37ページ:正体不明・バイコーン
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前回のあらすじ…トラップの殺意が酷い、以上!
DL
第二階層には天井以外に目立った罠は無く、それなりにさっくり進めた。 それでだ…… 「…勝った!第三階完!」 第三階層は頭が混乱するほどの複雑な迷路になっていた。 普段の我輩なら詰んでいただろうが、地図があるいじょう迷えと言われる方が難しいである… とは言っても、全体像を把握する為に多少歩き回ったがな… んで、全体が分かったら入り口に戻り、別の紙に書き写して階段への道を書き込めば…よし、出来た。 「ふっ!楽勝だな!」 …自分で言っておいてなんだが、地図が無ければ確実にここでリタイアしてるであるな… 「…何も無いな…」 第四階層…やたらと広い部屋だけの階層であるな。 以前はモンスターハウスだったのだろうか…今は魔物の気配がまったくしない。 一応細かな罠があるようだが、注意していればかかる事も無いだろう。 …アイテムも何も無いであるし…と言うか、ここに来るまでに何も手に入ってないである… もっと、攻略が楽になるような便利なアイテムが手に入ったりとか、そういうのがないと探索をする楽しみがなくなってしまうである… 「…はぁ…さっさと攻略して帰ろう…」 久々の迷宮攻略がこんなのだとやってられん…琴音達にも結果報告せねばならんし、危険な目に遭っただけなんて言ったら琴音の機嫌が酷いことになりそうだ… まぁ、そうなったらその辺の一般人に押し付けて発散してもらうしかないな…(八つ当たり的な意味で。) 「…ありえん…手加減したとはいえ、もう第五階層か…」 旧モンスターハウスは地雷原に変えておいたが、思った以上にあっさりと突破されてしまった。 これほどの実力者なら……っ!いかんいかん…まだ結論を出すには早い… 全てを決めるのはわしの下まで来た時…わしを倒した時じゃ。 「このまま待つのも良いが…部屋の前に極悪な罠を仕掛けてやるかのう…ククク…」 さぁ…わしの仕掛けた罠をどう攻略するか……じっくり見させてもらおうかの… 第五階層…第一・第三の罠が合わさったかのような感じだな。 具体的には、ちょっと複雑な迷路の中を魔力的な何かで動く岩が転がっている感じである。 問題はそこじゃなく…… 「入り口付近も岩の通り道とは…ゆっくり地図も見れん…」 安全な場所がまったくないという事だ。 行き止まりは作られていないようなので詰む心配はないが、岩から逃げながら先への道を探すなんて面倒極まりないである。 本当にこの迷宮の罠作った奴出て来い、お尻叩きの刑にかけてくれる。 ………何じゃ?今の寒気は… まあ良い、最後の罠も仕掛けたし、じっくり待つかの。 「いつでも来るがいい!わしは逃げも隠れもせんぞ!」 愛用の鎌を持ち、部屋の入り口を見据える。 あの男がわしを打ち倒せるほどの男なら…待ち続けた長き時も無駄にはならん。 わしの努力が無駄ではなかったことを…証明して見せt 「邪魔するであるぞー」 「邪魔するんじゃったら帰って。」 「あいよー………って、それで帰ったら苦労した意味がないである…」 せっかくカリスマ全開じゃったのに…… 「よく来たな…わしの仕掛けた罠を抜け、わしの下まで無事にたどり着いたこと…賞賛に値するぞ。」 「そうか…あの罠を仕掛けたのは貴殿か…」 さっさとお仕置きして帰りたいが、相手にも遺言くらいはあるだろうし聞いてやるか。 …別に怒ってないであるぞ?我輩を怒らせたらたいしたもんである。 「しかし…最後の極悪トラップまであっさりと攻略してしまうとはな…」 「極悪?鳴子がか?」 「鳴子は数多くの勇者や冒険者を葬った伝説の罠…その罠ですら、お主には通用しなかったようじゃがな。」 …この幼女…鳴子の仕掛け方を間違えているな… まあいい、遺言はこれくらい言えれば十分であろう。 「じゃが!わしとてバフォメットと呼ばれ畏怖される魔物!このまま負けるのは同属の名が傷つくと言うものだ!」 「…トイレは済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする準備はいいか?」 「…えっ?」 「今日の我輩は心底機嫌が悪い…泣いて謝っても許さん…」 「いや…ちょっ…まって…」 「我輩のお仕置きは百八式まであるぞ!」 「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 「うぐぅ……ひぐっ…」 …やり過ぎたな… 何と言うか…お仕置きしているうちに楽しくなってしまってな…つい、やり過ぎてしまった… 「あー…その…すまん。」 「……もう怒ってない?」 「怒ってない、怒ってないから泣き止んでくれないか?」 「……抱っこしてくれたら考える…」 「むぅ…これでいいであるか?」 そう言った彼女を抱き上げると、少し痛いくらいにしがみ付いてきた。 その仕草がとても可愛らしく、気が付いたら彼女の頭を撫でていた。 「…お主…思ってた以上に暖かいのじゃな…」 「軽く運動したであるからな。」 「…もう少しだけ…このままで………」 「……眠ってしまったか…」 勢いだけで何とか出来たが、真っ向勝負だったら確実に負けていたであろうな… 他の人間よりは腕に自信があるとはいえ、所詮は人間なのだ…埋め様のない差というのは認めたくなくてもあるものだ。 …我輩が何でも出来る凄い人間でなければ、彼女達は離れて行ってしまうだろう… 我輩は嫌だ…もう…1人にはなりたくない… …我が事ながら情けないであるな…世界征服を目指す者がこんなに臆病者だなんて知られたら笑われてしまうである。 気を取り直してお宝でも探すかな…その前にこれどうしよう…… …とりあえず、ミラル殿の所へ持って行くか。 この前壊してしまった所を再度壊し、大幅な時間短縮が出来た。 これなら今日の内に帰れそうだな。 …ん?向こうから何かが来るな… 「あら?貴方はこの前の…」 「えっ?……ユニコーン殿か?」 「元…ですけどね。」 これが…ユニコーン殿…? 以前会った時は我輩が浄化されてしまうような清らかさを感じたが、今はまったく感じない。 毛並みは良いままだが、体毛が黒く染まっている… また、額にあった角が無くなり、別の所に2本の角が生えているのが分かる……元からあった角が縦に割れたような…そんな感じにも見える。 ユニコーンから変異した魔物…おそらくバイコーンという魔物だろう 「…夫の浮気であるか?」 「最初はそれが原因でしたが、今では浮気してくれた夫に感謝しないといけませんね…」 「普通は逆なのでは?」 「夫のおかげで今の私がいるのです、日に日に変わり行く夫の精の味…今この時も、夫の味を確かめたくて堪らないのです。」 「そうか…すまんな、時間を取らせてしまって。」 「いえいえ…貴方も、夫と似たところがあります、御武運をお祈りしてますわ。」 そう言って去って行く元ユニコーン殿… 本当に魔物は面白いである、興味が尽きん。 ………そうだ、帰ったらこの魔物の研究をするであるか。 その前にいろいろやる必要があるのだがな… その後は、特に何事もなく無事に町までたどり着いた。 件の魔物は、とりあえずミラル殿の所に預けている。 今日はいつも以上に疲れたな…他にもやるべきことはあるが、その辺は明日まとめてやるとしよう。 何て事を、桜花式締め付けマッサージを堪能しながら考えていた。 「輝様、今日の探検はどうでしたか?」 「うーむ…罠だらけで苦労はしたが、中々良さそうな物があったである。」 「その割には袋の中空っぽなんやな?」 「明日回収に行くである…弥生も来てもらっていいであるか?」 「うちはええよ?鑑定も任しとき。」 「私もついて行っていいかしら?」 「構わんぞ、人手…もとい、魔物手は多い方がいいである。」 「…皆様が羨ましいです…私には手伝える事がないですもの…」 そう言って暗い表情を浮かべる琴音。 琴音にも手伝える事はあるのだがな…本人は気づいてないかも知れんが。 「明日も早いし、そろそろ寝るであるかな…」 「そうですか…では、おやすみなさいませ。」 「おっと、琴音は残ってもらうぞ。」 「え?」 「それじゃあわっち等は部屋に戻るかの、おやすみじゃ。」 「ふふっ、良い夢が見れるといいわね。」 「ほなまた明日なー。」 …うむ、行ったな。 琴音の方は、なぜ自分だけ残されたのかが分からない様であるな… 「さて、一緒に寝るであるか。」 「…いいのですか?」 「琴音と一緒だと安心して寝れるである。」 「輝様…」 「…琴音が微笑んでくれているからこそ、我輩は頑張れるである…これからもよろしくな。」 「…はい!」 愛らしい笑みを浮かべ、我輩に強く抱きついてくる。 あぁ…琴音の笑顔を見ると一日の疲れが吹き飛ぶであるなぁ… さて…さっさと日誌を書いて、琴音を撫でながら寝るとしようか。 〜今日の観察記録〜 種族:バフォメット 魔界に住む魔獣の一種で、少女の様な幼い外見と、それに見合わぬほどの強大な力を持つ魔物である。 彼女達の率いるサバトは、幼い少女の背徳と魅力を知り、魔物らしく快楽に忠実であれと言う教義を持つようだ。 その教義を広めて信者を増やすべく、永遠の若さや高い魔力を得られると誘惑し、人間の女性に魔力を分け与えて魔女と言う魔物へと変えてしまう。 サバトには魔女以外の別種族の魔物も入信出来、その場合は入信した魔物はバフォメットによって幼い姿へと変えられ、それ以上老いることは無くなるのだとか… 彼女達の多くは魔界に生息しているのだが、稀に魔界以外の場所でも目撃されているが…間違っても倒そう等とは考えない方が良いだろう… 余程の腕がない限り返り討ちにされ、幼い少女の背徳と魅力を身体にたっぷりと教え込まれることになるからである… 種族:バイコーン ユニコーンの亜種で、黒く艶やかな毛並みと2本の角が特徴的な魔物である。 非童貞の男性やユニコーンの夫が異種族の魔物と交わった後に彼女達と交わると、体内の魔力が変異してこの姿になると言われている。 純潔の象徴とされているユニコーンに対して、彼女達バイコーンは不純の象徴と称されているようであるな。 |