残り一か月
「クリスマスまで残り一か月だな...」
『それは言わない約束だろ...』
「わかっちゃいるがどうしてもな...」
『はぁ...遊び盛りのD学生の俺たちが女も作らずオンラインゲームだよ...』
「作らずじゃなくて、作れないの間違いだろww」
『そりゃそうだww』
「...」
『...』
「...もしさ、俺たちがわがまま言って付き合えるとしたらどんな子がイイ?」
『選べるような立場じゃないが、一途な子がイイな...』
「ざっくりしすぎだろww」
『うるせー、そういうお前はどうなんだよ』
「俺は一緒にいて楽しい子かな」
『お前も大概だな』
「女の子とろくに関わったこともないんだ、当然だろ」
『ほんとそれな』
「ただでさえ、最近オンライン形式の講義ばかりで顔合わせる機会少ないっていうのによ」
『まぁ、まだ俺たち人間だし...』
「これが魔物娘と付き合って、インキュバスになったら変わるのかな」
『魔物娘と付き合う時点で、もうゴールだろww』
「そうだったww」
『お前さ、出身田舎だろ?』
「田舎言うな」
『すまんすまん、地元とかに魔物娘の知り合いとかいなかったの?』
「あー、いたけどみんな彼氏持ちだったな」
『本当かぁ、一人ぐらいはフリーな子いたんじゃないのか?』
「誰かさんが言うに地元は田舎だから、そもそも人がいねーんだよ」
『悪かったって、そっか紹介してもらおうと思ったのに...』
「それだったら、お前のほうがシティボーイなんだし、出会いはありそうだけどな」
『残念ながら、それがないんだなぁ』
「どこも同じかぁ...」
『どこも大して変わらんのかー』
「まじで人魔問わないから彼女欲しいなぁ」
『それな』
ピンポーン
「すまん誰か来た」
『おけ、行ってら』
「...」
『そっか、あいつ一人暮らしだから自分のこと全部やらなきゃならんのか』
「...」
『快適そうだが、俺には厳しそうだ...』
「...」
『やっぱ一人でいると、寂しいんだろうな』
「...」
『今度飯でもおごってやろ』
「...」
『てか、遅くないか?』
「...」
『戻ってくる気配がなければ、ここらで俺も切り上げr』
「すまん、遅くなった」
『おー、お帰りお帰り、ずいぶんと長かったみたいだな』
「それが今更引っ越しのご挨拶だって」
『この時期にか?』
「そう、何でも大切な人を迎えに来たとか」
『そいつ、男か女か、人間か魔物娘か?』
「あーデュラハン、デュラハン」
『納得だわ...確かにそんな習わしあったな』
「な、解釈一致だろ?」
『同じアパートの住人だったりして』
「それは大いにある」
『うらやましいな、そいつ』
「ホントそれ、デュラハンかー」
『何か思い当たる節でも?』
「いや、俺が小さいころにお世話になったデュラハンのお姉さんがいてな」
『なんだのろけか、詳しく聞かせろ』
「いや、これと言って面白いわけじゃないけど、俺の家って基本両親いないじゃん?」
『それは知らんww』
「あぁそうか、まぁいつも親がいない時はそのお姉さんにお世話になってたわけよ」
『なんだそれは、うらやまけしからん』
「それで、俺が中学に入るとお姉さんが同時に引っ越しちゃって、さようならって話」
『少年の淡い恋のお話か』
「どうだかな、あの時はまだ俺もガキだったから恋だの愛だのはまだ自覚してなかったかもしれないな」
『あー、あるあるだな』
「それをふと思い出したってわけ、今ではもう顔も名前も覚えてないし」
『子供のころの記憶ってそういうもんだよ』
「でもなー、何か約束した気がしなくもなくもなくもない」
『お前それは、さっきデュラハンに会ったことでの思い出補正だろww』
「そーかもしんないww」
『まぁでも、いつまで受け身になってちゃいけないってことだな』
「そういうことだな」
『残りまだ一か月もあるし俺たちも頑張ってクリスマスの予定立てような!』
「おう!」
『だめだったら、二人で傷心会ってことで』
「万一、どっちかだけ成功しちゃったら?」
『そん時は恨みっこなしで、一人ホームア〇ーンでww』
「まぁ無理だろうけどなww」
『いや、分からんぞww』
「あっ!お隣さんの荷物載せたトラック来たみたいだ」
『なんだお前、手伝う約束してたのか』
「まぁね、ついでに知り合いでも紹介してもらおうって魂胆よww」
『おぬしも悪よのぉww、早速先を越されたかww』
「冗談だよ、冗談、ってことでお互い頑張ろうぜ!」
『あいよ、また連絡する』
「...」
『行ったか...あいつ超絶鈍感持ちだったか』
『お隣さんはそのお姉さんで間違いないだろう』
『これで俺はクリぼっち確定か...』
『幸せにな...親友...』
ピンポーン
『誰か来たな、って今家に俺だけなんだった!』
『はいはーい、今出まーす!』
20/11/25 16:28更新 / 甘党大工さん