45ページ:リリム(アレクシア)・正体不明
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「あら?これって輝ちゃんの…」
「……暇潰しには丁度良いかしら。」 と言う訳で、今日は輝ちゃんの代わりに私が書いていくわ。 …さっきから輝ちゃんが何かを探しているみたいだけど、知らない振りをしておきましょうか…面白そうだし。 「むぅ…確かにここに置いてあったはずなのだが…アレクシアは見なかったであるか?」 「何を探してるの?」 「我輩の観察日誌である…まぁいいか、今日くらい書けなくても死にはしまい。」 そう言って、テントの外へと行ってしまった。 …よし…こっそりと輝ちゃんの後を追って行動を観察し、それをネタにあんな事やこんな事を…ふふ、うふふふふ。 そうと決まったらさっそく行動開始よ! 森の中を歩く事三時間…内、迷った時間二時間…やっと輝ちゃんを見つけたわ… 木の陰に隠れて様子を伺っていると、奥の方から一人の女の子が現れて輝ちゃんと話し始めた。 うーん……ちょっと聞き取り辛いわね…もう少し近づいて… 「今度、一緒に……に行きませんか?」 「我輩はかまわんぞ、……には我輩も興味がある。」 ……えっ? 「それが終わったら…その………しませんか?」 「それはいいな、我輩も……は大好きであるし、何の問題も無い…と言えればいいのだがなぁ…」 「気にしなくて良いですよ…こういう事はやった者勝ちですから。」 「…そうだな、ではまた明日だ。」 「ふふふ、楽しみにお待ちしていますね。」 ………これはあれよね、輝ちゃんが何処の馬の骨ともわからないような子に寝取られそうになってるということよね… …大変だわ!早く輝ちゃんの目を覚まさせてあげないと! 「輝ちゃん!」 「ん?どうしたd…んむっ!?」 テントの中にいた輝ちゃんに歩み寄り、強引に唇を奪う。 迷わずに戻って来れてたっていう事に驚いたけど、今はそんなことを考えている場合じゃないわ! そのまま服を脱がせようとしたとき、一瞬の隙を衝かれて引き剥がされてしまった。 「い、いきなり何をするであるか!?」 「輝ちゃんが寝取られないようにするのよ!」 「寝取られる?何のことを言ってるので…」 「誤魔化そうとしても無駄よ、貴方が森の中で女の子と話しているのを見たんだから!」 「森の中……あぁ、そのことか。」 「何を話してるかも聞いたから言い逃れは出来ないわよ?」 「そうか……またしばらく弥生に頭が上がらなくなりそうであるな…」 「……え?」 何で弥生ちゃんの名前が…え? 「しかし、宴会をするのだから先立つ物は必要であるし…仕方が無いであるな。」 「え…宴会…?」 「うむ…遺跡の探索に誘われてな、無事に終わったら宴会でもしようと。」 「………」 つまり……全部私の勘違い? ……… 「アレクシア…まさか我輩が他の女性に靡くかもと思っていたのであるか?」 「……う…」 「う?」 「うわぁぁぁぁぁん!輝ちゃんの馬鹿ぁぁぁぁぁ!」 「ちょっ!?我輩が悪かったから落ち着いて…こら!服を剥ぐな…アッー!?」 恥ずかしさと安心感が混ざってわけのわからない気持ちがこみ上げてくる。 その気持ちに突き動かされ、私は輝ちゃんに襲い掛かった… この光景を見られているとも知らずに… 「と言う事があったのですよ。」 「あっはっはっはっ!」 「…笑わないでちょうだい…結構気にしてるんだから…」 まさかリシェルちゃんが見てるなんて…普段なら気づくのだけれど、状況が状況だったし… 「普段は自由気侭なアレクシアも、輝が係わると乙女らしくなるのじゃな…くっふふ。」 「うぐっ…り、リシェルちゃんも何で話しちゃうのよ!」 「昨日、私のおやつ勝手に食べちゃったじゃないですか。」 「何にせよ自業自得ということじゃ、観念して笑われておれ。」 「うぅ…後で覚えてなさいよ…」 たぶん、今の私は耳まで真っ赤になっているでしょうね… こんなに恥をかいたのはいつ以来だったかしら…記憶にないわ… 何て事を考えていると、琴音ちゃんがテントから出てきて私の隣に座った。 「輝の様子はどうじゃ?」 「少し腰を痛めた程度らしいので大丈夫だと思います…今は弥生様が看病していますよ。」 「後で謝っておかないといけないかしら…ちょっとやりすぎた気がするし…」 「それが良いじゃろうな、酒の一本でも送れば直ぐに機嫌は直るじゃろう。」 お酒ねぇ…どんなのがいいのかしら? 次の町に着いたら探してみようかしら。 「そう言えば、琴音は何故こんなことになってるか知っているかの?」 「さぁ…私にはさっぱり…」 「それじゃあ私が寸劇も交えて説明を…」 「やめてぇぇぇぇ!」 …普段は素直で良い娘なのに…もしかして隠れSなのかしら… あぁ…夜風が染みるわぁ… 今日一日だけで一生分の恥をかいた気がするわ… …あんな行動をとるなんて…私らしくなかったわね… 何であんなことしちゃったのかしら…輝ちゃんを盗られるかも知れないと思ったら体が勝手に… ……… 「こちらにいらしたのですか。」 「ん?琴音ちゃんか…」 「暗い表情でテントを出て行くところを見かけて心配になって…」 「気遣ってくれたの?お姉さん嬉しいわ。」 背後から琴音ちゃんがやってきて私の隣に座った。 私に向かって微笑みかけた後、彼女は空に浮かぶ月へと視線を向ける。 「…月が綺麗ね。」 「えっ!?」 「え?何かおかしい事言ったかしら?」 「いえ……月が綺麗と言う事は…その…そういう意味でしょうか?」 ん?月が綺麗の意味? 普通に月が綺麗だっていう意味じゃないのかしら…それとも別の意味が? 「もしかして…ただ単に月が綺麗に見えるだけで言ってます?」 「そうだけど…何か不味かったかしら?」 「その…月が綺麗というのはですね…」 「そんな…月が綺麗にそんな意味が…」 「大陸の人は知らなくても無理はないと思いますよ。」 「なるほど…この前輝ちゃんが言ったのはそういう意味だったのね…」 そうとも知らずに…もったいない事しちゃったわね… …うん、輝ちゃんを襲いましょうか。 お昼に満足するまでしちゃったけど、意味が分かったらまたしたくなってきちゃったわ… 「琴音ちゃんありがとうね、おかげで元気が出てきたわ。」 「礼には及びませんよ、いつものアレクシア様に戻ってくださったならよかったです。」 「今度お礼しないとね…それじゃあ行ってくるわ。」 それだけ言ってこの場を後にする。 今夜は夜通し……フフフ… 「…輝様が私に言ってくださるのはいつになるでしょうか…琴音はいつまでも待っていますから……」 「うわぁぁぁん!琴音はぁぁぁん!」 「弥生様?どうかしたのですか?」 「アレクシアはんに輝はんを取られてもうたぁぁぁ!」 「あらら…」 「うぅ…最近うちの扱い酷いと思わん?もっと輝はんといちゃいちゃしたいのに…」 「泣きたいのでしたら胸をお貸ししますよ?」 「え?琴音はんに胸なんt」 「訂正します、泣かせて差し上げますのでちょっとこちらへ…」 三回戦目に突入したところで、外から悲鳴の様なものが聞こえたけど…気のせいよね? 〜今日の観察記録〜 種族:不明 人間に姿を変えれる魔物ね、かなり強い力を持っているわ。 どんな魔物かは分かっているけど…輝ちゃんのためにも書かないでおくわ。 強いて特徴を挙げるなら……とっても希少な魔物ね。 私の旦那様:鉄輝 たっぷりと私の匂いを染み込ませている筈なのだけど、他の魔物によく狙われるのよね…何でかしら? それはさておき…魔物並みの魔力を持っているのだけど、制御出来てないみたいで一度の魔法で全部使い切っちゃうみたいね。 最下位の魔法でも恐ろしい位に強化される代わりに、少しの間立っていられなくなるようね。 「……や……やっと寝れ…」 「輝はん!今度こそうちの抱き枕になってもらうで!」 「…残念、我輩の睡眠はここで終わってしまった!」 仲魔:アレクシア やや心配性なのか、彼女に行き先を告げずに外出をするとこっそりと付いてきてしまうことがあるようだ。 その時に躓いて転んだりどこかに引っ掛けたりするようで、戻って来た時には傷だらけ…なんてこともあるな… 心配してくれるのはありがたいが、アレクシアが怪我をしているのを見るのはちょっと辛いである…
12/11/22 23:12 up
DL
クロビネガよ!私は帰って来た! 更新がだいぶ遅れてしまい申し訳ありません… 暫く書かなかったせいで、どう書いていいのか思い出せずに時間がかかってしまいました… 次回更新は以前通りに書けるようになれば木曜日になると思われます…それまでしばしお待ちを… 白い黒猫 |