ピクシーの隠し宿 |
【朝】
木々の合間から降り注ぐ木漏れ日によって *キラリ*と輝かなければ見つけられなかっただろう、幸運な事に落し物を見付けた。 落ちていたそれは首に巻く為であろう鎖を一本通したペンダント…いや、開閉式だからロケット… けれどもロケットというには少々大きく手鏡ほどの大きさがある 手鏡ほどの大きさの物を首に垂らすだろうか…? もしかしたらこの鎖は落とさない為の物で、懐中時計なのでは、もしそうなら金になりそうだ。 とはいえ開けてみない事には何も確証が得られない。 早る気持ちを抑えつつ開閉のつまみを外して中を覗いてみると… 風でせせらく草原の大地の上に ちょこんと立つ赤レンガの屋根の家が見えた。 これは…『ピクシーの隠し宿』だ。 噂で聞いた事がある 気紛れにピクシーが落とすと言われるアイテムの噂の一つ、それが『ピクシーの隠し宿』だ。 手鏡のようでありながらそれを開くと中は妖精の国に繋がっており ピクシーはこの中を通って妖精の国へと行き来すると言われている。 いわば簡単なワープアイテムだ。 けれどもこの『妖精の国』と呼ばれるモノが肝で 未だに正体は分かっておらず 一つだけなのか、それとも遍在するのか 魔物領の一角に存在するとも空を隔てた向こう側にあるとも別の次元にあるとも はたまた我等の頭上を隔てた すぐそこに妖精の国があるのではとも言われる正体不明の物だ けど、そこには確実にあるのだ。 妖精の国が。 そんなあやふやな次元を利用したのがこの『ピクシーの隠し宿』であり、 名前の通りピクシーが作ったとされている…確証はないようだが。 その他に小さい妖精族以外にも使えるようにか この隠し宿には…ある仕掛けがある。 開閉つまみのすぐ横、間違って押してしまいそうなほどの目立つボタン 危うくこれを蓋を開けたまま押してしまうと蓋からシュッと霧吹きが出て来る。 これを吸ってしまうと一瞬でお陀仏…ではなく、一瞬で妖精サイズになれるというのだ。 これにより『ピクシーの隠し宿』に入れるほどの大きさになり、入れると。そんな仕掛けらしい。 けれども招き入れるだけで逃がす事は考えていないのか、元の大きさに戻れるそんな仕掛けは無い。 ただ簡単な解呪で元の大きさに戻れるので 教会の聖水や解呪の呪文さえ憶えていればこれほど有用なアイテムは無いであろう。 なんせこの隠し宿さえ持っていれば野宿の心配はない。 寒空の下、獣避けを焚き、モンスターに怯えながら固い土の上で寝ずとも、 隠し宿の中に入ってあらかじめ作っておいた別荘で寝ればいいのだ。 温かいご飯に、くつろげる部屋、柔らかいベッドに抱かれて眠る。 とても魅力的なアイテムだ、遠征には持って来いの物だろう。 ただ… 肝心な事はこれが『中身入り』かどうかって事だ。 ピクシーの隠し宿というからにはやはりピクシーやフェアリーも使っているわけで油断して入ったら そこの住人の妖精に襲われてそのまま戻れず妖精の国行き…もとい妖精の夫にされる事もあるとか もちろん知った上で入るのも良い、そうした場合…嫁さんが貰えてしかも家も手に入るので一石二鳥だ けれどもやはり魔物娘だから逆レイプは必須、尻に敷かれる暮らしも覚悟せねばなるまいらしい また中身入りであっても好事家達に売れる、というより中身入りの方が価値があるとかなんとか。 一国レベルの街が築き上げられてる隠し宿はもはや隠し宿ではないが、 売るとなるとオークションにかけられそれこそ5年は遊んで暮らせる金になるのだそうだ なんにせよ中身入りかどうかは確認せねば、気を付けるに越した事は無いし中身入りであった場合その対応策も考えられる。 街までまだ時間かかるしこの辺りは魔物も出ないし、ゆっくり見て行こう と…いってもやる事といっても限られていて…ただ観察する、それだけである。 まずは隠し宿自体を見てみよう、隠し宿の開閉のつまみを開くとドーム型、 はたまた半球型コンパスのような丸みを帯びたレンズ状の内部に赤いレンガの屋根の家が見える。 このレンズ状の表面に指を着けると、つぷっ…と指の先端を中心に水の様な波紋が広がり そのまま内部にグイグイ入れられる、そんな仕組みだ。 感触としては…なんだ?スライムの内部?のぬちゅぬちゅとした感触がするが、 指を引き抜いてみたところ指に粘液がベトベトとくっ付いてはおらず逆に森林浴を抜けて来たかのような爽やかさがある。 そんなわけで隠し宿自体は…特に問題なさそうだ。 とすれば次にこの妖精の国の内部だが… 赤レンガ屋根の家を中心に玄関、玄関の前に白レンガの道、その白レンガの道の左右に小さな花壇がちょこんとあり そこから先はポストを一本隔てて、ただ一本続く道路が草原を掻き分けて伸びるばかりでごく一般的な、のどかな一軒家と見受けられる 中身入りでなければ今すぐにでも荷物を携え引越して自分の家にしたいくらいだ… が、ふと冷静になって考えてみるとここまで花壇や庭が手入れされてて綺麗ならば当然その手入れをする人手も居るわけで それこそがこの隠し宿の中身、いやこの家の住人なのでは…とは考えてみるがしかしこの隠し宿を手放すのは惜しい、 せめてもうちょっと家の中を見れるように… 確か隠し宿にはまだ機能があり仕込み虫眼鏡によるズームとドーム型レンズの台の回転ができると聞いた事がある、 けれどもやり方は知らないので街に着いてから人伝てに聞くしかあるまい。 妙な仕掛けを動かしてあらぬ危険を被るは欲せぬ所である。 けれどもなんだかなー…すぐにでも中に入ってみたいところなんだがなー…と、 恨めしげに家を見てるとコロッと玄関が開き住人との解逅がふいに訪れた。 白いワンピース姿に青い髪、麦わら帽子に銀色のジョウロを携えてそのまま花壇の方へと向かって行く…かと、思えたが何かを察したのか上を見上げると… ヒラヒラとこちらに手を振っていた。 【昼】 「そうそう、それが虫眼鏡のツマミで… これが台を回転させる…っと、合ってた。この歯車を回転させるとそれに応じて台も回転するらしい。 ま、動かせば分かるさ。ちなみに声は届かないから身振り手振りでコミュニケーションできるそうな、出て来たら試してみな」 街に着いてから早速冒険者ギルドに行き 『ピクシーの隠し宿』の事の顛末を知り合いに話してみた もっともただ中身入りだっただけで特にこれと言った話も無いのだが… ただそんな中身の無い話でも聞いてくれるのが知り合いの良い所だった。 この知り合い、リザードマンの種族であるリザード娘は冒険者ギルドの中でも経験が深い。 元々自分より強い男探しと修行の為に各地を転々と旅しているリザードマンだが、 ここ居る彼女曰く、旅を続ける中で冒険に目覚めてしまったのだとか。 というわけで冒険に関わる道具には造詣が深くギルドの中では歩く知恵袋みたいな存在だ。 「ただ、これだけは気を付けるように。 この目立つボタン、ピクシーの鱗粉が飛び出すボタン。 これを押すと…ま、どうなるか分かるよな。 ここは私の他にも魔物娘多いし、 もしこんな所で小さくなったら…凄いプレイされるかもしれない」 「凄いプレイ…」 「そ、凄いプレイ。ほら、受付のエルフの子とかあそこの昼間から酒飲んでる牛の子とか…凄いんじゃねえかな…」 そうかぁ?と尋ねるとそうそうと帰って来る。 曰く魔物の本質を逸脱し人間社会に適応している魔物ほど 性欲が抑圧されて特殊性癖を拗らせている場合が多いのだそうだ。 「しっかし、あんた運が良いねぇ…『ピクシーの隠し宿』とかそうそう見ないよ?」 「へぇ…ツイてたなぁ」 「いやいやそんな軽く言って貰っちゃ困る。 これはオークションだとか…サバト級のアイテムなんだって。正直私が欲しいくらいだよ」 「えっサバトはよく分からないけどオークションに出るほどの価値…なのか?」 「観賞用にも使われるからね、中身入りは中身入りで価値が出るのさ」 「それは知ってるけど…」 「いいや甘いね、あんたなんて今までこれをパカッと開いて 真上からピクシーの見て赤面してただけだろ?でもね、観賞用の主な用途は…」 用途は…? 息つく間も持たせずリザード娘はスッと顔を寄せて…耳打ちを入れて来る。「覗き、なのさ」 「えっ…?」 「着替え姿も見れるのだとか」 「そんな覗きだなんてそんな…破廉恥な…いや犯罪的な…」 「いやそうでもない、ピクシー側からしたらそもそも夫を探すショウルームみたいなもんだから男が見て、 欲情したら都合が良いのさ」 「まさか」 「いや本当だ、その為…覗きの為の虫眼鏡と回転台だからな。それ」 あっ…そういえばそうだな。 単なるワープアイテムというならこんな見る為の道具を取り付けないはずだ。 あぁ…確かに…確かに…そうだな…教えて貰ったズームと回転を駆使し 家の外観を見てみるとなるほど覗きやすい構造をしてる 見る仕組みもそうだが見られる仕組みも整っているってことか 「おっとノリ気になったか?いや、ヤる気か?」 「ははっ、冗談。このピクシー、可愛いとは思うけど妖精相手にヤろうなんて趣味は…お?」 レンズでグルグル動かしていたのに気が付いたのか住人が姿を現した。 中に居たのが外に出て来て、にこやかと手と腕をフリフリ動かして挨拶をしている、可愛い。 「ほら、可愛いと思うのだけど」 「どれどれ…アンタの覗き相手は…ってあれ?」 リザード娘が見るやいなや 笑顔だった顔がフッと一瞬で消え失せ、そして落胆した顔をして家に篭ってしまった。 「ははっ怖い顔だったのかな」 確か…自分も昔会った時、堅い顔だったから勘違いしちゃったなとケラケラ笑ってみせる。 「怒るぞ…ってうーん…これはもしや… これってもしかして彼女にでも見えたんじゃないかな」 「あんたが?」 「そうそう、で…彼女居ると分かったから諦めたと…」 「へー…そうなのかな?だとすると誤解しちゃったのか、後で弁解しないと」 確か魔物娘は誰かの所有物になってる男には奥手だったな…と今更ながらに思い出す。寝取りも好きな種族も居るが。 「というかこれは…早めに売った方がいいとは思う、 あんたがこの子に会いに行かないのなら。 未来の旦那求めてここの隠し宿に入っているとすると… やっぱり出会いのチャンスを早くあげるべきなんじゃないかな?」 おや、突然真面目な口調に。そして言う事ももっともだ。 「うーん…そう…だな…早めにどうにかしないと…」 「だろ?言わばこのピクシーは生殺しの状態、可愛いと思うのは良いけど… やっぱりその子も精が欲しいわけだ、せっかく拾ったんだ売るか使うかしなきゃ」 そうだよなぁ…見られるのが好きとはいえ、仕様上とはいえ相手は魔物娘。 売るか…使、いや会いに行くか………明日、明日までには決めよう。 「まぁ、やり方は教えたからね。後はどうするかはあんた次第って事でさ」 じゃあな、と荷物を引っ提げ出て行くリザード娘。 後に残ったのはジョッキと残りのぶどうパン、そして『ピクシーの隠れ家』だけだ。 ペンダントを今一度手に持つとやはり軽い… が今までの話を聞くとなんだか重く感じてしまう。 彼女はどんな顔をしているのだろうか… 家に篭った青い住人、ペンダントを弄れば家の中まで見れるのだが… とても今はそんな気になれなかった 【夜】 リザード娘も泊まっているというギルド運営宿屋内の2階角部屋。 冒険者ギルドから出たその後、教会から聖水を買って来て現在に至る。 テーブルの上には荷物に聖水に、『ピクシーの隠し宿』が置いてある。 さて…どうしたもんか。 この隠し宿、確かに売れば金になる、わけだが… 正直この隠し宿はわりと気に入っている節がある。 のどかな風景、可愛らしい家、可愛い妖精、いやピクシーか。 けれども魔物娘と結ばれるとなると およそ人間の常識では測りきれない生活を送る事にもなる、主に性方面で。 けれどもこんなチャンスは… いやしかし、売ってしまって単に宝くじが当たったと考えれば…だがしかし… うーん…うーん…と頭を捻りながらどう対処するか考える。 こんなに頭を使ったのはいつ以来か…と夜も更けて来た頃… よし、もう一度家を確認してそれから決めようと 現状課題の逃避ながらも現場百回の精神で癒しを求めようとまた隠し宿を開いたのだ。 パカッと開くと朝や昼とは違って変化があった、妙に薄暗い… こちらと時系が同じなのか妖精の国にも夜があるようだ。 そりゃそうだな、いつまでも明るかったら寝るに寝れないし。 という事は…寝室に…クルクルと仕掛けを回すと…居た。 ピクシーの家の仄かに明かりが点いた部屋、ベッドの上で布団にくるまって横になっている。 明かりで微かに照らされた寝顔はやはり可愛く思わずほだされてしまうくらいだ。 うーん…やっぱり可愛いな…やはりここは話し合って友達からでも…と、おや? 寝顔と思っていたのだが、口元を見ると妙に呼吸が安定していない…というより呼吸が荒い。 まさか、風邪を引いたのか?と更にズームをすると いや…これは…全身が小刻みに揺れてて…オナニーをしていた… えっ…いや…これは、本当に… 本当にオナニーをしている。ベッドを上下前後に揺れるほど動かし、 掛布団がコソコソと振動し脈打つように布団のシワが浮いたり沈んだりしている。 これは…これは、覗きだ…これ以上見たら。 けれども覗きと分かっていながらも見続ける事しかできないほどに その行為は背徳的で業が深い。 気付くと下半身のモノが勃起しこの覗きという如何わしい行為で 性欲を掻き立てられてる事を自覚し始めてしまっている。 どんどん激しく、上下に、オナニーしているピクシー もはや我慢できないと声にならない潜めた筈の詰まった息が 次第に暖かみを増し自分もオナニーをするんだと急かしてくる。 そんな時だ、ちらっ、ちらっとピクシーが確かにこちらを視認したのは。 「!?」 始めは気付いてしまったのか!?と思ったのだが、これは違う。 これは…初めからこちらを知っててオナニーし始めた目であり、 自分を情欲で煽ってそれを確認している目でもある。 そして自分がこうしてオナニーをし始めようかという段階に来た事を確認し、 勝ちを確信した目でもある。 そんな目でクイックイッと手招きされたら最早逆らう事が出来ない。 ああっ…ちくしょう…そうだよな…覗かれる事が分かってての自慰の誘惑か… 確かに…もう、自分は我慢できない所まで来てしまった。 呼吸は乱れ、股間は膨れ、胸から愛くるしいほどの何かが湧いて出て来る。 もう解放されたい…あの子が欲しいと…体が求めて苦し 「あっ…」 と間違えてしまったのか故意なのか気付けば『ピクシーの隠し宿』の仕掛け 身体を縮めるピクシーの鱗粉をプシュッと噴き出してしまった。 効果時間の猶予も与えずどんどん小さくなる体にだんだん大きくなる『ピクシーの隠し宿』 服は一緒に縮むようだが、『ピクシーの隠し宿』は縮まないらしく 持てない程に大きくなる前に床に聖水と一緒に置いて足先をつぷっと入れてみると ヒンヤリとあちらの世界の夜の冷気が伝わってきた。 そんな準備の最中にもどんどん世界が巨大に、体は小さく、隠し宿は巨大になって行く。 縮小している間はぐわんぐわんと世界が揺れて酔いそうで… だから…自分は…この… ぐにぐにと肉質のあるスライム状の妖精の国への入り口に身を委ねる事にした。 右の足先が入り、太ももが入る、そのまま腰の部分までぐにゅぐにゅと傾き呑まれそうになるが… それより前に自分が縮小し左の足まで入ってしまう。 左右の足が入り腰が入れば後はもう楽なもんだ、腹、胸、両腕と入り… ついには頭のてっぺんまで入るとなんだか重力から解放されたかのように宙に浮きだした。 これが…妖精の世界。 頭が入って完全に外界から別離すると感じたのはさっき足で感じたような夜の冷気。 重力を感じないが確かに徐々にでも下降している先に見えるのは、 外界で見た赤いレンガ屋根の家。ピクシーの住む場所である。 徐々に…徐々に…と落ちてる中でなんだかワクワクして来た。 正直今までレンズ越しに見ていた世界だったからか 妙に現実感が湧かずこんな家に住んで、ピクシーと暮らしてみたい。 そんな漠然とした息も吹きかければ飛んで行くような軽い願望だったわけだが… 今、現に、この眼前にすると否応にも現実感が増してくる。 夜の冷気、草原のさざめく音、ゴツゴツとしたレンガの家、 そのどれもがリアルにこの身体に響いて来るかのようだ。 徐々に…徐々に…近付いて来るピクシーの家、 ここまで来ると家の様子も見えて来る頃合いだ。 と、ふとさっきまで仄かに明かりが灯してあった部屋の バルコニーから見える影があった、ピクシーだ。 それはやはり朝や昼に見たにこやかに手を振るピクシーの顔であったが ちょっと好色そうな顔で手を振っている、というよりこれは歓迎の挨拶か。 そっとバルコニーから離れ部屋から明かりが消えると 今度は廊下…中央階段側の電気が点いた、どうやら出迎えてくれるらしい。 徐々に…徐々にだが…近付いている… 待ちきれない… この徐々に落ちるスピードがピクシーの親切設計であるのは分かるが… もうちょっと早く… 早く… けれども家がこんなに大きく見えるのに いつまでも地面に落ちる気配が無い… まだだろうか… いや…これは… どこかで経験したような…これは! 家が近付き、屋根が近付き、ドアにも近付く…が それでも空虚感があってどうにも近付いた気がしない 周囲を見渡すと草原が生い茂り、花壇の花が凛々と輝いている。 けれどもそれを、その丈を越しても地面に足が着かない。 やっと地に足が着いたのはついに自分の状態を把握し絶望した後だった。 巨大な家、巨大な植物、巨大な地面の白レンガ…自分は小人になっていた。 「ふふっ、もしかして私と同じサイズでこの世界に居れると思った?」 ギギィー…と巨大な玄関が開き…ピクシーが家から出て来る。 服は…自慰の中だっただろうか、それともいつもそんな恰好なのか ネグリジェを羽織い下着は何も着けておらず つつーっと愛液を垂らして玄関の前に立ちはだかっていた。 はっ…ははっ…何か言いたいが何も言えない… そんな圧倒的な力の差が体の大きさの差となって表れている。 「私は…何もしてないよ?あなたがあっちの世界で小さくなって、 そのまま、小さいまま来ちゃったの。ん?私が妖精サイズだと思ったのかな?」 クスクスとまるで責める事が性分だとばかりにせせら笑うピクシー。 あぁ…そういえばそんな魔物だったな、悪戯好きの縮小好き、そんな魔物だったはずだ。 妖精サイズが本来のサイズだが、人間サイズになる事もあるとか。 それは主に人間を騙す時…今がそれか。 「さぁさぁ夜風に当たっちゃ性欲も冷めちゃうよ。あなたも途中なんでしょ? 私がイかせて温めてあげるからねー☆それとも私の胎内(なか)であたためよっかな?」 ヒョイっと掴まれ手の平に載せられるとヨシヨシと頭を撫でられる。 と、空を今一度見てみると燦然と星が輝いていた。 ははっ…綺麗だな…この中に入らなきゃ見れなかった景色だよなこれ… 今はそれだけ…今手に入った物を興じ謳歌する事にしよう。 息も冷え込む妖精の国の夜。 暗闇に煌めく星々の合間に、 隠し宿からの出口を見付けられることが出来なかった。 【翌朝】 「あぁ…呑まれちまったか」 『ピクシーの隠し宿』はどうする事にしたのだろうかと 聞こうと立ち寄った部屋に彼は居らずに荷物と聖水と隠し宿が残されていた。 まさか…と思ったがやはりその通りで虫眼鏡と台座を動かしズームにして見たところ 朝までずっとしていたのかベッドの上で愛液に塗れた彼が見付かった。 気絶はしてるが…死んでは…いないだろう、うん。 まぁそっちで仲良くやっていれば問題無しだ、見なかったことにもできる。 けれど…まさか、小さくなるなんてねぇ…ベッドの上で横たわる彼を見てると…こう… そんな妄想が花開きそうな瞬間、バサッと彼が布団に呑まれてしまった。 アレでは起きた時布団の中で遭難してしまうだろう…? ん?誰かが掛布団を敷いたのか?かと、ズームアウトすると… ピクシーがこちらを見てクイックイッと手招きしていた。 「ははっ…まぁ今度機会があったら行くよ」 彼は…どうやら縮小したまま入ったことでピクシーに捕らわれたようだが… まぁ私が行くにしても聖水を持って行けば元のサイズに戻れるだろう。 それにしてもこの『ピクシーの隠し宿』、どうしようか…私が持っていてもいいのかな? ちょうど携帯住居が欲しかったとこだ、間借りするくらいなら邪魔にもならないだろう。 外を見ると清々しい青空が広がっている、この青空はこの中の世界と同じ空なのだろうか? 問いかけてはみるが…返答は無い。 開かれたままのピンク色のカーテンを ピクシーはシャッと引いて閉じた。 |
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