連載小説
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マインドフレア 危険度 EX
まずは読者諸兄に一言、謝っておかなければならない。

 表題で「どんな魔物もこれ一冊」と謳ってはいるが、それは絶対ではない。サバイバルという窮地の状況で出会ってしまえば、どうやっても逃れられない種族がこの世界には存在する。

 だからといって、何も手だてがないわけではない。十全な用意、あるいは天恵の如き閃きによって危険をかいくぐることが出来る場合もあるかも知れない。

 今回、我々は不可思議な経験を持った男性の独占インタビューに成功した。この記事が読者諸兄がピンチに陥った際、活路を開く鍵となることを祈る。


インタビュー記事 マインドフレイア編

 ある域にまで達して初めて、見えるようになる景色がある。

 深淵の魔物に見初められた男達は、定命の道を捨て彼女達と一つになる。
 彼らの愛は常軌を逸しているように見えるほど重く、その姿を多脚の怪物に変わることすらいとわない。
 しかし、その戒律は必ずしも絶対とはいえないようだ。

 今回インタビューさせて頂くのは、マインドフレアを伴侶にもつAさん(仮名)
 なんと、彼は今まで一度もイカの姿に変わったことがないという。
 我々は真実を探るべく、彼との接触を図った。




記:まずは、奥様(マインドフレイア)との馴れ初めについて聞かせて下さい。

A:そうですねぇ。もう随分前になりますけど、寂れた港町に行った時、偶然にも彼女に会ったんです。彼女は素性を隠してたみたいなんですけど、僕は魔物娘についてはかなり勉強してて、あの妖艶な雰囲気を感じた瞬間「あ、この人マインドフレイアだ」って、気が付いちゃったんですよね。



記:とすると、アプローチをかけたのはAさんから?

A:いえいえ(笑)勉強してるっていったでしょ。マインドフレイアに愛された男がイカのようになるって噂も、勿論知っていましたから。
で、僕はイカになるのが抵抗ありまして。
 だからその時は、ぐっと気持ちを押し殺しました。


記:確かにイカになるのはちょっと……。

A:でしょ!?でも、彼女はすっごく綺麗だし、どうにかお付き合いしたいなぁと悩んだんです。
 仕事もそこそこに、イカにならず、かつマインドフレイアとイチャイチャする方法を毎日考えてました。
 で、僕はアニメを見るのが趣味なんですけれども。



記:アニメ……それはいわゆる、深夜アニメと呼ばれるものでしょうか。

A:イカの女の子が主人公の、日常系というジャンルですね。それを見ていた時、ふっと閃いてしまったんですよ。
 「イカになりたくないのなら、先にイカに成りきってしまおう」ってね。



記:イカに成りきる。

A:そこからは苦労の連続でしたね。魚屋でイカを買って観察し、寿司屋ではわさびの利いたヤリイカを食べまくり、家ではひたすら柔軟運動。
 僕が独学で考案した過酷なトレーニングメニューです。


記:そのトレーニングはどれくらいの期間されていたんですか?

A:え〜っと……一年以上はしてましたかねぇ。

記:一年。

A:彼女の為と思えば、全然苦じゃなかったですけどね。イカ、おいしいし。
 で、もういいかなって思った頃、また彼女に会いに行ったんです。
 相変わらず綺麗で見とれちゃったんですけど、気を取り直して彼女と接触する事にしました。



記:イカのフリをして、ですよね?

A:荒波に打ち上げられた人間似のダイオウイカ、という設定でした。
 彼女は海辺で散歩するのが日課だったので、ルートを先回りして倒れていました。

記:全身ずぶぬれで、軟体動物のように体をくねらせて砂浜を這うあなたを見たマインドフレイアさんは、どんな様子でした?

A:気のせいかも知れないけど、巨大なだだっ子を見るような困り顔でした。
 ただ、僕が積極的にイカアピールをしたら信じてくれました。



記:具体的には?

A:イカは喋れないのでアイコンタクトですね。あなた人間でしょ?って言われても「いやいや、確かに僕は人間に似ているって仲間からもからかわれますけど、誇り高きイカの血を引いています。あ〜でもショックだなぁ〜、魔物娘って外見で人を差別するような事を言うわけ無いって思ってたから、ショックだなぁ〜」と目力で訴えました。

記:ハハハ(苦笑)

A:それで色々あって、なんとか人間のまま彼女と付き合うことになったんですけれども。大変でしたね。イカになる以上かも知れません。

 夫婦となった者同士は片時も離れてはいけない、という風な誓約がマインドフレイアにはあるらしくて、基本的には朝から晩まで、体を密着させて過ごしていますね。
 四肢を触手に見立て、彼女の体にはわせます。



記:マインドフレイアの体に触れた感想はどうです?

A:分かってはいましたが、とてもすばらしいです。
 しっとりとしたもち肌で柔らかく、特におっぱいなんかは指が沈みこんんでしまう程です。彼女、強がって声とかは出さないんですけど、顔を赤らめて呼吸が荒くなるので、触っててこちらも楽しくなってきます。




記:現状に不満などはありますか?

A:不満ってほどじゃないけど、やっぱり外出時は困る時もあります。
 彼女が友達も会うときは僕も同行するんですが、彼女達って性行為をしながらお喋りとかするんですよね。それが当たり前というか。

 だから、僕達も空気をよんでやっちゃうんですが、肉体が違う分、他のカップルよりも目立つんですよね。
 僕が腰を突き動かす度に、彼女も押しつぶされたような喘ぎ声を出すし、射精した時の刺激でイっちゃったりすると、もうお茶会どころじゃないし。
 僕たち子供作る為の種付けセックスしています。って否応なしに見せつけることになってしまって、とても目立つんですよね。
 僕は結構興奮するんですけど、彼女は結構恥ずかしがり屋だから。

 それでも、彼女は僕をイカに変えようとしてはこないですね。
 僕を僕のまま愛してくれているみたいで、なんだか誇らしくってうれしいです。




記:最後に、読者のみなさんへアドバイスを頂けますか?

A:参考になるかは分からないけど、とにかく先手を打つのが重要だと思います。
 好きな魔物娘をじっくりと観察し、その隙を探る。
 それも、一種の愛なんじゃないかと僕は思いますね。

記:ありがとうございました。



 このインタビューのあと、A氏との連絡は途絶えてしまった。
 彼はその姿を変えてしまったのか。それとも、未だに人の形を保っているのか。
 真相は誰も知る由はない。
18/02/27 22:16更新 / 牛みかん
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■作者メッセージ
多分、マインドフレイアを題材にした中で一番くだらないモノを書いてしまった気がします。

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