ブラッドドボーン
「あなたの血が吸いたい」
ダンピールのリナは、まったく唐突にそう言った。深夜零時。リナと、テーブルを挟んで座っていた男の二人きりで、晩酌を楽しんでいた時のことである。
「お酒もいいけど、やっぱり血が飲みたい。具体的に言うとあなたの血が欲しい。ねえジョージ、いいでしょ?」
リナは少し赤らんだ顔を見せながら、男に向かって恥じらいも無く言ってのけた。それから彼女は、自らジョージと呼んだ男に向かってニヤリと笑いながら、持っていた酒瓶を彼に突き付けた。
ジョージはリナが何をしたいのかをすぐに理解した。彼は何も言わず、持っていたグラスをその酒瓶に近づけた。
「別に俺は構わないけど、いいのか? お前、俺の血を飲むと悪酔いするだろ」
瓶が傾き、自分のグラスに黄金色の液体が注がれていく。それを見ながら、ジョージがリナに確認を取る。一方でジョージのグラスに酒を注ぎ終えたリナは、次に自分の持っていたグラスに同じ酒を注ぎながら、そう問うてきた幼馴染兼恋人に対して言ってのけた。
「いいじゃない、酔ったって。好きな人の血で酔っ払えるなんて、素敵なことだと思わないかしら?」
完全に開き直っていた。リナは楽しそうに微笑み、ジョージは恋人に見つめられて恥ずかしげに苦笑した。そして互いに笑いながら、グラスに入った酒を一息に飲み干した。
穏やかな空気が二人を包む。好きな人と酒を飲むのは、やはり格別だ。二人はグラスを空にしてから一息つき、共にそう思った。
「それにね」
そうして余韻に浸っていると、不意にリナがその緋色の目を怪しく輝かせ、まっすぐジョージを見つめてきた。視線に気づいたジョージがリナに目を向けると、そのジョージの青い瞳を覗き込みながらリナが言った。
「それにどうせ酔うなら、お酒じゃなくて血の方がいいわよね♪」
「そういうもんなのか」
人間のジョージには、その感覚がまだよくわからなかった。そして視線を逸らして空のグラスを眺めながら、彼はしみじみとリナに言った。
「お前も好きだな。血ってそんなに美味いのか?」
「ちょっと違うわね。あなたの血だから美味しく感じられるのよ。他の人の血なんて、まずくてとても飲めないわ」
「ふ、ふーん、そうなのか……」
ジョージはどこか嬉しそうだった。例えそれが血液であろうと、絶世の美女に「あなたのだからいいの」と言われて、喜ばない男はいないだろう。
「だから、ね? いいでしょ? 首筋ちゅっちゅさせて? ねっ?」
リナが甘えるように血をねだる。ダンピールのリナは、そんな己の吸血衝動を抑え込もうとはしなかった。
既にそれに屈していたからだ。
彼女が「敗北」したのは一年前、ジョージから告白を受けた時だった。想い人から告白を受けたリナは、嬉しさのあまり心中で燻っていた吸血衝動に火をつけてしまった。火がついた衝動はあっという間に燃え上がり、魔物の本能が人間の理性を凌駕するのに大して時間はかからなかった。
ジョージが身の危険を感じた時には手遅れだった。リナは愛欲に任せてジョージを押し倒し、その首筋に鋭い牙を突き立てたのだ。欲望に屈した、衝動に負けたという人間らしい後悔は、ジョージの血の味を覚えた時点で吹き飛んだ。吸血を終えた後、感情のままにセックスを始めたのは言うまでもない。
「じゃあ早速、ちゅっちゅするね♪」
「ああ、いいぞ。今日も首からか?」
「うん♪ ちゃんとこぼさないように飲むから、安心してね♪」
「……お前、血が欲しい時になると本当キャラ変わるよな」
そしてこれ以降、リナの精神バランスは完全に崩壊した。半人半魔でありながら魔物の価値観と本能が優先されるようになり、良い意味で言えば「素直」になった。リナは吸血欲求を隠さなくなり、さらに彼女は血を飲むほどに理性と良識を失っていった。ただ愛する者とのセックスのみを求める、淫らな獣へと堕ちていったのである。
「あんまり飲みすぎるなよ?」
「わかってまーす。えへへー♪ ジョージ、だーいすきっ♪ かぷっ♪」
その姿は、まさに血に酔うようであった。ジョージはそんなリナを、純粋に可愛いと思った。少なくとも衝動に負けて魔物側に転落したこのダンピールを、意志薄弱と弾劾するようなことは一度もしなかった。好きな人に求められて悪い感情を抱く奴など、この世にいるのだろうか?
「ん、ちゅうううっ……」
首筋に歯を突き立て、ジョージの血を飲み込む。赤い液体が喉を通り、愛しいジョージの命の鼓動が全身に染み渡る。
体の中にジョージが入っていく。愛するジョージに内側から征服される。その事実が、リナに途方もない幸福感を与えた。脳味噌に甘い電流が走り、思考をどろどろに溶かしていく。股間から愛液が迸り、お漏らしをしたかのようにズボンを濡らしていく。
それまで「人間の道徳観」を理由に吸血行為を敬遠していた自分が可哀想に思える程に、それはリナにとって強烈な快感だった。
「んく、んく、ちゅうう……」
「ッ……くっ……」
一方のジョージは、吸血中に痛みを感じたりはしなかった。代わりに自分の中にある何か、生命とも言うべきものが吸い取られていくような、体が軽くなっていく感覚を味わっていた。しかし彼は、それさえも不快とは感じなかった。
ただリナに求められている。その喜びだけが、彼の心を満たしていた。
「ほらリナ、もっとくっついて……」
「んっ、んむ? ……んふふ♪ ちゅうううう……っ」
吸血はたっぷり十秒続いた。その間、ジョージはリナの体を優しく抱きしめた。リナもその抱擁を笑顔で受け入れ、自分も彼を抱き返しながら、たっぷり吸血を楽しんだ。
想い人に抱き留められながら、想い人の血を存分に味わう。ヴァンパイアの血を引くリナにとって、これはまさに至福の時間であった。
「……ぷはっ」
そして十秒後、リナは名残惜しげに口を離した。口の端からはジョージの血が零れ落ち、しかしそれを拭き取る余裕もないほどに、彼女の顔は快楽に蕩けていた。頬は真っ赤に染まり、眉はとろんと垂れ下がり、ジョージ以外何も見えていないようであった。
「……最高♪」
そうして天へと上るような心地を味わいながら、リナはジョージにしなだれかかった。豊満な乳房がジョージの胸板にぶつかり、柔らかな女の胸の感触を男の心に伝えていく。それからリナはだらしなく緩みきった顔のままジョージの肩に顎を乗せ、彼の耳元で甘えるような声を出した。
「ごちそうさまでした。ジョージ、ありがとうね」
「どういたしまして」
「えへへ」
ジョージの言葉を受け、リナが嬉しそうに笑う。ジョージがそんなリナの背中に手を回し、彼女の丸まった背中を優しく撫でる。その暖かな感触を受けてリナは嬉しそうに嘶き、お返しとばかりにジョージに頬ずりをする。
「ジョージの体、あったかい、幸せ……すりすりっ」
「おいリナ、くすぐったいよ。犬みたいにゴロゴロするなって」
「いいの。今の私はあなたのわんこだから、ゴロゴロしてもいいことになってるんだよ」
「無茶苦茶な理屈だなあ」
「わんわん♪ ご主人様っ♪」
「……まったく。うちのわんこは甘えん坊だな」
完全に酔っていた。そうして酔いに任せて獣のようにわんわん甘えるリナを、ジョージは全身で受け入れた。リナもそんなジョージに手心は加えず、わんわんと鳴きながら全力で彼に甘えていく。
「ジョージ、本当に暖かい……幸せ……わんっ」
「言わんこっちゃない。酔い過ぎだよお前」
「えへへー。ジョージが素敵すぎるのが悪いんだもーん」
「意味が分からん」
「でも、悪い気はしないでしょ?」
「まあな」
緩やかな、相手を慮る優しいスキンシップ。しかしそれは、二人の理性を剥がすのに十分な効力を発揮した。
「ねえ、ジョージ」
やがて犬の真似を止め、リナが抱き合ったまま顔を離す。そして至近距離でジョージと見つめ合う。
目は蕩け、僅かに開いた口から吐息がこぼれる。完全に出来上がっていた。犬は人に戻り、すぐまた獣へ堕ちていった。
「もう私、我慢できない……しよ?」
そう求めるダンピールの全身から魔力が流れ始める。ジョージの血を受けて強化された魔の力が、ジョージの獣欲に火をつける。
一緒に酔おう。ケダモノみたいなセックスをしよう。快楽に溺れたリナの思念が、魔力を通してジョージの脳へ飛んでいく。彼の脳を甘く溶かしていく。
「わたしと、えっち、しよ?」
「……ああ」
そしてジョージはその誘惑に、自分から乗った。
彼は背中に置いていた手を離し、代わって包み込むようにリナの両頬に優しく手を添える。自分の顔を包み込む恋人の手の感触に、リナがうっとりする。
「行くぞ」
そのリナの唇を、ジョージが自分のそれで塞ぐ。ジョージの不意打ちにリナは一瞬驚き、しかしすぐにそれを受け入れ、悦びに蕩けた顔を浮かべて自分から舌を伸ばす。
「んっ、ちゅぱ、くちゅ……ちゅ……」
「ちゅ、くちゅ……ちゅっ」
唇を密着させ、舌を絡め合う。互いの唾液を交換し、快楽の沼に仲良く沈んでいく。
「ちゅ、ちゅっ……ん……」
「くちゅ……ぷはっ……はあ、はあ……」
そして暫くして、二人は名残惜しそうに唇を離す。唾液が糸を引き、濡れた瞳で相手を見つめ合う。
「お酒の味がするね」
リナが囁く。ジョージが頷き、それに応える。
「さっきまで飲んでたからな」
「スコッチはやっぱり強かったかな?」
「今日はこれ飲もうよって誘ってきたのはそっちだろ」
「ぶー」
自分が晩酌を提案したことを指摘されたリナが、面白くなさそうに膨れっ面を見せる。普段のクールな彼女は決して見せない、感情豊かな表情。ジョージはその顔すら愛おしいと感じ、不満げなダンピールの頭を優しく撫でる。
頭を撫でられたリナは一瞬驚き、そしてすぐにその顔をだらしなく崩す。それまで抱いていた不満を遠くへ投げ捨て、幸福に満ちた淫蕩な表情を彼に見せる。
「もう、ジョージってば。そうやって甘やかしたくらいで、私は誤魔化されないんだからねっ」
口では気丈に振舞うが、顔は惚けたままだった。ジョージはそんなリナの仕草を愛らしいと感じ、そしてもっと可愛い姿が見たいと思い、彼女の下顎を指で軽くさすった。するとリナは気持ちよさそうに目を細め、猫のようにごろごろと鳴きだした。
「犬の次は猫か。本当かわいいなお前」
「ううんっ、くすぐったいよぉ……♪」
「でも好きなんだろ?」
「……うん、大好き」
嫌いなわけがなかった。ジョージのしてくること全てが、リナは大好きだった。
そしてジョージもまた、こうして自分に甘えてくるリナが大好きだった。もっと甘やかしたいと思い、彼はリナをいじり続けた。
「ほら、にゃんこちゃん。もっとこちょこちょしてやるぞ」
「にゃあん♪ 顎くりくり、駄目ぇ♪ 気持ちよすぎて馬鹿になっちゃう♪」
「なっちゃえ、なっちゃえ。子猫が難しいこと考えるんじゃない。もっと気持ちよくなっていいんだぞ」
「いいの?」
「ああ」
「……じゃあなるにゃん。馬鹿になるにゃん♪ ご主人様の指、気持ちいいにゃん♪」
「そうそう、いつもクールに振舞ってるんだから、今くらい羽目を外したってバチは当たらないぜ?」
「にゃん、にゃん♪」
そして小動物と化したリナはジョージのなすがまま、彼の指の感触を目一杯楽しんだ。秘所に触れない愛撫というのもあるもので、このやり取りだけでリナの膣からは蜜が溢れ出し、ジョージの肉棒は硬さを増していった。
「ジョージ……ほしいにゃん」
そうしてジョージがリナの顎を撫でていると、リナが彼に熱っぽい声を投げかける。ジョージもそれに気づいて指の動きを止め、彼女を見つめながら頷く。
同意を得たリナは、ゆっくりと立ち上がり、わざと焦らすようにズボンを脱いでいった。飾り気のない白地のパンツが露わとなり、それも躊躇うことなく脱ぎ捨てる。そうして下半身を露出させた後、再度腰を下ろし、今度はジョージのズボンのチャックに手をかけた。
「わあ……」
ジョージの肉棒は、既に臨戦態勢を整えていた。天を衝くように堅くそそり立ったそれを見て、リナは思わずため息をついた。
今日もいっぱい気持ちよくしてくれそうだ。目にハートマークすら浮かべたリナは、恍惚とした表情でそれを見つめた。
こんな極上のごちそうを前にして、我慢なんて出来るはずなかった。
「もう、我慢できない……いれていいよね……?」
「ああ、俺も――」
「にゃあん♪」
ジョージの言葉を待たずに、リナが腰を下ろす。濡れそぼった膣口と亀頭がふれあい、そのまま一気に剛直を飲み込む。
「うっ……くうっ……!」
「な、にゃ、にゃああああん♪」
突然襲い掛かって来た射精衝動。ジョージは歯を食いしばってそれに耐えた。入れただけで射精するというのは、さすがに男のプライドが許さなかった。
一方のリナは、肉棒が膣を抉っていく感覚に背筋を震わせ、快楽のままに絶叫した。こちらは恥もプライドもなく、見せつけるように絶頂してみせた。髪を振り乱し、舌を突き出して幸せそうに喘ぐリナの姿は、たまらなく卑猥だった。
「ま、まだまだ……もっと気持ちよくなるんだからね……♪」
そしてリナは相手の承諾も得ずに、そのまま腰を振り始めた。とろけた顔でジョージを見下ろし、騎乗位で胸をゆさゆさと揺らし、愛液で濡れきった膣肉で肉棒を扱き上げる。
「にゃん、にゃん、にゃん♪ ジョージのおちんちん、とっても気持ちいい♪」
「ま、待て、リナ……!」
リナの腰遣いは、ただ快感を味わうためだけの動きだった。力任せに体を動かし、暴力的に腰を打ちつける。肉棒が膣内を激しく往復し、カリ首が襞をひっかき、襞が肉棒の表面を撫でる。その度に彼らの全身に桃色の電流が走り、体温を上げ、人としての思考回路を灼き切っていく。
「おいリナ、ちょっとは落ち着けって……!」
「んふふ、だーめ♪ 今は私のターンなんだから、ジョージはそこでじっとしててね。私があなたを気持ちよくさせてあげるから♪」
「俺だってお前を気持ちよくさせたいんだよ」
「じゃあ、力づくでやってみればいいじゃない。私を止められるかしら?」
「だったら……!」
後に残ったのは、肉を貪る獣だけだった。
ジョージもまた、獣へと変わる決心をした。
「リナ……ッ!」
「ふえっ?」
ジョージがリナの腰を掴む。そして今度は自分から腰を突き上げ、肉棒をより深々とリナの中に突き刺していく。
「……はにゃあああああん♪」
致命の一撃であった。不意打ちを食らったリナは天を仰ぎ、目を見開いて舌を突き出し、二度目の絶頂を迎えた。それまでの暴力的な動きを止め、代わって電気ショックを受けたかのようにガクガクと体を震わせる。
「気持ちいいか?」
「あっ……ひいぃ……ひゅうううん……♪」
息も絶え絶えとばかりにリナが悶絶する。ジョージの言葉に答える余裕も無い。体が芯から暖かくなり、胸の中が幸せでいっぱいになる。
しかしジョージは動きを止めなかった。
「今度は、俺の番だからな……!」
「あへぇ……へ、ジョージ、何する気……?」
「こうするんだよ!」
意識を取り戻したリナに力強く宣言し、逆襲と言わんばかりに腰を打ち付ける。何度も何度も腰を打ちつけ、そそり立つ肉棒を力任せに膣内に叩き込む。その度に亀頭が子宮口とキスを交わし、二人の背筋を震わせる。
「ンっ、んッ、あんッ、ああん♪」
「どうだっ、リナッ! 気持ちいいか? ちゃんと気持ちいいかッ?」
「ンっ、うんっ! 気持ちいい、ジョージのおちんちん、とっても気持ちいいよッ!」
リナはされるがままだった。結合部分から愛液をばしゃばしゃ垂れ流し、結合部から溢れ出す快感に喜悦の涙を流す。リナは自然とジョージに手を伸ばし、そしてジョージもまたその手を掴む。指を絡ませ、がっしりと手を繋ぎあい、互いに自分が今ここにいることを伝え合う。
愛する人と一緒にいられる。それがリナにはたまらなく嬉しかった。
「ジョージ、好きだよ……! 愛してる! 絶対離さないんだからぁっ!」
「俺だって、絶対に離さないからな! いつまでもお前と一緒にいるからな!」
ジョージはそんなリナを見てさらに熱量を上げ、さらに腰を動かすペースを上げていく。ピストン運動を速め、股間と尻を激しくぶつけていく。
「イクぞ、イクぞ! リナ、もうイクッ!」
「う、うん! うん! ジョージ、来てっ、ジョージ!」
ジョージの声に、リナが声を合わせる。二人は共に絶頂へと向かい、歩調を合わせてひた進んでいく。
「イクっ、出るぞッ! 受け止めろッ!」
ジョージが吠える。直後、溜めこまれていた精液が勢いよく亀頭口から放たれ、膣と子宮を真っ白に染め上げた。
「あ、あ、あああああああん♪」
精液が膣内に叩き込まれるのと同時に、リナもまた三度目の絶頂を迎えた。だらしなくアヘ顔を晒し、ケダモノのように咆哮をあげる。
「あ、ああ……真っ白、おいしい……」
そして彼女は背筋を伸ばし、暫しその悦びの余韻に浸るのだった。
「ごちそうさまでした」
そうして事を終えた後、二人は寄り添うように互いの体を抱きしめながら、情事の後の気怠い感覚を楽しんでいた。その中でリナがジョージの方を向き、にこやかにそう言った。
「今日もありがとうね」
「気にすんなって。お前が喜んでくれたら、それで十分だよ」
ジョージもまた、そんなリナに笑顔で答えた。二人はそれから笑顔を見せあい、互いの体温を感じようとさらに密着した。
そうして厚い胸板に頭を載せ、その体温を感じて頬を緩めながら、リナがジョージに向かって口を開いた。
「ねえ、もう一回いいかな?」
「もう一回?」
「うん。またあなたの血が飲みたくなっちゃった♪」
第二ラウンドの申し出である。リナはキラキラと顔を輝かせながら、そのことをジョージに提案した。
ジョージは苦笑した。しかしノーとは言わなかった。
「食いしん坊だなお前は。太ったらどうするんだ?」
「大丈夫。飲んだ分はあなたと運動して、ちゃんと消費するから」
ね? いいでしょ?
ダンピールの赤い瞳がジョージに訴えかける。その眼は潤み、物欲しげにこちらを見つめていた。
そして最初から、ジョージはそれを拒む気は無かった。
「ああ、いいぞ。今度も首からか?」
「うん♪ ちゃんとこぼさないように飲むから、安心してね♪」
「……お前、血が欲しい時になると本当キャラ変わるよな」
「えへへ♪」
ジョージの問いかけにリナが微笑む。そしてリナはそのままジョージの首筋に顔を近づけ、ゆっくりと口を開けて狙いを定める。
「じゃ、いただきまーす♪」
結局この日は、二人で全八ラウンドこなし、朝まで交わりを続けたのだった。
ダンピールのリナは、まったく唐突にそう言った。深夜零時。リナと、テーブルを挟んで座っていた男の二人きりで、晩酌を楽しんでいた時のことである。
「お酒もいいけど、やっぱり血が飲みたい。具体的に言うとあなたの血が欲しい。ねえジョージ、いいでしょ?」
リナは少し赤らんだ顔を見せながら、男に向かって恥じらいも無く言ってのけた。それから彼女は、自らジョージと呼んだ男に向かってニヤリと笑いながら、持っていた酒瓶を彼に突き付けた。
ジョージはリナが何をしたいのかをすぐに理解した。彼は何も言わず、持っていたグラスをその酒瓶に近づけた。
「別に俺は構わないけど、いいのか? お前、俺の血を飲むと悪酔いするだろ」
瓶が傾き、自分のグラスに黄金色の液体が注がれていく。それを見ながら、ジョージがリナに確認を取る。一方でジョージのグラスに酒を注ぎ終えたリナは、次に自分の持っていたグラスに同じ酒を注ぎながら、そう問うてきた幼馴染兼恋人に対して言ってのけた。
「いいじゃない、酔ったって。好きな人の血で酔っ払えるなんて、素敵なことだと思わないかしら?」
完全に開き直っていた。リナは楽しそうに微笑み、ジョージは恋人に見つめられて恥ずかしげに苦笑した。そして互いに笑いながら、グラスに入った酒を一息に飲み干した。
穏やかな空気が二人を包む。好きな人と酒を飲むのは、やはり格別だ。二人はグラスを空にしてから一息つき、共にそう思った。
「それにね」
そうして余韻に浸っていると、不意にリナがその緋色の目を怪しく輝かせ、まっすぐジョージを見つめてきた。視線に気づいたジョージがリナに目を向けると、そのジョージの青い瞳を覗き込みながらリナが言った。
「それにどうせ酔うなら、お酒じゃなくて血の方がいいわよね♪」
「そういうもんなのか」
人間のジョージには、その感覚がまだよくわからなかった。そして視線を逸らして空のグラスを眺めながら、彼はしみじみとリナに言った。
「お前も好きだな。血ってそんなに美味いのか?」
「ちょっと違うわね。あなたの血だから美味しく感じられるのよ。他の人の血なんて、まずくてとても飲めないわ」
「ふ、ふーん、そうなのか……」
ジョージはどこか嬉しそうだった。例えそれが血液であろうと、絶世の美女に「あなたのだからいいの」と言われて、喜ばない男はいないだろう。
「だから、ね? いいでしょ? 首筋ちゅっちゅさせて? ねっ?」
リナが甘えるように血をねだる。ダンピールのリナは、そんな己の吸血衝動を抑え込もうとはしなかった。
既にそれに屈していたからだ。
彼女が「敗北」したのは一年前、ジョージから告白を受けた時だった。想い人から告白を受けたリナは、嬉しさのあまり心中で燻っていた吸血衝動に火をつけてしまった。火がついた衝動はあっという間に燃え上がり、魔物の本能が人間の理性を凌駕するのに大して時間はかからなかった。
ジョージが身の危険を感じた時には手遅れだった。リナは愛欲に任せてジョージを押し倒し、その首筋に鋭い牙を突き立てたのだ。欲望に屈した、衝動に負けたという人間らしい後悔は、ジョージの血の味を覚えた時点で吹き飛んだ。吸血を終えた後、感情のままにセックスを始めたのは言うまでもない。
「じゃあ早速、ちゅっちゅするね♪」
「ああ、いいぞ。今日も首からか?」
「うん♪ ちゃんとこぼさないように飲むから、安心してね♪」
「……お前、血が欲しい時になると本当キャラ変わるよな」
そしてこれ以降、リナの精神バランスは完全に崩壊した。半人半魔でありながら魔物の価値観と本能が優先されるようになり、良い意味で言えば「素直」になった。リナは吸血欲求を隠さなくなり、さらに彼女は血を飲むほどに理性と良識を失っていった。ただ愛する者とのセックスのみを求める、淫らな獣へと堕ちていったのである。
「あんまり飲みすぎるなよ?」
「わかってまーす。えへへー♪ ジョージ、だーいすきっ♪ かぷっ♪」
その姿は、まさに血に酔うようであった。ジョージはそんなリナを、純粋に可愛いと思った。少なくとも衝動に負けて魔物側に転落したこのダンピールを、意志薄弱と弾劾するようなことは一度もしなかった。好きな人に求められて悪い感情を抱く奴など、この世にいるのだろうか?
「ん、ちゅうううっ……」
首筋に歯を突き立て、ジョージの血を飲み込む。赤い液体が喉を通り、愛しいジョージの命の鼓動が全身に染み渡る。
体の中にジョージが入っていく。愛するジョージに内側から征服される。その事実が、リナに途方もない幸福感を与えた。脳味噌に甘い電流が走り、思考をどろどろに溶かしていく。股間から愛液が迸り、お漏らしをしたかのようにズボンを濡らしていく。
それまで「人間の道徳観」を理由に吸血行為を敬遠していた自分が可哀想に思える程に、それはリナにとって強烈な快感だった。
「んく、んく、ちゅうう……」
「ッ……くっ……」
一方のジョージは、吸血中に痛みを感じたりはしなかった。代わりに自分の中にある何か、生命とも言うべきものが吸い取られていくような、体が軽くなっていく感覚を味わっていた。しかし彼は、それさえも不快とは感じなかった。
ただリナに求められている。その喜びだけが、彼の心を満たしていた。
「ほらリナ、もっとくっついて……」
「んっ、んむ? ……んふふ♪ ちゅうううう……っ」
吸血はたっぷり十秒続いた。その間、ジョージはリナの体を優しく抱きしめた。リナもその抱擁を笑顔で受け入れ、自分も彼を抱き返しながら、たっぷり吸血を楽しんだ。
想い人に抱き留められながら、想い人の血を存分に味わう。ヴァンパイアの血を引くリナにとって、これはまさに至福の時間であった。
「……ぷはっ」
そして十秒後、リナは名残惜しげに口を離した。口の端からはジョージの血が零れ落ち、しかしそれを拭き取る余裕もないほどに、彼女の顔は快楽に蕩けていた。頬は真っ赤に染まり、眉はとろんと垂れ下がり、ジョージ以外何も見えていないようであった。
「……最高♪」
そうして天へと上るような心地を味わいながら、リナはジョージにしなだれかかった。豊満な乳房がジョージの胸板にぶつかり、柔らかな女の胸の感触を男の心に伝えていく。それからリナはだらしなく緩みきった顔のままジョージの肩に顎を乗せ、彼の耳元で甘えるような声を出した。
「ごちそうさまでした。ジョージ、ありがとうね」
「どういたしまして」
「えへへ」
ジョージの言葉を受け、リナが嬉しそうに笑う。ジョージがそんなリナの背中に手を回し、彼女の丸まった背中を優しく撫でる。その暖かな感触を受けてリナは嬉しそうに嘶き、お返しとばかりにジョージに頬ずりをする。
「ジョージの体、あったかい、幸せ……すりすりっ」
「おいリナ、くすぐったいよ。犬みたいにゴロゴロするなって」
「いいの。今の私はあなたのわんこだから、ゴロゴロしてもいいことになってるんだよ」
「無茶苦茶な理屈だなあ」
「わんわん♪ ご主人様っ♪」
「……まったく。うちのわんこは甘えん坊だな」
完全に酔っていた。そうして酔いに任せて獣のようにわんわん甘えるリナを、ジョージは全身で受け入れた。リナもそんなジョージに手心は加えず、わんわんと鳴きながら全力で彼に甘えていく。
「ジョージ、本当に暖かい……幸せ……わんっ」
「言わんこっちゃない。酔い過ぎだよお前」
「えへへー。ジョージが素敵すぎるのが悪いんだもーん」
「意味が分からん」
「でも、悪い気はしないでしょ?」
「まあな」
緩やかな、相手を慮る優しいスキンシップ。しかしそれは、二人の理性を剥がすのに十分な効力を発揮した。
「ねえ、ジョージ」
やがて犬の真似を止め、リナが抱き合ったまま顔を離す。そして至近距離でジョージと見つめ合う。
目は蕩け、僅かに開いた口から吐息がこぼれる。完全に出来上がっていた。犬は人に戻り、すぐまた獣へ堕ちていった。
「もう私、我慢できない……しよ?」
そう求めるダンピールの全身から魔力が流れ始める。ジョージの血を受けて強化された魔の力が、ジョージの獣欲に火をつける。
一緒に酔おう。ケダモノみたいなセックスをしよう。快楽に溺れたリナの思念が、魔力を通してジョージの脳へ飛んでいく。彼の脳を甘く溶かしていく。
「わたしと、えっち、しよ?」
「……ああ」
そしてジョージはその誘惑に、自分から乗った。
彼は背中に置いていた手を離し、代わって包み込むようにリナの両頬に優しく手を添える。自分の顔を包み込む恋人の手の感触に、リナがうっとりする。
「行くぞ」
そのリナの唇を、ジョージが自分のそれで塞ぐ。ジョージの不意打ちにリナは一瞬驚き、しかしすぐにそれを受け入れ、悦びに蕩けた顔を浮かべて自分から舌を伸ばす。
「んっ、ちゅぱ、くちゅ……ちゅ……」
「ちゅ、くちゅ……ちゅっ」
唇を密着させ、舌を絡め合う。互いの唾液を交換し、快楽の沼に仲良く沈んでいく。
「ちゅ、ちゅっ……ん……」
「くちゅ……ぷはっ……はあ、はあ……」
そして暫くして、二人は名残惜しそうに唇を離す。唾液が糸を引き、濡れた瞳で相手を見つめ合う。
「お酒の味がするね」
リナが囁く。ジョージが頷き、それに応える。
「さっきまで飲んでたからな」
「スコッチはやっぱり強かったかな?」
「今日はこれ飲もうよって誘ってきたのはそっちだろ」
「ぶー」
自分が晩酌を提案したことを指摘されたリナが、面白くなさそうに膨れっ面を見せる。普段のクールな彼女は決して見せない、感情豊かな表情。ジョージはその顔すら愛おしいと感じ、不満げなダンピールの頭を優しく撫でる。
頭を撫でられたリナは一瞬驚き、そしてすぐにその顔をだらしなく崩す。それまで抱いていた不満を遠くへ投げ捨て、幸福に満ちた淫蕩な表情を彼に見せる。
「もう、ジョージってば。そうやって甘やかしたくらいで、私は誤魔化されないんだからねっ」
口では気丈に振舞うが、顔は惚けたままだった。ジョージはそんなリナの仕草を愛らしいと感じ、そしてもっと可愛い姿が見たいと思い、彼女の下顎を指で軽くさすった。するとリナは気持ちよさそうに目を細め、猫のようにごろごろと鳴きだした。
「犬の次は猫か。本当かわいいなお前」
「ううんっ、くすぐったいよぉ……♪」
「でも好きなんだろ?」
「……うん、大好き」
嫌いなわけがなかった。ジョージのしてくること全てが、リナは大好きだった。
そしてジョージもまた、こうして自分に甘えてくるリナが大好きだった。もっと甘やかしたいと思い、彼はリナをいじり続けた。
「ほら、にゃんこちゃん。もっとこちょこちょしてやるぞ」
「にゃあん♪ 顎くりくり、駄目ぇ♪ 気持ちよすぎて馬鹿になっちゃう♪」
「なっちゃえ、なっちゃえ。子猫が難しいこと考えるんじゃない。もっと気持ちよくなっていいんだぞ」
「いいの?」
「ああ」
「……じゃあなるにゃん。馬鹿になるにゃん♪ ご主人様の指、気持ちいいにゃん♪」
「そうそう、いつもクールに振舞ってるんだから、今くらい羽目を外したってバチは当たらないぜ?」
「にゃん、にゃん♪」
そして小動物と化したリナはジョージのなすがまま、彼の指の感触を目一杯楽しんだ。秘所に触れない愛撫というのもあるもので、このやり取りだけでリナの膣からは蜜が溢れ出し、ジョージの肉棒は硬さを増していった。
「ジョージ……ほしいにゃん」
そうしてジョージがリナの顎を撫でていると、リナが彼に熱っぽい声を投げかける。ジョージもそれに気づいて指の動きを止め、彼女を見つめながら頷く。
同意を得たリナは、ゆっくりと立ち上がり、わざと焦らすようにズボンを脱いでいった。飾り気のない白地のパンツが露わとなり、それも躊躇うことなく脱ぎ捨てる。そうして下半身を露出させた後、再度腰を下ろし、今度はジョージのズボンのチャックに手をかけた。
「わあ……」
ジョージの肉棒は、既に臨戦態勢を整えていた。天を衝くように堅くそそり立ったそれを見て、リナは思わずため息をついた。
今日もいっぱい気持ちよくしてくれそうだ。目にハートマークすら浮かべたリナは、恍惚とした表情でそれを見つめた。
こんな極上のごちそうを前にして、我慢なんて出来るはずなかった。
「もう、我慢できない……いれていいよね……?」
「ああ、俺も――」
「にゃあん♪」
ジョージの言葉を待たずに、リナが腰を下ろす。濡れそぼった膣口と亀頭がふれあい、そのまま一気に剛直を飲み込む。
「うっ……くうっ……!」
「な、にゃ、にゃああああん♪」
突然襲い掛かって来た射精衝動。ジョージは歯を食いしばってそれに耐えた。入れただけで射精するというのは、さすがに男のプライドが許さなかった。
一方のリナは、肉棒が膣を抉っていく感覚に背筋を震わせ、快楽のままに絶叫した。こちらは恥もプライドもなく、見せつけるように絶頂してみせた。髪を振り乱し、舌を突き出して幸せそうに喘ぐリナの姿は、たまらなく卑猥だった。
「ま、まだまだ……もっと気持ちよくなるんだからね……♪」
そしてリナは相手の承諾も得ずに、そのまま腰を振り始めた。とろけた顔でジョージを見下ろし、騎乗位で胸をゆさゆさと揺らし、愛液で濡れきった膣肉で肉棒を扱き上げる。
「にゃん、にゃん、にゃん♪ ジョージのおちんちん、とっても気持ちいい♪」
「ま、待て、リナ……!」
リナの腰遣いは、ただ快感を味わうためだけの動きだった。力任せに体を動かし、暴力的に腰を打ちつける。肉棒が膣内を激しく往復し、カリ首が襞をひっかき、襞が肉棒の表面を撫でる。その度に彼らの全身に桃色の電流が走り、体温を上げ、人としての思考回路を灼き切っていく。
「おいリナ、ちょっとは落ち着けって……!」
「んふふ、だーめ♪ 今は私のターンなんだから、ジョージはそこでじっとしててね。私があなたを気持ちよくさせてあげるから♪」
「俺だってお前を気持ちよくさせたいんだよ」
「じゃあ、力づくでやってみればいいじゃない。私を止められるかしら?」
「だったら……!」
後に残ったのは、肉を貪る獣だけだった。
ジョージもまた、獣へと変わる決心をした。
「リナ……ッ!」
「ふえっ?」
ジョージがリナの腰を掴む。そして今度は自分から腰を突き上げ、肉棒をより深々とリナの中に突き刺していく。
「……はにゃあああああん♪」
致命の一撃であった。不意打ちを食らったリナは天を仰ぎ、目を見開いて舌を突き出し、二度目の絶頂を迎えた。それまでの暴力的な動きを止め、代わって電気ショックを受けたかのようにガクガクと体を震わせる。
「気持ちいいか?」
「あっ……ひいぃ……ひゅうううん……♪」
息も絶え絶えとばかりにリナが悶絶する。ジョージの言葉に答える余裕も無い。体が芯から暖かくなり、胸の中が幸せでいっぱいになる。
しかしジョージは動きを止めなかった。
「今度は、俺の番だからな……!」
「あへぇ……へ、ジョージ、何する気……?」
「こうするんだよ!」
意識を取り戻したリナに力強く宣言し、逆襲と言わんばかりに腰を打ち付ける。何度も何度も腰を打ちつけ、そそり立つ肉棒を力任せに膣内に叩き込む。その度に亀頭が子宮口とキスを交わし、二人の背筋を震わせる。
「ンっ、んッ、あんッ、ああん♪」
「どうだっ、リナッ! 気持ちいいか? ちゃんと気持ちいいかッ?」
「ンっ、うんっ! 気持ちいい、ジョージのおちんちん、とっても気持ちいいよッ!」
リナはされるがままだった。結合部分から愛液をばしゃばしゃ垂れ流し、結合部から溢れ出す快感に喜悦の涙を流す。リナは自然とジョージに手を伸ばし、そしてジョージもまたその手を掴む。指を絡ませ、がっしりと手を繋ぎあい、互いに自分が今ここにいることを伝え合う。
愛する人と一緒にいられる。それがリナにはたまらなく嬉しかった。
「ジョージ、好きだよ……! 愛してる! 絶対離さないんだからぁっ!」
「俺だって、絶対に離さないからな! いつまでもお前と一緒にいるからな!」
ジョージはそんなリナを見てさらに熱量を上げ、さらに腰を動かすペースを上げていく。ピストン運動を速め、股間と尻を激しくぶつけていく。
「イクぞ、イクぞ! リナ、もうイクッ!」
「う、うん! うん! ジョージ、来てっ、ジョージ!」
ジョージの声に、リナが声を合わせる。二人は共に絶頂へと向かい、歩調を合わせてひた進んでいく。
「イクっ、出るぞッ! 受け止めろッ!」
ジョージが吠える。直後、溜めこまれていた精液が勢いよく亀頭口から放たれ、膣と子宮を真っ白に染め上げた。
「あ、あ、あああああああん♪」
精液が膣内に叩き込まれるのと同時に、リナもまた三度目の絶頂を迎えた。だらしなくアヘ顔を晒し、ケダモノのように咆哮をあげる。
「あ、ああ……真っ白、おいしい……」
そして彼女は背筋を伸ばし、暫しその悦びの余韻に浸るのだった。
「ごちそうさまでした」
そうして事を終えた後、二人は寄り添うように互いの体を抱きしめながら、情事の後の気怠い感覚を楽しんでいた。その中でリナがジョージの方を向き、にこやかにそう言った。
「今日もありがとうね」
「気にすんなって。お前が喜んでくれたら、それで十分だよ」
ジョージもまた、そんなリナに笑顔で答えた。二人はそれから笑顔を見せあい、互いの体温を感じようとさらに密着した。
そうして厚い胸板に頭を載せ、その体温を感じて頬を緩めながら、リナがジョージに向かって口を開いた。
「ねえ、もう一回いいかな?」
「もう一回?」
「うん。またあなたの血が飲みたくなっちゃった♪」
第二ラウンドの申し出である。リナはキラキラと顔を輝かせながら、そのことをジョージに提案した。
ジョージは苦笑した。しかしノーとは言わなかった。
「食いしん坊だなお前は。太ったらどうするんだ?」
「大丈夫。飲んだ分はあなたと運動して、ちゃんと消費するから」
ね? いいでしょ?
ダンピールの赤い瞳がジョージに訴えかける。その眼は潤み、物欲しげにこちらを見つめていた。
そして最初から、ジョージはそれを拒む気は無かった。
「ああ、いいぞ。今度も首からか?」
「うん♪ ちゃんとこぼさないように飲むから、安心してね♪」
「……お前、血が欲しい時になると本当キャラ変わるよな」
「えへへ♪」
ジョージの問いかけにリナが微笑む。そしてリナはそのままジョージの首筋に顔を近づけ、ゆっくりと口を開けて狙いを定める。
「じゃ、いただきまーす♪」
結局この日は、二人で全八ラウンドこなし、朝まで交わりを続けたのだった。
16/09/10 19:04更新 / 黒尻尾