魔女狩り将軍
少女が、閉ざされた部屋で裸にされて吊るされていた。十三、四歳くらいのあどけない顔立ちの少女だ。一糸まとわぬ姿で、滑車を用いて天井から吊るされている。少女は、脅えた表情で目の前の男を見つめていた。
少女の前には、一人の男がいた。絹服を着た三十代の男だ。青緑色の石のペンダントをかけている。平凡な顔立ちだが、自信に満ち溢れた表情をしている。男は、少女の裸体を刺すような眼差しで見ていた。
「これから尋問を始める。初めに言っておくが、さっさと魔女だと認めろ。余計な手間をかけなくて済む」
男の言葉に、少女は震えながら頭を振った。
「私は魔女ではありません」
男は、わざとらしく冷笑しながら言った。
「では、手間暇をかけるとしよう。俺は別にかまわん。お前が苦しむだけだ」
男は、口の端を吊り上げた。
「自己紹介をしておこうか。俺は『魔女狩り将軍』ジェームズ・ホプキンスだ。覚えておけ、アリス・ミーズ」
魔女狩り将軍と聞いて、アリスの血の気は引いた。この国でもっとも名高い魔女狩り請負業者だ。アリスの引きつった表情を、魔女狩り将軍は楽しげに見ていた。
ジェームズ・ホプキンスの名は、この国では有名だった。市や町、教会の依頼を受けて魔女を狩っている者だ。既に三百人もの人々が、ホプキンスの手で魔女として狩られていた。ホプキンスは、魔女狩り将軍を自称していた。
ホプキンスは、アリスを見ながら金の事を考えていた。ホプキンスは魔女狩りの一般的な手数料以外に、政府から依頼されていると証して魔女狩りの特別徴税を行った。この特別徴税によって、ホプキンスは多額の金を稼いでいた。ホプキンスは、さっさとアリスを魔女だと認めさせて金をせしめようとしていた。
「魔女」を狩る際にはいくつかコツがあった。アリスは、よそから引っ越してきた者だ。町に友人は少ない上に一人暮らしだ。そのような女は、魔女として狩っても問題になる事は少ない。加えてアリスは猫を飼っていた。猫を、魔女の使い間に仕立て上げることができる。アリスは、ホプキンスにとっていいカモだった。
「魔女には独特のしみがある。調べるとしよう」
ホプキンスはアリスに近づき、体を食い入るように見つめた。未成熟な体だが、きれいな肌をしていた。ホプキンスは、顔を近づけて調べまわした。アリスは羞恥で顔を強張らせ、身をよじった。ホプキンスは、手でアリスの体を押さえた。顔、首、胸、肩、腕とぎらついた目で見回した。右の腋の下を見た時、ホプキンスは満足げに笑った。
「ここに黒いしみがあるな。これは魔女である証拠だ」
アリスは、身をよじりながら抗弁した。
「そんなしみは、誰にでもあるでしょ。魔女の証拠になるわけがないじゃない」
ホプキンスは、薄ら笑いを浮かべながら言った。
「いや、明らかに魔女の証拠だ」
笑いながら言葉を続けた。
「証拠が正しいか否かを判断するのは俺だ。お前ではない。さあ、証拠は挙がった。おとなしく魔女と認めろ」
アリスは、怯えを押さえながら叫んだ。
「ふざけないで!でっちあげよ!」
ホプキンスは、アリスのあごをつかんだ。アリスが苦痛に顔をゆがめる様を見ながら、ホプキンスはゆっくりと言った。
「さっさと魔女だと認めろ。繰り返すがお前が苦しむだけだぞ」
ホプキンスが手を離すと、アリスは顔を背けた。
「馬鹿な奴だ。まだ自分の立場を分かっていないな」
ホプキンスは、ドアに向かって声をかけた。
「入って来い、お前の出番だ」
ホプキンスに声をかけられて、ドアが開いた。一人の娘がオドオドと入って来た。頭にねじれた角を生やし、腕、脚、胸、腰に白い毛を生やしていた。首には家畜につけるような首輪をつけていた。羊の特長を持つ魔物娘であるワーシープだ。
アリスは驚愕しながら言った。
「あなたは魔物を奴隷にしているの?」
アリスの言葉に、ホプキンスは傲然と答えた。
「奴隷ではない、家畜だ」
ホプキンスの言葉に、ワーシープはいじけたようにつぶやいた。
「どうせ私は家畜ですよぅ」
ホプキンスは、ワーシープの言葉を気に留めなかった。アリスに対して、楽しげに言った。
「素直に認めない奴は、体に聞くしかない。お前が悪いのだからな」
ホプキンスは、ワーシープに命じた。
「雌羊よ、この魔女の足を舐めてやれ」
ホプキンスの命令を聞いてため息をつくと、ワーシープはアリスの前にひざまずいて右足を舐め始めた。足を手に取り、足の裏に舌を這わせた。指の裏とくぼみを特に丁寧に舐め回した。
アリスは、くすぐったさに耐えられずに笑い始めた。身をよじって逃れようとするアリスを、ホプキンスは押さえ込んだ。ワーシープは、繰り返し繰り返し足の裏を舐め続けた。
「この雌羊は、足の皮が破けて肉が露出し、骨が見えるまで舐め続けるぞ。さっさと白状したほうが身のためだぞ」
ワーシープは、困ったような顔でつぶやいた。
「そんなに舐める事なんてできませんよぅ」
ホプキンスは、苛立たしげにワーシープを蹴った。ワーシープは悲鳴を上げ、あわてて足を舐め回した。
室内には、アリスの笑う声が響いた。笑いをこらえる事などできなかった。くすぐったさに責め立てられ、身をよじり続けた。
「結構強情だな。さすがは魔女だ」
ホプキンスは、わざとらしく言った。アリスの足の裏は、ワーシープの唾液で濡れ光っている。アリスは身をよじりすぎて疲れきっており、肩で息をついていた。乱れた金髪が、よだれで汚れた顔に張り付いている。ワーシープはアリスの足元に這い蹲り、疲れましたよぅと情けない声を上げていた。
ホプキンスは、ワーシープを蹴ってどかした。手には羽箒を持っていた。
「これには耐えられるかな、魔女よ」
ホプキンスは、アリスの左腋を羽箒でくすぐった。とたんにはじけるような笑い声が、アリスの口から出た。痙攣するように身をよじらせた。ホプキンスは、左腋から左脇腹にかけて羽箒でくすぐった。
この国では、取調べにおいて拷問は禁じられていた。そのため、魔女を責め立てるためには工夫が必要だった。拷問ではないと解釈できる責め立て方が必要だ。法で重要なのは解釈だ。実質的に拷問でも、拷問ではないと解釈できればよいのだ。ホプキンスは元法律家であるため、その事をよく知っていた。
アリスは、狂ったように笑い続けていた。羽箒の責めは耐えがたかった。腕、腋、胸、腹、股間、背、腰、尻、足を責め立てた。特に腋を執拗に責め立てた。アリスは、涙と鼻水とよだれを垂れ流しながら、踊るように身をよじった。
ホプキンスは、苛立ちながら羽箒で責め立てていた。あまり手間暇をかけるつもりはないのだ。客である町はしみったれていて、大して金は搾り取れそうになかった。さっさとこの女を魔女に仕立て上げて、別の町か市で稼ぎたかった。これはあいつを使ったほうがいいなと、声に出さずにつぶやいた。
ホプキンスは、羽箒を台の上に置いた。部屋の隅にある大型の壷の所に行き、手伝えとワーシープに命じた。二人は、壷をアリスの側に持ってきた。
「お前は、俺の攻めを耐え切っていると思っているのかもしれないな。甘いよ、まだまだ俺には手がある」
アリスに笑いかけ、ホプキンスは壷の封を開けた。壷の中からは、緑色と紫色のぬめり光るものが、何本も出てきた。先端が繊毛状になったりいぼ状になったりしていた。壷の中から出てきたのは触手だ。アリスは、青い瞳を見開いて悲鳴を上げた。
「お前達魔女を初め、魔物が大好きな触手だ。たっぷりと楽しめ」
ホプキンスは、声を上げて笑った。
「あなた、こんなものどこで手に入れたの?あなたこそ魔物と通じているんじゃないの?」
ホプキンスは、せせら笑いながら答えた。
「教会ではこんな物も研究開発しているんでね。ある伝から手に入れたのさ」
ホプキンスは、胸にあるペンダントの石をいじった。
「魔法を使って俺を殺してみたらどうだ?魔女なんだから出来るだろ?」
ホプキンスは、青緑色に光る石を見せ付けた。
「まあ、少しくらいの魔法ならこの石で無力に出来る。こいつも教会が開発したものだ。試しに俺を魔法で殺してみろよ」
アリスは、何も答えずに触手を見つめていた。
触手は、粘液を撒き散らしながらアリスに迫っていた。アリスは顔を引きつらせ、触手から逃れようとした。天井から縛られて吊るされているアリスに、逃れることはかなわなかった。触手は、次々とアリスの体にまとわりついた。叫び声を上げるアリスに、のたくりながら触手が巻きついた。アリスの肌を粘液で濡らし、白い肌を光らせた。1本の触手が、アリスの口の中に入り込んだ。くぐもった声を上げるアリスの尻に、別の触手が入り込んだ。無毛のヴァギナにも、濡れ光る突起状の触手が入り込んだ。ホプキンスは、触手が出入りするアリスのヴァギナを覗き込んだ。
「おやおや、お前処女じゃないな。さすがは魔女だ」
ホプキンスの嘲りに、アリスは反応する事ができなかった。触手の責めに翻弄されていた。全身が触手に責め立てられていた。触手は顔を嬲り、腕をこすり、腋をくすぐり、腹と腰を這いずり回り、足を愛撫した。口と尻とヴァギナの三つの穴を犯していた。
ホプキンスが合図すると、アリスの口から触手が抜け出た。よだれと触手の粘液の混合物が飛び散った。
「そろそろ白状したらどうだ?それとも三日三晩続けるか?」
アリスは喘ぎながらはき捨てた。
「分かったわよ、認めるわよ!私は魔女よ!」
ホプキンスは冷笑した。
「さっさと白状すればよかったのだ。馬鹿な奴だ」
ホプキンスは、よだれと粘液で汚れたアリスの顔を侮蔑を露わにして眺めた。
「これから私を火あぶりにするの?」
アリスは、硬い表情でホプキンスに尋ねた。既にホプキンスの誘導通りに自白している。「証拠」と自白がそろった以上、後は茶番でしかない裁判を行い、刑を執行することになる。
「火あぶりなどと野蛮な事はしないさ」
ホプキンスは、アリスの態度を楽しみながら笑った。
「お前は正しい道に帰るのだ。教会の下で敬虔な信者として、人々に奉仕するのだ」
ホプキンスは、わざとらしく口角を吊り上げた。自分の言葉と態度が相手に与える影響を観察した。
「お前は、教会の神父やシスター、教会兵達に説教をされるのだ」
ホプキンスは、効果を計算しながら間を空けた。
「七日間一睡もせずに説教され続けたら、お前のような魔女も正しい道を歩む事ができる」
ホプキンスは、アリスの目を見ながらゆっくりと言った。
「そんなの洗脳じゃない!何が正しい道よ!」
アリスは、嫌悪を露にしてはき捨てた。
「それはお前の勝手な解釈だ。教会は『教育』と解釈している。俺も、教会と同じ解釈をしている」
ホプキンスは、取り澄ました態度で言った。
「町は、魔女の危険から解放される。教会は、敬虔な信者を得られる。お前は、正しい道を歩む事ができる。俺は、ささやかな報酬を得られる。誰もが得をする事になる。すばらしい事ではないか」
ホプキンスは、穏やかな微笑を浮かべた。アリスは何も答えず、憎悪のまなざしで目の前の「魔女狩り将軍」を見た。
「そんな表情や目つきが出来るのもあと少しだ。教会の者が別室で待っている。お前は、説教の後は従順な顔つきになるだろう。残念ながら次の仕事があるので、お前の顔を見るのはこれで最後だ」
ホプキンスはアリスに背を向け、出口へと歩いて行った。
突然、部屋の真ん中から紫色の煙が湧き出した。煙の中に人影が現れた。
ホプキンスは足を止め、怪訝そうな顔で煙を見た。
煙がはれると、人の姿が露わとなった。現れたのは一人の少女だ。奇妙な格好をした、アリスと同じ年頃の少女だ。山羊のような角を生やし、胸や股間を少しばかり覆った黒皮の服を身につけている。手には獣毛の映えた手袋をはめ、獣毛とひづめを供えたブーツを履いている。手には大型の鎌を持っている。
なんだこの餓鬼は?どこから現れた?ホプキンスは首をかしげた。
「バフォ様!」
アリスは、弾けんばかりの声で叫んだ。
「待たせたな、アリス。救いに来るのが遅くなってすまぬな」
バフォ様と呼ばれた少女は、安心させるような微笑を浮かべながら言った。
ホプキンスは、無言のまま少女に掴み掛かった。邪魔な餓鬼は、すぐに部屋から叩き出すべきだと考えた。光と衝撃音が走った。ホプキンスは、うめきながら手を押さえてうずくまった。胸の緑青石は砕けていた。
「やれやれ、礼儀の欠片もわきまえない若造だな」
少女は、呆れたように言い放った。ホプキンスを放置すると、少女はアリスの前に歩み寄った。戒めから解放すると、少女はアリスを抱きしめた。
「かわいそうに、つらい目に遭ったのだな」
少女はアリスの髪をなでた。アリスは声を上げて泣き出した。
ホプキンスは手を押さえながら、少女を凝視していた。何者だこいつ?魔法封じの石が砕けた。アリスは「バフォ様」と言っていたが。ホプキンスは思念をめぐらせた。衝撃と共に一つの答えに行き着いた。まさか、こいつバフォメットか!
山羊の角とひづめを持つ大悪魔バフォメット。サバトの主催者であり、魔界の重鎮である悪魔。確かに少女は、山羊の角とひづめを供えていた。だとすれば、アリスは本物の魔女か!ホプキンスは何も言えずに震え出した。
「さて、わしの部下をかわいがってくれた礼をしなくてはな」
バフォメットは、薄く笑いながらホプキンスのほうを振り返った。ホプキンスは、弾かれたようにドアに走りよった。ドアは開かなかった。ホプキンスは、ドアを叩きながら大声を上げた。
「誰か来てくれ、魔物だ!悪魔が現れたんだ!」
ホプキンスは、恐怖を露わにして叫んだ。
「無駄だよ、この部屋は封印した。誰も来ぬよ『魔女狩り将軍』」
バフォメットは微笑みながら言った。
ホプキンスは、部屋の中を見回した。ワーシープは、震えながら部屋の隅に縮みこまっている。ホプキンスは壁に走りより、かかっている剣を取った。わめき声を上げながらバフォメットに切りかかった。バフォメットは、ホプキンスに手をかざした。衝撃音と共に、ホプキンスは壁に叩きつけられた。
バフォメットは、ホプキンスの所にゆっくりと歩いて来た。バフォメットはしゃがみこみ、床にくずおれたホプキンスの頬を優しく撫でた。
「さあ、お仕置きの時間だ」
部屋の中には狂笑が響き渡っていた。一人の男が、台に縛り付けられ裸で横たわっていた。狂笑はその男があげていた。
男の足元には、一人のワーシープがいた。ワーシープは、男の左足の裏を熱心に舐め回していた。とがった赤い帽子をかぶり赤い服を着た少女が、羽箒で男の右腋をくすぐっていた。男の全身には、粘液をたらす緑色と紫色の触手がまとわり付いていた。腋をくすぐっている少女と同じ格好をした少女達が、男を取り囲んで同じ言葉をくり返し聞かせていた。
「魔物娘は正義だー。教会は悪だー。幼い少女は素晴らしいー」
少し離れた所で、バフォメットが笑いながら眺めていた。
ここは、バフォメットが根城にしている古城の一室だ。バフォメットは、アリスを救いホプキンスを捕らえた。捕らえたホプキンスを、この城に魔法で転送した。じっくりとホプキンスにお仕置きをするためだ。
バフォメットのお仕置きは、ある意味で単純だった。ホプキンスがやってきた事を、そっくりそのままやったのだ。既に三日にわたって、ホプキンスのお仕置きが行われていた。その間ホプキンスを一睡もさせず、ぶっ通しで責め立てていた。ワーシープを休ませずに舐めさせる事は不可能なので、ワーシープが休んでいる間は魔女が羽箒で足をくすぐった。全身を羽箒で撫で回すことも、魔女を交代させながら絶え間なく続けてきた。触手にも、交代させながら攻めさせ続けた。「説教」も魔女が代わる代わる行う事で、一時たりとも休みはなかった。これをあと四日続けるのだ。
「教育」が終わったら、ホプキンスをサバトに参加させる。その姿を魔水晶に記録する。ホプキンスが尋問を行った場所や根拠地から押収した証拠品と共に、ホプキンスが活動した各所に送りつける。これでホプキンスの詐欺が明るみに出る。魔女狩りの信用性も低下するだろう。
ホプキンスの魔女狩りのやり口を疑う者は多かった。教会にもホプキンスを疑っている者はいた。ある神父は、ホプキンスを告発するために証拠集めをしていた。バフォメットも、初めは人間達にホプキンスを告発させようとしていた。だが、人間達は証拠集めに手間取っていた。しかも、自分の部下が魔女として狩られてしまった。そのためバフォメットは、自らホプキンスを失墜させる事にした。
魔女狩りに対しては、わしが直接妨害しなくてはならぬ。そうでなければ、この先どれだけ犠牲者が出るか分からぬ。バフォメットは、内心ため息をついた。だが、やむを得ぬ。わしのかわいい魔女達のためだ。
ホプキンスは、身をよじりながら痙攣していた。尻の穴には、大きな触手が挿入されていた。涙と鼻水とよだれが、触手の垂らす粘液と混ざり合って顔を汚していた。ホプキンスの口には、触手が出たり入ったりしていた。触手を口いっぱいにほおばりながら、ホプキンスは濁音交じりの狂笑をあげ続けていた。
少女の前には、一人の男がいた。絹服を着た三十代の男だ。青緑色の石のペンダントをかけている。平凡な顔立ちだが、自信に満ち溢れた表情をしている。男は、少女の裸体を刺すような眼差しで見ていた。
「これから尋問を始める。初めに言っておくが、さっさと魔女だと認めろ。余計な手間をかけなくて済む」
男の言葉に、少女は震えながら頭を振った。
「私は魔女ではありません」
男は、わざとらしく冷笑しながら言った。
「では、手間暇をかけるとしよう。俺は別にかまわん。お前が苦しむだけだ」
男は、口の端を吊り上げた。
「自己紹介をしておこうか。俺は『魔女狩り将軍』ジェームズ・ホプキンスだ。覚えておけ、アリス・ミーズ」
魔女狩り将軍と聞いて、アリスの血の気は引いた。この国でもっとも名高い魔女狩り請負業者だ。アリスの引きつった表情を、魔女狩り将軍は楽しげに見ていた。
ジェームズ・ホプキンスの名は、この国では有名だった。市や町、教会の依頼を受けて魔女を狩っている者だ。既に三百人もの人々が、ホプキンスの手で魔女として狩られていた。ホプキンスは、魔女狩り将軍を自称していた。
ホプキンスは、アリスを見ながら金の事を考えていた。ホプキンスは魔女狩りの一般的な手数料以外に、政府から依頼されていると証して魔女狩りの特別徴税を行った。この特別徴税によって、ホプキンスは多額の金を稼いでいた。ホプキンスは、さっさとアリスを魔女だと認めさせて金をせしめようとしていた。
「魔女」を狩る際にはいくつかコツがあった。アリスは、よそから引っ越してきた者だ。町に友人は少ない上に一人暮らしだ。そのような女は、魔女として狩っても問題になる事は少ない。加えてアリスは猫を飼っていた。猫を、魔女の使い間に仕立て上げることができる。アリスは、ホプキンスにとっていいカモだった。
「魔女には独特のしみがある。調べるとしよう」
ホプキンスはアリスに近づき、体を食い入るように見つめた。未成熟な体だが、きれいな肌をしていた。ホプキンスは、顔を近づけて調べまわした。アリスは羞恥で顔を強張らせ、身をよじった。ホプキンスは、手でアリスの体を押さえた。顔、首、胸、肩、腕とぎらついた目で見回した。右の腋の下を見た時、ホプキンスは満足げに笑った。
「ここに黒いしみがあるな。これは魔女である証拠だ」
アリスは、身をよじりながら抗弁した。
「そんなしみは、誰にでもあるでしょ。魔女の証拠になるわけがないじゃない」
ホプキンスは、薄ら笑いを浮かべながら言った。
「いや、明らかに魔女の証拠だ」
笑いながら言葉を続けた。
「証拠が正しいか否かを判断するのは俺だ。お前ではない。さあ、証拠は挙がった。おとなしく魔女と認めろ」
アリスは、怯えを押さえながら叫んだ。
「ふざけないで!でっちあげよ!」
ホプキンスは、アリスのあごをつかんだ。アリスが苦痛に顔をゆがめる様を見ながら、ホプキンスはゆっくりと言った。
「さっさと魔女だと認めろ。繰り返すがお前が苦しむだけだぞ」
ホプキンスが手を離すと、アリスは顔を背けた。
「馬鹿な奴だ。まだ自分の立場を分かっていないな」
ホプキンスは、ドアに向かって声をかけた。
「入って来い、お前の出番だ」
ホプキンスに声をかけられて、ドアが開いた。一人の娘がオドオドと入って来た。頭にねじれた角を生やし、腕、脚、胸、腰に白い毛を生やしていた。首には家畜につけるような首輪をつけていた。羊の特長を持つ魔物娘であるワーシープだ。
アリスは驚愕しながら言った。
「あなたは魔物を奴隷にしているの?」
アリスの言葉に、ホプキンスは傲然と答えた。
「奴隷ではない、家畜だ」
ホプキンスの言葉に、ワーシープはいじけたようにつぶやいた。
「どうせ私は家畜ですよぅ」
ホプキンスは、ワーシープの言葉を気に留めなかった。アリスに対して、楽しげに言った。
「素直に認めない奴は、体に聞くしかない。お前が悪いのだからな」
ホプキンスは、ワーシープに命じた。
「雌羊よ、この魔女の足を舐めてやれ」
ホプキンスの命令を聞いてため息をつくと、ワーシープはアリスの前にひざまずいて右足を舐め始めた。足を手に取り、足の裏に舌を這わせた。指の裏とくぼみを特に丁寧に舐め回した。
アリスは、くすぐったさに耐えられずに笑い始めた。身をよじって逃れようとするアリスを、ホプキンスは押さえ込んだ。ワーシープは、繰り返し繰り返し足の裏を舐め続けた。
「この雌羊は、足の皮が破けて肉が露出し、骨が見えるまで舐め続けるぞ。さっさと白状したほうが身のためだぞ」
ワーシープは、困ったような顔でつぶやいた。
「そんなに舐める事なんてできませんよぅ」
ホプキンスは、苛立たしげにワーシープを蹴った。ワーシープは悲鳴を上げ、あわてて足を舐め回した。
室内には、アリスの笑う声が響いた。笑いをこらえる事などできなかった。くすぐったさに責め立てられ、身をよじり続けた。
「結構強情だな。さすがは魔女だ」
ホプキンスは、わざとらしく言った。アリスの足の裏は、ワーシープの唾液で濡れ光っている。アリスは身をよじりすぎて疲れきっており、肩で息をついていた。乱れた金髪が、よだれで汚れた顔に張り付いている。ワーシープはアリスの足元に這い蹲り、疲れましたよぅと情けない声を上げていた。
ホプキンスは、ワーシープを蹴ってどかした。手には羽箒を持っていた。
「これには耐えられるかな、魔女よ」
ホプキンスは、アリスの左腋を羽箒でくすぐった。とたんにはじけるような笑い声が、アリスの口から出た。痙攣するように身をよじらせた。ホプキンスは、左腋から左脇腹にかけて羽箒でくすぐった。
この国では、取調べにおいて拷問は禁じられていた。そのため、魔女を責め立てるためには工夫が必要だった。拷問ではないと解釈できる責め立て方が必要だ。法で重要なのは解釈だ。実質的に拷問でも、拷問ではないと解釈できればよいのだ。ホプキンスは元法律家であるため、その事をよく知っていた。
アリスは、狂ったように笑い続けていた。羽箒の責めは耐えがたかった。腕、腋、胸、腹、股間、背、腰、尻、足を責め立てた。特に腋を執拗に責め立てた。アリスは、涙と鼻水とよだれを垂れ流しながら、踊るように身をよじった。
ホプキンスは、苛立ちながら羽箒で責め立てていた。あまり手間暇をかけるつもりはないのだ。客である町はしみったれていて、大して金は搾り取れそうになかった。さっさとこの女を魔女に仕立て上げて、別の町か市で稼ぎたかった。これはあいつを使ったほうがいいなと、声に出さずにつぶやいた。
ホプキンスは、羽箒を台の上に置いた。部屋の隅にある大型の壷の所に行き、手伝えとワーシープに命じた。二人は、壷をアリスの側に持ってきた。
「お前は、俺の攻めを耐え切っていると思っているのかもしれないな。甘いよ、まだまだ俺には手がある」
アリスに笑いかけ、ホプキンスは壷の封を開けた。壷の中からは、緑色と紫色のぬめり光るものが、何本も出てきた。先端が繊毛状になったりいぼ状になったりしていた。壷の中から出てきたのは触手だ。アリスは、青い瞳を見開いて悲鳴を上げた。
「お前達魔女を初め、魔物が大好きな触手だ。たっぷりと楽しめ」
ホプキンスは、声を上げて笑った。
「あなた、こんなものどこで手に入れたの?あなたこそ魔物と通じているんじゃないの?」
ホプキンスは、せせら笑いながら答えた。
「教会ではこんな物も研究開発しているんでね。ある伝から手に入れたのさ」
ホプキンスは、胸にあるペンダントの石をいじった。
「魔法を使って俺を殺してみたらどうだ?魔女なんだから出来るだろ?」
ホプキンスは、青緑色に光る石を見せ付けた。
「まあ、少しくらいの魔法ならこの石で無力に出来る。こいつも教会が開発したものだ。試しに俺を魔法で殺してみろよ」
アリスは、何も答えずに触手を見つめていた。
触手は、粘液を撒き散らしながらアリスに迫っていた。アリスは顔を引きつらせ、触手から逃れようとした。天井から縛られて吊るされているアリスに、逃れることはかなわなかった。触手は、次々とアリスの体にまとわりついた。叫び声を上げるアリスに、のたくりながら触手が巻きついた。アリスの肌を粘液で濡らし、白い肌を光らせた。1本の触手が、アリスの口の中に入り込んだ。くぐもった声を上げるアリスの尻に、別の触手が入り込んだ。無毛のヴァギナにも、濡れ光る突起状の触手が入り込んだ。ホプキンスは、触手が出入りするアリスのヴァギナを覗き込んだ。
「おやおや、お前処女じゃないな。さすがは魔女だ」
ホプキンスの嘲りに、アリスは反応する事ができなかった。触手の責めに翻弄されていた。全身が触手に責め立てられていた。触手は顔を嬲り、腕をこすり、腋をくすぐり、腹と腰を這いずり回り、足を愛撫した。口と尻とヴァギナの三つの穴を犯していた。
ホプキンスが合図すると、アリスの口から触手が抜け出た。よだれと触手の粘液の混合物が飛び散った。
「そろそろ白状したらどうだ?それとも三日三晩続けるか?」
アリスは喘ぎながらはき捨てた。
「分かったわよ、認めるわよ!私は魔女よ!」
ホプキンスは冷笑した。
「さっさと白状すればよかったのだ。馬鹿な奴だ」
ホプキンスは、よだれと粘液で汚れたアリスの顔を侮蔑を露わにして眺めた。
「これから私を火あぶりにするの?」
アリスは、硬い表情でホプキンスに尋ねた。既にホプキンスの誘導通りに自白している。「証拠」と自白がそろった以上、後は茶番でしかない裁判を行い、刑を執行することになる。
「火あぶりなどと野蛮な事はしないさ」
ホプキンスは、アリスの態度を楽しみながら笑った。
「お前は正しい道に帰るのだ。教会の下で敬虔な信者として、人々に奉仕するのだ」
ホプキンスは、わざとらしく口角を吊り上げた。自分の言葉と態度が相手に与える影響を観察した。
「お前は、教会の神父やシスター、教会兵達に説教をされるのだ」
ホプキンスは、効果を計算しながら間を空けた。
「七日間一睡もせずに説教され続けたら、お前のような魔女も正しい道を歩む事ができる」
ホプキンスは、アリスの目を見ながらゆっくりと言った。
「そんなの洗脳じゃない!何が正しい道よ!」
アリスは、嫌悪を露にしてはき捨てた。
「それはお前の勝手な解釈だ。教会は『教育』と解釈している。俺も、教会と同じ解釈をしている」
ホプキンスは、取り澄ました態度で言った。
「町は、魔女の危険から解放される。教会は、敬虔な信者を得られる。お前は、正しい道を歩む事ができる。俺は、ささやかな報酬を得られる。誰もが得をする事になる。すばらしい事ではないか」
ホプキンスは、穏やかな微笑を浮かべた。アリスは何も答えず、憎悪のまなざしで目の前の「魔女狩り将軍」を見た。
「そんな表情や目つきが出来るのもあと少しだ。教会の者が別室で待っている。お前は、説教の後は従順な顔つきになるだろう。残念ながら次の仕事があるので、お前の顔を見るのはこれで最後だ」
ホプキンスはアリスに背を向け、出口へと歩いて行った。
突然、部屋の真ん中から紫色の煙が湧き出した。煙の中に人影が現れた。
ホプキンスは足を止め、怪訝そうな顔で煙を見た。
煙がはれると、人の姿が露わとなった。現れたのは一人の少女だ。奇妙な格好をした、アリスと同じ年頃の少女だ。山羊のような角を生やし、胸や股間を少しばかり覆った黒皮の服を身につけている。手には獣毛の映えた手袋をはめ、獣毛とひづめを供えたブーツを履いている。手には大型の鎌を持っている。
なんだこの餓鬼は?どこから現れた?ホプキンスは首をかしげた。
「バフォ様!」
アリスは、弾けんばかりの声で叫んだ。
「待たせたな、アリス。救いに来るのが遅くなってすまぬな」
バフォ様と呼ばれた少女は、安心させるような微笑を浮かべながら言った。
ホプキンスは、無言のまま少女に掴み掛かった。邪魔な餓鬼は、すぐに部屋から叩き出すべきだと考えた。光と衝撃音が走った。ホプキンスは、うめきながら手を押さえてうずくまった。胸の緑青石は砕けていた。
「やれやれ、礼儀の欠片もわきまえない若造だな」
少女は、呆れたように言い放った。ホプキンスを放置すると、少女はアリスの前に歩み寄った。戒めから解放すると、少女はアリスを抱きしめた。
「かわいそうに、つらい目に遭ったのだな」
少女はアリスの髪をなでた。アリスは声を上げて泣き出した。
ホプキンスは手を押さえながら、少女を凝視していた。何者だこいつ?魔法封じの石が砕けた。アリスは「バフォ様」と言っていたが。ホプキンスは思念をめぐらせた。衝撃と共に一つの答えに行き着いた。まさか、こいつバフォメットか!
山羊の角とひづめを持つ大悪魔バフォメット。サバトの主催者であり、魔界の重鎮である悪魔。確かに少女は、山羊の角とひづめを供えていた。だとすれば、アリスは本物の魔女か!ホプキンスは何も言えずに震え出した。
「さて、わしの部下をかわいがってくれた礼をしなくてはな」
バフォメットは、薄く笑いながらホプキンスのほうを振り返った。ホプキンスは、弾かれたようにドアに走りよった。ドアは開かなかった。ホプキンスは、ドアを叩きながら大声を上げた。
「誰か来てくれ、魔物だ!悪魔が現れたんだ!」
ホプキンスは、恐怖を露わにして叫んだ。
「無駄だよ、この部屋は封印した。誰も来ぬよ『魔女狩り将軍』」
バフォメットは微笑みながら言った。
ホプキンスは、部屋の中を見回した。ワーシープは、震えながら部屋の隅に縮みこまっている。ホプキンスは壁に走りより、かかっている剣を取った。わめき声を上げながらバフォメットに切りかかった。バフォメットは、ホプキンスに手をかざした。衝撃音と共に、ホプキンスは壁に叩きつけられた。
バフォメットは、ホプキンスの所にゆっくりと歩いて来た。バフォメットはしゃがみこみ、床にくずおれたホプキンスの頬を優しく撫でた。
「さあ、お仕置きの時間だ」
部屋の中には狂笑が響き渡っていた。一人の男が、台に縛り付けられ裸で横たわっていた。狂笑はその男があげていた。
男の足元には、一人のワーシープがいた。ワーシープは、男の左足の裏を熱心に舐め回していた。とがった赤い帽子をかぶり赤い服を着た少女が、羽箒で男の右腋をくすぐっていた。男の全身には、粘液をたらす緑色と紫色の触手がまとわり付いていた。腋をくすぐっている少女と同じ格好をした少女達が、男を取り囲んで同じ言葉をくり返し聞かせていた。
「魔物娘は正義だー。教会は悪だー。幼い少女は素晴らしいー」
少し離れた所で、バフォメットが笑いながら眺めていた。
ここは、バフォメットが根城にしている古城の一室だ。バフォメットは、アリスを救いホプキンスを捕らえた。捕らえたホプキンスを、この城に魔法で転送した。じっくりとホプキンスにお仕置きをするためだ。
バフォメットのお仕置きは、ある意味で単純だった。ホプキンスがやってきた事を、そっくりそのままやったのだ。既に三日にわたって、ホプキンスのお仕置きが行われていた。その間ホプキンスを一睡もさせず、ぶっ通しで責め立てていた。ワーシープを休ませずに舐めさせる事は不可能なので、ワーシープが休んでいる間は魔女が羽箒で足をくすぐった。全身を羽箒で撫で回すことも、魔女を交代させながら絶え間なく続けてきた。触手にも、交代させながら攻めさせ続けた。「説教」も魔女が代わる代わる行う事で、一時たりとも休みはなかった。これをあと四日続けるのだ。
「教育」が終わったら、ホプキンスをサバトに参加させる。その姿を魔水晶に記録する。ホプキンスが尋問を行った場所や根拠地から押収した証拠品と共に、ホプキンスが活動した各所に送りつける。これでホプキンスの詐欺が明るみに出る。魔女狩りの信用性も低下するだろう。
ホプキンスの魔女狩りのやり口を疑う者は多かった。教会にもホプキンスを疑っている者はいた。ある神父は、ホプキンスを告発するために証拠集めをしていた。バフォメットも、初めは人間達にホプキンスを告発させようとしていた。だが、人間達は証拠集めに手間取っていた。しかも、自分の部下が魔女として狩られてしまった。そのためバフォメットは、自らホプキンスを失墜させる事にした。
魔女狩りに対しては、わしが直接妨害しなくてはならぬ。そうでなければ、この先どれだけ犠牲者が出るか分からぬ。バフォメットは、内心ため息をついた。だが、やむを得ぬ。わしのかわいい魔女達のためだ。
ホプキンスは、身をよじりながら痙攣していた。尻の穴には、大きな触手が挿入されていた。涙と鼻水とよだれが、触手の垂らす粘液と混ざり合って顔を汚していた。ホプキンスの口には、触手が出たり入ったりしていた。触手を口いっぱいにほおばりながら、ホプキンスは濁音交じりの狂笑をあげ続けていた。
14/04/26 14:57更新 / 鬼畜軍曹