17ページ:オーク・ミノタウロス・サラマンダー
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「そう言えば…輝様は何故旅をされているのですか?」
DL
次の町へと向かう道中、ふと琴音がそんな事を尋ねてきた。 「うむ、わっちもそれは気になるな。」 「そうね…夫のしている事を知るのも妻の役目だものね。」 「誰が夫であるか!…まあいい…我輩の崇高なる野望を教えておこう。」 三人の視線が我輩へと向けられる。 ククク…我輩の野望を知った3人がどんな顔をするか…楽しみである。 「我輩の野望…それは…この世界の全てを手中に収める事で…」 「無理ね。」 「無理ですね。」 「無理じゃな。」 …………えっ? 「いや…あの…」 「私が認めたと言っても、勇者の足元にも及ばないと思うわよ?」 「いくら強くても、人間には限界がありますもの。」 「ただの人間には埋めようも無い差があるからな、素直に諦めい。」 ………我輩…旅を続けて行ける自信が無くなってしまったである… 「…こんな時…どんな顔をすればいいのか分からないである…」 「ひれ伏せ!そして命乞いをしながらあたいの足を舐めな!」 「俺の胸に飛び込んでいっしょに寝ろ!」 「闘志を燃やせ!私と勝負してその気持ちをぶつけろ!」 草むらから3匹の魔物が飛び出し、一斉に喋ってくる。 「待て待て、我輩はいっぺんに話しかけられても理解出来るような耳はしてないである。」 「「「私達と戦え!話はそれからだ!」」」 …どうやらただの脳筋だったようだ… まあいい、憂さ晴らしついでに蹴散らすであるか。 「で?何で我輩に襲い掛かったのであるか?」 「…輝ちゃんって意外と強かったのね…」 「(ピッー)年間貞操を守り続けてきたであるからな、その辺のゴロツキや魔物には負ける気は無い。」 数分後、そこには頭にこぶを作って正座させられる3匹の魔物がいた。 まったく…少し攻撃しただけで気絶するとは…鍛え方が足りんである。 決まり手?倍速 2回攻撃 妖刀かまいたち(その辺で拾った物)である。 「と言うよりも、後ろの3人がいるのによく襲う気になったであるな…」 「えっ…?ひっ!?リ、リリム!?」 「な、何でこんなところにリリムが!?」 「いちゃ悪いのかしら?それ以前に本当に気付いてなかったの?」 「すみません…戦う事で頭が一杯で…」 本当に気付いてなかったのか…気付いてたら襲って来なかったのであろうな。 まぁ、少し体が暖まる程度に運動が出来たから良しとするか。 「しかし…そっちの魔物は見た事がないのだが…」 「サラマンダー殿から見て右にいるのが稲荷、左にいるのが龍である。」 「稲荷と龍……こっちは妖狐に似てるし…そっちはラミア?」 「らみあとは蛇の事か?わっちは蛇の様に見えるがどらごんとやらと似た種族らしいぞ?」 「ドラゴンっ!?あわわわ……」 オーク殿が酷く怯え、今にも泣き出しそうな表情で桜花を見つめている。 …そりゃな…いくら害が無いと言っても、ドラゴンと同じ種族だなんて言われたら普通はこうなるであろうな… 「安心せい、わっちは無益な争いは好まん…余程の事が無い限りは手出しはせんから安心しろ。」 「は…はひ…」 「オークは性格が極端だと聞いたが…噂通りであるな。」 「輝様…これはちょっと違う気がしますよ…」 「む…そうか…」 「輝ちゃんのそういうところが可愛いのよね〜♪」 そう言って我輩を抱き締めるアレクシア。 その直後にずるいだの離れろだの聞こえてくるが、毎日こんなやり取りを見てきているので正直に言って喜べん… オーク殿とサラマンダー殿は羨ましそうに見てきているであるが…ミノタウロス殿はまったく動じてないであるな… ………んっ?これってもしかして…いや、そんなはずは… 「ちょ、ちょっと離れるである!」 「きゃっ!?もう…痛くしないで…」 「う…羨ましい…はぁはぁ…」 「ん?ミノタウロスがどうかしたのか?」 「………こいつ…立ったまま寝てる…」 「…なんて器用な…」 食う事と寝る事とヤる事意外に興味を示さない魔物と言う事は知っていたが…流石にこれは… 悔しいが我輩の負けである…立ったまま寝るなんて流石の我輩でも出来ん… 「あ、輝様落ち込まないで下さい…練習すれば出来るようになりますから…ね?」 「そもそも、それが出来るようになって得られる物が無い気がするのじゃが。」 「我輩は世界を手に入れるためにありとあらゆる技術を身につけなければいけないのである!くだらないと言われようとも我輩はやり遂げて見せるである!」 「フフッ、貴方といると退屈しないわ…でも、世界は諦めなさい。」 「な、何故であるかぁ…」 「貴方には荷が重過ぎる…ただそれだけよ。」 「世界などどうでも良いではないか、わっち等が傍にいるだけでは不満なのか?」 「それはっ…むむむ…」 そんな事を言われたら…どう答えて言いのか分からんではないか… 「私達だけじゃ物足りないのですか…?」 「輝ちゃんに…私の全てを捧げても…?」 「さぁ!早く答えい!」 「いや…ちょっ…怖いって…」 3人が我輩に一歩近づき、我輩が一歩下がる。 その時、後ろから何かに抱きつかれた。 「んー…もう食えねえよ…ぐぅ…」 「ちょっ!?放せである!」 「ふひひ…よいではないかよいではないか…ムニャムニャ…」 「良くないである!それにどこを触って…ひぅっ!」 押しても引いてもびくともしない…流石ミノタウロス力強い。 って感心している場合ではないな…どうしようこれ… ん?両腕が動かなく… 「ミノタウロスさん起きてください!この人はあたいのご主人様にするんですから!」 「何を言ってる!私の師匠兼旦那様にするんだ!」 「うるせぇなぁ…こいつは俺の抱き枕にするんだから他の奴を探せよ…」 「待て待て待て!3人とも助けて…」 「…輝ちゃんなんてもう知らないっ!うわぁぁぁぁん!」 「はぁ…呆れてものも言えんわ…」 「輝様…どうぞお幸せにっ!」 そう言って、我輩をおいて去っていく3人… 少し怒らせてしまったか…後で謝っておこう… まあ、我輩もそろそろ行くか。 「俺がもらうって言ってるだろうが!」 「あたいが貰うって言ってるでしょ!」 「私が………ん?……こ、これはっ!?」 「あぁ?何だよ?」 「ちょっとここを見てくれ…」 「いったい何……えっ?」 [等身大輝人形(メイド・イン・リャナンシー)] [[[…………」」」 「やっぱり抱き枕だな。」 「ダメです!あたいの部屋に持っていってあんなことやこんなことを…」 「絶対に渡さんぞ!部屋に飾っておはようのキスをしたり毎日の励みに…」 「畜生!てめえら覚悟できてんだろうな!?」 「や、やってやりますよ!絶対に負けませんからね!」 「二人まとめて掛かって来い!私の剣の錆にしてくれる!」 「事なきを得たであるな。」 「どうしてあんな物を持っていたのですか?それに、あんなに上手に動かしてましたし。」 「昔、人形作りが大好きなリャナンシーに出会ってな…あの人形で悪戯をされたのだ。」 「ふむ…それで?」 「悔しかったから、我輩も負けじと人形操作術をマスターして仕返しをしてやったのであるよ。」 「…輝ちゃんって無駄に高いスキル持ってるわよね…」 「……まぁ、その時に貰った人形なのだが…彼女は今頃どうしているだろうか…」 このまま進んでいればいつかは出会うだろうがな…元気にしているだろうか? さらに磨きをかけた人形操作を披露したいし…また遊びに行くと約束もしたであるからな。 「まぁそれはおいといて…どうなのじゃ?」 「む?何がであるか?」 「さっきの質問ですよ…私達だけでは不満なのかどうか…」 「今度はしっかり答えなさい?じゃないと犯しちゃうわよ?」 「よーし、次の町まで走るであるか。」 「あっ!待ちなさい!」 我輩が走り出すと、3人も我輩を追う様に走り始める。 次の町まで徒歩で5時間くらいだったか…まぁ大丈夫だろう。 質問の答え?面と向かって言える筈がないであろう… 観察はし辛いが退屈はしない…なんてな。 〜今日の観察記録〜 種族:オーク 獣人型の魔物で、強くはないが複数で行動する魔物である 特徴的な性格の持ち主で、弱い者は徹底的に犯し、強い者には媚びる様な態度を取るらしいである。 彼女達を見つけたら迷わず逃げることをお勧めする、勝っても負けても彼女達と交わる事になってしまうからな。 種族:ミノタウロス 獣人型の魔物で、非常に強い力を持ち、尚且つ凶暴な性格の持ち主である…頭はそんなに良くはないが… 彼女達は面倒くさがりやで、食事と睡眠と性行為以外の事に興味を持つことは稀な事である。 出会った時も眠っている事が多いので、刺激をしなければ逃げることも出来るだろうが…彼女達の前で赤色の物を使ったり持ってたりするのだけはやってはいけない。 種族:サラマンダー リザードマンの亜種で、炎の灯った尾が特徴的な魔物である。 リザードマンと同じく人間の男性の戦士を見かけると戦いを挑んでくるが、彼女達は勝ち負けよりも熱い戦いが出来るか否かの方が重要なようだ… 尻尾の炎は彼女達の闘争心と興奮度合いを表しており、激しい戦いになるほど炎も大きな物となるのである。 |