キキーモラのアイデンティティとは
突然だけど、聞いて欲しい。相談があるんだ。
僕には恋人がいる。とってもとっても可愛くて、気立てが良くて、 美人で、可愛くて、家事が出来て、可愛くて、そして…
メイドな彼女がいる。
彼女の名前は森紀沙(もり きさ)。キキーモラという魔物娘だ。
キキーモラは男の人の身の回りの世話をする種族で…いわゆる、メイドさんだ。だから、同棲して身の回りの世話をしてもらっている。頭が上がらないね。
そんな彼女の様子が最近おかしい。
僕の家は学校まで30分掛かる距離にある。
今までは僕を起こすのは授業に間に合うように、家を出る1時間半前にしっかり起こしてくれていた。
だけども、最近は授業開始45分前といった、授業に間に合うか間に合わないかという絶妙なタイミングで起こすんだよ…だから僕は起きてから、死ぬ気で急いで準備を終わらせて家を出ることになる。
自分で起きればいいことは分かってるんだけどさ、今まで彼女に頼りっぱなしの生活をしていたせいで彼女の声じゃないと起きられないんだ…
他にも、今までは僕のテスト日程・レポート期限も把握して、提出が間に合わないなんてことがない様にしてくれていた。
だけど、最近は何も言ってくれない。それどころか、夜はずっと一緒に居て映画を見たり、ゲームをしたり、エッチをしたり。僕はレポートのことをすっかり忘れていて、提出期限を過ぎてしまったものもある。
こんな風に、僕が困るようにしているんじゃないかなあ…って思うんだよね。
僕が彼女を怒らせてしまったのかと思ったのだけども、一緒に居るときはいつも通り幸せそうに過ごしている。普段の生活で、僕を困らせることは一切しない。料理も掃除も洗濯も、キレイに完璧にしてくれる。
学校に関することだけ、嫌がらせしているとしか思えないんだよねえ。
いや、全部自分で管理しろよって言われそうなんだけどさ…自分でもそう思ってるよ。
でも、今までやってくれてたことを急にやってくれなくなったから、どうしちゃったのかなって。
どうすればいいと思う?
…え、彼女に直接聞いてみろって?
…確かに。理由が分からないとどうしようもないよね。分かった、ありがとう。聞いてみるよ。
■
…ねえ、紀沙。最近さ、朝起こしてくれなくなったけど何か理由でもあるのかな。
何か悪いことでもしたかな。
「いえ、ご主人様は何も悪くないですよ!」
本当に?
「本当の本当です!」
じゃあ、理由は…?
「えっと…ですね…これを見てください!」
これは…魔物娘図鑑?何で今更?
「これは最新版の魔物娘図鑑です!このページを見てください!」
えっと…ショゴス?
「そうです!私達キキーモラと同じ奉仕種族で!不定形の体から主人が望む道具を即座に作り出し!ありとあらゆる状況に対応できる、いわば家事のスペシャリスト!!完全にキキーモラの上位互換じゃないですか!!!私達がメイドであるというアイデンティティを完全に喰ってるんですよ!!!!」
いや、そんなことはないと思うんだけど…
「あるんです!!だから、私はどうすればキキーモラとショゴスが差別化できるか考えてみたんですよ!!!私達キキーモラのご先祖は、怠け者を食べていたと言います。それならご主人様を怠け者にして、食べちゃえばいいんですよ!!!」
…それで、あんなことをしたと。
「そうです!!ご主人様は学生、怠け者の学生といえば学校に行かずに怠惰な日々を過ごすばかりというじゃないですか!!!なら、朝起きてもギリギリ学校に間に合わない時間に起こし、課題の提出もせず単位を落とすような怠け者にすればいいんですよ!!!」
…紀沙、そんなことをしなくても紀沙は紀沙じゃないか。
「それは、そうですけど」
僕は紀沙がキキーモラだから好きになったんじゃない。紀沙が紀沙だから好きになったんだ。
「えへへ」
それに、キキーモラがショゴスに劣っているなんて思わないけどね。
だって、ショゴスは主人が望むものを自分の体から作り出すんだろう?
この家にある家具や道具は、殆どが僕と紀沙の二人で悩んで、買ったものじゃないか。
ショゴスだったら、悩んで、気に入ったものを選ぶなんてことは出来ないだろう?
たしかに便利かもしれないけど、愛着を持つのは難しいんじゃないかなあ。
二人で家を、作っていけないじゃないか。
「ご主人様…」
確かに、僕は紀沙に頼りっきりだけど、二人でやれることはやっていきたいと思っているんだよ。紀沙が甘えさせてくれるから、甘えちゃうけど…
「もっと、もーっと甘えていいんですよ?」
これ以上甘えたら本当に怠け者になっちゃうよ。
とにかく、僕が言いたいのはキキーモラにはキキーモラの良さがあるってこと。ショゴスは人を溺れさせるのを目的としてるみたいだけど、紀沙は違うでしょ?
「…はい」
だからさ、これからも僕を溺れさせるんじゃなくて、支えてよ。キキーモラらしく、紀沙らしくさ。
…二人なら、なんだって頑張れるんだから。
僕には恋人がいる。とってもとっても可愛くて、気立てが良くて、 美人で、可愛くて、家事が出来て、可愛くて、そして…
メイドな彼女がいる。
彼女の名前は森紀沙(もり きさ)。キキーモラという魔物娘だ。
キキーモラは男の人の身の回りの世話をする種族で…いわゆる、メイドさんだ。だから、同棲して身の回りの世話をしてもらっている。頭が上がらないね。
そんな彼女の様子が最近おかしい。
僕の家は学校まで30分掛かる距離にある。
今までは僕を起こすのは授業に間に合うように、家を出る1時間半前にしっかり起こしてくれていた。
だけども、最近は授業開始45分前といった、授業に間に合うか間に合わないかという絶妙なタイミングで起こすんだよ…だから僕は起きてから、死ぬ気で急いで準備を終わらせて家を出ることになる。
自分で起きればいいことは分かってるんだけどさ、今まで彼女に頼りっぱなしの生活をしていたせいで彼女の声じゃないと起きられないんだ…
他にも、今までは僕のテスト日程・レポート期限も把握して、提出が間に合わないなんてことがない様にしてくれていた。
だけど、最近は何も言ってくれない。それどころか、夜はずっと一緒に居て映画を見たり、ゲームをしたり、エッチをしたり。僕はレポートのことをすっかり忘れていて、提出期限を過ぎてしまったものもある。
こんな風に、僕が困るようにしているんじゃないかなあ…って思うんだよね。
僕が彼女を怒らせてしまったのかと思ったのだけども、一緒に居るときはいつも通り幸せそうに過ごしている。普段の生活で、僕を困らせることは一切しない。料理も掃除も洗濯も、キレイに完璧にしてくれる。
学校に関することだけ、嫌がらせしているとしか思えないんだよねえ。
いや、全部自分で管理しろよって言われそうなんだけどさ…自分でもそう思ってるよ。
でも、今までやってくれてたことを急にやってくれなくなったから、どうしちゃったのかなって。
どうすればいいと思う?
…え、彼女に直接聞いてみろって?
…確かに。理由が分からないとどうしようもないよね。分かった、ありがとう。聞いてみるよ。
■
…ねえ、紀沙。最近さ、朝起こしてくれなくなったけど何か理由でもあるのかな。
何か悪いことでもしたかな。
「いえ、ご主人様は何も悪くないですよ!」
本当に?
「本当の本当です!」
じゃあ、理由は…?
「えっと…ですね…これを見てください!」
これは…魔物娘図鑑?何で今更?
「これは最新版の魔物娘図鑑です!このページを見てください!」
えっと…ショゴス?
「そうです!私達キキーモラと同じ奉仕種族で!不定形の体から主人が望む道具を即座に作り出し!ありとあらゆる状況に対応できる、いわば家事のスペシャリスト!!完全にキキーモラの上位互換じゃないですか!!!私達がメイドであるというアイデンティティを完全に喰ってるんですよ!!!!」
いや、そんなことはないと思うんだけど…
「あるんです!!だから、私はどうすればキキーモラとショゴスが差別化できるか考えてみたんですよ!!!私達キキーモラのご先祖は、怠け者を食べていたと言います。それならご主人様を怠け者にして、食べちゃえばいいんですよ!!!」
…それで、あんなことをしたと。
「そうです!!ご主人様は学生、怠け者の学生といえば学校に行かずに怠惰な日々を過ごすばかりというじゃないですか!!!なら、朝起きてもギリギリ学校に間に合わない時間に起こし、課題の提出もせず単位を落とすような怠け者にすればいいんですよ!!!」
…紀沙、そんなことをしなくても紀沙は紀沙じゃないか。
「それは、そうですけど」
僕は紀沙がキキーモラだから好きになったんじゃない。紀沙が紀沙だから好きになったんだ。
「えへへ」
それに、キキーモラがショゴスに劣っているなんて思わないけどね。
だって、ショゴスは主人が望むものを自分の体から作り出すんだろう?
この家にある家具や道具は、殆どが僕と紀沙の二人で悩んで、買ったものじゃないか。
ショゴスだったら、悩んで、気に入ったものを選ぶなんてことは出来ないだろう?
たしかに便利かもしれないけど、愛着を持つのは難しいんじゃないかなあ。
二人で家を、作っていけないじゃないか。
「ご主人様…」
確かに、僕は紀沙に頼りっきりだけど、二人でやれることはやっていきたいと思っているんだよ。紀沙が甘えさせてくれるから、甘えちゃうけど…
「もっと、もーっと甘えていいんですよ?」
これ以上甘えたら本当に怠け者になっちゃうよ。
とにかく、僕が言いたいのはキキーモラにはキキーモラの良さがあるってこと。ショゴスは人を溺れさせるのを目的としてるみたいだけど、紀沙は違うでしょ?
「…はい」
だからさ、これからも僕を溺れさせるんじゃなくて、支えてよ。キキーモラらしく、紀沙らしくさ。
…二人なら、なんだって頑張れるんだから。
17/07/17 00:42更新 / じゃっく