4ページ:インプ・アルプ・レッサーサキュバス
「む……」

次の町へ向け歩を進めていると、周囲の空気に違和感を感じた。
別に、匂いがおかしいと言う訳ではないのであるが…魔物達から発せられる気に似た何かを感じるである…

「…特に害は無さそうであるが…大事を取って飲んでおくであるか…」

ポケットから、掌に収まる程度の瓶を取り出す。
蓋を取ると、独特の嫌な臭いが漂ってきた…
我輩は、目を瞑って瓶の中身を一気に飲み干す。
何とも形容しがたい苦味と、鼻に突き刺さる様な臭いが我輩の胃を蝕んでいく…

「うえぇ…これじゃあ、効果の割に合わないであるな…調合方法と材料を変えないといけないである…」

自分で飲んだ感想は…最悪の一言に尽きるである…
効果はしっかりとしてるので、味さえ変えられれば市販出来るようになると思うのである。

効果?魔力とやらの侵食を和らげる物である。

「さて……先へ進むであるか…む?」

歩き出そうとした時、遠くの方に馬車の様な物が見えたが何やら様子がおかしいである。

「あれは…魔物に襲われてるである!」

馬車へ向かって走り出すが、ある考えが頭に浮かび足を止める。

(見つからない様に近づけば、魔物化の過程の観察が出来るかもしれないである…)

しかし…その為にあの馬車の乗員達を犠牲にしていいものであろうか…
…とりあえず、近づくだけ近づいてみるであるか…



「これは……」

我輩が馬車の近くへ来たときには、既に手におえる状況ではなかった。
種族や大小様々な魔物達が、男女問わず襲い掛かり交わっていた。

…うむ、これで観察しても文句を言われそうに無いであるな。

「…この辺でいいであるかな…」

手頃な木の上に登り、魔物達の観察を始める。
馬車の周辺には、魔物が2匹と少年が1人と女性が1人いるであるな。
他の乗員はさらわれてしまった様であるな…仕方が無い、残ってる魔物の観察をするである。

「ほらほらぁ♪我慢せずに出しちゃえ〜♪」
「も、もうだめぇぇぇぇ!!」
「あはは♪一杯出しちゃったね…もっと頂戴?」
「ひっ!?い、嫌…もうやめてよ!」

小さな少年が、小さな魔物に跨られ、精を搾り取られているのである…
我輩と同じくらいの背丈であるか…ここで襲われなければ、彼にも別の未来もあったのであろうか…

視線を別の方へ移すと、今度は女性が魔物に襲われているのが見えた。

「やらぁ…そんなとこ…」
「うふふ…我慢しなくていいのよ?気持ちよくなることは悪いことじゃないの。」
「…ほんとう?」
「そうよ…だからほら…もっと自分に素直になって?」
「…私を…もっとエッチな子にしてください…」
「よく出来ました、それじゃあ…ご褒美をあげるわ…♪」
「ありがとうございます…あっ♪」

なるほど…基礎から教え込みつつ、心から魔物へと変えていくのであるか…
想像以上の収穫である…相応に犠牲も多かったであるが…

心を痛めつつ観察を続けていると、先程の女性に変化が訪れた。

「な…なにこれぇ…お尻がむずむずして…んんっ♪」

魔物に襲われていた女性の腰の辺りから、小さな羽根と尻尾が生えてきた。
それと同時に、体に薄い体毛が生え、頭からは小さいが角まで生えてきている。
彼女を魔物にした魔物と比べると、各部の大きさが小さく、いかにも生まれたてと言うような感じがする。

一方、少年の方にも変化が訪れていた。

「やだ…怖い…僕が僕じゃなくなるみたい…そんなのやだよ…」
「大丈夫だよ…君が魔物になっても、私がずっと一緒にいてあげるから♪」
「怖い…放さないで…ぎゅってしてて………あぁっ!」

インキュバス化…だったであるか…我輩は、聞いた事はあっても見たことは無いのである。
腰の辺りから翼と尻尾が生え、顔は女性の様な美しさに男の様な凛々しさを持ったものに変わっていく。

…ん?…何かがおかしいである…

「えっ!?こ、この子…」
「あら…アルプになっちゃったわね。」

アルプ…聞いたことが無いのである…
新種か何かであろうか…男でも女性型の魔物になるのであるか…

「僕…どうなっちゃったの?……あっ!僕のおちんちんが無い!」

自分の体の変化に、彼が一番驚いているようだ…
…まんざらでもない様に見えるのは気のせいであろうか…

「僕が女の子に…女の子になれるなんて…♪」
「君が女の子になっちゃったらエッチが出来なくなっちゃうよ………でも…これはこれでいいかも…♪」
「あっ♪びくっってなっちゃった…癖になりそう…♪」

ふむ…よくわからないが、突然変異かなにかで別の魔物になってしまったようである…
我輩もそこまで詳しくは無いので、もう少し観察をしないと謎は解けそうにないのである…

「男の人を食べちゃうってどんな感じなんだろう…早く試してみたい…♪」
「私…お腹が空いて来ちゃいました…」
「でも…空いてる男の人がいなくなっちゃったよ?」
「三人とも心配しなくていいわよ?まだあそこにいるじゃない♪」

そう言いながら、我輩の方を見て意地悪そうな笑みを浮かべている。
…もうばれてたであるか…特に支障はないであるが…

「あの子は好きにしていいわよ、私はダーリンが待ってるから帰るわ。」

魔物の体が光に包まれ、この場から姿を消した。
転移の魔法であろうか…はじめて見るである…

って、感心してる場合ではなかったであるな…

「あの子可愛いね…食べちゃいたい…♪」
「何言ってるの?実際に食べちゃうのよ♪」
「僕…男の人を食べちゃおうとしてるんだ…えへへ…♪」

ふむ…魔物化した直後は非常に空腹なのであるか…なるほどなるほど。
食生活はどう変わるのであろうか…っと、言わなくてもアレであるか…

あれこれ考えている間に、木の周りを魔物に囲まれてしまったのである。

「さあ!観念して降りてきなさい!」
「今降りてきたら優しくしてあげますよ?」
「素敵な話だが断るのである、我輩はまだ腰を落ち着ける気はないのである。」
「木の上から下ろしちゃえばいいんだよね?登って引き摺り下ろしちゃえばいいんだよ。」

少年だった魔物が、木に足をかけてよじ登ろうとしているが、足が滑ってしまって登れない様である。
…見てる分には面白いであるな…

「うぅ…上手に登れないよぉ…」
「うーん…どうしようか…」
「あ、インプちゃんをあの枝の所まで投げるって言うのはどうかな?」
「うっ…こ、怖いけどがんばる!」

発想的にはなかなか面白いであるが…失敗の可能性を考えると、適切とは言いがたい判断であるな…

…相手の持ち物を知らない時は特に…な…

「「いくよ……せーのっ!!」」

勢い良く上へ投げられたインプは、我輩の乗っている枝に勢い良く頭をぶつけて落ちて行った。
流石の我輩も、これは予想出来なかったである…

「失敗しちゃった…もう一回やろう!」
「い、嫌だよ!また失敗しそうだもん!」
「じゃあどうするの?このままじゃあの人捕まえられないよ?」

頭を抱えて悩む三人。
…こういう時に限って、単純な事に気がつかないであるな…

「…貴殿等に付いてる翼は飾りであるか?」
「翼…あ、そう言えば飛べるんだった。」

一瞬冗談のように聞こえたが、本当に気づいてなかったみたいなのである…
どうやら、目先の獲物を捕らえることばかりを考えていたせいで、基本的な事を忘れてしまっていたようだ…

「まぁ、観察も終わったし我輩はもう行くであるがな。」
「えっ!?僕達のご飯は!?」
「その辺の木の実でも食べるか、次の町まで飛んでいけばいいである。」

そう言ってこの場を立ち去ろうとしたが…

「か弱い女の子をこんな所に放置したまま行っちゃうんだ…」
「うっ…」
「私達が魔物にされちゃうところを、助けようともせずに眺めてましたよね?」
「うぐぐ…」
「…本当に…僕達を置いて行っちゃうの…?」
「……あぁもう!わかったである!次の町まで一緒に行くである!」

結局我輩が折れ、次の町まで一緒に行くことになってしまった…
こんなことになるなら、助けた方が良かったであるな…

「はぁ…今日はついてないである…」
「どうしたの暗い顔して?」
「悩み事があるんですか?」
「僕達が相談に乗ろうか?」
「…悩みの種に相談しても解決はしないのである…」

早く次の町に行かないと、我輩の貞操が危ないのである…
三人の魔物に絡まれつつ、我輩は次の町に向かって歩き始めた。



あ…サキュバスの観察をするのを忘れてたである…我輩としたことがうっかりしてたのである…



〜今日の観察記録〜

種族:インプ
能力自体は低く、扱いも容易なので使い魔として契約することも簡単らしいのである。
ただ…あまり甘やかし過ぎると、次第に言う事を聞かなくなるそうである。
ちなみに、我輩は彼女の勢いに負けて耳を甘噛みされてしまったのである…

種族:アルプ
インキュバスの突然変異によって生まれる魔物ということ意外は、我輩も良く分からないのである。
身体的な構造と精を主食とすること以外は、変化する前のものと変わりは内容であるが…
後個人的な意見だが、幼い少年がアルプ化するのは反則である…無駄に可愛いである…

種族:レッサーサキュバス
人間の女性が、サキュバス等によって魔力を注ぎ込まれるとこうなるである。
変化直後は空腹らしく、変化前に意中の男性がいなかった場合は近くにいると問答無用で襲われるである。
魔力が十分に貯まるとサキュバスに変化するらしいが、そうなったらそうなってで交わりが更に激しくなりそうである。
11/09/30 22:54 up
魔物化の表現がまるで分からないです…

やっぱり、次回更新日は未定のままです、気長にお待ちください。
白い黒猫
DL