読切小説
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エマージェンシー!!!
 この世の全てが想定通りに行くとは限らない。長い人生の中では、必ず大なり小なり「予想外の事態」に直面するものだ。それを防ぐことは誰にも出来ない。そういうものであると開き直るしかない。
 むしろ大切なのは、そうした「予想外」に遭遇した後どう動くかである。決して思考を停止してはいけない。今いる状況と持っている知識を最大限利用し、迫りくるピンチに柔軟に対処する事が肝要なのだ。それこそが長生きの秘訣であり、冒険者が成功を収める重要なファクターであった。
 ドニー・ゴーツもまた、そうしてピンチを切り抜け、成功を収めた冒険者の一人であった。
 
 
 
 
 客観的に見て、その時ドニーに訪れた「予想外の事態」は、最悪の部類に入るものであった。この時彼は町のギルドから一つの依頼を受け、町はずれにある洞窟の一つにやって来ていた。
 依頼内容は魔物娘の退治であった。近頃洞窟に住み着き、時折町にやって来ては畑を荒らしていくオーク達を懲らしめてほしい。そんな内容の依頼である。己の腕に自信を持ち、実際腕の立つ冒険者として名を馳せていたドニーは、それ故最小限の装備――睡眠魔法のエンチャントされたナイフと拘束用のロープ、欲情抑制薬とランタン――だけをバッグに詰め込んで出発した。ギルドに屯する他の冒険者仲間や、門前で彼を見送ったリザードマンの衛兵も、彼の力量と装備を鑑みて何の問題もないと判断した。
 ドニーならこの程度の依頼、そんな装備でも十分こなせるだろう。ドニー含む誰もがそう思っていた。
 
「む? なんだお前は。ここに何か用か?」

 しかし、実際に洞窟の中に入ったドニーを待ち受けていたのは、オークでは無かった。
 
「どうかしたのか、人間? もしかして、私に用があって来たのか?」

 褐色の肌と漆黒の翼を持ち、鋭く生え揃った赤い爪と背中から生え伸ばした口付きの触手を備えた魔物娘。
 ドラゴン属のジャバウォックが、洞窟内にある岩棚の上に腰を降ろしながらじっとこちらを見つめていたのだ。
 
「……」

 子豚ちゃんがいると思ったらドラゴン様が鎮座なさっていた。
 こんなの想定していない。ていうか普通に考えて予想できるわけねえだろこんなの。
 ドニーの頭の中は真っ白になった。
 そしてそんな感じで呆然と立ち尽くすドニーをじっと見つめながら、そのジャバウォックは首を傾げて言った。
 
「おい、いったいどうしたというのだ? そうやって突っ立っているだけでは、何もわからんぞ。せめてここに来た理由くらいは教えてほしいのだがな」
「――あ、ああ」

 そんなジャバウォックからの追及を受けて、ドニーの頭はようやく再回転を始めた。しかし一秒二秒で妙案など浮かぶはずもなく、結局ドニーはそのジャバウォックに対し、自分がここに来た理由を正直に話すことにした。
 
「なるほど。畑を荒らしていたオーク共を懲らしめるためか。そのオークならば、先程私が追い払ったぞ。ちょっとばかり強く言ってやったから、当分はここに近づくことも無いだろう」
「追っ払ってくれたのか?」
「ああ。目の前でぐうすか寝息を立てていたのが邪魔だったのでな。出て行けと言ったら、あいつら尻尾を巻いて飛び出していったよ」
「それはいつの話だ?」
「昨晩のことだ」

 ドニーから事情を聞いたジャバウォックは、特に自慢するでもなく淡々とそう言い返した。期せずしてドニーの依頼は解決となったわけだが、ドニーの好奇心はまだ収まらなかった。
 
「なんでドラゴン属のあんたが、こんなところにいるんだ? ここにジャバウォックが住み着いたなんて話、聞いたことも無いぞ」
「それは簡単だ。ここに不思議の国と通じるポータルを開いたからだ。私のそばにある奴がそうだな」

 ドニーからの問いかけにそう答えながら、ジャバウォックは自分の近くにあるポータルを親指で指し示した。彼女曰く、適当に座標を設定したらたまたまここに繋がったのだという。
 
「お前にとってはまさに予想外、というわけだな」
「ああ。まったくだよ」
 
 ますます想定できねえよこんな事態。ドニーは呆れるばかりだったが、この時彼は依頼達成に対する安堵感と予想外すぎる事態に直面した動揺から、あることをすっかり失念していた。
 
「……しかし腹が減ったな。確かお前の話では、この近くに町があって、畑もあるんだったな?」

 ジャバウォックは人並み外れた知性を持っていること。
 そしてその高い知性を、もっぱら淫らな方面にのみ傾けていることである。
 
「どうしようかなあ。新鮮な野菜が食べたいのだが、あいにく金品の類も持ち合わせていないんだよなあ」

 そう言いながら、ジャバウォックがドニーを見つめる。
 僅かばかり頬を赤く染め、不敵な笑みで得物を見据える。
 オークが消えたとわかった時点で、ドニーは逃げるべきだった。そして真っ先にギルドに飛び込み、ジャバウォックがやってきたと正直に話すべきだった。
 自分が致命的なミスを犯したことに気づいた時には、もう手遅れだった。
 
「……代わりに私が襲ってしまおうかな」

 ジャバウォックがニヤリと笑う。ようやくドラゴンの企みに気づいたドニーの額から冷や汗が流れ落ちる。
 
「お前は別に気にしなくともよい。このまま帰っても構わんぞ。これはただの独り言なのだからな。そう、今から町に向かって畑を根こそぎ荒らしてしまおうかと思案している一人のジャバウォックの、他愛もない独り言なのだから」
「まさか、お前――」

 ドニーは馬鹿ではない。彼の聡明な頭脳は、眼前のドラゴンが何を考えているのかをここで完全に理解した。
 ドラゴンの胃袋はオークの比ではない。このジャバウォックが本気を出せば、町の畑を全て破壊することなど朝飯前だろう。しかもそのジャバウォックは、それまでオークの住んでいた洞窟からやって来ている。もしここでドニーが何も聞かなかった風を装って洞窟から抜け出し、町に依頼達成の報告をした直後にその洞窟からジャバウォックが来襲しようものなら、ドニーは虚偽の報告をした大馬鹿者として、世間の嘲笑と憎悪を一身に受ける羽目になるだろう。
 最悪、ドニーはジャバウォックを洞窟に呼び出した張本人、さらにはオークすらもこの男が手柄のために呼んだのではないかと疑いをかけられ、同じ人間から命を狙われるかもしれない。ひょっとしたら、殺された方がマシな目に遭うかもしれない。
 
「腹減ったなあ。お腹と背中がくっついてしまいそうだ。このまま誰かが引き留めて、何か別のものでお腹いっぱいにしてくれなければ、本当に荒らしてしまうかもしれないなあ」

 それを阻止するためには、ジャバウォックを「退治」してしまうより他にない。そして聡明なドニーは、このジャバウォックと呼ばれる種族が何を弱点とし、何をもって「退治」となるのかを理解していた。
 何よりこのジャバウォックが、本当は心の底から「退治」されたがっていることも、彼はまた理解していた。
 それ以外に自分が助かる方法がないことも。
 
「はてさて、どこかに悪いドラゴンを退治してくれる、勇敢な男はいないものか……」

 股座から布地越しに透明な液体を垂れ流しながら、ジャバウォックが悠然と独り言を呟く。赤く染まった頬は汗ばみ、半開きの口から熱い吐息が漏れる。目は潤み、眉根は下がり、熱に浮かれた視線をドニーに向ける。
 
「私の熱を冷まし、猛りを鎮めてくれる勇者……いたら返事をしてくれないだろうか……?」
「それは……」

 頭の柔軟さで言えば、先方が一枚上手だった。ドニーは完全にジャバウォックの術中にはまっていた。
 ドラゴンはもう己の本心を隠そうとはしなかった。もはやどこにも逃げ場所は無かったからだ。
 
 
 
 
 状況はジャバウォックの計画通りに進んでいた。この男は自身の破滅を避けるために、きっと死に物狂いで自分を「退治」しようとしてくるだろう。後はそうしておっかなびっくり襲ってきた男を返り討ちにし、自分の虜にしてお持ち帰りするだけである。己の優位を保ったまま夫を手に入れる、まったく完璧な作戦だ。
 冒険者の登場という予想外の事態を、逆にチャンスへと切り替えてみせるこの手腕。我ながら恐ろしいものだ。ジャバウォックはそうやって自分の思考力を鑑み、その柔軟さに大きく満足していた。
 しかし計画とは大抵狂うものである。今回のジャバウォックのそれも例外ではなかった。

「……そうだな。ここまで来たら、もう俺がお前を退治してやるしか方法は無いよな」

 ドニーが言い放つ。追い詰められたにしてはやけに落ち着いた、開き直ったような口調であった。ジャバウォックはそれが少し気になった。一方の彼は、それから台詞と同じ様にリラックスした動きで背負っていたバッグを地面に降ろし、自然な流れで上着とシャツとズボンを脱いでトランクス一丁になった。そして脱いだ衣服をバッグの横に置き、その場で腰を下ろしてバッグの口を開けた。
 その一挙一動には決意と活力が満ちていた。嫌々やらされている者の動きではなく、またドラゴン属を前に怖気づいた者の動きでもなかった。
 
「覚悟しろよ。今からこの俺が、二度と悪さ出来ないようにお前を懲らしめてやるからなあ?」
「う、うん? いきなりどうした?」

 そんな感じでいきなり調子良くなった男を見て、ジャバウォックは思わず驚きを口にした。そのジャバウォックの前で、ドニーはバッグの中からおもむろにロープを取り出した。
 その束を手に持ちながら、ほぼ全裸となったドニーがニヤニヤ笑ってドラゴンと向き合う。そして固唾を飲んで成り行きを見守るジャバウォックに向かって、ドニーが大きな声で言い放った。

「緊縛の刑だ! お前みたいなエロドラゴンは、俺が縛ってめちゃくちゃにしてやる!」

 ドニーは聡明な男であると同時に空気の読める男であり、そして自分のリビドーを曝け出すことを躊躇しない男であった。
 ついでに言うと、彼の性癖は中々に個性的なものだった。はっきり言えば変態だった。

「この勇者ドニー様が、今からお前をアヘアヘ言わせてやる! 俺の聖剣でお前を貫いてやるぜ!」
「――!」

 そうしていきなり大声で変態的な宣言をしたドニーを前にして、ジャバウォックは思わず息をのんだ。完全に計算外だった。この男がこんな大胆なリアクションを――堂々と凄まじい反応を返してくるとは思いもしなかった。
 
「勇者だと……お前、本気で……!?」
 
 しかしその一方で、ドニーの宣言を聞いた彼女の心臓は大きく跳ねた。頭の中が魔物の本能から来る期待と悦びでビリビリ痺れ、体が火照って全身から珠の汗が浮き上がっていく。さらに彼女の視線は偶然トランクスを捉え、そこで布地を突き破らんほどにそそり立っていた男の「聖剣」を見て、さらにドキドキを加速させていく。
 この男は本気だ。それを知り、より一層目を輝かせるジャバウォックに対し、ドニーがニヤリと笑っていい放つ。
 
「誘ったのはお前だからな。今更話を無かったことにしようとしても遅いぜ」
「……そうか、お前もその気になったということか」

 勇者にふさわしい、堂々たる態度を取るほぼ全裸のドニーを前にして、ジャバウォックは一つため息をついた。しかしそれは自分の計画を乱されたことへの怒りや、男の浅ましさを感じたことから出た負のため息ではない。
 むしろ嬉しかった。それ以外に方法がないからという後ろ向きな思考からでなく、明らかに自分の意志で己を犯そうとしてきたこの男に、ジャバウォックは感動すら覚えていた。彼女は男を犯すのも、男に犯されるのも大好きだったのだ。
 
「お前がそう来るのならば、私が取る行動は一つ……!」
 
 なお、彼女はどちらかと言えばオスにぐちゃぐちゃにされる方が好きだった。こいつもこいつで変態だった。
 
「――ああ! ま、まさかお前は、あの伝説の勇者だったというのか!? 伝説のデーモンスレイヤー……私はなんて奴に挑んでしまったのだ!」

 なのでジャバウォックも、男の行為に乗っかることにした。もう計画なんてどうでもよかった。そもそも彼女が策を弄したのも、この男とずっこんばっこんしたかったからだ。向こうから本気で襲ってきてくれるのなら願ったりだ。
 
「しくじった……私はこれから、この人間の聖なるおちんちんに貫かれて、アヘアヘ言わされてしまうというのか……!」
 
 故に彼女は、大げさな演技でその場に倒れ込んだ。カムヒアセックス。どんと来いおちんちんだ。
 
「なんということだー! 私の人生もここまでなのかー!」
「ふ、ふふふっ、覚悟しやがれ。俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやるぜ」

 あからさまな棒読みで言葉を吐くジャバウォックに、ドニーがノリノリで応える。本当は予想以上にジャバウォックがウキウキした調子で合わせてきたことに若干面食らっていたが、それについて突っ込むことはしなかった。彼としても、こんな美人とやれる絶好のチャンスを逃したくは無かった。
 据え膳食わぬはなんとやらだ。
 
「早速縛ってやるぜ。ほら、動くんじゃねえ!」
「こらっ、やめろっ。何をするっ」
「ぐへへ、よいではないかよいではないか」
「あーれー! おたすけー!」
「……あ、どうしよう。ロープ長すぎだこれ」
「余った部分は私が切ってやろう。いいからまずは縛るのだ」
「お、おう」

 そうして二人は何度か素に戻りつつ、共同でジャバウォックの体を縛ることに成功したのだった。
 二人してノリノリだった。変態同士が共鳴した結果であった。
 
 
 
 
「うーむ、我ながら会心の出来だ」
「当然だろう。この私が直々に作成協力したのだからな。これくらいは当然のことだ」

 それから数分後、ドニーとジャバウォックは二人して満足そうに言葉を交わし合った。この時ジャバウォックは全裸になっており、その体には俗にいう「亀甲縛り」の形でロープが巻き付けられていた。おまけに両手と口付きの触手は後ろに回されて纏めて縛り上げられており、上半身の自由は完全に奪われた格好になっていた。足は自由になっていたが、逃げだす気配は微塵も見せなかった。
 そうして二人がかりで完成させた「芸術品」を見ながら、人間とジャバウォックは互いにやり切った笑みを見せた。ドニーがジャバウォックに向けて口を開いたのは、その直後だった。
 
「ところで、お前なんていう名前なんだ? このまま名前も知らずに本番をするのは、さすがにどうかと思うんだが」
「そういえば、まだ互いに自己紹介もしていなかったな。すっかり忘れていたよ」

 引き締まった肉体に縄を食い込ませ、見る者の嗜虐心をそそる淫猥な姿を堂々と晒しながら、ジャバウォックが平然とした口調で言い返す。そしてジャバウォックは澄まし顔のまま、自分の名をドニーに告げた。
 
「私はセレインだ。よろしく頼む」
「俺はドニーだ」
「ドニーと言うのか。格好いいな。ではさっそくドニーのおちんちんを見せてくれないか」

 形ばかりのお世辞を述べた後、速攻でセレインが本題に入る。その貪欲さにドニーは思わず苦笑を漏らしたが、彼としてもさっさと本番に移りたい気持ちはあったので、大人しくそのリクエストに従うことにした。
 
「よしよし、じゃあ今から見せてやるからな」

 ドニーがそう言ってトランクスを両手で掴み、セレインの目の前で勢いよくずり降ろす。
 直後、既に臨戦態勢を整えた彼の肉棒が、封印を解かれたことにより勢いよく飛び出した。太くしなやかに反り、雄々しくそそり立つそれを間近に見て、セレインは思わず歓声を上げた。
 
「おお! これぞまさにエクスカリバー! 私は今からこれで討伐されるのだな!」
「その通りだ。今からお前を滅多切りにしてやるからな。ほら、わかったら跪くんだ」
「いいとも。私を存分にズタズタにしてくれ」

 ドニーの脅しめいた言葉にセレインは笑顔で頷き、素直にその場で腰を降ろす。膝を地面につけながら足を小刻みに曲げ、彼の肉棒が自分の顔と同じ位置に来るよう調節する。
 
「ああ、お前の臭いを近くで感じる……猛々しいオスの臭いだ……」

 そして肉棒から放たれるむせかえる程の精臭を顔面で感じ、うっとりとした表情でセレインが呟く。その恍惚とした表情を見ただけで、ドニーの亀頭からは先走り汁が垂れ始め、もっと吐き出したいと本能が叫び出す。
 その脳味噌の疼きを理性で抑えつつ、ドニーは不敵な笑みを浮かべながらセレインの顔に肉棒を近づけていった。
 
「じゃあまずは、お前の顔から切り刻んでやろう。やってくれるな?」
「いいとも。お前の聖剣、存分に味わわせてもらうとしよう」

 ドニーの求めに、セレインが快く頷く。そして淫らなジャバウォックは自分からも顔を近づけ、そのそそり立つ肉棒の裏筋の部分を愛おしげに頬擦りした。亀頭から流れ落ちてきた先走り汁を頬に染み込ませようとするように、ジャバウォックはうっとりとした顔で熱心に頬での愛撫を続けた。
 
「お前のおちんちん、熱くてヌルヌルで……はあ、たまらん……」
「うっ……セレイン、そろそろ……」

 そんなこそばゆい感覚に耐えかねたドニーが、我慢できないとばかりにセレインにリクエストする。請われたセレインもまた彼の言わんとすることを理解し、一旦肉棒から顔を離した。
 そしてドニーの目の前で大きく口を開け、間髪入れずに肉棒を頬張る。ジャバウォックの口内は熱く、肉棒に絡みつく舌はにゅるにゅると柔らかかった。ドニーは腰が抜けるほどの快感に身悶えし、セレインはそうして頬張った肉棒を唾液で汚しながらおしゃぶりを始めた。
 
「じゅっ、じゅるるっ、じゅぽっ!」

 上目遣いでじっとドニーを見つめがら頭を前後に動かし、一心不乱におちんちんを口で扱いていく。ドニーはそうしてこちらを見てくるセレインの眼差しを正面から見つめ返す。
 
「んふふ、どうだ? もっと激しくしていくからな……じゅる、じゅちゅっ! ずろろろっ!」
 
 ドニーの視線を受けながら、セレインがいったん動きを止めて肉棒を含みながら言葉を放つ。それからまた上目遣いのまま、前よりもずっと激しい音を立てながら顔を前後に動かしていく。
 褐色のドラゴンが鼻の下を伸ばし、下品な水音を立てながら自分のペニスを舐めしゃぶっていく。、そんなたまらなく卑猥な姿を前にして、ドニーの限界はあっという間に訪れた。
 
「セレイン……ッ!」
「んっ!? ふっ、ぐむうっ……!」

 ドニーがセレインの側頭部から生えた角を掴み、その顔を己の股間に押しつけながら射精する。白く粘ついた白濁が喉を犯し、食道を通って胃袋へ駆け抜ける。
 その奔流の勢いと、喉から込み上げてくる鼻を突く精臭を全身で感じ、セレインは軽く絶頂した。
 
「ふうううぅぅ――ッ!」
「はっ、はあ、はあー……!」

 肉棒を深々と咥えたまま、セレインがくぐもった雄叫びを上げる。一方のドニーも、初めて味わう射精の快感に身を震わせ、セレインの頭を掴んだまま呆然とした表情を浮かべた。
 
「ぐ、ぐぶっ、けほっ……! うん、んっ、むぐ……ぷはぁ……」

 やがて我に返ったドニーが、セレインの顔を解放する。ドニーの手から離れたセレインはすぐに口から肉棒を引き抜き、若干手こずりながらも口内に残っていた精液を飲み干していった。手が使えないので、放たれた精を塗料にして角や触手に塗り込むことが出来なかったのだ。零すなどもっての外である。
 だからセレインは、一滴残らず飲み干すことにした。これはこれで美味いので、さして不満では無かった。
 
「けほ、けほっ……ふふっ。予想通り、オスの精液とは中々に美味なのだな。まったく癖になりそうだよ」
「そりゃどうも……」

 そうして全て飲み終え、その顔を楽しげに破顔させるセレインの言葉を聞きながら、ドニーも疲れたように彼女の前に腰を降ろす。一仕事終えたような心地よい倦怠感が彼の体を包んでいく。
 そんな心地でいたドニーが息を整えていると、精液を完全に飲み終えたセレインがジト目で彼に言ってきた。
 
「しかしドニーよ、いくらなんでも早すぎないか? もっとおしゃぶりさせてくれてもバチは当たらんと思うのだが」
「仕方ないだろ。こういうことされるの初めてだったんだから」
「えっ?」

 唐突な告白に、セレインは目を丸くした。そして全裸で亀甲縛りのジャバウォックは、興味深そうにドニーを見つめながら彼に問いかけた。
 
「まさかお前、セックスをしたことはないのか?」
「ああ」
「童貞なのか?」
「……そうだよ」
「あんな変態なことやっておいて童貞なのか?」
「やるだけならタダだろ」

 自分の変態的な格好を棚に上げてそう言ってきたジャバウォックに対し、ドニーは気まずそうにそう言い返してからそっぽを向いた。セレインにとって、それは予想外の返答であった。あんなことをしてのけたのだから、彼女はてっきり、ドニーは相当なヤリ手なのだろうと予想していたのだ。顔もなんとなく遊び人っぽいし。
 しかし相手が変態童貞男――お前も変態なんだがな――であると知ったセレインは、だからと言って嘲ることも呆れることもしなかった。むしろ彼女は誇るように胸を張り、前に突き出した乳房をたゆんたゆん揺らしながら、彼に向かって堂々と言ってのけた。
 
「そうなのか。ではお前は、私と同じということだな」
「は?」
「実は私も生まれてこのかた、エッチをしたことは一度もないのだ。フェラチオもさっきのが初めてだぞ。まさか初めてがこんな刺激的な体験になるとは思わなかったが、これもこれで悪くないものだな」

 セレインは最後まで堂々としていた。そして彼女の宣言は、ドニーにとっては衝撃的なものだった。彼は「ジャバウォックほどの魔物娘になると、みんな経験豊富でとうに処女は捨てているのだろう」という、偏見にも近い思い込みを抱いていたからだ。生娘のジャバウォックに出会うなど想像もしていなかった。
 
「俺の台詞に合わせてくるから、てっきりこういうことにも慣れてるのかとばかり……」
「馬鹿者。男にこんなことされるのは初めてだ。縛り方にしても、私はあくまでも知識としてそれを知っているだけであって、実践するのはこれが初めてだ」

 ロープで縛られた己の体を見回しながら、セレインがきっぱり言ってのける。ドニーにとっては全く想定外の事態だった。
 しかし同時に、彼の心には安堵に似た気持ちが生まれていった。相手が自分と同じ境遇にいることを知り、ある種の親近感を抱いたのだ。
 
「じゃあつまり、お前も処女ってことなのか」
「そうだ。お前と同じだな」
「……縄解いて、ちゃんとやる?」
「いや、最後までこのプレイで通したい。お前はどうかは知らんが、少なくとも私は今のこの状況、かなり好きだぞ」

 きちんと「初めて」を迎えるべきかと問うドニーに、セレインが微笑みながら答える。その表情は慈愛と自信に満ちており、誇り高きドラゴン属の片鱗をこれでもかと見せつけて来ていた。
 
「だからお前も遠慮せず、その聖剣を私にぶち込むのだ! さあ勇者よ! この邪悪なドラゴンを討伐してみせよ!」

 しかし格好と言動は変態だった。亀甲縛りにされたジャバウォックはドニーの前で仰向けになり、そのまま大きく開脚して自身の股間を露わにしてきたのだ。M字に開かれた両脚の間、そこに見える割れ目はてらてらと濡れ光り、奥からは透明な愛液が香しい匂いと共にしとどに流れ出していた。
 その心と同様に、彼女の子宮は覚悟完了していた。
 
「さあ! さあ! お前の勇気を見せてくれ!」

 セレインはやる気を見せていた。どれほどの予想外に直面しようとも、彼女は初志貫徹を忘れなかった。まさに魔物娘の鑑である。そしてそこまでされて、ドニーも黙ってはいられなかった。
 彼もまた冒険者にして漢。ここで怖気づくことなど愚の骨頂。ドニーは己を奮い立たせ、膝立ちの姿勢になりながらセレインに近づいていった。
 
「よし、行くぞ」

 セレインの太腿に手を添えながら、ドニーが静かに告げる。セレインはそれを聞いて無言で頷き、ドニーはそのセレインのリアクションを見てから亀頭の先端を割れ目にあてがう。
 くちりと水音が響く。ドニーはそこで動きを止め、一度深呼吸した後、覚悟を決めて肉棒を突き刺した。
 
「はうう……ッ!」

 刹那、セレインがおとがいを上げて小さく悲鳴を上げる。ドニーの剛直が膣を貫き、結合部分から鮮血が流れ落ちる。
 
「だ、大丈夫か、セレイン……?」

 自身の愚息をきつく締めあげる膣肉の感触に打ち震えながら、それでも射精をこらえつつドニーが問いかける。その優しさに満ちた問いかけに対し、セレインはすぐにその顔をドニーに向け直して気丈に言い放った。
 
「心配するな。この程度、どうということはない。それに、私は今とても感動しているからな」
「どうしてだ?」

 挿入したままドニーが問いかける。膣を貫く肉棒の感触に震えながら、セレインが顔を赤くして答える。
 
「好きになったオスに処女を捧げられたのだ。これ以上の幸せがあると思うか……?」

 そう言ったジャバウォックの顔は、茹蛸のように真っ赤だった。眉根は垂れ下がり、優しい眼差しを秘めた双眸は涙で潤んでいた。その表情はただの変態ではなく、まさに恋に焦がれる乙女だった。
 そしてドニーの顔も、それを聞いて一気に赤くなっていった。顔だけでなく全身の血液が沸騰し、火達磨になったかのように体が熱くなっていく。初心な冒険者は、そんな乙女の姿を見るだけで簡単に落ちた。
 
「どうした? 随分と赤くなっているぞ?」

 それを見たセレインがクスクス笑いながら指摘する。ドニーは気まずい表情を見せつつ、それでもまっすぐセレインを見つめ返しながら口を開く。
 
「仕方ないだろ。こんな美人に好きだって言われて、嬉しくないわけないんだからな」
「ほう? お前案外ピュアなんだな」
「うるせえよ。それよりさっさと動かすぞ」

 バツの悪そうに言い返したドニーは、それ以上の議論はさせまいとして腰を動かし始めた。セレインもまた突然動き始めたドニーに驚きつつ、それでもすぐに彼の肉棒から送られる快感に身を任せていった。
 セレインの膣は最初こそギチギチだったが、「淫らな王」の名に恥じることなく、すぐにそれに順応してみせた。ジャバウォックの膣内はあっという間に愛液で溢れ、潤いを得た膣肉は一転してやわやわと蠢き、ドニーの肉棒を全身で抱きしめていった。それはまさに母の腕に抱かれているような、慈愛に満ちた抱擁だった。
 
「あっ、ぐううっ……!」
「どうした? 腰の動きが鈍っているぞ? それでも勇者か、情けない。そんなもので、このジャバウォックを堕とせると思っているのか?」

 そんな暖かく柔らかい膣の感触にドニーが悶絶していると、セレインが威厳に満ちた顔でドニーを糾弾してきた。その堂々たる姿と、愚息を優しく包み込む膣肉とのギャップが、ドニーの心をさらに魅了した。
 
「もっと強引に来い、勇者よ! お前の聖剣で私を仕留めてみせろ!」
「こっ、このぉっ!」

 結果ドニーは、セレインの言うがままに腰を動かすスピードを速めていった。激しく腰を前後に振り、肉棒全てで膣肉を抉っていく。一往復する度に甘い電流が二人の脳味噌を駆け抜け、竜と人間を等しく快楽の沼へと沈めていく。
 
「そうっ、そうだぁっ♪ そのちょうしぃぃっ♪ もっと私をめちゃくちゃに、やつざきにしてくれええぇぇぇっ♡」
「せれいんっ、せれいんんんっっ!」

 思考の麻痺した獣二匹が、性欲のままに腰を打ちつけ咆哮する。ドニーがセレインの背中に両手を回し、力任せに抱き寄せる。胸の谷間に顔を押し付け、狭間に溜まった汗を下品な音を立てながら吸い取っていく。
 
「ひゃあああん♡ 胸、むねえええっ!」

 唐突なドニーの乳愛撫にセレインが絶叫する。しかしセレインは蕩けた笑みを浮かべ、だらしなく舌を出しながらドニーに懇願する。
 
「もっと、もっといじってっ♡ 私をたべつくしてくれっ、骨までしゃぶってえええっ♡」
「ふう、ふううううっ!」

 それに応えるように、ドニーがセレインの乳首に吸い付く。ぷっくりふくらんだ左右の突起を交互に吸い、舌先で転がし、前歯で甘噛みする。その度にセレインの膣がきゅっと締まり、愛撫のお返しをしようとドニーの肉棒をさらに優しく締め付ける。
 それがドニーの限界を速めていく。
 
「せ、セレイン! 俺もう、出そうッ……!」
「な、なんらあ? もう出そうなのかぁ? この、早漏勇者めっ♡ なさけないぞっ♡」

 ドニーの情けない告白に、愛欲でとろけきった顔を見せながらセレインが優しい罵声を飛ばす。そして前よりもさらに膣肉を引き締め、愛しいオスの剛直を締め上げながら、淫らなジャバウォックがひ弱なオスに許可を出す。
 
「いいぞっ、出せっ♡ お前のどーてーはちゅものせーえき、わたひのおまんこに、いっぱいびゅくびゅくぶちまけろおおおぉぉぉっっっ♡」
「セレイン! せれいん……あああっっ!」

 許可を得た哀れな人間は、あっという間に軛を解き放った。
 肉棒を根元まで打ちつけ、今まで溜め込んできた新鮮な精液を、熟れきったジャバウォックの膣内に容赦なくぶちまける。
 
「でるっ! でるうううぅぅぅっっ!」
「あっ、ひィ! ひいいいいいいいんんんっ♡」

 あつあつのザーメンが膣を満たし、子宮を汚していく。その快感にセレインは心を震わせ、悦びのままに絶叫する。
 
「たべりゅぅ♡ 濃厚熟成童貞精液っ、おなかいっぱいっ、あじわってりゅうううううっっっ♡」
「しゃせい、止まらないっ! 吸いつくされる……っ!」
「もっと、もっとくらさいっ♡ いんらんめすとかげに、ざあめんいっぱいくりゃさいいいいいいいっ♡」

 童貞男と処女ドラゴンが、共鳴するように声を張り合う。セレインが絶叫と共に肉棒を締め上げ、それに呼応するようにドニーがさらなる白濁を膣に撃ち込む。
 
「またきたっ♡ またきたぁっ♡ せーえきたべりゅぅ、いたらきましゅうううううっ♡」
 
 ドニーの陰嚢が空になるまで、二人の絶頂は果てしなく続いた。
 
 
 
 
「はあ、はあっ……もう、でない……カラカラだぁ……」
「は、はははっ……せーえき、しゃいこぉ……♡」

 それから数分後、二人はようやく絶頂の波から解放され、揃って事後の気怠さに身を任せていた。未だ手と触手を縛られていたセレインの躰をドニーが抱き留め、対面座位の格好で仲良く余韻に浸る。
 この時既に、外では陽が傾き始めていた。しかしそんなことはどうでもよかった。二人は時間の変遷など気にも留めず、セックスの残滓を心行くまで噛み締めた。
 
「なあ、ドニー」
「なんだ、セレイン」

 その後、落ち着きを取り戻していったセレインがドニーに声をかける。ドニーもまた静かにそれに応え、そしてそんな彼の肩に顎を載せながら、セレインが言葉を続ける。
 
「気持ちよかったな」
「ああ。すげー気持ちよかった」
「まさかあそこまで気持ちの良いものだとは思わなかった。癖になってしまいそうだ」
「俺も同じだよ。癖になって、やめられなくなりそうだ」
「……また、一緒に気持ちよくなろうな?」

 ジャバウォックからのお誘いの言葉。ドニーはそれに快く頷いた。
 
「ああ。また一緒に、えっちしようぜ」
「うむ。期待しているからな、勇者様?」
「任せとけって。次も俺の聖剣で、お前を懲らしめてやるよ」
「それは楽しみだ……♡」

 共に穏やかな口調で言葉を交わしつつ、やがてどちらからともなく眠りに落ちていく。
 冒険家とドラゴンの初体験は、こうして幕を閉じたのであった。
 
 
 
 
 それから洞窟で一晩を過ごし、繋がりながら休息を済ませた二人は、その足でまっすぐ件の町へ向かった。依頼達成の報告をするためである。
 彼らが洞窟の外に出た時、既に朝日が顔を覗かせていた。空は晴れやかで、風は穏やかに頬を撫でていく。絶好の外出日和だった。
 
「えっ? なっ? ああっ?」

 そして一日経ってようやく帰って来たドニーを見た町の人間は、一人残らず驚愕した。門番のリザードマンも、人間に混じって町で暮らしていた魔物娘達も、一様に彼を見て驚いた。ギルドの受付も例外ではなかった。
 
「ドニー様、そちらの方はいったい、どうなさったのですか?」
「こいつか? 依頼遂行中に仲良くなったんだよ。近いうちに結婚する予定なんだ」
「ジャバウォックのセレインだ。この男の妻になることになった。よろしく頼む」

 依頼を受けて町から出ていった冒険者が、立派なジャバウォックを引き連れて帰ってきた。
 町の人間にとって予想外の事態だった。そして悲しいかな、町の人間はその非常事態を前にして、完全に思考を停止してしまっていた。
 
「なんだよ、これくらいで驚くことないだろ。別に普通のことだって。なあ?」
「まったくだ。これくらいで驚いていては、立派な勇者にはなれんぞ」

 そしてそんな町の面々を前にして、ドニーとセレインは揃って苦言を呈した。いや、こんなの誰も予想できねえよ。町の人々は一斉にそう目線で訴えた。
 しかし依頼報告を終えた二人は、そんな無言の訴えなどどこ吹く風であった。二人は仲良く腕を組み、唖然とする町の住人達を尻目にギルドから出て、ルンルン気分で通りを歩いていった。
 
「さてドニーよ、腹が減ったな。どこかで腹ごしらえしようじゃないか」
「いいねえ。何か食べたいものとかあるか? 俺が奢ってやるよ」
「本当か? では私は甘い物が食べたいな。ケーキとかがいい。構わんか?」
「別にいいけど、食べ過ぎるなよ? 太っても知らんからな」
「食べ過ぎたのなら、その時は運動をしてカロリーを消費するだけだ。もちろん手伝ってくれるよな、旦那様?」
「まったく。わがままなお嫁さんだぜ」

 腕を抱きながら甘えてくるジャバウォックの言葉に、人間の男が柔和な笑みを浮かべながら楽しげに声を返す。そして最初は驚いていた町の住人も、そんな甘々な姿をみるうちに抵抗を無くしていき、やがてその全員が新たなカップルの誕生を無言の内に祝福していった。
 
 
 
 
 こうして想定外の末に誕生した新婚ほやほやのカップルは、朝日の照らす町の中をにこやかに歩いていくのであった。
16/11/22 00:49更新 / 黒尻尾

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