青い
憧れの先輩が消えてしまった
小学校の頃からずっと同じ部活、同じ楽器を吹く背中を
追い続けていた存在が突然いなくなってしまう。
この事実は僕に驚きよりも虚無感を突き付けた。
そして何より恐ろしいのは、
誰も先輩のことを覚えていないのだ。
他の先輩、先生に聞いてみてもみんな口を揃えて
「そんな人は知らない。」の一点張りなのだ。
まるで先輩がいた時間が丸ごと切り取られてしまったようだ。
ただ事実を受け入れるわけにはいかない僕はいくつかの謎をまとめてみた。
なぜ先輩は消えたのか
なぜ誰も先輩のことを覚えていないのか
なぜ僕だけが先輩のことを覚えているのか
大きく分けると、この3つの謎に整理できる。
僕は以上の3つの点から僕たちに想像をはるかに超える何かしらが存在すると仮定して考えることにした。そうでもしないと2つ目と3つ目の謎が説明できないからだ。
では何かしらの存在とは何か
そうブツブツと一人でつぶやいている僕は、僕に近づく影に気づかなかった。
「何一人でしゃべってるの?正直言ってかなりキモいよw」
話しかけて早々にディスってくる女にムカッ腹が立った僕は、
女をギロリと睨みつけるといかにも不機嫌そうに
「お前には関係ないだろ、あっちに行って陽キャ同士で喋ってろよ。」
出来る限りの棘を含めて言い放った。すると女は急に俯いて
「う...」
「う?」
「うえーん、えーん、えんえん。」
ワザとらしく泣き出したのだ。
女の声はクラスいっぱいに響きわたり周りの視線を集める。
続けて僕を軽蔑するようなヒソヒソ話が聞こえてくる。
居心地の悪くなった僕は逃げるように教室を出て家路に着いた。
「はぁ、一体何が起こっているんだ。」
誰かに聞かせるわけでもなく夕焼けの空に呟くと
「気になる?気になっちゃうよね〜w」
後ろから先ほども聞いたウザったい声が聞こえて驚いた。
慌てて振り返るとそこにはやはりあの女がいた。
僕は女の発言に食らいつくように尋ねた。
「お前、何か知っているのか?」
案の定この質問が来るだろうと予想していたのか、
女はニタリと気味の悪い笑みを浮かべると
「知ってるも何も、私たちがやったんだよ〜w」
衝撃の発言だった。
こいつが先輩を消したのか?こいつがみんなの記憶を操作したのか?
真実を知った僕は意外にも落ち着いていて、そして殺気立っていた。
「先輩をどこにやった?」
感情を捨て機械のように聞いた。
「クスクス、君勘違いしてない?」
「へ?」
緊張感のなさにいつもの自分に戻った。
「確かに私もこの問題に関わってはいるけれど、
君の言う先輩のことは全く知らないよw」
「でも、お前自分がやったって...」
「あくまでも私がやったのは記憶の改ざんだけだよ〜w」
「・・・それにしてもだ!どうしてみんなの記憶を?」
「だって人が消えたら誰だって混乱するでしょ?」
最もな意見である。
「じゃあなんで僕の記憶を消さなかったんだ?」
率直な疑問をぶつけると女は大げさに腕を組んで唸った。
「そうそれなんだけどね〜、私にもさっぱりなんだよね〜」
「なんだよそれ。」
あまりにも素っ頓狂な返答に自身の緊張も解ける。
「そのセリフは私が言いたいよ!
なんで君だけ記憶消えないんだよ!
私が未熟だからか?私が彼氏いないからか?
私の胸が小さいからか?答えろよ!」
うわぁ、こいつ面倒くせー。
「なんて君に言っても分かんないよねw」
「うわぁ、こいつ面倒くせー。」
「面倒くさいってなによ!
まぁ、君はきっと先輩への関心が
他の人より強かったからこんなことになったんでしょうけど。」
「そうかそういうことだったのか。」
完全には納得しきれてはいないが、
なんだか少し心の中のモヤが晴れたような気がした。
「結局先輩はどこへ行ったかは分からずじまいか。」
「それなんだけどさ。」
「ん?」
「君と話してみて少しわかった気がする。」
本日2度目の衝撃の発言、
もう体が持ちそうにないです。
「そ、それはどこだ?」
「たぶん魔界だわw」
「・・・」
「ホントだって信じてよ〜」
「エッ、アッ、ウン、
シンジテルヨー。」
もうわけがわからない。魔界?
魔界ってあれか?あのパンイチのおっさんが、
槍投げまくるヤツ?
「今君が想像しているのは絶対に違う。」
「そ、そうか...」
もう頭の整理ができない。
「コホン、まぁ君に付着している
他の男の人の匂いから察するに同じ匂いがする
男を連れていた人?に少し心当たりがあるの、
それでその人?がいる場所が魔界ってわけ。」
「なんで人?って疑問になるんだよ?」
「えっ、だって私たち人間じゃないしw」
本日3度目の(以下略
「ニンゲン、チガウ?」
「おーい、驚きのあまり言語能力が低下してるぞー」
「はっ!人間じゃなかったらなんなんだ?」
「魔物娘。」
「へ?」
「だから、魔物娘。」
「ん?」
「あーもう、もう見たほうが早い!」
すると突然、女は青白い光に包まれた。
強い光はだんだんと落ち着いていきやがて光は収まり
女の真なる姿が露わになった。
「あ、悪魔!」
まさにそれは悪魔そのものであった。
青い肌、二本の角、黒い羽。
こんな現実離れをした姿を見て気絶しなかったのは、
今までの会話の内容がハード過ぎたからだろう。
「ピンポン、ピンポーン!」
女もとい悪魔は嬉しそうに飛び回った。
「それ本物なんだな...」
自在に動く羽を見て思わず関心しまった。
「うへへへ、触ってみる?」
僕の言葉をなぜか褒め言葉と受け止めた女は、
嬉々として羽を差し出してくる。
実際に興味はあったので、遠慮がちにそっと撫でてみた。
「はうっ!」
急な官能的な声に思わず身を引く。
「だ、大丈夫か?」
心配して声をかけるがその返事は意外なものだった。
「君の触り方、エッチすぎるよ〜」
「な!」
「あーあ、もうスイッチ入っちゃったw
どうせ君は先輩に会いたいんでしょ?
だったら会わせてあげるよ...
同じインキュバスとしてね!」
それからの僕の記憶はない、
あるけどなかったことにしたい。
しばらくして目がさめると魔界にいた。
隣には例の女がいた。
裸で。
「・・・」
「ん〜?もう朝〜?」
「!!」
「おはよ〜」
「お、おはようございます。」
「ふふっ。そんな身構えなくたっていいんだよ?
だって私たちもう...
夫婦だから!」
「あの、僕でよかったんですか?」
「どういうこと?」
「いや、なんといいますか、その
事の始めはなし崩しでしたし、
会ったばかりの時は敵意むき出しでしたし...」
「きっかけはどうであれ私は君のこと好きだよ。
そもそも私が記憶の操作しても効かなかったし。
それだけも十分特別なんだよw」
「そ、そうかでもな...」
「あぁもういじらしい!
こうなったらもう一回私がどれだけ君のこと
好きなのか体に直接叩きこんでア・ゲ・ルw」
「いやっ、それはもういい!
いいから!いいがらー!」
先輩、会えるのはもうしばらく先になりそうです。
小学校の頃からずっと同じ部活、同じ楽器を吹く背中を
追い続けていた存在が突然いなくなってしまう。
この事実は僕に驚きよりも虚無感を突き付けた。
そして何より恐ろしいのは、
誰も先輩のことを覚えていないのだ。
他の先輩、先生に聞いてみてもみんな口を揃えて
「そんな人は知らない。」の一点張りなのだ。
まるで先輩がいた時間が丸ごと切り取られてしまったようだ。
ただ事実を受け入れるわけにはいかない僕はいくつかの謎をまとめてみた。
なぜ先輩は消えたのか
なぜ誰も先輩のことを覚えていないのか
なぜ僕だけが先輩のことを覚えているのか
大きく分けると、この3つの謎に整理できる。
僕は以上の3つの点から僕たちに想像をはるかに超える何かしらが存在すると仮定して考えることにした。そうでもしないと2つ目と3つ目の謎が説明できないからだ。
では何かしらの存在とは何か
そうブツブツと一人でつぶやいている僕は、僕に近づく影に気づかなかった。
「何一人でしゃべってるの?正直言ってかなりキモいよw」
話しかけて早々にディスってくる女にムカッ腹が立った僕は、
女をギロリと睨みつけるといかにも不機嫌そうに
「お前には関係ないだろ、あっちに行って陽キャ同士で喋ってろよ。」
出来る限りの棘を含めて言い放った。すると女は急に俯いて
「う...」
「う?」
「うえーん、えーん、えんえん。」
ワザとらしく泣き出したのだ。
女の声はクラスいっぱいに響きわたり周りの視線を集める。
続けて僕を軽蔑するようなヒソヒソ話が聞こえてくる。
居心地の悪くなった僕は逃げるように教室を出て家路に着いた。
「はぁ、一体何が起こっているんだ。」
誰かに聞かせるわけでもなく夕焼けの空に呟くと
「気になる?気になっちゃうよね〜w」
後ろから先ほども聞いたウザったい声が聞こえて驚いた。
慌てて振り返るとそこにはやはりあの女がいた。
僕は女の発言に食らいつくように尋ねた。
「お前、何か知っているのか?」
案の定この質問が来るだろうと予想していたのか、
女はニタリと気味の悪い笑みを浮かべると
「知ってるも何も、私たちがやったんだよ〜w」
衝撃の発言だった。
こいつが先輩を消したのか?こいつがみんなの記憶を操作したのか?
真実を知った僕は意外にも落ち着いていて、そして殺気立っていた。
「先輩をどこにやった?」
感情を捨て機械のように聞いた。
「クスクス、君勘違いしてない?」
「へ?」
緊張感のなさにいつもの自分に戻った。
「確かに私もこの問題に関わってはいるけれど、
君の言う先輩のことは全く知らないよw」
「でも、お前自分がやったって...」
「あくまでも私がやったのは記憶の改ざんだけだよ〜w」
「・・・それにしてもだ!どうしてみんなの記憶を?」
「だって人が消えたら誰だって混乱するでしょ?」
最もな意見である。
「じゃあなんで僕の記憶を消さなかったんだ?」
率直な疑問をぶつけると女は大げさに腕を組んで唸った。
「そうそれなんだけどね〜、私にもさっぱりなんだよね〜」
「なんだよそれ。」
あまりにも素っ頓狂な返答に自身の緊張も解ける。
「そのセリフは私が言いたいよ!
なんで君だけ記憶消えないんだよ!
私が未熟だからか?私が彼氏いないからか?
私の胸が小さいからか?答えろよ!」
うわぁ、こいつ面倒くせー。
「なんて君に言っても分かんないよねw」
「うわぁ、こいつ面倒くせー。」
「面倒くさいってなによ!
まぁ、君はきっと先輩への関心が
他の人より強かったからこんなことになったんでしょうけど。」
「そうかそういうことだったのか。」
完全には納得しきれてはいないが、
なんだか少し心の中のモヤが晴れたような気がした。
「結局先輩はどこへ行ったかは分からずじまいか。」
「それなんだけどさ。」
「ん?」
「君と話してみて少しわかった気がする。」
本日2度目の衝撃の発言、
もう体が持ちそうにないです。
「そ、それはどこだ?」
「たぶん魔界だわw」
「・・・」
「ホントだって信じてよ〜」
「エッ、アッ、ウン、
シンジテルヨー。」
もうわけがわからない。魔界?
魔界ってあれか?あのパンイチのおっさんが、
槍投げまくるヤツ?
「今君が想像しているのは絶対に違う。」
「そ、そうか...」
もう頭の整理ができない。
「コホン、まぁ君に付着している
他の男の人の匂いから察するに同じ匂いがする
男を連れていた人?に少し心当たりがあるの、
それでその人?がいる場所が魔界ってわけ。」
「なんで人?って疑問になるんだよ?」
「えっ、だって私たち人間じゃないしw」
本日3度目の(以下略
「ニンゲン、チガウ?」
「おーい、驚きのあまり言語能力が低下してるぞー」
「はっ!人間じゃなかったらなんなんだ?」
「魔物娘。」
「へ?」
「だから、魔物娘。」
「ん?」
「あーもう、もう見たほうが早い!」
すると突然、女は青白い光に包まれた。
強い光はだんだんと落ち着いていきやがて光は収まり
女の真なる姿が露わになった。
「あ、悪魔!」
まさにそれは悪魔そのものであった。
青い肌、二本の角、黒い羽。
こんな現実離れをした姿を見て気絶しなかったのは、
今までの会話の内容がハード過ぎたからだろう。
「ピンポン、ピンポーン!」
女もとい悪魔は嬉しそうに飛び回った。
「それ本物なんだな...」
自在に動く羽を見て思わず関心しまった。
「うへへへ、触ってみる?」
僕の言葉をなぜか褒め言葉と受け止めた女は、
嬉々として羽を差し出してくる。
実際に興味はあったので、遠慮がちにそっと撫でてみた。
「はうっ!」
急な官能的な声に思わず身を引く。
「だ、大丈夫か?」
心配して声をかけるがその返事は意外なものだった。
「君の触り方、エッチすぎるよ〜」
「な!」
「あーあ、もうスイッチ入っちゃったw
どうせ君は先輩に会いたいんでしょ?
だったら会わせてあげるよ...
同じインキュバスとしてね!」
それからの僕の記憶はない、
あるけどなかったことにしたい。
しばらくして目がさめると魔界にいた。
隣には例の女がいた。
裸で。
「・・・」
「ん〜?もう朝〜?」
「!!」
「おはよ〜」
「お、おはようございます。」
「ふふっ。そんな身構えなくたっていいんだよ?
だって私たちもう...
夫婦だから!」
「あの、僕でよかったんですか?」
「どういうこと?」
「いや、なんといいますか、その
事の始めはなし崩しでしたし、
会ったばかりの時は敵意むき出しでしたし...」
「きっかけはどうであれ私は君のこと好きだよ。
そもそも私が記憶の操作しても効かなかったし。
それだけも十分特別なんだよw」
「そ、そうかでもな...」
「あぁもういじらしい!
こうなったらもう一回私がどれだけ君のこと
好きなのか体に直接叩きこんでア・ゲ・ルw」
「いやっ、それはもういい!
いいから!いいがらー!」
先輩、会えるのはもうしばらく先になりそうです。
19/08/25 20:54更新 / 甘党大工さん