55ページ:ケサランパサラン
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「むぅ……不味さは薄らいだが効能が弱まってしまったか…もう一度作り直しだな。」
今何をしてるのかって?以前に何回か飲んでた魔力の侵食を抑える薬の改良である。 とは言っても、適当に調合していたら完成してしまったレシピなので、どの材料がどの様な効果を与えているのかもよく分かっていない。 そんな状況でやる事はただ一つ、ひたすら作りまくるだけである。 今日だけでも既に7回近く作り、すべての物が失敗作と化しているな。 だが、失敗をする度に少しずつだが相性の良い組み合わせと悪い組み合わせが分かってきている…地道に調合していればその内完成するだろう。 とはいえ、研究詰めでは疲れが溜まってしまう…少しばかり休憩を挟むとしようか。 幸いにも今日一日は一人でのんびり出来る…琴音達に土下座して頼んだ甲斐があったと言うものだ。 「ちょっと散歩でもするかな…外の新鮮な空気を吸いたいである…」 宿の…と言うより我輩の部屋の中は何とも言えない異臭がする… 宿の主人に怒られそうだな…まぁ、換気しておけばある程度は何とかなるだろう。 「んんー…素晴しくいい天気だ。」 本日も快晴であるな、絶好の散歩日和である。 少々日差しが強いが…特に問題はないだろう。 等と考えながら歩いていると、後ろから声をかけられた。 「おいそこのお前。」 「むっ?我輩であるか?」 「あぁそうだ、この辺りで白くてフワフワした物を見かけなかったか?」 「白くてフワフワ…?」 「知らないならいい、そんな感じのを見つけたら俺の所に持って来いよ。」 何者かを聞く暇もなかった…身形からして冒険者か何かだとは思うが… 白くてフワフワ…我輩の知ってるものでは大福くらいであるな、白くてフワフワで甘くて美味しいである。 あの男は大福を探していたのだろうか?落ちてるものを拾って食べるのはやめた方がいいと思うであるが… まぁいいか、我輩には関係のないことであるし。 …なんて考えてると巻き込まれそうであるな…この事はもう考えないように… …む?何だこれは…粉? 「何でこんな物が…」 我輩の周囲に謎の粉が舞っているな…何だか不思議な感じがする。 なんと言うか…幸せな気分になってくると言うか… 上から降ってきているような感じはするが、上を向いても何もいない… 「ひゃぁ!?いきなり動かないでよー!」 何だ今の声は?頭の上から聞こえたが… 気になって頭を触ってみると、何かフワフワしたものに手が触れた。 それと同時に、何かに抱きつかれる様な感覚が手から伝わってくる… 手を見てみると、我輩が依然作ってたデフォルメ人形と同じくらいの大きさの少女が抱きついていた。 「こんにちわお兄ちゃん。」 「こんにちわである…で、貴殿は何をしてるのかな?」 「お兄ちゃんに幸せをプレゼントしに来たよ!」 「ふむ…それは非常にありがたいことであるが…」 白くてフワフワ…先程の男が探していたのは大福ではなく彼女であろうな。 他の特徴と言えば…大きさがフェアリー等と同じくらいだと言う事だろうか? えっと…何だったか?ケセ…ケサ?ケサランパサランだったか? 生息域も不明で目撃例の少ない非常に珍しい魔物だったか…捕獲すれば幸せを呼び込むとか言う噂もあった気がする。 「と言うわけでお兄ちゃんのお家に行こ?いっぱい気持ちよくなって一緒に幸せになろうよ!」 「あぁ…幸せってそういう…」 まぁ、魔物だと言う時点で大体予想は出来ていた。 しかし…今日はゆっくり休みたい日であるしなぁ…どうしたものか… 「おっ!捕まえてくれたのか!」 「むっ?貴殿はさっきの…」 「さぁこっちに渡してくれ、礼は弾むぜ。」 そう言って手を差し出してくる男… …我輩としては彼女の観察もしてみたいであるし、手放したくないが… 「…貴殿はどうする?向こうに行きたいならそれでかまわないが…」 「やだ!私はお兄ちゃんと幸せになりたいの!」 「…だそうだ、我輩としても手放したくない個人的な理由が出来たであるし、清く諦めてくれ。」 彼女の意志を尊重し、やんわりと断る。 それにだ…我輩なんかに懐いてくれているのだ…その気持ちにはちゃんと答えんとな? 「そうかよ、なら力尽くで奪い取るだけだ。」 「やはりこうなるか…仕方あるまい、しっかり捕まっていてくれ。」 「はーい。」 ケサランパサランが我輩の頭の上に乗ったのを確認し、刀に手をかける。 出来る限り相手を傷つけないようにしたいが…普通にやったら厳しいだろうな。 だが、我輩の父上が言っていた…「困った時は鉄流の奥義で何とかなる」と… …思い出してみると随分と酷い話だ…実際に何とかなってしまうのも考え物だが。 「俺様の幸せの為にくたばりな!」 「見せてやろう…異端と呼ばれた鉄流の奥義を…」 手にした剣を振り上げ、我輩に向かって飛び掛ってくる男。 振り下ろされた剣を後ろへ跳んで避け、相手を跳び越えながら剣に、真上に差し掛かった時に兜に、相手の背後に着地すると同時に鎧に刀を振るう。 刀を鞘にしまうと同時に、男の使っていた剣と兜にひびが入り、音を立てて砕け散った。 「鉄流奥義…破装乱舞…まだまだ父上の様にはいかんか…」 「ぐっ…まだだ!まだ武器はある!」 懐から小型のナイフを取り出し、我輩の方へと刃を向ける。 武器を全て壊さんと諦めそうにないな…破装乱舞は物凄く疲れるからもう使いたくないのだが… どう対処しようか迷っていると、上の方から粉が降ってきて我輩達の周囲に舞った。 「ケンカはダメー!」 必死に我輩達を止めようとするケサランパサラン…彼女を見てると、争ってた事が馬鹿らしく思えてくるな… 「…あれ?俺達なんでケンカしてたんだ?」 「我輩が貴殿の要求に応じなかったのが原因だ…すまない。」 「いいよいいよ、気にするな。」 「それじゃあ我輩はもう行くぞ。」 「いいよいいよ、気にするな。」 同じ言葉しか言わなくなったな…幸せな過ぎてまともに考えれないのだろうか? その場を立ち去ろうとしたとき、野次馬の中から何者かが歩み出た。 あれは…サキュバスか? 「ねぇ、私とお茶しない?」 「いいよいいよ、気にするな。」 「ついでに私の家に泊まって行ってくれるかしら?」 「いいよいいよ、気にするな。」 「ついでに私の夫になってくれる?」 「いいよいいよ、気にする……ん?」 「それじゃあ行きましょうか、子供は何人がいいかしら?私は貴方が望むなら何人でも産むわよ?」 「えっ?何がどうなって…えっ?」 「あぁん!もう我慢出来ないわ、ここで子作りしましょう!」 「ぎゃぁぁぁ!?だ、誰か助け…あひぃっ!?」 …………そっとしておこう。 「あう…お腹すいた…」 「ふむ…何か食べたいものはあるか?」 「お兄ちゃん!」 「…あぁ、そう言えば魔物だったな…」 「だめ…かな…?」 「はぁ……一回だけな?」 「うん!」 こんなに小さい娘に欲情するほど獣ではないのだが…まぁ可愛いからいいか。 彼女の食事が済んだらいろいろ見て回るか…元々は散歩ついでに使えそうな物を探そうと思っていたわけであるしな。 我輩の休日はまだまだはじまったばかりである。 〜今日の観察記録〜 種族:ケサランパサラン 白くてフワフワした毛玉のようなものを身にまとった植物型の魔物だな。 驚くほど軽く、宙をフワフワと浮かんで移動することが出来るようだ。 幸せを呼ぶケサランパサランとも言われ、噂では彼女達を捕獲すると幸せを呼び込むと言われているが…結果はどうあれ"幸せ"になることには違いないな。 〜今日の秘密道具〜 道具:蜘蛛糸玉 アラクネの糸と特殊な配合を施した火薬を使った手投げ玉である。 炸裂すると、導火線の反対側の方から広範囲に糸が飛び散るようになっており、投げ方次第では多くのものを巻き込んだり、逆に一つのものにだけ糸がかかるように出来る。 ちなみに、完成させるまでに九回失敗しており、一回だけ捕まって貞操の危機に瀕した事があるである… 「輝様、お夕飯の時間ですよ…あら?」 「「すぅ……すぅ……」」 「お休み中でしたか…また他の女性と過ごしたのですね…お仕置きは何がいいでしょうか?」 「むにゃ…お兄ちゃん…だいしゅきぃ……んにゅぅ…」 「…今回は許してあげましょうか…本当に輝様はいろいろな方に好かれますね。」
13/02/14 21:30 up
DL
可愛い子に突然お兄ちゃんって言われたら誰でもドキッとすると思うの。 その反応は誰にでもあるものだと思うので反応してしまってもロリコンにはならないと思うの。 つまり、私はロリコンではない!(ドヤァ… 白い黒猫 |