読切小説
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日出処の馬鹿と日没処の人熊猫
 目の前に大宮殿がそびえ立っていた。朱塗りの柱と白壁、瑠璃色の屋根瓦がまぶしく輝いている。圧倒的な質量を持つ建物であり、大陸を支配する帝国の皇帝が住む所にふさわしい建物だ。
 伊模子は恐れ戦いた。彼の祖国の女王が住む宮殿など、この大宮殿に比べたら掘っ立て小屋だ。この大宮殿を立てるだけの富と力を持つ国と、彼は交渉しなくてはならないのだ。これから、大陸の支配者である皇帝と会わなくてはならないのだ。
 彼は目が眩みそうになるのを必死にこらえると、他の使節の者と共に宮殿へ向って歩き出した。

 伊模子がいるのは、西の大陸の者達から霧の大陸と言われる所を支配する帝国の皇帝の宮殿だ。伊模子の祖国は、霧の大陸の東海に浮かぶ島国だ。伊模子は、祖国と大陸と国交を結ぶために派遣された。大陸は伊模子の祖国よりも文化が進んでおり、その文化を島国の指導者たちは欲しがった。その為に、使節団を大陸に派遣したのだ。
 伊模子は、彼が携えて来た国書について控室で考えていた。そのとたんに胃が痛みだした。文面の中に、明らかにこれから会う皇帝を怒らせる記述があるのだ。彼を使わせた王子の人格を表す、傲慢な記述だ。とても平穏無事に済むとは思えない。
 伊模子は、国書をしたためた王子の事を思い出した。明らかに人格に問題がある、それどころか狂っているかもしれない王子だ。奇行を繰り返し、祖国でも腫物に触れる態度で扱われている王子だ。
 伊模子は、呻き声を上げながら王子について考える。女装するのは構わない、趣味は人それぞれだろう。男なのに男が好きなのも構わない、人の居ない所で好きにすればいいだろう。もっとも、大豪族の跡取りと関係が噂された時は焦ったが。頭のかわいそうな幼女を拉致監禁し、もてあそんだ時はさすがに慄然とした。いくら何でも人倫に反する。だが、見て見ぬふりさえすれば国事には関わらない事だ。あの王子がどれほど変態で、異常で、おまけに人格が破綻していても有能である事は間違いないのだ。我慢できる事だ。だが、今回は違う。
 あの王子は、大陸を支配する大帝国を挑発しようとしているのだ。まずい事に、王子は挑発しているとは思っていないだろう。あの狂人特有の傲慢さを持った王子は、当然の事を書いていると思っているのに違いない。
 伊模子は、呻き声を抑えられなかった。

 伊模子は、謁見の間で皇帝の前に跪いていた。豪奢と言う言葉が似合う謁見の間だ。朱塗りの柱は、龍や鳳凰の形の金細工で惜しみなく装飾してある。おびただしい数の金の燭台が広い室内を照らし、金の香炉から香煙が立ち上っている。この謁見の間に比べたら、伊模子の祖国にある女王の謁見の間は、平民の部屋に見えてくる。
 大陸の支配者である皇帝は、黒色の絹に金糸を刺繍し、紅玉や青玉を縫い込んだ服を着ていた。冠もまた金、紅玉、青玉で装飾されている。突き刺すような眼差しの目立つ、彫りの深い険しい顔立ちをしている男だ。その狷介な視線の前で、伊模子は震えそうになるのを堪えていた。
 皇帝は、伊模子が携えて来た国書を読んでいた。眉間にしわを寄せて、ただでさえ険しい顔立ちを凶暴なまでに狷介な表情にしている。皇帝は読み終わると、跪いている伊模子に視線を突き立てる。皇帝は、国書を伊模子に投げつけた。
「お前達は、余を舐めているようだな。良かろう、増上慢の報いを与えてやろう。余には百万の軍がおるのだ。お前達はその力を思い知る事となるのだ。下がれ!」
 皇帝の煮えたぎるような声と言葉に、伊模子は体を痙攣させた。自分は使節団の長であり、相手の皇帝に怯えを見せてはいけない事は分かっている。それでも痙攣を抑えられなかった。
 伊模子は全力で震えを抑えて、険しい顔を作って皇帝に礼をして下がった。

 宿舎に戻った伊模子は、頭を抱えながら震えていた。最悪の結果だ。これで我が国と大陸との間で戦争が始まる。相手は、大陸を支配する大帝国だ。我が国とは力が全く違うのだ。我が国はひねり潰される!
 第一、国書には皇帝が怒って当然の事が書いてあったのだ。「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す」などと、あの変態王子は書いたのだ!帝国と皇帝に喧嘩を売っているのか?
 伊模子は、大陸に渡ってからの事を思い出した。広大と言う言葉がむなしくなるほど広い国土だ。その国土で、おびただしい数の人々が暮らしている。伊模子の祖国など、大陸の一地方よりも狭く人が少ないのだ。相手は、その大陸を支配する国なのだ。しかも、この国は大きいだけではない。伊模子の国とは段違いの富と文化を持つ国なのだ。帝都に来る道中で、そして帝都でその事を思い知らされた。戦って勝てる相手ではないのだ。
 大陸は三百年近くにわたって分裂し、激しい戦乱を繰り広げた。その大陸は、三十年近く前にようやく再統一を成し遂げた。このような経緯があるために、大陸を支配する国は戦慣れしており強大な軍を持つ。この国はまさに「力こそ正義」と言う国なのだ。
 現皇帝は、皇子であった頃に軍を指揮して南の王朝を攻め滅ぼしている。自ら軍を指揮し、大陸を統一した男なのだ。宮殿に閉じこもっている文弱な皇帝とは違う。
 俺の身はどうなるのだ?俺は、生きて国へ帰れるのか?
 伊模子は、皇帝に関する噂を思い出した。父である前皇帝を弑し、皇帝の位を奪い取ったと言う噂だ。これは噂に過ぎないが、兄弟達を殺したことは事実だ。皇帝は廃止された残酷な刑罰を復活させ、その刑罰により九族を殺された者もいる。その様な皇帝が、敵とみなした国の使節団の者をどう処するのだろうか?間違っても明るい先は見えない。
 あいつのせいだ!男と幼女が好きな倒錯者の癖に、女王より偉そうな態度を取る王子のせいで、俺は異国で死ぬのだ!
 伊模子は、懐に手を当てた。そこには毒が入れてある。毒を飲めば、嬲り殺しにされるよりはマシだろう。伊模子は、自害について本気で考え始めた。

 伊模子の部屋に誰何の声が響いた。伊模子は震えあがる。とうとう俺を殺す者が来たのか?
 伊模子は力を振り絞り、冷静に考えようとする。誰何したのは女の声だ。殺すにしてはおかしい。まずは様子を見た方がいい。
 伊模子は、部屋に入るように外へ声をかける。伊模子は傍らに刀を置き、懐の毒を何時でも出せるように用意する。落ち着こうとするが、脂汗が止まらない。
 一人の女が、伊模子の部屋へ入って来た。伊模子は、女の姿を見て愕然とする。どう見てもまともな女ではないのだ。女は、白髪をした若い娘だ。それだけなら珍しい髪の女で済むだろう。白髪の間から、丸っこい獣の耳が生えている。女の手足は黒い獣毛で覆われており、獣の爪と肉球が付いている。獣の特徴を持つ娘は、伊模子に微笑みかけた。
 魔物娘か、大陸にも多いと聞く。伊模子はやっと落ち着きを取り戻す。伊模子の祖国も大陸にも、人とは違う魔物達が大勢住む。魔物達の中には、人と共に暮らす者もいるのだ。目の前の娘もその一人だろうと、伊模子は考える。
 娘は台を持ち、その上には酒と料理が乗っている。娘は伊模子の前に台を置くと、酒を注いで伊模子に差し出した。
 俺を毒殺するつもりか?妹子は警戒したが、ふっと笑って酒を受け取る。今更じたばたしても仕方がない。酒を飲むとしよう。どうせ毒を飲むつもりだったのだ。毒酒を飲んでも構わない。
 伊模子は酒を飲み、料理を食べた。魔物娘は、傍らで寄り添いながら酒を注いでくれる。酒は飲んだ事が無いほど極上の物であり、大陸の文化の高さを思い知らせてくれる。料理も、祖国である島国の物とは雲泥の差がある。鹿の肉らしいが、祖国の物とは味付けが違う。伊模子は、敵地であるにもかかわらず陶然としてしまう。
 魔物娘は、扇情的な格好をしていた。豊かな胸を乳首が見えそうなほど露出した、きわどい造りの服を着ている。裾の両側には深い切れ込みがあり、足をむき出しにしている上に股間と尻が見えそうになる。薄青い爽やかな色合いの服であるにもかかわらず、娘の肉感的な体を引き立てる服だ。
 娘は、棘のない柔らかい顔立ちをしている。だからと言って太っているわけではなく、整った顔立ちをしている。娘は、丸みを帯びた美貌に人懐っこい笑顔を浮かべていた。
 伊模子は、自分に擦り寄りながら酒を注ぐ女を見てその意図を考えた。こやつ、皇帝の命で俺を籠絡するつもりか?俺から祖国の情報を引き出すつもりか?戦を始める前に俺に寝返らせて、俺を祖国に対する密偵に仕立てるつもりか?伊模子は、娘のむき出しの白い胸を見ながら考えを巡らせた。
 娘は酒を置くと、伊模子に抱き付いた。伊模子の体に、柔らかい獣毛がふれる。伊模子は警戒しながら娘を抱いているが、ふと、娘の感触に心を囚われる。
 モフモフ?モフモフモフ?モフモフモフモフ!
 伊模子は、娘の獣毛の感触が自分に染み込んでくるのを感じた。なめらかな毛並みを撫でているうちに、緊張が解けて行き穏やかな感情が自分の中に広がる。娘の笑顔が、心の中に染み渡る。
 モフモフモフ、モフモフモフモフ、モフモフモフモフモフ。
 伊模子は娘の毛並みに酔いしれながら、意識が宙に浮いて行く事を止める事が出来なかった。

 伊模子は、人懐っこい魔物娘と会い続けた。魔物娘の名は玲玉と言い、レンシュンマオと言う種族らしい。レンシュンマオとは、大陸に住む大熊猫と言う動物の特徴を持つ魔物娘らしい。人懐っこい種族であり、人と共に暮らす事が多いそうだ。宮廷に仕えるレンシュンマオも数多くいるらしい。
 伊模子は、玲玉と会い続けた。玲玉は毎日のように伊模子の所にやって来て、身を摺り寄せた。伊模子だけではなく、他の使節団員の所にも来ているらしい。
 玲玉が皇帝の命で来ている事は、察する事は出来る。だが、それでも伊模子は玲玉を追い払う事は出来なかった。玲玉の人懐っこい笑顔が、穏やかな話し方が、何よりも滑らかな毛並みが伊模子の心を捕えた。玲玉といると、張り詰めた心が解けて行くようだ。
「大丈夫ですよ、陛下はすぐに機嫌を直してくださいます。貴国と我が国は、友好を結ぶ事が出来ますよ。既に、その方向で事は動いております」
 玲玉は、ゆったりとした喋り方で伊模子を慰撫する。その言葉の確証はない。だが玲玉を抱いていると、伊模子は意志が解けていき疑う気力がなくなっていった。

 伊模子は、帝国の宰相に呼び出された。緊張しながら宰相の勧める席につくと、思わぬことを告げられた。帝国は、伊模子の国に返書して使節を同行させると言うのだ。
 宰相の話を聞いた時、伊模子は自分の耳を疑った。戦争となり自分は殺されると考えていただけに、宰相の言葉が信じられなかったのだ。だが、返書を渡されて同行する使節と引き合わされて、さすがに伊模子も信じるほかなかった。
 喜びながらも首をかしげる伊模子に、玲玉は事情を説明した。全ては皇后のおかげだそうだ。怒り狂う皇帝を宥めて、伊模子の国と友好を結ぶ事を勧めたそうだ。皇后は、玲玉と同じくレンシュンマオだ。人を宥めて落ち着かせ、穏やかな気持ちにさせる事に関しては、レンシュンマオは大陸の魔物娘の中でも随一である。皇帝は、皇后を抱くことで態度を軟化したらしい。
 皇后の存在により、かつては暴君と言われた皇帝も随分と変わったらしい。皇帝は、大規模な土木工事を好んだ。陸で舟遊びをするために大運河を築こうとし、北の民族に力を示すために長城を作り直そうとした。その為に百万以上の男女が動員されて、民は塗炭の苦しみを味わった。皇后は皇帝の膝の上で「めっ!」と叱ったところ、皇帝は工事を止めてしまったそうだ。
 とても信じがたい事だが、実際にあった事らしい。皇帝は、皇后のモフモフした感触に取りつかれている為、皇后の言いなりなのだそうだ。皇后を膝の上で抱いていると、いかなる贅沢をしても味合う事の出来ない心地良さを感じるらしい。贅沢好き、派手好きだった皇帝も、皇后にのめり込んでからは贅沢を放り出して興味を示さないそうだ。
 伊模子は、皇帝と皇后の話は本当かも知れないと思っている。伊模子も、レンシュンマオである玲玉を抱いていると全てがどうでもよくなってくるのだ。ただ、微笑みを浮かべる玲玉の体を撫でて、モフモフした感触を味わいたいのだ。
 帝国との戦争が避けられて、伊模子は心の底から安堵した。帝国と祖国とでは、力が違いすぎるのだ。伊模子は、大陸に渡ってからその事を思い知らされてきた。壮麗な宮殿、壮大な帝都、整備された街道と都市、整然かつ緻密な法とそれに基づいて動く官僚組織、地を埋め尽くす軍と民。とてもかなう相手ではない。
 その巨大な国がレンマオシュンによって動きを変えるのは不思議だが、かわいい獣の感触は力を上回るのかもしれない。何れにせよ戦争を回避できた事に、伊模子は心を撫でおろした。

 伊模子は、玲玉の腕を撫でていた。黒い獣毛を繰り返し撫で回し、柔らかく滑らかな感触を指で、掌で堪能している。獣毛は厚く、指のみならず掌まで埋まりそうだ。
 伊模子は、すでに玲玉の体を繰り返し味わっていたが厭きる事は無かった。玲玉を抱くたびに、より深く堪能できる気がした。
 伊模子は使節団の長であり、相手の国の差し向けた女を抱くべきではないだろう。伊模子も、そんな事は分かっている。だが、伊模子はレンシュンマオの、玲玉の魅力に抗う事が出来なかった。
 伊模子は手をおろし、玲玉の足を撫でまわした。玲玉の足は切れ込みの入った服からむき出しになっており、腕と同様の、いやそれ以上に柔らかい獣毛が生えている。太ももの内側を愛撫すると、玲玉は身をよじりながら体を伊模子に押し付けてくる。玲玉の体からは、穏やかな香の香りが漂って来る。すべらかな髪が伊模子の頬に触れ、香りが鼻をくすぐった。
 玲玉は、伊模子の体を愛撫しながら服を脱がしていく。伊模子の股間を露わにすると、右の掌で包み込むように握り、ゆっくりと愛撫し始める。玲玉の掌には、柔らかさと弾力を兼ね備えた肉球がある。玲玉は、伊模子の男根を肉球で揉み解し、獣毛でくすぐった。伊模子の男根は、たちまち硬くなり反り返る。先走り汁があふれて来て、玲玉の肉球と獣毛を濡らす。
 玲玉は伊模子の下半身に覆いかぶさり、股間に胸を押し付けた。胸の谷間が辛うじて乳首を隠すほど露出している型の服である為、滑らかな胸の肌が男根を包む。玲玉は円を描くように胸を動かし、伊模子の先走り汁を胸に擦り付けていく。玲玉の手が服にかかり、薄い桃色の乳首を露出させる。玲玉は胸の谷間で伊模子の男根を包み込み、硬くとがった乳首を男根の亀頭やくびれ、竿に擦り付けた。
 伊模子の男根は血が集まって赤黒くなり、白い胸の肉を乱暴に突き上げた。白い子山のような胸の肉は、暴れる肉棒を宥める様に愛撫する。柔肉は男根を左右から揉み込み、上下にさすり上げた。そしていたずらっぽく桃色の突起でくすぐる。透明な汁を漏らしながら猛り狂う肉棒を、余裕をもってあやす。液を留まる事無く湧き上げる男の先端に、白と黒の獣娘は乳首と同じ色の唇で口付ける。唇を濡らす液を啜り上げ、濡れ光る舌でくびれの裏側をくすぐった。
 伊模子の男根は、先端から激しく白濁液を吹きあげた。液体と言うよりも固体に近い塊が、白い麗貌にぶつかっていく。桃色の唇と舌を白く覆い、鼻と頬を汚す。辺りに突き刺す様な臭いが漂い始める。次第に勢いを弱めていく放精は、男根を愛撫し続ける胸の軟肉を汚して臭いを付けていく。玲玉は亀頭の先端を銜え込み、強く精を吸い上げ始めた。管の中の精が、根元から玲玉の口へと吸い出される。玲玉は亀頭から口を離し、伊模子を上目使いに見上げて微笑みかけた。
 玲玉は、顔からゆっくりとたれ落ちる白い塊を桃色に光る舌で舐め上げる。胸に付いた汚液も、挟み込んでいる肉棒に付いている物と共に舐め取って行く。精を舐め取る様を伊模子に十分に見せ付けると、玲玉は身を起こした。そのまま伊模子の体に伸し掛かり、獣毛に覆われた太腿で伊模子の男根を挟み込んだ。そのまま太腿で刷り上げ、獣毛でくすぐる。男根を埋めるほどの厚みを持つ柔毛に嬲られ、萎えかけた男根は再びたぎり立った。
 伊模子は玲玉を抱きしめ、玲玉の右の二の腕に顔を擦り付けた。波打つ獣毛が、伊模子の顔を柔らかく迎える。伊模子は顔を擦り動かし、頬で、額で、瞼で、鼻で、唇で極上の獣毛を楽しむ。玲玉からは、獣毛と肉と香、それに塗り込まれた精の混じり合った匂いがした。玲玉の匂いは、伊模子の欲情を掻き立てていく。伊模子は腕に顔を擦り付けながら、服の隙間から除く腋に舌を這わせる。玲玉の腋は少し汗をかいており、味と匂いがする。伊模子は玲玉の味と匂いに興奮し、男根から先走り汁を迸らせた。
 伊模子は玲玉の服の切れ目から手を入れ、股間を愛撫した。股間を覆う小さな下着は濡れそぼり、伊模子の指を濡らす。伊模子は玲玉の下着をずらすと、わななく男根を女陰に当てた。そのまま熱い泉の中へ肉棒を沈めていく。温泉の中はぬかるんでおり、柔らかく蠢く肉がまとわり付く様は泥濘の中に肉棒を埋め込んでいるようだ。温かい泥濘は肉棒を揉み解し、渦を巻いて奥へと引き込む。怒張する肉棒は、肉が溶けているかのような泥濘の中で宥められ、癒されていく。
 玲玉は腕で伊模子の背を愛撫し、足で伊模子の足をさすった。獣毛で覆われた手足で体を愛撫され、柔らかくぬくぬくした感触に包まれていく。柔毛が肌を撫でるたびに、伊模子の体を快感が走り、身が蕩けていく。伊模子は玲玉の頭に頬を摺り寄せ、黒い獣毛に覆われた丸い耳を、甘噛みしながら舌と唇で楽しむ。玲玉は、笑いながら伊模子の首筋を舐めた。
 伊模子は玲玉の奥を突き、泥濘の渦の中に精液を放った。渦の中で蕩かされた男根から、あたかも男根が液になったかのように渦の中心に放たれる。男根から腰に、背に、頭へと快楽の奔流が走る。痙攣が伊模子の全身を襲う。繰り返し波が伊模子を襲い、時間をかけて子種汁を放ち続ける。ゆっくりと波が収まっていき、伊模子は精を放ちながら息をつく。
 玲玉は、精を受け止めながら伊模子の体を愛撫し続けていた。閉じていた眼を静かに開けると、微笑みを浮かべながら伊模子の耳を唇で食む。そのままゆっくりと耳の中へ舌を這わせた。
「たくさん出されましたね。私の中に精が染み込んできていますよ。でも、もう少し頑張って下さいね」
 玲玉の中にある泥濘は、再び伊模子の男根にまとわり付いて揉み始めた。

 伊模子は、船の上で風に吹かれていた。既に大陸を離れ、祖国である島国へと向かっている。伊模子の傍らには、玲玉が寄り添っている。伊模子の任務は、かなりの部分が果たされた。国書を帝国の皇帝に奉じ、返書を戴いたのだ。帝国の使節も同行している。その上、レンシュンマオ達が大勢同行している。
 伊模子の国が大陸に使節を出した理由の一つは、大陸の文化を引き込むためだ。レンシュンマオ達は、それぞれ大陸の知識と技術を持っている。彼女達が伊模子の国に渡来すれば、大陸から東夷呼ばわりされる島国も発展するだろう。玲玉もまた、渡来するレンシュンマオの一人だ。彼女はのんびりとした見た目をしているが、法と官僚制について豊富な知識を持っていた。彼女の知識は、伊模子の国の国政を発達させるのに役立つであろう。
 玲玉は、伊模子の側にいて大陸に関する様々な事を教えていた。既に伊模子にとっては公的に必要不可欠な存在となっている。同時に、伊模子にとっては私的にも必要な存在となっていた。彼女は伊模子の側に寄り添い続け、伊模子と関係を結び続けていた。伊模子は、玲玉に丸め込まれ、包み込まれたと言っても良い。
 伊模子は、玲玉に愛撫されながらも陰鬱な気持ちに支配されていた。相手の国の者を身近に置きすぎる事は、外交上禁じられた事である。相手の国に情報が筒抜けになるだけではなく、自分の国で相手の国が工作し易くなる。伊模子と玲玉の関係は、当然に祖国で問題になるだろう。しかも、使節に参加した男は全員、レンシュンマオと関係を持ったのだ。その関係を持ったレンシュンマオ達が、使節団に同行しているのだ。
 伊模子には、女王の激怒する姿が容易く思い浮かんだ。それは、まだいい。伊模子が恐れているのは、使節団派遣の責任者である王子だ。氷刃の様な冷たさと蛇のような執念深さを持つ、祟り神の様な王子の眼差しを思い出すと伊模子の身は震えるのだ。あの狂王子は、伊模子のやった事を許さないだろう。
 伊模子は、皇帝から渡された返書を盗み見ている。文面を見た時、伊模子は危うく返書を取り落すところだった。返書の文面を要約するとこうなる。
「わざわざ東夷の地から良く来た、ほめてやろう。臣下の者の忠義はうれしく思うぞ。これから目にかけてやるから有りがたく思え」
 伊模子は呻き声を上げそうになる。あの、誇り高い王子は、皇帝の返書の内容に激怒するだろう。大陸に間違いなく喧嘩を売る。その上、自分を初めとする使節団に八つ当たりをするだろう。一緒に渡って来たレンシュンマオ達にも危害を加えるだろう。あの異常者の見本たる王子は、自分は他人に危害を加える事は大好きだが、他人から危害を加えられる事に対しては偏執狂的に憎悪するのだ。伊模子は、苦悶の声を抑える。
 王子が単なる人格破綻者ならば、たいして問題は無い。まずい事に、王子は女王に匹敵する権力が有り、かつ有能であるのだ。
 伊模子は一つの噂を思い出す。前の王は、大臣にして大豪族の総領たる男に弑された。臣下による王殺しとして大騒ぎとなったが、あの暗殺の真の黒幕は王子だと言うのだ。汚れ役を大臣に押し付け、自分を頼りにする王族の女を女王に仕立て上げる。そして国の実権を手に入れたのだと。
 王子は特殊な力を持ち、人を操ると言われていた。人々が王子に従うのは、王子が有能である事も理由の一つだが、それにしては解せない事もある。王殺しの大臣ですら、なぜか王子の意のままに動く節があるのだ。大臣は野心家であり、王族を倒して王位を乗っ取ろうとしていると噂されるほどの者だ。その大臣が王子の意のままになるのは、王子の妖力のせいだと言われている。馬鹿馬鹿しい噂だが、王子の事を思い出すと伊模子には否定出来ない。
 伊模子の心の中に、王子の魔眼が浮かび上がった。伊模子は、こらえきれずに体を震わせる。玲玉は、伊模子の体をゆっくりと抱きしめながら体を撫で回した。
「大丈夫よ、国に帰ってからの事は私達に任せて。既に手は考えてあるのだから」
 玲玉は、自分の言葉の根拠を示さない。それでも伊模子は、玲玉の獣毛に覆われた手に愛撫されているうちに何とかなる気がしてきた。

「ほう、異国の女達にたぶらかされた挙句、肝心の返書を奪われたと申すのか。それでよく帰ってこられたな。帰ってくればほめてもらえるとでも思ったのか?」
「申し訳ございません。軍勢を向けられては皇帝の返書を渡すほかありませんでした」
 伊模子は、王子の前で報告をしていた。船が港に到着すると、すぐに王子の館へ参上したのだ。王子への報告が終わった後で、女王に報告するのだ。
「わざわざ半島に寄った訳だ。真っ直ぐに帰って来ずに」
「海が荒れて、半島に寄らざるを得なかったのです。半島の港についてすぐに軍勢が差し向けられ、我らは拘束されたのです。半島の王は、我が国が大陸と交易する事を望んでいないようでした」
 伊模子は、皇帝の返書を王子に差し出さない事に決めた。大陸から突き出ている半島にわざと寄り、その地の王に奪われた事にしようと目論んだのだ。
「レンシュンマオ達は、大陸の知識と技術を持っております。彼女達を我が国に閉じ込めて置けば、大陸に内通させずに彼女達の知識と技術を手にする事が出来ます」
「お前は、我が国に大陸の間諜がはびこっている事を知らないのか?レンシュンマオを我が国に閉じ込めても、間諜とレンシュンマオが連絡を取り合えば我が国の内情は筒抜けになるのだぞ」
「彼女達の力は貴重です。危険を冒しても利用する価値はあるかと存じます」
「そのような事は、自分の尻拭いが出来てから言う事だ。女にたぶらかされた間抜けが言ったところで、言い訳にもならぬ」
 王子は、冷ややかに伊模子を見据えていた。ただ冷たいだけならば、伊模子も耐えられただろう。その眼差しは、汚濁と不透明な悪意のこもったものだ。粘つくような、纏わりつくような汚わいと悪意だ。王子の顔は、美しいとさえ言えるほど整っている。その分だけ禍津日神のような眼差しは、耐え難いほど伊模子の心を蝕んでくる。
「明日の朝参の時に、お前は陛下に報告しろ。陛下はお怒りになるだろうが、お前の自業自得だ。期待を裏切った報いは受けてもらうぞ」
 王子は、伊模子を魔眼で突き刺す。単なる視線であるにもかかわらず、伊模子には自分の心を腐らせる力があるように感じる。
「私は、無能な者を我慢するつもりは無い。小細工も我慢出来ぬ。無能者の分際で小細工を弄すれば、その存在自体が許せぬ」
 王子の言葉と眼差しに、伊模子は意識を失う寸前だった。

 伊模子は女王への報告を終えた後、宮殿からふらつきながら出た。馬に乗ってはいるが、いつ転げ落ちてもおかしくは無い。宮殿の外で待っていた玲玉が馬を抑えた時は、すでに半ば馬からずり落ちていた。
 伊模子は、女王と大臣から激しく叱責された。数多くの廷臣達の前で、晒し者にされたのだ。女王と大臣の怒号と廷臣達の突き刺すような視線に長時間晒されて、伊模子の精神は繰り返し打ちのめされた。ただ、それだけならまだ良い。女王の側に控える王子の禍々しい視線は、片時たりとも伊模子を離れる事は無かった。その視線は、伊模子を破滅させる段取りを綿密に執念深く考えている事を表していた。
 伊模子は、ぼんやりとこれからの事を考えていた。何処かへ逃亡しようか?東の地には、まだ王の勢力の及ばぬ所が有ると言う。そこへ逃げるか?あるいは大陸へ逃げようか?大陸は広大で、文化が発達している。あの、おびただしい人の群れの中に隠れれば、自分は生きながらえる事が出来るかもしれない。
 伊模子は身を震わせる。いや、あの王子は祟り神の様な者だ。何処までも追って来るだろう。俺の破滅は決まったのだ!
 伊模子は、いつの間にか竹林にいる事に気が付いた。帰路の途中にある竹林らしい事が分かる。玲玉は、伊模子の傍らで竹の葉を美味しそうに食べていた。その表情は、この世に不幸など無いかのような表情だ。
「心配しないでいいのよ。私達に、あの王子の事を任せてね」
 心配せずにいられるかと叫びたくなったが、竹の葉を食べている玲玉の幸せそうな表情を見ているうちに心が静まって来た。

 伊模子は、大陸から共に帰った者達とレンシュンマオ達と共に、大陸から導入する諸制度について話し合っていた。大陸の諸制度は発達しており、伊模子の国に導入すれば目覚ましい発達をもたらす事は間違いない。ただ、大陸とは実情が違うためそのまま導入する事は出来ない。その為の微調整について話し合っているのだ。既に帰国してから三月になるが、彼らは毎日のように話し合っている。
 伊模子は王子の魔手に怯えていたが、怯えて家に閉じこもって震えていても仕方がないとこうして話し合いに参加しているのだ。気持ちは安定しないが、何もしないよりは仕事に励んだ方が良い。大陸の制度を導入する仕事は、伊模子のこれまでの人生うちで最もやりがいのある仕事だ。
 傍らで玲玉が支えてくれている事も、伊模子が仕事に励む事の出来る理由だ。王子が何と言おうと、伊模子にはもはや玲玉は欠かせない存在なのだ。伊模子は、玲玉の聡明さに、穏やかな気性に、そしてモフモフした感触にのめり込んでいるのだ。
 伊模子は、自分の最後の仕事になる覚悟で制度設計を行っていた。王子に殺されても、自分の関わった制度は残るかもしれない。王子の人格は歪んでいるが、利用価値のある物は残すだけの賢さはある。悔いは残るが、制度設計の仕事をやれるだけやろうと考えていた。
 ただ、不可思議な事が起こっている。既に帰国してから三月経っているのに、王子が手を出さないのだ。気に食わぬ者を即座に始末する王子にしてはおかしい。首をかしげる伊模子の下に、王子に関する話が入って来た。王子が、レンシュンマオの一人にのめり込んでいると言うのだ。
 伊模子が帰国してすぐに、王子の下に一人のレンシュンマオが訪ねて来た。大陸の政治情勢について王子に話があるという事だ。
 王子が会ってみると、そのレンシュンマオは王子に擦り寄った挙句、王子を抱きしめたそうだ。女嫌いの王子は、剣を抜いて切り殺そうとした。ところがレンシュンマオの柔らかい毛並みで撫でられているうちに、王子は剣を取り落したそうだ。王子はレンシュンマオを抱き返し、その耳や腕や、足、さらには尻尾の獣毛を愛撫した。
「モフモフだよ!モフモフだよ!」
 王子はそう叫びながら、レンシュンマオの体中を撫で回したそうだ。王子は、そのままレンシュンマオを寝所に引き込んだ。
「んおほおおおおおおお!これ、ぎもぢいいのおおおおおおおおお!」
 寝所からは、王子の奇声が響いて来たそうである。
 その後は、時間さえあればレンシュンマオと戯れていたらしい。自分の膝の上にレンシュンマオを乗せたり、レンシュンマオの柔らかい獣毛に覆われた足で膝枕をしてもらっていたそうだ。
「男や幼女よりも、レンシュンマオの方がいいでしゅうぅぅぅ……」
 レンシュンマオの膝の上で肉球と獣毛に愛撫されながら、王子は涎を垂らしていたそうである。
 伊模子が帰国して四月がたったころ、伊模子は大陸の制度の導入についての公務に携わる事を正式に任命された。王子が伊模子を任命したのだ。他の使節団員やレンシュンマオ達も、伊模子と同じ仕事に付く事を命じられた。
 こうして伊模子は、失脚する事も破滅する事も無く玲玉と共に暮らす事が出来る事となった。

 伊模子は、玲玉の膝の上に頭を乗せて横たわっていた。玲玉は、大陸風の深い切れ込みある服を着ているため、足はむき出しとなっている。柔らかい獣毛の感触が頬を撫で、穏やかな匂いが鼻をくすぐる。玲玉は、伊模子の髪を撫でていた。
 伊模子はうつらうつらしながら、今朝に王子から聞いた話を思い出していた。大陸に再び使節が派遣される事がほぼ決まったそうである。レンシュンマオ達がもたらした大陸の知識と技術は、極めて優れている事が明らかになった。王子を初めとするこの国の支配者達は、大陸からもっと文化を引き込む必要がある事を痛感していた。その為、再び使節を派遣する事が決まったのだ。
 この決定は、伊模子にも大きく関わる事だ。王子は伊模子を使節団の長に推薦し、その事は女王に承認されたそうである。二度にわたり大陸に渡る使節の長となる栄誉を賜る事は、弱小豪族出身の伊模子にとっては異例の出世である。
「ゆっくり休んでね、今日の仕事はもう終わり。私と一緒にいましょうね、あなた」
 玲玉の穏やかな声が、愛撫の感触と共に伊模子を眠りへと誘う。伊模子と玲玉は夫婦となった。大陸の者と婚姻を結ぶ事に批判は合ったが、王子が認めたのである。王子もレンシュンマオにのめり込んでいる事が大きな理由だ。使節団にいた男も全て、レンシュンマオを妻とした。
「我が国の男どもは馬鹿ぞろいなのか?」
 女王はそう呆れたらしいが、王子はすましてこう言ったそうだ。
「腐れおめこの売女が何と言おうと、私は一向に構わぬ」
 本当に言ったかどうかは分からないが、あの王子なら言いかねないと伊模子は思う。
 何はともあれ、我が国と大陸の関係は改善した。我が国も発展しつつある。そう伊模子は前向きにとらえる。レンシュンマオは大陸の間諜かもしれないが、我が国に役立つ事は確かだ。それに……。
「モフモフだよ、モフモフだよ…」
 伊模子は、レンシュンマオの太腿に頬ずりをする。この感触を味わえるのならば、間諜だろうが何だろうが構わない。
 伊模子は、レンシュンマオの感触に包まれながら眠りに落ちて行った。

 蛇足にはなるが、この後の事について少し記す。王子とレンシュンマオとの間には、娘達が生まれた。その娘達は、いずれも母親譲りのレンシュンマオだ。
 その一人は、大豪族の跡取り息子の所へと乗り込んだ。その跡取り息子とは、王殺しの大臣の孫にあたる。祖父や父以上の野心家であり、王族を皆殺しにしようと企んでいると噂されている青年である。レンシュンマオの王女は、いきなりその青年に抱き付いた。青年は王女を突き放そうとしたが、獣毛に愛撫されているうちに自分から王女を抱きしめ始めた。そのまま獣毛と肉球の虜になった大豪族の青年は、レンシュンマオ王女に求婚してめでたく結ばれた。この婚姻に対して、王子と恋仲であったと噂される青年の父親は、複雑そうな表情をしていたそうである。
 何はともあれ、かつて血みどろの戦いを繰り広げた王家とその大豪族は、婚姻を境に和合した。
 一方大陸では、皇帝に反旗を翻す反乱が起こった。皇后の影響で暴政を止めた皇帝だが、かつて虐げられた者達の恨みは残っている。反乱は、瞬く間に大陸全土に広がった。
 皇帝は、反徒を皆殺しにしようと軍を集めた。だが、レンシュンマオである皇后の哀願によって思い留まったのだ。
「一緒に竹林で暮らしましょう」
 皇帝はその言葉を聞き、軍に解散を命じて自分は退位した。その後皇帝は、皇后と共にレンシュンマオ達にかくまわれて暮らしていると言う。
 かくして大陸では、たいして血を流す事無く王朝が交代したそうである。
14/11/20 19:39更新 / 鬼畜軍曹

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