47ページ:ワーム
|
隊長蜂に案内してもらい、森の中でも砂漠側に近い所へ進む事が出来た。
DL
砂漠に近いからか、森の中だと言うのに汗が滲む程度に暑いである… まぁ、夜になれば今の暑さが嘘の様に冷え込むだろうし、寝苦しいなんてことにはならんだろう。 「案内感謝するである、先ほどの侘びもかねてスライムゼリーをやるである。」 「礼には及ばないさ……気持ちよかったし…」 「ん?何か言ったであるか?」 「な、何でもない!…っと、言い忘れたが。」 顔を真っ赤にして怒り出したかと思うと、急に真剣な表情になって話し出す…見ていて飽きないであるな。 「この辺りに地を這いずった様な後があった、凶暴な魔物がいるかもしれないから注意した方がいい。」 「ふむ…」 「後、何本か木が倒されてたな。」 「ふむ……なんだって?」 地を這ううえに、木を薙ぎ倒すほどの力を持った魔物…該当するものが一つしかないな… 我輩の予想した魔物なら別に警戒しなくても良いか…盾はまだあるであるし。 「そ、それと…」 「ん?何であるか?」 「次近くを通ることがあったら…その…」 「うむ、必ず遊びに行くである。」 「そうか!待ってるからな!来なかったら一晩中搾り取ってやるからな!」 ……普通なら危機感を感じるべきなのだろうが…琴音で慣れてしまったであるからな… 「戻ってきたか、ちょっと手伝ってくれ。」 「うむ、ここを支えていればいいか?」 「あぁ…よっし、これでいいな。」 戻って来た時には殆ど作業が終わっており、少ししか手伝えなかったである。 …もう少しゆっくりした方が良かったであるな… 「なぁ…お前さんは何を考えてるんだ?」 「ん?どういうことであるか?」 「魔物の事に随分と詳しいみたいだし、魔物を庇う様な事も言ってたし…あんたはいったい…」 「………」 何を考えているか…か。 そう問われたら言うことは一つだけであるな。 「我輩は我輩のやりたいように行動しているだけである、こうしている今も面白いであるからな。」 「人間が襲われているのにか?」 「…思い出してみてくれ、あの二人はどうして襲われた?」 「どうしてって………あっ…」 「一人は誤った知識で自らの首を絞め、一人は周りの静止を振り切り勝手に行動してそこを狙われた…言ってしまえば自業自得である。」 「だからといって…」 「それに、襲われたからといって死ぬことはないのだぞ?」 我輩の言葉を聴いた瞬間、男は驚愕したかのような表情を浮かべた。 まぁ普通の反応であるな…もう少し大袈裟に驚いてくれてもいいと思うのだが… 「今頃は、彼女達の住居の中でイチャイチャしているのだろう…」 「…何でそこまで詳しいんだ?」 「我輩は魔物の生態や行動を観察してきたからな…時には接触を試みたり、それが原因で襲われそうになったり…」 「……そうか…」 「まぁ、流石に危険な場合は手助けしよう…我輩でもどうにも出来ないことはあるがな…」 「たとえばどんなことだ?」 「ふむ…説明出来る範囲だと…」 「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 我輩が話している途中に、森中に響き渡るかのような悲鳴が聞こえてきた。 声色からして…子供か? 「この声は…薪木を集めに行った子か!?」 「行った方が良さそうであるな。」 声がした方へ走っていく男に続いて我輩も歩き出す。 さて…今度はどんな魔物に会えるのか…楽しみである。 「た、助けてっ!」 「くっ…どうすればいい…どうすれば助けられる!?」 男より少し送れて現場に着くと、同行者の中で最年少の少年が一匹の魔物に捕らえられているのが見えた。 長い蛇の様な胴を持ち、体と胴が頑丈そうな鱗に覆われている…が、腹部と上半身の前面には鱗が付いていないようだ… 先ほど隊長蜂から聞いたことも含めて推測すると…うわぁ…高確率でワームであるな… 外見的には人間の少女位か…とはいえ、力の強さや胸囲の戦闘力は外見からは図り知れん…慎重に行く必要がありそうだ。 「っ!手を貸してくれ!こいつを追い払うぞ!」 「…残念だが…我輩の言ったどうにも出来ない事が起こっているである…」 「ど、どういうことだ?」 「流石の我輩でもワームには勝てんである…ちょっと状況を変えるくらいなら出来るが。」 「何だっていい!あいつを助けてやってくれ!」 「助けるという点では手遅れであるがな…」 まぁいい、ちょっとだけ吹き込んでくるであるか… 「すまん、ちょっと話を聞いてもらっていいであるか?」 「この子は渡さないよ?私のものにしちゃったもんね!」 少年を抱きしめ、敵意剥き出しで警戒しているな。 胸に埋もれている少年が怯えているというのも教えた方がいいだろうか。 「別に取り返そうというわけではないである、人の恋路を邪魔するとケンタウロスに蹴られるであろうしな。」 「じゃあ何?」 「その少年を見てみろ、心底怯えきっているであるぞ。」 「えっ?…本当だ、何で怯えてるの?」 「…原因は兎も角として、安心させてやらんと立つ物も立たなくなるぞ。」 「そうなの!?ご、ごめんね?」 少々慌てた様に少年に謝り、あやすように少年の頭を撫でる。 少年の方は、先ほどとは違う彼女の雰囲気に戸惑っているのか、多少落ち着きはしたが警戒はしているようであるな… いくら凶暴だといっても、気に入った男性への配慮は出来る様だ…やはり魔物は奥が深いである。 「それと、少しばかり助言をしたいので彼を放してやってくれないだろうか?」 「むっ!そう言って取り上げようとしてもだめだよ!」 「助けたら面白くないであるからその点は心配しなくていいであるぞ。」 「あんたってやつは…」 「むー…絶対に返してね!」 非常に不満そうだが、思った以上に早く少年を解放してくれたであるな。 少年はこちらに走ってきて助けを求めているが、我輩はワームとのどつき合いなんて面倒だからしたくないである。 「な、何で助けてくれないんですか?」 「まともな人間の手に負えるレベルの相手じゃないである…戦って勝つなら勇者クラスの実力が必要かも知れんな。」 「そんな…」 「そう落ち込むな、彼女を手懐ける方法はちゃんとあるである。」 「えっ!?ど、どうすればいいんですか!?」 物凄い勢いで食いついてきたな…当然といえば当然か。 「要は交わりの際の主導権を握ってしまえばいいのである。」 「む、無理ですよ!…その…僕初めてですし…」 「ところがどっこい、彼女達には弱点があるのだ。」 「え?」 「あの柔らかそうな腹部…貴殿が押し付けられた柔らかおっぱいのある露出した上半身…後は分かるな?」 「あそこが弱点なんですか?」 「うむ…ただし、ただ触るだけではダメだ…出来るだけ優しく、相手を気持ち良くさせたいという気持ちを籠めて触れるのだ!」 もう一人の男が冷めた目でこちらを見ているが気にしない。 「相手を褒めるというのも有効だ、気に入ってる相手に優しく頭を撫でられながら可愛い等と言われたらさらに熱が入るであろう。」 「うぅ…分かりました、今のを参考にがんばって見ます…」 「うむ、武運を祈らせてもらおう。」 不安げだが、先ほどまでの様な怯えた様子は無くなったであるな。 少年を連れてワームの所へ戻ろうとしたが、突然男に腕をつかまれた。 「おい!本当に大丈夫なのか!?」 「そこはこの少年の腕次第である、我輩は教える事が出来る範囲で助言をしただけであるからな。」 「…大丈夫です…怖いけど、きっと何とかして見せます…」 「…もう一つ助言だ、恐怖を感じても怖気づくな。」 我輩の言葉を聴き、少年の表情が硬くなる… 無理もないだろう…相手はワーム、存在そのものが普通の人にとっては恐怖であるからな… …だからこそだ。 「対処法を知ったとしても、気持ちで負けていてはどうにも出来なくなる。」 「………」 「決して諦めるな…自分の感覚を信じ、最後までやり通せ。」 「……わかりました、やってみます…」 足が震え、今にも泣き出しそうな表情なのは変わらないが、覚悟を決めたようであるな… …そして、何を血迷ったかワームのいた方へと全力で走り出した。 「…大丈夫なのかあれ…」 「さっきの所まで戻ってじっくり観察すれば良いだろう。」 あれから一時間……結局敵わずにワームに犯される少年とか奇跡的に力を示せて従順になったワームだとかの姿はそこにはない… …あるのは、いつの間にか仲良くなって、情熱的な抱擁を見せ付けてくるバカップル一組だけであった 「…いつの間にこんな事に…」 「俺が聞きたいよ…」 我輩の想像していた結末と違う…これはこれで面白いが… 我輩はワームを手懐ける方法を教えたはずなのだが… 「あの…ありがとうございます!」 「むっ?何故礼を言われるのだ?」 「貴方がいろいろ教えてくれたから…彼女の可愛さが良く分かったんです。」 …えぇー… 「ねぇ…私のお家に行こ?」 「うん。」 「っと、その前に薪木を用意してくれんか?」 「…止めないんだな。」 「じゃあ聞くが、貴殿は道中ずっとイチャイチャしている所を見せられたいであるか?」 「嫌だな。」 「薪木を用意するの?わかった!」 そう言うと、倒れていた木に思いっきり手を叩きつけた。 叩きつけられた所が綺麗に圧し折れ、そうしていく間に一本の木が大量の薪木へと変わってしまった。 …よかった、戦わなくて本当に良かった… 「うわぁ…」 「これでいい?」 「う、うむ…」 「それじゃあ私たちはもう行くね?行きましょあなた♪」 「うん…大好きだよ。」 「えへへ…私も大好き♪」 最後に目の前で情熱的な口付けを見せつけ、少年とワームは森の奥へと消えていった… なんというか…疲れたである… 「……帰るか。」 「……うむ。」 〜今日の観察記録〜 種族:ワーム ラミアの様な長い胴と硬い鱗を持つドラゴンの下位種族にあたる魔物であるな。 ドラゴンの下位種族とは言ったが、単純な力ではドラゴンに勝るとも劣らない力を持っているである。 凶暴性も高く、上記の事も踏まえて上位種族のドラゴン異常に危険な存在として恐れられているようだ… 「っと…そろそろ寝るであるかな。」 「あら?もう寝てしまうの?」 「む…貴殿か、どうしたのだ?」 「寒いから一緒に寝てもいいかしら?」 「女性が何処の馬の骨とも分からない男と同じテントで寝るなんて感心しませんな。」 「えっ?同じ寝袋でって意味なのだけど?」 「……妖狐&稲荷監修御狐様モフモフ尻尾枕を貸すから勘弁してくれ。」 「えっ…何これ…すごい…」 「それで我慢してくれである…じゃあおやすみだ。」 「おやすみなさい………もう少ししたらこっそり潜り込んでやりましょうか。」 「…知らぬは本人ばかり…ね…もう貴方は馬の骨ではないわよ、輝さん?」 |