ガサガサ・・・ガサガサ・・・
生い茂る草を掻き分け、道なき道を進む 普段何気なく横切っている森でも、中に入ってしまえばどこにいるのかがまったく分からなくなってしまう ウルフ種の様に鼻がいいわけでもないし、ハーピー種のように飛べるわけでもない、地道に歩き続けるしか方法がない
「・・・お腹が空いた・・・」
ぐうぅっと情けない音が響き渡る このあたりには木の実の一つも生っていない、今確認したから多分無い
・・・どこかにいい男でも転がっていないだろうか
「さすがにそれはないか」
自分の考えに突っ込みを入れる、端から見れば危ない魔物に見えるだろう、実際に危ないとされてる魔物だし 少し疲れてきた気がする・・・どれくらい歩いたかは覚えていない、覚えていたとしてもどうしようもない
「疲れた・・・少し休むか」
そう言って適当な場所に腰掛ける やわらかくてほんのりと温かい物の上に座る、体重を掛けた瞬間小さな呻き声が聞こえた気がした
「ん?・・・何の音だ?」
私は静かに立ち上がり周囲を見渡す 感覚を研ぎ澄まし気配を探る・・・しかし何もいる気配が無い・・・ 自分の思い過ごしだったと思い込むことにしてまた座る、途端にまたあの呻き声が聞こえてきた
「いったい何・・・」
呻き声のしたほうを見て私は驚いた
私の尻の下に男が倒れていた
「・・・」
あまりの驚きに言葉が出ない 一つはまさか男が転がっているわけが無いと自分で言ったにもかかわらず行き倒れの男を見つけたこと もう一つはその行き倒れの男の上に座っていたこと
「・・・と、とりあえず起こすか」
まずは男を軽くゆすってみる・・・反応は無い 今度は強くゆすってみる・・・反応は無い 下に身につけている衣服の中を覗いてみる・・・なかなかいいではないか 思い切ってつねってみる・・・反応は無い 胸に耳を当ててみる・・・生きてはいるようだ 持ち物を漁ってみる・・・調理器具らしきものがあるが食べ物は無い
「おきないか・・・どうしようこれ」
とりあえず薬草でも飲ませてみようか 道具入れから取り出した薬草を男の口に押し込む ・・・薬草が口の中に詰まっただけで何も起こらない
「・・・そのままでは無理だったか」
男の口の中の薬草を引っ張り出して自分の口の中に入れる 口の中で念入りに噛み砕き、すり潰し、唾液とよく混ぜる 混ざったものを男の口の中に流し込む、無論口移しでだ
「これでいいか」
倒れていた男を背負って歩き出す、生きて帰れたらこの男を戦利品としておいしくいただくとしようか 無事に帰れたときのことを考えながら、また私は歩き始めた
上下に軽く揺すられる様な感覚で目が覚める 目を開けると直ぐ目の前に菫色のふさふさしたものが見えた とても心安らぐいい香りがする、僕はその塊に頭を乗せる
「ん?目を覚ましたのか」
突然塊から声が発せられる、びっくりして顔を離してよく見たらどうやら髪の毛だったらしい
『えっと・・・あなたはどちら様ですか?』 「私か?私はアマゾネスだ」 『いえ・・・お名前のほうをですね』 「名前か・・・お前が私の物になりたいと言うのなら教えてやる」 『そうですか・・・』
さすがにいきなり初対面の女性(魔物だけど)の所有物にされてしまうのはこちらとしても困るので我慢する ところでどこに向かっているのだろうか
『今どこに向かっているんですか?』 「どこにって私たちの集落に決まっているだろう」 『家に帰りたいんd』「お前に決定権は無い、わかったな?」『・・・はい・・・』
強制的にお持ち帰りされることになった様だ、こんなことなら帰ってから食べようと思っていたイチゴのタルトを食べておけばよかった・・・ そんなことを考えていたら突然彼女のお腹からぐうぅっと情けない音が鳴り響いた
「あ・・・そういえばお腹が空いてたんだった」 『なんと・・・』 「むぅ・・・お腹が空いて力が出ない・・・」 『おや?あんなところに猪が』 「何!?肉肉にくにくニクニクゥゥゥゥゥ!!」 『うわっ!?』
突然僕を放り投げ猪へと突進していくアマゾネス・・・ 食への執着心とは恐ろしいものだ・・・僕は改めてその怖さを知ることとなった
「うむ!取れたての、しかも調理した肉というのは格別にうまい!」 『僕が止めなかったら生のまま食べようとしてたじゃないか』
ものすごい勢いで猪に突っ込み一撃の下葬り去った彼女は、そのままの勢いで生肉にかぶりつこうとしていた そんなところを見せられたら僕が大変なことになるので調理をするということで待ってもらった それにしても・・・ここまでおいしそうに食べてもらえると調理したものとしてうれしくなってくる
「ふぅ・・・うまかった」 『満足したかい?』 「うむ、実にうまかった、また食べたくなるようなうまさだったぞ」 『喜んでもらえてうれしいよ』 「何か礼をしないと・・・な」
艶かしい笑みを浮かべそう言い放ったアマゾネスは、四つん這いになりながらこちらに近づいてくる
『い、いいよお礼なんて』 「いいや、それだと私の気持ちが治まらない」 『それならお礼の変わりに開放してください』 「こんなに料理のうまい男をみすみす逃すわけには行かない、逃したら一生後悔することになるだろう」 『ちょっと待って、何をする気ですか!』 「何をってナニに決まっているだろう♪」
貞操の危機に瀕し後ずさりをする僕、僕を(性的な意味で)捕食しようと迫るアマゾネス 後ろに下がっていると背中に何かがぶつかった、何でこんな都合のいいところに木が生えているんだ!
「ふふふ♪さぁ観念しろ、もう逃げられんぞ?」 『あう・・・』
もうここまでなのだろうか・・・僕は半ば諦めかけていた・・・
ガサガサ・・・
突然草木の擦れる音が聞こえてきた、僕と彼女はとっさにその音のした方に振り向いた そこには中くらいの箱を背負った男の人が立っていた 僕は必死にその男性に助けを求めた
『すみません助けてください!貞操の危機なんです!』 『助けて・・・といわれてもな・・・人の恋路を邪魔するような無絆な真似はしない主義なのだが』 『そんなことを言わないで助けてくださいよ!』 『そう言われてもなぁ・・・』『お二人とも仲が良さそうに見えますし』
突然箱の中から声がした、中に誰かが入っているらしい
「あの箱の中にいるのはミミックという魔物だ、塔とか遺跡とかによくいるらしいぞ」
僕の疑問に答えるかのように説明してくれるアマゾネス、いつの間にか彼女に捕まっていた様だ
『仲が良さそうって・・・襲われているんですよ!?』 『思いっきり抱きしめられているじゃないか』 『捕まっているんですよ!』 「そんなに私のことが嫌なのか・・・?」 『そ、そういうわけじゃないけど・・・』 『あらあら、女の子を泣かせたら駄目ですよ?』 『泣きたいのは僕のほうだよぉ!』
もはやコントのような状態になっている、どうしてこうなった! アマゾネスは僕をしっかりと抱きしめて潤んだ瞳で見つめてくる、この表情は反則だろう
『さて、用が済んだなら俺たちはもう行くぞ』 「あ、まってくれ」 『ん?なんだ?』 「ここに来る前にアマゾネスの集落に行ったりしてないか?」 『アマゾネスの集落か、確かに行ったぞ』 「本当か!どっちの方角だ!?」 『向こうにまっすぐ進めば行けると思うぞ』 「そうか!助かったぞ!」
そういいながらアマゾネスは僕を背負いもの凄い速さで走り出した 完全に誘拐です、本当に(ry でも魔物からしてみれば別に問題になるほどのことではないのか・・・ そして、僕は考えるのをやめた・・・
『なんだったんだ?あの二人組みは』 『最近ジパングで流行っているまんざいしだとか言う人たちでしょうか?』 『それはないと思うが・・・まあいいか、それよりもお宝が俺たちを待っているぞ!』 『急がないとお宝が逃げてしまうかもしれないですからね』 『ところで、何で敬語なんだ?最初はもっと砕けたしゃべり方だったのに』 『だって・・・ご主人様って呼びたいですからメイドみたいに敬語で喋ってるんです』 『・・・』
俺は突っ込むのをやめた、こんなところでまんざいだとか言うのを始めるほど時間に余裕がないからな
アマゾネスの集落に連れ去られた僕は否応無しに僕をさらったアマゾネスと結婚させられることとなった 婚礼の儀式といいつつ丸裸にされて大勢の前で犯されてしまった 婚礼の儀式が終わるころには干物化数歩手前まで搾り取られて終わったと同時に意識を失ったらしい
最初のうちは何がなんだか分からず混乱していたが、今ではもう慣れてしまった 帰りたいという気持ちもまだ少しあるけど、僕の料理を美味しいと言って最高の笑顔で笑ってくれる彼女を悲しませたくないという気持ちのほうが強くなってしまっていて、帰ろうという気になれなくなってしまっていた そろそろ彼女が帰ってくる時間か 僕は彼女のために晩御飯を作る準備を始めた
余談
『おかえりー』 「ただいm・・・何だその格好は、そそられるじゃないか」
彼女をびっくりさせる作戦は見事に成功したようだ、へんな言葉が言葉が聞こえた気がするけど
「どうしたんだ?頭を強く打ったのか?」 『そうじゃないよ!』 「そうでもない限りお前が裸エプロンという襲ってくれといわんばかりの格好をするわけないじゃないか」
僕は今他の男の人に教えてもらった妻を労うのにピッタリと言われている裸エプロンという服装をしている 少し寒いけど
『その・・・いつも助けてもらってるしさ・・・』 「・・・」 『だから少しでも喜んでもらおうかなー・・・っと思って』 「・・・・・・出来ん」 『え?』 「もう我慢出来ん!今すぐお前を食べてやる!」 『ちょ!?待って!せめてご飯を食べtアッーーー!』
今日もアマゾネスの集落は平和です
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