サソリに捕われた男
男は寝台に横たわっていた。薄暗い部屋はランプが照らし、香炉からジャスミンの香りが漂っている。男の意識は朦朧としていた。自分がなぜここに居るのかさえ、うまく把握できなかった。
男の上には、一人の女がのしかかっている。男の体を愛撫し、口付け、頬を摺り寄せている。湿った摩擦音が響いている事から、男と女は交わっている事が分かる。
男にまたがっている女は、妖艶な美女だ。涼しげな目元が特徴的な整った顔をしていた。豊かな胸と引き締まった腰をした、褐色の肌の官能的な肢体をしていた。露出度の高い紫色の薄物の服と、体の所々に施された紋様が妖艶な雰囲気を高めている。上半身だけならば、間違いなく男を興奮させる美女だ。
下半身のため、女は人間離れしていた。女の下半身は、赤茶色の固い殻のようなもので覆われていた。先のとがった六本足を持ち、先端がはさみの形をした二本の腕が付いていた。何よりも目立つものは、とがった針のような物が付いた巨大な尾だ。女の下半身は、サソリのものだ。
「さあ、私に身を任せなさい。何も考えなくてもいいのよ。私の言うとおりにすればいいのだから」
女は、男に顔を寄せて耳元でささやいた。
男は女の声を聞きながら、ぼんやりと自分の過去を思い出していた。
アシュガルは、生まれた時から奴隷だ。農園で働かせるための使い捨ての道具として扱われてきた。幼少のころから鞭や棒で殴られながら、激しい労働を強要されていた。
アシュガルに未来はなかった。奴隷から解放される見込みなどなかった。奴隷として生き、奴隷として死ぬ事が定められていた。
アシュガル達奴隷は、いつ死んでもいい扱いを受けていた。アシュガルのいる国は、砂漠の多い酷暑の国だ。激しい日差しが照りつける中、わずかな水しか飲む事ができずに労働を強要された。多くの奴隷が目の前で死んでいった。奴隷はいくら死んでもいい、安く買えると主人は笑っていた。
そんな過酷な条件の中で、奴隷達は他の奴隷を犠牲にして自分が助かろうとした。奴隷達の間では、盗み、詐欺、暴行、恐喝、密告が荒れ狂った。奴隷の敵は奴隷だった。奴隷達がつぶし合いをしているのを、主人とその使用人は笑いながら見ていた。
アシュガルは、奴隷達の中でも弱者だった。他の奴隷から虐げられてきた。わずかな食事や水は盗まれ、奪われた。主人の使用人に叩きのめされて倒れているアシュガルを、他の奴隷達はさらに踏みつけ、蹴飛ばした。他の奴隷の失敗は、アシュガルの失敗という事にされた。主人の命で、アシュガルは罰として焼けた鉄の棒を体に押し付けられる事がたびたびあった。奴隷達は、罰を受けるアシュガルを見てわざとらしく澄ました顔をしていた。
アシュガルが生き延びたのは、自分より弱い奴隷を犠牲にしたからだ。アシュガルもまた、盗みや暴行を行った。
男は、裸にされて椅子に座らされていた。下半身がサソリの魔物であるギルタブリルの女に、水で濡らした布で体を洗われていた。女は上半身の人間の手を使い、丁寧な手つきで男の顔を布で拭いていた。
「あなたの匂いや味を感じながら交わるのもいいけれど、あまり汚れていると気持ち悪いでしょう?体をきれいにしてから、また交わりましょう」
女は首筋を拭き、胸と肩、腕を拭いた。いたずらっぽい表情で腋を拭いた。腹とわき腹を撫で回すように拭いた。後ろに回ると、頻繁に水で布を洗いながら背と腰を拭いていった。
「男の背は大きいわね。洗いがいがあるわ」
再び男の前に回ると、足を揉み解すように洗った。足の指の先まで丁寧に洗った。女は微笑むと、男の太ももに手をかけて股を広げさせた。
「ここは丁寧に洗わないとね。何度も交わったから、たっぷりと汚れているわね」
女は、男の陰毛や足の付け根をくすぐるように拭いた。焦らした後、ペニスを撫でるように拭いていった。先端やさおを湿った布で拭き、くびれのところの汚れをゆっくりと洗い落とした。袋を揉みほぐすように拭いた。男のペニスは反り返った。
「あらあら、元気ね。だけど、まだだめよ。きちんと洗ってからよ」
女は、ペニスに向かってなだめるように話しかけた。女は、男に腰を浮かせて尻を拭いていった。水でたっぷりと濡らした布で、尻の穴の辺りを中心に事細かく洗った。
男は、洗われている時にろくに反応しなかった。交わっていた時同様に、空ろな表情でされるがままになっていた。ペニスだけがそそり立った。
洗い終わり体を乾いた布で拭くと、女は男を寝台にうつぶせに寝させた。女は、手に小瓶を持っていた。小瓶の中に入っているオイルを手に取り、男の背や肩に塗り広げた。オイルは穏やかな香りがした。女は、オイルで光る肩や背中を揉みほぐし始めた。
「体が硬くなっているわね。私に身を任せればいいのに、緊張なんかするからよ。きちんと凝りをほぐして、精がたっぷり出るようにしましょうね」
女は凝っている所を撫でるようにして探ると、強弱をつけながら揉んだ。肩と背に熱を感じ、塊がほぐされているような感触が広がった。ぼんやりとした頭が、さらに夢幻の中に落ちていくような気がした。
蜂起は、奴隷達にとってはなし崩しに行われた。前後の見境のない暴動同然だった。
原因は、労働の過酷さが増した事だ。炎天下の中での労働を強要された。以前は、日中働かせると言っても限度があった。奴隷が死にすぎると、労働の効率が落ちるからだ。その限度がなくなった。人を突き刺す日差しの中、鞭と棒で殴られながら働かされた。見せしめのために、働きの悪い奴隷を炎天下の中に棒に縛り付けてさらした。水を与えられないため、もだえ苦しんで死んだ。残虐な労働の強要の結果、当然のごとく奴隷達の死者は続出した。奴隷の中でも弱者であるアシュガルは、いつ死人に加わってもおかしくなかった。
主人が無茶苦茶な労働を強要するようになったのは、東の国から入ってくる奢侈品を欲したためだ。東の国は、東の大陸の西側に位置する。東の大陸の品は、その国を通さなければ入りづらい。東の国は、近年になってアシュガルの住む国に積極的に東の大陸の品を売り始めた。それらの品は、アシュガルの国や北の大陸とは違う技術を用い、繊細で緻密な加工がなされていた。絹織物一つとっても、その優雅さは目を奪うものだった。アシュガルの国の者は、競って東の大陸の品を手に入れようとした。
東の大陸の品は、概して高価である。今までの収入では手に入れづらい。そこで奴隷の主人達は、奴隷を酷使するようになった。使用人の中に、奴隷を酷使して荒稼ぎする事を勧める者が複数いた。結果として奴隷を消耗して損をすることになるのだが、奴隷の主人達は見境なく奴隷を酷使した。奴隷の犠牲者は増え、不満は高まった。
もっとも、労働が過酷になっただけでは奴隷は反乱を起こさなかった。自分より弱い奴隷を犠牲にして、生き延びようとするだけだ。奴隷は、あくまでも奴隷だった。
二つの報が、奴隷達に動くきっかけを与えた。東の国が、東の国境を越えて侵攻して来た。そのすぐ後に、国の東南部で待機していた将軍が反乱を起こした。国中がこの報に騒然となった。アシュガルがいる、王都の南の穀倉地帯も浮き足立った。奴隷達が動き出す機会だといえた。
それでもやはり、奴隷達は動かなかった。暴力を加えられ、恐怖によって支配された奴隷に逆らう意思は乏しかった。他の奴隷と連帯する事など、考えられなかった。誰かが自分を救ってくれる事を期待した。
奴隷達が蜂起を起こしたきっかけは、恐怖に駆られたためだ。アシュガルのいる地域で、奴隷の主人の元で働いている使用人が、何人か殺された。主人の家に火をつけられた事件も起こった。奴隷の主人達と役人達は、犯人探しを行った。その最中にある主人が殺された。犯人と見なされた者は、その主人に使われていた奴隷の一人だ。奴隷の主人達と役人達は、今までの事件は奴隷の仕業だと判断した。
奴隷達は次々と殺された。その場で、剣や槍でめった刺しにされる者が多かった。まともな取調べなどされなかった。捕らえられた者もいたが、それは拷問に掛けて仲間を白状させるためだ。奴隷達は、拷問から逃れるために他の奴隷を次々と告発した。事実など、どうでもよかった。
もはや、どの奴隷が狩られるかわからない状態だった。奴隷の恐怖は頂点に達した。その最中の夜に、各地で火の手が上がった。奴隷達は、その火にあおられて暴動を起こした。
アシュガルも暴動に参加した。暴動が起こらなければ、アシュガルは主人の酷使か奴隷狩りで殺されていただろう。アシュガルは、追い詰められて暴動に参加した。
寝台の上に、男は仰向けに横たわっていた。男の下半身には、さそりの下半身を持った女がかぶさっている。女は、男の股間を愛撫していた。男の股間がそそり立つと、女は口元を覆う紫色のベールを取り外した。赤く塗った唇をピンク色の舌で舐め回した。
「あなたは、おちんちんをしゃぶられるのが大好きでしょ。とろけるくらいしゃぶってあげるわね」
女は、微笑みながらペニスに顔を寄せた。いとおしげにペニスに口付け、頬ずりをした。再び口付けると、ねっとりと舌をペニスに這わせた。先端を円を描くように舐め回し、そのまま舌を下ろしてくびれを舐め回した。裏筋に舌を上下に這わせながら、袋を手でゆっくりと揉みほぐした。
ペニスの隅々まで舌で唾液を塗りこめると、見せ付けるように口を開けてペニスを含んだ。顔をゆっくりと上下に動かし、唇と舌で棹を愛撫した。唇と舌は別々の生き物のように、男のペニスを愛撫し、嬲った。
女はペニスから口を離した。唇とペニスの間には、唾液と先走り汁で透明な橋ができている。女は粘液の橋を舐め取ると、胸に手をかけ紫の薄物を取り払った。褐色の肌と赤い突起が露わとなった。女は嫣然と微笑むと、豊かな胸で唾液で濡れた怒張を優しく挟み込んだ。胸をゆっくりと動かし、ペニスを愛撫した。次第に女は胸に力を入れ、胸でペニスを揉み込んでいった。硬くなった赤い突起で、ペニスを強く刺激した。
女は胸元に顔を寄せた。舌を伸ばして、胸から見え隠れする男の赤い肉塊を舐め回した。先端に吸い付きあふれ出てくる液をすすり、舌で裏筋を撫で回した。いたずらっぽく先端を甘がみした。
男はうめき声を上げて、精を放った。女の顔に、白濁液が飛び散った。女の褐色の美貌は、白い液で染められた。辺りに精独特の刺激臭が漂った。女はうっとりとした表情を浮かべながら、精を吐き出し続けるペニスを胸と舌で揉みほぐし、舐め回した。精の放出が止まると、唇を先端に付けて中の精を吸い上げた。顔についた精を指ですくって舐め取り、胸に付いた白濁液は直接胸に舌を這わせて舐め取った。
男の右足に鈍い感触がした。何かに刺された様な感触だ。
「もう痛くないでしょ。私の尾で何度も刺されたから、体が慣れたはずよ。私の淫液を注いであげたわ。ほら、もう回復して来ているでしょ」
男の右足は、女の尾の先の針が刺さっていた。女の指摘するとおり、男のペニスは再びそそり立っていた。男は無表情に、ペニスと女の尾を見ていた。
蜂起は広範囲に起こった。アシュガルのいる穀倉地帯、他の穀倉地帯、そして王都で奴隷達が蜂起を起こした。アシュガルの国は、中央に大河がある。大河は、南から北へ流れて海に達している。その大河沿いに穀倉地帯があり、大河が海に流れ込む所に王都がある。この大河沿いの各地で奴隷の蜂起が起こった。
初めは各地の蜂起に繋がりはなく、それぞれの蜂起に指導者はいなかった。蜂起が進むにつれてそれぞれの蜂起に繋がりができ、指導者達も出現した。蜂起を起こした者達は、東の国の侵攻軍や反乱を起こした将軍と連絡を取ることに成功した。奴隷の蜂起は、国を揺るがす規模となった。
蜂起した奴隷が真っ先に行った事は、自分を虐げた者への復讐だった。主人や使用人、彼らの家族を次々と虐殺した。役人も片っ端から殺した。奴隷を持たない自由民の中には、奴隷を虐げる事に加担した者もいた。彼らも殺された。
アシュガルは、虐殺の先頭に立った。アシュガルは長年虐げられ続けた挙句、つい先ほどまで死の恐怖にさらされていた。アシュガルは、爆発するように行動を起こした。自分を遭うたびに殴りつけていた使用人を見つけると、棍棒で殴りかかった。わめき声を上げながら倒れこむ使用人を、繰り返し殴った。他の奴隷もリンチに参加した。アシュガル達が殴る事をやめた時は、その使用人の体は原形をとどめていなかった。
アシュガルは、主人を探し出し殺そうとした。だが主人は、家族と身近な使用人と共に逃げ去っていた。アシュガルの主人は、まず逃げ道を用意する男だった。アシュガルは、主人に逃げられた事にめまいがするほどの怒りと悔しさを感じた。主人に逃げられた事から立ち直ると、使用人を狩る事に専念した。アシュガルは、飼い主よりも飼い犬のほうが罪深い事を知っていた。体で知っていた。
アシュガルは、主人の武器庫から槍を持ち出した。その槍を手に、復讐すべき対象を探し回った。農耕具を収めている建物の壁の前で、一人の男が剣を振り回していた。その周りを武器を持った奴隷達が囲んでいる。剣を振り回している男は、使用人のうちの一人だ。いつも強い者の側にいて、暴力を煽り立てていた。利口ぶっていたくせに、間抜けにも逃げ遅れたらしい。
奴隷達は、剣を振り回す使用人に手を出しかねていた。多勢なのにも関わらず、剣を振り回す使用人を恐れていた。所詮は奴隷だった。アシュガルは前に出て、使用人に対して槍を突き出した。滅茶苦茶な突きだったが、使用人は体勢を崩した。奴隷たちは、武器を使用人に突き出した。使用人は、槍で突かれ剣で切られて赤黒い物体に変わった。
アシュガルの働いていた農園と主人の館は、所々に血みどろの肉塊と臓物が転がっていた。無数の鳥と蝿が、奴隷達をたたえるように飛び回っていた。
奴隷達は、食料庫から酒と食い物を持ち出した。奴隷達の口にする事のできない物を、ふんだんに飲み食いした。アシュガルも思う存分飲み、かつ食った。アシュガルにとって、これほど満たされた事はなかった。
アシュガルの農園では、鮮血の狂宴が行われた。奴隷達の反乱が起こった所では、同じような事が繰り広げられていた。
奴隷達の狂宴は長くは続かなかった。反乱鎮圧のための手がすぐ打たれた。
各地の地方行政庁の長官達は、地方の中心都市と重要軍事拠点の守りを固めて反乱の拡大を防いだ。王は王都の奴隷反乱を鎮圧すると、王都の防衛体制を整えて東から来る敵国の侵攻に備えた。それが終わるとすぐに、奴隷反乱鎮圧のための軍が整えられた。南下して川沿いに鎮圧する用意を整えた。
奴隷達は、東の国や反乱を起こした将軍と連絡を取ろうとした。だが、送った密使達は帰ってこなかった。東の国の軍と将軍の軍は合流し、国の東側を占領すると進撃を止めた。
奴隷達の中で失踪する者が現れた。反乱を煽り立てていた者、反乱指導者の周りにいて支えていた者、反乱軍の連絡を担当していた者達が消えた。これらの者の失踪により、反乱軍は浮き足立った。
アシュガルは、ある奴隷をしていた魔物娘の話を思い出していた。復讐がひと段落して酒宴が開かれていた時、アシュガルは用を足しに席を立った。建物の物陰から、豚の特長を持つ魔物娘であるオークがアシュガルに話しかけてきた。彼女は、アシュガルと同じ主人の下で働いていた奴隷だ。
「早く逃げたほうがいいよ。こんな事は長くは続かないから」
この国には、魔物娘の奴隷達がいた。この国は中立国であり魔王と対立していなかったが、反魔物国から魔物を奴隷として買っていた。魔物達は、奴隷反乱には加わらなかった。オークは、陰鬱な表情を浮かべていた。オークはアシュガルに忠告すると、早足で去った。その後、魔物娘達は見かけなくなった。
アシュガルは、その時は軽く聞き流した。今になって見ると、魔物娘達は先を見通していたのだ。アシュガルは、不安と恐怖に苛まれ始めた。
反乱鎮圧軍は進撃を開始した。整然と速やかに軍を進めて来た。
男は四つん這いにされていた。ギルタブリルの女は、男の尻を撫で回した。
「ねえ、こんな格好は恥ずかしいかしら?あなたのお尻の穴は丸見えよ」
女は笑いながら言うと、男の尻に顔を寄せた。男の尻の穴に、濡れた物がくすぐるように這う感触がした。男は、かすかに腰を上げようと動いた。女は男の腰を押さえ込むと、男の尻の穴に舌を這わせた。女は、ねっとりと舐め上げるかと思うと、からかうように舌の先で突っついた。
「あなたを仰向けにしてお尻を上げさせて舐めるのも楽しいけれどね。こうして四つん這いにさせて舐めるのもなかなかいいわ」
男の尻に鈍い感触がした。女のさそりの尾の先が、男の右側の尻に刺さっていた。女は、男に淫液を注いでいた。痛みは感じず、むしろ快感を得られた。男の下半身に熱が広がり、ペニスに力がみなぎった。
女は尻の穴を円を描く様に舐めまわしながら、右手で男のペニスの棹を愛撫した。左手を男の尻の下に伸ばすと、袋をゆっくりと揉み解した。男は尻の穴に、やわらかく弾力のある物が侵入して来るのを感じた。女は、舌を尻の穴にゆっくりと入れて来た。舌を奥深くまで入れると、ゆっくりと舌を引いた。舌を入れては出し、入れては出した。その間中右手は棹をしごき、左手は袋の中の玉を愛撫した。
男は喘ぎ声を漏らすと、ペニスの先端から白濁液をほとばしらせた。女は、勢いよく出る精を右手の平で受け止めた。精の放出を助けるように、女は尻の穴の中を舐め回し続け、玉をほぐし続けた。男は、喘ぎながら痙攣と射精を続けた。
精の噴出が止まると、女は顔を男の尻から上げた。男の前に回ると、右手を汚す白濁液を見せ付けるように舐めて見せた。指や手の平に丁寧に舌を這わせた。男は女の痴態を見ながら、うつろな表情で喘いでいた。
女は濃厚な臭気を放つ精を舐め終ると、舌なめずりしながら微笑んだ。
「さあ、休んでいる暇はないのよ。まだまだ終わらないわ」
四つん這いになっている男のペニスは、力を失わずにみなぎり続けた。
奴隷達は、自分達が利用されている事に気づき始めた。
思い返せば、初めからおかしかった。蜂起のきっかけとなった、主人達を殺した事件の真犯人は見つからなかった。火の手の上がるタイミングもよすぎた。主人達に労働の強化を進めた使用人達も、あらかじめ暴動を予想したように暴動と同時に姿を消した。暴動が起こる直前に、見計らったように蜂起を煽る者が現れた。蜂起が起こって少しすると、指導者を擁立する者や連絡を買って出るものが現れた。そして今、指導者を支えていた者や連絡を行っていた者が姿を消した。
奴隷達は、失踪した者達を探し始めた。アシュガルも捜索に加わった。一人の奴隷が、失踪した者らしき人間について聞き出した。その者の出入りしている家を突き止めた。大河沿いに造られた町にある、何の変哲もない一軒の家だ。その家を急襲し、三人の男を確保した。三人とも乱を煽っていた者だ。そのうちの一人は、この地方の反乱の指導者の取り巻きの一人だ。
武器を持った奴隷達に囲まれると、三人の男は顔を引きつらせながらも奴隷達をにらみつけた。双方は無言のにらみ合いを続けた。沈黙を破ったのは奴隷の側だ。詰問の形をとっていたが、沈黙に耐えられなかったのは明らかだ。なぜ失踪したのか?なぜこんな所に隠れているのか?誰かの指示を受けているのか?俺達を利用したのか?とわめくように詰問した。
三人の男は無表情だった。そのうち一人の男が冷笑し始めた。指導者の取り巻きだった男だ。薄い唇の端を吊り上げながら嘲り始めた。
それがどうした?お前達奴隷をどう扱おうとかまわないだろ。
お前達は、自分から何かをしようとはしなかった。人に言われてはじめてやった。自分達の人生を他人に渡していた。他人から虐げられても、めそめそ泣きながら人に救ってもらう事を望んだ。家畜だって虐げれば逆らう。お前達は家畜以下だ!
この厳しい世の中で、自分から何もしようとしない者を救う者がいるとでも思っているのか?虫が良すぎるんだよ!ただ口を開けて餌を与えてくれるのを待つ動物など、家畜にすらならない。自分で立ち上がる意志を持たない者など救う価値もない。人に頼らなければ何もできないから利用されるんだよ!
奴隷達は、多勢で武器を持っているにもかかわらずひるんだ。奴隷は、所詮奴隷に過ぎなかった。相手が攻勢に回ると圧倒される。誰か他の者が相手をしてくれる事を望む。自分を嘲りながら否定する者に対して、おどおどしながら立っているだけだった。
アシュガルは、無言で前に出た。持っていた槍を嘲り続ける男に突き出した。男の左肩に刺さった。男はわめき声を上げた。得意げに冷笑を浮かべていた顔が、醜く歪んだ。アシュガルは力を入れて突き刺し、勢いよく抜いた。男の左肩から血が飛び散った。アシュガルは、くり返し槍を突き出した。自分を虐げ、利用し、嘲り、否定する者を突き刺し続けた。上から目線で弱者を否定する男を破壊し続けた。股間を突き刺したら、男は踊るように飛び跳ねた。アシュガルは、笑いながら突き刺し続けた。
アシュガルは肩を掴まれた。いつまで刺しているんだ?肩をつかんだ男はうんざりしたように言った。アシュガルは、自分が刺していた男を見た。もはや人間としての原形をとどめていなかった。全身の肉をはじけさせ、臓物を露出させた赤黒い物体だった。血や肉片が部屋中に飛び散っていた。アシュガルは自分の体を見た。大量の血と肉片を浴びていた。臓物の切れ端も付着していた。アシュガルは、ぼんやりと自分の体を見つめた。
アシュガルが殺した男以外の二人の男の内、一人は奴隷達に殺されていた。もう一人は、思慮のある者が止めた為に生きていた。捕らえた一人を拷問にかけて、反乱の真相を自白させた。
男達は、東の国の工作員だ。東の国は、この国の東側を手に入れようとしていた。そのためこの国の中心部で騒動を起こし、混乱に乗じて東側を奪い取ろうとしていた。騒動を起こすために目をつけられたのが奴隷達だった。
まず、奴隷の主人達の使用人となる。主人の浪費を煽りたて、金を手にするために奴隷を酷使する事を勧める。酷使が限界を超えるあたりで主人や使用人達を暗殺し、殺害は奴隷がやったように見せかける。主人や役人が奴隷狩りをするように仕向ける。奴隷の恐怖が頂点を迎えるのを見はかり、深夜に各地で火を放つ。火の手に興奮した奴隷達を、奴隷にもぐりこんだ工作員達が暴動へと扇動する。蜂起がある程度進んだあたりで指導者を擁立し、各地の反乱者を結びつける連絡役を買って出る。反乱を組織化し、大規模化して国をゆるがせる。
もちろん反乱が鎮圧される事も織り込み済みだ。反乱鎮圧軍が組織されると、すぐさま姿を隠した。後は、この国の軍隊と奴隷達がやりあうのを眺めればよい。
自分達が東の隣国に利用されていた事は、瞬く間に奴隷達の間に広まった。奴隷達は動揺し、混乱した。
統制を失った奴隷達に、王の軍が迫りつつあった。
反乱は、たやすく鎮圧されていった。反乱軍はまとまりを欠いており、反乱軍同士で連携すらできなかった。おまけに浮き足立っており、単なる烏合の衆でしかなかった。
その挙句、内部抗争を始めた。互いに相手を東の国の密偵、王の密偵呼ばわりして殺しあった。元々、主人の支配下で奴隷達同士で潰し合いをしていた。復讐する時や嗜虐性を満たす時だけ連帯できた。危機に陥れば、たちまち不信と憎しみをぶつけあった。
王が派遣した軍は、反乱地を一つ一つしらみつぶしにしていった。反乱の拡大を抑えていた地方行政庁の軍は、反乱鎮圧軍に合流していった。反乱鎮圧軍に対して、奴隷達はまともに対応できなかった。もはや戦いとすらいえなかった。
奴隷達は虐殺されていった。王は、王都の奴隷のほとんどを殺した。その後、反乱鎮圧軍の将軍に、奴隷の皆殺しを命じた。狂った家畜は使い物にならない、一匹残らず屠殺しろ。やつらは主人に逆らうという病気を持っている。病気持ちの家畜は、病気が広まらないようにするために皆殺しにするものだ。奴隷が必要になったら、後で従順なものを手に入れればよい。王の命令を、将軍はうやうやしく拝命した。
王は、英雄と呼ばれていた。王は、英雄の特権とばかりに苛烈な性格をひけらかした。臣下の者達は、王の残虐さをたたえた。奴隷達は、王とその臣下の者達の嗜虐性のいけにえとなった。
反乱鎮圧軍は、奴隷達を皆殺しにしていった。反乱に参加した者も、しなかった者も区別せずに殺した。女、子供も片っ端から殺した。念を入れて、楽しみながら虐殺していった。家畜以下の奴隷が反乱を起こした事に、兵士達は狂おしいまでの憎悪をむき出しにしていた。
自由民達も、反乱鎮圧軍に協力した。彼らは奴隷をさげすみ続けた。自分達の下で這いつくばるべき奴隷達が逆らった事に、激しい憎悪を感じた。兵士も自由民も、奴隷を嬲り殺しにしなければ気がすまなかった。
アシュガルは、反乱鎮圧軍と戦わずに逃げ出した。奴隷達同士で殺しあっている有様なのに、戦う気など無かった。アシュガルは洞窟に身を潜め、岩陰に隠れた。道端の側溝から辺りをうかがい、下水道を通って逃げ続けた。アシュガルはぼろをまとい、垢と砂埃にまみれて逃げ回った。汚れきったネズミのように逃げ回った。
アシュガルの逃げ回る先で、奴隷の虐殺が行われた。手足を切断された者、全身を切り刻まれた者、腹を割かれて臓物を撒き散らされた者達が道に転がっていた。彼らは死に切れず、痙攣しながら泣き喚いていた。虐殺者達は、ある者は哄笑しながら、ある者は冷笑を浮かべながら奴隷達を嬲っていた。
アシュガルが側溝に隠れていると、建物から二人の兵士が出てきた。彼らは、アシュガルのすぐそばを通った。もっと楽しんでから、あの雌を屠殺すればよかったんじゃないのか?ひとりの兵士が言った。馬鹿な事をいうな。屠殺しなけりゃならない奴は、まだまだいるんだ。もう一人の兵士は、顔をしかめながら答えた。それにやり続けたせいで、あの雌は臭くなっていたからな。二人の兵士は、笑いながらアシュガルの側を通り過ぎていった。
アシュガルは、側溝の中に這いつくばり続けた。
男は、ギルタブリルの女の前に這いつくばっていた。人間の上半身とサソリの下半身の境目にある赤いヴァギナを、音を立てて舐めていた。男の顔は、透明な液で濡れていた。女は、喜悦に彩られた顔で見下ろしていた。
「うまくなったわね。あなたは、教え甲斐があっていいわ」
女は、人間の手で男の頭を撫でた。男の頬に手を下ろし、ゆっくりと男の顔を上げさせた。
「さあ、仰向けになりなさい。ご褒美を上げるわ。私の下のお口で、あなたのおちんちんを飲み込んであげるわ」
男は従順な態度で、寝台に仰向けに寝転がった。女は男の上にまたがり、濡れ光るヴァギナでペニスを飲み込んでいった。熱く柔らかい肉が、硬くそそり立つ肉の棒を包んでいった。柔らかく揉み解すような締め付けだ。
「きつく締め付けるばかりではつまらないでしょ?柔らかく包むこともできるのよ」
女のヴァギナは、撫でさする様に軽く締め付け続けた。次第に力を入れ、渦を巻くように男のペニスを奥へと引き込んだ。ペニスを引き絞るように締め付けると、力を抜いて優しく包んだ。女は、ヴァギナで愛撫と締め付けを交互に行った。
女のサソリの尾が、男の首筋に刺さった。甘い快感が体を侵食していった。同時に、熱くたぎるものが下半身から湧き上がった。
女は男に顔を寄せ、左の耳に舌を這わせた。軽く耳たぶを噛み、耳の穴の中に舌を侵入させた。男の顔に、女の髪がかかった。女の髪からは、ジャスミンの香りがした。
「私は潜伏しながら行動するから、普段は香りをつけないの。あなたといる時だけ香りをつけるのよ」
女は耳に唇を這わせながらささやいた。
女の腰の動きは、徐々に激しくなってきた。それに伴い、男の精も上り詰めてきた。男と女は、共に高まってきた。飛び散る汗と上気した顔が、二人の高まりを表していた。
アシュガルの前には、一面に白い砂が広がっていた。
奴隷狩りは執拗に行われた。アシュガルは、方々を逃げ惑った。穀倉地帯の西の端を超え、砂漠との境界にたどり着いた。アシュガルの背後には、奴隷狩りの者達が迫っていた。
奴隷狩りの者達は、平凡な方法でアシュガルを追い詰めた。アシュガルの潜む砂漠沿いの町で、人相風体の怪しいものを洗い出す。洗い出した者の内、逃亡奴隷の可能性が高いものを搾り出す。その者のいる所を特定し、包囲する。本来ならば、これでアシュガルは殺される。
だが奴隷狩りの者達は、わざと一箇所包囲網を開けていた。アシュガルがその地点から逃げ出すと、付かず離れず追跡した。そうしてアシュガルを砂漠との境界に追い込んだ。砂漠で干からびて死ぬか、奴隷狩りの者に切り刻まれて死ぬか、アシュガルに選ばせようとした。
アシュガルは、砂漠を見ている内に足の力が抜けてきた。全身の力が抜けてきた。手から槍を落とし、砂の上にへたり込んだ。股間から水音がした。アシュガルは、自分が小便を漏らしていることに気づかなかった。
アシュガルは、地平線まで続く白い砂を見つめた。白い砂の中で、自分の焦げ茶色の屍が転がる様を幻視した。後から迫って来る者達の気配を感じた。自分が丹念に切り刻まれていく姿が、目の前に浮かんだ。
アシュガルは、槍を手に取った。ゆっくりと立ち上がった。後を振り返り、槍を構えて進んで行った。頭の中には、何も浮かばなくなった。ただ、人を殺す事だけを望んだ。据わった目で、よだれを垂らしながらフラフラと歩いた。
アシュガルの背に、痛みが走った。ぼんやりと後を向くと、砂の中から赤茶色の物が突き出ていた。先端にある針の様な物が、背に突き刺さっていた。アシュガルの体から力が抜け、砂の上に崩れ落ちた。
砂の中から魔物が現われた。上半身は人間の女の体をしていたが、下半身はサソリの様な姿をしていた。魔物はゆっくりと人間の手を伸ばし、アシュガルの頬を撫でた。女は、妖艶な笑みを浮かべた。
「私は、ネテプと言うの。あなたの名前を教えてくれないかしら」
ネテプと名乗った魔物娘は、穏やかな低音の声で言った。
「アシュガル」
空ろな表情で、アシュガルは答えた。
「それじゃあアシュガル、私の住処に行きましょうね。もっとお話したいけれど、邪魔者がいるからね」
ネテプは、力の抜けたアシュガルをサソリの背で背負った。そのまま砂に潜り込んだ。
砂の影に、遺跡への入り口があった。中へ入ると、ネテプは入り口の扉をすばやく閉めた。
薄暗い通路を、ネテプは進んだ。入り組んだ通路になっており、ネテプは右に左にとくり返し曲がった。暗い通路にもかかわらず、ネテプは目が利くらしかった。やがて所々に明かりが灯る様になった。遺跡は石造りであり、石の色合いから造られてから長い年月が経っている事がわかった。
「どうかしら、私達のささやかな住処は?ここは、はるかな古代に造られたのよ。既に創造主は消え、私達が暮らしているの」
ネテプは、歌うように話した。
ネテプの背に乗るアシュガルは、体を自由に動かせなかった。口を動かすのもつらかった。ネテプの尾に刺されてから、体は意のままに動かなくなった。同時に下半身から湧き上がるものがあった。
遺跡の中には、他の魔物達もいた。ネテプと同じく人間の上半身とサソリの下半身を持つ者がいた。人間の上半身と、蛇の下半身を持つ者もいた。いずれも女だった。魔物娘達はネテプとアシュガルを見て、意味ありげに微笑んだ。
ネテプは、アシュガルを一室に運び込んだ。アシュガルを椅子に座らせると、丁寧な手つきで服を脱がせた。桶に水を入れて持ってくると、布を濡らしてアシュガルを優しく洗い出した。
「汚れているわね。きちんと洗わないとだめね。きれいな体で交わりましょう」
ネテプは、いたずらっぽく微笑んだ。
「おしっこも漏らしているじゃない。私まで汚れてしまったわ。お仕置きしてあげるわ」
ネテプは、アシュガルの体を隅々まで洗った。洗い終わると、アシュガルを寝台に横たえた。ネテプは服を脱ぎ、自分の体を洗い始めた。アシュガルに見せ付けるように、体を揺らしひねりながら体を洗った。
体を洗い終わると、ネテプはアシュガルの上に覆いかぶさった。アシュガルの顔に、ゆっくりと自分の顔を重ねて言った。唇と唇が重なった。ネテプは、アシュガルに唇を這わせ舌でくすぐった。二人の唇が離れると、唾液の透明な橋が二人の間にできた。
「まずは口付けからしなければいけないわ。いきなり交わるなんて野暮でしょ」
ネテプは微笑みながら、再びアシュガルと唇を重ねた。唇を重ねながら、アシュガルの肩に尾の針を刺した。アシュガルの意識の混濁は深まった。同時に下半身の熱く疼くものが強まった。
二人は交わり続けた。ネテプはアシュガルにまたがり、犯し続けた。アシュガルが精を放ち萎えようとすると、ネテプは尾の針を刺した。刺しながら液をアシュガルに注ぎ込んだ。注がれると、アシュガルのペニスはみなぎり、精を放出できるようになった。
交わりの合間に、二人は語り合った。ネテプは、自分のことをアシュガルに語った。ネテプは、ギルタブリルと呼ばれる魔物娘だ。砂漠に生き、隠密行動を得意とする魔物娘だ。「砂漠の暗殺者」の異名を持っている。ネテプは、この遺跡で他の魔物娘達と暮らしていた。男を欲して、時折町の近くまで来た。その時に現れたのがアシュガルだ。
アシュガルも、ネテプに質問されて答えた。朦朧としているアシュガルは、ネテプに逆らう気力がなかった。ネテプは、アシュガルの今までの人生を聞き出した。なぜ、砂漠にいたのかも聞き出した。ネテプは、アシュガルをなだめる様に撫でさすりながら質問をした。
アシュガルから話を聞きだすと、ネテプはアシュガルを抱きしめてささやいた。
「今は忘れなさい。これからは私と交わり続けるのだから。何も考える必要はないのよ。もう、あなたを苦しめる者はいないのだから」
アシュガルは、空ろになりつつある頭で思った。そうだ、何も考えなくていい。何も考えたくない。今までの自分の事も、今の自分の事も、これからの自分の事も。アシュガルは、次第に夢と現実の境界が分からなくなってきた。目の前のサソリの女に淫液を注がれ、交わり続ける内に境界を喪失しつつあった。
ネテプは、夢へと落ちていくアシュガルを愛撫していた。
アシュガルは、ネテプと交わり続けた。どれだけ交わったのか覚えていなかった。アシュガルは時の感覚を失っていた。今がいつなのか把握できなかった。
アシュガルの意識は朦朧としていた。なぜ、自分がここにいるのかも把握できなかった。夢なのか現なのか分からなかった。記憶と思念がベールの中に包まれたまま、アシュガルはネテプと交わっていた。
「さあ、私に身を任せなさい。何も考えなくてもいいのよ。私の言うとおりにすればいいのだから」
ネテプは、アシュガルに顔を寄せて耳元でささやいた。
アシュガルの頭の中に浮かぶ過去の記憶は、柔らかいベールがまとわり付いて包んでいった。アシュガルは、まどろみへと落ちていった。
「あなたは、いつか武器を取って立ち上がるかもしれない。自分の人生を取り戻すために、戦わなければならないのかもしれない。でも、今は眠りなさい。私の胸の中で安らぎなさい」
アシュガルは、まどろみの中でネテプの匂いに包まれた。穏やかで、何も考えられなくなる匂いだ。アシュガルは、忘却の靄の中で漂っていた。
男の上には、一人の女がのしかかっている。男の体を愛撫し、口付け、頬を摺り寄せている。湿った摩擦音が響いている事から、男と女は交わっている事が分かる。
男にまたがっている女は、妖艶な美女だ。涼しげな目元が特徴的な整った顔をしていた。豊かな胸と引き締まった腰をした、褐色の肌の官能的な肢体をしていた。露出度の高い紫色の薄物の服と、体の所々に施された紋様が妖艶な雰囲気を高めている。上半身だけならば、間違いなく男を興奮させる美女だ。
下半身のため、女は人間離れしていた。女の下半身は、赤茶色の固い殻のようなもので覆われていた。先のとがった六本足を持ち、先端がはさみの形をした二本の腕が付いていた。何よりも目立つものは、とがった針のような物が付いた巨大な尾だ。女の下半身は、サソリのものだ。
「さあ、私に身を任せなさい。何も考えなくてもいいのよ。私の言うとおりにすればいいのだから」
女は、男に顔を寄せて耳元でささやいた。
男は女の声を聞きながら、ぼんやりと自分の過去を思い出していた。
アシュガルは、生まれた時から奴隷だ。農園で働かせるための使い捨ての道具として扱われてきた。幼少のころから鞭や棒で殴られながら、激しい労働を強要されていた。
アシュガルに未来はなかった。奴隷から解放される見込みなどなかった。奴隷として生き、奴隷として死ぬ事が定められていた。
アシュガル達奴隷は、いつ死んでもいい扱いを受けていた。アシュガルのいる国は、砂漠の多い酷暑の国だ。激しい日差しが照りつける中、わずかな水しか飲む事ができずに労働を強要された。多くの奴隷が目の前で死んでいった。奴隷はいくら死んでもいい、安く買えると主人は笑っていた。
そんな過酷な条件の中で、奴隷達は他の奴隷を犠牲にして自分が助かろうとした。奴隷達の間では、盗み、詐欺、暴行、恐喝、密告が荒れ狂った。奴隷の敵は奴隷だった。奴隷達がつぶし合いをしているのを、主人とその使用人は笑いながら見ていた。
アシュガルは、奴隷達の中でも弱者だった。他の奴隷から虐げられてきた。わずかな食事や水は盗まれ、奪われた。主人の使用人に叩きのめされて倒れているアシュガルを、他の奴隷達はさらに踏みつけ、蹴飛ばした。他の奴隷の失敗は、アシュガルの失敗という事にされた。主人の命で、アシュガルは罰として焼けた鉄の棒を体に押し付けられる事がたびたびあった。奴隷達は、罰を受けるアシュガルを見てわざとらしく澄ました顔をしていた。
アシュガルが生き延びたのは、自分より弱い奴隷を犠牲にしたからだ。アシュガルもまた、盗みや暴行を行った。
男は、裸にされて椅子に座らされていた。下半身がサソリの魔物であるギルタブリルの女に、水で濡らした布で体を洗われていた。女は上半身の人間の手を使い、丁寧な手つきで男の顔を布で拭いていた。
「あなたの匂いや味を感じながら交わるのもいいけれど、あまり汚れていると気持ち悪いでしょう?体をきれいにしてから、また交わりましょう」
女は首筋を拭き、胸と肩、腕を拭いた。いたずらっぽい表情で腋を拭いた。腹とわき腹を撫で回すように拭いた。後ろに回ると、頻繁に水で布を洗いながら背と腰を拭いていった。
「男の背は大きいわね。洗いがいがあるわ」
再び男の前に回ると、足を揉み解すように洗った。足の指の先まで丁寧に洗った。女は微笑むと、男の太ももに手をかけて股を広げさせた。
「ここは丁寧に洗わないとね。何度も交わったから、たっぷりと汚れているわね」
女は、男の陰毛や足の付け根をくすぐるように拭いた。焦らした後、ペニスを撫でるように拭いていった。先端やさおを湿った布で拭き、くびれのところの汚れをゆっくりと洗い落とした。袋を揉みほぐすように拭いた。男のペニスは反り返った。
「あらあら、元気ね。だけど、まだだめよ。きちんと洗ってからよ」
女は、ペニスに向かってなだめるように話しかけた。女は、男に腰を浮かせて尻を拭いていった。水でたっぷりと濡らした布で、尻の穴の辺りを中心に事細かく洗った。
男は、洗われている時にろくに反応しなかった。交わっていた時同様に、空ろな表情でされるがままになっていた。ペニスだけがそそり立った。
洗い終わり体を乾いた布で拭くと、女は男を寝台にうつぶせに寝させた。女は、手に小瓶を持っていた。小瓶の中に入っているオイルを手に取り、男の背や肩に塗り広げた。オイルは穏やかな香りがした。女は、オイルで光る肩や背中を揉みほぐし始めた。
「体が硬くなっているわね。私に身を任せればいいのに、緊張なんかするからよ。きちんと凝りをほぐして、精がたっぷり出るようにしましょうね」
女は凝っている所を撫でるようにして探ると、強弱をつけながら揉んだ。肩と背に熱を感じ、塊がほぐされているような感触が広がった。ぼんやりとした頭が、さらに夢幻の中に落ちていくような気がした。
蜂起は、奴隷達にとってはなし崩しに行われた。前後の見境のない暴動同然だった。
原因は、労働の過酷さが増した事だ。炎天下の中での労働を強要された。以前は、日中働かせると言っても限度があった。奴隷が死にすぎると、労働の効率が落ちるからだ。その限度がなくなった。人を突き刺す日差しの中、鞭と棒で殴られながら働かされた。見せしめのために、働きの悪い奴隷を炎天下の中に棒に縛り付けてさらした。水を与えられないため、もだえ苦しんで死んだ。残虐な労働の強要の結果、当然のごとく奴隷達の死者は続出した。奴隷の中でも弱者であるアシュガルは、いつ死人に加わってもおかしくなかった。
主人が無茶苦茶な労働を強要するようになったのは、東の国から入ってくる奢侈品を欲したためだ。東の国は、東の大陸の西側に位置する。東の大陸の品は、その国を通さなければ入りづらい。東の国は、近年になってアシュガルの住む国に積極的に東の大陸の品を売り始めた。それらの品は、アシュガルの国や北の大陸とは違う技術を用い、繊細で緻密な加工がなされていた。絹織物一つとっても、その優雅さは目を奪うものだった。アシュガルの国の者は、競って東の大陸の品を手に入れようとした。
東の大陸の品は、概して高価である。今までの収入では手に入れづらい。そこで奴隷の主人達は、奴隷を酷使するようになった。使用人の中に、奴隷を酷使して荒稼ぎする事を勧める者が複数いた。結果として奴隷を消耗して損をすることになるのだが、奴隷の主人達は見境なく奴隷を酷使した。奴隷の犠牲者は増え、不満は高まった。
もっとも、労働が過酷になっただけでは奴隷は反乱を起こさなかった。自分より弱い奴隷を犠牲にして、生き延びようとするだけだ。奴隷は、あくまでも奴隷だった。
二つの報が、奴隷達に動くきっかけを与えた。東の国が、東の国境を越えて侵攻して来た。そのすぐ後に、国の東南部で待機していた将軍が反乱を起こした。国中がこの報に騒然となった。アシュガルがいる、王都の南の穀倉地帯も浮き足立った。奴隷達が動き出す機会だといえた。
それでもやはり、奴隷達は動かなかった。暴力を加えられ、恐怖によって支配された奴隷に逆らう意思は乏しかった。他の奴隷と連帯する事など、考えられなかった。誰かが自分を救ってくれる事を期待した。
奴隷達が蜂起を起こしたきっかけは、恐怖に駆られたためだ。アシュガルのいる地域で、奴隷の主人の元で働いている使用人が、何人か殺された。主人の家に火をつけられた事件も起こった。奴隷の主人達と役人達は、犯人探しを行った。その最中にある主人が殺された。犯人と見なされた者は、その主人に使われていた奴隷の一人だ。奴隷の主人達と役人達は、今までの事件は奴隷の仕業だと判断した。
奴隷達は次々と殺された。その場で、剣や槍でめった刺しにされる者が多かった。まともな取調べなどされなかった。捕らえられた者もいたが、それは拷問に掛けて仲間を白状させるためだ。奴隷達は、拷問から逃れるために他の奴隷を次々と告発した。事実など、どうでもよかった。
もはや、どの奴隷が狩られるかわからない状態だった。奴隷の恐怖は頂点に達した。その最中の夜に、各地で火の手が上がった。奴隷達は、その火にあおられて暴動を起こした。
アシュガルも暴動に参加した。暴動が起こらなければ、アシュガルは主人の酷使か奴隷狩りで殺されていただろう。アシュガルは、追い詰められて暴動に参加した。
寝台の上に、男は仰向けに横たわっていた。男の下半身には、さそりの下半身を持った女がかぶさっている。女は、男の股間を愛撫していた。男の股間がそそり立つと、女は口元を覆う紫色のベールを取り外した。赤く塗った唇をピンク色の舌で舐め回した。
「あなたは、おちんちんをしゃぶられるのが大好きでしょ。とろけるくらいしゃぶってあげるわね」
女は、微笑みながらペニスに顔を寄せた。いとおしげにペニスに口付け、頬ずりをした。再び口付けると、ねっとりと舌をペニスに這わせた。先端を円を描くように舐め回し、そのまま舌を下ろしてくびれを舐め回した。裏筋に舌を上下に這わせながら、袋を手でゆっくりと揉みほぐした。
ペニスの隅々まで舌で唾液を塗りこめると、見せ付けるように口を開けてペニスを含んだ。顔をゆっくりと上下に動かし、唇と舌で棹を愛撫した。唇と舌は別々の生き物のように、男のペニスを愛撫し、嬲った。
女はペニスから口を離した。唇とペニスの間には、唾液と先走り汁で透明な橋ができている。女は粘液の橋を舐め取ると、胸に手をかけ紫の薄物を取り払った。褐色の肌と赤い突起が露わとなった。女は嫣然と微笑むと、豊かな胸で唾液で濡れた怒張を優しく挟み込んだ。胸をゆっくりと動かし、ペニスを愛撫した。次第に女は胸に力を入れ、胸でペニスを揉み込んでいった。硬くなった赤い突起で、ペニスを強く刺激した。
女は胸元に顔を寄せた。舌を伸ばして、胸から見え隠れする男の赤い肉塊を舐め回した。先端に吸い付きあふれ出てくる液をすすり、舌で裏筋を撫で回した。いたずらっぽく先端を甘がみした。
男はうめき声を上げて、精を放った。女の顔に、白濁液が飛び散った。女の褐色の美貌は、白い液で染められた。辺りに精独特の刺激臭が漂った。女はうっとりとした表情を浮かべながら、精を吐き出し続けるペニスを胸と舌で揉みほぐし、舐め回した。精の放出が止まると、唇を先端に付けて中の精を吸い上げた。顔についた精を指ですくって舐め取り、胸に付いた白濁液は直接胸に舌を這わせて舐め取った。
男の右足に鈍い感触がした。何かに刺された様な感触だ。
「もう痛くないでしょ。私の尾で何度も刺されたから、体が慣れたはずよ。私の淫液を注いであげたわ。ほら、もう回復して来ているでしょ」
男の右足は、女の尾の先の針が刺さっていた。女の指摘するとおり、男のペニスは再びそそり立っていた。男は無表情に、ペニスと女の尾を見ていた。
蜂起は広範囲に起こった。アシュガルのいる穀倉地帯、他の穀倉地帯、そして王都で奴隷達が蜂起を起こした。アシュガルの国は、中央に大河がある。大河は、南から北へ流れて海に達している。その大河沿いに穀倉地帯があり、大河が海に流れ込む所に王都がある。この大河沿いの各地で奴隷の蜂起が起こった。
初めは各地の蜂起に繋がりはなく、それぞれの蜂起に指導者はいなかった。蜂起が進むにつれてそれぞれの蜂起に繋がりができ、指導者達も出現した。蜂起を起こした者達は、東の国の侵攻軍や反乱を起こした将軍と連絡を取ることに成功した。奴隷の蜂起は、国を揺るがす規模となった。
蜂起した奴隷が真っ先に行った事は、自分を虐げた者への復讐だった。主人や使用人、彼らの家族を次々と虐殺した。役人も片っ端から殺した。奴隷を持たない自由民の中には、奴隷を虐げる事に加担した者もいた。彼らも殺された。
アシュガルは、虐殺の先頭に立った。アシュガルは長年虐げられ続けた挙句、つい先ほどまで死の恐怖にさらされていた。アシュガルは、爆発するように行動を起こした。自分を遭うたびに殴りつけていた使用人を見つけると、棍棒で殴りかかった。わめき声を上げながら倒れこむ使用人を、繰り返し殴った。他の奴隷もリンチに参加した。アシュガル達が殴る事をやめた時は、その使用人の体は原形をとどめていなかった。
アシュガルは、主人を探し出し殺そうとした。だが主人は、家族と身近な使用人と共に逃げ去っていた。アシュガルの主人は、まず逃げ道を用意する男だった。アシュガルは、主人に逃げられた事にめまいがするほどの怒りと悔しさを感じた。主人に逃げられた事から立ち直ると、使用人を狩る事に専念した。アシュガルは、飼い主よりも飼い犬のほうが罪深い事を知っていた。体で知っていた。
アシュガルは、主人の武器庫から槍を持ち出した。その槍を手に、復讐すべき対象を探し回った。農耕具を収めている建物の壁の前で、一人の男が剣を振り回していた。その周りを武器を持った奴隷達が囲んでいる。剣を振り回している男は、使用人のうちの一人だ。いつも強い者の側にいて、暴力を煽り立てていた。利口ぶっていたくせに、間抜けにも逃げ遅れたらしい。
奴隷達は、剣を振り回す使用人に手を出しかねていた。多勢なのにも関わらず、剣を振り回す使用人を恐れていた。所詮は奴隷だった。アシュガルは前に出て、使用人に対して槍を突き出した。滅茶苦茶な突きだったが、使用人は体勢を崩した。奴隷たちは、武器を使用人に突き出した。使用人は、槍で突かれ剣で切られて赤黒い物体に変わった。
アシュガルの働いていた農園と主人の館は、所々に血みどろの肉塊と臓物が転がっていた。無数の鳥と蝿が、奴隷達をたたえるように飛び回っていた。
奴隷達は、食料庫から酒と食い物を持ち出した。奴隷達の口にする事のできない物を、ふんだんに飲み食いした。アシュガルも思う存分飲み、かつ食った。アシュガルにとって、これほど満たされた事はなかった。
アシュガルの農園では、鮮血の狂宴が行われた。奴隷達の反乱が起こった所では、同じような事が繰り広げられていた。
奴隷達の狂宴は長くは続かなかった。反乱鎮圧のための手がすぐ打たれた。
各地の地方行政庁の長官達は、地方の中心都市と重要軍事拠点の守りを固めて反乱の拡大を防いだ。王は王都の奴隷反乱を鎮圧すると、王都の防衛体制を整えて東から来る敵国の侵攻に備えた。それが終わるとすぐに、奴隷反乱鎮圧のための軍が整えられた。南下して川沿いに鎮圧する用意を整えた。
奴隷達は、東の国や反乱を起こした将軍と連絡を取ろうとした。だが、送った密使達は帰ってこなかった。東の国の軍と将軍の軍は合流し、国の東側を占領すると進撃を止めた。
奴隷達の中で失踪する者が現れた。反乱を煽り立てていた者、反乱指導者の周りにいて支えていた者、反乱軍の連絡を担当していた者達が消えた。これらの者の失踪により、反乱軍は浮き足立った。
アシュガルは、ある奴隷をしていた魔物娘の話を思い出していた。復讐がひと段落して酒宴が開かれていた時、アシュガルは用を足しに席を立った。建物の物陰から、豚の特長を持つ魔物娘であるオークがアシュガルに話しかけてきた。彼女は、アシュガルと同じ主人の下で働いていた奴隷だ。
「早く逃げたほうがいいよ。こんな事は長くは続かないから」
この国には、魔物娘の奴隷達がいた。この国は中立国であり魔王と対立していなかったが、反魔物国から魔物を奴隷として買っていた。魔物達は、奴隷反乱には加わらなかった。オークは、陰鬱な表情を浮かべていた。オークはアシュガルに忠告すると、早足で去った。その後、魔物娘達は見かけなくなった。
アシュガルは、その時は軽く聞き流した。今になって見ると、魔物娘達は先を見通していたのだ。アシュガルは、不安と恐怖に苛まれ始めた。
反乱鎮圧軍は進撃を開始した。整然と速やかに軍を進めて来た。
男は四つん這いにされていた。ギルタブリルの女は、男の尻を撫で回した。
「ねえ、こんな格好は恥ずかしいかしら?あなたのお尻の穴は丸見えよ」
女は笑いながら言うと、男の尻に顔を寄せた。男の尻の穴に、濡れた物がくすぐるように這う感触がした。男は、かすかに腰を上げようと動いた。女は男の腰を押さえ込むと、男の尻の穴に舌を這わせた。女は、ねっとりと舐め上げるかと思うと、からかうように舌の先で突っついた。
「あなたを仰向けにしてお尻を上げさせて舐めるのも楽しいけれどね。こうして四つん這いにさせて舐めるのもなかなかいいわ」
男の尻に鈍い感触がした。女のさそりの尾の先が、男の右側の尻に刺さっていた。女は、男に淫液を注いでいた。痛みは感じず、むしろ快感を得られた。男の下半身に熱が広がり、ペニスに力がみなぎった。
女は尻の穴を円を描く様に舐めまわしながら、右手で男のペニスの棹を愛撫した。左手を男の尻の下に伸ばすと、袋をゆっくりと揉み解した。男は尻の穴に、やわらかく弾力のある物が侵入して来るのを感じた。女は、舌を尻の穴にゆっくりと入れて来た。舌を奥深くまで入れると、ゆっくりと舌を引いた。舌を入れては出し、入れては出した。その間中右手は棹をしごき、左手は袋の中の玉を愛撫した。
男は喘ぎ声を漏らすと、ペニスの先端から白濁液をほとばしらせた。女は、勢いよく出る精を右手の平で受け止めた。精の放出を助けるように、女は尻の穴の中を舐め回し続け、玉をほぐし続けた。男は、喘ぎながら痙攣と射精を続けた。
精の噴出が止まると、女は顔を男の尻から上げた。男の前に回ると、右手を汚す白濁液を見せ付けるように舐めて見せた。指や手の平に丁寧に舌を這わせた。男は女の痴態を見ながら、うつろな表情で喘いでいた。
女は濃厚な臭気を放つ精を舐め終ると、舌なめずりしながら微笑んだ。
「さあ、休んでいる暇はないのよ。まだまだ終わらないわ」
四つん這いになっている男のペニスは、力を失わずにみなぎり続けた。
奴隷達は、自分達が利用されている事に気づき始めた。
思い返せば、初めからおかしかった。蜂起のきっかけとなった、主人達を殺した事件の真犯人は見つからなかった。火の手の上がるタイミングもよすぎた。主人達に労働の強化を進めた使用人達も、あらかじめ暴動を予想したように暴動と同時に姿を消した。暴動が起こる直前に、見計らったように蜂起を煽る者が現れた。蜂起が起こって少しすると、指導者を擁立する者や連絡を買って出るものが現れた。そして今、指導者を支えていた者や連絡を行っていた者が姿を消した。
奴隷達は、失踪した者達を探し始めた。アシュガルも捜索に加わった。一人の奴隷が、失踪した者らしき人間について聞き出した。その者の出入りしている家を突き止めた。大河沿いに造られた町にある、何の変哲もない一軒の家だ。その家を急襲し、三人の男を確保した。三人とも乱を煽っていた者だ。そのうちの一人は、この地方の反乱の指導者の取り巻きの一人だ。
武器を持った奴隷達に囲まれると、三人の男は顔を引きつらせながらも奴隷達をにらみつけた。双方は無言のにらみ合いを続けた。沈黙を破ったのは奴隷の側だ。詰問の形をとっていたが、沈黙に耐えられなかったのは明らかだ。なぜ失踪したのか?なぜこんな所に隠れているのか?誰かの指示を受けているのか?俺達を利用したのか?とわめくように詰問した。
三人の男は無表情だった。そのうち一人の男が冷笑し始めた。指導者の取り巻きだった男だ。薄い唇の端を吊り上げながら嘲り始めた。
それがどうした?お前達奴隷をどう扱おうとかまわないだろ。
お前達は、自分から何かをしようとはしなかった。人に言われてはじめてやった。自分達の人生を他人に渡していた。他人から虐げられても、めそめそ泣きながら人に救ってもらう事を望んだ。家畜だって虐げれば逆らう。お前達は家畜以下だ!
この厳しい世の中で、自分から何もしようとしない者を救う者がいるとでも思っているのか?虫が良すぎるんだよ!ただ口を開けて餌を与えてくれるのを待つ動物など、家畜にすらならない。自分で立ち上がる意志を持たない者など救う価値もない。人に頼らなければ何もできないから利用されるんだよ!
奴隷達は、多勢で武器を持っているにもかかわらずひるんだ。奴隷は、所詮奴隷に過ぎなかった。相手が攻勢に回ると圧倒される。誰か他の者が相手をしてくれる事を望む。自分を嘲りながら否定する者に対して、おどおどしながら立っているだけだった。
アシュガルは、無言で前に出た。持っていた槍を嘲り続ける男に突き出した。男の左肩に刺さった。男はわめき声を上げた。得意げに冷笑を浮かべていた顔が、醜く歪んだ。アシュガルは力を入れて突き刺し、勢いよく抜いた。男の左肩から血が飛び散った。アシュガルは、くり返し槍を突き出した。自分を虐げ、利用し、嘲り、否定する者を突き刺し続けた。上から目線で弱者を否定する男を破壊し続けた。股間を突き刺したら、男は踊るように飛び跳ねた。アシュガルは、笑いながら突き刺し続けた。
アシュガルは肩を掴まれた。いつまで刺しているんだ?肩をつかんだ男はうんざりしたように言った。アシュガルは、自分が刺していた男を見た。もはや人間としての原形をとどめていなかった。全身の肉をはじけさせ、臓物を露出させた赤黒い物体だった。血や肉片が部屋中に飛び散っていた。アシュガルは自分の体を見た。大量の血と肉片を浴びていた。臓物の切れ端も付着していた。アシュガルは、ぼんやりと自分の体を見つめた。
アシュガルが殺した男以外の二人の男の内、一人は奴隷達に殺されていた。もう一人は、思慮のある者が止めた為に生きていた。捕らえた一人を拷問にかけて、反乱の真相を自白させた。
男達は、東の国の工作員だ。東の国は、この国の東側を手に入れようとしていた。そのためこの国の中心部で騒動を起こし、混乱に乗じて東側を奪い取ろうとしていた。騒動を起こすために目をつけられたのが奴隷達だった。
まず、奴隷の主人達の使用人となる。主人の浪費を煽りたて、金を手にするために奴隷を酷使する事を勧める。酷使が限界を超えるあたりで主人や使用人達を暗殺し、殺害は奴隷がやったように見せかける。主人や役人が奴隷狩りをするように仕向ける。奴隷の恐怖が頂点を迎えるのを見はかり、深夜に各地で火を放つ。火の手に興奮した奴隷達を、奴隷にもぐりこんだ工作員達が暴動へと扇動する。蜂起がある程度進んだあたりで指導者を擁立し、各地の反乱者を結びつける連絡役を買って出る。反乱を組織化し、大規模化して国をゆるがせる。
もちろん反乱が鎮圧される事も織り込み済みだ。反乱鎮圧軍が組織されると、すぐさま姿を隠した。後は、この国の軍隊と奴隷達がやりあうのを眺めればよい。
自分達が東の隣国に利用されていた事は、瞬く間に奴隷達の間に広まった。奴隷達は動揺し、混乱した。
統制を失った奴隷達に、王の軍が迫りつつあった。
反乱は、たやすく鎮圧されていった。反乱軍はまとまりを欠いており、反乱軍同士で連携すらできなかった。おまけに浮き足立っており、単なる烏合の衆でしかなかった。
その挙句、内部抗争を始めた。互いに相手を東の国の密偵、王の密偵呼ばわりして殺しあった。元々、主人の支配下で奴隷達同士で潰し合いをしていた。復讐する時や嗜虐性を満たす時だけ連帯できた。危機に陥れば、たちまち不信と憎しみをぶつけあった。
王が派遣した軍は、反乱地を一つ一つしらみつぶしにしていった。反乱の拡大を抑えていた地方行政庁の軍は、反乱鎮圧軍に合流していった。反乱鎮圧軍に対して、奴隷達はまともに対応できなかった。もはや戦いとすらいえなかった。
奴隷達は虐殺されていった。王は、王都の奴隷のほとんどを殺した。その後、反乱鎮圧軍の将軍に、奴隷の皆殺しを命じた。狂った家畜は使い物にならない、一匹残らず屠殺しろ。やつらは主人に逆らうという病気を持っている。病気持ちの家畜は、病気が広まらないようにするために皆殺しにするものだ。奴隷が必要になったら、後で従順なものを手に入れればよい。王の命令を、将軍はうやうやしく拝命した。
王は、英雄と呼ばれていた。王は、英雄の特権とばかりに苛烈な性格をひけらかした。臣下の者達は、王の残虐さをたたえた。奴隷達は、王とその臣下の者達の嗜虐性のいけにえとなった。
反乱鎮圧軍は、奴隷達を皆殺しにしていった。反乱に参加した者も、しなかった者も区別せずに殺した。女、子供も片っ端から殺した。念を入れて、楽しみながら虐殺していった。家畜以下の奴隷が反乱を起こした事に、兵士達は狂おしいまでの憎悪をむき出しにしていた。
自由民達も、反乱鎮圧軍に協力した。彼らは奴隷をさげすみ続けた。自分達の下で這いつくばるべき奴隷達が逆らった事に、激しい憎悪を感じた。兵士も自由民も、奴隷を嬲り殺しにしなければ気がすまなかった。
アシュガルは、反乱鎮圧軍と戦わずに逃げ出した。奴隷達同士で殺しあっている有様なのに、戦う気など無かった。アシュガルは洞窟に身を潜め、岩陰に隠れた。道端の側溝から辺りをうかがい、下水道を通って逃げ続けた。アシュガルはぼろをまとい、垢と砂埃にまみれて逃げ回った。汚れきったネズミのように逃げ回った。
アシュガルの逃げ回る先で、奴隷の虐殺が行われた。手足を切断された者、全身を切り刻まれた者、腹を割かれて臓物を撒き散らされた者達が道に転がっていた。彼らは死に切れず、痙攣しながら泣き喚いていた。虐殺者達は、ある者は哄笑しながら、ある者は冷笑を浮かべながら奴隷達を嬲っていた。
アシュガルが側溝に隠れていると、建物から二人の兵士が出てきた。彼らは、アシュガルのすぐそばを通った。もっと楽しんでから、あの雌を屠殺すればよかったんじゃないのか?ひとりの兵士が言った。馬鹿な事をいうな。屠殺しなけりゃならない奴は、まだまだいるんだ。もう一人の兵士は、顔をしかめながら答えた。それにやり続けたせいで、あの雌は臭くなっていたからな。二人の兵士は、笑いながらアシュガルの側を通り過ぎていった。
アシュガルは、側溝の中に這いつくばり続けた。
男は、ギルタブリルの女の前に這いつくばっていた。人間の上半身とサソリの下半身の境目にある赤いヴァギナを、音を立てて舐めていた。男の顔は、透明な液で濡れていた。女は、喜悦に彩られた顔で見下ろしていた。
「うまくなったわね。あなたは、教え甲斐があっていいわ」
女は、人間の手で男の頭を撫でた。男の頬に手を下ろし、ゆっくりと男の顔を上げさせた。
「さあ、仰向けになりなさい。ご褒美を上げるわ。私の下のお口で、あなたのおちんちんを飲み込んであげるわ」
男は従順な態度で、寝台に仰向けに寝転がった。女は男の上にまたがり、濡れ光るヴァギナでペニスを飲み込んでいった。熱く柔らかい肉が、硬くそそり立つ肉の棒を包んでいった。柔らかく揉み解すような締め付けだ。
「きつく締め付けるばかりではつまらないでしょ?柔らかく包むこともできるのよ」
女のヴァギナは、撫でさする様に軽く締め付け続けた。次第に力を入れ、渦を巻くように男のペニスを奥へと引き込んだ。ペニスを引き絞るように締め付けると、力を抜いて優しく包んだ。女は、ヴァギナで愛撫と締め付けを交互に行った。
女のサソリの尾が、男の首筋に刺さった。甘い快感が体を侵食していった。同時に、熱くたぎるものが下半身から湧き上がった。
女は男に顔を寄せ、左の耳に舌を這わせた。軽く耳たぶを噛み、耳の穴の中に舌を侵入させた。男の顔に、女の髪がかかった。女の髪からは、ジャスミンの香りがした。
「私は潜伏しながら行動するから、普段は香りをつけないの。あなたといる時だけ香りをつけるのよ」
女は耳に唇を這わせながらささやいた。
女の腰の動きは、徐々に激しくなってきた。それに伴い、男の精も上り詰めてきた。男と女は、共に高まってきた。飛び散る汗と上気した顔が、二人の高まりを表していた。
アシュガルの前には、一面に白い砂が広がっていた。
奴隷狩りは執拗に行われた。アシュガルは、方々を逃げ惑った。穀倉地帯の西の端を超え、砂漠との境界にたどり着いた。アシュガルの背後には、奴隷狩りの者達が迫っていた。
奴隷狩りの者達は、平凡な方法でアシュガルを追い詰めた。アシュガルの潜む砂漠沿いの町で、人相風体の怪しいものを洗い出す。洗い出した者の内、逃亡奴隷の可能性が高いものを搾り出す。その者のいる所を特定し、包囲する。本来ならば、これでアシュガルは殺される。
だが奴隷狩りの者達は、わざと一箇所包囲網を開けていた。アシュガルがその地点から逃げ出すと、付かず離れず追跡した。そうしてアシュガルを砂漠との境界に追い込んだ。砂漠で干からびて死ぬか、奴隷狩りの者に切り刻まれて死ぬか、アシュガルに選ばせようとした。
アシュガルは、砂漠を見ている内に足の力が抜けてきた。全身の力が抜けてきた。手から槍を落とし、砂の上にへたり込んだ。股間から水音がした。アシュガルは、自分が小便を漏らしていることに気づかなかった。
アシュガルは、地平線まで続く白い砂を見つめた。白い砂の中で、自分の焦げ茶色の屍が転がる様を幻視した。後から迫って来る者達の気配を感じた。自分が丹念に切り刻まれていく姿が、目の前に浮かんだ。
アシュガルは、槍を手に取った。ゆっくりと立ち上がった。後を振り返り、槍を構えて進んで行った。頭の中には、何も浮かばなくなった。ただ、人を殺す事だけを望んだ。据わった目で、よだれを垂らしながらフラフラと歩いた。
アシュガルの背に、痛みが走った。ぼんやりと後を向くと、砂の中から赤茶色の物が突き出ていた。先端にある針の様な物が、背に突き刺さっていた。アシュガルの体から力が抜け、砂の上に崩れ落ちた。
砂の中から魔物が現われた。上半身は人間の女の体をしていたが、下半身はサソリの様な姿をしていた。魔物はゆっくりと人間の手を伸ばし、アシュガルの頬を撫でた。女は、妖艶な笑みを浮かべた。
「私は、ネテプと言うの。あなたの名前を教えてくれないかしら」
ネテプと名乗った魔物娘は、穏やかな低音の声で言った。
「アシュガル」
空ろな表情で、アシュガルは答えた。
「それじゃあアシュガル、私の住処に行きましょうね。もっとお話したいけれど、邪魔者がいるからね」
ネテプは、力の抜けたアシュガルをサソリの背で背負った。そのまま砂に潜り込んだ。
砂の影に、遺跡への入り口があった。中へ入ると、ネテプは入り口の扉をすばやく閉めた。
薄暗い通路を、ネテプは進んだ。入り組んだ通路になっており、ネテプは右に左にとくり返し曲がった。暗い通路にもかかわらず、ネテプは目が利くらしかった。やがて所々に明かりが灯る様になった。遺跡は石造りであり、石の色合いから造られてから長い年月が経っている事がわかった。
「どうかしら、私達のささやかな住処は?ここは、はるかな古代に造られたのよ。既に創造主は消え、私達が暮らしているの」
ネテプは、歌うように話した。
ネテプの背に乗るアシュガルは、体を自由に動かせなかった。口を動かすのもつらかった。ネテプの尾に刺されてから、体は意のままに動かなくなった。同時に下半身から湧き上がるものがあった。
遺跡の中には、他の魔物達もいた。ネテプと同じく人間の上半身とサソリの下半身を持つ者がいた。人間の上半身と、蛇の下半身を持つ者もいた。いずれも女だった。魔物娘達はネテプとアシュガルを見て、意味ありげに微笑んだ。
ネテプは、アシュガルを一室に運び込んだ。アシュガルを椅子に座らせると、丁寧な手つきで服を脱がせた。桶に水を入れて持ってくると、布を濡らしてアシュガルを優しく洗い出した。
「汚れているわね。きちんと洗わないとだめね。きれいな体で交わりましょう」
ネテプは、いたずらっぽく微笑んだ。
「おしっこも漏らしているじゃない。私まで汚れてしまったわ。お仕置きしてあげるわ」
ネテプは、アシュガルの体を隅々まで洗った。洗い終わると、アシュガルを寝台に横たえた。ネテプは服を脱ぎ、自分の体を洗い始めた。アシュガルに見せ付けるように、体を揺らしひねりながら体を洗った。
体を洗い終わると、ネテプはアシュガルの上に覆いかぶさった。アシュガルの顔に、ゆっくりと自分の顔を重ねて言った。唇と唇が重なった。ネテプは、アシュガルに唇を這わせ舌でくすぐった。二人の唇が離れると、唾液の透明な橋が二人の間にできた。
「まずは口付けからしなければいけないわ。いきなり交わるなんて野暮でしょ」
ネテプは微笑みながら、再びアシュガルと唇を重ねた。唇を重ねながら、アシュガルの肩に尾の針を刺した。アシュガルの意識の混濁は深まった。同時に下半身の熱く疼くものが強まった。
二人は交わり続けた。ネテプはアシュガルにまたがり、犯し続けた。アシュガルが精を放ち萎えようとすると、ネテプは尾の針を刺した。刺しながら液をアシュガルに注ぎ込んだ。注がれると、アシュガルのペニスはみなぎり、精を放出できるようになった。
交わりの合間に、二人は語り合った。ネテプは、自分のことをアシュガルに語った。ネテプは、ギルタブリルと呼ばれる魔物娘だ。砂漠に生き、隠密行動を得意とする魔物娘だ。「砂漠の暗殺者」の異名を持っている。ネテプは、この遺跡で他の魔物娘達と暮らしていた。男を欲して、時折町の近くまで来た。その時に現れたのがアシュガルだ。
アシュガルも、ネテプに質問されて答えた。朦朧としているアシュガルは、ネテプに逆らう気力がなかった。ネテプは、アシュガルの今までの人生を聞き出した。なぜ、砂漠にいたのかも聞き出した。ネテプは、アシュガルをなだめる様に撫でさすりながら質問をした。
アシュガルから話を聞きだすと、ネテプはアシュガルを抱きしめてささやいた。
「今は忘れなさい。これからは私と交わり続けるのだから。何も考える必要はないのよ。もう、あなたを苦しめる者はいないのだから」
アシュガルは、空ろになりつつある頭で思った。そうだ、何も考えなくていい。何も考えたくない。今までの自分の事も、今の自分の事も、これからの自分の事も。アシュガルは、次第に夢と現実の境界が分からなくなってきた。目の前のサソリの女に淫液を注がれ、交わり続ける内に境界を喪失しつつあった。
ネテプは、夢へと落ちていくアシュガルを愛撫していた。
アシュガルは、ネテプと交わり続けた。どれだけ交わったのか覚えていなかった。アシュガルは時の感覚を失っていた。今がいつなのか把握できなかった。
アシュガルの意識は朦朧としていた。なぜ、自分がここにいるのかも把握できなかった。夢なのか現なのか分からなかった。記憶と思念がベールの中に包まれたまま、アシュガルはネテプと交わっていた。
「さあ、私に身を任せなさい。何も考えなくてもいいのよ。私の言うとおりにすればいいのだから」
ネテプは、アシュガルに顔を寄せて耳元でささやいた。
アシュガルの頭の中に浮かぶ過去の記憶は、柔らかいベールがまとわり付いて包んでいった。アシュガルは、まどろみへと落ちていった。
「あなたは、いつか武器を取って立ち上がるかもしれない。自分の人生を取り戻すために、戦わなければならないのかもしれない。でも、今は眠りなさい。私の胸の中で安らぎなさい」
アシュガルは、まどろみの中でネテプの匂いに包まれた。穏やかで、何も考えられなくなる匂いだ。アシュガルは、忘却の靄の中で漂っていた。
14/05/13 21:21更新 / 鬼畜軍曹