諸君等は、修羅場というものを体験した事はあるだろうか？
四方を魔物(一部人間)で囲まれ、逃げも隠れも出来ない状況…

今まさに、我輩は引く事の出来ない地獄へと足を踏み入れてしまったところだ。



〜数分前〜



「輝様…読書をしながら歩くのは危険ですよ。」
「問題ないである。」

既に何度か聞いた言葉を聞き流しながら歩き続ける。

「輝ちゃん、学ぶ事も大切だけど詰め込みすぎは良くないわよ？」
「…思ったのじゃが、そんな事をしているから道に迷うのではないか？」
「むぅ…あと少しだけ…」
「輝様！」
「ぬぉっ！？わ、分かったである…」

突然、我輩の読んでいた本を取り上げて怒り始める琴音
琴音の怒った顔…久々に見たである…

「まったく…輝様はもう少し人の話を素直に聞くようにした方がいいですよ？こうやって注意をしたりお説教をするのも輝様の為を思ってやってる事で…」
「今度から気をつけるであるから…」
「だめです！輝様はいつもそう言いますが、ちゃんと正した事がありますか？」
「無いであるな！」
「自信満々に言わないで下さい！一昨日だって私のお菓子をつまみ食いして、もうやらないって言ったはずなのに昨日もつまみ食いをしたじゃないですか！」
「甘いな琴音、今日もこっそり食べ………しまったっ…」
「ま、まさか…あぁっ！私のお菓子が……あ〜き〜ら〜さ〜ま〜！？」

おぉう…琴音の怒りが大変な事に…
例えるなら、殺意の波動に目覚めて瞬極殺を乱発し始めるくらいに大変である…

「今日と言う今日は許しませんよ！そこに正座をしてください！」

もうだめか…何時間説教されるのであろうか…

…などと思っていたその直後。

「見つけたぞ貴様あああぁぁぁぁぁ！！」

突然、空気が震えるほどの怒号と共に、我輩に向かって何かが突っ込んできた。
避ける間も無く突き飛ばされ、ベアハッグをかけられる。

「中々情熱的な抱擁ね…あっ、技って言った方がいいかしら？」
「あ、アレクシア様！？こんな所でお会いするとは…」
「休暇は楽しめているかしら？」
「えぇ、こいつを探すために世界中を飛び回っていましたよ。」

こんな会話が行われている間にも、我輩の骨が悲鳴をあげるほどに強く締め上げられている。
胸の感触が…いや…そんな事を言ってる場合じゃないであるな…
と言うか…息が苦しいである…

「輝が何かしたのか？」
「あぁ、私の大事な大事な宝を盗んだ挙句、私の胸を好き勝手に弄り回して逃げたんだ！」

そう言えばそんな事もあったであるな…逃げた後に罪悪感をちょっと感じて、売らずに持ってしていたがな。
あぁ…琴音から黒い物が…

…ん？海の方からどこかで見たような奴が…

「あっ！お前は…！」
「あの時の子じゃない、元気にしてた？」
「今は元気であるが、もう少ししたら満身創痍になる予定である。」
「いい気味だ！人を勝手に魔物に差し出した罰が当たったんだよ！」
「まぁまぁ、幸せだからいいじゃないのさ。」
「それは…そうだけどよ…」

…何をしに来たのだこの二人は…と言うより、何故大陸にいるのであるか…
…半殺しで済むだろうか…

「あっ！輝さ〜ん！一緒に愛について語り合いませんか〜？」

また海の方から何かが…あぁ、あの時のシー・ビショップであるか…

残念、我輩の旅はここで終わってしまうようだ。



「なるほど…災難でしたね…」
「あぁ…でも…す、少しだけ気持ちよかったと言うか…な、なんでもない…」

あれから、琴音は偶然集まった者達一人一人に話を聞いていき、時には共感し、時には慰めたりしていた。
もちろん、我輩は逃げられないように桜花に巻きつかれ、身動き一つ出来ない状態にさせられている。

「輝ちゃん…今まで随分と面白い旅をしていたのね…」
「胸を見るとつい手が出てしまうのである…おっと、人妻だとか彼氏持ちには手は出してないであるぞ？」
「それは当たり前でしょう……ハーレムでも作る気なのかしら…」
「ん？何か言ったであるか？」
「…何でもないわ。」

しばらく話していると、琴音がこちらへ戻ってきた。
…いよいよ我輩の処刑方法が明らかになるのか…

「輝様…貴方の悪行は全て聞きました。」
「ほんの一部であるがな…」
「なんですって！？」
「いや、何でもないである。」
「…まあいいです…とりあえずは皆さんにしっかりと謝ってください。」

桜花が拘束を解き、自由に動けるようになった。
逃げる事は…出来そうにないであるなぁ…

「…スキュラ殿とその夫殿、すまなかったである…」
「…まぁ、悪い事ばかりじゃなかったからな…」
「私は別にいいけどね、優しくて素敵な人と結ばれたんだからね。」
「気は強いけど、甘えん坊で可愛い嫁が来てくれたしな…今回は大目に見るぞ…今回だけだからな！」

言い終わると、互いに見つめ合い、そのまま深く口付けをしだした。
お熱い事で…これからの事を考えたら背筋の辺りが寒くなってくるであるが…

「シー・ビショップ殿、悪い事をしてすまなかった…」
「私は別に気にしていませんよ、嫌な事はされてませんから。」
「許してもらえるのか？」
「えぇ、なんならもう一回触りますか？そのついでに私のお家で…きゃっ♪」

次はドラゴン殿か…こっちは手強そうだ…

「ドラゴン殿…その…すまなかった。」
「…それだけで許すと思っているのか？」
「もちろん、持って行った宝は全部返すである。」
「えっ！？まだ持ってたのか！？」
「うむ…なんと言うか…罪悪感を感じてな…」
「…こ、今回だけは…許してやる…」

それだけを言うと、差し出した宝を受け取ってそっぽを向いてしまった。
機嫌が悪いのだろうか…やたらと尻尾を振り回しているであるし…

「ちゃんと謝ってきたであるぞ…」
「そうですか、それじゃあ…」

逃げようとする我輩の足を払い、転倒した我輩の上に馬乗りになってくる琴音。
そのまま手際良く我輩の着物を脱がせ、我輩の一物を握り締めてきた。

「ちょっ！？いきなり何をするであるか！？」
「何ってお仕置きですよ。」
「いやいや！ちゃんと謝ったであるから！」
「でも、私はまだ許すとは一言も言っていません。」
「ほ、他のお仕置き方法もあるのでは…」
「こっちの方が、私の能力を高める事も出来ますし、次にやったらどうなるかを輝様にもしっかりと教え込めますから。」

黒い笑みを浮かべ、我輩の一物を扱きあげる琴音。
琴音から感じる絶対的な恐怖感とこれからされる事への期待感が合わさり、我輩の一物は直ぐに臨戦状態になってしまった。

「輝様…覚悟してくださいね？」

一物を秘所へとあてがい、少しずつ腰を落していく…

「私の尾が七本に増えるまで、放してあげませんから♪」





「あぁ…夜風が沁みるである…」

あの後、本当に尻尾が増えるまで搾り取られ、解放された今でもまだ腰が震えているである…
琴音が終わった後は、桜花とアレクシアが襲ってきて、追加で2回絞りとられたである…

琴音に吸われた回数？10から先は覚えてないである…

「まぁ…これだけで済んでよかったと言うべきか…全部知られたらあの程度ではすまないであろうなぁ…」
「ほう？どんな事をしてきたのだ？」
「ぬっ…ドラゴン殿か…」
「隣…いいか？」
「かまわんであるぞ。」

我輩の隣に腰掛けるドラゴン殿。
そのまま、特に何をするわけでもなく海を眺めていたが、不意にドラゴン殿が口を開いた。

「…まさか、私の宝を売らずに持っていたなんて思ってもいなかったぞ。」
「いくら我輩でも、あれだけの事をすれば罪悪感の一つも感じるである。」
「ふふっ、私の胸を好き勝手に弄んだ挙句、唇まで奪ったんだからな。」
「あの頃の我輩はまだ青かった…出来る事ならあの頃の我輩に説教をしたいである。」

そう言って笑っていると、いきなりドラゴン殿が我輩を抱き締めた。

「なっ、何をして…」
「…本当ならこのまま私の宝物として持ち帰りたいが…出来そうにないからな…」
「………」
「しばらくこのままでいさせてくれ…お前の形を…暖かさを…覚えたいんだ。」
「……うむ。」

ドラゴン殿の頭をそっと撫でてやると、我輩に顔を近づけ唇を重ねてきた。
琴音達に見られたら大変な事になりそうであるが…今だけはドラゴン殿のものでいさせてもらおう。



「…貴方はこれでよかったの？」
「輝様は昔から人ならざる者に良く好かれていましたから。」
「わっちも輝の事を好いた身として、あのドラゴンの気持ちがよく分かる。」
「…皆苦労する事になりそうね。」
「覚悟の上で輝様に恋をしたのですよ。」
「何があろうとも、輝の傍から離れる気はない。」
「本当に退屈しないわ…これまでも…これからも…」

その後、二人が覗かれているのに気づき、顔を真っ赤にしながら言い訳をするのだが、それはまた別のお話…



〜今日の観察記録〜

種族：シー・ビショップ
彼女達は人間を襲う事はしないが、助けようとして性行為を行うことがある。
その時は、彼女達の儀式なしでは助からない状況になっており、手遅れになりそうな男性を自らの体を使って救うのである。
助けられた男性は彼女達の献身さに心打たれ、共に暮らす事を選ぶために男性を襲わずとも夫を得られるのだとか…

種族：スキュラ
普段はとても強気な性格だが、実は臆病な一面も持っているようである。
性行為の際に深く密着するのも、男性と離れるのを恐れ、より近くにいて欲しいと思うがためなのである。
全身に巻きつかれるというのはとても心地良いものである…別の種族だが、体感した我輩が言うのだから間違いはない。

種族：ドラゴン
地上の王者とも言われる魔物で、非常に強大な力を持っているである。
完全に魔王の魔力に侵されておらず、一時的ではあるが現魔王以前の時代の竜の姿になる事ができる。
また、彼女達は宝石や珍しい魔法道具を好む様で、彼女達の巣の中はそんな宝物で埋め尽くされているである。