読切小説
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事故物件でファックしよう
 俺は、事故物件を借りた。何でも二年前に若い女が、睡眠薬を飲みすぎて死んだらしい。警察の話では、自殺というよりはオーバードースだとの事だ。
 俺は、自分の住む部屋で人が死んでもかまわない。死体は片付けられたし、部屋も洗浄されている。ならば問題は無い。人間は物質に過ぎない。洗浄されれば、居なかったも同然だ。
 俺は、仕事の都合で引っ越す必要が出来た。前は親と同居していたが、そこでは仕事を得られそうにないからだ。景気が回復してきたとは言え、地方には波及していない。仕方なく県都である別の市で仕事を探して、なんとか得る事ができた。俺は車が運転できないし、田舎だと電車の本数は限られる。それで仕事を得た市へ引っ越す事にした。
 俺は貧乏だから、なるべく安い部屋がいい。トイレ共同風呂なしの4畳半でかまわない。そう思って探してみたが、見つからなかった。何でも貧しい人が増えたため、ぼろアパートに住む人が増えたそうだ。その為、貧乏でも家賃の高いアパートを借りなければならなくなったそうだ。
 次に公営住宅に入ろうかと思ったが、これは条件に当てはまらなかった。同居する親族が居なければだめだ。小さい家だが、親は家を持っている。
 結局、家賃の高い普通のアパートの部屋を借りようとした。うんざりしながら部屋を探していると、やたらと安い物件が有った。トイレ風呂付六畳一間の部屋の場合は、俺が引っ越す市では家賃が月四万で敷金礼金合わせて八万が相場だ。それなのに月二万円で、しかも敷金二万円だけで良く礼金は要らないそうだ。築年数は十一年であり、古いわけではない。
 不動産屋で事情を聞くと、事故物件だと分かった。俺は危うく小躍りするところだった。上記したように、人が変死した部屋でもかまわない。安ければいいのだ。俺は早速借りる事にした。
 俺は、幽霊なんて信じていなかった。俺は、いわゆる唯物論者だ。それが引越した後に覆される事になった。

 引っ越してからすぐに、変な夢に悩まされる事になった。やたらと卑猥な夢を見るのだ。俺は、既に二十代も後半だ。やたらと淫夢を見る年頃と言うわけではない。にも関わらず、毎日の様に卑猥な夢を見るのだ。
 始めは引っ越して環境が変わったのと、新しい仕事のせいだと思っていた。情緒不安定になっているのだろう。だが、それにしても毎日卑猥な夢を見るのはおかしい。
 夢の内容は様々だ。ホットパンツの女と野外でバックでやる、ボンテージファッションの女と赤と黒の部屋で騎乗位でやる、レースクイーンに競技場でフェラチオをしてもらうなどだ。
 相手の女の顔はよく分からない。若くて美人だとは思うが、はっきりと思い出す事が出来ないのだ。ただ、出てくる女が全員同じ女だとは分かる。
 この夢から覚めてからも、奇妙な事がある。夢の中で射精した感触があるのに、起きて調べると精液で汚れていないのだ。トランクスには何も付いていない。
 このように奇妙な夢なので気味が悪かったが、その内に気にならなくなった。別に自分に害があるわけでもなく、しかも気持ちが良くて楽しいのだ。次第に夢を心待ちにするようになった。
 だが、夢がエスカレートしてくると、楽しんでばかりもいられなくなった。どう考えてもマトモとは思えない淫夢を見る様になったのだ。
 例えば、ある夢では俺は古代ローマの剣闘士奴隷だった。ライオンと血みどろの戦いを繰り広げた後、踊り子のような衣装を着たいつもの女と闘技場の真ん中で交わった。闘技場を埋め尽くしている観衆は、俺達に歓声を浴びせていた。
 またある夢では、俺と女は一緒にスカイダイビングをしていた。俺と女はお互いを縛り付けあい、飛行機から飛び降りた。高度数千メートルの上空から落ちながら、俺達はファックした。
 俺はスケベだし、もしかしたら変態かもしれない。だからと言って、こんな常軌を逸した妄想は持っていない。俺は、自分が病気なのではないかと考え始めた。
 俺は病気などではなく、俺に淫夢を見せている魔物がいると分かったのは、引っ越してから二月経ってからだ。

 俺は、濡れた柔らかい物が股間を這い回る感触で目覚めた。
 始めは夢の続きだと思った。今日の夢もエキセントリックなものだ。俺は豚のような怪物であるオークの兵士で、女は騎士の格好をしていた。俺は女騎士を倒し、「くっ、殺せ!」とほざく女騎士を犯していた。その最中にいきなり戦闘が始まり、突撃命令が出た。俺は女騎士を駅弁の格好で抱え、ファックしながら敵に突撃した。
 目を覚ますと、俺の部屋の天井が見えた。体は徐々に動くようになる。その時、股間から快楽が走り続けている事に気づいた。始めは夢の名残か、まだ夢を見ているのかと思った。だが、それにしてはリアルな感触だ。
 股間のほうを見ると、タオルケットが盛り上がっている。驚いてタオルケットを跳ね除けると、女の顔がある。女は、俺を見るとニタリと笑った。
 俺は上半身を跳ね上がらせて、女を見下ろす。よく見ると女には足が無い。
 俺は思考回路が停止した。目の前の状況が全く理解できない。見知らぬ女が俺の部屋に入り込み、俺のチンポをしゃぶっている。しかもその女には足が無い。理解しろというほうが無理な話だ。
 声すら上げられない俺を放置して、女は俺のチンポをしゃぶり続ける。体は正直で、俺の射精感は高まる。俺は、耐えられずに精液をぶちまけた。
 足の無い女は、俺の精液を喉を鳴らして飲み始める。その挙句、派手な音を立てて俺のチンポを吸い出した。俺は、これで完全に覚醒した。
 お前は誰だと、女に詰問する。
 「この部屋の先住人に失礼な物言いねえ。まあ、いいわ。私は鵜飼月代。今、言ったとおりここに住んでいるの。二年前にこの部屋で死んだけどね」
 俺は、この自称幽霊をまじまじと見た。

 月代の話では、月代は睡眠薬を飲みすぎて死んだらしい。その当時月代は、仕事や人間関係でストレスを溜めており、不眠症にかかったそうだ。医者からもらった睡眠薬を適量をはるかに超える量を飲んだ挙句、酒まで飲んだらしい。それで死んだそうだ。
 気が付いたら月夜は幽霊となって、アパートの周辺をさまよっていたらしい。なぜ幽霊になったかは分からない。たぶん異世界から来た魔物のせいではないかとの事だ。
 アパート周辺でふらついているうちに、俺が元の部屋に住みついた事に気づいた。それで俺を観察しているうちに、ファックしたくなってきた。幽霊であるために直接する事は出来ないが、夢に潜り込んでやる事はできた。それで夢の中で俺とやりまくって精気を吸っている内に、こうして実体化出来たそうだ。
 俺は月代の話に、幾つもの意味でため息を付きそうになった。不眠症は、俺にも経験がある。夜にどのようにしても眠れない。そのくせ仕事最中に眠くなる。眠くならなくとも頭がマトモに働かない。その為に職場でトラブルを起こした事がある。そうしている内に正常な判断が出来なくなり、酒と一緒に睡眠薬を飲むなんて事をやらかしてしまった。月代のやった事は、俺には他人事ではない。
 それに加えて、幽霊なる者が目の前にいる事にもため息を付きそうになる。前述したように、俺は幽霊なんて信じていなかった。異世界が有る事は事実かもしれない。魔物娘も存在するかもしれない。既に異世界も魔物娘も、俺達の世界では当たり前の事になりつつある。もしかしたら彼らの存在は、科学的に証明可能なのかもしれない。だが、幽霊は別だ。死んだ人間が存在するなどありえない。魔物の魔力のせいだとは言うが、そもそも魔力など信じていない。そんな物をどうやって証明できるというのだ?だから魔物という呼び方も気に食わない。異世界人とでも言えばいいのだ。だが、その幽霊が俺の目の前にいるのだ。ご丁寧に足の無い状態で。
 しかも、夢の中で俺とやりまくっていたと言うのだ。あの変態じみたセックスの夢は、こいつのせいだった訳だ。俺の精気を吸って実体化とはどういう事だ?牡丹灯篭も精気を吸っていたような気がするが、それは怪談話の事だ。精を吸って実体化とは、どういう原理になっているのだ?
 しかもこの幽霊は、これからもファックさせろと言い出した。俺は喪男だから好みだというのだ。存在を証明できない者を相手にファックするとはどういう事だ?おまけに、俺が喪男だから好みだと言いやがる。喪男で悪かったな!
 俺は、月代をじっくりと見た。死んだ時は二十代だったそうだが、見た目は少女に見える。かわいらしい顔を、背中まで伸びる緑がかった金髪が覆っている。未成熟な体を、昔のヨーロッパの人間が着るようなデザインの紫色の服で覆っている。髪や服についている赤いリボンが似合っていた。なんでも幽霊になると、好きな姿になれるらしい。
 俺は、今までの月代とのセックスを思い返す。エキセントリックだったが楽しいセックスだった。
 俺は、月代の申し入れを受ける事にした。科学は今は脇に置こう。それよりもセックスだ!これからもやりまくれるのならば、俺にとっては都合がいい。幽霊と同居してもかまいはしない。
 こうして俺と幽霊の同居は続く事になった。

 俺と月代の生活は、悪い物ではない。二人でそれなりに楽しんでいた。
 非科学的だ、証明できないと俺は書いたが、だからと言って俺の生活が破綻するわけではない。幽霊がいても、俺に危害を加えなければ問題ない。科学云々よりも、やっぱりファックだ!ファックできればそれでいいのだ。
 月代は、様々なプレイで俺を楽しませてくれる。現実には出来そうにない物ならば、夢の中でやる。なんでも月代は、セックスに対する興味は人一倍強かったらしい。だが、試す機会はあまり無かった。数少ない付き合った男は、ノーマルな趣味の上に淡白な男だ。そいつとはすぐに分かれた。俺という変態(月代曰く)と同居する事ができて、生前よりも楽しいらしい。
 月代によると、生きていた頃よりも幽霊になってからのほうが楽しいらしい。生きていた頃は、何かと制約があった。弱い立場の月代は、その制約を人一倍受けていた。幽霊になる事で、月代は「弾ける」事ができたそうだ。魔物の魔力が「弾ける」事を後押ししたらしい。
 まあ、月代が楽しいならばそれでいいだろう。オーバードースで死んだ事からして、生前はろくな事がなかったのだろう。死んでから楽しく成れたならそれでいい。
 何よりも、俺にとって月夜とのセックスは楽しい!これが一番重要だ!
 まあ、楽しいとばかり言ってもいられない。月代は、しばしば滅茶苦茶なセックスを試みてくる。夢の中でのセックスは、特に常軌を逸している。例えば、俺と月代は銀行強盗であり、車でパトカーから逃げている。月代は、俺に後ろから抱きかかえられてアナルファックしながら車を運転している。ケツの穴を突かれて涎を垂らしながら、パトカーとカーチェイスをしているのだ。俺が直腸を突いてやると、「んおほぉおおおお!」と叫びながら絶壁から車ごとダイブしやがった。
 いくら俺が月代曰くの変態でも、限度という物がある。しかも、とんでもない事を言い出す。俺と月代がセックスを終えて布団に横たわっていた時、月代は自分が死んだのは今寝ている所だと言い出した。
「あの時は夏だったからね、体が腐って虫が大量に湧いたらしいよ。何でも同じアパートに住んでいる人が、悪臭と異常発生した虫で私が死んでいる事に気づいたらしいね」
 いくら洗浄済みの部屋だとは言え、本人からこんな事は聞きたくない。
 まあ、げんなりする事はあるものの、月代と俺との生活(性活と言ったほうが良いか?)はうまくいっていた。
 だが、月代が実体化してから一月後に厄介事が起きた。

「あなたの家の幽霊を調べさせてもらいたいのです」
 ある日、俺は「心霊研究家」を名乗る二人の女にそう言われた。何でも俺の住むアパートからは強い霊力が漂っており、是非調査してみたいそうだ。
 俺は始めは断った。わけの分からない他人に、自分の生活を乱されたくは無い。月代が居るならばなおさらだ。
 だが、金を出すと言われて考えを変えた。提示された金は、貧乏人の俺には魅力的な物だ。しかも、あらかじめ手付けとして二割を払うと言う。俺は月代に危害を加えない事を条件にその女達の頼みを聞きいれ、手付けの金をポケットに入れた。例え俺のやる事が軽率だとしても、金の魅力には勝てない。相手が若い女だという事も、俺の警戒を解いた。
 そうだ、俺のやった事は軽率だった。女達は、家に入るといきなり変な道具を出して、月代を問答無用で捕えようとした。月代は、たちまち苦しみだす。俺が辞めろと言っても、やつらは無視する。
 俺は、道具で月代を捕らえている女に掴みかかる。その瞬間にもう一人の屈強な女が、俺を羽交い絞めにする。警察を呼ぶぞと叫ぶと、道具を持った女が振り返って冷笑した。
「私達は、あなたの承諾を得て部屋に入ったの。契約書も手付けの領収書もあるわ。私達は『幽霊』を捕えようとしているだけ。あなたやあなたの部屋に危害を加えていない。あなたが私に掴み掛って来たから取り押さえているだけ。しかもあなたを殴ってはいないし、取り押さえているのは女よ。警察と法律はどちらの味方かしら?」
 俺は、自分のうかつさを後悔する。幽霊と自分の立場の弱さを理解していなかった事を呪う。だが、もう遅い。
 突然、後ろから衝撃音がする。そのとたんに、俺を取り押さえている女の力が抜ける。振り返ると冷蔵庫が浮いている。倒れた女は、宙を浮く冷蔵庫に殴られたのだ。
 道具を持った女は、月代のほうを向き憎悪をむき出しにした表情で道具を振りかざす。俺は、その女に向かって体当たりを食らわす。女は、壁に激突する。俺は、そのまま女の腹に繰り返し拳を叩き込む。女がぐったりするのを見届けて殴るのを止めた。

 冷蔵庫は、月代が浮かせたのだ。それで俺を取り押さえている女の頭を殴った。
 俺は、月代に詫びを入れる。今はこいつらの始末が先だと、月代は手の平をひらひら動かしながら言う。確かに月代の言うとおりだ。俺は傷害罪で訴えられるかもしれない。
 月代は、二人の体を浮かして外へ運び出す。ちょっと始末を付けて来ると言って出て行った。
 月代が戻って来たのは六時間後だ。月代はスマホを差し出して、俺に画像を見せる。そこには予想以上の物が映っていた。
 あの二人は広場らしき所で、裸にひん剥かれてロープで吊るされている。乳首にはローターがテープで付けられ、ヴァギナにはバイブを突っ込まれている。よく見ると、ケツの穴にはアナルパールが入れてある。ご丁寧に、二人はアヘ顔を晒しながらダブルピースをしている。
「吊るしている場所は、この辺で一番にぎわうショッピングモールの中央広場よ。今日は日曜だから、人も多かったわ。これであの二人は、社会的に死んだわね」
 あの二人は、被害を訴えられないだろう。幽霊に陵辱されたと言っても、正気を疑われるだけだ。俺は、その時間にこのアパートで他の住人に騒ぎを説明していた。俺にはアリバイがある。
 俺は、笑いながら胸を撫で下ろした。これでお咎めは受けずに邪魔者を排除できた。
 だが、月代は俺を冷ややかな目で見ている。
「今回の事は、あなたの軽率さから出た事よ。お仕置きが必要ね」
 俺は、有無を言わさずに月代に取り押さえられた。

 この後は、月代に「お仕置きファック」をやられた。天井から逆さ釣りにされた状態でファックされたり、月代に抱えられた状態でアパート上空百メートルでファックされた。
 俺が気を失うと、夢の中で「お仕置きファック」は続けられた。夢だからと言って、無茶苦茶な事をされた。スカイツリーからバンジージャンプをしながらファックされたり、飛行するFー2戦闘機に括り付けられた状態でファックされた。「アヘ顔よりすごい顔をしていた」と月代は言っているが、当たり前だ!ショック死してもおかしくないぞ!
 この後、俺の行動は慎重になった。これだけの目に合って慎重にならなかったら、どうかしている。
 まあ、こんな事も有ったが、俺たちの仲は悪くは無い。結局のところ、俺も月代も生活を楽しんでいる。何度も書くが、俺にとってセックスは楽しい事だ。無茶苦茶なセックスにも慣れてきた。月代も現世のくだらない制約から解放され、「弾ける」事ができて幸せなようだ。

 俺と月代は、別の幽霊カップルと一緒にファックしている。お互いに自分達のセックスを相手側に見せ付けながらやっているのだ。場所は、相手側の幽霊娘が自殺した事故物件だ。相手側の男は、その事故物件に住み着いて幽霊娘に気に入られたらしい。
 俺達は、踊りながらファックしている。俺と月代はコサックダンスもどきを踊りながら、相手側はランバダもどきを踊りながらやっている。
 俺達は激しく動いているから、相当音が出ているはずだ。だが、他のアパートの住民からは苦情が来ない。何でも、男と幽霊がアパートの中や周辺を飛び回りながらファックするのを見て、何も言わなくなったそうだ。
 俺達は激しく動き回る。辺りに汗と精液、愛液を振り飛ばしながらファックする。つまらない事を気にしても仕方が無い。せっかくファックする相手がいるんだ。ファックしまくってやる!
14/08/14 16:02更新 / 鬼畜軍曹

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