51ページ:アマゾネス
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「迷子になったのは何時以来であろうか…」
DL
森に着くまでは何とかなった、問題はその後である。 遺跡で貰った宝を寝袋に詰めて運んでいたのだが、それのせいで寝ることが出来なかったのだ。 その場で仮眠をすればいいとも思ったのだが、少しでも早く帰ろうと焦った結果、真っ暗な森の中で右も左も分からなくなっているという状況になったである。 「このままでは哀れにも我輩は骨になってしまう…いや、スケルトンか?…魔物になってみると言うのもそれはそれで……いやいやいや、何を考えているんだ我輩は。」 我輩はまだ死ぬわけにはいかん…世界を統べると言う目的を達成していないであるからな。 ………まぁ、今だから言えるが…本当はもっと別の目的があったりするのだがな… 等とどうでもいい事を考えながら彷徨っていると、僅かな光が見えてきた。 誰かいるのだろうか…こんな時間に森の中にいるなんて随分と物好きな者がいるのだな。 光は少しずつ強くなっている…このままだと何者かと鉢合わせる事になるな… その辺の木に上ってやり過ごすか… 「今日は大漁だな。」 「ついに私にも夫が出来るのか…これで安心して狩りに出れるようになるな。」 「…私は収穫なしだがな…」 「族長娘様…大丈夫です、貴方様も必ずいい夫を見つけられますよ。」 「族長様のお墨付きですからね、優秀な夫を見つけれますよ必ず。」 「そうだと良いのだが……ん?」 三人の魔物が二人の男を担いでいるみたいだ…どこからかさらって来たのだろう。 サキュバスに近いものを感じるが…角や翼と思われる部位が片方しかない…退化したのか、元々無いのかはわからないな。 褐色の肌には見たことも無いペイントがされているが…何の意味があるものなのだろうか? なんという魔物だったか…アマゾネス…だったかな? その内の一人が立ち止まり、何かをしているが…まさか見つかったか? 「…人間の気配がするな。」 「こんな所でですか?」 「ただの人間ではなさそうだ…気配を消すのが相当上手い…」 「でも、いったい何処に…」 「………」 何も言わずに、我輩の隠れている木を見つめるアマゾネス… …何となく何をするか分かったである。 「…はぁっ!!」 深呼吸をした後、思いっきり我輩の隠れている木を蹴り飛ばしてきた。 彼女が蹴り込む寸前に我輩は軽くジャンプをし、振動で下に落ちるのは回避できた… …だが、乗っていた枝が荷物を持ったまま跳んだ我輩の重さに耐え切れず、枝の根元から折れて下へと落ちてしまった。 …どうやっても落ちるのか… 「うわっ!?本当にいた!?」 「いたたた…もう少し丁重に扱って欲しいである…」 「ふむ………」 「むっ?我輩の顔に何か付いているであるか?」 我輩を蹴り落としたアマゾネスが、何かを考えながら我輩の全身を隅々まで見ていく… ………こんなに見られることなんてあまり無いからちょっと恥ずかしいである… 「…そんなに見られると恥ずかしいである。」 「…ただ見ているだけなのに恥ずかしいのか…お前なかなか可愛い所があるな。」 「我輩が可愛い?医者に目を見てもらうことをお勧めするぞ。」 「…くっ・・・はっはっはっ!面白い奴だな気に入ったぞ、里に連れて行ってやる。」 「アマゾネスの里か…寝る所もないし観察の為にも寄っておきたい…お言葉に甘えさせてもらおうかな。」 我輩はアマゾネス自体見たことも聞いたことも無いからな…見た目の特徴は聞いていたが。 彼女達の里に行ければ詳しい事も分かるであろうな。 やはり休まずに進んでよかったな、知らない魔物の生態を知る機会が手に入ったのだからな。 少なくとも、今この時の我輩はそう思っていたである… 歩く事数分、彼女達の里と思われる場所へと着いた。 何と言うか…思っていたよりも普通であるな。 里の中心にあたる場所にしっかりとした造りの広場の様な場所がある以外は、何処にでもあるような村のように見えるである。 周りから娘様と呼ばれるアマゾネスに案内され、比較的大きな家へと案内された。 「おかえり…むっ?そっちの男は…」 「木の上に隠れているのを見つけて落とした。」 「そうか、よくがんばったな。」 「母様…」 「そうなると今夜は宴を開かないとな…そこのお前。」 「むっ?我輩であるか?」 「里の男達と共に宴の準備をしろ。」 「宴か…流石に何もしないわけにはいかんだろう、引き受けよう。」 宴か…今日も今日とて酒が飲めるであるな! 彼女の夫と思われる男に案内されて家をでる瞬間… 「中々素直ないい男じゃないか…流石私の娘だ、いいのを捕まえてきたじゃないか。」 「今日は運がよかっただけです…これで私も母様の様な……に…」 最後の方は聞き取れなかったが…捕まえた? 案内されて来ただけなのだが…むーん…? 「君は彼女達に反抗しないんだね…女性の尻に敷かれるのが好きなのかい?」 いろいろと考えを巡らせていると、案内をしてくれている男が話しかけてきた。 「むっ?自分色に染め上げるのも好きだが、染められるのも悪くはないと思う…だが、それがどうかしたのか?」 「そうか…君なら娘のいい旦那さんになってくれるだろうね。」 …………何だって? 「ちょ、ちょっと待つである!どういうことか説明して欲しいのだが!?」 「…もしかして、アマゾネスを知らないでついてきたのかい?」 「うむ…出合った事のない魔物だったから観察をしようと…」 「ふむ…それじゃあ軽く説明しよう。」 男が言うには、アマゾネスは定期的に男狩りというものを行うようだ… その名の通り、人間の男を捕まえて里へと連れ去ってしまうようで、この時に男を捕らえる事が出来た固体は見た目や年齢に関係なく成人になるという… つまり、我輩は里に招待された客の気分だったが、彼女達にしてみれば狩られて連れて来られた彼女達の夫と認識されているらしい… …酒が飲めなくなるのは残念だが、逃げ出さないといかんな… 「先に言っておくけど、逃げようなんて思わないほうがいいよ?まぁ、激しく犯されたいのなら止めはしないけど。」 「むぅ…我輩はやらねばならんことが沢山あるのだ…ここで立ち止まるわけには…」 「まぁ、君が彼女達より強いって証明出来るなら何とかなるかもしれないね…ちょっとやそっとじゃ歯が立たないだろうけどね。」 「ふむ…準備が終わったら試してみるか。」 「…準備は手伝ってくれるのか…」 「我輩は違うが、狩られた者はいるのだろう?我輩の勝手で狩りに成功したものに迷惑をかけるわけにはいかん。」 「君は変わってるね…娘が気に入るのも分かるよ。」 男からそんなことを言われても嬉しくないのだが… まぁいい、準備を済ませたら事情を話して勝負をしてもらおう。 「…貴殿に話がある。」 「ん?私に犯されるのが待ちきれないのか?」 「いや…我輩はそろそろ帰ろうかと思っているのだが。」 我輩が娘殿にそう話すと、僅かな笑みが消え、出会った時の鋭い目付きへと変わった。 「帰さんぞ、お前は私の夫になるんだ。」 「…どうしてもダメであるか?」 「上目遣いで頼んでもダメだ、お前に拒否権はない。」 「そうであるか…これだけはやりたくなかったが仕方あるまい…」 数歩下がり、刀を抜いて彼女の方へと向ける。 特に驚くような事もなく、黙って我輩の一挙一動を見守っている… 「貴殿との決闘を申し込む、我輩が勝ったら帰らさせて貰う上に胸を揉ませて貰うぞ。」 …誰だ?胸を揉みたいだけだろうとか言った者は。 目の前におっぱいがあったら揉まない訳にはいかんだろう!おっぱいは男の夢が詰まっているのであるぞ!! 「私が勝ったら何をもらえるんだ?」 「その時は清く貴殿の夫になろう、出来る範囲内なら何でもしてやるであるぞ?」 「何でもか…」 「炊事洗濯道具の手入れから狩りのお供まで何でもしよう。」 「全裸で里を十周しろとかは?」 「やるぞ?今なら逆立ちのオプション付きである。」 「…本当に面白い奴だ…いいだろう、受けてやる。」 そう言って不敵な笑みを浮かべ、奥の部屋へと向かっていった… …さて、どうやって負かそうか… 読者諸君は、我輩が相手を打ち負かせる秘策があると思っているのだろうが、今回はそんなことはないである。 というのも、さっきの申し出は断って欲しかったのだよ…それがダメなら飲み比べで…という感じで、我輩に有利な勝負に持ち込みたかったのである… だからと言って引くわけにも行かず、我輩が一番やらかしたくなかったことをやってしまったのである… 何か役立つものはないか…手に入れた宝の中も探ってみるか… 「手投げ道具類は真剣勝負には使いたくないし…弓矢を使う暇も隙もないだろうし……む?」 懐に手を突っ込んでごそごそしていると、触り慣れない感触のモノが手に触れた。 これは………狐の面か? こんなもの買った覚えも拾った覚えも強奪…もとい、借りた覚えもないのだが… ………まぁいいか、試しに着けてみるかな… 「…ふむ…」 手持ちの手鏡を使って見たが…意外と悪くないな。 大陸の者達が身に着けてるような服だったら合わないだろうが、故郷の服となら中々合うな。 ただ、視界が多少遮られてしまうのが難点か…まぁ、我輩は気に入ったからこれで行こう。 他には…むっ?これは剣か? 弥生から買った世界の武器事典を見る限りでは、伝説の武器の項目にある武器に似たようなのがあるで………えっ? …えっ?似てると言うかほとんど同じ……という事は… 「で、伝説の武器かこれ!?」 まさかあの遺跡でこんな素晴しいものが手に入るとは…名前は……エクスカリバーか。 これはいざという時の為にとっておこうか、これでもう何も怖くないな! 「…それじゃあ始めるか…」 「いつでもかまわんぞ。」 多くのアマゾネスとその夫達が見守る中、族長の娘による男狩りが始まろうとしていた… まぁ、我輩は絶対に負けんであるがな。 「随分と余裕があるのだな?」 「秘策はちゃんと用意しているからな、負ける気はせん。」 「まぁいい、降参したくなったらいつでも言え、毎晩可愛がってやるぞ。」 そう言った直後、不規則な動きで此方へ急接近し、手にした剣で斬りかかって来た。 軽く下がって回避したが、その動きを予測していたかのように深く踏み込んで斬りかかって来る。 鞘で受け流しつつ抜刀し、相手の腹部に向けて振るう…が、軽く避けられたうえに我輩の腹に彼女の蹴りが叩き込まれた。 …正直洒落にならん痛みだ…魔物は強いというのは知っているが…少し甘く見すぎていたな… 「どうした?腹が痛いなら撫でてやってもいいぞ?」 「この程度…父上の拳骨の方がまだ痛いである。」 「出来れば傷つけたくない…早めに降参してくれ。」 「お断る!」 刀を構えながら娘殿目掛けて走り出し、我輩目掛けて振るわれた剣を避けながら頭部目掛けて切り払う。 が、上体を反らされて避けられ、そのまま勢いをつけて頭突きをしてきた。 …ここで二つの選択肢がある。 A.バク転で間合いを取りつつ相手の顎目掛けて蹴りを加える。 →B.相手の頭突きを顔面で受け、無様に転げまわる。 「ウボァー!!!」 「…お前の実力はこの程度なのか?」 Aを選択しておくべきだった… 面を着けてるとはいえすっごく痛い…と言うより、面のせいで余計に痛い… くっ…仕方が無い… 「こうなったら…秘策を使わせてもらおうか…!」 「面白い…その秘策とやらを打ち破って完全な敗北をさせてやろう。」 先程の剣を取り出し、娘殿目掛けて一気に詰め寄る。 振るわれた剣を紙一重で避け、速度を落とさないまま剣を振るい、斬り抜ける… …確かな手応えを感じた…急所は外したが… 「………んっ?何ともない…?」 「…なぬ?」 振り向くと、斬られたであろう場所を触って確かめている娘殿が見えた… …試しに、背中目掛けて先程と同じように斬りつけるが。 「…痛くも痒くもないな。」 ……… 「ば、馬鹿な…伝説の武器ではなかったのか…?」 「…私の勝ちだな。」 「…ちくしょうめぇぇぇぇぇぇ!!!」 怒りに任せて後ろへ剣を放り投げ、その場に跪く。 我輩の旅はこんな所で終わってしまうのか…無念だ… そう思っていたのだが… 「ごふっ!?」 「…む?」 娘殿が変な声を出したので振り向いてみると、剣の腹が彼女の頭に当たり、その衝撃で後ろに倒れこんでいく娘殿の姿が見えた… …えっ?何がどうなって…えっ? 「む、娘様が倒れた!?」 「直ぐに手当てをしろ!!」 …よく分からないが、今までの人生でもっとも酷い戦いだったと言うことは分かるな… 「…その…娘殿は大丈夫であるか?」 「まだ目は覚ましていないが大きな怪我はしていない、直によくなるだろう。」 「そうか…」 あの後、騒ぎを聞きつけた娘殿の母が現れ、倒れている娘殿を自宅へと運んでくれた。 特に酷い怪我はなかったらしく、ただいい所に剣が当たって気を失っただけだったらしい。 ただ… 「頼む!もう一度、もう一度娘殿と戦わせてくれ!」 「それは出来ない、魔物とはいえ病み上がりでは勝負にはならん。」 「完治した後でいい!我輩自身があの戦いに納得がいかんのだ!」 あんな勝ち方は個人的に認められん、我輩の慢心が招いた結果なら尚更だ。 自分勝手だと言われるかもしれないが、真剣に戦うからには己の全てを出し切ったいい戦いがしたいのである。 「そこまでよ輝ちゃん。」 「アレクシア?どうしてここに…」 「知り合いに会いに来たのよ、可愛い娘ちゃんの顔も見たかったしね。」 「アレクシア様、本日はお越しいただきありがとうございます…ですが…」 「皆まで言わなくていいわ、大体予想が付くから。」 そう言うと我輩の元に歩み寄り、我輩の耳を強く引っ張った。 「いだだだ!痛い!痛いである!」 「全く…女の子に怪我をさせちゃダメでしょう。」 「アレクシア様…私の娘は柔な鍛え方はしてませんので大丈夫ですからその辺でやめてあげてください。」 「貴方がそういうならそうするわ。」 おぉう…もう少しで耳が伸びる所だった… 普段なら何か文句の一つでも言う所だが、今回は明らかに我輩に非があるので言わないである… 「輝ちゃん、これに懲りたら今後はちゃんと鍛錬するように!」 「言われなくてもそうする…こんな勝ち方は相手にも失礼である…」 「分かればよろしい。」 「うむ…って!何故抱きしめる!?」 「だって輝ちゃんがいない夜が二日間続いたのよ!?二日間よ二日間!どれくらい寂しかったか分かるかしら!?」 「わ…わかったから…離し……息が…」 いかん…本当に息が…… ……魔物娘の…胸で死ねるなら……本も…う……… 「…顔色がどんどん悪くなっているぞ?」 「えっ?…きゃぁ!?輝ちゃんしっかりして!?輝ちゃーん!!」 〜今日の観察記録〜 種族:アマゾネス 森の中に独自の集落を作り、そこで生活をしているサキュバス種の魔物である。 元はアマゾネスと呼ばれる人間の女性のみで構成された部族だったのだが、魔王の世代交代の際に進行してきたサキュバスによって魔物化させられたようだ。 彼女達のほとんどは幼少の頃から戦士としての教育を受けているため、優れた身体能力と戦闘技術を持っているである。 〜今日の秘密道具〜 今回から我輩の開発した道具や、我輩が使った不思議な道具などを紹介していくことにしたである。 名前だけ出てきてもどんな物かが分からないと言う諸君等に、使った物がどんな物かを知ってもらいたいためでもあるな。 初回は、我輩を上げて落としたこいつである。 武器?:エクスカリ"パ"ー 作中に出てきたのは本物の方の名前で、我輩が手に入れたのはこっちである。 伝説の武器だと歓喜した冒険者や勇者の多くを別の意味で葬ってきた恐ろしい剣だな… 普通に振ると掠り傷すらつけれないが、投げた時のみ本物にも劣らない威力が出せるようだ。 …余談だが、異国にはこの剣を振って相手に怪我を負わせる事が出来る剣豪がいるらしいである… 「…んっ…ここは…?」 「起きたか、まだ痛む所はあるか?」 「大丈夫です…あっ!あの男は!?」 「隣の部屋でお前の様に寝ているよ…ちょっとした事故があってな…」 「…そうですか…」 「…見に行ってもいいぞ?流石に意識のない相手を襲うのはだめだが、添い寝くらいならいいと思うな。」 「っ!行って来ます母様!」 「あっ…でも彼の部屋には……行ってしまったか…」 「あの子が急いで隣の部屋に入って行ったんだけど…何かあったのかい?」 「なに、いつの間にか娘が女として成長していただけさ。」 「そっか、あの子も君みたいな素敵な女性になってきたんだね。」 「なっ!?だ、誰が聞いているか分からんのにいきなりそんなことを言うな!」 「僕が三日間意識を失っている間、形振り構わず必死に看病してくれてたみたいだしね。」 「………そうか、そんなに搾られたいか。」 「…えっ?」 「そろそろあの子にも妹をと思っていた所だしな…。」 「あ…あのぅ…目が据わってるですが…?」 「貴様もたっぷりねっとり搾り取られたいみたいだしな…ちょうどいい。」 「ひぃっ!?ちょ、調子に乗ってすみませんで…」 「二人目を孕むまで放してやらんからな、覚悟しろ?」 「い、いやあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「…お盛んねぇ。」 「また父様が何かやらかしたか…」 「私も早く輝ちゃんとほのラブエッチしたいわぁ…」 「…わ、私も…」 「貴方はまだよ?今日の勝負をやり直してからじゃないと。」 「………絶対に勝って私のものにしてみせる。」 「そうなったらここに永住かしら?意外と楽しい生活が出来るかもしれないわね。」 「毎日乱交か…悪くないかもな。」 「そうね…ふふふ。」 |