読切小説
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少年皇帝と人虎
 朱塗りの柱と金の装飾が目立つ建物の中を、一人の少年が走っていた。少年は、金糸を縫い取っている青い絹服を着ている。一目で豪奢な物だと分かる服だが、少年は気に止める事も無く裾を蹴立てて走っている。少年にとっては、華美な服よりも大事なものがあるのだ。
 凝った作りの金の燭台と香炉の間をすり抜けて、少年は走り続ける。少年の服同様に建物は豪奢な物であり、本来ならば子供が走っていい場所ではない。だが、少年を叱責する者はいない。少年の守り役を務めた宦官だけが、時折たしなめるくらいだ。少年とすれ違った者は、皆が恭しく少年に礼をする。少年こそが、この後宮の主であるからだ。
 少年は、建物の中のやや広い空間に飛び込む。そこには彼が目指す者がいた。その者は、他の後宮の女の様に裾の長い帯で締める服を着ていない。胸と下腹部を、金で装飾された緑色に塗られた鉄の服を付け、虎の頭の形に作られた金の肩当てを付けている。体の他の部分はむき出しとなっており、筋肉質な体がむき出しとなっている。妖艶な雰囲気が漂う後宮でも、ここまで露出度の高い格好をしている者は少ない。
 ただ、女の特徴は他の部分に求められるだろう。茶色の髪から除く耳は、黄色と白色の獣毛に覆われていた。むき出しの手足は、黄色と黒の縞模様の獣毛が柔らかく波打っている。女の尻からは尻尾が生えており、それも黄色と黒色の獣毛で縞模様を描いている。それらの虎の特徴が、若い女の美貌と体と合わさっているのだ。
 女は、格闘の構えをして空に拳や足を突き出していたが、少年の姿を目にすると構えを解いて一礼した。その動きには無駄が無く、体からは生命力が溢れている。
 少年は、人虎と言う魔物である女の大柄な体に歓声を上げながら飛びついた。女の腹筋の割れた腹に顔を摺り寄せて頬ずりをする。格闘の訓練の後であり女の腹には汗が浮いているが、少年は気にした様子は無い。少年は、さらに獣毛に覆われた手に頬ずりをし、足にも顔を摺り寄せる。少年の顔は、滑らかな毛の感触を味わい喜びを露わにしていた。幼く見える少年の顔は、ますます子供じみて見えてくる。
 虎の特徴を持った魔物娘は、彫りの深い美貌に困ったような表情を浮かべていた。

 西方の者に霧の大陸と呼ばれる所が有る。広大な土地と膨大な数の人、古い歴史のある所だ。その大陸は、一つの帝国によって支配されている。
 現在の帝国は平和だ。帝国にとって宿敵ともいえる北方の騎馬民族は、戦争を仕掛けてこない。帝国と取引をした方が利になると判断しており、また帝国に移住した元騎馬民族もいる。その他の周辺国は、帝国とは比べ物にならない弱小国だ。臣下の礼を取らせた後、交易をしている。
 国内の治安も良好だ。法と官僚制が機能しており、警吏たちは適度に仕事熱心である。その成果として凶悪犯罪は減少しつつある。国内が豊かになりつつある事も、治安を良好にしていた。国と民は治水と開墾に熱心であり、食糧生産は増えつつある。国の市場への介入も成功し、物価は安定している。このような状況である為、よほどの馬鹿でない限りわざわざ盗賊になろうとはしない。
 だからこそ、少々お馬鹿な少年が皇帝でも国内は治まっているのだ。皇帝が優れた力量を持たなくてはならない場合は、制度が整っていない、あるいは機能していない場合である。法と官僚制が整っていれば、皇帝が遊び好きな少年でも構わないのだ。中書令、侍中、尚書令ら行政を司る者達が、少年皇帝をきちんと補佐しており問題は無い。
 十三歳の少年である皇帝は、現在は文武の修行に励んでいた。君主としての修行途中である皇帝を、優れた師達が鍛えている。
 そうは言っても、皇帝は遊びたい盛りの少年だ。しばしば勉学をさぼって遊び歩いている。おまけに皇帝は性に目覚め始め、後宮が皇帝の遊び場となりつつある。その後宮に、皇帝のお気に入りが一人いた。
 彼女は静麗と言い、虎と人の体を持つ魔物娘である人虎だ。皇帝は、彼女のなめらかな獣毛を、大型の猫のような耳と尻尾を、弾力のある肉球を、たくましい筋肉を愛している。巨大化した猫の様な彼女の体に身をすり寄せるのが皇帝の日課だ。

「モフモフだ、プニプニだ」
 少年皇帝は、静麗の手足の黄色と黒色の獣毛を飽きもせずに撫で回し、掌の黒い肉球を押していた。皇帝は、静麗を寝所に連れ込み寝台に座らせて、体を玩具にして遊んでいる。静麗は、溜息をつきながらされるままになっている。
 皇帝は静麗の右腕の獣毛に顔を埋めると、鼻で深く息を吸った。
「いい匂いだよ、汗と毛の臭いが混ざっているよ」
 静麗は顔を赤らめ、ぼそぼそと声を出す。
「武術の訓練の後ですから、私の体は汚れています。体を洗い、着替えてまいりましょう」
「洗わなくていいよ、いい匂いがするからね」
 静麗の恥じらいを気に留めずに、皇帝は静麗の体に顔をすり寄せて匂いを嗅ぎ続ける。
「静麗は、モフモフなだけでなく筋肉がムキムキしているからいいんだよ」
 皇帝は、手を伸ばして太ももの筋肉を撫で回す。内太腿を愛撫されて、静麗は赤らめた顔で唇を噛みしめながらこらえようとする。
 今でこそ皇帝の玩具のような有様だが、もともと静麗は武闘家だった。帝国北部の山中で生まれ、武闘家の父母の手ほどきで修業していた。父母以上の才能を持っていた静麗は、山を下りて武術大会に出場するようになった。彼女の名は知れ渡るようになり、ついに皇帝の前で試合をするまでになったのだ。
 帝国に住む武闘家にとって、皇帝の前で試合をする事は最も誉れとなるだろう。だが静麗の武闘家としての道は、皇帝の御前試合で大きく変わった。皇帝は静麗を気に入り、自分の妃妾として後宮に入れたのだ。固辞をする静麗と反対をする廷臣を「皇帝たる余に逆らうのか?」の一言でねじ伏せ、静麗を自分の妃妾としてしまった。
 現在、静麗は妃妾の最下位である才人だ。皇帝は、初めは現後宮の最高位である貴妃にしようとした。だが、後宮の監督者である内侍省長官の高承恩が、皇帝の前に跪いて諌めた為に静麗を才人とするしかなかった。高承恩は皇帝に忠誠を誓う事で知られる宦官であり、皇帝としても反対を退ける気にはならなかった。だが、お気に入りの人虎である静麗を貴妃にする事を皇帝は諦めていない。数多くいる後宮の女の中で、静麗ばかりに抱き付いている。

 皇帝は、静麗の胸を愛撫しながら胸当てを外した。豊かでありながら張りのある胸がむき出しとなる。静麗の肌は日に焼けているが、胸当ての中に納まっていた部分は柔らかい色合いの白だ。日に焼けた部分と白い部分の対照が、健康的な体付きと合わさって官能を掻き立てる。
 皇帝は、胸の谷間に顔を埋めた。柔らかさと弾力を持った左右の小山は、汗で濡れてすべらかな感触がする。蒸れた胸の谷間で汗と肉の匂いが混ざり合っており、皇帝はその匂いを深く吸い込む。胸の谷間にたまっている汗を舌で舐め取り、その塩味の液体を味わう。皇帝は右胸に顔を移し、桃色の突起を口に含む。乳児のように胸を吸い上げ、次第に固くなっていく突起を舌で弾く。
 皇帝はいたずらっぽい顔をすると、静麗の右腋に舌を這わせ始めた。静麗は、体を震わせて皇帝を哀願するように見下ろす。皇帝は、獣毛に覆われた右腕に頬を摺り寄せながら腋のくぼみを舐め回す。
「へ、陛下、そこは汚い所です。修行の後で汚れておりますので、お願いですから舐めないで下さい」
「うん、すごい臭いだし味もきついよ。こんな臭いをさせて恥ずかしくないの?」
 皇帝の言葉に、静麗は赤らんだ顔をさらに赤らめさせた。皇帝は、静麗の腋を子猫の様な舌使いで舐めていく。
 皇帝は立ち上がると、勢いよく服を脱ぎ始めた。辺りに服を放り出すと、男根を恥ずかしげもなく露出させる。皇帝の男根は、年相応に小ぶりで皮が半分ほどかぶっている。だが、すでに反り返っており先端から透明な液を溢れさせていた。皇帝は、座っている静麗の顔に男根を押し付け、整った顔に先走り汁を擦り付ける。静麗が顔をそむけないように、静麗の顔を手で押さえて未成熟な男根を押し付けた。
「ねえ、早く舐めてよ。がまんできないんだよ」
 静麗は仕方がないと言った顔で、皇帝の男根に舌を這わせ始めた。男根に唾液を塗り付けると、静麗はその皮の被った肉棒を口の中に含んだ。口の中で舌を這わせて、唾液でふやかした男根の皮をゆっくりとむいていく。むき出しとなった亀頭と溝を、痛くないように慎重に舌を這わせていく。時間をかけて舌で愛撫した男根から口を離すと、咎めるような顔をした。
「陛下は、お風呂に入る時にちゃんと皮をむいて洗っているのですか?汚れていましたよ」
「自分でむくと痛いから…。ねえ、一緒に入って、余を洗ってくれないかな」
「洗って差し上げないと、口で掃除させるつもりでしょう。分かりました、洗って差し上げます」
 静麗は、諦めたように溜息をつく。皇帝は、満面に喜色を浮かべる。再びいたずらっぽい顔に戻ると、静麗の胸を掴んで男根を押し付けた。
「今度は胸でやってよ」
 静麗は、苦笑を浮かべながら男根を胸の谷間に挟み込む。そのまま上下に動かしていく。
「胸でやりながら舌で舐めてよ」
 静麗は、胸の谷間から覗く桃色の亀頭に舌を這わせて唾液を垂らす。静麗の胸は、汗と唾液と先走り汁が混ざり合って滑っており、その感触は皇帝の男根と腰を追い詰めていく。胸の谷間からは濃厚な匂いが立ち上り、皇帝の興奮を高めていく。
「で、出るよ、出ちゃうよ!」
 その叫びと同時に、亀頭の先端から白濁液が噴き出した。少年の白い子種汁が、人虎の麗貌に叩き付けられていく。濃密で重たい液は、顔へ張り付いた後にゆっくりと垂れ流れ、汚す場所を広げていく。胸の谷間も、強い臭いを放つ液で汚れていった。少年皇帝は、その刺激的な光景を震えながら見下ろす。出したばかりなのに、未熟な男根が再び硬くなり始める。
「ねえ、四つん這いになってよ。猫や虎のようにね」
 静麗は、精液で汚れた顔で責めるように皇帝を見上げるが、言われたとおりに這い蹲った。皇帝は静麗の頭を撫で、髪と耳を愛撫する。皇帝は後ろに回るとしゃがみこみ、静麗の引き締まった尻を覗き込んだ。
「静麗のお尻の穴には毛が生えているんだね。穴がひくひくするたびに毛が動いているよ」
「そんな所を見ないで下さい!言わないで下さい!」
 静麗は、恥ずかしさのあまりに寝台に顔を埋める。だが皇帝は、楽しそうに尻を撫で回しながら顔を近づけた。せわしなく動き回る虎の尻尾に顔を寄せ、その感触を楽しむ。指に唾液を塗り付けると、尻の穴の皺に塗り付ける。
「触らないで下さい!そこは汚いです!」
「そうだねえ、変な臭いもするねえ」
 皇帝は、笑いながら穴を薄く覆う毛を指でつまんで引っ張った。静麗は、低いうなり声を上げながら寝台に突っ伏して身をよじる。皇帝は、尻の穴をこねくり回したり毛を引っ張ったりして静麗を嬲り続けた。やがて耐えられなくなった皇帝は身を起こし、男根を尻に擦り付け始める。筋肉の為に良い形を保っている尻を、男根から洩れる透明な液で光らせていく。尻を男根で堪能しながら、黄色と黒色の尻尾を桃色の亀頭で突っつく。そして、さんざん嬲った尻のすぼまりに、男根の先端を当てた。
「へ、陛下、そこはお許しください。普通の所に入れて下さい」
「でも、こっちに入れてみたいなあ。前に入れたらすごく気持ちよかったし」
「陛下、そこは交わりの時に入れる所ではありません。じょ、女陰に入れて下さい」
「静麗がお尻を振りながら『ニャア〜ン』と鳴いてくれたら許してあげる」
 静麗は、人虎とはとても思えない情けない顔になった。静麗は、腰を上げてゆっくりと尻を振る。
「ニャ、ニャア〜ン」
 静麗の凛々しい顔は歪んでおり、瞼には涙がたまっている。
「はい、良く出来たね。えらいえらい」
 皇帝は尻のすぼまりから男根を外すと、すでに濡れそぼっている女陰に押し入れた。中をほぐすように男根を動かし、入り口付近のザラザラの部分をこする。皇帝はまだ十三歳の少年だが、すでに静麗と繰り返し交わっているため要領は分かる。少年皇帝は、性の勉強に関しては極めて熱心でまじめな生徒だ。雌虎の弱い部分を的確に突いていく。喘ぎ声を上げる雌虎は、しなやかな尾を少年暴君の胸や腹に叩き付ける。
 静麗の体が痙攣するように震え、静麗の奥から熱い水流が湧きだす。同時に、皇帝は静麗の奥へと子種汁を放出した。人虎と少年の出した液は、人虎の蜜壺の中でぶつかり合い、混ざり合う。
 少年は、雌虎の背に崩れ落ちた。汗で濡れた雌虎の背には、その髪が張り付いている。少年は、白い肌と茶色の髪に顔を摺り寄せながら、その感触と匂いを味わっていた。

 少年の体の下で、雌虎の体が素早く動いた。気が付くと、少年の体は寝台にあおむけに押し倒され、雌虎に押し倒されていた。
「おいたが過ぎますよ、陛下。お仕置きが必要ですね」
「こ、こら、無礼だぞ!」
 皇帝たる自分を押し倒す事に少年は怒るが、人虎は止めようとしない。そのまま雌虎に伸し掛かられる。
「今度は陛下を貪って差し上げます。私をこんな風にしたのは陛下ですからね」
 雌虎は、鼻からフンスフンスと荒い息を出している。静麗たち人虎は、他の魔物娘と比べると性に対する関心が薄い。ただし発情期に入ると激しい性欲を覚える。男を味わってしまうと発情期に入りやすくなり、中には四六時中発情期になる人虎もいるほどだ。静麗も、皇帝と交わり続けているうちに毎日のように性欲に溺れるようになった。
 雌虎は、仰向けの少年の腰を掴むと尻を掲げる形にひっくり返した。バタバタともがく少年を抑え付け、むき出しになった少年の尻の穴と陰嚢を覗き込む。
「陛下のお尻の穴はかわいいですね。ぴくぴく動いていますよ。でも」
 雌虎は、尻の穴に顔を近づけてわざとらしく臭いを嗅ぐ。
「臭いがしますね。ちゃんと洗っていますか?」
 雌虎は、尻の穴に舌を這わせて唾液を塗り込む。入口をほぐして中へと舌を押し入れていく。そのまま奥へと入れ、ゆっくりと舌を引き出す。入れては出し、入れては出しと繰り返す。奥のコリコリした部分に舌が届くと、舌を蠢かせて刺激する。少年の尻の穴を舌で嬲りながら、快楽に表情を歪める少年の顔を覗き込む。
 尻の穴から舌を抜くと、今度は玉の入った袋に舌を這わせ始めた。
「プニプニしていますね。転がして遊びたくなります」
 雌虎は、袋を口の中に含んで舌で玉を転がす。球を舌で軽く弾くたびに、少年は喘ぎ声を上げながら身をよじる。雌虎は、笑いながら少年の痴態を見下ろして玉を甘噛みする。
 雌虎は少年の腰をおろし、その上にまたがった。少年のそそり立った肉棒を、愛液と精液が混ざり合っている蜜壺に飲み込む。少年ながら硬い男根を、膣の柔らかい肉で包み、渦を巻くように締め付ける。
 雌虎は少年に覆いかぶさり、少年の右腋に舌を這わせた。少年は、声を上げて身をよじる。
「陛下の腋も舐めてあげますね。私もくすぐったいのを我慢したのですよ」
 雌虎の肉厚の舌が、少年の小さな腋を舐め回す。腋は、すぐに雌獣の唾液で濡れ光っていく。
「陛下は汗をかいているのですね。しょっぱい味がしましたよ」
 雌虎は腋から舌を離し、薄い胸や細い首筋に舌を這わせていく。その姿は、獲物を味わう獣の姿そのものだ。腰は、少年の腰に強く押し付けられている。
 少年は、痙攣しながら三度目の子種汁を雌の蜜壺の奥へと放った。その液のぶつかる事で、雌もまた痙攣しながら上り詰める。二人は獣の声を上げながら、身を震わせ続けた。
 二人の痙攣はゆっくりとおさまっていき、荒かった息も穏やかなものになってくる。
 少年は、ぐったりと寝台に横たわっていた。雌虎は少年の顔に口を寄せ、舌を這わせていく。右の額にある傷痕を特に丹念に舐める。その様は、母猫が子猫の顔を舐めているようだ。眠りへと落ちて行く少年を、雌虎は柔らかい表情で見つめていた。

 この様に皇帝は色ボケの子供であるが、帝国は平和であり大陸も平和だ。皇帝が人虎の妃妾にのめりこみ、子供にあるまじき卑猥な生活をしようと、特に問題は起こらなかった。前述したように、政治を行う制度と人員はそろっている。皇帝がいなくとも政治はうまくいき、むしろ皇帝が下手に口を出さない方がうまくいく。
 色ボケ皇帝など、大陸の歴史上には腐るほどいた。大陸で初めて皇帝を名乗った男は、後宮に三千人の女を入れて性の饗宴に狂った。ある贅沢好きな皇帝などは、一万人の女を後宮に入れたそうである。もちろん、皇帝が一万人全員を相手にするなど不可能だ。そこで皇帝は羊に引かせた車を後宮内で乗り回し、羊の止まった所にいる女を抱いたそうである。
 これらの皇帝に比べれば、人虎の武闘家一人にのめり込むなどかわいいものだ。人虎の身元がきちんとしなかったことが問題となったが、身元の良く分からない女を身近に置いた皇帝の例などいくらでもある。少年ながら色狂いの皇帝など、いちいち挙げていたらきりがない。女に全く興味を示さない皇帝の方が、後々面倒な事になる。現皇帝の色ボケなど、むしろ健全かもしれない。
 色ボケな子供が皇帝でも、世は平和であった。

 だが、平和な世に乱を求める者もいる。乱を起こして富と権力を手に入れようとする者、単純に乱を起こす事が好きな者などである。この騒乱者達が暗躍を始めた。
 皇帝が少年である為、二人の人間に権限が集まっていた。ひとりは中書令の魏玄齢、もう一人は内侍省長官の高承恩である。中書令とは、皇帝の命令である詔勅を起草する者である。政治を行う場合に皇帝に最も近く、皇帝が年少だと権限を持ちやすい。内侍省長官は後宮の管理人であり、皇帝の私生活に最も近い。加えて高承恩は、宦官として現皇帝に幼いころから仕えており信任を得ている。その為二人に権限が集まり、国政を動かしていた。その事を不満に思う者もいたのだ。
 魏玄齢と高承恩の排撃の為に、叛徒達は皇帝が少年である事を利用した。現皇帝は政を行うには若すぎる、他の皇族を皇帝とすべきだと密かに主張する。叛徒達は、皇帝の叔父の一人を抱き込むことに成功し、彼を皇帝にしようと画策を始めた。現皇帝を退位させ、魏玄齢と高承恩を抹殺しようと暗躍を始めたのだ。

「無能者の分際でつけ上がりおって、今すぐに始末してくれる」
 魏玄齢は憎悪で顔を歪めていた。彼の下に、叛徒達の暗躍の様が報告されていたのだ。報告したのは、諜報機関を管理している高承恩だ。
「奴らは度し難い者達です。ですが、その対処は慎重でなくてはなりません。閣下と私に対する不満は、広い層にあります」
 高承恩は控えめな口調で話す。彼の言う通り不満は広い層にわたっており、打つ手を間違えると大乱になりかねない。加えて、魏玄齢の傲慢さを高承恩は危惧していた。
「では、どうすれば良いと言うのか?」
「私が密偵達に命じて、誰が叛徒なのかを探ります。その後で御史大夫に命じて奴らを逮捕あるいは左遷し、叔父君を離宮に軟禁します」
 御史大夫は、百官を監察する組織である御史台の長だ。叛徒達の「不正」を糾弾し、処罰する権限を持つ。
「なるほど、それでいこう。叛徒達を調べ上げてくれ。ところで、この件は陛下にお知らせするのか?」
「御史大夫を動かす時に申し上げると良いかと存じます」
「では、そうしよう」
 こうして、皇帝の知らぬ所で叛徒達の暗躍とその始末が行われようとしていた。

 だが、魏玄齢と高承恩の思い通りには進まなかった。彼らの恐れていた大乱の可能性が高くなってしまったのだ。
 高承恩は有能であり、密偵の使い方、情報の集め方をわきまえていた。彼の調べにより、叛徒の大半は判明する。そこで高承恩と魏玄齢は皇帝に報告し、御史大夫を使って粛清を行おうとした。
 彼らの計算外であったのは、叛徒達の中に「無能者」ではない者がいた事だ。叛徒の中に、高承恩の動きに気付いて即座に動き出した者達が居たのだ。叛徒達の中には将軍もおり、地方長官もいた。彼らが兵を挙げたのだ。
 初めは、叛徒の軍はまとまりがなかった。だが、次第に指揮能力のある者を中心にまとまり始め、彼らは皇帝の叔父を掲げて都へ進軍を始める。都にいる叛徒達も、地方の反乱勢力と連帯して暗躍を始めた。

「陛下の警護は大丈夫か?」
「はい、禁軍が陛下を二重、三重にお守り申し上げています」
 魏玄齢と高承恩は、険しい表情で話し合っていた。恐れていた乱が起こり始め、彼らは自分の失態を認めるしかなくなっていた。
「これ以上失態を重ねるわけにはいかん。叛徒どもを鎮圧せねばならん。陛下に禁軍を動かす事を奏上せねば」
 禁軍は皇帝直属の軍であり、彼らの中には叛徒はいない。禁軍を使って叛徒を鎮圧するのが得策と二人は考えていた。
 その時、鎧と武具の音が二人の下に聞こえて来た。二人が音のする方を見ると、武装した皇帝と静麗が早足に歩いて来る。皇帝は、金で龍の装飾をされた黒鉄の鎧を付け、金の龍が鞘に巻き付く造りの剣を腰にさしている。どちらも皇帝だけが身に着ける事を許された物だ。
「何をしている?叛徒の鎮圧の準備はどうした?余は自ら禁軍を指揮し、叛徒どもを鎮圧するぞ!」
 二人はあっけにとられたが、高承恩はすぐに皇帝の前に跪いた。
「はい、陛下に禁軍による鎮圧を奏上しようとしていた所です。我らが叛徒どもを潰しますので、陛下は宮殿内でご覧ください」
「余はお飾りの皇帝ではないぞ!叔父上を傀儡とする愚か者達を潰す事が出来ずに何が皇帝か!すぐに禁軍を招集せよ!」
 魏玄齢と高承恩は、皇帝の命に従い禁軍を招集するために走る。魏玄齢の顔は釈然としない様子だが、高承恩の顔には笑みが浮かんでいた。

 皇帝と禁軍は、まず都の鎮圧に乗り出した。都には、禁軍の他に国家直属の軍がいる。彼らの中には叛徒の一派がいる。高承恩の調べによりその者達は分かっており、皇帝と禁軍は制圧に乗り出した。叛徒の軍は激しく抵抗したが、禁軍の方が多い上に国家直属軍の兵の半数以上が皇帝に付く。制圧は一日で終了し、討死を逃れた者は降伏した。そのすぐ後に禁軍は御史台と協力し合い、叛徒側に属する官吏を逮捕していった。
 皇帝と魏玄齢は、捕えた叛徒を皆殺しにしようとした。だが、静麗と高承恩が諌めた為に、皇帝は折れて魏玄齢は意見を引っ込める。捕えた叛徒は、法に基づいて後日に処罰する事になった。
 続いて皇帝は、軍をまとめて叛徒の軍の鎮圧に出動した。皇帝自らが都を出て戦う事に反対する者も多かったが、皇帝は自分が出る事を押し通す。静麗と高承恩も従軍していた。
 少年皇帝が軍を動かす事が出来たのは、皇帝を支える者達の力による。魏玄齢を初めとする中書令、侍中、尚書令ら臣民の最高位の者達は、皇帝を支える事で一致していた。禁軍の将軍達も、皇帝に忠誠を誓っていた。宦官である為に表には出なかったが、高承恩も裏で様々な画策をしている。臣下の中で最も力を振るったのは高承恩かもしれない。静麗は、皇帝の側から離れず守り抜いていた。

 皇帝の軍は、野営地で休息を取っていた。叛徒の軍は三日ほどの所にいる。既に日が沈み、兵達は夕食を終えている。
 皇帝は、軍装を脱いで天幕の中で休んでいた。傍らには静麗と高承恩がおり、静麗は皇帝の足を湯で洗っている。緊張でこわばっていた皇帝の顔は、柔らかさが戻ってきていた。
 高承恩は、皇帝の幼い時の事を思い出していた。皇帝には、幼い時から味方と言える者は少なかった。父帝は、有能で誠実だが冷厳な男だ。他の者同様に息子に対しても仮借なく、息子に対して怒号と鞭を浴びせる毎日であった。たまに鞭を浴びせない日もあったが、そのような時は息子の存在そのものを無視した。
 それでも皇帝の母に比べればマシかも知れない。皇帝の母は、気性が激しい上に情緒不安定な女だ。息子を激しく抱きしめ頬ずりしたかと思うと、次の瞬間に喚き散らしながら握りこぶしで息子を殴り倒した。皇帝の右の額には傷があるが、八歳の時に母によって陶磁器を叩き付けられた時に出来たものだ。
 臣下の者達は、鞭うたれ拳で殴られる少年を冷ややかに眺めていた。その中で皇帝を守り育てたのは高承恩だ。高承恩は全てを少年の為に優先し、その為に不利益を被る事もいとわない。皇帝の鞭から少年を守るために、策略を弄してきた。高承恩にとって運が良かった事は、皇帝は公正な人間だった事だ。高承恩の策略を、息子の守り役として義務を果たしている結果だと見なし、罰しない事が多かった。その為に高承恩は宮廷で生き残れた。
 少年が十一歳の時に父帝は崩御し、少年は皇帝の座を継いだ。皇太后として実権を握ろうとした皇帝の母を、高承恩は魏玄齢と組んで幽閉する事に成功した。皇帝は母を殺そうとしたが、高承恩が諌めて止めさせた。
 少年は、その生い立ちの為に残忍さを持っている。父帝の崩御する十二日前に、倒れて寝台に伏している父帝に冷水を浴びせようとした事が有った。高承恩が羽交い絞めにして止め、父帝の意識が無かった事と他に人が居なかった事で揉み消す事が出来た。
 この残忍ささえ抑える事が出来れば、皇帝は立派な君主になる事が出来ると高承恩は信じている。自分がその役目を果たすのだと、高承恩は考えている。
 ふと、高承恩は静麗の事を考えた。静麗は、自分と同じように皇帝を良い方向へ向けるために尽力するのだろうかと。静麗は、元は武闘家であり国政とは関係が無い。現在も、妃妾の最下位である才人として皇帝の世話をしているのに過ぎない。だが、静麗は皇帝に愛着されている。皇帝の愛着は、一時の物ではないと高承恩には分かる。それを受ける静麗はどれほどの者なのだろうかと、高承恩は測りかねた。
 皇帝は、疲れから船を漕ぎ始めた。静麗は、皇帝を寝かせて自分も側に横たわる。右額の傷をゆっくりと舐め、体を獣毛に覆われた手で撫でまわす。あたかも子猫を守る母猫だ。
 高承恩は、その光景に安堵を覚えた。

 皇帝軍と叛徒の軍は、平原を境に睨み合っていた。辺りは枯草が地に落ち、霜が降りている。皇帝軍は十五万、叛徒の軍は十三万である。陣地は、どちらかに有利でどちらかに不利という事は無い。双方とも補給線は保っている。どちらも相手に勝利するために決定的な物は待っていない。
 皇帝は先手を主張したが、禁軍の将軍達は反対した。ここで焦って戦いを仕掛けると、反撃を食らう可能性が高い。また高承恩は、味方を増やすための工作をしている事を告げて皇帝を宥めた。
 ただ、この工作が上手くいっていない。地方に勢力を持つ将軍や地方長官達が、日和見を決め込んでいるからだ。わざとらしく病気を理由に参戦を拒む将軍もいた。この仮病将軍の助成が有れば敵の補給線を断つ事も出来るために、皇帝軍の幕僚達の苛立ちは募った。このまま膠着すれば皇帝の権威は失墜する。叛徒達はそれを狙っていた。
 助けは意外な所から来た。帝国全土の、そして大陸全土の魔物娘が皇帝側を支持する事を宣言したのだ。彼女達は皇帝支配下の平和を評価しており、騒乱を起こした叛徒達を非難した。このために状況は変わった。魔物娘は百官と庶人に大きな影響を持っており、彼女達の手により皇帝側に付く者が続出する。同時に、叛徒側から脱落する者が次々と出る。急速に、叛徒側は弱体化していった。
 これで皇帝が勝利するかに見えた。

 霧の中で、怒号と悲鳴が飛び交っていた。無数の兵士達が血と臓物を垂れ流して地に倒れている。白い地獄の中で、次々と人間が屠られていた。
 叛徒達は賭けに出たのだ。叛徒側の軍は脱走者が続出し、全軍で十万を切っていた。このままでは壊滅すると恐れた叛徒達は、霧を利用して攻撃を仕掛けた。軍を二つに分けて、別働隊は後ろから皇帝軍を攻撃する。その攻撃が始まったら、本体は前から攻撃する。挟撃により皇帝軍を壊滅させようとしたのだ。
 皇帝軍は、この日に叛徒の軍に攻撃を仕掛ける事を決定していた。十五万いる軍で十万をきった叛徒を倒そうとする。だが、攻撃は二刻ほど叛徒達の方が早かった。この時間差により、皇帝軍は大打撃を受けたのだ。
 皇帝の前で、兵士が首から鮮血を吹きあげながら倒れた。兵士は目を剥きながら皇帝を見ると、そのままこと切れる。その屍の側には、顔を切り裂かれ眼球が飛び出した屍が転がっている。皇帝は、血の気の引いた顔で目の前の地獄を見ていた。
 敵兵が、皇帝に向かって槍を突き出した。静麗は槍を叩きおり、兵士を打ち倒す。静麗の体には無数の傷が有り、鮮血で汚れている。静麗は、皇帝の側で敵を打ち倒し続けた。皇帝の顔には、静麗の体から飛び散った血が付着している。
 二人の側には、高承恩が剣を振るっていた。高承恩の左肩は血に染まっている。その傷は見ただけで深いと分かり、動ける事が不思議なくらいだ。
 血で汚れた少年皇帝は、剣を握り直して前を見据える。皇帝は阿修羅の世界で自ら剣を振るい、生と死の境目を進み始めた。

 辺りには屍が一面に転がっていた。顔が砕かれて原形を留めない者、喉が抉られて気道が見える者、腹が裂けて変色した臓物が露出している者。屍で埋め尽された平原を見渡す皇帝には、地獄と言う陳腐な言葉しか思い浮かばなかった。
 敵襲による混乱の中で、皇帝側の兵は持ち場を守り連絡網の回復に努めた。皇帝軍の将軍と兵には、霧の中での戦闘の経験がある者達がいる。皇帝軍は、背後の別働隊に対しては防戦し、前面から襲い掛かってくる本隊に攻めかかった。
 混乱を抑える事が出来れば、数で勝る皇帝軍が有利となる。加えて、混乱に乗じて戦場から離れる敵兵が続出した。彼らは、今までは締め付けが有って抜け出せなかったが、この戦闘の混乱で逃げ出す機会を得たのだ。
 戦場に残った敵軍は、逃げ出す者を放置して皇帝軍に死に物狂いで攻撃してきた。体勢を立て直した皇帝軍は、堅実な防御で受け着実な反撃を加えていく。前面の敵軍本隊を、数の有利を生かして潰していく。敵軍の本隊はついに潰走し、勝負はついた。後ろから攻撃してきた別働隊は、攻撃を断念して退却を始めた。皇帝軍は、退却する別働隊は放置して前面の本隊を追撃して打ち取っていった。
 皇帝は勝利を手にした。だが、おびただしい犠牲の上の勝利だ。皇帝軍の死者は一万、叛徒の死者は二万を超えた。霧の中の激戦である為、膨大な死者が出たのだ。
 皇帝は、捕虜にした者を皆殺しにしようとした。だが、静麗と高承恩が諌める。
「すでにこれほどの屍がおります。陛下は、これ以上の屍をご覧になりたいのですか?」
 静麗は、屍が一面に転がる平原に皇帝を連れ出した。冬で死体の腐るのは遅いが、平原には腐臭が漂い始めている。少しすれば、人間の耐えられる臭いではなくなるだろう。
 皇帝は、感情の欠落した顔で平原を見渡していた。ゆっくりと歩く皇帝の足にぶつかる物が有る。胴から切り離された腕だ。切断面からは汚れた骨が見えた。
「余の至らなさがこの地獄を生み出したのか」
 表情同様に、無感情の声だ。
 静麗と高承恩は、無言のまま主君を見つめていた。

 その後の処理にも難問はあった。叛徒は全国に散らばっており、広大な国土の中で彼らを狩り立てなくてはならないのだ。秩序の回復を確かなものとするために、虱潰しにしていかなくてはならない。彼らに担がれた皇帝の叔父は逮捕され、裁きを受ける身となった。また、日和見を決め込んだ者達の処理もしなくてはならない。彼らの名簿を作成し、それに従って逮捕、左遷を行っていった。途中で皇帝側に付いたために処罰出来ない者もいたが、彼らは後日に口実を設けて粛清する事になる。
 ただ、叛徒の粛清だけを行えば良いわけではない。制度の改正が必要だった。まず、特定の臣下への権限の集中を改めた。中書令、侍中、尚書令をそれぞれ二人から三人に増やし、合議制を取る事にした。これらの臣民の頂点にある者達の権限を分散したのだ。また後宮に新たな役職を設け、内侍省長官への権限集中を改める。皇帝直属の御史台の権限を強化して官吏への監察を強化し、また諜報機関を内侍省長官から切り離す。禁軍も、特定の者に権限が集中しないよう再編成した。これらの改正は、魏玄齢は消極的だったが高承恩が積極的だったために実現された。
 この国にとって後世に最も影響を与える事となった事は、魔物娘を積極的に官吏に採用する制度に改められた事だろう。この国の官吏登用制度である科挙では、魔物娘を制限する内規があった。その内規が廃止され、積極登用へと切り替わったのだ。これにより優秀な魔物娘が国政に参与する事となった。
 国政が改められても、不安要因は残っている。それがいつ爆発してもおかしくは無い。だが、おぼつかない足取りであっても国は改正へと歩き続けていた。

 皇帝は、静麗の獣毛に覆われた太腿に頬ずりをしていた。黄色と黒の縞模様の獣毛は、豊かで柔らかい。そのなめらかな獣毛の感触と獣毛の下にある張りのある筋肉の感触を、少年皇帝は顔全体で楽しんでいた。太腿から立ち上る獣毛と肉の混じった匂いを、皇帝は堪能していた。静麗は、獣毛で覆われた手で皇帝の頭を撫でている。
 皇帝と静麗は寝台の上にいた。公務を終えた皇帝は、こうして静麗と楽しむ事が出来るのだ。皇帝の本音を言えば、公務の最中にも静麗と戯れていたい。皇帝は十四歳となり、性への渇望はますます強くなってきている。ただ、皇帝としての責任と義務を考えれば、四六時中静麗と戯れるわけにはいかなかった。
「ねえ、静麗は余の子供を何人生んでくれるの?」
「何人でも、陛下が望むだけ生んで差し上げます」
 太腿に顔をすり付けながら言う皇帝に、静麗は笑みを含んだ声で答える。静麗は、後宮の最高位である貴妃になっていた。反乱鎮圧時の静麗の行動により、静麗が貴妃になる事を反対する者は少なくなっていた。静麗は、いずれ皇后になるだろう。
「そんなこと言っていいのかな?静麗の体を隅から隅まで毎日貪るよ」
「陛下こそ覚悟してください。万年発情期の人虎の欲望を見せて差し上げます」
 静麗は、皇帝の尻を撫で回しながら指で尻の穴を突っつく。服の上から愛撫したにもかかわらず、皇帝の男根を脹れ上がらせる。静麗の性技は、皇帝相手に磨き抜かれていた。
 皇帝は静麗の股間に手を伸ばし、股間を覆う鉄の服の隙間から指をもぐらせる。静麗の陰毛は濡れそぼっており、指を動かすと女陰から愛液があふれている最中だと分かった。皇帝は、指で蜜壺を愛撫しながら肌の露出した内腿に舌を這わせる。
「じゃあ、静麗は余をいかせてよ。余は静麗をいかせるから」
「望む所です、すぐにいかないで下さいね」
 静麗は皇帝の服を脱がし、身をかがめて太腿と尻に舌を這わせ始めた。

 朱塗りの柱の並ぶ柱廊を、一人の娘が早足で歩いていた。娘は、金糸で縫い取られた青色の絹服を着ている。豪奢な服からただの娘ではないと分かるが、平民の服を着ていたとしても彼女は普通ではないと分かるだろう。彼女の茶色の髪からは黄色と白の毛に覆われた耳が覗き、絹服の袖から覗く腕は黄色と黒色の縞の獣毛に覆われている。
 この虎の特徴を持つ魔物娘に、通りすがる人々は恭しく礼をする。彼女は、気軽な態度で礼に答えると、娘らしからぬ大股で歩き続けた。
 彼女は、やっと公務から解放されたのだ。早朝に起こされて手早く朝食を終えると、山積みの書類に取り組んだのだ。地方長官からの報告書と、その地方長官を査察する者からの報告書を照らし合わせていた。彼女は皇帝であり、それらをきちんと調べる必要がある。
 彼女は、父帝から書類の扱い方を習った。父帝は、余白に疑問点や感想、指示などを書き込んでいた。報告書を初めとする膨大な書類を細かく精査していたのだ。その上で優れた報告書は、報告者の名前を伏せた上でその写しを回覧させていた。皇帝になって二年になるが、彼女には父帝の様なまねは出来そうにない。彼女は、書類を扱うよりは体を動かす方が得意なのだ。日もすっかり暮れて、他の者が夕食を済ますころに終わったのだ。
 父帝はまだ若いのだからそのまま皇帝を続ければ良いのに、娘に帝王学を教授すると退位してしまった。彼女の母と戯れる時間が欲しいから辞めたのだ。父帝と母は、現在は国の南部にある離宮で暮らしている。
 若き女帝は、先日届いた父帝と母の手紙を思い出した。「お前の妹が母さんの腹にいるから、生まれたら可愛がってやれ」との事だ。彼女は思わず顔をしかめた。あの色ボケ夫婦は何人子供を作ったら気が済むのだ!思わず口に出しそうになるのを堪える。既に宮殿には、彼女の妹が二人走り回っている。父と母の元には三人の妹がおり、その上に母の腹に妹がいると言うのだ。魔物は年を取りにくく、彼女の母は若々しい。父も、母と交わった事により魔物並みの生命力を持つようになった。この調子だと、あと何人の妹、あるいは弟が出来るか分からない。
 もっとも、彼女も親の事を色ボケ呼ばわりは出来ないはずだ。その理由となる人物が、彼女の目の前に現れた。
「おお、探しておった所だぞ」
 彼女は、恭しく頭を下げる小柄な少年に抱き付いた。
「いい感触だ、いい匂いだ。生き返るぞ」
 女帝は、少年に頬ずりをしながら鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。少年は、縮みこまりながら顔を赤らめる。少年は、財務関連を扱う官庁の長である戸部尚書の息子だ。戯画化した金持ちの様に太っている彼の父と違い、少年は腺の細い容貌と体付きをしている。
 女帝は、少年の懐に手を入れて胸を撫で回し、少年に顔を寄せて頬を舐め回す。
「お、お戯れを…」
「よいではないか、よいではないか」
 雌虎皇帝は、小動物の様な少年を柱の陰に引きずっていった。

 高承恩は、女帝が少年を引きずっていくのを見て苦笑していた。彼は、内侍省長官を辞して彼女の父である前帝の世話をしていた。宮殿に来たのは、女帝の仕事ぶりを見て来てほしいと言う前帝の命を受けたからだ。
 女帝の仕事ぶりは、おぼつかない所も有るが要点は掴んでおり、心配する必要は無いと分かった。高承恩は、さっそく喜びと共に前帝に報告しようとしていた所である。
 血は争えぬものだな。まあ、男が好きでも政を誤る事は無いだろう。お母上同様に元気な御子をお作りになるだろう。高承恩は、そう微笑みながら彼の孫のような女帝を見つめていた。
14/12/07 21:34更新 / 鬼畜軍曹

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