堕落神を信じますか?
カルトだと分かっていながら入ろうとする者は、馬鹿かキチガイだろう。俺は、その馬鹿でキチガイな野郎だ。
何せ、「堕落教団」などと言う名前の宗教団体に加入したのだ。「堕落教」という看板を掛けてあるビルに、「堕落教」のパンフレットを手にして入っていった。通りすがりの人の白い眼を無視して、笑いながら入ったのだ。
なぜ俺がカルトに嬉々として入ったかというと、俺は落ちこぼれだからだ。俺は、ろくな人生を歩んでこなかった。家庭では要領の悪い息子、学校では取り柄のない落ちこぼれ、地域社会では不器用で不恰好なガキだった。友達もいなかったし、当然恋人もいなかった。
大人になったら、俺のザマはさらにひどくなった。会社では使い物にならずに、すぐに辞めさせられる。就職しては失業し、就職してはまた失業する。その繰り返しだ。親が助けてくれなかったら、俺はホームレスになるか餓死していただろう。その親も、俺をほとんど見放している。
俺自身、俺には愛想が尽きた。この下らない人生を終わらせたくなったのだ。とっとと首を吊ってケリを付けたくなった。そんな俺としては、カルトに入って自分の人生を壊しても惜しくないわけだ。もちろん他人の人生など、喜んでぶっ壊してやる。
俺が堕落教団の勧誘を受けたのは、ハローワークからの帰りだ。ハローワークに紹介してもらった所は、すでに五社から不採用通知を受けていた。それでまた新しい会社を紹介してもらったのだ。
俺は、夏の暑さとうまくいかない就職活動にうんざりしながら歩いていた。訳の分からない店やら会社が並ぶ裏通りを、汗をダラダラ流しながら歩いていた。猫耳のカチューシャを付け、メガネをかけメイド服を着た女の子が客引きをしているような界隈だ。俺はぼったくられる金もないので、無視して歩き続けた。
そんな中、一人の女が俺に近づいてきた。また客引きかとうんざりすると、その女のかっこうが尋常ではないことに気が付いた。キリスト教の修道服に似た黒服だが、露出度が高い。胸の谷間が露わとなっており、両足の所が深いスリットとなっている。そのスリットから、黒皮のベルトを巻き付けた太腿が見える。しかも、首や手足に鎖を巻き付けているのだ。
俺は、呆れてその女を見た。新手の風俗店の客引きだろうかと、その女の格好を見て思ったのだ。その若い女は、俺の表情を気に留めない様子で微笑みながら話しかけてきた。
「あなたは堕落神を信じますか?」
俺は、その女をまじまじと見つめた。「神を信じますか?」なら分かる。どこかの宗教の勧誘だろう。だが「堕落神を信じますか?」とは何だ?俺は、聞き間違えたのかと思った。
呆れた事に聞き間違えではなかったのだ。その女は、俺に対して堕落神の教えをしゃべり始めた。俺は女の話を遮って、その場から離れようとした。新手のカルトか風俗かは分からないが、まともに相手をしても仕方がない。その女は俺に取りすがると、強引にパンフレットを押し付けた。俺はうんざりしながらパンフレットを受け取ると、足早にその場から離れた。
パンフレットなどさっさと捨てようと思ったが、面倒臭くて家まで持ってきてしまった。これが俺の堕落の始まりだ。
家に帰ると、ベッドに寝転びながらパンフレットを読んだ。途中までは傾聴に値するものだ。
――今の社会では、過剰な労働と貧困が拡大しています。人々はわずかな金のために、奴隷並みの重労働をしなくてはなりません。日々の生活に休息は少なく、睡眠すらろくに取れない有様です。過重労働を拒否すれば、生活できないほどの貧困が襲い掛かります。今の社会においては、人間は使い捨ての道具です。
この様な事を書いていた。ここまではいい。問題は、この先に書かれている事だ。
――だから堕落神を信仰しましょう。堕落神を信仰すれば、過重な労働から逃れられます。食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求を満たすことができます。同じ神を信じる者があなたをセックス三昧の日々へと導いてくれます。今すぐ堕落神を信じ、ともに食う、寝る、セックスの生活を楽しみましょう。
このパンフレットを読んだら、大抵の人が呆れるだろう。セックス教団の宣伝活動が街中で堂々と行われているのだ。あの扇情的な修道服もどきは、セックス教団の制服であるわけだ。
俺は、パンフレットを俺にくれた女を思い返した。金色の髪と紫色の瞳が目を引く若い美女だ。スタイルは良く、豊かな胸と長い足が目立っていた。その胸と足を惜しげもなくさらしていた。セックス教団の勧誘員としては、うってつけの女だろう。
あるいは宗教を装った風俗かもしれない。あの女は風俗嬢かもしれない。パンフレットを配っていた場所が場所だけに、その可能性はある。
馬鹿馬鹿しいと思いながらも、これはこれでいいと俺は思った。まともな宗教など、信じる価値のないものばかりだ。宗教は、弱者を救わない。宗教は、元々は等価交換の原則で成り立っていた。神に与える事が出来る場合に救われる。与える事の出来ない弱者は、救われないのだ。ギリシア神話を読めば、その事は分かるだろう。
キリスト教は、等価交換の原則をいったん否定した。全ての者に対する「愛」を唱えた。だが、教会組織が整えられるにつれて、信者に見返りを要求し始めた。信者の金や労働力がなければ、教会組織は維持出来ないからだ。教会組織はエリーティズムに基づいて維持され、強者を救うための組織となった。「神は自ら助ける者を助ける」という自己責任原則を振りかざすことにより、弱者を見殺しにすることが正当化された。
キリスト教だけではない。他の宗教も似た様なものだ。宗教の歴史について少し調べると、それは分かるだろう。宗教団体が必要としているのは、金や能力のある信者なのだ。俺のような落ちこぼれは、宗教団体にとっては邪魔なのだ。俺にとっても、宗教は無価値なものだ。
結局、宗教は企業と同じだ。有能な者だけを必要とし、無能者は必要ないのだ。宗教の唱える弱者救済など、建前に過ぎない。どこぞのブラック企業は、従業員を低賃金で酷使して稼いだ金を、発展途上国の開発の為に寄付した。宗教団体も似た様な事をしている。企業も宗教団体も、俺に金や能力を要求する。俺を救う気は無い。
まっとうな宗教が俺を救わないのならば、カルトに入って暴れてみるのも一興だ。カルトも金や能力を要求するだろうが、俺でも自爆テロくらいは出来るかもしれない。しょせん俺の人生など、カルトに入ってぶち壊していい程度のものだ。他人に迷惑をかけるだろうが、それがどうした?迷惑をかければかけるほど、俺は楽しいね。
こういう事で、俺は堕落教団に入る事にしたのだ。
新人信徒である俺を指導してくれた者は、怪しげな界隈で俺を勧誘した女だ。名はベアトリーチェと言う。
彼女は、さっそく俺に基本的な講義を始めた。堕落教、堕落神、そして教団組織などについてだ。その内容は、まともな宗教をコケにした内容だ。
堕落教は、堕落神を信仰する宗教である。堕落神は、人々に三大欲を満たす事を要求する。食欲、睡眠欲、性欲を満たす事だ。堕落神は、「万魔殿」におわして信者が三大欲を満たしているか見守っている。見守るだけではなく、可能な限りの援助もする。堕落神の目的は、すべての人間を堕落させて世界を平和にする事だ。堕落こそが救いである。堕落教団は、その堕落神の目的を達成するための組織であるそうだ。
俺は、呆れながら聞いていた。要するに食って、寝て、セックスしろ。それ以外は気に留めるな。「愛」だの「義務」だのはどうでもいい。あえて「義務」と言うならば、食って、寝て、セックスすることが義務だ。それが堕落神の教えだと言うのだ。
それでどうやって生活しろと言うのか?働かなければ食えない。食わなければ死ぬ。セックスどころではない。国家や社会の下で働くには、「義務」を強要される。結局、堕落神の教えを守ろうとしたら死ぬしかないのではないか?
だがベアトリーチェによると、堕落神は信者に援助をしてくれるらしい。教団の財産は豊富であり、信者は大して働く事無く、食う、寝る、セックスを楽しんでいるらしい。
ずいぶんと怪しい話だ。金は天から降って来る物ではない。この堕落教団とやらは、後ろ暗いことをして金を稼いでいるのではないか?
まあ、俺にとってはそんな事はどうでもよい。さっそく、堕落した生活を楽しみたい。それは直ぐに叶えられた。ベアトリーチェが俺のセックスの相手になってくれたのだ。
俺とベアトリーチェは、まず身を清めた。そして俺は、ベッドに腰掛けてベアトリーチェとキスをした。いきなりセックスと言うわけではない。セックス教団は、前戯は大事にする。
ベアトリーチェは、初めは軽く、次第にねっとりと絡みつくように俺にキスをしてきた。甘い香りのする息を吐きながら、柔らかく滑る舌を俺の口の中に滑り込ませてくる。俺は、不器用にその舌に自分の舌を絡ませる。お互いの唾液を交換し合う。
ベアトリーチェは、俺の着ていたバスローブを脱がす。裸になった俺の体に、口づけを繰り返す。首筋に、胸に、腋に、腹にと口づけていく。口づけながら自分のバスローブを脱ぐ。
ベアトリーチェの裸が露わとなった。洗い清められた白皙の肌が、室内照明を反射している。豊かな胸とくびれた腰、そして金色の陰毛に覆われたヴァギナが俺の目を奪う。ベアトリーチェの裸体を凝視する俺を、ベアトリーチェはピンク色の唇に笑みを浮かべながら見上げる。
ベアトリーチェは、俺のペニスに口づけをした。その瞬間に、俺の下半身に刺激が走る。震える俺のペニスに、ベアトリーチェは繰り返し口づける。そして、微笑みながらペニスに頬ずりをする。
俺は、目の前の淫猥な光景とペニスに走る快楽で正気を失いそうだ。乏しい経験しか持っていない俺には、刺激的すぎるのだ。そんな俺に対して、ベアトリーチェは口と舌、そして顔を巧みに用いて奉仕する。俺のカウパー液で汚れていくベアトリーチェの顔を見ていると、腰の奥から精力がせり上がって来る。
だがベアトリーチェは、俺が射精することを意地悪く引き伸ばした。俺を立ち上がらせると、俺の後ろに回り込む。俺の尻を愛撫すると、俺の尻にキスを繰り返し浴びせる。俺の尻の割れ目を手で開け、俺のアヌスに何度もキスをする。
俺は、耐えられずに声を上げた。アヌスにキスをされるとは思わなかった。そして、その気持ちの良さは想像以上のものだ。ベアトリーチェは、俺の反応に気を良くしたらしい。丹念に舌を動かして、俺のアヌスに快楽を与える。同時に右手でペニスを愛撫し、左手で袋と玉を嬲る。
俺は、長く持ち堪える事は出来なかった。俺は、あっさりと射精させられた。ベアトリーチェは、激しく吹き出る俺の精液を右手で受け止める。受け止めながら、ペニスを愛撫し続ける。舌と左手も、休みなく俺を責めたてる。
射精が終わった時、俺はぼんやりと突っ立っていた。与えられた快楽と刺激的な光景で、俺の意識はまともではなかったのだ。あたりに漂う俺の精液の臭いを、馬鹿みたいに嗅いでいた。
だが、刺激的な光景はこれからだった。ベアトリーチェは、俺の前に回ってきた。そして精液で汚れた右手を見せつけると、ねちっこい舌使いで舐めて見せたのだ。整った顔に欲情を浮かべながら、俺の白い汚液を舐めて見せたのだ。俺は、目の前の光景の意味を把握出来なかった。
不明瞭な意識のまま立ち尽くす俺に対して、ベアトリーチェは休む事無く俺に快楽を与えた。俺の前にひざまずき、白濁液で汚れた俺のペニスを舐めしゃぶったのだ。初めはゆっくりと、次第に激しい水音を立てながらフェラチオをする。ペニスに付いた精液を全て舐め取り、尿道の中にあるものまで吸い上げて俺の精力を回復させる。
ベアトリーチェはベッドに座り、俺も座らせた。俺たちは抱き合う。ベアトリーチェの体は暖かく、柔らかい。ベアトリーチェの体からは、ボディーソープとシャンプーの穏やかな香りがする。ベアトリーチェの口からは精液の臭いがするが、それは俺を興奮させる。
俺は、誘われるままベアトリーチェのヴァギナへ飲み込まれていった。俺のペニスは、熱い肉の渦の中にのみ込まれていく。粘液に溶けてしまったような肉の中で、俺のペニスは愛撫される。その刺激は、俺の耐えられるものではない。
俺は、歯を食いしばりながら腰とペニスを動かした。技巧など考える余裕もなく、猿のように腰を動かし続けた。そんな俺を、ベアトリーチェは巧みに受け止めて戯れて見せた。悪戯っぽく締め付けて、俺をすぐさま追い込む。俺は、中で出したらまずいと思い引き抜こうとする。だが、ベアトリーチェは締め付けて離さない。
俺は、ベアトリーチェの中で弾けた。腰が溶けて精液になって放出しているのではないかと思うほどの射精だ。俺は、耐えられずに獣じみた声を上げる。ベアトリーチェも、明らかに歓喜の声だと分かるものを上げる。
俺達は、痙攣しながら抱きしめあった。快楽は俺達を突き上げ、震わせ、声を上げさせた。俺もベアトリーチェも耐えられない。
痙攣がやっと収まった時、俺はぐったりとしていた。脱力感と満足感が俺の中にある。俺は、その感覚を楽しんでいた。
その時、オレのペニスは再び締め付けられた。強制的に快楽が与えられる。俺は、ベアトリーチェを見た。ベアトリーチェは、紫色の瞳を光らせながら微笑んでいる。
「まだ、終わりでは有りませんよ。この程度では、私も堕落神も満足しません」
そう笑うと、ベアトリーチェは再び腰を動かし始めた。
こうして、俺は快楽の生活を送る事が出来るようになった。ただ、そんな中で異様な経験をするようになった。
繰り返すが、堕落教団はカルトだ。人間の作るカルトも異様だが、人間以外の者が作るカルトは異様どころではない。何せ、堕落教団は魔物が作ったカルトなのだから。
ベアトリーチェは魔物だった。彼女は、あっさりと正体を露わにした。俺とセックスしている最中に、尻から悪魔の様な尾を出したのだ。黒い尾を見られても、ベアトリーチェは大して気に留めていないようだった。軽く肩をすくめると、俺とのセックスに没頭したのだ。
セックスの後で、ベアトリーチェは堕落教団の実態について話した。堕落教団は、ベアトリーチェの様な魔物達が主導している宗教団体なのだそうだ。堕落神は、人間と魔物が交わる事を望んでいるそうである。
ベアトリーチェは、ダークプリーストと言う魔物であるそうだ。ダークプリーストとは、元は人間だったが、堕落神配下の魔物の力により魔物となった者らしい。彼女達は、堕落神の教えを伝道するためにいるそうだ。
ベアトリーチェは、元は在日イタリア人だったそうだ。カトリックの影響が強い家で生まれ育ち、彼女は子供の時から厳しく教育されたらしい。その教育のために、ベアトリーチェは潔癖症の大人になってしまったそうだ。しかも病的な所もあったらしい。繰り返し手を洗い、性的な話題にヒステリックに反発したらしい。
そんな生活の中で、ベアトリーチェはあるカウンセラーの世話になる事になった。そのカウンセラーは白人の女性であり、キリスト教文化圏の教養を身に着けていた。そのために、ベアトリーチェは信用したそうだ。
そのカウンセラーの正体はダークプリーストであり、彼女の誘導によりベアトリーチェは堕落神の影響を受けるようになったそうだ。現在では、ベアトリーチェはダークプリーストとなっており、堕落神の教えに従って行動しているそうだ。
俺は、驚きはしたが反発はしなかった。俺にとっては、人間など大した存在ではない。魔物に侵略されようが支配されようが構わない。そうでなければ、カルトに入ろうとはしない。魔物に恐怖はあるが、今のところ俺に快楽を与えてくれている。だったら、反発する必要はない。
俺は、ベアトリーチェ以外の魔物とも出会った。堕落教団では、しばしばセックスの見せ合いをする。俺は、ベアトリーチェとセックスする姿を人に見せながら、他の人間と魔物のセックスを見た。
俺は、ベアトリーチェと同じダークプリーストを見た。他には、堕天使であるダークエンジェルやダークヴァルキリーを見た。ダークエンジェルとダークヴァルキリーは、ダークプリースト以上に人間離れしている。青い肌に黒い翼を持っているのだ。初めは、彼女達は染料を塗っているのだと思ったが、どうやら地の色らしい。しかも翼で飛んで見せる事もあるのだ。
まあ、俺の書いている物を読んで、俺がトリックにかけられていると思う者もいるだろう。暗い所で染料を塗った肌を晒し、手品で良くやる目の錯覚を生かして飛んでいる様に見せる。あるいは、俺が薬で幻覚を見せられている。そう思う人は多いだろう。
そう思いたければ、そう思えばよい。俺は、魔物の実在を証明したい訳ではない。人間であろうと魔物であろうとかまわないのだ。俺はカルト団体で楽しんでおり、それ以外の事は俺にとっては大した事ではない。ただ、俺は事実を書いただけだ。信じる、信じないは読者の自由だ。
俺は、彼女達のセックスをたっぷりと見た。ダークエンジェルは、少女の外見をしている。人間の基準では、セックスを楽しむ年齢には見えないだろう。その少女が、太った中年男に体中を舐められているのだ。頬を、胸を、腋を、腹を、尻を舐められていた。その挙句に、ペニスをヴァギナへ入れられていたのだ。その様は犯罪的だった。
ダークヴァルキリーは、外見はきちんとした大人だ。均整の取れた体に、適度な筋肉がついている。その体には肉感的な魅力がある。彼女達は、筋骨たくましい男の前にひざまずいて奉仕をしていた。彫の深い美貌をペニスにこすり付けながら、口と舌で快楽を与えていた。ペニスから放たれる白濁液を、うれしそうに顔と口で受け止めていた。
俺とベアトリーチェも、彼らに痴態を見せつけた。ベアトリーチェは、人前で喜びを露わにしながら、俺の足の指やアヌスを舐めしゃぶった。俺のアヌスにキスする姿や舌を押し入れる姿を見せつけたのだ。俺には、かつてのベアトリーチェが潔癖症だった事が信じられない。
俺は、堕落教団に入ってからはセックス三昧の日々を送った。ただ、セックスの相手はベアトリーチェだけだ。信者の中にはパートナーを交換してセックスを楽しむ者もいるが、俺とベアトリーチェはしなかった。俺はベアトリーチェに満足しているし、わざわざ他の者とセックスする気にならなかったのだ。
俺は、堕落教団のビルの中に引きこもり、食い、眠り、セックスをした。誰が作っているのかは分からないが、食事はきちんと用意されていた。その料理はなかなか豪勢であり、美味だ。飯を楽しむと眠り、起きるとセックスを楽しむ。セックスに疲れると眠り、起きると飯を食う。そのような素晴らしい引きこもり生活をしていた。魔物と共同生活する事は異様だが、それは堕落生活にとってスパイスの様なものだ。
俺は、外界と隔絶された生活を楽しんだ。一度だけ、俺の携帯電話に父が電話をかけてきた。何処で何をしているのか、と俺を詰問してきた。「神の教えに目覚め、同志と修行に励んでいる」と答えると、父は絶句していた。絶句しているうちに、俺は電話を切った。その後、父からの電話は無い。
両親は、俺を見限ったのだろう。俺は、ずっとダメ息子だったのだ。俺と縁を切るいい機会だったわけだ。まあ、仕方のない事だ。
そんな事よりも、俺は堕落神の下での楽しい生活の方に気を取られていた。ベアトリーチェの導きに従い、堕落した生活を楽しんでいた。つまらない事を気にする必要はないのだ。
このような生活をいつまでも続けていられたら良い。だが、そうはいかないのだ。
堕落教は、社会と衝突し始めたのだ。堕落教の、堕落した教えを社会は気に食わないらしい。
きっかけは週刊誌の記事だ。その記事で、堕落教の事をカルトとして報じていた。信者を集めてセックスに浸るセックス教団として、扇情的に書いていた。書かれている事は事実だし、堕落教そのものが扇情的だ。その週刊誌は、事実と真実を書いているわけだ。
この記事をきっかけに、マスコミは堕落教の事を報じ始めた。反社会的な淫し邪教として糾弾し始めたのだ。ネット住民を初めとする愚民達は、堕落教についての報道に発情して飛びついた。
この流れの中で、堕落教の「被害者の会」が発足した。堕落教により家族を奪われた者の会だそうだ。この「被害者の会」は、マスコミに持ち上げられて堕落教攻撃の先頭に立った。
ただ警察は、堕落教への介入は消極的だ。犯罪に当たる行為が見当たらないからだ。高額な壺やお札を売っている訳では無い。信者やその家族に多額の寄進を強要した訳では無い。信者を拉致監禁した事も無い。信者は、皆が自由意思で参加し、引きこもっているのだ。そして、サリンや爆弾を作っている訳でも無いのだ。
周辺住民とのトラブルはあるが、堕落教側には非は無い。異臭騒ぎを起こしている訳では無いし、騒音を立てている訳でも無い。ゴミなども、条例に従い期日と時間を守って出している。物資の運搬も、周辺に迷惑をかけるやり方はしていない。本当に堕落しているのかと俺自身首を傾げるほど、堕落教の信者は周辺に迷惑をかけないのだ。
ただ、堕落教のセックスは、厳密に言うと法に引っかかるのだ。何故かと言うと、乱交と解釈出来る場合があるからだ。乱交だと、公然わいせつ罪に該当する場合がある。また、売春と見なされて売春防止法に引っかかる可能性もある。
それでも、警察が介入する事は難しい。信者だけが特定の場所に集まってやっているのだ。公然わいせつ罪の成立要件である、不特定多数の人間が認識できる状態では無い。しかも信者達は、同一のパートナーとセックスをしている場合が多い。さらに、金銭のやり取りが証明できなければ、売春防止法違反は成り立たないのだ。
警察の介入に絡んで問題になったのが、「被害者の会」の言動だ。「被害者の会」は、家族がセックスを強要されていると騒ぎ出したのだ。
繰り返すが、信者は自由意思で参加している。家族と会おうとすれば自由だし、堕落教を抜ける事も自由だ。現に、家族と会っている信者もいる。ただ、堕落教が居心地よくて、家族と会おうとしない者もいるのだ。堕落教としては、会いたくない者に会う事を強要したりはしない。そうすると、「被害者の会」は監禁されていると騒ぐわけだ。
堕落教の信者には、弁護士資格のある者がいる。彼らが、警察や「被害者の会」の対応を受け持った。彼らは、法と論理と証拠に基づいて対応した。「監禁されている」はずの信者の所に、警察官を導いた事もある。
警察は、事件性が無ければ動かない。ただ、マスコミと世間に突き上げられて、警察も堕落教を監視せざるを得ないのだ。
堕落教団は、国家、社会、世間などと対峙しなくてはならなくなったのだ。
権力から監視されたら大人しくする、というのが普通だろう。だが、堕落教団は普通ではない。おまけに、堕落教団以外にも頭のいかれた連中がおり、そいつらと騒動を起こす事にしたのだ。
何をしたのかと言えば、公開セックスバトルをしたのだ。スタジアムを借りて、堕落教信者を動員し、セックスバトルによる堕落教勧誘を行ったのだ。しかも戦いの相手もいる。「エロス教団」や「サバト」の連中だ。セックスバトルによる勧誘合戦を行い、宗教戦争をしようと言うのだ。
「エロス教団」とは、愛の女神エロスを信仰する教団だ。「愛」を最も尊いものとして、「愛」を広める事を目的とする教団だ。それだけならば普通の宗教団体だが、エロス教の場合は性愛の比重が大きい。性技については貪欲に研究しているらしく、実践にも熱心であるそうだ。エロス教団には魔物も参加しており、彼女達もセックスに熱心である。そのエロス教団が、セックスバトルによる信者獲得合戦を堕落教とするのだ。
「サバト」とは、悪魔崇拝を行う宗教団体だ。「バフォメット」と言う山羊の頭をした悪魔に率いられ、「魔女」達が活動しているらしい。まあ、いかにもカルトと言う連中だ。だが、この連中の最大の特徴は、参加者である女達が少女の外見をしている事だ。実年齢は不明だが、見た目はセックス出来ない年齢に見える者達だ。この連中がセックスバトルをすれば、犯罪以外の何物でも無いだろう。
呆れた事に、このセックスバトルは世間に知れ渡っているのだ。何せ、この三つの団体は、セックスバトルについて大々的に宣伝しているのだ。そして前述したように公開するのだ。ここまで来ると、警察に捕まえてくれと言っている様なものだ。
俺もこのセックスバトルに参加する羽目となった。
俺は、このセックスバトルについて記述する自信が無い。ベアトリーチェと爛れたセックス生活をしてきた俺から見ても、あまりにも常軌を逸した光景だからだ。それでも何とか記述してみる事にしよう。
セックスバトル当日、某企業が所有するスタジアムには人間と魔物が大量に集まった。数多くのバスが動員され、人間と魔物を運んだ。最寄りの駅からも、大勢の者達がスタジアムへとやって来る。当然警察も、スタジアム周辺に大量に配置されている。だが、なぜか警察に止められる事無く、会場に来る事が出来たのだ。
普通では無い交通手段で来た者もいる。翼を持った魔物達は、空を飛んでやって来た。魔女だという少女達は、ほうきに乗って空を飛んで来た。空間を移転してやって来た魔物もいる。最早、人知を超えた事態だ。
会場には、堕落教信徒、エロス教信徒、サバトの会員、そして宣伝に釣られてやって来た人間達で充満している。その人数は万を超えている。半数は、魔物や天使と言った人外の者達だ。黒や白、金の翼や尾を持つ者達、獣毛に体を覆われた者達が集まっている。衣装も、鎧兜姿や踊り娘の様な姿だ。これだけでも尋常ではない光景だ。
熱気が充満しており、いつ満ち溢れたエネルギーが爆発するか分からない状態だ。集まっている者達は、セックスへの欲望で目を血走らせ、鼻息が荒い。男の臭いと女の匂いで、呼吸する事さえ差し支えるほどだ。
会場内にアナウンスが響き渡った。セックスバトルの開始を告げるアナウンスだ。その瞬間に、地から天に突き上げるような叫喚が起こった。充満したエネルギーが爆発した瞬間だ。
集まった者達は、ためらう事無くパートナーに飛びついた。その場で服が引き剥かれ、放り投げられる。肉と肉がぶつかり合う。歓喜の声が数えきれない者の口からほとばしり、多重層となって響き渡る。見渡す限り、肉が踊っている。
俺は、すぐさまベアトリーチェに抱き付いた。ベアトリーチェの制服ともいえる修道服を脱がしていく。脱がしながら胸を揉みしだき、スリットから手を入れて腿を撫でる。ベアトリーチェは、俺の口に吸い付いて舌を入れてくる。俺のベルトをはずして、スラックスをトランクスごと脱がす。
俺は、スタジアムの地面に横たわった。ベアトリーチェは、俺の上に覆いかぶさる。ベアトリーチェのヴァギナは俺の口に、彼女の顔は俺のペニスに覆いかぶさる。俺達は、シックスナインの格好で互いを責める。ヴァギナはすでに濡れそぼり、甘酸っぱい匂いを放っていた。俺は、金色の陰毛をかき分けてピンク色の肉襞に舌を這わせる。
ベアトリーチェのヴァギナと尻が、俺の目の前でうごめく。何度見てもそそる眺めだ。尻から少し目をはずせば、他の連中の姿が見える。褐色の肌と黄金の翼を持ち、エロス神に使える楽師であるガンダルヴァは、豊かな胸で男のペニスを責めている。黒い翼と尻尾を持ち、魔女の使い魔であるファミリアは、男のペニスを小さな口で舐め回している。どちらも俺のすぐそばで行われているのだ。
濃厚な液で濡れた陰毛とヴァギナが、俺の顔に押し付けられた。どうやら周りに見とれて、ベアトリーチェへの攻めが疎かになっていたらしい。ベアトリーチェはお冠らしく、ヴァギナを俺の顔に強く擦り付けてくる。俺の顔に濃密な愛液を塗りたくる。
俺は、ヴァギナについている突起を歯で軽く噛んだ。その瞬間に、ベアトリーチェの全身が痙攣を始める。俺は、緩急をつけて唇と歯で攻め立てる。ベアトリーチェは、負けずに俺のペニスを唇で扱き、舌で愛撫する。ペニスから口を離すと、陰嚢を口の中に含んで舐め回す。その間絶え間なく、俺のアヌスを濡れた指でくすぐる。
俺達は同時に果てた。俺が精液を打ち上げると同時に、ベアトリーチェは潮を吹く。俺達の顔は、互いの液でまんべん無く汚れる。俺はベアトリーチェのヴァギナに顔を擦り付け、ベアトリーチェは俺のペニスに顔を擦り付ける。俺達は、自分から顔に液を塗りつける。ベアトリーチェの匂いと味で、俺の頭はふらつく。
俺達はいくらか落着き、スタジアムを見回した。俺の想像を絶する光景が繰り広げられていた。万を超える人間と魔物が、様々の性技に励み、競い合っているのだ。
青色の肌をさらし黒色の翼を広げて、堕落神の僕たるダークヴァルキリーは男に奉仕していた。這いつくばって男に尻を向け、自分を貫く男に腰を振っている。犬のように喘ぎ声を上げながら、引き締まった形の良い尻で男の股間を愛撫する。
褐色の肌に白濁液をまとわりつかせ、エロス神の踊り子であるアプサラスが踊っていた。腰を男に押し付け、抱き合いながら踊っている。良く見ると、男のペニスをヴァギナで銜え込みながら踊っているのだ。裸体よりも官能的な衣装を着けたまま、汗で濡れた肌を輝かせて、性の踊りを踊っている。
性を知らぬ年頃に見える魔女は、対面座位の最中だ。太った中年男を抱きしめながら、ゆっくりと腰を振っている。金色の髪をなびかせながら、あどけない顔を男の胸に擦り付けている。
空を飛びながら交わりあっている者もいた。ダークヴァルキリーは、男を抱えながら黒い翼を羽ばたかせて飛んでいた。二人の股は重なり合い、白い液を飛び散らせている。すぐそばをガンダルヴァが、金色の翼を輝かせながら飛んでいた。ガンダルヴァも男を抱えており、男と激しく交わっている。こちらも交わりあった場所から白濁液を飛び散らせている。
エロス神の天使であるキューピッドは、スタジアムにある台に立って矢を射ていた。彼女の矢は、射られた者に伴侶を与える。矢で射られた男女が走り寄り、抱きしめあいながらスタジアムを転げまわる。キューピッドの股には男が縋り付き、犬の様に舐め回している。キュービッドは、整った褐色の顔を歓喜に染めながら矢を射ている。
スタジアムの中は、濃密な性臭が充満していた。汗、精液、愛液、濡れた肉の臭いが混ざり合い、スタジアム内に凝固しているのだ。それは、もはや気体と言うよりは固体だ。俺は、性臭にむせ返る。
俺は、ベアトリーチェを抱きしめた。辺りで繰り広げられる光景と、充満した性臭で激しい性欲が掻き立てられる。俺のペニスは跳ね上がり、俺の腹とベアトリーチェの腹を叩く。俺は、怒張したペニスをベアトリーチェの蜜壺の中へ埋めていく。ヴァギナは、溶けた肉汁のように俺に纏わり付き、渦を巻いて俺のペニスを愛撫する。
俺は、ペニスを差し入れたままベアトリーチェを抱き上げた。ベアトリーチェは、俺の腰を足で締め付ける。俺は、ベアトリーチェの奥を突きながら歩き回る。ベアトリーチェは、精液で汚れた顔をゆがめ、獣の様に叫び声をあげる。俺は、ペニスと腰で、全身でベアトリーチェを振り回す。ベアトリーチェは、精液混じりの涎をまき散らしながら咆哮する。俺も笑いながら吠える。
会場内は、性獣達の咆哮が重なり合い、響き渡っていた。全身を快楽で満たしながら、天に向かって野蛮な祈りの声を上げていたのだ。それが、俺達が神にささげる悦楽の祈りだ。
セックスバトルの結果は、よく分からない。この騒動が、各団体にとってプラスになったのかマイナスになったのか、判断し辛いのだ。
このセックスバトルの最大の目的は、信者獲得だ。これについては各団体いずれも成功した。激しい奪い合いはしたものの、堕落教団、エロス教団、サバトの三つの団体は、それぞれ数千人の信者を獲得した。快挙と言っていいだろう。
神の名を広める事も出来た。これだけの騒ぎを起こせば、堕落神の名もエロス神の名も、そして神ではないがバフォメットの名も広まる事は当然だ。それぞれの神と団体名は、日本人ならば誰でも知る事となった。
ただ、各団体とも勝敗は付けられなかった。それぞれの団体が、大きなプラスを得たし、マイナスも得る羽目となったのだ。
マイナスとは、各団体とも公然活動が出来なくなったのだ。何故ならば、魔物の指導者達が禁じたのだ。
現在、俺達のいる世界と異世界の間に、「門」が開いているらしい。魔物達は、異世界から来た者達だ。堕落教もエロス教もサバトも、元は異世界の存在が作ったものらしい。魔物達は、日本政府と交渉している最中なのだそうだ。魔物達は、穏便な形でこちらの世界へ移住したいらしい。
その為には、魔物達に暴走させたくはないのだ。堕落教団などは、魔物達の跳ね上がりらしい。スタジアムでのセックスバトルは、跳ね上がりの暴走なのだそうだ。
スタジアムでのセックスバトルの際に、数多くの警察官が動員された。だが彼らは、スタジアムに集まった者達を逮捕せずに監視にとどめた。魔物の指導者達と政府の間で、合意が出来ていたのだ。
魔物の指導者達は、堕落教団、エロス教団、サバトの公然活動を禁じた。堕落教団は、地下活動しなくてはならなくなったのだ。
堕落教団は、表向きは解散した。だが、メンバーはそのまま地下活動をしている。政府は、それを黙認している。だが、調査能力のある者が少し調べれば、おかしいと分かるだろう。
この点については、政府がマスコミに圧力をかける事で解決した。日本のマスコミは、弱者に強く強者に弱い存在だ。政府が大規模な圧力をかけた事で、簡単に沈黙を決め込んだ。
ただ、ジャーナリストの中には骨のある人達がいる。骨がある上に有能な人もいる。彼らは、政府の圧力に抵抗して取材を続け、事実にかなり迫る事が出来た。
彼らに対しては、魔物達が対処した。魔物達は、体で説得したそうだ。ジャーナリスト達は、弾圧には抵抗出来たがおまんこには勝てなかった様である。
こうして俺達は、隠れて活動する事となった。いずれ魔物達と政府の交渉がうまくいったら、堕落教団は再び日の目を見ることが出来る。エロス教団やサバトも同様だ。今は、隠忍自重の時だ。
ただ、この世間を隠れる生活に不満を持つ者もいる。サバトの会員がそうだ。不満をためたサバトの会員は、「ロリ禁止法」を推進している元都知事を憂さ晴らしの為に襲撃したそうだ。サバトの指導者バフォメットは、元都知事のケツの穴にバイブを突っ込んで踊らせたらしい。
まあ、こんな事をしでかす者もいたが、俺達は大人しくしている。いずれ魔物の存在が公表されるまでの我慢だ。時間はかかるかも知れないが、うまくいく見通しはあるのだ。
俺は、今静かな生活をしている。パートナーであるベアトリーチェと共に、食う、寝る、セックスの生活をしているのだ。満たされている上に心静かだ。堕落した生活だからこそ味わえる幸福だ。
以前の俺は、仕事と生活に責め苛まれていた。自分が無能だという事実を、繰り返し執念深く思い知らされてきたのだ。あのままの生活をしていたら、自殺するか殺人を犯すかのどちらかだったろう。俺は、堕落する事で救われたのだ。
堕落教の資金源は、異世界にあるらしい。そこからの供給で、俺は働かずに生きていける。堕落教は、変な薬を俺達の世界で売買して金を稼いでいると、俺は思っていた。だが違うようだ。まあ、異世界で変なものを売って金を稼いでいるのかもしれない。そうだとしても、俺はかまわない。俺が堕落した生活が出来れば、それでいいのだ。
何だったら、変なものの製造、販売に俺が携わっても良い。俺の乏しい能力で出来、かつ俺が堕落した生活を続ける事が出来るのならばの話だが。
俺は、家族とも社会とも断絶している。それは、社会では非難される事だ。だが、断絶したからこそ俺は幸福になれたのだ。
どこぞの「現実主義者」は、俺の生き方を説教しながら非難するだろう。あるいは「お前の人生をどうしようがお前の勝手だがな」とわざとらしく言った上で、俺の存在を否定するかもしれない。
俺がそいつらに言う事は、「俺に殺されなくてよかったな」という事だ。前述したように、俺は人を殺す事を考えていたのだ。気に食わない奴を殺して、死刑になるつもりだった。「現実主義者」は、俺に殺されなかった幸運に感謝すべきだ。
まあ、そんな事は今となってはどうでもいい。連中は、俺の邪魔をしたくても出来ないのだから。俺と奴らも断絶しているのだから。
今、俺の腕でベアトリーチェが寝息を立てている。先ほどまでセックスに浸っていたのだ。辺りには、濃密な性臭が漂っている。ベアトリーチェと交わり続けておかげで、俺の精力は強くなった。俺は、思う存分に精力をベアトリーチェにぶつけた。ベアトリーチェは、性技を駆使してそれを受け止めた。十分楽しんだ後で、こうして惰眠を楽しんでいるのだ。
俺は、堕落神に感謝している。俺は、俺を救わぬ神と宗教を憎んでいた。だが、堕落神と堕落教は、俺を救ってくれた。
「信じる者は救われる」という言葉がある。たいていの神と宗教の場合は、NOだ。だが、堕落神と堕落教の場合は、YESだ。
何せ、「堕落教団」などと言う名前の宗教団体に加入したのだ。「堕落教」という看板を掛けてあるビルに、「堕落教」のパンフレットを手にして入っていった。通りすがりの人の白い眼を無視して、笑いながら入ったのだ。
なぜ俺がカルトに嬉々として入ったかというと、俺は落ちこぼれだからだ。俺は、ろくな人生を歩んでこなかった。家庭では要領の悪い息子、学校では取り柄のない落ちこぼれ、地域社会では不器用で不恰好なガキだった。友達もいなかったし、当然恋人もいなかった。
大人になったら、俺のザマはさらにひどくなった。会社では使い物にならずに、すぐに辞めさせられる。就職しては失業し、就職してはまた失業する。その繰り返しだ。親が助けてくれなかったら、俺はホームレスになるか餓死していただろう。その親も、俺をほとんど見放している。
俺自身、俺には愛想が尽きた。この下らない人生を終わらせたくなったのだ。とっとと首を吊ってケリを付けたくなった。そんな俺としては、カルトに入って自分の人生を壊しても惜しくないわけだ。もちろん他人の人生など、喜んでぶっ壊してやる。
俺が堕落教団の勧誘を受けたのは、ハローワークからの帰りだ。ハローワークに紹介してもらった所は、すでに五社から不採用通知を受けていた。それでまた新しい会社を紹介してもらったのだ。
俺は、夏の暑さとうまくいかない就職活動にうんざりしながら歩いていた。訳の分からない店やら会社が並ぶ裏通りを、汗をダラダラ流しながら歩いていた。猫耳のカチューシャを付け、メガネをかけメイド服を着た女の子が客引きをしているような界隈だ。俺はぼったくられる金もないので、無視して歩き続けた。
そんな中、一人の女が俺に近づいてきた。また客引きかとうんざりすると、その女のかっこうが尋常ではないことに気が付いた。キリスト教の修道服に似た黒服だが、露出度が高い。胸の谷間が露わとなっており、両足の所が深いスリットとなっている。そのスリットから、黒皮のベルトを巻き付けた太腿が見える。しかも、首や手足に鎖を巻き付けているのだ。
俺は、呆れてその女を見た。新手の風俗店の客引きだろうかと、その女の格好を見て思ったのだ。その若い女は、俺の表情を気に留めない様子で微笑みながら話しかけてきた。
「あなたは堕落神を信じますか?」
俺は、その女をまじまじと見つめた。「神を信じますか?」なら分かる。どこかの宗教の勧誘だろう。だが「堕落神を信じますか?」とは何だ?俺は、聞き間違えたのかと思った。
呆れた事に聞き間違えではなかったのだ。その女は、俺に対して堕落神の教えをしゃべり始めた。俺は女の話を遮って、その場から離れようとした。新手のカルトか風俗かは分からないが、まともに相手をしても仕方がない。その女は俺に取りすがると、強引にパンフレットを押し付けた。俺はうんざりしながらパンフレットを受け取ると、足早にその場から離れた。
パンフレットなどさっさと捨てようと思ったが、面倒臭くて家まで持ってきてしまった。これが俺の堕落の始まりだ。
家に帰ると、ベッドに寝転びながらパンフレットを読んだ。途中までは傾聴に値するものだ。
――今の社会では、過剰な労働と貧困が拡大しています。人々はわずかな金のために、奴隷並みの重労働をしなくてはなりません。日々の生活に休息は少なく、睡眠すらろくに取れない有様です。過重労働を拒否すれば、生活できないほどの貧困が襲い掛かります。今の社会においては、人間は使い捨ての道具です。
この様な事を書いていた。ここまではいい。問題は、この先に書かれている事だ。
――だから堕落神を信仰しましょう。堕落神を信仰すれば、過重な労働から逃れられます。食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求を満たすことができます。同じ神を信じる者があなたをセックス三昧の日々へと導いてくれます。今すぐ堕落神を信じ、ともに食う、寝る、セックスの生活を楽しみましょう。
このパンフレットを読んだら、大抵の人が呆れるだろう。セックス教団の宣伝活動が街中で堂々と行われているのだ。あの扇情的な修道服もどきは、セックス教団の制服であるわけだ。
俺は、パンフレットを俺にくれた女を思い返した。金色の髪と紫色の瞳が目を引く若い美女だ。スタイルは良く、豊かな胸と長い足が目立っていた。その胸と足を惜しげもなくさらしていた。セックス教団の勧誘員としては、うってつけの女だろう。
あるいは宗教を装った風俗かもしれない。あの女は風俗嬢かもしれない。パンフレットを配っていた場所が場所だけに、その可能性はある。
馬鹿馬鹿しいと思いながらも、これはこれでいいと俺は思った。まともな宗教など、信じる価値のないものばかりだ。宗教は、弱者を救わない。宗教は、元々は等価交換の原則で成り立っていた。神に与える事が出来る場合に救われる。与える事の出来ない弱者は、救われないのだ。ギリシア神話を読めば、その事は分かるだろう。
キリスト教は、等価交換の原則をいったん否定した。全ての者に対する「愛」を唱えた。だが、教会組織が整えられるにつれて、信者に見返りを要求し始めた。信者の金や労働力がなければ、教会組織は維持出来ないからだ。教会組織はエリーティズムに基づいて維持され、強者を救うための組織となった。「神は自ら助ける者を助ける」という自己責任原則を振りかざすことにより、弱者を見殺しにすることが正当化された。
キリスト教だけではない。他の宗教も似た様なものだ。宗教の歴史について少し調べると、それは分かるだろう。宗教団体が必要としているのは、金や能力のある信者なのだ。俺のような落ちこぼれは、宗教団体にとっては邪魔なのだ。俺にとっても、宗教は無価値なものだ。
結局、宗教は企業と同じだ。有能な者だけを必要とし、無能者は必要ないのだ。宗教の唱える弱者救済など、建前に過ぎない。どこぞのブラック企業は、従業員を低賃金で酷使して稼いだ金を、発展途上国の開発の為に寄付した。宗教団体も似た様な事をしている。企業も宗教団体も、俺に金や能力を要求する。俺を救う気は無い。
まっとうな宗教が俺を救わないのならば、カルトに入って暴れてみるのも一興だ。カルトも金や能力を要求するだろうが、俺でも自爆テロくらいは出来るかもしれない。しょせん俺の人生など、カルトに入ってぶち壊していい程度のものだ。他人に迷惑をかけるだろうが、それがどうした?迷惑をかければかけるほど、俺は楽しいね。
こういう事で、俺は堕落教団に入る事にしたのだ。
新人信徒である俺を指導してくれた者は、怪しげな界隈で俺を勧誘した女だ。名はベアトリーチェと言う。
彼女は、さっそく俺に基本的な講義を始めた。堕落教、堕落神、そして教団組織などについてだ。その内容は、まともな宗教をコケにした内容だ。
堕落教は、堕落神を信仰する宗教である。堕落神は、人々に三大欲を満たす事を要求する。食欲、睡眠欲、性欲を満たす事だ。堕落神は、「万魔殿」におわして信者が三大欲を満たしているか見守っている。見守るだけではなく、可能な限りの援助もする。堕落神の目的は、すべての人間を堕落させて世界を平和にする事だ。堕落こそが救いである。堕落教団は、その堕落神の目的を達成するための組織であるそうだ。
俺は、呆れながら聞いていた。要するに食って、寝て、セックスしろ。それ以外は気に留めるな。「愛」だの「義務」だのはどうでもいい。あえて「義務」と言うならば、食って、寝て、セックスすることが義務だ。それが堕落神の教えだと言うのだ。
それでどうやって生活しろと言うのか?働かなければ食えない。食わなければ死ぬ。セックスどころではない。国家や社会の下で働くには、「義務」を強要される。結局、堕落神の教えを守ろうとしたら死ぬしかないのではないか?
だがベアトリーチェによると、堕落神は信者に援助をしてくれるらしい。教団の財産は豊富であり、信者は大して働く事無く、食う、寝る、セックスを楽しんでいるらしい。
ずいぶんと怪しい話だ。金は天から降って来る物ではない。この堕落教団とやらは、後ろ暗いことをして金を稼いでいるのではないか?
まあ、俺にとってはそんな事はどうでもよい。さっそく、堕落した生活を楽しみたい。それは直ぐに叶えられた。ベアトリーチェが俺のセックスの相手になってくれたのだ。
俺とベアトリーチェは、まず身を清めた。そして俺は、ベッドに腰掛けてベアトリーチェとキスをした。いきなりセックスと言うわけではない。セックス教団は、前戯は大事にする。
ベアトリーチェは、初めは軽く、次第にねっとりと絡みつくように俺にキスをしてきた。甘い香りのする息を吐きながら、柔らかく滑る舌を俺の口の中に滑り込ませてくる。俺は、不器用にその舌に自分の舌を絡ませる。お互いの唾液を交換し合う。
ベアトリーチェは、俺の着ていたバスローブを脱がす。裸になった俺の体に、口づけを繰り返す。首筋に、胸に、腋に、腹にと口づけていく。口づけながら自分のバスローブを脱ぐ。
ベアトリーチェの裸が露わとなった。洗い清められた白皙の肌が、室内照明を反射している。豊かな胸とくびれた腰、そして金色の陰毛に覆われたヴァギナが俺の目を奪う。ベアトリーチェの裸体を凝視する俺を、ベアトリーチェはピンク色の唇に笑みを浮かべながら見上げる。
ベアトリーチェは、俺のペニスに口づけをした。その瞬間に、俺の下半身に刺激が走る。震える俺のペニスに、ベアトリーチェは繰り返し口づける。そして、微笑みながらペニスに頬ずりをする。
俺は、目の前の淫猥な光景とペニスに走る快楽で正気を失いそうだ。乏しい経験しか持っていない俺には、刺激的すぎるのだ。そんな俺に対して、ベアトリーチェは口と舌、そして顔を巧みに用いて奉仕する。俺のカウパー液で汚れていくベアトリーチェの顔を見ていると、腰の奥から精力がせり上がって来る。
だがベアトリーチェは、俺が射精することを意地悪く引き伸ばした。俺を立ち上がらせると、俺の後ろに回り込む。俺の尻を愛撫すると、俺の尻にキスを繰り返し浴びせる。俺の尻の割れ目を手で開け、俺のアヌスに何度もキスをする。
俺は、耐えられずに声を上げた。アヌスにキスをされるとは思わなかった。そして、その気持ちの良さは想像以上のものだ。ベアトリーチェは、俺の反応に気を良くしたらしい。丹念に舌を動かして、俺のアヌスに快楽を与える。同時に右手でペニスを愛撫し、左手で袋と玉を嬲る。
俺は、長く持ち堪える事は出来なかった。俺は、あっさりと射精させられた。ベアトリーチェは、激しく吹き出る俺の精液を右手で受け止める。受け止めながら、ペニスを愛撫し続ける。舌と左手も、休みなく俺を責めたてる。
射精が終わった時、俺はぼんやりと突っ立っていた。与えられた快楽と刺激的な光景で、俺の意識はまともではなかったのだ。あたりに漂う俺の精液の臭いを、馬鹿みたいに嗅いでいた。
だが、刺激的な光景はこれからだった。ベアトリーチェは、俺の前に回ってきた。そして精液で汚れた右手を見せつけると、ねちっこい舌使いで舐めて見せたのだ。整った顔に欲情を浮かべながら、俺の白い汚液を舐めて見せたのだ。俺は、目の前の光景の意味を把握出来なかった。
不明瞭な意識のまま立ち尽くす俺に対して、ベアトリーチェは休む事無く俺に快楽を与えた。俺の前にひざまずき、白濁液で汚れた俺のペニスを舐めしゃぶったのだ。初めはゆっくりと、次第に激しい水音を立てながらフェラチオをする。ペニスに付いた精液を全て舐め取り、尿道の中にあるものまで吸い上げて俺の精力を回復させる。
ベアトリーチェはベッドに座り、俺も座らせた。俺たちは抱き合う。ベアトリーチェの体は暖かく、柔らかい。ベアトリーチェの体からは、ボディーソープとシャンプーの穏やかな香りがする。ベアトリーチェの口からは精液の臭いがするが、それは俺を興奮させる。
俺は、誘われるままベアトリーチェのヴァギナへ飲み込まれていった。俺のペニスは、熱い肉の渦の中にのみ込まれていく。粘液に溶けてしまったような肉の中で、俺のペニスは愛撫される。その刺激は、俺の耐えられるものではない。
俺は、歯を食いしばりながら腰とペニスを動かした。技巧など考える余裕もなく、猿のように腰を動かし続けた。そんな俺を、ベアトリーチェは巧みに受け止めて戯れて見せた。悪戯っぽく締め付けて、俺をすぐさま追い込む。俺は、中で出したらまずいと思い引き抜こうとする。だが、ベアトリーチェは締め付けて離さない。
俺は、ベアトリーチェの中で弾けた。腰が溶けて精液になって放出しているのではないかと思うほどの射精だ。俺は、耐えられずに獣じみた声を上げる。ベアトリーチェも、明らかに歓喜の声だと分かるものを上げる。
俺達は、痙攣しながら抱きしめあった。快楽は俺達を突き上げ、震わせ、声を上げさせた。俺もベアトリーチェも耐えられない。
痙攣がやっと収まった時、俺はぐったりとしていた。脱力感と満足感が俺の中にある。俺は、その感覚を楽しんでいた。
その時、オレのペニスは再び締め付けられた。強制的に快楽が与えられる。俺は、ベアトリーチェを見た。ベアトリーチェは、紫色の瞳を光らせながら微笑んでいる。
「まだ、終わりでは有りませんよ。この程度では、私も堕落神も満足しません」
そう笑うと、ベアトリーチェは再び腰を動かし始めた。
こうして、俺は快楽の生活を送る事が出来るようになった。ただ、そんな中で異様な経験をするようになった。
繰り返すが、堕落教団はカルトだ。人間の作るカルトも異様だが、人間以外の者が作るカルトは異様どころではない。何せ、堕落教団は魔物が作ったカルトなのだから。
ベアトリーチェは魔物だった。彼女は、あっさりと正体を露わにした。俺とセックスしている最中に、尻から悪魔の様な尾を出したのだ。黒い尾を見られても、ベアトリーチェは大して気に留めていないようだった。軽く肩をすくめると、俺とのセックスに没頭したのだ。
セックスの後で、ベアトリーチェは堕落教団の実態について話した。堕落教団は、ベアトリーチェの様な魔物達が主導している宗教団体なのだそうだ。堕落神は、人間と魔物が交わる事を望んでいるそうである。
ベアトリーチェは、ダークプリーストと言う魔物であるそうだ。ダークプリーストとは、元は人間だったが、堕落神配下の魔物の力により魔物となった者らしい。彼女達は、堕落神の教えを伝道するためにいるそうだ。
ベアトリーチェは、元は在日イタリア人だったそうだ。カトリックの影響が強い家で生まれ育ち、彼女は子供の時から厳しく教育されたらしい。その教育のために、ベアトリーチェは潔癖症の大人になってしまったそうだ。しかも病的な所もあったらしい。繰り返し手を洗い、性的な話題にヒステリックに反発したらしい。
そんな生活の中で、ベアトリーチェはあるカウンセラーの世話になる事になった。そのカウンセラーは白人の女性であり、キリスト教文化圏の教養を身に着けていた。そのために、ベアトリーチェは信用したそうだ。
そのカウンセラーの正体はダークプリーストであり、彼女の誘導によりベアトリーチェは堕落神の影響を受けるようになったそうだ。現在では、ベアトリーチェはダークプリーストとなっており、堕落神の教えに従って行動しているそうだ。
俺は、驚きはしたが反発はしなかった。俺にとっては、人間など大した存在ではない。魔物に侵略されようが支配されようが構わない。そうでなければ、カルトに入ろうとはしない。魔物に恐怖はあるが、今のところ俺に快楽を与えてくれている。だったら、反発する必要はない。
俺は、ベアトリーチェ以外の魔物とも出会った。堕落教団では、しばしばセックスの見せ合いをする。俺は、ベアトリーチェとセックスする姿を人に見せながら、他の人間と魔物のセックスを見た。
俺は、ベアトリーチェと同じダークプリーストを見た。他には、堕天使であるダークエンジェルやダークヴァルキリーを見た。ダークエンジェルとダークヴァルキリーは、ダークプリースト以上に人間離れしている。青い肌に黒い翼を持っているのだ。初めは、彼女達は染料を塗っているのだと思ったが、どうやら地の色らしい。しかも翼で飛んで見せる事もあるのだ。
まあ、俺の書いている物を読んで、俺がトリックにかけられていると思う者もいるだろう。暗い所で染料を塗った肌を晒し、手品で良くやる目の錯覚を生かして飛んでいる様に見せる。あるいは、俺が薬で幻覚を見せられている。そう思う人は多いだろう。
そう思いたければ、そう思えばよい。俺は、魔物の実在を証明したい訳ではない。人間であろうと魔物であろうとかまわないのだ。俺はカルト団体で楽しんでおり、それ以外の事は俺にとっては大した事ではない。ただ、俺は事実を書いただけだ。信じる、信じないは読者の自由だ。
俺は、彼女達のセックスをたっぷりと見た。ダークエンジェルは、少女の外見をしている。人間の基準では、セックスを楽しむ年齢には見えないだろう。その少女が、太った中年男に体中を舐められているのだ。頬を、胸を、腋を、腹を、尻を舐められていた。その挙句に、ペニスをヴァギナへ入れられていたのだ。その様は犯罪的だった。
ダークヴァルキリーは、外見はきちんとした大人だ。均整の取れた体に、適度な筋肉がついている。その体には肉感的な魅力がある。彼女達は、筋骨たくましい男の前にひざまずいて奉仕をしていた。彫の深い美貌をペニスにこすり付けながら、口と舌で快楽を与えていた。ペニスから放たれる白濁液を、うれしそうに顔と口で受け止めていた。
俺とベアトリーチェも、彼らに痴態を見せつけた。ベアトリーチェは、人前で喜びを露わにしながら、俺の足の指やアヌスを舐めしゃぶった。俺のアヌスにキスする姿や舌を押し入れる姿を見せつけたのだ。俺には、かつてのベアトリーチェが潔癖症だった事が信じられない。
俺は、堕落教団に入ってからはセックス三昧の日々を送った。ただ、セックスの相手はベアトリーチェだけだ。信者の中にはパートナーを交換してセックスを楽しむ者もいるが、俺とベアトリーチェはしなかった。俺はベアトリーチェに満足しているし、わざわざ他の者とセックスする気にならなかったのだ。
俺は、堕落教団のビルの中に引きこもり、食い、眠り、セックスをした。誰が作っているのかは分からないが、食事はきちんと用意されていた。その料理はなかなか豪勢であり、美味だ。飯を楽しむと眠り、起きるとセックスを楽しむ。セックスに疲れると眠り、起きると飯を食う。そのような素晴らしい引きこもり生活をしていた。魔物と共同生活する事は異様だが、それは堕落生活にとってスパイスの様なものだ。
俺は、外界と隔絶された生活を楽しんだ。一度だけ、俺の携帯電話に父が電話をかけてきた。何処で何をしているのか、と俺を詰問してきた。「神の教えに目覚め、同志と修行に励んでいる」と答えると、父は絶句していた。絶句しているうちに、俺は電話を切った。その後、父からの電話は無い。
両親は、俺を見限ったのだろう。俺は、ずっとダメ息子だったのだ。俺と縁を切るいい機会だったわけだ。まあ、仕方のない事だ。
そんな事よりも、俺は堕落神の下での楽しい生活の方に気を取られていた。ベアトリーチェの導きに従い、堕落した生活を楽しんでいた。つまらない事を気にする必要はないのだ。
このような生活をいつまでも続けていられたら良い。だが、そうはいかないのだ。
堕落教は、社会と衝突し始めたのだ。堕落教の、堕落した教えを社会は気に食わないらしい。
きっかけは週刊誌の記事だ。その記事で、堕落教の事をカルトとして報じていた。信者を集めてセックスに浸るセックス教団として、扇情的に書いていた。書かれている事は事実だし、堕落教そのものが扇情的だ。その週刊誌は、事実と真実を書いているわけだ。
この記事をきっかけに、マスコミは堕落教の事を報じ始めた。反社会的な淫し邪教として糾弾し始めたのだ。ネット住民を初めとする愚民達は、堕落教についての報道に発情して飛びついた。
この流れの中で、堕落教の「被害者の会」が発足した。堕落教により家族を奪われた者の会だそうだ。この「被害者の会」は、マスコミに持ち上げられて堕落教攻撃の先頭に立った。
ただ警察は、堕落教への介入は消極的だ。犯罪に当たる行為が見当たらないからだ。高額な壺やお札を売っている訳では無い。信者やその家族に多額の寄進を強要した訳では無い。信者を拉致監禁した事も無い。信者は、皆が自由意思で参加し、引きこもっているのだ。そして、サリンや爆弾を作っている訳でも無いのだ。
周辺住民とのトラブルはあるが、堕落教側には非は無い。異臭騒ぎを起こしている訳では無いし、騒音を立てている訳でも無い。ゴミなども、条例に従い期日と時間を守って出している。物資の運搬も、周辺に迷惑をかけるやり方はしていない。本当に堕落しているのかと俺自身首を傾げるほど、堕落教の信者は周辺に迷惑をかけないのだ。
ただ、堕落教のセックスは、厳密に言うと法に引っかかるのだ。何故かと言うと、乱交と解釈出来る場合があるからだ。乱交だと、公然わいせつ罪に該当する場合がある。また、売春と見なされて売春防止法に引っかかる可能性もある。
それでも、警察が介入する事は難しい。信者だけが特定の場所に集まってやっているのだ。公然わいせつ罪の成立要件である、不特定多数の人間が認識できる状態では無い。しかも信者達は、同一のパートナーとセックスをしている場合が多い。さらに、金銭のやり取りが証明できなければ、売春防止法違反は成り立たないのだ。
警察の介入に絡んで問題になったのが、「被害者の会」の言動だ。「被害者の会」は、家族がセックスを強要されていると騒ぎ出したのだ。
繰り返すが、信者は自由意思で参加している。家族と会おうとすれば自由だし、堕落教を抜ける事も自由だ。現に、家族と会っている信者もいる。ただ、堕落教が居心地よくて、家族と会おうとしない者もいるのだ。堕落教としては、会いたくない者に会う事を強要したりはしない。そうすると、「被害者の会」は監禁されていると騒ぐわけだ。
堕落教の信者には、弁護士資格のある者がいる。彼らが、警察や「被害者の会」の対応を受け持った。彼らは、法と論理と証拠に基づいて対応した。「監禁されている」はずの信者の所に、警察官を導いた事もある。
警察は、事件性が無ければ動かない。ただ、マスコミと世間に突き上げられて、警察も堕落教を監視せざるを得ないのだ。
堕落教団は、国家、社会、世間などと対峙しなくてはならなくなったのだ。
権力から監視されたら大人しくする、というのが普通だろう。だが、堕落教団は普通ではない。おまけに、堕落教団以外にも頭のいかれた連中がおり、そいつらと騒動を起こす事にしたのだ。
何をしたのかと言えば、公開セックスバトルをしたのだ。スタジアムを借りて、堕落教信者を動員し、セックスバトルによる堕落教勧誘を行ったのだ。しかも戦いの相手もいる。「エロス教団」や「サバト」の連中だ。セックスバトルによる勧誘合戦を行い、宗教戦争をしようと言うのだ。
「エロス教団」とは、愛の女神エロスを信仰する教団だ。「愛」を最も尊いものとして、「愛」を広める事を目的とする教団だ。それだけならば普通の宗教団体だが、エロス教の場合は性愛の比重が大きい。性技については貪欲に研究しているらしく、実践にも熱心であるそうだ。エロス教団には魔物も参加しており、彼女達もセックスに熱心である。そのエロス教団が、セックスバトルによる信者獲得合戦を堕落教とするのだ。
「サバト」とは、悪魔崇拝を行う宗教団体だ。「バフォメット」と言う山羊の頭をした悪魔に率いられ、「魔女」達が活動しているらしい。まあ、いかにもカルトと言う連中だ。だが、この連中の最大の特徴は、参加者である女達が少女の外見をしている事だ。実年齢は不明だが、見た目はセックス出来ない年齢に見える者達だ。この連中がセックスバトルをすれば、犯罪以外の何物でも無いだろう。
呆れた事に、このセックスバトルは世間に知れ渡っているのだ。何せ、この三つの団体は、セックスバトルについて大々的に宣伝しているのだ。そして前述したように公開するのだ。ここまで来ると、警察に捕まえてくれと言っている様なものだ。
俺もこのセックスバトルに参加する羽目となった。
俺は、このセックスバトルについて記述する自信が無い。ベアトリーチェと爛れたセックス生活をしてきた俺から見ても、あまりにも常軌を逸した光景だからだ。それでも何とか記述してみる事にしよう。
セックスバトル当日、某企業が所有するスタジアムには人間と魔物が大量に集まった。数多くのバスが動員され、人間と魔物を運んだ。最寄りの駅からも、大勢の者達がスタジアムへとやって来る。当然警察も、スタジアム周辺に大量に配置されている。だが、なぜか警察に止められる事無く、会場に来る事が出来たのだ。
普通では無い交通手段で来た者もいる。翼を持った魔物達は、空を飛んでやって来た。魔女だという少女達は、ほうきに乗って空を飛んで来た。空間を移転してやって来た魔物もいる。最早、人知を超えた事態だ。
会場には、堕落教信徒、エロス教信徒、サバトの会員、そして宣伝に釣られてやって来た人間達で充満している。その人数は万を超えている。半数は、魔物や天使と言った人外の者達だ。黒や白、金の翼や尾を持つ者達、獣毛に体を覆われた者達が集まっている。衣装も、鎧兜姿や踊り娘の様な姿だ。これだけでも尋常ではない光景だ。
熱気が充満しており、いつ満ち溢れたエネルギーが爆発するか分からない状態だ。集まっている者達は、セックスへの欲望で目を血走らせ、鼻息が荒い。男の臭いと女の匂いで、呼吸する事さえ差し支えるほどだ。
会場内にアナウンスが響き渡った。セックスバトルの開始を告げるアナウンスだ。その瞬間に、地から天に突き上げるような叫喚が起こった。充満したエネルギーが爆発した瞬間だ。
集まった者達は、ためらう事無くパートナーに飛びついた。その場で服が引き剥かれ、放り投げられる。肉と肉がぶつかり合う。歓喜の声が数えきれない者の口からほとばしり、多重層となって響き渡る。見渡す限り、肉が踊っている。
俺は、すぐさまベアトリーチェに抱き付いた。ベアトリーチェの制服ともいえる修道服を脱がしていく。脱がしながら胸を揉みしだき、スリットから手を入れて腿を撫でる。ベアトリーチェは、俺の口に吸い付いて舌を入れてくる。俺のベルトをはずして、スラックスをトランクスごと脱がす。
俺は、スタジアムの地面に横たわった。ベアトリーチェは、俺の上に覆いかぶさる。ベアトリーチェのヴァギナは俺の口に、彼女の顔は俺のペニスに覆いかぶさる。俺達は、シックスナインの格好で互いを責める。ヴァギナはすでに濡れそぼり、甘酸っぱい匂いを放っていた。俺は、金色の陰毛をかき分けてピンク色の肉襞に舌を這わせる。
ベアトリーチェのヴァギナと尻が、俺の目の前でうごめく。何度見てもそそる眺めだ。尻から少し目をはずせば、他の連中の姿が見える。褐色の肌と黄金の翼を持ち、エロス神に使える楽師であるガンダルヴァは、豊かな胸で男のペニスを責めている。黒い翼と尻尾を持ち、魔女の使い魔であるファミリアは、男のペニスを小さな口で舐め回している。どちらも俺のすぐそばで行われているのだ。
濃厚な液で濡れた陰毛とヴァギナが、俺の顔に押し付けられた。どうやら周りに見とれて、ベアトリーチェへの攻めが疎かになっていたらしい。ベアトリーチェはお冠らしく、ヴァギナを俺の顔に強く擦り付けてくる。俺の顔に濃密な愛液を塗りたくる。
俺は、ヴァギナについている突起を歯で軽く噛んだ。その瞬間に、ベアトリーチェの全身が痙攣を始める。俺は、緩急をつけて唇と歯で攻め立てる。ベアトリーチェは、負けずに俺のペニスを唇で扱き、舌で愛撫する。ペニスから口を離すと、陰嚢を口の中に含んで舐め回す。その間絶え間なく、俺のアヌスを濡れた指でくすぐる。
俺達は同時に果てた。俺が精液を打ち上げると同時に、ベアトリーチェは潮を吹く。俺達の顔は、互いの液でまんべん無く汚れる。俺はベアトリーチェのヴァギナに顔を擦り付け、ベアトリーチェは俺のペニスに顔を擦り付ける。俺達は、自分から顔に液を塗りつける。ベアトリーチェの匂いと味で、俺の頭はふらつく。
俺達はいくらか落着き、スタジアムを見回した。俺の想像を絶する光景が繰り広げられていた。万を超える人間と魔物が、様々の性技に励み、競い合っているのだ。
青色の肌をさらし黒色の翼を広げて、堕落神の僕たるダークヴァルキリーは男に奉仕していた。這いつくばって男に尻を向け、自分を貫く男に腰を振っている。犬のように喘ぎ声を上げながら、引き締まった形の良い尻で男の股間を愛撫する。
褐色の肌に白濁液をまとわりつかせ、エロス神の踊り子であるアプサラスが踊っていた。腰を男に押し付け、抱き合いながら踊っている。良く見ると、男のペニスをヴァギナで銜え込みながら踊っているのだ。裸体よりも官能的な衣装を着けたまま、汗で濡れた肌を輝かせて、性の踊りを踊っている。
性を知らぬ年頃に見える魔女は、対面座位の最中だ。太った中年男を抱きしめながら、ゆっくりと腰を振っている。金色の髪をなびかせながら、あどけない顔を男の胸に擦り付けている。
空を飛びながら交わりあっている者もいた。ダークヴァルキリーは、男を抱えながら黒い翼を羽ばたかせて飛んでいた。二人の股は重なり合い、白い液を飛び散らせている。すぐそばをガンダルヴァが、金色の翼を輝かせながら飛んでいた。ガンダルヴァも男を抱えており、男と激しく交わっている。こちらも交わりあった場所から白濁液を飛び散らせている。
エロス神の天使であるキューピッドは、スタジアムにある台に立って矢を射ていた。彼女の矢は、射られた者に伴侶を与える。矢で射られた男女が走り寄り、抱きしめあいながらスタジアムを転げまわる。キューピッドの股には男が縋り付き、犬の様に舐め回している。キュービッドは、整った褐色の顔を歓喜に染めながら矢を射ている。
スタジアムの中は、濃密な性臭が充満していた。汗、精液、愛液、濡れた肉の臭いが混ざり合い、スタジアム内に凝固しているのだ。それは、もはや気体と言うよりは固体だ。俺は、性臭にむせ返る。
俺は、ベアトリーチェを抱きしめた。辺りで繰り広げられる光景と、充満した性臭で激しい性欲が掻き立てられる。俺のペニスは跳ね上がり、俺の腹とベアトリーチェの腹を叩く。俺は、怒張したペニスをベアトリーチェの蜜壺の中へ埋めていく。ヴァギナは、溶けた肉汁のように俺に纏わり付き、渦を巻いて俺のペニスを愛撫する。
俺は、ペニスを差し入れたままベアトリーチェを抱き上げた。ベアトリーチェは、俺の腰を足で締め付ける。俺は、ベアトリーチェの奥を突きながら歩き回る。ベアトリーチェは、精液で汚れた顔をゆがめ、獣の様に叫び声をあげる。俺は、ペニスと腰で、全身でベアトリーチェを振り回す。ベアトリーチェは、精液混じりの涎をまき散らしながら咆哮する。俺も笑いながら吠える。
会場内は、性獣達の咆哮が重なり合い、響き渡っていた。全身を快楽で満たしながら、天に向かって野蛮な祈りの声を上げていたのだ。それが、俺達が神にささげる悦楽の祈りだ。
セックスバトルの結果は、よく分からない。この騒動が、各団体にとってプラスになったのかマイナスになったのか、判断し辛いのだ。
このセックスバトルの最大の目的は、信者獲得だ。これについては各団体いずれも成功した。激しい奪い合いはしたものの、堕落教団、エロス教団、サバトの三つの団体は、それぞれ数千人の信者を獲得した。快挙と言っていいだろう。
神の名を広める事も出来た。これだけの騒ぎを起こせば、堕落神の名もエロス神の名も、そして神ではないがバフォメットの名も広まる事は当然だ。それぞれの神と団体名は、日本人ならば誰でも知る事となった。
ただ、各団体とも勝敗は付けられなかった。それぞれの団体が、大きなプラスを得たし、マイナスも得る羽目となったのだ。
マイナスとは、各団体とも公然活動が出来なくなったのだ。何故ならば、魔物の指導者達が禁じたのだ。
現在、俺達のいる世界と異世界の間に、「門」が開いているらしい。魔物達は、異世界から来た者達だ。堕落教もエロス教もサバトも、元は異世界の存在が作ったものらしい。魔物達は、日本政府と交渉している最中なのだそうだ。魔物達は、穏便な形でこちらの世界へ移住したいらしい。
その為には、魔物達に暴走させたくはないのだ。堕落教団などは、魔物達の跳ね上がりらしい。スタジアムでのセックスバトルは、跳ね上がりの暴走なのだそうだ。
スタジアムでのセックスバトルの際に、数多くの警察官が動員された。だが彼らは、スタジアムに集まった者達を逮捕せずに監視にとどめた。魔物の指導者達と政府の間で、合意が出来ていたのだ。
魔物の指導者達は、堕落教団、エロス教団、サバトの公然活動を禁じた。堕落教団は、地下活動しなくてはならなくなったのだ。
堕落教団は、表向きは解散した。だが、メンバーはそのまま地下活動をしている。政府は、それを黙認している。だが、調査能力のある者が少し調べれば、おかしいと分かるだろう。
この点については、政府がマスコミに圧力をかける事で解決した。日本のマスコミは、弱者に強く強者に弱い存在だ。政府が大規模な圧力をかけた事で、簡単に沈黙を決め込んだ。
ただ、ジャーナリストの中には骨のある人達がいる。骨がある上に有能な人もいる。彼らは、政府の圧力に抵抗して取材を続け、事実にかなり迫る事が出来た。
彼らに対しては、魔物達が対処した。魔物達は、体で説得したそうだ。ジャーナリスト達は、弾圧には抵抗出来たがおまんこには勝てなかった様である。
こうして俺達は、隠れて活動する事となった。いずれ魔物達と政府の交渉がうまくいったら、堕落教団は再び日の目を見ることが出来る。エロス教団やサバトも同様だ。今は、隠忍自重の時だ。
ただ、この世間を隠れる生活に不満を持つ者もいる。サバトの会員がそうだ。不満をためたサバトの会員は、「ロリ禁止法」を推進している元都知事を憂さ晴らしの為に襲撃したそうだ。サバトの指導者バフォメットは、元都知事のケツの穴にバイブを突っ込んで踊らせたらしい。
まあ、こんな事をしでかす者もいたが、俺達は大人しくしている。いずれ魔物の存在が公表されるまでの我慢だ。時間はかかるかも知れないが、うまくいく見通しはあるのだ。
俺は、今静かな生活をしている。パートナーであるベアトリーチェと共に、食う、寝る、セックスの生活をしているのだ。満たされている上に心静かだ。堕落した生活だからこそ味わえる幸福だ。
以前の俺は、仕事と生活に責め苛まれていた。自分が無能だという事実を、繰り返し執念深く思い知らされてきたのだ。あのままの生活をしていたら、自殺するか殺人を犯すかのどちらかだったろう。俺は、堕落する事で救われたのだ。
堕落教の資金源は、異世界にあるらしい。そこからの供給で、俺は働かずに生きていける。堕落教は、変な薬を俺達の世界で売買して金を稼いでいると、俺は思っていた。だが違うようだ。まあ、異世界で変なものを売って金を稼いでいるのかもしれない。そうだとしても、俺はかまわない。俺が堕落した生活が出来れば、それでいいのだ。
何だったら、変なものの製造、販売に俺が携わっても良い。俺の乏しい能力で出来、かつ俺が堕落した生活を続ける事が出来るのならばの話だが。
俺は、家族とも社会とも断絶している。それは、社会では非難される事だ。だが、断絶したからこそ俺は幸福になれたのだ。
どこぞの「現実主義者」は、俺の生き方を説教しながら非難するだろう。あるいは「お前の人生をどうしようがお前の勝手だがな」とわざとらしく言った上で、俺の存在を否定するかもしれない。
俺がそいつらに言う事は、「俺に殺されなくてよかったな」という事だ。前述したように、俺は人を殺す事を考えていたのだ。気に食わない奴を殺して、死刑になるつもりだった。「現実主義者」は、俺に殺されなかった幸運に感謝すべきだ。
まあ、そんな事は今となってはどうでもいい。連中は、俺の邪魔をしたくても出来ないのだから。俺と奴らも断絶しているのだから。
今、俺の腕でベアトリーチェが寝息を立てている。先ほどまでセックスに浸っていたのだ。辺りには、濃密な性臭が漂っている。ベアトリーチェと交わり続けておかげで、俺の精力は強くなった。俺は、思う存分に精力をベアトリーチェにぶつけた。ベアトリーチェは、性技を駆使してそれを受け止めた。十分楽しんだ後で、こうして惰眠を楽しんでいるのだ。
俺は、堕落神に感謝している。俺は、俺を救わぬ神と宗教を憎んでいた。だが、堕落神と堕落教は、俺を救ってくれた。
「信じる者は救われる」という言葉がある。たいていの神と宗教の場合は、NOだ。だが、堕落神と堕落教の場合は、YESだ。
15/07/31 22:27更新 / 鬼畜軍曹