連載小説
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レッドキャップ 危険度☆☆☆☆★
 なんとか雨をしのいだあなた。
 ほっと一息ついたのもつかの間、背後からクスクスと少女が笑いを押し殺したような声がきこえます。
 誰かいるのかと振り返ると、しかし人影一つありません。
 気のせいだと取り直そうとすると、再び聞こえる笑い声。

 気味が悪くなったあなたはその場を駆け足で離れます。
 笑い声はあなたに見えないまま、距離を保って追いかけてきます。

 恐怖と苛立ちに苛まれたあなたは、思い切って足を止め、見えない敵をあおるように呼びかけます。

 ズドン、あなたの目の前の地面に鈍重な凶器の刃が深く突き刺さっています。

「けけ、けけけけ……」

 カタカタと笑い声をあげ、小さな少女は姿を現しました。 

 その正体はレッドキャップ。赤い悪魔と呼ばれる凶悪な魔物です。
 彼女の標的にされたら最後、弱ったところを背後から襲われ、為す術もなくレイプされてしまいます。
 大きな武器を振り回すパワーと俊敏性を併せ持つ、小柄ながらも厄介な存在です。
 この魔物にも対処法は一応存在します。
 しかし、実践には平均以上の運動能力が求められます。
 本を読んだだけで満足せず、日々筋力トレーニングを欠かさぬ事をおすすめします。




STEP1 まずは相手をよく観察!

 レッドキャップ最大の特徴と言えるのが、頭に身につけている大きな帽子です。
 彼女達はかぶっている帽子の色によって、こちらに敵対意志があるかを判断することが出来ます。
 帽子が白ければ、まず襲われることはありません。既婚者の可能性もあります。
 ピンク色、もしくは赤白のまだらの場合、非常に危険な状態です。真っ赤に染まりきる前に距離をとれば助かるかもしれません。
 
 赤黒く染まりきっている場合、あなたは完全に目をつけられています。この状態では逃走は不可能、戦闘は避けられないでしょう。
 
 もしあなたが真っ赤なレッドキャップに遭遇したら、次の項目へ進んで下さい。






STEP2 手近な棒をとり、構える。

 リーチが勝利の鍵となります。レッドキャップの武器よりも長い得物を探しましょう。
 これはレッドキャップを攻撃する為のものではありませんので、先端に刃物などがついているものは取り外し、代わりに粘着性のあるものを取り付けましょう。
 お手製の『とりもち棒』が完成したら準備は完了。
 しっかりと正面から構え、彼女の攻撃をじっと待ちましょう。







STEP3 カウンターで、頭をねらえ!

 精神的に幼いレッドキャップは辛抱が出来ず、痺れを切らして突撃してきます。
 攻撃の瞬間、まばたき程の隙をつき、彼女の頭部……にかぶっている“帽子”めがけてとりもち棒を突き上げます。

 交差した後、先端に彼女の帽子がくっついていれば、あなたの勝ちです。
 あれほど激情的だったレッドキャップがいっぺん、外見相応の少女のようにオドオドとおびえ始めます。

 見た目は可愛らしいナイトキャップに見えますが、彼女達の存在を揺るがす大事なものなのです。
 レッドキャップにとって帽子とは精神のバロメーターであり、同時にその存在の象徴でもあります。
 
 帽子をなくした彼女達は精神を取り乱し、魔物娘としての能力が大幅に低下してしまいます。

 手に入れた帽子は、かぶり口を固結びで縛る、ポケットに突っ込む、匂いをかいで口に頬張る、など速やかに処理しましょう。
 こうしてしまえば、レッドキャップは去勢された猫のように大人しくなり、あなたに危害を加えることはなくなります。

 彼女達はあなたの腕を振り払う力もなく、ぎゅっと抱きしめても、柔らかい唇にキスをしても、サクランボのようにプックリとした胸の膨らみをいじっても、恥ずかしがって悶えこそすれ抵抗は一切してきません。
 
 しかし力が弱くなっただけで、魔物娘としての性欲は変わらず旺盛。
 有り体に言ってしまえば、性格が臆病・受け身に変化しているのです。

 
 この特性を利用し、奥手な彼女とのしっとりイチャイチャプレイを楽しむレッドキャップのカップルも多数いるとか。 

 



 余談ですが、長い時間帽子を外したレッドキャップは、肉体を失い帽子だけの存在になってしまうという伝説があります。
 その伝説に付随する物語はこういうものです。

 レッドキャップの帽子は貴重な品として闇オークションにて高値で取り引きされたことが過去あったそうです。
 その品を買い取ったのは、独占欲の激しい貴族の娘。振る舞いは上品であったが高飛車な性格で、意地悪なお嬢様を絵に描いたような人だったとか。
 無事に帽子を手に入れた貴族の娘は、あるとき興味本位でその帽子をかぶってしまいます。
 その日からお嬢様の性格はすっかり変わってしまいました。、フリルのドレスを嫌がって動きやすい服で走り回り、食事も肉など味の濃いものを好みました。
 なにかにとり憑かれたかのような豹変ぶりに周囲の人間達は恐怖し、娘の父は困り果てました。

 そして彼女がおかしくなってから一月、貴族の娘はついにその姿を消してしまいました。
 貴族は全財力をもって彼女を捜しましたが、結局見つけることが出来ず、その一族は没落してしまいました。

 その後、町にはある魔物の出現情報が流れました。

 真夜中の路地裏で、大人の女性くらいの背をしたレッドキャップが、夫となる男性を捜しては人を襲っている、というもの。

 レッドキャップの噂は町を騒がせましたが、ある時一人の男性が行方不明になると、彼女の噂はパタリとやんでしまいました。

 このお話は「レッドキャップになった女」として今も語り継がれています。

 皆さんも、レッドキャップに関わった際は、ご注意を。
18/03/14 22:58更新 / 牛みかん
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