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前回、床の崩壊に巻き込まれて散り散りになってしまった6人… 今回は、最悪な組み合わせになった3組の行動を別々に見てみましょう。 「はぁ…まったくついてないわね…よりによってあんたと一緒になるなんて…」 「…」 「…何でもいいから何か一言くらい喋りなさいよ…」 「…」 「…」 「…」 「…お願いします、一言でいいので喋ってください。」 「…喋るのは苦手…」 「…そう…」 (…これがバフォメット…始めてみたぞ…) 「ん?ワシの顔をじっと見てどうしたのじゃ?」 「あ、すまない…バフォメットなんて始めて見たものだからつい…」 「ふむ、それなら仕方がないの…ところで…」 「ん?なんだ?」 「お主の名はなんと言うのかの?」 「サラ、サラ=ワルキュリアだ。」 「サラか、ワシはアイリス=フランベルジュじゃ、短い間じゃがよろしくの。」 「先に言っておくが、お前を完全に信用したわけではないからな。」 「むぅ…そうか…」 「…皆無事だろうか…」 「大丈夫だと思うよ、皆強いし。」 「そうじゃない、些細な事でもめたりしないかという意味でだ。」 「それも大丈夫だと思う、もめる余裕があるような状況ではないと思うから。」 「うーむ…心配な部分が多すぎる…」 「…苦労してるんだね。」 「アルトは気楽そうでいいな、普段から心配するようなことが無さそうだしな。」 「とんでもない、変なのに絡まれて死に掛けたり、寝起きで搾り取られたり、他にも…」 「もういい…それ以上言うな…」 「ん?なんだこのボタンは。」 通路を進んでいると、赤いボタンと青いボタンを見つけた。 黄色と黒の線に囲まれている以外は、変わっている所は無いが… 「なあ…このボタン押したいのだが…」 「やめておいたほうがいいと思うがの…押すとしても青いボタンにしたほうがいいと思うぞ。」 「分かった。」 そう言って、私は青いボタンを押そうとしたが… 「ハッ…ハッ…ハックシュン!!!」 突然、鼻がムズムズして大きなクシャミをしてしまった。 その直後、ゴンッという鈍い音と激しい痛みが頭から伝わってきた。 頭を擦りながらボタンのあった壁を見ると、赤いボタンが引っ込んでいた。 「今、鈍い音がしたが大丈夫かの?」 「アイリス、謝らなければならないことが一つある。」 「…なんじゃ?」 「すまん、クシャミをした時に赤いボタンに頭をぶつけてしまった。」 「…大体予測はしてたが当たってしまったか…」 直後、遠くの方で重い物が動くような音が聞こえてきた。 「気をつけろ…何か来るぞ…」 「分かっておる、可能な限り対処してみるかの。」 何時、どこから、何が来るか分からない… 私とアイリスは、何が起こっても対処出来るように身構えた。 「ん?…今、何か音がしなかったか?」 「僕も聞こえたよ、結構近くだったね。」 一回目の音から間を置かず、何かが重い物が落ちた様な大きな音が響き渡った。 二度目の音がしてから少し経った後、何かが転がる様な音が聞こえてきた。 その音は、時間が経つにつれ次第に大きく近くなって来る… 「…アルト…」 「…ロイド…」 互いに見つめ合い、僕達は恐る恐る後ろを振り返ってみる。 僕達の目に映った物は、凄まじい勢いで転がってくる大きな岩だった。 「走れぇぇぇ!!!」 「言われなくても分かってるよ!!!」 その瞬間、僕達と岩の命賭けの鬼ごっこが始まった… 「…何も起きないな。」 「なんじゃ…つまらん。」 何も起こらなかったので、今度は青いボタンを押した。 すると、近くの壁が動いて隠されていた通路が姿を現した。 「やはりこっちのボタンが正解か。」 「とりあえず、隠し通路の方から調べるかの。」 こっちの通路には、いったい何があるのだろうか? 隠されている位なのだから、相当重要な物があるのには違いないだろうがそれと同時に大きな危険を伴う可能性も高いだろう… …その方がスリルがあっていいな…考えただけでも期待で胸が一杯になってくる…♪ そんな私の姿を幼女が白い目で見てきている… だ が そ れ が 堪 ら な い 「さあ、行こうか…フフフ♪」 「うむ…(こやつ…なんでこの状況で嬉しそうな笑みを…?)」 「うー…疲れたぁ…休みたい…」 「…」 まったく!何時まで続くのよこの殺風景な通路! なんかジメジメしてるし変な臭いするし…帰ったら絶対にお風呂に入るわ! 「はぁ…なんでいつもいつもこんな目に遭うの…?」 「…運命?…」 「何で聖職者がこんな呪われているかのような過酷な運命を背負わなきゃいけないのよ!」 「…」 「…あんたには関係無いわよね…怒鳴ったりしてごめんなさい。」 「…気にして無い…」 何で私ってこんなに短気なのかしら… …って、この子魔物だし別に謝る必要なかったんじゃ… でも、司祭様が言っていたような凶暴性も無いし…見ている分には無口だけど普通の女の子と変わりはないけど… 「…下がって…」 「へ?」 突然、彼女の表情が少しだけ険しくなり私に下がるように指示してきた。 彼女の視線の先を見ると、石で出来た無数の魔動器が此方に向かって来ていた。 「あれくらいなら私でも倒せるわよ。」 「…貴方の方が強いから…いざと言う時までは温存しておいて…」 「…分かった、でも無茶は駄目よ?」 「…うん…」 そう言って下がった時、足元からカチッという音が聞こえた。 「…」 「…ごめん、何か踏んだみたい。」 私が謝罪をした次の瞬間、重い物を引きずる様な大きな音がして、目の前にいた魔動器が次々と視界から消えていった! 「何!?何が起こったの!?」 「…そのスイッチが押されたことで…目の前の床が開いた…」 「なんだ…でもこれじゃあ進めないね。」 「…スイッチから降りてみて…」 そう言われて足をどけると、また大きな音がして床が閉じていった。 結構手の込んだ仕掛けね…知らなかったら無駄に消耗することになっていたかも知れないわね。 「ふぅ…想定外のこととはいえ戦わずに澄んだね。」 「…ありがとう…」 「え?今何か言った?」 「…何でもない…」 「そう…」 「ぜぇ…ぜぇ…」 「はぁ…はぁ…」 息を切らし、その場に座り込む俺達二人… 傍らには、壁に激突して粉々になった岩の破片が飛び散っている… もしもここが行き止まりだったとしたら…考えただけでも寒気がしてくる… 「この窪みが無かったら俺達は…」 「それ以上言わないで…考えたくも無い…」 「そうか…とにかく先に進まないとな…」 「逃げてる途中に通路みたいなの無かったっけ?」 「飛び込もうとして失敗したところか…行って見るか?」 「行くしかないでしょ、あそこ以外に進めそうなところ無かったし。」 「そうだな…よし、行くか。」 そう言って勢いよく立ち上がる俺。 アルトも立ち上がって窪みから出ようとした時、どこか遠くの方から何かが複数落ちてくるような音が聞こえてきた。 「…ロイド。」 「なんだ?」 「今、何か音聞こえなかった?」 「聞こえない振りをしていたかったのに気づかせないでくれよ…」 「…ごめん。」 周りを警戒しつつ、逃げてきた道を戻って行く。 さっきまで騒がしかったのが嘘のように静まり返り、聞こえてくるのは俺達二人分の足音だけだった。 「逃げていて分からなかったが…かなり足場が悪かったんだな…」 「デコボコしている上に苔も生えてるみたいだね…これで転ばなかったことは奇跡なんじゃないかな?」 「まぁ、勇者が足を滑らせて岩に轢き殺されたなんてことになったら死んでも死にきれんぞ…恥ずかしすぎて…」 「そうならなかったからいいじゃない…ん?」 「どうかしたか?」 アルトが目を凝らして闇の中を見つめている… アルトの見ている方向をよく見てみると、先程までは何も無かった通路に数体の魔道器が転がっていた。 しばらく様子を見ていると、鈍い音を響かせながら魔道器が起動し、こちらに向かって進んできた! 「アルト、構えろ。」 「言われなくても…ドサクサ紛れに攻撃しないでよ?」 「そっちこそ、俺を巻き込む様なまねはするなよ?」 そう言いながら、アルトは武器を構えた。 敵同士の時は厄介な存在だが、味方になるとそれなりに頼りになる。 やはり、宿敵だからこそ息の合った連携を取れるのか? …今はそんなことはどうでもいいか。 「俺が奴等に切り込む!援護は任せたぞ!」 「その代わりピンチな時はしっかり守ってね?」 互いの役割を確認しあうと同時に、俺等は魔道器に向かって走り出した。 「おかしいな?何も起こらないぞ?」 「………」 湿っぽい空気が充満した、暗くやや狭い隠し通路をひたすら進んでいる。 さっきまで通っていた通路と違うところは、怪しげなボタンが大量にあることぐらいじゃろうか… そしてワシの隣に居る人間…名はサラと言ったか…こやつがやたらとボタンを押しまくっている。 こっちに来る前の不適な笑みといい…ボタンを押すときのにやけた表情といい…こやつ、精神が崩壊してしまったのじゃろうか…? 「…サラ?」 「ん?なんだ?」 「そ、その…さっきからおかしな事ばかりしておるが大丈夫かの?」 「問題ない、私は至って正気だ。」 「むぅ…ならいいが…」 「さて…次はどれを押そうか…どんなことが起きるのだろうか…クフフフフフフフフ…♪」 「…サラよ、一旦落ち着くのじゃ。」 「大丈夫だ!何も問題など無い!手当たり次第押しまくるぞ!」 「サ、サラ?」 「ヒャッハー!ボタン祭りだぁぁ!押して押して押しまくれぇぇ!!」 正気を失い、一心不乱にボタンを押し続けるサラ。 呼び掛けに応答はするものの、ボタンを押す手を止める様子はまったく無い。 「サラ、聞こえていたら歯を食いしばっておくのじゃぞ?」 そう言い、ボタンを押し続けるサラに向かって勢いよく肉球パンチを叩き込んだ! 形容し難い叫び声を発しながらサラの体は宙を舞い、一回転した後鈍い音を立てて地面の上に転がった。 …少々気合を入れすぎてしまったかの… 「ぐふっ…私はいったい何を…」 軽く咳き込みながら、ゆっくりと起き上がるサラ。 よかった…ギリギリ生きていたようじゃ… 「まったく…手間を掛けさせるでない。」 「…すまない…」 正気に戻ったサラは、小さな声で謝罪をし、申し訳無さそうな表情を浮かべ下を向いてしまった… ワシは小さく溜め息を吐き、落ち込んでいるサラをそっと抱き寄せた。 「な!?い、いきなり何を…」 「まあ無理もないがの…こんな暗い場所で仲間とはぐれる…何とも心細いことじゃ…」 「ア、アイリス?」 「じゃが何も心配することはない、このワシが付いておる。」 「………」 「道に迷ったならワシが導いてやる、危険な目に遭ったらワシが守ってやる。」 「アイリス…私は…」 「じゃから何も恐れることなどない、お主にはワシがついておる。」 そう言って、サラの頭を優しく撫でてやる。 小刻みに震えていたサラは、少しずつ落ち着きを取り戻していった。 しばらくして、サラに声を掛けてみたが返事が返ってこない。 どうしたのかとサラの顔を覗き込んでみると、安らぎに満ちた穏やかな表情で静かに寝入っていた。 今起こすのは可哀そうじゃろう…今しばらくはこのままでいるかの… と言いたい所じゃが、残念ながらワシらにはゆっくりしている時間など無いので起きてもらわねばならない。 「なに居眠りをしておるのじゃ!寝てる暇なんて無いのじゃぞ!」 「…むぅ…まだ眠い…後五分…」 「寝ボケとらんでシャキッとせんか!」 目を擦りつつ、可愛らしい欠伸をするサラ。 …本当に大丈夫なのじゃろうかこやつは… 「ほれ、早く先に進むぞ。」 「分かった…だが、その前にひとつ訊いてもいいか?」 「ん?なんじゃ?」 「アイリスは…何故アイリスは敵であるはずの私にそこまでしてくれるんだ?」 「何じゃそんなことか…そんなこと決まっておろう?」 何故助けるようなことをするのか…あまりにもシンプル過ぎる質問をされ、自然ににやけてしまう。 だがそれは一瞬だけ、いつものの表情に戻ったワシは、質問に答えるべく後ろを振り返った。 「ワシは魔界の覇王バフォメット、多くの者を惹きつけ導くカリスマじゃ、たとえ敵であろうとも迷い苦しんでいる者には手を差し伸べる、それだけの事に理由なぞいらんじゃろう?」 …決まった、完璧に決まった。 流石ワシ!まったく噛まずにビシッとかっこよく言えたのじゃ! よし、帰ったらアルトに自慢しよう、そしていっぱい撫でてもらおう。 帰れるかも分からない状況の中、ワシの頭の中は帰った後のことで一杯になっていた。 「…参ったな…同姓なのに…敵なのに…惚れてしまいそうだ…」 意気揚々と突き進んでいく魔物の少女について行きながら、彼女は静かにそう呟いた。 彼女が堕ちる日はそう遠くないかもしれない…
11/02/17 19:56 up
…誰も覚えてない…投稿するならイマノウチ… ごめんなさい、絶賛スランプ中につき、更新速度がとんでもないことになってしまっていました。 なんとか乗り越えて続きを書いていきたいですが…なかなか指が進まない状況が続いてます… 安心と信頼のグダりっぷりは健在ですのでご安心を… 後編更新日時は未定です…気長にお忘れください… 白い黒猫
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