がトレンチコートを着る事をベアテは気に食わないようだった。
 アラン・ドロンが嫌いなことは一致した。ああいう、いかにもモテそうな男は気に食わない。自分の外見の良さを自覚してひけらかしている様なところは、見ていてイラつく。ただ俺もベアテも、ルネ・クレマン監督の作品そのものは好きだ。
 ベアテは、俺のそばで飲みながら映画の話しを続ける。ベアテからは、甘い匂いが漂ってくる。汗で濡れた女体の匂いだ。ベアテは香水を付けない。ベアテの匂いは、俺の体をうずかせる。
 ベアテの体は肉感的だ。腕や胸に彫られた文様は、ベアテの体を強調する。その体を汗で濡れ光らせ、惜しげもなくさらしている。精悍な顔は整っており、存在感のある体とうまく合っている。ベアテの体は、俺の欲望をかき立てる。
 ベアテは楽しげに笑うと、俺を抱き寄せた。俺が欲情していることに気が付いたようだ。ベアテのたくましく熱い身体が、俺の体を包む。俺は、女肉と汗の匂いを強く感じる。俺は、ベアテを抱き返す。俺のペニスは、すでにそり返っている。
 俺たちは、抱き合いながら互いの体を押し付け合った。

 俺とベアテは口を貪り合う。お互いの口の中に舌を入れてからませ合う。俺はベアテの肉厚の舌を吸い、濃い唾液を飲む。ベアテは俺の口の中を舐めまわし、俺の唾液を貪る。
 俺はベアテの口から離れ、タンクトップの裾を上げる。ブラジャーをずらして、豊かな胸に顔を埋める。汗で濡れた胸に顔を這わせながら、深呼吸をして胸の谷間の匂いを吸う。濃厚な女の体の匂いが、俺の鼻に満ちる。舌を這わせて、胸の感触と味を楽しむ。
 顔を右に移して、ベアテの濡れた腋に舌を這わせる。たちまち濃厚な匂いが鼻を覆い、口の中には濃い味が広がった。俺は、匂いと味を楽しみながら舌を這わせる。ベアテは、くすぐったそうに身をよじりながら笑い声を上げる。
 俺たちは、体を洗わないでセックスすることが多い。俺は、こうしてベアテの体に自分の体を押し付け、匂いをかいでなめ回すことが好きだ。ベアテの体を感じることが出来る。ベアテの存在を確かめることが出来る。そして、自分の存在を確かめることが出来るのだ。
 ベアテは俺を引き離すと、俺のショートパンツとトランクスを脱がす。俺の股間に顔を埋め、俺を見上げながら笑う。そして、俺のペニスに舌を這わせ始めた。亀頭をねっとりと舌で包み、裏筋を上下に舌で愛撫する。「臭いも味も濃いぞ」と笑いながら、俺の陰嚢を口の中に含んで玉をなめ回す。
 ベアテはタンクトップを脱ぎ捨て、ブラジャーを放り投げる。俺のペニスをむき出しになった胸ではさみ込む。胸で上下に激しくしごき上げ、はみ出る亀頭に口を押し付ける。俺のペニスは、胸の谷間の汗とたれ流される唾液でぬめる。
 俺はすぐにも限界が来て、出そうだと呻く。ベアテは俺に笑いかけると、激しい動きで射精を促す。俺のペニスは弾けた。腰の奥から精の放出が起こり、ベアテの口の中に注ぎ込む。ベアテの頬はふくれ上がり、口の端から白濁液が漏れる。ベアテは、喉を鳴らしながら精液を飲み込んでいく。頬をくぼませて俺のペニスを吸い上げ、激しい音を部屋の中に響き渡らせる。
 ベアテは顔を上げ、口を開けて笑う。濃厚な精液の臭いが、熱気と共に吐き出される。ベアテは、舌を伸ばして口の周りの白濁液をなめ回す。ベアテは、再び俺のペニスを音立ててしゃぶり上げる。俺のペニスは、たちまち回復させられた。ベアテは、ホットパンツとショーツを勢いよく脱ぎ捨てる。フローリングの床に横たわり、俺に向かって股を広げる。
 俺は、ベアテの腹筋に顔を押し付けた。きちんと割れて硬い腹筋は、汗で濡れている。俺の顔に強い感触となめらかな感触を与える。俺が腹筋に頬ずりをすると、ベアテは楽しげに笑う。
 俺は、ベアテの下腹部に顔を近づけた。腹筋と太ももの筋肉に囲まれて、銀色の濃い茂みがある。茂みは濡れており、窓からさす日の光で光っている。夏の熱気で蒸らされた三角地帯からは、熱気と共に濃い雌の匂いが立ち上っている。
 茂みに口を付けて舌でかき分けると、濃厚な蜜が俺の顔を濡らす。甘酸っぱい匂いが鼻に充満し、しょっぱい味が口の中に広がる。俺は、肉厚のヴァギナを舌で貪り、奥の泉に口を付けて吸い上げる。ベアテは、体を震わせて喘ぐ。
 俺は、顔を上げて立ち上がった。怪訝そうに見るベアテに、コンドームを取って来ると答える。ベアテは俺の手を強くひき、自分の体の上に引き寄せで抱きしめる。もがく俺に、生でやれと耳元で言う。
 ためらいはあるが、ベアテの体の感触を感じているうちに我慢できなくなる。ベアテの腹筋が、太ももが俺のペニスにこすり付けられる。濡れた茂みとヴァギナが、俺のペニスを愛撫する。
 俺は、茂みをかき分けてヴァギナの中へペニスを埋めた。熱い肉で出来た泉が俺を迎える。俺を奥へと引き込み、濡れた肉で愛撫する。俺はリズムを付けてペニスを動かし、豊かな肉襞を楽しむ。
 俺は、正常位の態勢でベアテの体を貪った。ベアテは大柄だから、俺の顔はベアテの胸に当たる。俺は顔を動かし、左右の胸の感触を、匂いを、味を堪能する。ベアテは筋肉の発達した腕で俺を抱きしめ、俺の頭を愛撫する。
 ベアテの二の腕に顔を押し付けた。筋肉が盛り上がり、硬い感触がする。そのまま腋に顔を埋めてなめ回す。熱気と匂いが俺の顔を覆う。俺の腰に力が入り、奥へと繰り返し突き進む。ベアテは、俺の動きに合わせて腰を動かす。俺とベアテの汗が、体中で混ざり合う。
 俺は、再び絶頂へと突き進む。出そうだと言うと、ベアテはたくましい足で俺の腰と尻を締め付ける。ヴァギナは、俺のペニスを咥え込んで離さない。俺は、中で出すことにためらい、動きを止めようとする。ベアテは激しく腰をゆすり、俺を促す。俺は耐えられない。
 俺のペニスは弾けた。体の奥から精がほとばしる。止めることは出来ない。ベアテの子宮に向かって子種汁が打ち放たれる。俺の腰から頭頂まで快楽が突き抜ける。俺は、声を抑えられない。ベアテも獣じみた声を上げる。俺たちの声は重なり合う。
 俺たちは、痙攣しながら抱きしめあう。ベアテの肉体が、俺の肉体と強く結びついている。俺には離れる事は出来ない。俺は、ベアテを力いっぱい抱きしめていた。

 西側の窓の外に丘が見える。日は、その丘に隠れようとしていた。夕暮れが近づいているのだ。床に寝ころびながら、俺は外を眺める。
 あれから俺たちは、体勢を変えながらセックスを続けた。ベアテが俺の上になってセックスをし、あるいは這いつくばるベアテを後ろから攻めた。お互いが上半身を起こして抱き合いながら交わり合い、そしてベアテの片足を抱えながら交わった。
 辺りには精液と汗、肉の臭いが充満している。俺は、インキュバスとなり精力が強くなった。それで、俺たちは繰り返し交わったのだ。俺は、臭いをかぎながら体の気怠さを楽しんでいた。ベアテは、ヴァギナからあふれ出る白濁液を面白そうに見ていた。
 喉が渇いたので、飲み物を作ろうとする。だが、アイス・ペールの氷はすべて溶けていた。コーラは、出しっぱなしになっているために温くなっている。俺は、冷蔵庫にあるビールを取ってこようとする。だが、疲労のために上手く動けない。
 ベアテは立ち上がり、ビールを取りに行った。ベアテは、俺の部屋のことを良く知っている。戻ってきたベアテは、俺に缶ビールを差し出す。ドイツ産のビールだ。俺とベアテは、日本やアメリカの薄いビールより、ドイツの濃いビールが好きだ。俺たちは、ビールを喉に流し込む。良く冷えた液体が喉を刺激する。俺たちは、そろって大きく息を吐く。
 ベアテは、裸の状態で股を広げながらビールを飲んでいる。ヴァギナは、精液でぬめり光っている。俺は、ベアテの中に出したことを強く実感する。俺の子種汁を中に出したのだ。
 俺は、口を開こうとする。だが、うまく言葉が出てこない。俺は呼吸を整える。ベアテがビールを飲み終わったのを見計らって、俺はベアテに声をかける。
 ベアテは、どうしたと快活に言う。屈託のない笑顔だ。籍を入れないか、俺は声が掠れないように気を付けながら言う。
 ベアテは、虚を突かれたような顔をした。俺が何を言ったのか分からないと言う顔だ。だが、すぐに楽しげに笑う。やっと言ったな。あたしの方から言おうかと思っていたぞ。そう言って満面に笑顔を広げる。
 俺は、籍を入れることを前からベアテに言おうとしていた。だが、ためらいがあった。恋人と夫婦では責任が違う。簡単に言えることでは無い。それも、ベアテの中に出したことで吹っ切れた。
 俺は、ベアテが受け入れてくれたことに安堵する。ただ、「籍を入れないか」だけでは風情が無い気がする。ボギーの様に、気の利いたことが言いたい。俺は言葉を探す。
 眠気が俺を侵食してくる。セックスの疲れと受け入れられた安堵が、俺に眠気をもたらしたのだ。言葉を探す力が失われていく。
 俺は、これ以上言う気を無くした。無理をして気の利いたことを言わなくてもいい気がする。ベアテも望んでいないかもしれない。それにボギーの言葉は、女と別れるときに使う言葉だ。下らないことを言うより、今の心地よさの中で眠りたい。
 俺は横たわり、目をつむった。ベアテは、俺の頭をゆっくりと撫でる。俺は目を開ける。鬼の魔物女は、穏やかな表情で俺を見下ろしていた。俺は、再び目をつむる。大きく、暖かな手が俺を愛撫する。俺の中に安らぎが広がる。
 俺は、鬼女に見守られながら眠りへと沈んで行った。
16/07/02 07:20更新 / 鬼畜軍曹

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