連載小説
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ナイトゴーント 危険度 EX
 今まで我々が取材によって見てきた部分は、魔物娘の光の部分といってもいい。
 この本によって新たな隣人である魔物娘達を身近に感じ、親交を深めるきっかけになってくれたらと私も望んでいる。
 しかし、彼女達は我々の想像を遙かに越える恐ろしい存在だと言うことを忘れてはならない。
 
 今回入手したのは、動画だ。
 大手動画サイト「ヘコヘコ動画」では、毎日様々な人間や魔物が動画を投稿し、人気を集めている。
 その中でも、動画の広告収入で生活費を稼ぐ「ヘコチューバー」と呼ばれる者達。
 彼らが撮影したオナニーや生ハメの動画は多くの魔物娘に視聴され、多額の収益を得ることに成功している。
 今年の小学生のなりたい職業ランキングも、ヘコチューバーが公務員にダブルスコアをつけて堂々の一位となった。

 話が脱線した。
 ある時、サイトに一本の動画が投稿された。

 タイトルは「あ」

 ヘコヘコ動画は未だ法整備が整っておらず、過激すぎる動画が投稿されることもしばしば。
 この動画は投稿された瞬間、視聴者が次々にSNSなどに拡散し、一時間を待たず一億回再生を突破。
 しかし、その驚愕の内容に運営は動画を強制削除し、動画投稿者のアカウントを停止させた。

 今回はその動画の全貌を文章によって公開する。
 媒体が違うために伝わりづらいこともあるだろうが、これが我々の出来る限界だった。
 以下が、その内容である。




(陽気な音楽と男性のボイスパーカッションのような音が聞こえる)

(天気は雲一つない快晴。時間帯はおそらく夕方。日は沈みかけているが、場所は廃墟のように見える。)

「ぼんじょ〜るの!“れすかすたぢお”のCタローでぇす!」

(彼は多人数で動画を作成するグループの男性。彼以外に数名とカメラマンの一人、いずれも男性のみで構成されており、以下ではCタローはC、カメラマンはDなどと省略)

C「えっと、今回はみんなから応募したアイデアを実際にやってみよう!って企画“Cタローがやっちゃいます!”何ですけれども。今回やってみるのはこちら!」

(C、紙を取り出して広げる)

C「はいHN“NomeD”さんからのお便り!ナイトゴーントとローション相撲をしたらどうなるか?でぇす!」

C「えっと、知らない方に補足説明しますと、ナイトゴーントって言う魔物がいるんですね。黒くてスベスベなラバースーツみたいな格好してて、未婚の男を見つけると空から飛んできて捕まえちゃうそうです。怖いですね〜」


C「そんな彼女達とローションまみれで出会ったらどうなっちゃうのか?なんかワクワクしてきたぁ!超高級ローションも買ってきて、僕の準備は万端です!」

C「あ、それと今回はナイトゴーントさんが現れるって噂の■■■■■の■■■■■■ってところに来てます」

(この瞬間だけ動画が乱れ、聞き取れなかった。いくら調査しても、彼が語る噂の場所というのがどこか未だ特定出来ていない)

C「それじゃ、まずはナイトゴーントさんを探してみたいと思いまぁす」

(しばらく歩きつつ、CとDの雑談が繰り広げられる)


(10分ほど経過した頃)


C「あれ……あれもしかして、魔物娘さんじゃないっすか?」

(カメラがズーム。公園の広場のようなところで、漆黒の魔物が所在なく佇んでいる)

C「まだこっちには気づいてないみたいですねぇ……よぉし、早速準備開始、いくぞいくぞ」

(C、衣服を脱ぎだしてパンツ一丁になる。そして、バケツ一杯のローションを頭からかぶった)

C「うっひょぉ!冷たっ!で、でもこれでだいじょうぶっすね。じゃあ、イってきます!グッドラック!」

(C、ゆっくりかつ堂々とナイトゴーントに近づく。カメラマンのDは距離をとりつつも、音が拾える距離感を保った)

(ナイトゴーント、Cの存在を感知。翼を広げ、ふわりと空中に浮き上がる)

C「うわぁ、すっげぇ。全身テラテラしててエロっ……!」
 
(むっちりとした肢体をなめるようなカメラワーク。その姿に見とれていたCにナイトゴーントが飛びかかった)

(しかし、ナイトゴーントがいくら掴みかかってもヌルリと避けられてしまう)

C「うははww全然避けれるwwおらおら来いよ、俺とセッ○スしてぇんだろぉ!?」

(挑発を繰り返すC。ナイトゴーントも彼を犯そうとするが、ローションのおかげで中々うまくいかない。氷のような表情は崩れることはないが、苛立ちを覚えているかのように見えた。そんなことも気にせず、Cは実況を続ける)

C「ふぁ、分かりづらいけど、ナイトゴーントさんってオッパイでかぁ……手で押したら指が沈み込んでくよ……顔も怖いなって思ったけど、近くで見るとなんか可愛いかも……」

(5分後)


C「ふぃ〜、大分撮れたろ! これで今回もめっちゃ再生数稼げるな!よ〜し、それじゃこの辺でカエロ……」

(Cの様子がおかしくなる)

C「あ、ああれ?おかしいな、脚が、うごかな……」

D「どうした?そろそろ撤退とやばそうだぞ」

C「分かってるよ!でも脚が動かねえんだ!くそっ、なんで……うあぁ!?」

(逃げようとするCに抱きつくナイトゴーント。Cはもがくが、中々ふりほどけない)

C「く、くっそ、やめろ!もう終わりだって……あ、な、なんでローションが乾いてんだ!?あんな沢山用意したのにっ……あひぃ!!な、なにを塗りつけてるんだ?だ、だめだってそんな、そこを擦られたらぁ!」

(ナイトゴーント、Cの体に黒い粘液を塗りつつ、彼の下着をズリおろす。バキバキに勃起した男性器は今にも爆発しそうだ)

C「ち、ちがっ、興奮してなんか……おい!D!助けろ!助けてくれ!はやくしろぉ!」

(D、あわててCの方へ走り出すが、ナイトゴーントはCを抱えて飛翔した。カメラを上空に向けるが、夜空の黒にとけ込んで何処にいるのか全く分からない)

(突如、あえぎ声とも叫び声ともつかないCの悲鳴が聞こえた。その直後、Dの目の前にベシャリとなにかが落ちてきた。それはCが先程まではいていた下着だった。下着は黒い粘液と精液にまみれ、どろどろに汚れていた)


D「う、うわあああああああああああああ!!」

(恐怖を感じたDはCを探すのをやめ、走って逃げ出す。カメラは彼が持ち続けて回ったままだ)

D「くそ!Cはだめだ!もう助からない!だから俺は言ったんだ!危ないからやめようって!」

(カメラを自分に向け、言い訳のように叫び続けるD)

D「思えばローションがおかしかった!『いい品がある』なんて言ってたくせにあのタヌキ女!使えないもの渡しやがって!」

D「で、でも俺はヤられねぇ!絶対逃げ切って、この動画を投稿してやるんだ!ナイトゴーントは所詮夜の魔物、このままうまいこと逃げ続けて、朝になれば……」

(そこでDが言葉を詰まらせる。何か強烈な違和感を覚えたようだ。脚をとめ、呼吸を整える)

(ノイズが安定すると周囲の音を拾い始める。バサバサバサバサ、まるで鳥の羽音が延々と聞こえる)

(カメラはゆっくりと上方へ向ける)

(空は真っ暗だ。星も、月も、それらを隠す空さえない。黒いペンキをぶちまけたように、Dの周辺を黒い空が覆っているのだ)

(カメラが望遠モードになる。空の一部をよく見てみる。真っ暗な空が瞼をあけ、紫の瞳と目があった。数え切れない程の魔物の瞳が、Dを捉えていた)

D「あ、あぁ、ぁああああぁぁあぁ……」

(D、腰が抜けてしまう。翼の音が大きくなり。夜空が、無数のナイトゴーント達が近づいてくる)

D「い、いやだあああああああ!!!ママアアアアアアア!!マm」






 ここでカメラは落下。マイクが壊れたのか、音声が聞こえなくなってしまう。誰の姿も映らないまま1時間ほど時間が経ったころ、再びナイトゴーントがでてきた。
 そこに映っていたのは、みだらに腰を揺らすナイトゴーント達と、彼女達が与えてくる快楽を享受する動画投稿者“だった”二人組。
 ひたすらに黒く、漆のように光る彼らのハメ撮り動画は、カメラの電源が切れるまで続いた。


 動画を投稿した者の感想は一言「ゴチソウサマ」だった。

 現在、この動画が撮影された場所も、CとDの行方はわかっていない。我々は今も彼らの情報を求めている。




18/03/20 23:15更新 / 牛みかん
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