第1章
ウーアシュタットに住む者のほとんどは時間に正確である。遥か上空、大きく影を落とす短針が6時街の真ん中を刺した頃に大人たちは目を覚まし始める。
一晩中愛し合っていた夫婦は心地よい気だるさに身を任せお互いを抱き合いながら目を閉じる頃だ。
今日もまた、6時街の真上を短針が覆う。それと同時に、小さな、しかしウーアシュタットのすべての場所に響く心地よい鐘の音。なるのが一度きりなのは今がまだ日が昇って間もないからか。
その音を聞いて、エドガー・ウォンクは本に落としていた視線をあげて、窓の外を眺める。
「……ん、そろそろ」
少しズレたモノクルの位置を直し、纏っていた青いローブに手をかけ、脱ぎ捨てる。
部屋の中とはいえ季節は冬、ディーツ地方の冬はとても冷えて、魔法の保温がなされたこの部屋でも、肌着一枚になると肌寒さがチクチクと刺さる。
「……これかな」
クローゼットのハンガーにローブを吊るし、代わりに中から取り出したのは柔らかなオレンジと白のストライプ模様のシャツだ。
行儀悪く頭からそれをかぶる。ボタンは胸元が二つほど外れていたが、すぐに一つ留めた。
履いていたズボンも厚手のものに取り替える。
「行ってきます」
一人暮らしではあるが、言っておく習慣をなくしたくないエドガーは、部屋の明かりをすべて消して、まだ仄暗い街の中へと歩みだした。
街中を歩くものがいつもより少ないのは、休日だからだろう。
人も魔物も勤勉なものが多いウーアシュタットでは、他の親魔物国家、あるいは魔界と比べると、仕事に……『理由はなんであれば』熱意を燃やすものが多い。
広い領土を誇るウーアシュタットの城壁の内側で、あるいは衛兵として、あるいは医療に携わるものとして、あるいは娼館に勤めるものとして、そしてあるいは、魔法を学ぶものとして……
そんなこの街ウーアシュタットでは、休日の早朝と夕方から深夜にかけて、途端に人通りが少なくなる。理由は、『一週間しっかり働いたんだから、休日はイチャイチャしたい!』というものだ、つまり今頃多くの人々は、暖かい家の中でしっぽりとヤっているのである。
そんなお相手のいないエドガーは薄く雪の積もった7時街のメインストリートを、8時街寄りに少し外れた道をずんずんと進んでいく。
さほど歩かないうちにまだ『閉店』と札がかけられた店の前で足の動きを止め、その店の裏に回り込んだ。裏口の戸は、空いている。
「おはようございまーす」
少しの躊躇もなく戸を開く。返事はない。
「……はぁ、またか」
どうやら、『今日も』エドガーが朝食を準備しなければならないらしい、バイトの内容にそんなものが含まれていただろうか。
抱えたカバンからバンダナを取り出し頭に巻きつけ、簡素な前掛けを腰に巻く。
上の方からギシッギシッときしむ音がする。
「えーと……」
魔界産のキャベツをよく洗い、適当な大きさにちぎる。それを皿に盛り、その上に色とりどりのカットした野菜を盛り付ける。仕上げは店の特製ドレッシングだ。
あんっあんっと、甲高い声が聞こえてきた。
「ったく……」
次に、卵とベーコン。熱したフライパンに油を引いて、卵をさっと投入、まだ固まっていない白身にベーコンを添えて、塩胡椒。
エドとしては両面焼き(ターンオーバー)のほうが身が引き締まって好きなのだが、この店の夫婦はトロッとした黄身を味わえると、サニーサイドアップが好みなのだ。
作業を三回繰り返し、完成したベーコンエッグを三枚の皿にフライパンから滑らせて載せる。
<あぁ〜っ!いいよ、いいよあんたぁ!
「……」
<おう!出すぞ!奥に出してやるからな!
「……はぁぁぁぁ」
深くため息をついて、今度は食パンを取り出す。均等な長さで切り落とし、バターを塗ってフライパンへ。両面を香ばしく焼き上げて、バタートーストが出来上がる。数枚のそれを、大皿の上へ。
以上の三品を店のテーブルに置いて、ホルスタウロスのミルクをコップに注ぎ、準備は万端だ。
そしてちょうど、奥の階段からドスドスと大きな足音が響いてくる。
「やぁすまんすまんエド!ちょっと昨日から夢中になりすぎてた!」
そして姿を現したのは、ギンギンのイチモツを隠そうともしない大男だ、腕にはもう何の液かもわからないものでベットベトになったサラマンダーを抱えている。
「はぁ……店長、隠して、見たくもないですよ、それとさっさと風呂に入ってきてください」
「沸かしてくれたのか?」
「沸いてませんけど、まさかその有様で食事を取る気ですか、あまつさえ料理を作る気ですか」
「相変わらず冷たいやつだな、ほれ、アマンダ、起きろー、風呂入るぞー」
店長と呼ばれた男はゆさゆさと抱えた女を揺すりながら風呂場のほうへ歩いていった、女のほうはうーとかおーとか返事とは呼べない返事を返している。
「まったく……」
せっかくの温かい食事もまた冷めてしまいそうだ。再び溜息を吐いたエドは店内の暖炉に向けて手をかざした。
何秒か経ってから、パチパチと弾ける音が聞こえてくる。暖炉に積まれた木材の奥から小さな炎と煙が立ち上り始めていた。
「もっと手早くつけられればいいんだけどな」
しばらくして、風呂から上がってくると、店長の奥さん、アマンダもすっかり元気を取り戻し、三人ですっかり冷めた朝食を食べ始めた。
「いやぁ、悪いねエド。まーたちょっと盛りすぎたよ」
「勘弁してくださいよ。この街でこんなに時間にルーズなのは、お二人だけ……って、もういい飽きました」
「しかしようエド、世間様はみんなそろってお休みでヤリまくってんだ、あやかったってバチは当たらねえぜ」
「それも聞き飽きました。んでもって口に入れたまま喋んないでください」
店長とアマンダの呑気な態度に辟易しながら、トーストのかけらを口に押し込んで、ミルクで流し込む。七分目ほどまで埋まった腹を撫でて、立ち上がった。
「さあ店長。あと30分で開店の時間です。急いで支度を済ませますよ」
「え? アーーーー!もうこんな時間じゃねーーか!なんで早く言わねえんだエド!」
「お二人がお風呂から上がった時にはすでに間に合いそうになかったので」
ドタドタと慌ただしく支度をし始めた店長を尻目に、エドは先ほどまで使っていた皿を流し台に運ぶ。そしてその皿の上でサッと手をかざすとキラキラと輝く粉のようなものが洗い物に降り注ぎ始めた。
「便利だねぇ、洗い物魔法」
「でしょう」
粉のかかった皿を濡らしたスポンジで擦ると、柔らかなクリーム色の泡がで始めた。
エドの編み出した『洗い物』魔法。水属性の泡立つ魔力を粉のように物体にまぶし、お皿から鉄のサビまで綺麗に拭い落とせる魔法だ。
同学年の野郎どもには笑われたが、担当の教師たちからはまさしく正しい魔法だと随分と高い評価点をつけられた。
「洗剤が不要っていうのは本当にいいもんだ。さて、アタシも準備始めるかな」
先ほどまでののほほんとした雰囲気は何処へやら、白い清潔な前掛けと三角巾を装備したアマンダはすっかり調理場の戦士とかした。隣を見れば、店長も鬼気迫る表情で朝の仕込みを始めている。
(毎朝、これで結局間に合ってるんだから不思議だよなぁ)
洗い物を済ませたらもうエドにキッチンでできることはない。手頃な台拭きに同じく洗い物魔法の粉をまぶし、近くのテーブルから順番に拭き始め……
「お邪魔するよ」
突如、鍵をしてあったはずの正面入り口が開かれ、三人の『聞きなれた』声が響く。店長夫婦は仕込みに忙しいので、エドはまたも溜息を吐いてそちらの方を向いた。
「キリアさん、店はまだ開いてな」
そこまで言葉を紡ぎ、続きは発せられない
「……キリアさん、ちょっと」
「あぁ、久々のエドだ。23日11時間34分23秒51も街を離れるんじゃあなかった。あぁ、エド、どうして君はこうも抱き心地がいいんだい?」
一瞬にしてエドに接近したキリア・ヴィンドロムは、さながら100年間離れ離れだった恋人を抱きしめるように深く深くエドを抱擁した。エドよりも頭一つほど背の高いキリアはうなじにキスをするかのように顔を寄せ、すんすんと浅い呼吸を繰り返している。
「……朝、お風呂に入ってきたのかい」
「キリアさん、テーブル拭かなきゃいけないんで離してください」
「おっとすまない」
言われた途端にパッとエドから体を離すキリア。なんでもないというようにすました表情のエドだが、少しだけ、耳が赤い。
「うん、照れ隠ししてるエドもたまらなく愛おしいな、また抱きしめたくなってきたよ」
「うっさいです」
「もう少しボクにデレデレしてくれてもいいんじゃないか?世間で流行りのツンデレだとしても、ツンツンしてばっかりではさすがのボクも心が棘だらけだよ」
「ヴィンドロムさん、まだ店はやってないので帰ってください」
「待ってくれ、苗字呼びは勘弁してくれ、本当にすまなかった」
「……ったく」
不機嫌そうに鼻をフンッと鳴らし、やや雑にテーブルを拭くエド。
若干しょんぼりしたキリアはカウンターの向こうでまさに神速で仕込みを済ませてゆく店長の方に顔を向ける。
「店長、ボクのなにが悪いんだろう、男性の意見を聞きたい」
「キリアちゃんは非のうちどころのない美人だよ!叶わないのはアマンダくらいさ!」
「お、アタシがキリアちゃんよりカワイイって?あんた、今日は晩酌一本追加だ」
「よっしゃあ!」
俄然やる気を入れる店長。そんな夫婦をなまらうらやましそうな目で見つめるキリア。
チラッとエドに視線を向けても相変わらず少しばかり不機嫌である。
「そういやぁ、キリアちゃん今回はどこに行ってたんだい?」
「え?あぁ……」
ヴルストをフライパンに放り込みながら店長が訪ねてきた。ひと段落ついたのか、先ほどよりも手の動きは緩やかだ。
「今回は北西の山脈に行きました。大昔の御伽噺のドラゴンと勇者が戦った地らしくて」
「まーた遠いところに行ったねぇ」
「いい経験でした。戦いの傷跡らしきものもありましたよ、僕の体がすっぽり収まりそうな穴がそこらじゅうに」
「そりゃあすごいなぁ!」
放浪癖のあるキリアは度々学業をさぼり、自分が興味を持った場所へ旅へ出ることがある。今回などまだ短い方で、半年かけて別の大陸へ、あまつさえ反魔物領にまで足を運ぶことさえあった。それでも彼女が無事なのは、人と見分けのつきにくい『ダンピール』であること、類稀なる魔法の才能と実力を持つからだ。
もっとも、サボりすぎたせいで二年ほど留年をくらっているが。母親はカンカンである。
「っと、ほいお待ちどうさん」
「え?」
と、店長が皿を差し出してきた。見てみれば、食べがいのありそうな太く長い焼きヴルストが4本ほど。それに合わせてアマンダがラガーを注いだジョッキを差し出してきた。
「いいのかい?」
「そんかわり、今回の冒険の話をもっと聞かせてくれ。」
「……お言葉に甘えて」
「エド!テーブルはいいからキリアちゃんにサラダ作ってやりなー!」
「……わかりました」
しぶしぶといった感じでエドがキッチンの方に入った。店長には逆らえない。
「ふふ、旅から帰ってすぐに好物にありつけるとは。やはりここはいい店だよ」
「これからも贔屓にしておくれ。じゃあまあ、喉を潤したら話の続きを」
「そうだね……」
ヴルストを一齧り、ラガーを喉に通すと、キリアはバックポーチの中から一つ、小さな石を取り出した。
「これは?」
「そこは随分と魔力の濃い場所でね、学校の文句封じのために少しばかり探索をしてたら見つけたんだ。これはね……」
「キリアさん、ドレッシングは何に……!」
話に首を突っ込みなにをかけるか聞こうとしたところでエドが停止した。キリアの手にある透き通るような青色の石に視線が集中している。
「そ、それは……?」
「あぁ、手ぶらで帰っては学校に言い訳できないからね、ちょっとばかし探索したら偶然見つけたんだ。いいマナジェムだろう」
「す、すごい……!」
エドの視線は驚愕に見開かれた。キリアの手のひらに乗っているその魔石(ジェム)は、魔物の多くなったこの時代において極めて珍しい、混じり気の一切ない純粋な星の力だけで構成されている。
「これ一つで、工房3つ立ち上げられるだけの価値がありますよ!」
「こいつを見せれば、今回のボクの旅も魔導の探求として認められるだろう」
エドの視線は今はマナジェムに釘付けだ。少し面白く思ったキリアは手を右に左に揺らしてみる。エドの視線も振り子のように、右に左に揺れている。
「そんなに欲しいならあげようか?」
「っ……い……いえ……それは、だめ、です……それは、キリアさんの見つけた、もの、ですから、ね……そ、それに、学校に寄贈するの、でしょう……」
歯が砕けそうなほど歯噛みして欲しいという欲求をエドは飲み干した。なけなしのプライドを振り絞って耐えたのである。
「そうか……じゃあ、学校に提出する前に分析するかい?君の自宅にも分析器具はあるだろうし、今日のバイトが終わったらエドの家に行こう」
「いいんですか!是非に!ぜひにお願いします!」
「うん、なら早くサラダを作ってくれると嬉しいな。ドレッシングはいいよ、温玉と胡椒だけが最高だからね」
「わかりました!」
先ほどまでのむすっとした態度は何処へやら、やる気120%に膨れ上がったエドは作りかけのサラダに再び向き合う。
それを微笑ましいと思いつつも若干複雑な様子で見るキリア。
「……なぁ、エド」
「はい?」
「仮に、仮にだけどもね、あとでボクはマナジェムをもって君の家に行くことになったわけだけども、もしボクがジェムを持っていなかったとしたら君はボクを家に招いてくれるかい?」
「はぁ、いやそりゃ、コーヒーくらいは出しますよ、変なことしたら怒りますけど」
若干不安そうに聞いてくるキリアに、何を言っているのか、といった感じでエドは答える。するとキリアは少し顔を伏せた。
「……ふふ、そうか、それくらいはしてくれるんだねエド。だったらこれから毎日ボクにコーヒーを淹れてくれ。」
「調子に乗らないでください、はい、サラダですよ」
つれないねぇ、と苦笑しながらサラダの乗った皿をを受け取る。パン粉に粉チーズ、ベーコンが入り混じり、半熟の卵が中央に座する、エドの特製シーザーサラダ。キリアはこれがたまらなく好きだ。
「それじゃあ、改めていただきます」
旅の保存食しか口にしていなかったキリアは、自分の好物が3つも並んだカウンターに向き合い、フォークを持った手を伸ばした。
そんなこんなでお昼時。エドのバイトはいつも朝から昼までのラッシュを終えたところで終了する。
このウーアシュタッドに住むものは時間に正確な規則正しい生活を好むが、食事の時間だけは他のどの街と比べても随分とズレている。
朝の7時から昼にかけていたるところの食事処、や家の煙突から煙が立ち上り、それを過ぎると途端にそれは無くなる。せいぜい深夜の間食程度だろうか。
「あ、キリアさん、少し待ってください」
バイトを終えたエドは、一旦店から出たあと、バイトの終わる時間を見計らって迎えに来たキリアと自宅を目指していた。
途中の市場でエドは一つの店で立ち止まる。
「どうしたんだい?」
「ノートを切らしてましてね。買っていこうと思って。それと……」
ゴブリン商隊の特価品コーナーからノートを3冊引き抜いて、さらに側にあるおすすめコーナーから黄金色の瓶を引き抜いた。
「それは……リリーミード?」
「見かけたらつい買っちゃうんですよね」
リリラウネの蜜を用いた蜜酒、リリーミードは魔界でもちょっと値の張るものである。惜しみもせず代金を支払い、待っていたキリアに行きましょうかと声をかけた。
「なかなか財布の硬い君が奮発したね、甘いもの好きだったかい?」
「いえ、僕の保護者の人がこれ大好きだったんですよ、よくよく飲ませてもらってましたらはまっちゃって」
当時は舐める程度でしたけど、というエドの顔は、キリアの知らない柔らかい笑みである。故郷を懐かしむその表情は、少しばかりキリアの胸を締め付ける。
「……過去に遡る魔法でも作り上げようか、昔のエドを一目見てみたい」
「そんなの魔王城に即座に呼び出されて賞状もらうレベルの大発明でしょう」
割と本気でつぶやくキリアに、呆れた様子でエドはツッこんだ。
そして、7時街の少し外れにあるエドの借りている小さな家にたどり着く。サイズは小屋といっても差し支えないが、作りはしっかりとしており、魔物の建築技術が伺える。
「ここか、いいところを借りてるじゃないか」
「キリアさんのご実家と比べるとチンケですがね」
「嫌味のつもりはかけらもなかったんだけどもね……」
軽口を交えながら、カバンから鍵を取り出し、鍵穴へと差し込み、鍵を開け……
「……」
「どうした?」
「鍵、空いてる」
「なんだって?」
回す方向を間違えているということもない。解除の方向に鍵を回しても、解除した時の感覚がない。
「空き巣か?」
「……鍵の、かけ忘れかもしれません」
「楽観視するなエド、君はそんなミスをするタイプじゃないだろう」
「……」
沈黙。
「……エド、中に誰かいるとした、すでにボクたちの気配を察しているはず。そして、この街のマジックキーを解除するっていうのは並じゃあない」
キリアの言う通り、この街の家々は、保護の魔法をかけられている。ピッキングはおろか並みの解錠魔法でもたやすくは開けられない。
「エド、このままのんびりガードを呼んでたら逃げられるかもしれない。ボクたちで一気に突入して拘束してやるぞ。心配はいらない、ボクはドラゴンだってボコせるんだからね」
不敵にキリアが笑い、それを受けて、エドも頷く。
「補助は任せてください」
「オッケー、じゃあいくよ」
ゆっくりと、キリアがドアノブに手をかけて、一息つき、一気に開いて中へ飛び込んだ!
「わっ……あ、おかえり、エドくん……と……だれ?」
「……」
「……」
中にいたのはメイドであった。武装もせず、身を隠すこともせず、片付いた部屋の中で少々ばかり散らかっているテーブルの上をせっせと整理している。
「……ティタ?」
その姿を見て、エドが、ぽつりと呟いた。
「……ん?キキーモラ?ん?エドくん?ん?ティタ?なんだ?いったい……どういう……ことだ……?」
キリアはすこし さくらんしている!
かくして、ウーアシュタッドにはありふれた恋の三角関係は、7時街の一角で幕を開けた。
一晩中愛し合っていた夫婦は心地よい気だるさに身を任せお互いを抱き合いながら目を閉じる頃だ。
今日もまた、6時街の真上を短針が覆う。それと同時に、小さな、しかしウーアシュタットのすべての場所に響く心地よい鐘の音。なるのが一度きりなのは今がまだ日が昇って間もないからか。
その音を聞いて、エドガー・ウォンクは本に落としていた視線をあげて、窓の外を眺める。
「……ん、そろそろ」
少しズレたモノクルの位置を直し、纏っていた青いローブに手をかけ、脱ぎ捨てる。
部屋の中とはいえ季節は冬、ディーツ地方の冬はとても冷えて、魔法の保温がなされたこの部屋でも、肌着一枚になると肌寒さがチクチクと刺さる。
「……これかな」
クローゼットのハンガーにローブを吊るし、代わりに中から取り出したのは柔らかなオレンジと白のストライプ模様のシャツだ。
行儀悪く頭からそれをかぶる。ボタンは胸元が二つほど外れていたが、すぐに一つ留めた。
履いていたズボンも厚手のものに取り替える。
「行ってきます」
一人暮らしではあるが、言っておく習慣をなくしたくないエドガーは、部屋の明かりをすべて消して、まだ仄暗い街の中へと歩みだした。
街中を歩くものがいつもより少ないのは、休日だからだろう。
人も魔物も勤勉なものが多いウーアシュタットでは、他の親魔物国家、あるいは魔界と比べると、仕事に……『理由はなんであれば』熱意を燃やすものが多い。
広い領土を誇るウーアシュタットの城壁の内側で、あるいは衛兵として、あるいは医療に携わるものとして、あるいは娼館に勤めるものとして、そしてあるいは、魔法を学ぶものとして……
そんなこの街ウーアシュタットでは、休日の早朝と夕方から深夜にかけて、途端に人通りが少なくなる。理由は、『一週間しっかり働いたんだから、休日はイチャイチャしたい!』というものだ、つまり今頃多くの人々は、暖かい家の中でしっぽりとヤっているのである。
そんなお相手のいないエドガーは薄く雪の積もった7時街のメインストリートを、8時街寄りに少し外れた道をずんずんと進んでいく。
さほど歩かないうちにまだ『閉店』と札がかけられた店の前で足の動きを止め、その店の裏に回り込んだ。裏口の戸は、空いている。
「おはようございまーす」
少しの躊躇もなく戸を開く。返事はない。
「……はぁ、またか」
どうやら、『今日も』エドガーが朝食を準備しなければならないらしい、バイトの内容にそんなものが含まれていただろうか。
抱えたカバンからバンダナを取り出し頭に巻きつけ、簡素な前掛けを腰に巻く。
上の方からギシッギシッときしむ音がする。
「えーと……」
魔界産のキャベツをよく洗い、適当な大きさにちぎる。それを皿に盛り、その上に色とりどりのカットした野菜を盛り付ける。仕上げは店の特製ドレッシングだ。
あんっあんっと、甲高い声が聞こえてきた。
「ったく……」
次に、卵とベーコン。熱したフライパンに油を引いて、卵をさっと投入、まだ固まっていない白身にベーコンを添えて、塩胡椒。
エドとしては両面焼き(ターンオーバー)のほうが身が引き締まって好きなのだが、この店の夫婦はトロッとした黄身を味わえると、サニーサイドアップが好みなのだ。
作業を三回繰り返し、完成したベーコンエッグを三枚の皿にフライパンから滑らせて載せる。
<あぁ〜っ!いいよ、いいよあんたぁ!
「……」
<おう!出すぞ!奥に出してやるからな!
「……はぁぁぁぁ」
深くため息をついて、今度は食パンを取り出す。均等な長さで切り落とし、バターを塗ってフライパンへ。両面を香ばしく焼き上げて、バタートーストが出来上がる。数枚のそれを、大皿の上へ。
以上の三品を店のテーブルに置いて、ホルスタウロスのミルクをコップに注ぎ、準備は万端だ。
そしてちょうど、奥の階段からドスドスと大きな足音が響いてくる。
「やぁすまんすまんエド!ちょっと昨日から夢中になりすぎてた!」
そして姿を現したのは、ギンギンのイチモツを隠そうともしない大男だ、腕にはもう何の液かもわからないものでベットベトになったサラマンダーを抱えている。
「はぁ……店長、隠して、見たくもないですよ、それとさっさと風呂に入ってきてください」
「沸かしてくれたのか?」
「沸いてませんけど、まさかその有様で食事を取る気ですか、あまつさえ料理を作る気ですか」
「相変わらず冷たいやつだな、ほれ、アマンダ、起きろー、風呂入るぞー」
店長と呼ばれた男はゆさゆさと抱えた女を揺すりながら風呂場のほうへ歩いていった、女のほうはうーとかおーとか返事とは呼べない返事を返している。
「まったく……」
せっかくの温かい食事もまた冷めてしまいそうだ。再び溜息を吐いたエドは店内の暖炉に向けて手をかざした。
何秒か経ってから、パチパチと弾ける音が聞こえてくる。暖炉に積まれた木材の奥から小さな炎と煙が立ち上り始めていた。
「もっと手早くつけられればいいんだけどな」
しばらくして、風呂から上がってくると、店長の奥さん、アマンダもすっかり元気を取り戻し、三人ですっかり冷めた朝食を食べ始めた。
「いやぁ、悪いねエド。まーたちょっと盛りすぎたよ」
「勘弁してくださいよ。この街でこんなに時間にルーズなのは、お二人だけ……って、もういい飽きました」
「しかしようエド、世間様はみんなそろってお休みでヤリまくってんだ、あやかったってバチは当たらねえぜ」
「それも聞き飽きました。んでもって口に入れたまま喋んないでください」
店長とアマンダの呑気な態度に辟易しながら、トーストのかけらを口に押し込んで、ミルクで流し込む。七分目ほどまで埋まった腹を撫でて、立ち上がった。
「さあ店長。あと30分で開店の時間です。急いで支度を済ませますよ」
「え? アーーーー!もうこんな時間じゃねーーか!なんで早く言わねえんだエド!」
「お二人がお風呂から上がった時にはすでに間に合いそうになかったので」
ドタドタと慌ただしく支度をし始めた店長を尻目に、エドは先ほどまで使っていた皿を流し台に運ぶ。そしてその皿の上でサッと手をかざすとキラキラと輝く粉のようなものが洗い物に降り注ぎ始めた。
「便利だねぇ、洗い物魔法」
「でしょう」
粉のかかった皿を濡らしたスポンジで擦ると、柔らかなクリーム色の泡がで始めた。
エドの編み出した『洗い物』魔法。水属性の泡立つ魔力を粉のように物体にまぶし、お皿から鉄のサビまで綺麗に拭い落とせる魔法だ。
同学年の野郎どもには笑われたが、担当の教師たちからはまさしく正しい魔法だと随分と高い評価点をつけられた。
「洗剤が不要っていうのは本当にいいもんだ。さて、アタシも準備始めるかな」
先ほどまでののほほんとした雰囲気は何処へやら、白い清潔な前掛けと三角巾を装備したアマンダはすっかり調理場の戦士とかした。隣を見れば、店長も鬼気迫る表情で朝の仕込みを始めている。
(毎朝、これで結局間に合ってるんだから不思議だよなぁ)
洗い物を済ませたらもうエドにキッチンでできることはない。手頃な台拭きに同じく洗い物魔法の粉をまぶし、近くのテーブルから順番に拭き始め……
「お邪魔するよ」
突如、鍵をしてあったはずの正面入り口が開かれ、三人の『聞きなれた』声が響く。店長夫婦は仕込みに忙しいので、エドはまたも溜息を吐いてそちらの方を向いた。
「キリアさん、店はまだ開いてな」
そこまで言葉を紡ぎ、続きは発せられない
「……キリアさん、ちょっと」
「あぁ、久々のエドだ。23日11時間34分23秒51も街を離れるんじゃあなかった。あぁ、エド、どうして君はこうも抱き心地がいいんだい?」
一瞬にしてエドに接近したキリア・ヴィンドロムは、さながら100年間離れ離れだった恋人を抱きしめるように深く深くエドを抱擁した。エドよりも頭一つほど背の高いキリアはうなじにキスをするかのように顔を寄せ、すんすんと浅い呼吸を繰り返している。
「……朝、お風呂に入ってきたのかい」
「キリアさん、テーブル拭かなきゃいけないんで離してください」
「おっとすまない」
言われた途端にパッとエドから体を離すキリア。なんでもないというようにすました表情のエドだが、少しだけ、耳が赤い。
「うん、照れ隠ししてるエドもたまらなく愛おしいな、また抱きしめたくなってきたよ」
「うっさいです」
「もう少しボクにデレデレしてくれてもいいんじゃないか?世間で流行りのツンデレだとしても、ツンツンしてばっかりではさすがのボクも心が棘だらけだよ」
「ヴィンドロムさん、まだ店はやってないので帰ってください」
「待ってくれ、苗字呼びは勘弁してくれ、本当にすまなかった」
「……ったく」
不機嫌そうに鼻をフンッと鳴らし、やや雑にテーブルを拭くエド。
若干しょんぼりしたキリアはカウンターの向こうでまさに神速で仕込みを済ませてゆく店長の方に顔を向ける。
「店長、ボクのなにが悪いんだろう、男性の意見を聞きたい」
「キリアちゃんは非のうちどころのない美人だよ!叶わないのはアマンダくらいさ!」
「お、アタシがキリアちゃんよりカワイイって?あんた、今日は晩酌一本追加だ」
「よっしゃあ!」
俄然やる気を入れる店長。そんな夫婦をなまらうらやましそうな目で見つめるキリア。
チラッとエドに視線を向けても相変わらず少しばかり不機嫌である。
「そういやぁ、キリアちゃん今回はどこに行ってたんだい?」
「え?あぁ……」
ヴルストをフライパンに放り込みながら店長が訪ねてきた。ひと段落ついたのか、先ほどよりも手の動きは緩やかだ。
「今回は北西の山脈に行きました。大昔の御伽噺のドラゴンと勇者が戦った地らしくて」
「まーた遠いところに行ったねぇ」
「いい経験でした。戦いの傷跡らしきものもありましたよ、僕の体がすっぽり収まりそうな穴がそこらじゅうに」
「そりゃあすごいなぁ!」
放浪癖のあるキリアは度々学業をさぼり、自分が興味を持った場所へ旅へ出ることがある。今回などまだ短い方で、半年かけて別の大陸へ、あまつさえ反魔物領にまで足を運ぶことさえあった。それでも彼女が無事なのは、人と見分けのつきにくい『ダンピール』であること、類稀なる魔法の才能と実力を持つからだ。
もっとも、サボりすぎたせいで二年ほど留年をくらっているが。母親はカンカンである。
「っと、ほいお待ちどうさん」
「え?」
と、店長が皿を差し出してきた。見てみれば、食べがいのありそうな太く長い焼きヴルストが4本ほど。それに合わせてアマンダがラガーを注いだジョッキを差し出してきた。
「いいのかい?」
「そんかわり、今回の冒険の話をもっと聞かせてくれ。」
「……お言葉に甘えて」
「エド!テーブルはいいからキリアちゃんにサラダ作ってやりなー!」
「……わかりました」
しぶしぶといった感じでエドがキッチンの方に入った。店長には逆らえない。
「ふふ、旅から帰ってすぐに好物にありつけるとは。やはりここはいい店だよ」
「これからも贔屓にしておくれ。じゃあまあ、喉を潤したら話の続きを」
「そうだね……」
ヴルストを一齧り、ラガーを喉に通すと、キリアはバックポーチの中から一つ、小さな石を取り出した。
「これは?」
「そこは随分と魔力の濃い場所でね、学校の文句封じのために少しばかり探索をしてたら見つけたんだ。これはね……」
「キリアさん、ドレッシングは何に……!」
話に首を突っ込みなにをかけるか聞こうとしたところでエドが停止した。キリアの手にある透き通るような青色の石に視線が集中している。
「そ、それは……?」
「あぁ、手ぶらで帰っては学校に言い訳できないからね、ちょっとばかし探索したら偶然見つけたんだ。いいマナジェムだろう」
「す、すごい……!」
エドの視線は驚愕に見開かれた。キリアの手のひらに乗っているその魔石(ジェム)は、魔物の多くなったこの時代において極めて珍しい、混じり気の一切ない純粋な星の力だけで構成されている。
「これ一つで、工房3つ立ち上げられるだけの価値がありますよ!」
「こいつを見せれば、今回のボクの旅も魔導の探求として認められるだろう」
エドの視線は今はマナジェムに釘付けだ。少し面白く思ったキリアは手を右に左に揺らしてみる。エドの視線も振り子のように、右に左に揺れている。
「そんなに欲しいならあげようか?」
「っ……い……いえ……それは、だめ、です……それは、キリアさんの見つけた、もの、ですから、ね……そ、それに、学校に寄贈するの、でしょう……」
歯が砕けそうなほど歯噛みして欲しいという欲求をエドは飲み干した。なけなしのプライドを振り絞って耐えたのである。
「そうか……じゃあ、学校に提出する前に分析するかい?君の自宅にも分析器具はあるだろうし、今日のバイトが終わったらエドの家に行こう」
「いいんですか!是非に!ぜひにお願いします!」
「うん、なら早くサラダを作ってくれると嬉しいな。ドレッシングはいいよ、温玉と胡椒だけが最高だからね」
「わかりました!」
先ほどまでのむすっとした態度は何処へやら、やる気120%に膨れ上がったエドは作りかけのサラダに再び向き合う。
それを微笑ましいと思いつつも若干複雑な様子で見るキリア。
「……なぁ、エド」
「はい?」
「仮に、仮にだけどもね、あとでボクはマナジェムをもって君の家に行くことになったわけだけども、もしボクがジェムを持っていなかったとしたら君はボクを家に招いてくれるかい?」
「はぁ、いやそりゃ、コーヒーくらいは出しますよ、変なことしたら怒りますけど」
若干不安そうに聞いてくるキリアに、何を言っているのか、といった感じでエドは答える。するとキリアは少し顔を伏せた。
「……ふふ、そうか、それくらいはしてくれるんだねエド。だったらこれから毎日ボクにコーヒーを淹れてくれ。」
「調子に乗らないでください、はい、サラダですよ」
つれないねぇ、と苦笑しながらサラダの乗った皿をを受け取る。パン粉に粉チーズ、ベーコンが入り混じり、半熟の卵が中央に座する、エドの特製シーザーサラダ。キリアはこれがたまらなく好きだ。
「それじゃあ、改めていただきます」
旅の保存食しか口にしていなかったキリアは、自分の好物が3つも並んだカウンターに向き合い、フォークを持った手を伸ばした。
そんなこんなでお昼時。エドのバイトはいつも朝から昼までのラッシュを終えたところで終了する。
このウーアシュタッドに住むものは時間に正確な規則正しい生活を好むが、食事の時間だけは他のどの街と比べても随分とズレている。
朝の7時から昼にかけていたるところの食事処、や家の煙突から煙が立ち上り、それを過ぎると途端にそれは無くなる。せいぜい深夜の間食程度だろうか。
「あ、キリアさん、少し待ってください」
バイトを終えたエドは、一旦店から出たあと、バイトの終わる時間を見計らって迎えに来たキリアと自宅を目指していた。
途中の市場でエドは一つの店で立ち止まる。
「どうしたんだい?」
「ノートを切らしてましてね。買っていこうと思って。それと……」
ゴブリン商隊の特価品コーナーからノートを3冊引き抜いて、さらに側にあるおすすめコーナーから黄金色の瓶を引き抜いた。
「それは……リリーミード?」
「見かけたらつい買っちゃうんですよね」
リリラウネの蜜を用いた蜜酒、リリーミードは魔界でもちょっと値の張るものである。惜しみもせず代金を支払い、待っていたキリアに行きましょうかと声をかけた。
「なかなか財布の硬い君が奮発したね、甘いもの好きだったかい?」
「いえ、僕の保護者の人がこれ大好きだったんですよ、よくよく飲ませてもらってましたらはまっちゃって」
当時は舐める程度でしたけど、というエドの顔は、キリアの知らない柔らかい笑みである。故郷を懐かしむその表情は、少しばかりキリアの胸を締め付ける。
「……過去に遡る魔法でも作り上げようか、昔のエドを一目見てみたい」
「そんなの魔王城に即座に呼び出されて賞状もらうレベルの大発明でしょう」
割と本気でつぶやくキリアに、呆れた様子でエドはツッこんだ。
そして、7時街の少し外れにあるエドの借りている小さな家にたどり着く。サイズは小屋といっても差し支えないが、作りはしっかりとしており、魔物の建築技術が伺える。
「ここか、いいところを借りてるじゃないか」
「キリアさんのご実家と比べるとチンケですがね」
「嫌味のつもりはかけらもなかったんだけどもね……」
軽口を交えながら、カバンから鍵を取り出し、鍵穴へと差し込み、鍵を開け……
「……」
「どうした?」
「鍵、空いてる」
「なんだって?」
回す方向を間違えているということもない。解除の方向に鍵を回しても、解除した時の感覚がない。
「空き巣か?」
「……鍵の、かけ忘れかもしれません」
「楽観視するなエド、君はそんなミスをするタイプじゃないだろう」
「……」
沈黙。
「……エド、中に誰かいるとした、すでにボクたちの気配を察しているはず。そして、この街のマジックキーを解除するっていうのは並じゃあない」
キリアの言う通り、この街の家々は、保護の魔法をかけられている。ピッキングはおろか並みの解錠魔法でもたやすくは開けられない。
「エド、このままのんびりガードを呼んでたら逃げられるかもしれない。ボクたちで一気に突入して拘束してやるぞ。心配はいらない、ボクはドラゴンだってボコせるんだからね」
不敵にキリアが笑い、それを受けて、エドも頷く。
「補助は任せてください」
「オッケー、じゃあいくよ」
ゆっくりと、キリアがドアノブに手をかけて、一息つき、一気に開いて中へ飛び込んだ!
「わっ……あ、おかえり、エドくん……と……だれ?」
「……」
「……」
中にいたのはメイドであった。武装もせず、身を隠すこともせず、片付いた部屋の中で少々ばかり散らかっているテーブルの上をせっせと整理している。
「……ティタ?」
その姿を見て、エドが、ぽつりと呟いた。
「……ん?キキーモラ?ん?エドくん?ん?ティタ?なんだ?いったい……どういう……ことだ……?」
キリアはすこし さくらんしている!
かくして、ウーアシュタッドにはありふれた恋の三角関係は、7時街の一角で幕を開けた。
15/08/21 22:06更新 / $べー
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