ノコギリソウの輪の外で
“ とある研究者のノート ”
結局、共同軍事会議の場においても、私たちの研究成果はくだらない与太話として扱われ、無視される事となった。
【バフォネット】は、確かに存在していたというのに。
魔術的処理を施した水晶玉による、文章を用いた相互意思伝達システム。
互いの距離や魔力の量などに影響される事なく、各種の戦術・研究・学習的議論から夕飯のメニューに至るまでを自由に伝え合い、話し合うことが出来る画期的なシステム。
あれと同じ物を我々人類が作ろうとしたならば……飛躍的な技術の革新と、途方もない時間が必要になるだろう。
しかし魔物達は、彼女達は、それを成し遂げた上で完璧に使いこなしていたのだ。
その高度な力が、自由闊達な議論の形が、私を混乱させる。
私は子供の頃から、『魔物 = 禍々しく、汚らわしく、恐ろしき悪の存在』と教えられて来た。
そしてその教えを信じ、何ら疑問を抱くこと無く生きて来た。
我が国の軍部から、私が所属する国立アカデミーへ研究依頼がやって来た、ほんの数ヶ月前までは。
《魔物達の通信装置と思しき水晶玉の分析を行え》
その依頼と使命を受け、【バフォネット】を研究し、その中身を覗き見ることに成功して以来……私の心の中にある思い。
「魔物とは、本当に悪しき存在なのだろうか?」
「魔物達も我々と同じように喜怒哀楽を持ち、娯楽を愛する存在なのではないだろうか?」
「魔物達と我々人類は、本当に分かり合うことが出来ないのだろうか?」
この世界には、魔物達と友好的な関係を築いている国がいくつか存在している。
しかし、我が国を含む複数の国々は、そんな彼らの事を疑問視し、馬鹿にすらしている。
曰く、『奴らは人としての誇りを捨て、魔物に服従する道を選んだのだ』と。
曰く、『奴らは自分達が「人間版ホルスタウロス」とでもいうべき哀れな存在である事に気付いていない、無知蒙昧な輩なのだ』と。
その不遜な考え方が、自分達のあり方に疑問を抱かぬ傲慢さが、私を失望させる。
だから私は、不眠不休で【バフォネット】を研究し続け、その内容を一本の論文にまとめあげた。
さらに、共同軍事会議用の報告レポートを作成し、それを議場で発表するつもりだった。
魔物達が育み、発揮した、高度な技術について。
魔物達が持っている、豊かな情緒について。
そして、魔物達と人類の前に広がっている、いくつかの未来と可能性について。
だが……その間際になって、私の体は悲鳴を上げた。
無理がたたり、研究室内で倒れた私は、自力で着替える事すら不可能になってしまったのだ。
会議当日になっても私の体調は回復せず、発表は弟子が行う事となった。
しかし、彼にとってその仕事は、あまりにも荷が重すぎた。
「君は一体、何を言っているのかね!?」
「君の国は、血税を使ってそんな意味不明な研究を行っているのか!?」
「魔物と人類の未来、だと? フンっ! 知れたことよ! 我ら人類は奴らを駆逐し、平和で安定した世界を作り上げる! それ以外の未来など、絶対にありえんのだっ!!」
弟子に浴びせられた失笑、怒号、侮蔑の言葉は、想像を絶するものだったという。
会議終了後、私の枕元へと報告にやって来た彼の疲れきった表情……。
私は、あの表情を終生忘れる事は出来ないだろう。
さらに、悪い事は続いた。
何とか体調を回復させた私は、軍部からの呼び出しを受けた。
そしてその場で、所属する国立アカデミーからの解雇を通告された。
理由は、問わずとも瞬時に理解できた。先の軍事会議における、あの発表だ。
恐らく、軍や政府の幹部達は、私の弟子が浴びた言葉に相当量の皮肉をまぶしたものを、他国の首脳達からぶつけられたはずだ。
だから、面子を潰され、恥をかかされた彼らは、私に全ての責任を負わせる事に決めたのだろう。
「あのレポートは彼の独断によって生み出されたものであり、我が国の魔物に対する公式見解とは全く関係ありません」とするために。
私は明日、この国を発つことになった。
行き先は、魔物と友好的な関係を築いている国にしようと思っている。
東方のジパングには、『立つ鳥あとを濁さず』という言葉がある。
立ち去る者は潔く、美しく、きちんと後始末をした上で発つべきだ……そんな意味の言葉だ。
だがここで……私は、一つの【点】を残していきたいと思う。
それが、このノートだ。
この国立アカデミー付属図書館の奥深く、普段は司書でさえ立ち入らぬこのエリアに、私はこのノートを残していく。
中身は、【バフォネット】で繰り広げられていた魔物達の愉快なやり取り。
ここには何の生産性もない、思わず「どうでも良いよ!」と苦笑いしたくなるようなやり取りが並んでいる。
これを手に取ったあなたは、さぞかし困惑することだろう。
「魔物達が、本当にこんなやり取りを重ねていたのか?」と。
「魔物達は、人の生き血を啜る事を至上の喜びとする存在ではなかったのか?」と。
「魔物達と人類は、絶対に分かり合えないはずではなかったのか?」と。
だが、それで良いのだ。
どうか思う存分困惑し、疑問を抱いて欲しい。
その気持ちこそが、人類と魔物の豊かな未来を築く第一歩なのだと、私は確信している。
また、天地神明に誓うが、このノートに記す言葉は、本当に魔物達が交わしていたもの、そのままだ。
余計な編集・脚色などを一切加えていない、彼女達の生の声である事を明記しておく。
では早速、その中身を記していこう……。
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【勝者には】にらめっこ大会のお知らせ【何かあげるよ】
〔メドゥーサさん(二重まぶた)〕
あんまりにも暇で退屈だから、にらめっこ大会を開催するわよ!
見事私に勝利する事が出来たなら、素敵な商品をプレゼント!
さぁ、我こそはと思う者は、私の住処の洞窟まで来なさい! わかったわね!
〔黒妖精ちゃん〕
お断りします。
〔ダークスラスラ〕
お断りします。
〔蟻さんマークの建築屋〕
お断りします。
〔レッサーたん〕
お断りします。
……っていうか、ある意味絶対にこちらが勝ちますよね?
メドゥーサさんと目が合って石化しちゃったら、笑いようがないですもん。
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【三日目】サキュバス禁欲チャレンジ【幻覚が見える】
〔サッキュン〕
み、みんな……生きてる? だ、大丈夫?
干からびてない? ちゃんと息してる?
わ、私は、もう、正直、挫けそうだわ。
でも、頑張るわよ……この一週間の禁欲生活を乗り越えて、『性欲の向こう側』へ行くために!
〔西のダイナマイト・サキュバスさん〕
い、生きてるわよ……何か、昨日の夜から手が震え始めちゃってるけど。
って言うか、この禁欲生活って一人エッチも厳禁なのよね? 絶対ダメなのよね?
人間の男を襲わないだけかと思ってたら、自家発電も禁止だったなんて……正直、参加する前に注意事項をもっとしっかり読んでおくべきだったわ。
〔東のロリータ風サキュサキュ〕
あの〜、今さらなんだけどぉ、『性欲の向こう側』って……なに?
何となく面白そうだと思って参加したんだけど、だんだん主旨がわかんなくなってきちゃった。
確かに、五感が異常に鋭くなって、小さな音や気配も逃さず察知できるようにはなったけど、これって何かの役に立つのかなぁ?
〔南の人妻風:素敵なサキュ〜ン〕
みんな、尻尾よ! 尻尾に気をつけなさい!
とりあえず私は……もう、ヤられちゃったわ。自分の尻尾に。
「起きてるとムラムラするから、もう寝る!」と思って、昨日の夜は早めに床に就いたんだけど……ふと気持ち良くなって目覚めたら、まぁビックリよ。
無意識のうちに、自分の尻尾を《禁則ワードにつき自動検閲されました》に突っ込んでグッチョングッチョンのバッ《禁則ワードです》になって、最終的には《禁則ワードですってば》よ!? いや、マジで。
私たちサキュバスって、いざとなったら自分で自分を犯す勢いの種族なのね……。
〔北の酒場通りのサキュバス女将〕
さっき、知り合いのデュラハンに会ったんだけど、彼女の剣の柄でも良いから突っ込んでしまいたいって思ったわ。
いや、それ以前に、彼女が恐ろしく可愛く見えちゃってもう、ムラムラのヌレヌレよ。だから、とりあえず彼女に向って乳を寄せちゃったわ。残念ながら、ただ気持ち悪がられただけだったけど。
あと、狩猟が禁じられてる幼い人間の男の子が美味しそうに見えちゃってもう……『AGNESの刑』に処せられても良いから、もうこの際ヤっちゃおうかしら。
〔サッキュン〕
>>北の酒場通りのサキュバス女将
いやいやいや。それはさすがにマズいでしょ。
『AGNESの刑』って、甲高い声の執行人にしつこく追いまわされる精神攻撃らしいし。
あと……みんな、ゴメン。私、ヤっちゃった。
通りすがりの美男子剣士を、草むらに引きずりこんで。
「お母さぁ〜ん……!」って叫んでた彼に、「雲の数でもかぞえてなさい! すぐに終わるわ!」って言いながら、ヤっちゃった。充実の六連戦。
ごめん。本当にごめん。私、リタイヤします。
〔砂漠の国のセクシー・サキュバス〜ン〕
>>サッキュン
……気持ちよかった?
〔サッキュン〕
>>砂漠の国のセクシー・サキュバス〜ン
……超気持ち良かった。久々の充実感。
〔西のダイナマイト・サキュバスさん〕
>>サッキュン
アンタ、今度会ったらシメる。
〔東のロリータ風サキュサキュ〕
>>サッキュン
あんたの家に、大量のデビルバクを差し向けてやる。
〔北の酒場通りのサキュバス女将〕
あのぉ〜……誰か、いい逃亡先知らない?
『AGNESの刑』が怖いんだけど。
〔南の人妻風:素敵なサキュ〜ン〕
>>北の酒場通りのサキュバス女将
通報しました。
〔砂漠の国のセクシー・サキュバス〜ン〕
>>北の酒場通りのサキュバス女将
通報しました。
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【不人気とか】人間にスルーされ気味な私たち【言うなっ!】
〔ラミア(堂々と名乗るわよ)〕
つい最近、人間の集落で一人の吟遊詩人と出会ったのよ。
彼は、魔物関連の詩や歌を紡ぐ事を得意としてたんだけど……その内容に、ミョ〜な偏りがある事に気付いたのよね。
で、よ〜く注意して聴いてたら、やたらたくさんの作品に登場する種族がいる一方で、どれだけ待っていても全然出て来ない種族がいるのよ!
……っていうか、ラミア関連の作品少ねぇ! 納得できねぇ!
という訳で、「私達も人間にイジってもらえてない!」と不満を抱いてる仲間達よ、集まりなさい!
〔ピクシー(じゃあ私も名乗る!)〕
はいはいはいっ! 私も全く同じこと考えてた! ちょっと扱いが酷いと思う!
っていうか、私達『妖精型』って激戦区だから……。
[甘くて可愛いロリ〜な感じ + 露出度は総じて高め + 羽が生えてる + 気に入ったら連れ去る]っていうのは、妖精型の鉄則なの。これはもう、誰のせいでもないんだなぁ。
でもね……人間達が読んでる図鑑にまで【フェアリーに似た姿】って書かれてるのは酷くない? 人間に「君達、キャラがカブってるね」って言われてるんだよ!?
はぁ〜。私も、リャナンシーみたいに絵筆でも持つかなぁ。
〔アルラウネ(それじゃあ私も以下同文)〕
やっぱり、人気獲得のための積極的なプロモーションって……必要なのかしら?
でも、私達アルラウネがツルの部分をうねうねさせながら動き回ってたら、確実に弓矢で射られるわよね? 人気獲得のためとはいえ、痛いのはイヤだわぁ。
あと……ちょっと愚痴っても良いかしら?
四日前の夜、私の花びらに『や〜い。お前のお乳、無駄巨乳』って落書きした奴、正直に名乗り出なさい。
と言うか、絶対に犯人はどこかのハニービーでしょっ!? こっちの寝ている隙を突くなんて卑怯者は、このツルでぶっ飛ばしてあげるから出て来なさいっ!!
〔ドリアード(ならば私も〜)〕
私も、アルラウネさんと似たような感じですねぇ〜。
ただ私達の場合は、そんなに積極的には動けないんですけどもぉ〜。
やっぱり、出会いって、色んな意味で大切なんですねぇ〜。
〔スキュラ(恥じる所など何もないしね)〕
私なんか、ジパングから来たっていう男に「美味しそう」って言われたわよ!?
いや、最初は性的な意味のアプローチかと思ったのよ。正直、ちょっとドキドキしちゃったのよ。
でも、よくよく聞いてみたら、私の足を見て食欲的な意味で言ってたのよね……。
何でも、ジパングでは蛸を使った色んな料理があるらしくって……って、誰が蛸だコラぁっ!!
〔ラミア〕
>>ピクシー
あぁ、その気持ちわかるわぁ。痛いほどわかるわぁ。
私の場合、ライバルがメドゥーサちゃんとエキドナママだもん。これはキツいわよ?
まぁ、ママは別格だから敵わないとして、メドゥーサちゃんはキャラが立ってるもんねぇ。頭から蛇が生えてて、可愛らしい意地っ張り&ヤキモチ焼きで、石化の瞳を持っていて……って本当、どれだけこっちに差をつけるのって話よ。
大丈夫。辛いのはアンタだけじゃないから。うん。
〔デビルバグ〕
ワタシたちは、ニンゲンに、ウタわれてます。
……さっちゅうザイをうるニンゲンが、たのしそうな、よびこみの、ウタを。
ちょっと、カナシイ。
〔スキュラ〕
>>デビルバグ
……ごめん、涙で前が見えないわ。
あなた達に比べたら、私はまだ幸せな方なのかもしれないわね。ごめんなさい。
〔ジョロウグモ(みんな落ち着きなさいな)〕
>>スキュラちゃん
涙をお拭きなさいな。
それと、アタシの故郷の男が、お前さんに失礼な事を言っちまったみたいだねぇ。ジパング生まれのもんとして、侘びを言っておくよ。許しておくれ。
あと、これはアタシの考え方なんだけどね……。
歌や詩に読まれずとも、女の価値ってもんは変化しやしないよ。魔物としての矜持、女としての誇りってもんはね、覚悟一つで金剛石よりも硬くなるもんなのさ。
寂しさも、焦りも、嫉妬も、恋慕も……それは全てあんた達の女っぷりを高めるための肥やしになるんだよ。それは、このアタシが保証してあげる。
心を大きく持って、どっしりと構えていなさいな。
〔ハニービー(姐さんと呼ばせてください)〕
>>ジョロウグモ
っかぁ〜! カッコイイ! 超カッコイイ!
アタシが人間の男だったら、自分から抱かれに行ってますよ! 本当、超ステキです!
>>アルラウネ
あ、ごめんね〜。それ書いたの、たぶん私だと思うぅ〜。
でも、怒らないよね? ね? ジョロウグモ姐さんのお言葉通り、その怒りもあなたをより美しく、美味しくするための肥料なんだもんね? ね?
〔アルラウネ(……)〕
>>ハニービー
そうね、ジョロウグモさんの言葉は心に響きましたわ……って、ゴラアァァァァッ!
犯人はお前か、このオケツシマシマ娘があぁぁぁっ!!
このツルで鞭打ちの刑にしてやるから、こっち来いやボケえぇぇぇぇっ!!!
〔ジョロウグモ〕
おやまぁ。こりゃなかなか大変だ。
〔ラミア〕
っていうかさ、みんなこの場の主旨……完璧に忘れてない?
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【うっかり一問目に】スフィンクス反省会【今何問目?】
〔スフィンクス(好きな食べ物は焼き魚)〕
みんな、今日もお仕事がんばってる? ファラオ様はスヤスヤ眠ってる? いい男は来た?
私は……今日も大失敗でした。
いや、久しぶりの侵入者だったから、気合を入れて迎撃したんだけど……第一問目に「はい、今何問目っ?」って勢い良く訊いちゃって。
「えっ!? 一問目でしょっ!?」って言い返されて、私に魅了の呪いがかかるかかる……。
でもまぁ、そのおかげで充実したエッチが出来たんだけど、自分自身のうっかり具合にちょっとビックリでした。
みんなは、良い問いかけが出来ていますか?
〔スフィンクス(好きな食べ物はハム)〕
私は、うっかり問いかけの言葉を噛んじゃって大変だった。
「朝は四本足、昼は二本足、夜はさんみょん足の生き物はにょんら?」って言っちゃったの。
いや、途中で噛んだ事には気付いたんだけど、そのままゴマかせるかと思って……大失敗。
侵入者の奴が「噛んだ! 噛んだ!」って指差して笑うから、ちょっと頭に来ちゃってね。
失神するまで肉球を押しつけて、窒息させてやりました。テヘっ♪
〔スフィンクス(好きな食べ物はカツオブシ)〕
ねぇねぇ、ジパングの『カツオブシ』って食べもの知ってる?
見た目は、硬い木片みたいな感じなんだけど……これ、ヤバい。すごくヤバい。
まず、匂い。ものすごく良い匂い。遺跡の端っこに置かれてても気付けるくらい良い匂い。
そして、味。もう最高。この世全ての旨味を凝縮したみたいな感じ。何時間でもしゃぶれる。
……だから、これを投げつけられて、夢中でペロペロしてる間に侵入者を見失ったのは、私のミスじゃないと思うんだけど、どうかな? ダメ? やっぱり、ダメ?
〔スフィンクス(好きな食べ物はパン)〕
>>カツオブシ
それはダメでしょう、絶対に。
そもそも食べ物に釣られてる段階で、スフィンクスとしての役目を果たしてないもん。
……あと、今度会った時にちょっと見せてね、カツオブシ。
で、最近の失敗としては、そうだなぁ。
問いかけの中身をド忘れしちゃって、「リンゴが五十個あります……どうでしょう?」って訊いちゃった事かな。
「えぇっ!?」って侵入者は困ってたけど、問いかけを出した私自身も驚いたわ。だって、自分でも答えがわかんないんだもん。最終的には相手が降参してくれたから何とかなったけど……あれはちょっと危なかったなぁ。
〔スフィンクス(好きな食べ物は鶏肉)〕
問いかけの失敗じゃないんだけど、ちょっとビックリするような事があったよ!
私が担当している遺跡の近くに、人間達が観光名所にしてる場所があるんだけど……つい最近、何人かのご老人が道を間違えて私の所へ来ちゃってね。
悪意のある侵入者って訳じゃないから、激しく追い出す訳にも行かないし、困っちゃった。
で、最終的には、何故か私がガイド役になって、遺跡の案内をしてあげる事になったわ。「何でこんな事になっちゃったんだろ?」って思ったけど、おじいちゃんやおばあちゃん達が喜んでくれたから、まぁ良いかなぁ……って。
中には、「私の孫の嫁になってくれんかね?」なんて言ってくれたおばあちゃんもいたしね(笑)。
〔スフィンクス(好きな食べ物は乳製品全般)〕
あ、私も似たような経験をした事あるよ!
私の場合は、親とはぐれた小さな兄妹だったんだけどね。遺跡の入り口にしゃがみこんでシクシク泣いてたから、放っておく事も出来なくて……。
私の姿を見て最初は驚いてたけど、すぐに心を開いてくれたよ!
その後、一緒に両親を探してあげたんだけど、別れ際にお兄ちゃんの方が、「僕、大人になったらお姉ちゃんと結婚する! 迎えに来る!」とか言ってくれちゃってねぇ〜。
あの可愛い求婚がいつか現実になったら素敵だなぁとか思いつつ、今日もお仕事頑張ってマス。
〔スフィンクス(好きな食べ物は焼き魚)〕
みんな、書き込みありがとう!
落ち込んでたけど、みんなの体験談を読んでたら元気が出てきたよ!
よ〜し、明日もファラオ様のために頑張るぞっ!
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【東の方の】ジパングの人間に出会ったかい?【変な人たち】
〔銀の時計のワーラビット〕
どうも皆様、こんにちはっス!
今日の話題は、↑の通り、遥か東方にあるというジパングから来た人間についてっス!
髪の色も、肌の色も、瞳の色もちょっと違うあの人たちっスが、変わっているのはその外見だけじゃないっスよねぇ。
こう、何と言うか……物事に対する考え方とか、私たち魔物に対する接し方とか、その他諸々、全般的に違う不思議な人たちっスよね?
と言う事で、ここではそんなジパング出身の人間と触れ合った事がある皆さんの書き込みを募集したいと思いまっス! よろしくっス!
〔魔女っ娘暦九ヶ月〕
はぅ〜……私、ジパングの人は苦手です……。
二ヶ月ほど前、偶然出会ったジパングの人をサバトに勧誘したんですけど……私の話を聞き終わる前に、「君は信心深い女の子なんだねぇ。偉い偉い。ご褒美にタケトンボを作ってあげよう」と言って、見た事の無い不思議な手作りおもちゃをプレゼントしてくれたんです。
それで、私……そのおもちゃで遊ぶのが楽しくて、ついつい夢中になっちゃって……。
大切な黒ミサをすっぽかして、バフォメット様にきついお叱りを受けちゃいました。くすん。
〔ゴブリンのリン〕
う〜ん……あいつらヤベぇぜ。色んな意味でヤベぇぜ。
アタシは商売で何度が接触した事があんだけどさ、あいつらホント意味わかんねぇぜ。
だって、魚を生で食うんだぜ!? あと、木の根っこも食うんだぜ? 「根っこじゃないよ。ゴボウだよ」とか言ってたけど、アタシの目には木の根っこにしか見えなかったなぁ。
あと、奴らは蓮の根っこも食うぞ! すげぇ苦労しながら引っこ抜いて、「これが美味いんだ」とかニコニコしてやがった!
あの悪食っぷりなら、スキュラとかマーメイド、あとオークとかホルスタウロスくらいならペロっと食っちまうんじゃねぇかなぁ。
〔素敵なオークさん〕
>>ゴブリンのリン
ちょ、マジで……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
〔美味しいお乳に相談だ〕
>>ゴブリンのリン
こ、怖いですぅ〜……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
〔半自律ゴーレムさん〕
彼らは……有機物、無機物を……差別しない……。
生あるもの、形あるもの、それらが無いもの……全てに……神が宿っていると言う……。
あんな思考をする人間は……初めて……私に対しても……平等に……接してくれた……。
〔首無しさん〕
ジパングの剣士と何度か手合わせをした事があるが……みな素晴らしい使い手だった。何より、剣士としてのあり様が素晴らしい。
己を律し、世界を愛し、他者に対する慈しみの心を忘れない。私に勝利した者も、敗れた者も、みな等しく尊敬の気持ちを示してくれた。我らが信じる騎士の道とはまた一味違った、奥深い哲学を感じたな。
今も彼らはこの世界を歩き、修行の日々を送っているのだろうが……その無事と幸運を祈らずにはいられない。そしてまた、手合わせ願いたいものだ!
〔リャナンシー(スカウト活動中)〕
ジパングの芸術って、すっごくすっごくすっっっっごく素敵なんだよ!
あとあと、創作に対してもすっごくひたむきで一生懸命なの! それがどれくらいスゴイかって言うと、私の誘惑の魔法が全然効かないくらい!
……だから、私のダーリンになってくれなかったんだぁ。エェ〜ン(T_T)。
〔お稲荷さん〕
あらあら、まぁまぁ。
なんぞかんぞと、みなさん懐かしい話をしてはりますなぁ。
うちがジパングから旅立ってえらいようけの時間が経ちましたけど、やっぱり故郷の話はええもんですなぁ。
うん、そうそう……そう言えば、ジパングの中でも一部の人らは、「西方の魔物娘は素晴らしい」言うて、みなさんに大きな愛情や憧れを抱いとりましたえ。
素敵な旦那はんを探してはるんでしたら、ジパングへの長い旅に出はるんもよろしいんちゃいますか?
〔首無しさん〕
>>お稲荷さん
ふむ。なかなか興味深い話だ。
魔王軍騎士団としての仕事が無ければ、その旅に出るのも悪くないのだがな……。
〔素敵なオークさん〕
>>お稲荷さん
え、遠慮しておきます……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
〔美味しいお乳に相談だ〕
>>お稲荷さん
み、ミルクはあげますから、食べないで欲しいですぅ〜……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
〔私、マーメイっ♪〕
>>お稲荷さん
血を求められる事はしょっちゅうですけど、食材として見られるのは、ちょっと……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
〔壷好き八本足〕
>>お稲荷さん
あぁ、やっぱりあいつらにとって私は食べ物なんだ……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【昔の私は】人間から魔物になった時、経験しがちなこと【花屋の娘】
〔早く一人前になりたいレッサーたん〕
みなさん、ご機嫌いかがですか? レッサーサキュバスです。
人間から魔物への変化って、色んな事があって大変ですよね。
そこで今日は、そんな変化の際に起こりがちな事を書いて、みんなで「あぁ、わかるわかる(笑)」と笑い合いたいなぁ……と思い、トピックを立ててみました。
魔物になりたての方も、長い時間を経た方も、遠慮なくどしどし書き込んでくださいね。
〔ラージマウス五年生〕
・ネズミが嫌いではなくなる。それどころか、ネズミ達の声が理解できるようになる。
・乳製品に対して、尋常ではないレベルの愛情が湧いて来る。
・人間社会の食べ残しの多さについて、ちょっと社会派な考察をしたくなる。
・……けど、最終的には「チーズ美味ぇ!」という所に落ち着いてしまう。
〔ゾンビーちゃん〕
・自分の顔色の悪さに、ちょっと驚く。
・何となく夜の墓場で踊りたくなるけど、面倒くさいからしない。運動会もしない。
・丁寧にお墓参りをしてくれる人の事が、ちょっと好きになる。
・……けど、ちょっとでも疲れてくると「かゆ……うま……」な事しか考えられなくなる。
〔八重歯のワーウルフ〕
・満月の夜は、もうみなぎって来ちゃってしょうがない。
・テンションが上がって来ると、もう遠吠えしたくてしょうがない。
・暇な時は、尻尾の毛づくろいをする癖がつく。
・……けど、実は自分の手足の毛深さに若干悩んでいる。
〔オアシス在住マミー〕
・素肌に風が当たるだけでビクンビクン感じてしまうため、何となく通風を患っている人の気持ちがわかる。
・ジパング出身の男性に「悪代官ごっこだ!」とか言われて、包帯をクルクル回りながら剥ぎ取られる。
・目覚めると、自分の包帯で緊縛プレー状態だ。
・……けど、ここだけの話、長期間使っている包帯は『洗っていない犬の臭い』がする。
〔洋館でお待ちしているゴーストです〕
・この妄想を小説にしたら、私は稀代の名ポルノ作家になれるのではないかと思う。
・正直な話、夜の洋館は怖い。幽霊が出そうで。
・あ、私自身が幽霊なのか。
・……けど、妄想中にふと『素』になっちゃった瞬間が、実は一番むなしいのよねぇ。
〔吸血姫様〕
・慣れないうちは、マントが重い。
・人間の生活リズムが残っていた頃、朝の爽やかな光を浴びようとして危うく死にかけた。
・貴族のマナーやしきたりに戸惑いまくる。けど、食事はとってもゴージャスだ。
・……けど、正直に言うとたまには『お茶漬けとお漬物』をサラサラっと行っときたいのよね。
〔魔女っ娘@修行中〕
・予想外に重たい杖の扱いに苦労する。
・あと、杖や帽子についているこの骨が何の骨なのか、実はよくわかっていない。
・魔女っ娘仲間との就寝前ガールズトークが、夜の女子寮みたいでものすごく楽しい。
・……けど、自分達の胸がバフォメット様より大きな事については、みんな意識して黙ってます。
〔早く一人前になりたいレッサーたん〕
ひゃあ〜、みなさん書き込みありがとうございます!
このトピックを見ている元人間のみなさんは、笑ったり納得したりしてくれてるのかなぁ。
では私も、レッサーサキュバス的な事を書いてみますね!
・角が伸びてくると、何となく頭の周りがむずがゆい。
・ボン! キュ! ボン! な肉体になれる事は嬉しいけど、その間体毛が濃くなるのが悲しい。
・人間の頃には無かった羽や尻尾を動かすのが、密かに楽しくて仕方が無い。
・……けど、目に映るもの全てがエロく感じられちゃって大変。キノコ類なんて、特に大変。
みなさん、これからも素敵な魔物ライフを送っていきましょうねぇ〜♪
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【団結力の】マ→オ→ウ→サ→マ完成で、スーパー魔王様タイム突入!【見せ所】
〔働きたくない蟻さん作業員風セクシーガール〕
いや、特に意味は無いんだけどさ、ちょっとみんなでやってみない?
それじゃあ、いくわよ……はい、マ!
〔イタズラ黒天使ちゃん〕
ホ!
〔悪夢いかがですか?〕
ウ!
〔港の妖狐〕
ビ!
〔ワー猫さん〕
ン!
〔三三九〕
イェ〜イっ! スーパー魔法瓶タイムだあっ!!
〔女王スライムーン〕
ワァ〜オっ! お茶もスープも冷めないわぁっ!! 二重構造バンザ〜イ!
〔アリスたん〕
素敵ですぅ〜!
もともとは、魔法で作り出したアイテムを保管しておくための瓶だった歴史も素敵ですぅ〜!
〔働きたくない蟻さん作業員風セクシーガール〕
とにかく、魔法瓶サイコーっ!!
という訳で、あらためて行ってみましょう……はい、マ!
〔私の歌を聴けぇ!〕
ン!
〔ダークで色んな所がプリプリなプリースト〕
ト!
〔尻子玉、高く買い取ります〕
ヒ!
〔一つ目ちゃん〕
ヒ!
〔栄えある蝿の女王様〕
よぉ〜しっ! 皆の衆、スーパーマントヒヒタイムなのじゃっ!!
〔アラクネ(火気厳禁キャンペーン期間中)〕
ヒャッホ〜っ! 意外と毛がフサフサしてて、ヒャッホ〜っ!
〔暗闇では強気な蝙蝠のワーさん〕
ヒィィィハアァァァ〜っ! 良く見たら、おっさん臭い顔してて憎めな〜いっ!
〔アヌビス〕
マントヒヒは、オナガザル科に分類される猿だ。
古来より神、あるいは神の使者として、砂漠の国に生きる人間達から崇められて来た。
私やスフィンクス達が警護する遺跡の壁画、あるいは人間達のパピルスにもその姿が描かれ、記録されている。まさに、「神獣」と呼ばれるにふさわしい歴史を持つ生き物だ。
……とはいえ、時の流れの中で、マントヒヒは砂漠の国から姿を消してしまったがな。
〔働きたくない蟻さん作業員風セクシーガール〕
……アヌビス、空気読め。
〔イタズラ黒天使ちゃん〕
……アヌビス、ここの主旨を汲み取れ。
〔栄えある蝿の女王様〕
……アヌビス、ほんに融通の利かぬヤツよのぅ。
〔アヌビス〕
……正直、スマンかった(´・ω・`)。
・
・
・
・
・
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
「さて……ザッとこんな所かしらね」
ノートの要点を書き付けていた黒革の手帳をパタリと閉じて、一人の女性が微笑んだ。
腰まである、緩くウェーブした髪。
右目の下の泣きぼくろ。
ラフな服装越しにもわかる、女性らしい豊満な体つき。
ある角度から見れば天真爛漫な乙女のようであり、また別の角度から見れば、思慮分別が身についた大人の女性のようでもあり……。
そんな不思議な雰囲気を身にまとった、とても美しい女性である。
「これだから、図書館めぐりは楽しいのよね。今回も、思わぬ大発見が出来たわ。本のタイトルは……そうね、『今明かされる、魔物達の秘密のお話』ってところかしら?」
そんな事を呟きながら、彼女はノートを元の場所へと静かに戻した。
そして、ここから西へ向った国にある、自身のオフィスの事を思う。
今の時間、そこでは唯一の社員である人間の青年と、長の命を受けて里から出て来たアマゾネスの乙女とが、せっせと仕事に励んでいるはずだ。
自分の予想が正しければ……恐らく、あの二人は恋仲になるだろう。
それも、心の底からお互いを理解し、求め合う事が出来る、素敵な二人になるはずだ。
彼女は、ノートの背表紙をそっと撫でながら言った。
「大丈夫よ、学者さん。人類と私の娘達は、きっと上手くやっていけるわ。わからずやな連中は、そちらにも、こちらにも、一定数いるけど……そんなワガママさんは、他所の誰かの娘なのかしら?」
彼女はバッグの中に手帳をしまい、ふぅと一息ついて軽く首を回した。
長い髪が、かび臭いその場の空気をゆらりとかき混ぜる。
「『わかりあう』事は、言葉ほど簡単ではないけど……それでも、信じて見守るって、素敵じゃない?」
誰に聞かせる訳でもなくそう呟いて、彼女はその場を後にする。
そして今にも消えそうな、頼りない光を供給していたランプの前を通り過ぎた時。
彼女の背後に伸びた影は、長く長く。
まるで、エキドナのような姿を映していた。
結局、共同軍事会議の場においても、私たちの研究成果はくだらない与太話として扱われ、無視される事となった。
【バフォネット】は、確かに存在していたというのに。
魔術的処理を施した水晶玉による、文章を用いた相互意思伝達システム。
互いの距離や魔力の量などに影響される事なく、各種の戦術・研究・学習的議論から夕飯のメニューに至るまでを自由に伝え合い、話し合うことが出来る画期的なシステム。
あれと同じ物を我々人類が作ろうとしたならば……飛躍的な技術の革新と、途方もない時間が必要になるだろう。
しかし魔物達は、彼女達は、それを成し遂げた上で完璧に使いこなしていたのだ。
その高度な力が、自由闊達な議論の形が、私を混乱させる。
私は子供の頃から、『魔物 = 禍々しく、汚らわしく、恐ろしき悪の存在』と教えられて来た。
そしてその教えを信じ、何ら疑問を抱くこと無く生きて来た。
我が国の軍部から、私が所属する国立アカデミーへ研究依頼がやって来た、ほんの数ヶ月前までは。
《魔物達の通信装置と思しき水晶玉の分析を行え》
その依頼と使命を受け、【バフォネット】を研究し、その中身を覗き見ることに成功して以来……私の心の中にある思い。
「魔物とは、本当に悪しき存在なのだろうか?」
「魔物達も我々と同じように喜怒哀楽を持ち、娯楽を愛する存在なのではないだろうか?」
「魔物達と我々人類は、本当に分かり合うことが出来ないのだろうか?」
この世界には、魔物達と友好的な関係を築いている国がいくつか存在している。
しかし、我が国を含む複数の国々は、そんな彼らの事を疑問視し、馬鹿にすらしている。
曰く、『奴らは人としての誇りを捨て、魔物に服従する道を選んだのだ』と。
曰く、『奴らは自分達が「人間版ホルスタウロス」とでもいうべき哀れな存在である事に気付いていない、無知蒙昧な輩なのだ』と。
その不遜な考え方が、自分達のあり方に疑問を抱かぬ傲慢さが、私を失望させる。
だから私は、不眠不休で【バフォネット】を研究し続け、その内容を一本の論文にまとめあげた。
さらに、共同軍事会議用の報告レポートを作成し、それを議場で発表するつもりだった。
魔物達が育み、発揮した、高度な技術について。
魔物達が持っている、豊かな情緒について。
そして、魔物達と人類の前に広がっている、いくつかの未来と可能性について。
だが……その間際になって、私の体は悲鳴を上げた。
無理がたたり、研究室内で倒れた私は、自力で着替える事すら不可能になってしまったのだ。
会議当日になっても私の体調は回復せず、発表は弟子が行う事となった。
しかし、彼にとってその仕事は、あまりにも荷が重すぎた。
「君は一体、何を言っているのかね!?」
「君の国は、血税を使ってそんな意味不明な研究を行っているのか!?」
「魔物と人類の未来、だと? フンっ! 知れたことよ! 我ら人類は奴らを駆逐し、平和で安定した世界を作り上げる! それ以外の未来など、絶対にありえんのだっ!!」
弟子に浴びせられた失笑、怒号、侮蔑の言葉は、想像を絶するものだったという。
会議終了後、私の枕元へと報告にやって来た彼の疲れきった表情……。
私は、あの表情を終生忘れる事は出来ないだろう。
さらに、悪い事は続いた。
何とか体調を回復させた私は、軍部からの呼び出しを受けた。
そしてその場で、所属する国立アカデミーからの解雇を通告された。
理由は、問わずとも瞬時に理解できた。先の軍事会議における、あの発表だ。
恐らく、軍や政府の幹部達は、私の弟子が浴びた言葉に相当量の皮肉をまぶしたものを、他国の首脳達からぶつけられたはずだ。
だから、面子を潰され、恥をかかされた彼らは、私に全ての責任を負わせる事に決めたのだろう。
「あのレポートは彼の独断によって生み出されたものであり、我が国の魔物に対する公式見解とは全く関係ありません」とするために。
私は明日、この国を発つことになった。
行き先は、魔物と友好的な関係を築いている国にしようと思っている。
東方のジパングには、『立つ鳥あとを濁さず』という言葉がある。
立ち去る者は潔く、美しく、きちんと後始末をした上で発つべきだ……そんな意味の言葉だ。
だがここで……私は、一つの【点】を残していきたいと思う。
それが、このノートだ。
この国立アカデミー付属図書館の奥深く、普段は司書でさえ立ち入らぬこのエリアに、私はこのノートを残していく。
中身は、【バフォネット】で繰り広げられていた魔物達の愉快なやり取り。
ここには何の生産性もない、思わず「どうでも良いよ!」と苦笑いしたくなるようなやり取りが並んでいる。
これを手に取ったあなたは、さぞかし困惑することだろう。
「魔物達が、本当にこんなやり取りを重ねていたのか?」と。
「魔物達は、人の生き血を啜る事を至上の喜びとする存在ではなかったのか?」と。
「魔物達と人類は、絶対に分かり合えないはずではなかったのか?」と。
だが、それで良いのだ。
どうか思う存分困惑し、疑問を抱いて欲しい。
その気持ちこそが、人類と魔物の豊かな未来を築く第一歩なのだと、私は確信している。
また、天地神明に誓うが、このノートに記す言葉は、本当に魔物達が交わしていたもの、そのままだ。
余計な編集・脚色などを一切加えていない、彼女達の生の声である事を明記しておく。
では早速、その中身を記していこう……。
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【勝者には】にらめっこ大会のお知らせ【何かあげるよ】
〔メドゥーサさん(二重まぶた)〕
あんまりにも暇で退屈だから、にらめっこ大会を開催するわよ!
見事私に勝利する事が出来たなら、素敵な商品をプレゼント!
さぁ、我こそはと思う者は、私の住処の洞窟まで来なさい! わかったわね!
〔黒妖精ちゃん〕
お断りします。
〔ダークスラスラ〕
お断りします。
〔蟻さんマークの建築屋〕
お断りします。
〔レッサーたん〕
お断りします。
……っていうか、ある意味絶対にこちらが勝ちますよね?
メドゥーサさんと目が合って石化しちゃったら、笑いようがないですもん。
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【三日目】サキュバス禁欲チャレンジ【幻覚が見える】
〔サッキュン〕
み、みんな……生きてる? だ、大丈夫?
干からびてない? ちゃんと息してる?
わ、私は、もう、正直、挫けそうだわ。
でも、頑張るわよ……この一週間の禁欲生活を乗り越えて、『性欲の向こう側』へ行くために!
〔西のダイナマイト・サキュバスさん〕
い、生きてるわよ……何か、昨日の夜から手が震え始めちゃってるけど。
って言うか、この禁欲生活って一人エッチも厳禁なのよね? 絶対ダメなのよね?
人間の男を襲わないだけかと思ってたら、自家発電も禁止だったなんて……正直、参加する前に注意事項をもっとしっかり読んでおくべきだったわ。
〔東のロリータ風サキュサキュ〕
あの〜、今さらなんだけどぉ、『性欲の向こう側』って……なに?
何となく面白そうだと思って参加したんだけど、だんだん主旨がわかんなくなってきちゃった。
確かに、五感が異常に鋭くなって、小さな音や気配も逃さず察知できるようにはなったけど、これって何かの役に立つのかなぁ?
〔南の人妻風:素敵なサキュ〜ン〕
みんな、尻尾よ! 尻尾に気をつけなさい!
とりあえず私は……もう、ヤられちゃったわ。自分の尻尾に。
「起きてるとムラムラするから、もう寝る!」と思って、昨日の夜は早めに床に就いたんだけど……ふと気持ち良くなって目覚めたら、まぁビックリよ。
無意識のうちに、自分の尻尾を《禁則ワードにつき自動検閲されました》に突っ込んでグッチョングッチョンのバッ《禁則ワードです》になって、最終的には《禁則ワードですってば》よ!? いや、マジで。
私たちサキュバスって、いざとなったら自分で自分を犯す勢いの種族なのね……。
〔北の酒場通りのサキュバス女将〕
さっき、知り合いのデュラハンに会ったんだけど、彼女の剣の柄でも良いから突っ込んでしまいたいって思ったわ。
いや、それ以前に、彼女が恐ろしく可愛く見えちゃってもう、ムラムラのヌレヌレよ。だから、とりあえず彼女に向って乳を寄せちゃったわ。残念ながら、ただ気持ち悪がられただけだったけど。
あと、狩猟が禁じられてる幼い人間の男の子が美味しそうに見えちゃってもう……『AGNESの刑』に処せられても良いから、もうこの際ヤっちゃおうかしら。
〔サッキュン〕
>>北の酒場通りのサキュバス女将
いやいやいや。それはさすがにマズいでしょ。
『AGNESの刑』って、甲高い声の執行人にしつこく追いまわされる精神攻撃らしいし。
あと……みんな、ゴメン。私、ヤっちゃった。
通りすがりの美男子剣士を、草むらに引きずりこんで。
「お母さぁ〜ん……!」って叫んでた彼に、「雲の数でもかぞえてなさい! すぐに終わるわ!」って言いながら、ヤっちゃった。充実の六連戦。
ごめん。本当にごめん。私、リタイヤします。
〔砂漠の国のセクシー・サキュバス〜ン〕
>>サッキュン
……気持ちよかった?
〔サッキュン〕
>>砂漠の国のセクシー・サキュバス〜ン
……超気持ち良かった。久々の充実感。
〔西のダイナマイト・サキュバスさん〕
>>サッキュン
アンタ、今度会ったらシメる。
〔東のロリータ風サキュサキュ〕
>>サッキュン
あんたの家に、大量のデビルバクを差し向けてやる。
〔北の酒場通りのサキュバス女将〕
あのぉ〜……誰か、いい逃亡先知らない?
『AGNESの刑』が怖いんだけど。
〔南の人妻風:素敵なサキュ〜ン〕
>>北の酒場通りのサキュバス女将
通報しました。
〔砂漠の国のセクシー・サキュバス〜ン〕
>>北の酒場通りのサキュバス女将
通報しました。
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【不人気とか】人間にスルーされ気味な私たち【言うなっ!】
〔ラミア(堂々と名乗るわよ)〕
つい最近、人間の集落で一人の吟遊詩人と出会ったのよ。
彼は、魔物関連の詩や歌を紡ぐ事を得意としてたんだけど……その内容に、ミョ〜な偏りがある事に気付いたのよね。
で、よ〜く注意して聴いてたら、やたらたくさんの作品に登場する種族がいる一方で、どれだけ待っていても全然出て来ない種族がいるのよ!
……っていうか、ラミア関連の作品少ねぇ! 納得できねぇ!
という訳で、「私達も人間にイジってもらえてない!」と不満を抱いてる仲間達よ、集まりなさい!
〔ピクシー(じゃあ私も名乗る!)〕
はいはいはいっ! 私も全く同じこと考えてた! ちょっと扱いが酷いと思う!
っていうか、私達『妖精型』って激戦区だから……。
[甘くて可愛いロリ〜な感じ + 露出度は総じて高め + 羽が生えてる + 気に入ったら連れ去る]っていうのは、妖精型の鉄則なの。これはもう、誰のせいでもないんだなぁ。
でもね……人間達が読んでる図鑑にまで【フェアリーに似た姿】って書かれてるのは酷くない? 人間に「君達、キャラがカブってるね」って言われてるんだよ!?
はぁ〜。私も、リャナンシーみたいに絵筆でも持つかなぁ。
〔アルラウネ(それじゃあ私も以下同文)〕
やっぱり、人気獲得のための積極的なプロモーションって……必要なのかしら?
でも、私達アルラウネがツルの部分をうねうねさせながら動き回ってたら、確実に弓矢で射られるわよね? 人気獲得のためとはいえ、痛いのはイヤだわぁ。
あと……ちょっと愚痴っても良いかしら?
四日前の夜、私の花びらに『や〜い。お前のお乳、無駄巨乳』って落書きした奴、正直に名乗り出なさい。
と言うか、絶対に犯人はどこかのハニービーでしょっ!? こっちの寝ている隙を突くなんて卑怯者は、このツルでぶっ飛ばしてあげるから出て来なさいっ!!
〔ドリアード(ならば私も〜)〕
私も、アルラウネさんと似たような感じですねぇ〜。
ただ私達の場合は、そんなに積極的には動けないんですけどもぉ〜。
やっぱり、出会いって、色んな意味で大切なんですねぇ〜。
〔スキュラ(恥じる所など何もないしね)〕
私なんか、ジパングから来たっていう男に「美味しそう」って言われたわよ!?
いや、最初は性的な意味のアプローチかと思ったのよ。正直、ちょっとドキドキしちゃったのよ。
でも、よくよく聞いてみたら、私の足を見て食欲的な意味で言ってたのよね……。
何でも、ジパングでは蛸を使った色んな料理があるらしくって……って、誰が蛸だコラぁっ!!
〔ラミア〕
>>ピクシー
あぁ、その気持ちわかるわぁ。痛いほどわかるわぁ。
私の場合、ライバルがメドゥーサちゃんとエキドナママだもん。これはキツいわよ?
まぁ、ママは別格だから敵わないとして、メドゥーサちゃんはキャラが立ってるもんねぇ。頭から蛇が生えてて、可愛らしい意地っ張り&ヤキモチ焼きで、石化の瞳を持っていて……って本当、どれだけこっちに差をつけるのって話よ。
大丈夫。辛いのはアンタだけじゃないから。うん。
〔デビルバグ〕
ワタシたちは、ニンゲンに、ウタわれてます。
……さっちゅうザイをうるニンゲンが、たのしそうな、よびこみの、ウタを。
ちょっと、カナシイ。
〔スキュラ〕
>>デビルバグ
……ごめん、涙で前が見えないわ。
あなた達に比べたら、私はまだ幸せな方なのかもしれないわね。ごめんなさい。
〔ジョロウグモ(みんな落ち着きなさいな)〕
>>スキュラちゃん
涙をお拭きなさいな。
それと、アタシの故郷の男が、お前さんに失礼な事を言っちまったみたいだねぇ。ジパング生まれのもんとして、侘びを言っておくよ。許しておくれ。
あと、これはアタシの考え方なんだけどね……。
歌や詩に読まれずとも、女の価値ってもんは変化しやしないよ。魔物としての矜持、女としての誇りってもんはね、覚悟一つで金剛石よりも硬くなるもんなのさ。
寂しさも、焦りも、嫉妬も、恋慕も……それは全てあんた達の女っぷりを高めるための肥やしになるんだよ。それは、このアタシが保証してあげる。
心を大きく持って、どっしりと構えていなさいな。
〔ハニービー(姐さんと呼ばせてください)〕
>>ジョロウグモ
っかぁ〜! カッコイイ! 超カッコイイ!
アタシが人間の男だったら、自分から抱かれに行ってますよ! 本当、超ステキです!
>>アルラウネ
あ、ごめんね〜。それ書いたの、たぶん私だと思うぅ〜。
でも、怒らないよね? ね? ジョロウグモ姐さんのお言葉通り、その怒りもあなたをより美しく、美味しくするための肥料なんだもんね? ね?
〔アルラウネ(……)〕
>>ハニービー
そうね、ジョロウグモさんの言葉は心に響きましたわ……って、ゴラアァァァァッ!
犯人はお前か、このオケツシマシマ娘があぁぁぁっ!!
このツルで鞭打ちの刑にしてやるから、こっち来いやボケえぇぇぇぇっ!!!
〔ジョロウグモ〕
おやまぁ。こりゃなかなか大変だ。
〔ラミア〕
っていうかさ、みんなこの場の主旨……完璧に忘れてない?
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【うっかり一問目に】スフィンクス反省会【今何問目?】
〔スフィンクス(好きな食べ物は焼き魚)〕
みんな、今日もお仕事がんばってる? ファラオ様はスヤスヤ眠ってる? いい男は来た?
私は……今日も大失敗でした。
いや、久しぶりの侵入者だったから、気合を入れて迎撃したんだけど……第一問目に「はい、今何問目っ?」って勢い良く訊いちゃって。
「えっ!? 一問目でしょっ!?」って言い返されて、私に魅了の呪いがかかるかかる……。
でもまぁ、そのおかげで充実したエッチが出来たんだけど、自分自身のうっかり具合にちょっとビックリでした。
みんなは、良い問いかけが出来ていますか?
〔スフィンクス(好きな食べ物はハム)〕
私は、うっかり問いかけの言葉を噛んじゃって大変だった。
「朝は四本足、昼は二本足、夜はさんみょん足の生き物はにょんら?」って言っちゃったの。
いや、途中で噛んだ事には気付いたんだけど、そのままゴマかせるかと思って……大失敗。
侵入者の奴が「噛んだ! 噛んだ!」って指差して笑うから、ちょっと頭に来ちゃってね。
失神するまで肉球を押しつけて、窒息させてやりました。テヘっ♪
〔スフィンクス(好きな食べ物はカツオブシ)〕
ねぇねぇ、ジパングの『カツオブシ』って食べもの知ってる?
見た目は、硬い木片みたいな感じなんだけど……これ、ヤバい。すごくヤバい。
まず、匂い。ものすごく良い匂い。遺跡の端っこに置かれてても気付けるくらい良い匂い。
そして、味。もう最高。この世全ての旨味を凝縮したみたいな感じ。何時間でもしゃぶれる。
……だから、これを投げつけられて、夢中でペロペロしてる間に侵入者を見失ったのは、私のミスじゃないと思うんだけど、どうかな? ダメ? やっぱり、ダメ?
〔スフィンクス(好きな食べ物はパン)〕
>>カツオブシ
それはダメでしょう、絶対に。
そもそも食べ物に釣られてる段階で、スフィンクスとしての役目を果たしてないもん。
……あと、今度会った時にちょっと見せてね、カツオブシ。
で、最近の失敗としては、そうだなぁ。
問いかけの中身をド忘れしちゃって、「リンゴが五十個あります……どうでしょう?」って訊いちゃった事かな。
「えぇっ!?」って侵入者は困ってたけど、問いかけを出した私自身も驚いたわ。だって、自分でも答えがわかんないんだもん。最終的には相手が降参してくれたから何とかなったけど……あれはちょっと危なかったなぁ。
〔スフィンクス(好きな食べ物は鶏肉)〕
問いかけの失敗じゃないんだけど、ちょっとビックリするような事があったよ!
私が担当している遺跡の近くに、人間達が観光名所にしてる場所があるんだけど……つい最近、何人かのご老人が道を間違えて私の所へ来ちゃってね。
悪意のある侵入者って訳じゃないから、激しく追い出す訳にも行かないし、困っちゃった。
で、最終的には、何故か私がガイド役になって、遺跡の案内をしてあげる事になったわ。「何でこんな事になっちゃったんだろ?」って思ったけど、おじいちゃんやおばあちゃん達が喜んでくれたから、まぁ良いかなぁ……って。
中には、「私の孫の嫁になってくれんかね?」なんて言ってくれたおばあちゃんもいたしね(笑)。
〔スフィンクス(好きな食べ物は乳製品全般)〕
あ、私も似たような経験をした事あるよ!
私の場合は、親とはぐれた小さな兄妹だったんだけどね。遺跡の入り口にしゃがみこんでシクシク泣いてたから、放っておく事も出来なくて……。
私の姿を見て最初は驚いてたけど、すぐに心を開いてくれたよ!
その後、一緒に両親を探してあげたんだけど、別れ際にお兄ちゃんの方が、「僕、大人になったらお姉ちゃんと結婚する! 迎えに来る!」とか言ってくれちゃってねぇ〜。
あの可愛い求婚がいつか現実になったら素敵だなぁとか思いつつ、今日もお仕事頑張ってマス。
〔スフィンクス(好きな食べ物は焼き魚)〕
みんな、書き込みありがとう!
落ち込んでたけど、みんなの体験談を読んでたら元気が出てきたよ!
よ〜し、明日もファラオ様のために頑張るぞっ!
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【東の方の】ジパングの人間に出会ったかい?【変な人たち】
〔銀の時計のワーラビット〕
どうも皆様、こんにちはっス!
今日の話題は、↑の通り、遥か東方にあるというジパングから来た人間についてっス!
髪の色も、肌の色も、瞳の色もちょっと違うあの人たちっスが、変わっているのはその外見だけじゃないっスよねぇ。
こう、何と言うか……物事に対する考え方とか、私たち魔物に対する接し方とか、その他諸々、全般的に違う不思議な人たちっスよね?
と言う事で、ここではそんなジパング出身の人間と触れ合った事がある皆さんの書き込みを募集したいと思いまっス! よろしくっス!
〔魔女っ娘暦九ヶ月〕
はぅ〜……私、ジパングの人は苦手です……。
二ヶ月ほど前、偶然出会ったジパングの人をサバトに勧誘したんですけど……私の話を聞き終わる前に、「君は信心深い女の子なんだねぇ。偉い偉い。ご褒美にタケトンボを作ってあげよう」と言って、見た事の無い不思議な手作りおもちゃをプレゼントしてくれたんです。
それで、私……そのおもちゃで遊ぶのが楽しくて、ついつい夢中になっちゃって……。
大切な黒ミサをすっぽかして、バフォメット様にきついお叱りを受けちゃいました。くすん。
〔ゴブリンのリン〕
う〜ん……あいつらヤベぇぜ。色んな意味でヤベぇぜ。
アタシは商売で何度が接触した事があんだけどさ、あいつらホント意味わかんねぇぜ。
だって、魚を生で食うんだぜ!? あと、木の根っこも食うんだぜ? 「根っこじゃないよ。ゴボウだよ」とか言ってたけど、アタシの目には木の根っこにしか見えなかったなぁ。
あと、奴らは蓮の根っこも食うぞ! すげぇ苦労しながら引っこ抜いて、「これが美味いんだ」とかニコニコしてやがった!
あの悪食っぷりなら、スキュラとかマーメイド、あとオークとかホルスタウロスくらいならペロっと食っちまうんじゃねぇかなぁ。
〔素敵なオークさん〕
>>ゴブリンのリン
ちょ、マジで……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
〔美味しいお乳に相談だ〕
>>ゴブリンのリン
こ、怖いですぅ〜……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
〔半自律ゴーレムさん〕
彼らは……有機物、無機物を……差別しない……。
生あるもの、形あるもの、それらが無いもの……全てに……神が宿っていると言う……。
あんな思考をする人間は……初めて……私に対しても……平等に……接してくれた……。
〔首無しさん〕
ジパングの剣士と何度か手合わせをした事があるが……みな素晴らしい使い手だった。何より、剣士としてのあり様が素晴らしい。
己を律し、世界を愛し、他者に対する慈しみの心を忘れない。私に勝利した者も、敗れた者も、みな等しく尊敬の気持ちを示してくれた。我らが信じる騎士の道とはまた一味違った、奥深い哲学を感じたな。
今も彼らはこの世界を歩き、修行の日々を送っているのだろうが……その無事と幸運を祈らずにはいられない。そしてまた、手合わせ願いたいものだ!
〔リャナンシー(スカウト活動中)〕
ジパングの芸術って、すっごくすっごくすっっっっごく素敵なんだよ!
あとあと、創作に対してもすっごくひたむきで一生懸命なの! それがどれくらいスゴイかって言うと、私の誘惑の魔法が全然効かないくらい!
……だから、私のダーリンになってくれなかったんだぁ。エェ〜ン(T_T)。
〔お稲荷さん〕
あらあら、まぁまぁ。
なんぞかんぞと、みなさん懐かしい話をしてはりますなぁ。
うちがジパングから旅立ってえらいようけの時間が経ちましたけど、やっぱり故郷の話はええもんですなぁ。
うん、そうそう……そう言えば、ジパングの中でも一部の人らは、「西方の魔物娘は素晴らしい」言うて、みなさんに大きな愛情や憧れを抱いとりましたえ。
素敵な旦那はんを探してはるんでしたら、ジパングへの長い旅に出はるんもよろしいんちゃいますか?
〔首無しさん〕
>>お稲荷さん
ふむ。なかなか興味深い話だ。
魔王軍騎士団としての仕事が無ければ、その旅に出るのも悪くないのだがな……。
〔素敵なオークさん〕
>>お稲荷さん
え、遠慮しておきます……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
〔美味しいお乳に相談だ〕
>>お稲荷さん
み、ミルクはあげますから、食べないで欲しいですぅ〜……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
〔私、マーメイっ♪〕
>>お稲荷さん
血を求められる事はしょっちゅうですけど、食材として見られるのは、ちょっと……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
〔壷好き八本足〕
>>お稲荷さん
あぁ、やっぱりあいつらにとって私は食べ物なんだ……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【昔の私は】人間から魔物になった時、経験しがちなこと【花屋の娘】
〔早く一人前になりたいレッサーたん〕
みなさん、ご機嫌いかがですか? レッサーサキュバスです。
人間から魔物への変化って、色んな事があって大変ですよね。
そこで今日は、そんな変化の際に起こりがちな事を書いて、みんなで「あぁ、わかるわかる(笑)」と笑い合いたいなぁ……と思い、トピックを立ててみました。
魔物になりたての方も、長い時間を経た方も、遠慮なくどしどし書き込んでくださいね。
〔ラージマウス五年生〕
・ネズミが嫌いではなくなる。それどころか、ネズミ達の声が理解できるようになる。
・乳製品に対して、尋常ではないレベルの愛情が湧いて来る。
・人間社会の食べ残しの多さについて、ちょっと社会派な考察をしたくなる。
・……けど、最終的には「チーズ美味ぇ!」という所に落ち着いてしまう。
〔ゾンビーちゃん〕
・自分の顔色の悪さに、ちょっと驚く。
・何となく夜の墓場で踊りたくなるけど、面倒くさいからしない。運動会もしない。
・丁寧にお墓参りをしてくれる人の事が、ちょっと好きになる。
・……けど、ちょっとでも疲れてくると「かゆ……うま……」な事しか考えられなくなる。
〔八重歯のワーウルフ〕
・満月の夜は、もうみなぎって来ちゃってしょうがない。
・テンションが上がって来ると、もう遠吠えしたくてしょうがない。
・暇な時は、尻尾の毛づくろいをする癖がつく。
・……けど、実は自分の手足の毛深さに若干悩んでいる。
〔オアシス在住マミー〕
・素肌に風が当たるだけでビクンビクン感じてしまうため、何となく通風を患っている人の気持ちがわかる。
・ジパング出身の男性に「悪代官ごっこだ!」とか言われて、包帯をクルクル回りながら剥ぎ取られる。
・目覚めると、自分の包帯で緊縛プレー状態だ。
・……けど、ここだけの話、長期間使っている包帯は『洗っていない犬の臭い』がする。
〔洋館でお待ちしているゴーストです〕
・この妄想を小説にしたら、私は稀代の名ポルノ作家になれるのではないかと思う。
・正直な話、夜の洋館は怖い。幽霊が出そうで。
・あ、私自身が幽霊なのか。
・……けど、妄想中にふと『素』になっちゃった瞬間が、実は一番むなしいのよねぇ。
〔吸血姫様〕
・慣れないうちは、マントが重い。
・人間の生活リズムが残っていた頃、朝の爽やかな光を浴びようとして危うく死にかけた。
・貴族のマナーやしきたりに戸惑いまくる。けど、食事はとってもゴージャスだ。
・……けど、正直に言うとたまには『お茶漬けとお漬物』をサラサラっと行っときたいのよね。
〔魔女っ娘@修行中〕
・予想外に重たい杖の扱いに苦労する。
・あと、杖や帽子についているこの骨が何の骨なのか、実はよくわかっていない。
・魔女っ娘仲間との就寝前ガールズトークが、夜の女子寮みたいでものすごく楽しい。
・……けど、自分達の胸がバフォメット様より大きな事については、みんな意識して黙ってます。
〔早く一人前になりたいレッサーたん〕
ひゃあ〜、みなさん書き込みありがとうございます!
このトピックを見ている元人間のみなさんは、笑ったり納得したりしてくれてるのかなぁ。
では私も、レッサーサキュバス的な事を書いてみますね!
・角が伸びてくると、何となく頭の周りがむずがゆい。
・ボン! キュ! ボン! な肉体になれる事は嬉しいけど、その間体毛が濃くなるのが悲しい。
・人間の頃には無かった羽や尻尾を動かすのが、密かに楽しくて仕方が無い。
・……けど、目に映るもの全てがエロく感じられちゃって大変。キノコ類なんて、特に大変。
みなさん、これからも素敵な魔物ライフを送っていきましょうねぇ〜♪
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
【団結力の】マ→オ→ウ→サ→マ完成で、スーパー魔王様タイム突入!【見せ所】
〔働きたくない蟻さん作業員風セクシーガール〕
いや、特に意味は無いんだけどさ、ちょっとみんなでやってみない?
それじゃあ、いくわよ……はい、マ!
〔イタズラ黒天使ちゃん〕
ホ!
〔悪夢いかがですか?〕
ウ!
〔港の妖狐〕
ビ!
〔ワー猫さん〕
ン!
〔三三九〕
イェ〜イっ! スーパー魔法瓶タイムだあっ!!
〔女王スライムーン〕
ワァ〜オっ! お茶もスープも冷めないわぁっ!! 二重構造バンザ〜イ!
〔アリスたん〕
素敵ですぅ〜!
もともとは、魔法で作り出したアイテムを保管しておくための瓶だった歴史も素敵ですぅ〜!
〔働きたくない蟻さん作業員風セクシーガール〕
とにかく、魔法瓶サイコーっ!!
という訳で、あらためて行ってみましょう……はい、マ!
〔私の歌を聴けぇ!〕
ン!
〔ダークで色んな所がプリプリなプリースト〕
ト!
〔尻子玉、高く買い取ります〕
ヒ!
〔一つ目ちゃん〕
ヒ!
〔栄えある蝿の女王様〕
よぉ〜しっ! 皆の衆、スーパーマントヒヒタイムなのじゃっ!!
〔アラクネ(火気厳禁キャンペーン期間中)〕
ヒャッホ〜っ! 意外と毛がフサフサしてて、ヒャッホ〜っ!
〔暗闇では強気な蝙蝠のワーさん〕
ヒィィィハアァァァ〜っ! 良く見たら、おっさん臭い顔してて憎めな〜いっ!
〔アヌビス〕
マントヒヒは、オナガザル科に分類される猿だ。
古来より神、あるいは神の使者として、砂漠の国に生きる人間達から崇められて来た。
私やスフィンクス達が警護する遺跡の壁画、あるいは人間達のパピルスにもその姿が描かれ、記録されている。まさに、「神獣」と呼ばれるにふさわしい歴史を持つ生き物だ。
……とはいえ、時の流れの中で、マントヒヒは砂漠の国から姿を消してしまったがな。
〔働きたくない蟻さん作業員風セクシーガール〕
……アヌビス、空気読め。
〔イタズラ黒天使ちゃん〕
……アヌビス、ここの主旨を汲み取れ。
〔栄えある蝿の女王様〕
……アヌビス、ほんに融通の利かぬヤツよのぅ。
〔アヌビス〕
……正直、スマンかった(´・ω・`)。
・
・
・
・
・
┣━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━━━━━━┫ ╋╋ ┣━━━━━┫
「さて……ザッとこんな所かしらね」
ノートの要点を書き付けていた黒革の手帳をパタリと閉じて、一人の女性が微笑んだ。
腰まである、緩くウェーブした髪。
右目の下の泣きぼくろ。
ラフな服装越しにもわかる、女性らしい豊満な体つき。
ある角度から見れば天真爛漫な乙女のようであり、また別の角度から見れば、思慮分別が身についた大人の女性のようでもあり……。
そんな不思議な雰囲気を身にまとった、とても美しい女性である。
「これだから、図書館めぐりは楽しいのよね。今回も、思わぬ大発見が出来たわ。本のタイトルは……そうね、『今明かされる、魔物達の秘密のお話』ってところかしら?」
そんな事を呟きながら、彼女はノートを元の場所へと静かに戻した。
そして、ここから西へ向った国にある、自身のオフィスの事を思う。
今の時間、そこでは唯一の社員である人間の青年と、長の命を受けて里から出て来たアマゾネスの乙女とが、せっせと仕事に励んでいるはずだ。
自分の予想が正しければ……恐らく、あの二人は恋仲になるだろう。
それも、心の底からお互いを理解し、求め合う事が出来る、素敵な二人になるはずだ。
彼女は、ノートの背表紙をそっと撫でながら言った。
「大丈夫よ、学者さん。人類と私の娘達は、きっと上手くやっていけるわ。わからずやな連中は、そちらにも、こちらにも、一定数いるけど……そんなワガママさんは、他所の誰かの娘なのかしら?」
彼女はバッグの中に手帳をしまい、ふぅと一息ついて軽く首を回した。
長い髪が、かび臭いその場の空気をゆらりとかき混ぜる。
「『わかりあう』事は、言葉ほど簡単ではないけど……それでも、信じて見守るって、素敵じゃない?」
誰に聞かせる訳でもなくそう呟いて、彼女はその場を後にする。
そして今にも消えそうな、頼りない光を供給していたランプの前を通り過ぎた時。
彼女の背後に伸びた影は、長く長く。
まるで、エキドナのような姿を映していた。
10/01/18 07:13更新 / 蓮華