読切小説
[TOP]
絶壁のワイバーン
 俺の嫁はペチャパイだ。絶壁だ。まな板と言ってもいい。同じ高校に通う女子達の中でも、トップクラスに貧乳だった。

「寄せて上げるブラ、かあ……さすがに私用のサイズは無いわよね……」
 
 夢はあるが凹凸は無い。ただ見渡す限りの、無謬の平野が広がるだけだ。だから今彼女がソファに座って読んでいた雑誌の「胸で悩殺! バスト増強法!」というページも、彼女にとっては無用の長物でしかなかった。
 
「ふん、別にいいわよ。私だって、いつかバインバインのナイスバディになってやるんだから!」

 そのことは、俺の嫁も重々承知していた。そしてそれ故に、彼女は自分の体型を変えると言う、大いなる野望を秘めてもいた。まあ俺としては、別におっぱいがあろうが無かろうがどっちでもいい――そもそもヘイゼルと結婚したのだって、おっぱい云々ではなく彼女の人柄に惚れたから――のだが、ヘイゼルは何としても、自分のコンプレックスを打ち破りたくて仕方ないらしい。
 
「ねえステア。今日も手伝ってくれないかしら? 私のおっぱい増量計画、始まったばかりなんだからね」

 そしてヘイゼルはその大望を果たすために、一週間前から「おっぱい増量計画」なるものを実行に移していた。要はおっぱいを大きくするための、二人一組で行う特別メニューである。
 ヘイゼル曰く「これは夫婦の愛があって初めて成立するもの」なのだそうだ。情報の出所を聞いてみると、彼女は「俺と結婚する前に、同級生の魔女から教わった」と説明してくれた。ヘイゼル自身試してみたかったそうなのだが、相手がおらず無期限延期状態となっており、俺と結婚したことを契機に試してみようという流れになったのだそうだ。
 
「そのおっぱい計画、本当に効くのか? 一週間前からやってるけど、あんまり目に見えて効果出てない気がするんだけど」
「大業は一日にして成らず、よ。こういうのは、地道にこなしていくのが大切なの。それに学生の内からやっておけば、将来ブルンブルンなバストを手に入れられるかもしれないじゃない?」
「まあ、それもそうかもな」
 
 ちなみに俺ことステアもヘイゼルも、共に高校二年生である。にもかかわらず、当たり前のように二人して結婚しているのは、単に現代の価値観が魔物のそれに置き換わったからである。魔物娘が現代社会に現れてからたった数年で、世界の大半が彼女達のルールに従って動いていた。しかしそうなって以降、世の中が劇的に平和になったので、そのことに非難の声をあげる者は殆どいなかった。
 それはともかく。
 
「ほら、はやく準備する! ほらほら!」
「そんなに急かすなって。おっぱいは逃げねえんだから」
「おっぱいは逃げなくても、時間は待ってはくれないんだからね! 急いで支度して!」

 そう言って急かしながら、ヘイゼルがさっそく服を脱ぎ始める。シャツを脱ぎ捨て、ついでに何故かズボンまで脱いでいく。羞恥も躊躇も無い、見事な脱衣っぷりであった。
 夫に裸体を見せるのは恥でもなんでもない、と言うのがヘイゼルの主張なのだが、やはりこの魔物娘特有の貞操感覚の低さには馴染みきれないところもあった。実際、俺はいきなり裸体を晒してきたヘイゼルを直視することが出来なかった。しかしいつまでも恥ずかしがっているわけにも行かない。俺は腹を括って、同じように服を脱ぎ始めた。
 これがヘイゼルの言う「支度」。魔女流豊胸術の第一歩なのだという。一週間前から同じことをしてきたが、俺としては眉唾ものじゃないかと思ったりもしている。
 
「よし。これで準備は出来たわね」
「そうだな。寝室に行くのか?」
「そうしましょう。そっちの方がいい感じにムード出るし」

 そうして居間で全裸になった後、俺達はいつものように寝室に向かった。リビングの中を全裸で歩くと言うのは、妙にスース―して気恥ずかしいところがあるのだが、文句をいってもいられない。何事も慣れだ。
 そんなことを考えながら、俺はヘイゼルの後ろについて寝室へ向かったのだった。
 
 
 
 
「よし、じゃあ始めるぞ」

 そうして寝室に入って布団を敷き、その上に向かい合いながら腰を降ろした後、俺はヘイゼルにそう告げた。ヘイゼルもまた期待に満ちた表情で頷き、翼手を広げて俺の愛撫を今か今かと待ち構えた。例の特別メニューの開始である。
 そのメニューの正式名称は、「魔女流豊胸術」だの「魔女直伝豊胸マッサージ」だのというものであった。字面は仰々しいものだったが、その中身は最初に胸を中心に愛撫を行い、互いに出来上がったところで膣に肉棒を挿入するというものであった。言ってしまえば、それは普通のセックスと何も変わらなかった。
 濡らすために弄るところが胸かそれ以外かの差しか無かったのだ。
 
「大切なのは夫婦間の愛情。愛をもって接すれば、特別なテクニックなんて必要ないんだって」

 それに対するヘイゼルの回答がこれであった。要は夫婦間で存分に愛し合えば、自然と結果がついてくるというものであった。
 
「なんか、投げ遣りな感じするな」
「それは言えてるかもね……。まあそれはいいから、はやく本番しようよ」

 もう待ちきれないとばかりにヘイゼルが催促し、膝立ちの姿勢になる。こいつ、実のところおっぱい増量は建前で、本当は俺とエッチしたいだけなんじゃないか? そんなことを思いながら、俺はヘイゼルの胸部に手を伸ばした。こいつとセックスしたいのは俺も同じだったからだ。
 
「んっ……」

 肌色の板に両手を添える。掌で乳首を押し潰しながら、ゆっくりと手全体で板面を圧迫していく。
 本当に板だ。正確には、板の上に敷かれた皮膜をいじっているようだ。どれだけ揉んでも、そこにおっぱいがあるという自覚は生まれてこない。本当に皮膚を引き延ばしているだけの感覚に陥ってしまう。
 
「あっ、ふう……くっ……」
 
 それでもくすぐったそうにヘイゼルは体を震わせ、熱い吐息を漏らした。こいつ、膨らみは無いくせに、胸は人一倍敏感な奴なのだ。俺はヘイゼルの悶える声を聞きながらそんなことを思いだし、いつものようにメニューを開始した。
 なんのことはない。胸を徹底的に愛撫すればいいだけである。
 
「やん、くふぅ、くっ……あんっ♪ やぁん♪」
 
 円を描くように両手を動かし、平坦な胸を揉んでいく。二回転させた後で手を内側に寄せ、両乳を寄せ合わせる。当然谷間は生まれず、薄皮が僅かに皺を刻むだけだ。そうして二、三回寄せた後、今度は手首の付け根辺りに力を集めて無い乳を上へ持ち上げる。
 ……本当にこいつペチャパイだな。まるで男の胸を揉んでいるみたいだ。
 
「きゃん、くふぅ……ステアの手、あったかくて気持ちいい……うふふっ♪」

 そうして俺が無い胸を愛撫していると、ヘイゼルが嬉しそうに声を漏らす。それを聞くと俺もだんだん嬉しくなってきて、笑みを浮かべながらヘイゼルに問いかけた。
 
「そんなに俺の手、気持ちいいのか?」
「うん。手を通して、あなたの優しい気持ちが伝わってくるの。それが一番私を幸せにして、気持ちよくしてくれる……みたいな感じ、かな?」

 そう答えて、ヘイゼルが顔を赤くする。そんなに恥ずかしいならそういう台詞言わなきゃいいのに。俺はそんなことを考えて苦笑しながら、その後もマッサージを続けた。胸を揉んだり、乳首をつまんだり、やることはいわゆる愛撫と変わらなかった。
 それでもヘイゼルは喜んでくれた。俺を信じて、その身を任せてくれていた。その期待だけは裏切りたくなくて、俺は真心を込めてヘイゼルのおっぱいを――ほぼ無いに等しいおっぱいを――揉みしだいた。
 
「ねえ、おっぱいもいいけどさ……」

 するとその内、ヘイゼルがやや肩で息をしながら俺に話しかけてきた。俺がそれに気づいて手の動きを止め、しかし手のひらは乳に吸い付けたままそちらに目をやると、ヘイゼルはこちらに控え目な目線を送りながら俺に話しかけてきた。
 
「他にも色んなところ、触っていいからね? 私のこと、好きにしていいんだから」

 汗ばんだ肢体を見せつけながら、大好きなワイバーンが蕩けた表情で俺に提案する。俺は思わず息をのんだ。
 別にこの展開は初めてではない。俺がヘイゼルの豊胸を手伝う時は、いつもこうしてヘイゼルの方から誘惑してくるのだ。しかし何回誘いを受けようとも、こうして見せてくる彼女の艶やかな姿を前にして平静でいられるだろうか?
 ありえない。妻が裸体を晒しながら誘惑してくるのだ。抗える夫などいないだろう。
 
「いつものことながら、いいのか? これ一応、お前のおっぱいを大きくするためにしてることなんだがな……」

 しかし一応、俺は断りを入れることにしている。親しき中にも礼儀あり、というやつだ。ヘイゼルからは窮屈だと言われたが、俺はまだまだ人間の常識から抜け出しきれていなかったのだ。
 インキュバスになれば、そんなことも無くなるのだろうか? 少し怖い。

「いいのよ別に。本当、ステアってば律儀なんだから」

 そしてそんな糞真面目な俺を、ヘイゼルはいつも笑って許してくれる。まさに聖女だ。俺はこんな素晴らしいワイバーンと俺を引き合わせてくれたことを、魔王に感謝した。

「私だけ気持ちよくなっても仕方ないじゃない。いつも私を手伝ってくれる、そのお礼よ。ね?」

 そんなことを考えていると、ヘイゼルが満面の笑みで俺を見つめてくる。その姿を見た瞬間、俺の心臓は大きく飛び跳ねた。
 白い歯をにかっと見せた渾身の笑顔。可愛すぎる。そんな顔されたら、俺だってもう我慢できなくなる。現に俺の股間には熱が溜まり切り、俺の分身は盛大に天を衝いてそそり立っていた。
 
「ほら、そっちのあなたはヤる気十分みたい♪」

 そんな俺のペニスを見ながら、ヘイゼルが楽しそうに声をかける。俺は恥ずかしくなって視線を逸らしたが、すぐに腹を決めてヘイゼルと向き直った。
 俺だってヘイゼルの体を思う存分味わいたかったからだ。それに「こういう時は襲ってあげるのが魔界の流儀」であると、以前ヘイゼルから教わっていた。魔物娘と婚約した以上、朱に交わることも大切なのだ。
 躊躇してはいけない。ヘイゼルのためにも、彼女を心から味わわなければ。
 
「じゃあわかった。好きにやらせてもらうからな」
「うん」

 俺は板から手を離し、ヘイゼルの胸元に顔を近づけた。そして彼女の背中に手を回し、頬を胸元に押し当てながら抱きついた。

「きゃん! ……もう、またそこなの?」
「あー、落ち着く……あったかくて気持ちいい……」

 いつものようにヘイゼルが小さく悲鳴を上げる。俺の肌の感触と鼻息を間近で受けると、さすがにくすぐったいらしい――そして彼女はそれすらも心地よいと言ってくれた。なので俺は気にせず、いつものようにこの絶壁を顔面で味わった。
 ヘイゼルは胸が無いのを気にしていたが、俺としてはこのまな板こそが「この世で一番落ち着ける場所」だった。感触、体温、匂い。その全てが俺のささくれだった心を癒してくれる。
 まさに心のオアシスだ。ヘイゼルの壁は、俺と言う砂漠に潤いを与えてくれる、聖なる泉なのだ。
 
「あなたも変わってるわね。おっぱい無いのがそんなにいいんだ?」
「ああ。最高だよ」
「まな板が良いの?」
「お前のまな板がいいんだ」
「もう!」
 
 ヘイゼルが顔を真っ赤にして怒る。俺は気にせず板に頬ずりする。
 好きなものは好きなのだからしょうがないのだ。
 
「……本当、しょうがないんだから」

 それからヘイゼルは、そう言って苦笑しながら腕を動かし始めた。翼を目一杯広げて俺の背中に回し、その翼手を使って俺を抱き締め返す。そしてそこからさらに腕に力を込め、俺の体を自分の体に押しつけてくる。
 さすがに慣れたもので、こうなった時の俺への対応もバッチリだった。あまつさえヘイゼルはノリノリで、俺のことを優しく抱きしめてきてくれた。以前に比べて大きな進歩である。
 
「ほら、もっと堪能させてあげる。ぎゅーっ♪」
「ああっ、たまらん……!」

 ワイバーンの鉄壁が頬に迫る。薄皮越しに肋骨の堅い感触が頬に当たる。この硬さすら愛おしく心地よい。否、この骨の感触こそがたまらない。
 巨乳には巨乳の良さというか、柔らかさのようなものもあるのだろう。だがそれでもやはり、俺はこの硬さが好きだった。ヘイゼルそのものを感じられるような気がして、たまらなく快感を覚えるのだ。
 ヘイゼルの汗と体温と心音を同時に味わい、皮と肉と骨までもしゃぶり尽す。ヘイゼルの全てを前にして、まさに夢心地と言わんばかりの境地に至る。さらにワイバーン特有の翼手が俺の背中全てを覆い隠し、そこから来る安心感が俺の心をさらに優しく解きほぐしていく。なお、この翼手もまた独特の硬さ――鱗の堅さと、皮膜越しに感じる骨の堅さから来るものだ――を持っていたのであるが、俺からすれば別段窮屈な代物では無かった。むしろその強靭さが、却って俺の心により強い安心をもたらしてくれるのだ。
 
「ヘイゼルでいっぱいだ……幸せだなあ……」
 
 思わず上ずった声が漏れる。前も後ろもヘイゼルに包まれ、言いようのない安堵の気持ちをもたらしてくれる。
 これを天国と言わずしてなんというのか。
 
「私だって、幸せだよ? こうしてステアの全てを独り占め出来て、私とっても幸せ……♪」

 ヘイゼルもまた、こうして俺の体を抱き締めるのが一番幸せな瞬間であると言っていた。俺の体はそんな上等なものではないが、それでも喜んでくれると言うのなら、いくらでもこの身を捧げよう。俺はそう思いながら、ヘイゼルの背中に回した腕に力を込めた。
 
「ねえステア、もっと気持ちよくなりたくない?」

 そんな折、不意にヘイゼルが話しかけてくる。絶壁から顔を離すのも惜しかった俺は頬ずりしながらそれに頷き、そしてヘイゼルはそれを見てクスクス笑いながら俺に話しかけてきた。
 
「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるね♪」

 そして次の瞬間、俺は自分の下半身に電流が走ったような感覚を味わった。思わず顔を離して視線を下にやると、俺の男根にヘイゼルの尻尾が巻き付いていた。
 
「空撃ちはちょっと、もったいないけど……私のおっぱい感じながら射精出来るんだから、あなたとしては最高の体験よね♪」
「ああ、そうだな」

 ヘイゼルの厚意に感謝しながら、俺は彼女の言葉に頷いた。そして俺は板から顔を離し、ヘイゼルを見上げながら口を開いた。
 
「じゃあお願いしていいか?」
「もちろん。任せてね」

 ヘイゼルが頷き、尻尾を本格的に動かし始める。直後、さっそく股間からくすぐったさともどかしさの混じった快感がせりあがってくる。
 
「ほらほら、ごしごし♪ ごしごし♪ ちゃーんと擦ってあげますからねー♪」
「ふっ……あうっ……」

 ヘイゼルが楽しそうに尻尾を動かし、俺の肉棒を優しく扱き上げる。そうして尻尾が往復するたびに、俺は自分の脳味噌が柔らかく溶けていくのを感じた。甘い電流が理性を麻痺させ、ヘイゼルへの肉欲を否応なしに増幅させていく。もっと気持ちよくなりたい、もっと相手を気持ちよくさせたいと、獣欲を高めさせていく。
 
「ちゅっ、くちゅ……」

 そして俺は無意識の内に、ヘイゼルの乳首に吸い付いていた。桜色の突起を唇で挟み、先端を舌で転がし、歯で甘噛みする。
 
「あむ……ちろちろ、くちゅ……へいぜるのちくび、甘いな……」
「あん、もう……おイタは駄目よ?」
 
 俺がそうやって弄るたびに、ヘイゼルが体を震わせて甘い声を漏らす。やがてヘイゼルは悦びを湛えた表情で俺の方を見下ろし、悪戯っ子を咎めるような口調で声をかけてくる。
 
「今は私があなたを気持ちよくする番なんだから、大人しくしてて」
「無理だよ。目の前にこんな美味しそうなものがあるのに、我慢なんて出来るわけないだろ」

 そう。こんな美味そうな乳首を前にして、我慢なんて出来る訳がなかった。そして俺はそう言ってから、また本能のままその眼前にある宝石にしゃぶりついた。
 ヘイゼルが体を揺らし、甘い声を漏らす。そしてすぐに表情を引き締め、しかしそれでも半分蕩けた顔を見せながら、ヘイゼルが俺に話しかける。
 
「も、もう、おばか♪ まな板なんか吸って、そんなに楽しい?」
「くちゅ、ちゅ、ちゅっ……ああ、最高だよ。お前のまな板だから最高なんだよ」
「もう、おだてるの上手なんだから……じゃあ、あなたのことももっと気持ちよくさせてあげる♪」

 ヘイゼルはそう言って、再度尻尾を動かす。テンポを上げ、本気で射精させる気で激しく肉棒を扱き始める。
 射精欲求が一気に高まっていく。根元から精液が込み上げていき、背骨がゾクゾクと震えて始める。
 
「ふふっ♪ ほらほら、もう我慢しないで、イっちゃいなさい♪ ほーら、しこしこ♪ しこしこ♪ おちんぽしこしこ♪」

 そんな俺の心境を見抜いたように、ヘイゼルが楽しそうに声をかける。囁くように、甘く熱い息を吐きながら俺に言葉をかけていく。それが俺の神経をさらに逆撫で、頭から快感以外の感情を奪い去っていく。頭が真っ白になり、ヘイゼルでいっぱいになる。
 嫁に心を支配される。それがたまらなく気持ちよくて、俺は心臓を高鳴らせながら雄叫びを上げた。
 
「ふううっ、くッ、うああ……っ!」
「うふふ、いい声♪ もっともっと気持ちよくなっていいんだからね♪」
「き、気持ちよくなるんだったら、お前も……!」

 嬉しそうな調子でヘイゼルが声をかけてくる。俺は欲望のままに、そんなヘイゼルの胸にむしゃぶりついた。叫んだ口を閉じずに無い乳に吸い付き、舌を使って口の中で乳首をいじくり倒す。もう片方の乳には手をあてがい、無いものを必死に揉みしだく。
 
「きゃん! ちょ、ちょっと……不意打ちなんて卑怯よ……?」
 
 骨の堅さ。筋肉の張りの良さ。皮膚の暖かさ。それら全てを口と手で感じ取る。
 無乳だからこそ味わえる悦楽。その気持ちよさに、俺は心を震わせた。
 
「このっ、いい加減に……!」

 余裕をなくしたヘイゼルの声が聞こえてくる。彼女はそれから尻尾をさらに激しく動かし、肉棒をそれまで以上に激しく苛め抜いていく。容赦のない、摩擦で火がつきそうなほどに激しいストロークが肉棒を襲い、俺の心を絶頂へと引き上げていく。
 
「えへへ……っ、どう? イク? イっちゃう? どうなのよ?」

 ヘイゼルが楽しげに俺に問いかけてくる。俺は何も言えず、胸に吸い付きながら首を縦に振った。
 出したい。射精したい。精液を吐き出したい。本音を伝えるように、無心で壁に舌を這わせ、頬ずりし、肉欲のままに板をしゃぶる。
 
「俺、もうイク……出ちまうよ……!」

 そして我慢しきれずに、己の欲望を声にして吐き出す。ヘイゼルは慈母の如き微笑みを見せて頷き、そんな俺に向かって声をかけてくる。
 
「どうする? このまま吐き出しちゃう? それとも、どこかリクエストとかある?」
「む、胸に……お前のおっぱいに、かけたい……!」

 俺はもう我慢しなかった。自分の感情を素直に吐き出し、歯を食いしばってヘイゼルに甘える。ヘイゼルもそれを聞いて小さく微笑み、背中に回した翼を解きながら俺に告げる。
 
「いいわよ。私のおっぱいにあなたの精液かけて、いっぱいマーキングして?」

 そして自分から後ずさり、翼をめいっぱい左右に広げて胴体を晒す。しかし尻尾は肉棒から離さず、最後まで面倒を見ようとしこしこ俺の息子を扱いていく。
 
「ほらほら、出しなさい? あなたのえっちなザーメン、いっぱい吐き出しなさい?」
「あ、ぐうっ……出る……ッ!」

 ヘイゼルが静かに許可を出す。それを聞くと共に限界がやって来る。
 それを俺が叫んで伝えると、ヘイゼルも頷いてそれに言い返す。
 
「いいよ。出して♪ いっぱいかけて♪」

 尻尾の先端を巻きつけて根元を締め上げ、そのままトドメとばかりに亀頭まで一気に擦り上げる。
 それが引き金となった。俺は歯を食いしばり、盛大に精液を吐き出した。
 
「あっ、ぐあっ、出るっ……!」
「ああん、出た、出た! きゃふぅん!」

 鈴口から飛び出した白濁液は、俺の狙い通りヘイゼルの胸に向かって飛んでいった。白濁がまな板を汚し、その健康的な肢体をどろりと塗り潰していく。
 そうして精液を体で受け止めるたびに、ヘイゼルは体を震わせて恍惚とした表情を見せる。口を大きく開いてとろんと蕩けた顔を見せ、胸を反らしてさらに精液を受け止めていく。
 
「あっ、あっ、いっぱい、せーえき、いっぱいいぃぃぃん♪」
「ぐあああっ、まだ出る! 出るよぉッ!」

 ヘイゼルが喜びの絶叫を上げる。俺もそれに合わせて叫び、さらに精液を吐き出す。白い汁が狙いを逸れ、胸だけでなく顔や翼に飛んでいく。
 
「ああ、イっちゃう! イっちゃうぅん! イクイクイクゥゥゥーッ♪」
 
 そうして全身を白く染められていく度に、ヘイゼルが歓喜の嬌声を上げて絶頂していく。俺もそれに応えるように、ヘイゼルの体に精液を吐き出し続ける。頭のてっぺんから足の先まで真っ白に塗り潰され、ヘイゼルはそれをうっとりとした顔で受け入れた。その姿がたまらなく卑猥で、俺もさらに精液を吐き出していく。そしてそれによってヘイゼルはさらに白く染まり、それを見た俺はもっと彼女を汚したいと興奮する。悪循環であった。
 
「あはっ♪ 真っ白、いっぱぁい……♪」
 
 そんな俺の絶頂は、結局陰嚢から精液が尽きるまで続いたのだった。
 
 
 
 
 それから数分経って、ようやく互いに絶頂の波が引いた後、俺達は互いの姿を見やって苦笑しあった。お互いに恥も外聞も捨てて絶頂する姿を見せあったのが、予想以上に恥ずかしかったのだ。
 
「はあ……ステアの精液で真っ白……うふふっ♪」

 そうしてひとしきり笑った後、ヘイゼルはそう呟きながら自身の翼爪で己の胸を撫でていった。爪の腹を全て使い、かけられた精液を塗りたくるように胸をいじっていくその姿に、俺は燻っていた劣情を再び燃え上がらせていった。
 
「ねえ、ステア」

 そんな俺に、ヘイゼルが自分の胸をいじりながら声をかけてくる。俺はそれに反応を返し、そしてそれを受けたヘイゼルは控え目な口調で俺に話しかけてきた。
 
「迷惑とか、思ってたりする? その、私のおっぱい増量計画ってやつ」
「どういう意味だよ?」

 突然の質問。意味が分からなかった。首を傾げる俺に向かって、ヘイゼルが説明を始める。
 
「だってステア、いつも私のまな板を喜んで触って来るじゃない。だから私がおっぱい大きくなったら、あなたを喜ばせられなくなるんじゃないかなって思って……」
「なんだ、そういうことか」

 安心した。俺はそう思って、安堵のため息をついた。そして俺の反応を見て驚くヘイゼルに向かって、俺は笑みを見せながら答えた。
 
「そんなわけないだろ。俺は貧乳が好きなんじゃなくて、お前の貧乳が好きなんだよ」
「えっ?」
「お前だから好きになったんだ。だからお前が巨乳になっても、俺は別にお前の事嫌いになったりはしないよ」

 ありのままを吐露する。ヘイゼルはそれを聞いて一瞬きょとんとなり、そしてすぐに両目を輝かせて俺に詰め寄った。
 
「じゃあ、このままおっぱい大きくしてもいいってことね?」
「ああ。俺も協力するからさ。どんどん大きくしていこうぜ」
「うん!」

 俺からの提案に、ヘイゼルは満面の笑みを浮かべて頷いた。俺に認めてもらえたのがとても嬉しかったようだ。俺としても、ヘイゼルが喜んでくれて何よりだった。
 
「でも、いずれ大きくなるなら、今の内に楽しんでおかないとな」

 そんなヘイゼルに向かって、俺は言葉を投げかけた。ヘイゼルは俺の方を見てきたが、俺は気にせずヘイゼルの胸に注目した。
 やがて俺の視線に気づいたヘイゼルが、翼手を広げて前面を丸ごと隠す。そして顔を赤くしながら「このスケベ」と声を上げる。
 
「おっぱいばっかり見ないでよ、恥ずかしい。私の見所、おっぱい以外にも色々あるのに」
「知ってるよ。その角も翼も尻尾も、全部好きだ。でも俺は」
「おっぱいが好き?」
「そういうこと」
「……まな板なのに?」
「うん」

 真面目な顔で頷く。ヘイゼルはさらに顔を赤く染め、視線を泳がせながら言葉を放つ。
 
「じゃあ……貧乳楽しめるのも今の内だし、いっぱい楽しませてあげるね……?」
「いいのか?」
「そりゃあ、もちろん。あなたから求められて、断れるわけないじゃない」

 しかしそこまで言って、すぐにキッと表情を引き締めてこちらを見つめてくる。突然のことに背筋を伸ばす俺に、ヘイゼルが口を開いて言ってきた。
 
「だからあなたも、ちゃんと私のこと愛してよね? おっぱいが大きくなっても、変わらず私を愛し続けること。いい?」
「ああ」
「約束できる?」
「もちろん」

 俺は力強く頷いた。ヘイゼルもそれを見て顔から力を抜き、「よかった」と穏やかな声を漏らす。どうやら胸が大きくなる件について、本当に心配していたようだ。
 そんなヘイゼルを見ながら、俺は茶化すように彼女に言った。
 
「でもこの調子じゃ、胸が膨らむのは大分先だろうけどな」
「うっさい」

 それを聞いたヘイゼルが口を尖らせる。俺はそれを見て思わず笑いをこぼし、それを見たヘイゼルは眉間に皺を寄せて俺に言ってきた。
 
「笑うんじゃないわよ! このおっぱい星人!」

 おっぱいにこだわってるのはお前もだろ、とは思ったが、ここは言わないでおくことにした。
16/10/03 21:43更新 / 黒尻尾

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33