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「…」 「…すまんなのじゃ…」 何とか、市場が開かれる前に到着することが出来た僕らだった…が。 いい場所を取ろうとして走り出した瞬間、アイリスが転び、釣られて僕も転んでしまった。 そのおかげで、港側の隅の方しか取れなかった… この場所…高波が来ると水飛沫が… 「…こうなることは予測できたけどね…」 「ま、まあまあ…頭が重いから転びやすいんですよきっと…」 「ドジっ子なのもいいと思うぞ?天然なだけなのかもしれないが…」 「…可愛いから許してあげて…ダメ?」 「お前ら…ワシをフォローすると見せかけて、さりげなく馬鹿にしておらんか?」 「気のせいだよ。」 「気のせいだな。」 「気のせいですね。」 「…気のせい…」 唸りながらジト目で此方を見つめているアイリス。 こんな表情されたらもっと苛めたくなるじゃないか… だけど、後が怖いのでこれ以上は刺激しないようにしよう。 「今日はどれくらい客が来るかな…どんな物が売れるかな…♪」 「…凄く楽しそうじゃな…」 「…本職だから…」 「アルトの楽しそうな表情…ハァハァ…」 「お姉様、落ち着いてください。」 「よし…販売開始だ!」 「「「おー!」」」 〜30分後〜 「誰も来ないね。」 「誰も来ないの。」 30分間…30分間誰一人として前を通らないなんて…やはり場所取りが悪かったのか…? 何時もだったら結構お客さん来るのに…うむぅ… 「アルト、向こうに人だかりが出来ているぞ。」 「何かあったの?」 「小さな魔物と人間がもめてるみたいですが、詳しいことは分かりませんでした。」 「ふむ…ここはワシらが責任を持って守っておく!早く行くのじゃ!」 「…大丈夫…何があっても守り通すから…」 「その言葉に言い知れぬ不安感を覚えたのだけど…まあ行ってくるよ。」 アイリスとクリスに店番をしてもらい、竜姉妹と共に人混みへと向かう。 …こんな感じの出来事…前にもあったような… 人混みを掻き分けて進んでいく…竜姉妹は投げてるけど… やっとの思いで中心部にたどり着くと、一匹の妖精と数人の人間がもめていた。 「もー、なんで謝ってるのに許してくれないのー。」 「許すわけが無いだろう!人のマントに[恋人募集中]などと書きやがって!絶対に許さん!」 「まあ、募集中なのは事実だがな…」 「何か言ったか?」 「何も言ってません!隊長殿!」 …なんか絡むの嫌だな…でも、助けないわけにも行かないし… そんな事を考えていると、人混みから誰かが出てきた。 「フェア!大丈夫かい!?」 「あ!マスター!」 「勝手にどこかに行っちゃダメだって言っただろう?」 「うー…ごめんなさい…」 「おい!貴様がその魔物の飼い主か!」 「怪我はしてないかい?」 「うん!だいじょーぶだよ!」 「無視するな貴様等ぁ!!!」 …何このコント… とりあえず仲裁しておこう…あの筋肉達磨が爆発しかねないし… 「その辺にしておきなよ、小さい子を虐めるなんて格好悪いよ?」 「許さん…ボコボコのバキバキにしてくれる!」 「マスター…ドキドキするのが止まらないの…」 「お、落ち着きなさいって…そういうことはまだフェアには早いよ。」 「ウガァ!!!無視すんなぁぁぁ!!!」 「落ち着け脳筋。」 「ゴフッ!?」 思わず、暴走気味だった筋肉達磨を槍の平たい部分で殴ってしまった… 全力で無視されたのもあって、少し力を入れてしまったが別に問題は無かった。 「何しやがる!このチビ!」 「話しかけたのに無視するからだよ。」 「五月蝿い!ガキはお家でママのおっぱいでも吸ってろ!」 「僕からしてみれば、君達の方がよっぽど子供っぽいけどね。」 「んだとこのガキャァァァ!!」 般若のような顔をして突進してくる筋肉達磨を、飛び越えるようにして回避する。 すると、野次馬を弾き飛ばしながら、思いっきり壁にぶつかって行った… 「…もうやだこの隊長…」 「…苦労してるんですね…」 「久しぶりの買い物は楽しいな♪」 「いろいろな物があって凄く楽しいね♪」 「うぅ…生活費がどんどん減っていく…」 楽しそうにはしゃぐ二人とは対照的に、ガックリとうなだれる俺… 毎日、戦いばかりで大変だろうと思って、羽を伸ばさせてあげようとここにつれて来たのだが… まさか、この二人がここまで買い込むとは思わなかった… 「偶にはこういうのもいいな。」 「毎日頑張ってるからね。」 「まあ、それは否定しないがちょっと買いすぎだ二人とも。」 「えー…偶にしかこういう機会が無いから多めに見てよー…」 「買い過ぎたのは認める、だがいくらまでか言わないロイドも悪い。」 「とにかく!今日はもうこれ以上買うのは禁止だ!」 「「えー…」」 二人から不満そうな声があがるが、本当に生活資金が大変な事になってきているので、心を鬼にして二人を抑える。 これ以上資金が減ったら、自給自足の生活をしなければならなくなる…なんとしてでもそれだけは避けねば… 「ん?向こうが騒がしいな…」 「何かあったのかな?」 「行ってみるか。」 「…というわけで、魔物は以前の様に人間を取って食う(食物的に)事は無いんですよ。」 「ふむ…その話が本当だとしても、結局は食われるのだろう?(性的に)」 「それは…まあそうですね。」 「否定しないのか。」 「嘘をつく必要も無いので。」 脳筋が壁にぶつかって目を回している間に、脳筋の部下の人と魔物について話し合ってみた。 最近の騎士団の中にも、話をちゃんと聞いてくれる人がいるのか…意外な事実だ… 「ところで…」 「ん?なんだ?」 そう言いながら、後ろの方でのびている脳筋の方を見る。 「…起こさなくていいんですか?」 「起こしたらまた暴れるだろうから…」 「…本当に苦労しているんですね…」 「転職したい…」 「すればいいじゃないですか、紹介しますよ?親魔物領限定ですが。」 「献身的な魔物娘のいる職場無いかい?」 「うーん…探してみますね。」 …この人に信仰心なんて無かったようだ… 「職が無くて騎士に志願しただけだからな。」 「っ!?心を読まれた!?」 「適当に言ってみただけだ。」 「…なんだ…心を読まれたのかと思って焦ったよ…」 人間の直感って凄い…そして怖い… 「…けた。」 「ん?」 後ろから聞き取り辛い声が聞こえてきた。 何事かと思って振り向いた所で、僕は固まった。 そこには、最近遭遇していなかった危険人物の… 「見つけたぞアルトォォ!!!」 「ひぃ!?」 「今度アルトに不意打ちをするような真似をして見ろ、全裸にひん剥いて海に沈めるぞ。」 「…すみませんでした…」 「声が小さいですね…もう一度お仕置きしたほうがいいでしょうか?」 「申し訳ありませんでしたァ!!」 突然、不意打ちをしてきた勇者一行 それを、竜姉妹が光の如く速さで迎撃し、お仕置きという名の拷問にかけていた… お仕置きの内容は…あまりにも恐ろしくて言えない…あんな太い物が根元まで入るなんて… 「…しばらく見ないうちにドラゴンを手懐けるほど強くなってるとは…しかも2匹も…」 「だから襲い掛かるのはやめようと言ったんだ…こうなることは容易に想像できたはずだ…」 「うぅ…まだお尻が痛い…」 「…勇者ですら歯が立たないとは…あんたに喧嘩売らなくて正解だったな…」 「僕でさえ勝てなかったもの…あの二人は本当に恐ろしいよ…」 「「何か言ったか?(言いましたか?)」」 「「ナ、ナンデモナイデス。」」 突然低い声で訊かれ、変に裏返った声になってしまった… それくらいあの二人は怖い…僕は大丈夫なんて気楽に思えない… 「まあいい、今日はこの位にしておいてやるからさっさと失せろ。」 「くっ…次に会う時まで首を洗って待っていろ!」 「今日の所は引こう…だが、次はこうは行かんぞ…」 「覚えてなさい…次に遭った時は倍にして返すから!」 「ふふふ…威勢だけは本物ですね…」 捨て台詞を吐きながら逃げていく勇者一行… やられキャラがすっかり定着して…これ以上は可愛そうか… 「あれ?さっきまでそこにいた妖精と男の人は?」 「ん?彼らなら他の子を探しに行くって言って人混みの中に入っていったぞ。」 「そうなのか…まあいいけど。」 「とりあえず戻りましょうか、この人はどうします?」 「私のことか。」 「とりあえず、一緒に連れて行こうか。」 「いいですとも。」 …こういう時はどうすればよいのか… 「おい!聞いてるのか!?」 さっきからずっと、この客が欲しいものが売ってないと言って文句を言ってきているのだが… 「何で[シー・ビショップ写真集(ポロリしかないよ)]が売ってないんだ!」 何で露天に売ってないような物を露天で探そうとするのか…解せぬ… 「…いったいなんだい?この騒ぎは。」 「あ、アルト、じつh」「[シー・ビショップ写真集(ポロリしかないよ)]が売ってないんだよ!どうしてくれる!」 「…という訳なのじゃ。」 「なるほど、大体分かった。」 そう言って、ポケットから一枚の紙を取り出す。 「今日の所はこれでお引取り願えますでしょうか?」 「こんなもの…これは!?」 怒りに満ちていた表情が、一瞬の内に驚きの表情に変わった。 ちなみに、僕が渡した紙には美しいシー・ビショップの姿が描かれていた。 「ま、まあ今日の所はこのくらいで勘弁してやる、だが次に来る時はちゃんと用意しておけよ!」 「…なんとなくですが…その"次"が来ない様な気がします…」 「あ?どういうことだ?」 僕は、黙って男の後ろを指差した。 男は、後ろを振り向いた瞬間固まった。 男の後ろには、驚くほど美しい女性が立っていた。 しかしその女性の表情は、微笑んではいるが目がまったく笑っていなかった。 「う…プラムちゃん…何時からそこに…」 「ふふふ…[シー・ビショップ写真集(ポロリしかないよ)]が無いって言って文句を言い始める辺りかな?」 「あの女…」 「…シー・ビショップだね。」 「なんと…高レベルの擬態を見破るとは…どんどん凄くなっていくのうアルトは。」 「でたらめに言ったけど当たってたのか…」 「…」 「目移りしちゃうのは仕方ないよね…男の子だもん。」 「そ、そうだ!男は心も息子も大きくだ!」 「だったら…私以外の事を考えれないようにしてあげる…」 「え?ドウイウコトデスカ…?」 「レッド君…君が悪いんだよ?私という恋人がいながら他の娘を見ちゃうから…」 「お…落ち着けって…俺が悪かったから…な?」 「皆さん…ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした…お詫びといってはなんですが、これをどうぞ。」 そう言うと、僕の方に液体の入った小瓶を渡してきた。 「これは?」 「その液体を飲むと、一日だけ水の中で息が出来る様になります。」 「なるほど…こんな素敵な物を貰ってもいいのですか?」 「はい、迷惑を掛けてしまったお詫びですから…さて、レッド君?」 「は、はい!なんでしょうか!」 「帰ったらお仕置きしないとね…レッド君が誰のものか…しっかり教え込んであげる…」 「ひぃ!?そ、それだけhごふっ!?」 女性が、男の腹に綺麗な一撃をお見舞いして、男と一緒に海の中へと消えて行った… …今の出来事は忘れようか… 「あ、いたいた!こっちにいたよー!」 どこからか、可愛らしい声が聞こえてくる。 声のした方を見ると、小さな妖精とスーツ姿の男性がそこにいた。 「先ほどは、フェアを助けて頂きありがとうございます。」 「ん?…あぁ、さっきの脳筋に絡まれてた人か、怪我はないですか?」 「えぇ、貴方があの怖い人を倒してくれたおかげで無事でしたよ。」 「それはよかった。」 「何かお礼をと思い、こんな物を用意させていただきました。」 「随分大きな袋ですが…これは?」 「ケセランパサランの粉ですよ。」 「なっ!?そ、そんな高価な物をこんなに沢山…流石にこんなに貰うわけには…」 「実は…これでも少ない方なんですよ…」 「本当に貰ってもいいんですか?」 「えぇ、遠慮せずに貰ってください。」 「ありがとうございます、それにしても…こんなにあるだけでも凄いのにまだ余っているとは…」 「ははは…いろいろ事情がありまして…」 思わぬ収穫に、ついつい笑みがこぼれる。 それこそ、小袋一杯分が金貨単位で取引されるほどの代物だ… それを余ってるからと言ってこんなに沢山タダで分けてくれるとは…いったい何者なんだこの人は… 「それでは私はこれで、他にも行くところがあるので。」 「ありがとうございました、大切につかわさせて頂きますね。」 そう言い残すと、彼は妖精と共にフェアリーサークルの中へと消えていった。 「うー…疲れたのじゃ…」 「あまり売れなかったけど…まったく売れなかったわけじゃないからいいかな。」 「…ごめんなさい…お兄様…」 「謝る必要はないよ。」 「…謝ったのが誤りだった…くくく…」 「お姉様、寒さに弱いのに寒くしてどうするんですか。」 「う、うるさい!少し場を和ませようとしてだな…!」 「…流石のワシもあんな寒いギャグは思いつかなんだ…」 「リーラ…気を落とさないでね…」 「うぅ…何故こんな目に遭わなければならんのだ…」 「まあまあ…とりあえず、あそこのレストランでご飯でも食べていこうよ。」 「時間的に今日は止まりかの?」 「…真っ暗…」 「宿代と夕食代は任せろー!」 「ふむ、気前がいいの。」 「ふふふ…僕の財力を舐めてもらっては困るな…」 そんな事を話しながらレストランへと入っていく。 儲けは少なかったけど、皆が笑顔ならいいかな。 その夜、アルトがレストランでの出費に頭を悩ませる事になったのは言うまでもない…
10/11/01 20:39 up
うp速度がどんどん遅く…そんな感じの12話です。 日数が掛かるほど、書けば書くほどgdgdになっていく… 今回はとある紳士的な人と、分かり辛いけどヤンデレとシー・ビショップをこよなく愛する人がゲストとして登場してくださいました。 登場したのはほんの少し 究極のグダりっぷりで全然上手く書けてないです…ごめんなさい。 白い黒猫
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