68ページ:アラクネ
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「もう行っちまうのか?」
DL
「急ぐ旅でもないが、長居するほどでもないのでな。」 「そうか…新人教育の一環としてお前を講師に招いていろいろやらせようと思ってたんだがな…」 「そういう事を包み隠さずに言うから友達が出来ないんじゃないか?」 「うるせぇ、お前よりはいるわ。」 「どうだかな……体に気をつけるんだぞ。」 「子ども扱いするなっての……お前も無理するんじゃねぇぞ?」 …というのが一時間ほど前にあった事だ。 でだ…今は何をしているかというと… 「無様ねぇ…貴方本当に私を好き勝手に弄り回してたあの輝なの?」 魔物に捕まってました…彼女の言うとおり何とも無様である… そもそも、何でこんな事になってるかだが…簡単に説明すると前方不注意である。 夕食の食材を探す為に単身森に入ったが、例の如く迷った挙句ある物に引っかかって身動きが取れなくなってしまったのだ… あるものと言うのは大きな蜘蛛の巣の様な物…アラクネの巣であるな。 我輩に話しかけているのも、アラクネという蜘蛛の特徴を持つ魔物である。 「いつもなら頼んでも引っかかってくれないのに…もしかして私の夫になる気になってくれたのかしら?」 「そんなわけ無いだろう…それより解いてくれないか?」 「嫌よ、今までのお返しをたっぷりとしてあげた後なら考えないでもないけど。」 相当利子がたまってそうであるなぁ…いろいろと覚悟を決めた方がいいか… 疑問に思ってる諸君の為に簡単に説明すると、我輩の作った蜘蛛糸玉の原料調達先が彼女である。 彼女の胸を弄り回していかせた後、機能に支障が出ない程度の糸を巣から採取していたのだ。 過去に何度も採取したからな…まとめてお返しとなると最悪の場合帰れないと言うことになりそうである… 「先ずは何からしようかしら、貴方にしたいことがありすぎて迷っちゃうわ。」 「手始めに我輩を巣からはがすというのはどうだ?」 「そんなことしたら逃げちゃうじゃない。」 「逃げない逃げない、我輩は嘘は言わん。」 「………本当に逃げないのね?」 「うむ。」 「……分かったわ、逃げたら承知しないわよ?」 渋々といった表情で我輩を巣からはがしていくアラクネ殿。 完全にはがされた所で彼女の腕から抜けて背後へと回り込み、豊満な胸へと手を伸ばす。 「きゃっ!?に、逃げないって言ったじゃ…」 「逃げはせんが、胸を揉まないとは言ってないぞ。」 アラクネ殿の胸は久しぶりに揉んだが…驚かされた事が二つ。 一つは前よりも感度が良くなってる事……こんなになるまで開発した覚えは無いのだが… もう一つは…前よりもさらに胸が大きくなっている事だ。 「…流石魔物…男を虜にする術は常に進化して行っているということか…」 「くふぅっ……全部…輝のせいよ…」 「むっ?なぜだ?」 「貴方が胸を揉んだから…貴方が私を好き勝手に弄ったから……貴方が私を…屈服させたから…」 耳まで真っ赤にしながら思いを吐き出すアラクネ殿。 彼女の紅潮した頬を一筋の涙が伝う… 「偶にしか来てくれないんだから…一度くらい好きにさせてくれてもいいじゃない…」 そう言ってこちらを振り向き、唇を奪ってきた。 唇を重ねあったまま持ち上げられ、彼女の正面へ移動させられて抱きしめられる… 「…今夜は逃がさないから…覚悟しなさいよ?」 二度目の口付け…今度は彼女の舌が我輩の口内へと入り込んでくる。 …今回くらいは…好きにされてもいいであるかな… 「ただいま。」 「むっ?輝はおらんのか?」 「輝ちゃんは今日は帰れないらしいわ…」 「そうか…鱗の手入れを頼みたかったのじゃが…仕方が無い、自分でやるかの…」 輝にやってもらうと自分で手入れした時よりも綺麗になるのじゃがな…残念なのじゃ… それにしても…何故帰らないのじゃろうか? 「輝様の身に何かあったのですか?」 「アラクネに捕まってたわ…久しぶりに会えたらしいから今日は彼女に付き合うって。」 「私達というものがありながら他の女性と夜を共にするなんて…また泣かせてあげないとですね。」 「ご主人様をいじめちゃだめだよ!」 「ミィナはん、これはうちらの愛情表現なんよ。」 「そうなんだ!なら大丈夫だね!」 …ミィナの今後が心配じゃな…周りの者にろくなのがおらん… まぁ、輝に制裁を下すのは確定じゃがな…周りから見えないように締め付ければそのまま繋がれるじゃろうしな…くふふ… 「……むっ……明るい?」 「ようやくお目覚めね?」 どうやら途中で眠ってしまったようだな… 「私としてる途中で寝るなんていい度胸ね…」 「すまんな、睡魔には勝てなかった。」 「…まぁ、気持ちよかったから許してあげるわ。」 そう言って顔を赤くしてそっぽを向いてしまった… …何か不味いことをしてしまっただろうか… 「と、とにかく我輩は帰るである。」 「帰さないわよ?」 …なんだって? 「もう会えないなんて嫌だもの…ずっと一緒にいましょう?」 「…やれやれ…出来れば使いたくなかったが…」 少し間合いを取り、懐から一振りの大きな剣を取り出した。 何時の間に作ったのかと聞かれそうだが、実は既存の物を改良しただけのものだったりするである。 まぁ、ここまで読んでくれた読者諸君なら何を改良したものか見当がついてるだろう。 「それで私を斬るつもり?」 「安心しろ、加減はする。」 両手でしっかりと握り締め、アラクネ殿目掛けて振るう。 が、機敏な動きで避けられてしまい、大きな隙を晒してしまった。 「隙だらけね!そんな危ないもの没収よ!」 そう言って剣に向けて糸を飛ばしてくるが… 「残念ながら危険物ではないから没収は出来んぞ!」 当たる寸前に剣が二つに割れ、その間を糸が通り抜けていく。 「………えっ?」 呆気に取られてるアラクネ殿の懐へ飛び込むと同時に剣を合わせ、横へ回転しながら斬り上げる。 「鉄流奥義、昇り飛龍・旋風!」 「きゃぁっ!?」 回転と共に周囲を巻き込む風が発生し、アラクネ殿を吹き飛ばした。 …こっちの方もなかなかいい出来だな…改良の余地はありそうだが。 「な、何よ今の!?」 「鉄流の奥義にちょっとしたものを加えただけの簡単なものだ。」 そう言って詳しい説明を始める…だがまぁ、読者諸君は面倒で面白みの無い説明など望んでないだろうし、簡単に説明するである。 先ずはこの剣…依然作った巨大な双剣を改良し、一つに合わせたり分離したり出来るようにした物である。 以前よりも使い方の幅が増えてるので、我輩的には満足の行く出来になったであるぞ。 次に加えたちょっとしたものの事だが…これだ、自然の力を取り込ませた石だ。 上手くいかないとか嘆いてた時に作ってたのはこれで、実用出来るレベルまで力を籠める事が出来てなかったのだ。 未だ未完成ではあるが、驚かす程度の事は出来そうだぞ…いずれは完成させたいであるな。 ちなみに、アラクネ殿にしてる説明はこんな簡単な説明ではないであるぞ。 「…という物だ、理解できたであるか?」 「よく分からないって事と貴方がさらに変態的になったって言うのが分かったわ。」 「まぁいい、糸の採取も終わったし帰るである。」 「逃がさないって言って……っ!?動けない…!」 …彼女が説明を聞いている間に、彼女の視界に入らない程度に糸を張り巡らせておいたである。 まさかこんな所で人形操作術が役立つとは…何でも覚えておくものであるな… 「謀ったわね!?」 「限られた条件の中で最善手を使ったまでだ。」 「くうっ…覚えてなさいよ…!」 「もう会えなくなるわけではないのだ…それじゃあまたな…である。」 そう言って彼女に背を向け、その場を後にする。 「次に会った時は犯してやるんだから!覚悟しておきなさいよ!!」 …何か物騒な言葉が聞こえてきたが…聞かなかった事にしよう… 〜今日の観察記録〜 種族:アラクネ 蜘蛛の下半身を持つ昆虫型の魔物であるな、洞窟や森の奥深くなどの暗い所に好んで生息しているようだ。 体内で作り出される粘性の高い糸と高い身体能力を駆使して襲い掛かってくる危険な魔物であるな。 ちなみに、以外かもしれないが彼女達は裁縫が得意であるぞ、彼女達の作った衣服は人間魔物問わず人気が高いである。 「……あぁ、やっぱり今回も駄目だったである…我輩は方向音痴であるからな…」 さっきからずっと同じ景色ばかりである…自分が何所にいるのかが全く分からん… 「早く帰って琴音のふかもふ尻尾に飛び込みたいである…桜花の締め付けマッサージもいいな…リシェルの修行風景も見たいであるな…」 自分の中で楽しいと思う事を思い浮かべて気を紛らわしているが…やはり限界というものがあり… 「……帰りたい……ぐすっ………ぬぉぉぉぉぉん!出口はどこであるかぁぁぁぁぁ!!!」 …その後無事仲間に発見され、慰められた後に制裁を下されたのだがそれはまた別のお話… |